JP2007224481A - 皮革様シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】実質的に繊維素材からなり、有機溶媒を使用せず環境負荷が小さく、風合いと耐久性および単調な色合いを改善した皮革様シート状物とその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の面が平均繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が互いに絡合している不織布から形成され、実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物であって、9mmに1箇所以上の頻度で該極細繊維が水系の液体により溶出可能な樹脂によって一部拘束されていることを特徴とする皮革様シート状物。
【選択図】なし

Description

本発明は、風合いが柔軟で摩擦に強く、表面に変化のある色調を有する皮革様シート状物およびその製造方法に関する。
人工皮革などの皮革様シート状物は、天然皮革にはない柔軟性や機能性を有していることから、衣料や資材を始め種々の用途に使用されている。皮革様シート状物の製造法としては、極細発生型の複合繊維からなる不織布にポリウレタン等の高分子弾性体の溶液を含浸後、水または有機溶剤と水の混合溶液中に浸漬して高分子弾性体を湿式凝固せしめる方法が一般的である。また、複合繊維から極細繊維を発生させる手段としては、有機溶剤によって複合繊維の一部を溶出する方式が一般的である。
しかし、近年では、地球環境保全のために製造時に有機溶剤を使用しないことや、健康への配慮から、有機溶剤の残留や廃棄時の有毒ガスの発生がないことといった、環境負荷が少なく体に優しい素材やリサイクル性に優れた素材が求められている。
また、人工皮革の用途の一つであるカーシート状物においては、人工皮革を表皮材とすることで、高級感のあるシート状物を得ることができるが、人工皮革に残留する有機溶剤が問題となるケースがあり、有機溶剤を使用しない人工皮革が望まれている。
この問題を解決するため、凝固に有機溶剤を必要とする有機溶剤型の高分子弾性体に変えて、凝固に有機溶剤を必要としない水分散型高分子弾性体を含浸する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしこの方法では、高分子弾性体含浸時には有機溶剤を使用しなくてもよいが、含浸後、極細繊維を発生させるために有機溶剤を用いており、有機溶剤の残留を完全に解決できるものではなかった。
そこで、アルカリ水溶液により溶出可能なポリマーを複合繊維の海成分に用い、水分散型高分子を含浸させた不織布をアルカリ水溶液に浸漬して海成分を溶出させ、極細繊維を発生させる方法も検討されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。これらの方法により、有機溶剤の残留の問題は解決することはできるが、水分散型高分子を大量に含浸する必要があるため、得られる皮革様シート状物は風合いが硬くなるという問題があった。
また、水分散型高分子の使用量を抑え、風合いを改善する方法も提案されている(例えば、特許文献4)。この技術によれば、海成分がアルカリ水溶液により溶出可能な成分からなる海島型複合繊維で不織布を作成し、アルカリ水溶液により極細処理後、高速流体処理することで、極細繊維を高度に絡合させ、水分散型高分子を含浸する量を減らすことができる。しかし、この方法ではアルカリ水溶液により拡布状で連続処理する場合に高度な張力管理を必要とし、工程張力によって長さ方向に伸びが発生すると、この不織布を用いた皮革様シート状物では、高圧流体処理時に繊維が絡合しにくくなる傾向があり、高圧水流で処理する必要があった。そのため、風合いが硬くなりやすく、衣料に用いた場合には動きに対して追随し難く、着心地が悪いものになるという問題があった。また、上記の従来の製造方法により得られる皮革様シート状物では、色合いが単調になりやすいものであった。
特開2001−81676号公報 特開2003−221791号公報 特開2004−19081号公報 特開2005−226213号公報
本発明は、実質的に繊維素材からなり、有機溶剤を使用しない、環境負荷が小さい皮革様シート状物において、風合いと耐久性および単調な色合いを改善し、さらにはタテ方向に適度の伸長率を有する皮革様シート状物を得ることを課題とする。
前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、少なくとも一方の面が平均繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が互いに絡合している不織布から形成され、実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物であって、9mmに1箇所以上の頻度で該極細繊維が水系の液体により溶出可能なな樹脂によって一部拘束されている皮革様シート状物である。
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法は、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて、ニードルパンチ法により、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである短繊維不織布(b)を作製した後、以下の(1)の工程、さらにその後に(2)の工程を行うものである。
(1)短繊維不織布(b)を拡布状にて水系の液体を含浸した後に加熱処理し、長さ方向の伸びが10%以下とするように短繊維不織布(b)中の海成分を溶出して、実質的に繊維からなる極細繊維不織布とする工程。
(2)流体圧力10MPa以上で高速流体処理を行う工程。
さらに、本発明の皮革様シート状物の別の製造方法は、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて、短繊維ウェブを作製した後、以下の(1’)〜(3’)の工程を行うものである。
(1’)短繊維ウェブと撚係数が7000〜20000の繊維により構成される織物をニードルパンチ法により絡合一体化させ、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである繊維構造体(c)を作製する工程。
(2’)繊維構造体(c)を拡布状態にて水系の液体を含浸した後に加熱処理し、長さ方向の伸びが10%以下となるように繊維構造体(c)中の海成分を溶出して、実質的に繊維からなる繊維構造体(d)とする工程。
(3’)流体圧力10MPa以上で高速流体処理を行う工程。
上述した本発明の皮革様シート状物とその製造方法によれば、有機溶剤やポリウレタンを使用しないため環境負荷が少なく、風合いと耐久性およびシート状物表面の単調な色合いを改善した、リサイクル性に優れる皮革様シート状物を提供することができる。
本発明の皮革様シート状物は、実質的に繊維素材からなるものであり、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が互いに高度に絡合して、少なくとも皮革様シート状物の一方の面を形成しており、該極細繊維が形成する面を観察した場合に9mmに1箇所以上の頻度で水系の液体により溶出可能な樹脂によって極細繊維が一部拘束されている部分が存在するものである。そのため、極細繊維が形成する面は部分的に色が変化し、合成繊維にありがちな、均一な色調から感じる不自然さが改善されるものである。
なお、この9mmに1箇所以上とは、皮革様シート状物の極細繊維が形成する面において一辺3mmの正方形の観察区域を30箇所以上ランダムに選び、該観察区域をSEMにより150〜500倍で表面を観察した際に、極細繊維同士が樹脂によって拘束されている部分が平均で1箇所以上確認できることをいう。
また、極細繊維を拘束する樹脂が有機溶剤による溶出が必要な樹脂では環境負荷が大きいため、リサイクル性の観点から、水系の液体により溶出可能な樹脂であることが重要である。ここでいう、水系の液体とは水または水溶液を指し、水系の液体に溶出可能とは、100℃以上の熱水または、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液、ギ酸などの酸性水溶液のいずれかによって溶解または分解することが可能なことを意味する。水系の液体に溶出可能な樹脂としては特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、エチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体などのポリエステル系樹脂、または、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12などのポリアミド系樹脂、または、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールなどの樹脂を用いることができる。本発明の皮革様シート状物では、前記水系の液体により溶出可能な樹脂の中でも、エチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体やポリ乳酸を用いることが好ましい。なお、水系の液体により溶出可能であるかは、上述のSEMにより極細繊維の拘束が確認された試料片を140℃の熱水で20分、あるいは80℃、50g/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液中またはギ酸水溶液中に20分間浸漬後、SEMにより同様の倍率で観察した際に、接合部が確認できない場合、水系の液体により溶出可能な樹脂とする。
なお、皮革様シート状物の極細繊維が形成する面において9mmに1箇所以上の頻度で水系の液体により溶出可能な樹脂によって極細繊維を拘束する方法については、本発明の皮革様シート状物の製造方法として後述する。
なお、本発明の実質的に繊維素材からなるとは、ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーが繊維に対して5重量%未満であることをいい、好ましくはバインダーが繊維に対して3重量%未満、より好ましくはバインダーが繊維に対して1重量%未満であり、もっとも好ましいのはバインダーを含まないものである。高分子弾性体の含有量が少ないことにより、ゴム感がないソフトな風合いを達成することができ、さらに、高発色性、高耐光性、耐黄変性等種々の効果が達成できる。
本発明の皮革様シート状物において、少なくとも一方の面は、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維不織布から成る。この極細繊維の平均単繊維繊度は、好ましくは0.005〜0.3デシテックス、より好ましくは0.01〜0.15デシテックスである。平均単繊維繊度が0.001デシテックス未満であると、皮革様シート状物の強度が低下してしまうことや、染色で濃色のものを得難いため好ましくない。また平均単繊維繊度が0.5デシテックスを越えると、皮革様シート状物の風合いが堅くなり、また、繊維の絡合が不十分になって耐摩耗性が低下したり、表面品位が低下する等の問題も発生するため好ましくない。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、単繊維繊度が0.001デシテックス未満の繊維もしくは単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維が含まれていてもよい。単繊維繊度が0.001デシテックス未満の繊維および単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維の含有量は、数にして、短繊維不織布を構成する繊維の30%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、全く含まれないことがさらに好ましい。
本発明において、上述の極細繊維の平均繊維長は20〜100mmの短繊維からなることが好ましく、より好ましくは25〜80mmであり、さらに好ましくは30〜60mmである。平均繊維長が100mmを超えると、緻密な立毛が得られにくく、表面品位が低下するため好ましくない。また、平均繊維長が20mm未満であると、摩擦により繊維が脱落しやすくなり、皮革様シート状物の耐摩耗性が低下する。
なお、繊維長が100mmを超える繊維および、繊維長が20mm未満の繊維の含有量は、全く含まれないことが最も好ましいが、繊維長が20mm未満の繊維および繊維長が100mmを超える繊維の含有量は、数にして、短繊維不織布を構成する繊維の10%未満である。
また、本発明の皮革様シート状物は、JIS L 1096(2001)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に準じて測定される耐摩耗試験において、極細繊維が形成している面をマーチンデール摩耗試験機のピリングポジション設定(THREE DRIVE ROLLERS=POSITION B)で20000回摩擦後、試験布の摩耗減量が8mg以下のものであることが好ましい。摩耗減量は、より好ましくは6mg以下、さらに好ましくは4mg以下である。摩耗減量が8mgを越える場合、実使用において毛羽落ちが多く、服等に付着する傾向があるため好ましくない。一方、下限は特に限定されず、本発明の皮革様シート状物であればほとんど摩耗減量がないものを得ることができる。この摩耗減量を妨げない範囲であれば、前記平均繊維長の極細繊維が含まれていても良い。
一方、本発明の皮革様シート状物のタテ方向の伸長率が5%以上であることは、衣料素材に用いた際、突っ張り感を感じることなく着用することができ、カーシートなどの表皮材として用いた際には、良好な成形性が得られるため好ましい。また、タテ方向の伸長率は大きい程好ましいが、30%を超えるとドレープ性が低下する傾向にあるため、30%以下であることが好ましい。なお、本発明においては、不織布の形成方向をタテ方向とし、不織布の幅方向をヨコ方向とするものである。不織布の形成方向は、繊維の配向方向、ニードルパンチや高速流体処理等によるスジ跡や処理跡などの複数の要素から、一般に判断可能することができる。これらの複数の要素による判断が相反している、明確な配向がない、またはスジ跡などがないなどの理由で、明確なタテ方向の推定や判断が困難な場合は、引張強力が最大となる方向をタテ方向として、それと直交する方向をヨコ方向とするものである。
また、本発明では、実質的に繊維素材で実使用に耐える耐摩耗性を得るために、互いに絡合した極細繊維が皮革様シート状物の少なくとも一方の面を形成していることが重要である。これにより、天然皮革のような表面感を得ることができる。ここで、面を形成するとは、タテまたはヨコ方向の断面を観察した際に、層を形成していることが確認できることをいう。
また、本発明においては、極細繊維同士が相互に絡合した構造を有していることが、耐摩耗性を向上させるために必要である。従来の極細繊維からなる皮革様シート状物の大半は、極細繊維が集束した繊維束の状態で絡合した構造を有している。しかし、繊維束の状態で絡合した構造では、本発明の目的とする十分な耐摩耗性が得られない。なお、本発明の効果が損なわれない範囲で繊維束の状態で絡合した構造が含まれていてもよい。
平均単繊維繊度が上述の範囲にある、いわゆる極細繊維に用いられるポリマーは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等適宜用途に応じて使用することができるが、染色性や強度の点で、ポリエステル、ポリアミドであることが好ましく、海成分溶出時の湿潤状態で強力を保持しやすい点から、ポリエステルであることがさらに好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体およびジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって、極細繊維発生型繊維として用いることが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)、ポリトリメチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。
中でも、本発明では、最も汎用的に用いられているPETまたは、主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用することができる。
ポリアミドとしては、たとえばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12等のポリマーを用いることができる。
隠蔽性を向上させるため、極細繊維のポリマー中に酸化チタン粒子等の無機粒子を添加しても良く、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤等を目的に応じて添加しても良い。
また、本発明の皮革様シート状物は、極細繊維からなる不織布の他に、織編物または、織編物と平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの短繊維不織布(a)を含むことが、極細繊維発生時の伸び防止、または得られる皮革様シート状物にストレッチ性やドレープ性や表面品位などのを向上できるため好ましい。ここでいう織編物とは、織物または編物のいずれかのことである。織編物の組織は特に限定されるものではなく、織物であれば平織、綾織、朱子織等、編物の組織としては丸編、トリコット、ラッセルなどが挙げられる。
織物を構成する繊維としては、特に限定されるものではなく、公知の法により得られる、ポリエステル系繊維やポリアミド繊維などを用いることができるが、二種類以上のポリエステル系重合体がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維からなる織物を用いる事により、皮革様シート状物に優れたストレッチ性とドレープ性を付与できるため好ましい。
また、織物に前記サイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維をタテ糸またはヨコ糸のどちらか一方に使用し、他方には通常の繊維を使用するなども好ましい態様である。ここでいうポリエステル系重合体とは、例えばPET、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリマーである。また、二以上のポリエステルとは、物理的および/または化学的性質を異にする二種以上のポリエステルを用いることを意味する。すなわち、二種以上のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合されたとは、物理的および/または化学的性質を異にする二種以上のポリエステルが、繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合されていることを意味する。これにより、物理的または化学的要因によって、複合繊維に捲縮を発現させることができる。捲縮発現が容易である点で、熱収縮性の異なるポリエステルを2種以上使用することが好ましい。これにより、前記複合繊維に熱処理して収縮させることにより、容易に捲縮を発現させることができる。複合繊維に捲縮を発現させることにより、ドレープ性と伸長率に優れる皮革様シート状物が得られる。熱収縮性の異なるポリエステルとしては、例えば、ポリマーの重合度が異なるもの、異なるポリマーをブレンドしたものなどが挙げられる。本発明においては、特にドレープ性と伸長率に優れる皮革様シート状物が得られる点で、極限粘度が0.35〜0.55の低粘度ポリエステルと極限粘度が0.65〜0.85の高粘度ポリエステルとが複合された複合繊維が好ましい。この場合、一般に高粘度ポリエステルの方が、低粘度ポリエステルよりも、熱収縮性が高くなる。低粘度ポリエステルの極限粘度が0.35未満であると紡糸安定性が低下するため好ましくない。また低粘度ポリエステルの極限粘度が0.55を超えると、皮革様シート状物の反発感が低下するため好ましくない。また高粘度ポリエステルの極限粘度が0.85を超えると紡糸安定性が低下するため好ましくない。高粘度ポリエステルの極限粘度が0.65未満であると、熱収縮性が近くなるため、複合繊維の捲縮が発現が弱く皮革様シート状物の伸長率が低下するため好ましくない。ドレープ性と伸長率に優れる皮革様シート状物を得るために、低粘度ポリエステルと高粘度ポリエステルの極限粘度差は、0.20〜0.40の範囲が好ましい。なお、極限粘度[η]は、温度25℃においてオルソクロロフェノール溶液として測定した値を用いた。
また、二種以上のポリエステル系重合体の複合比率は、製糸性および捲縮を発現させた際の繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
複合形態としては、サイドバイサイド型および偏心芯鞘型のいずれでもよいが、ストレッチ性とドレープ性の他に反発感に優れる皮革様シート状物が得られる点でサイドバイサイド型が好ましい。
なお、このような複合繊維に撚りをかけずに使用した場合は、期待するストレッチ性やドレープ性が得られないため、撚りをかけた糸を用いることが好ましい。その際の撚係数は、7000〜20000であることが好ましく、9000〜17000であることがより好ましい。撚係数が7000未満では、複合繊維が収縮した際の捲縮発現が弱く、ストレッチ性が低下するため好ましくない。また、20000を超えると捲縮発現が抑制され、ストレッチ性の低下と、織物の柔軟性が低下するためドレープ性も低下してしまうため好ましくない。また、ニードルパンチ法により極細繊維を発生可能な短繊維と織物を一体化させる製造工程を含む際は、撚係数が7000未満では、ニードルのバーブに引っかかり、単糸切れや損傷しやすいため好ましく、撚係数が20000を超えると、単糸切れや損傷を抑制できるものの、織物の剛性が高くなり、得られる皮革様シート状物の柔軟性が低下するため好ましくない。
織物の目付は、40〜170g/mであることが好ましく、50〜150g/mであることがより好ましく、60〜120g/mであることがさらに好ましい。目付が40g/m未満であると、ニードルパンチで不織布と織物を一体化することによる伸び抑制効果が低下する傾向にあり、サイドバイサイド型や偏心芯鞘型の複合繊維からなる織物を高速流体処理で一体化させる際は、期待するストレッチ性やドレープ性が得られにくいため好ましくない。なお、170g/mを超えると得られる皮革様シート状物の柔軟性が低下するため好ましくない。
また、本発明の皮革様シート状物の一方の面が平均繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が互いに絡合している不織布から形成され、かつ織編物を含み、さらにもう一方の面が平均繊維繊度0.01〜0.05デシテックスの短繊維不織布(a)からなること、すなわち、極細繊維不織布、織編物、短繊維不織布(a)の順に積層して得られる皮革様シート状物は、表裏面が品位に優れる点で好ましい。短繊維不織布(a)の素材は特に限定されるものではないが、染色性やリサイクル性の点で極細繊維不織布や織編物と同一素材であることが好ましい。また、短繊維不織布(a)は高速流体処理により一体化されるため、織編物と一体化しやす点で、平均繊維長が0.1〜1cmの範囲にあることが好ましい。
次に本発明の皮革様シート状物の製造方法について述べる。本発明の皮革様シート状物の製造方法としては2通りの態様がある。すなわち、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて短繊維不織布(b)を得、この短繊維不織布(b)に極細化処理を行って極細短繊維不織布とした後、高速流体処理を施す方法と、平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて短繊維ウェブを得、この短繊維ウェブと織物を一体化させて繊維構造体(c)とし、この繊維構造体(c)を極細化して繊維構造体(d)とした後に、高速流体処理を施す方法である。まずは、短繊維不織布(b)および、繊維構造体(c)の製造方法を述べる。
本発明において、短繊維不織布(b)および、繊維構造体(c)を構成する、平均単繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の製造方法は特に限定されず、例えば海島型繊維を紡糸してから海成分を除去する方法、分割型繊維を紡糸してから分割して極細化する方法などの手段を例示することができる。これらの中で、本発明においては極細繊維を容易に安定して得ることができ、さらに後述する本発明の好ましい製造方法によって、本発明の皮革様シート状物の構造を容易に達成できる点で、海島型繊維または分割型繊維によって製造することが好ましく、さらには皮革様シート状物とした場合、同種の染料で染色できる同種ポリマーからなる極細繊維を容易に得ることができる点で、海島型繊維によって製造することがより好ましい。
ここでいう海島型繊維とは、2成分以上の成分を任意の段階で複合、混合して海島状態とした繊維をいい、この繊維を得る方法としては、特に限定されず、例えば(i)2成分以上のポリマーをチップ状態でブレンドして紡糸する方法、(ii)予め2成分以上のポリマーを混練してチップ化した後、紡糸する方法、(iii)溶融状態の2成分以上のポリマーを紡糸機のパック内で静止混練器などを用い混合する方法、(iv)特公昭44−18369号公報、特開昭54−116417号公報などの口金を用いて製造する方法、などが挙げられる。本発明においてはいずれの方法でも良好に製造することができるが、ポリマーの選択が容易である点で上記(iv)の方法が好ましく採用される。かかる(iv)の方法において、海島型繊維および海成分を除去して得られる島繊維の断面形状は特に限定されず、例えば丸、多角、Y、H、X、W、C、π型などが挙げられる。また用いるポリマー種の数も特に限定されるものではないが、紡糸安定性を考慮すると2〜3成分であることが好ましく、特に海1成分、島1成分の2成分で構成されることが好ましい。
海島型繊維で極細繊維を得る場合、その島成分が目的とする極細繊維になる。島成分に用いるポリマーは特に限定されず、繊維化が可能なものを適宜選択して使用することができるが、本発明の皮革様シート状物では、ポリエステルやポリアミドを使用することが好ましい。
また、本発明の皮革様シートの製造方法では、有機溶剤を使用しない皮革様シート状物を得ることを目的としているため、海成分として用いるポリマーは、島成分と相溶せず、島成分のポリマーよりも100℃以上の熱水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液などの水系の液体に対し溶解性、分解性の高い化学的性質を有する、すなわち、水系の液体により溶出可能な樹脂であることが必須となる。例えば海成分には、特開昭61-29120号公報、特開昭63−165516号公報、特開昭63−159520号公報、特開平1−272820号公報などに記載されている熱水可溶性ポリエステルなどの熱水可溶性ポリマーや5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸などを共重合したポリエステル、ポリ乳酸、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールなどを用いることができるが、紡糸性に優れる点で5−ナトリウムスルホイソフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。その5−ナトリウムイソフタル酸の共重合比率としては、処理速度、安定性の点から全酸性分に対し5モル%以上が好ましく、より好ましくは8モル%以上である。5モル%以上とすることで、例えば島成分としてPETを選択した場合、アルカリ水溶液による加水分解を行ったときの海成分と島成分との分解速度差により、選択的に海成分を除去することができる。また重合、紡糸、延伸のしやすさから20モル%以下が好ましく、より好ましくは15モル%以下である。また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加え、イソフタル酸を共重合させ、共重合ポリエステルを熱水可溶性とすることも好ましい態様である。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8〜15モル%、好ましくは10〜12.5モル%とし、さらにイソフタル酸を共重合することで、熱水可溶性とすることができる。この場合、イソフタル酸を5〜40%共重合させることにより、重合反応速度や乾燥性、熱水可溶性に優れるものが得られるため好ましい。本発明において好ましい組み合わせとしては、島成分にポリエチレンテルフタレート、海成分に5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合比が5〜20%の共重合ポリエステルを用いることである。これらのポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子などの無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤など、種々目的に応じて添加することもできる。
また、本発明では、後述する海成分を溶出し、極細繊維を発生させる際に、長さ方向の伸びが10%を超える場合は、繊維が緊張した状態となるため、後述する高速流体処理を行う際に、繊維の絡合しにくくなり高圧の水流処理が必要となることや、得られる皮革様シート状物の風合いが硬くなる傾向があるため、海成分溶出時の長さ方向の伸びを10%以下とすることが重要である。
海成分溶出時の長さ方向伸びを抑制するためには、海島型複合繊維における島成分の成分比が70〜99重量%であることが好ましい。これにより、海成分を溶出した際の強力低下を抑制でき、長さ方向の伸びを10%以下に抑えることが容易になる。また、海島型複合繊維の島成分同士の合流が起こりにくい点で島成分の成分比は、70〜90重量%がより好ましく、70〜80重量%がさらに好ましい。島成分が70%未満であると、海成分が除去された際の不織布の強力が低下し、工程張力による伸びが発生しやすいため好ましくなく、99重量%以上では島成分同士の合流が発生しやすいため好ましくない。
このような海島型複合繊維を、2500m/分以下の紡糸速度で紡糸した未延伸糸を引き取った後、湿熱もしくは乾熱またはその両者によって、1〜3段延伸することによって延伸糸を得ることが出来る。液浴延伸により繊維同士の膠着が発生する場合は、特開平9−250023号公報に記載されているような2段延伸法を好ましく採用することができる。
なお、本発明では、前記のようにして得る複合繊維の単繊維繊度は、ニードルパンチ時に十分な絡合性を得るため1〜8デシテックスが好ましく、2〜7デシテックスがより好ましく、3〜6デシテックスがさらに好ましい。
このような複合繊維を常法により捲縮付与、カットを行い短繊維とする。次いで、カードやクロスラッパー、ランダムウエバーを用いた乾式法や、抄紙法などの湿式法によって短繊維ウェブが得られるが、本発明では低目付から高目付けまで幅広い目付の短繊維ウェブを得られることから乾式法が好ましい。
このようにして得られた短繊維ウェブを用いて、短繊維不織布(b)および繊維構造体(c)を作成する。なお、水系の液体で処理し、海成分を溶出する際の長さ方向の伸びを10%以下とするには、(A)短繊維ウェブをニードルパンチにより十分に絡合させる方法、(B)短繊維ウェブと織物をニードルパンチにより十分に絡合一体化させる方法がある。
特に、海成分を溶出する際の伸びを抑制する目的として織物を短繊維ウェブと絡合一体化させる(B)の製造方法は、高い伸び抑制効果が得られるため好ましい。(B)の製造方法で用いる織物は特に限定されるものではなく、織物に用いる繊維には、PETを用いて、従来の方法による紡糸、延伸を行って得られる延伸糸や、2種類以上のポリエステル系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維、または2種類以上のポリエステル系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘型複合繊維である潜在捲縮糸などを用いることができる。このような、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特公昭63−42021号公報、特開平4−308271号公報、特開平11−43835号公報等に記載された方法を適用することができる。短繊維不織布(b)の海成分の溶出に用いる水系の液体がアルカリ性水溶液である場合、織物に用いる繊維がポリエステル系であると海成分溶出時に織物の繊維も減量されるため、繊維の強力減少や糸切れを防ぐため、単繊維繊度は2〜7デシテックスとすることが好ましい。
また、このようにして得られる繊維は、ニードルパンチによる単糸切れや損傷を抑制するため、撚りをかけた糸を用いることが好ましい。その際の撚係数は、7000〜20000であることが好ましく、9000〜18000であることがより好ましい。
なお、撚係数は以下の式で求めることができる。
撚係数K=T×D0.5
ここで、T:糸長さ1m当たりの撚数(回)
D:糸の繊度(デシテックス)
撚係数が7000未満では、織物の糸がニードルのバーブに引っかかり、単糸切れや損傷しやすいため好ましくなく、撚係数が20000を超えると、単糸切れや損傷を抑制できるものの、織物の柔軟性が低下してしまい、得られる皮革様シート状物も柔軟性が低いものとなるため好ましくない。
本発明では、前記の延伸糸やサイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合繊維を用い、(B)の製造方法で使用する織物、すなわち、短繊維ウェブと一体化させる織物を作製する。織物の製造方法は特に限定されるものではなく、必要とする組織に応じてそれに適した織機を使用することができる。織機としては、例えばエアージェット織機やウォータージェット織機、フライシャトル織機などが挙げられる。この際、織密度を下げすぎると、織物による補強効果が低下し、織密度を上げすぎるとニードルパンチで繊維が損傷しやすいため、タテ糸とヨコ糸間には適度に間隔が開いていることが好ましい。このスペースはニードルパンチの際に使用するニードルにより適宜変更することができる。
また、織物の目付は、海成分を溶出した際の長さ方向の伸び抑制効果と柔軟な皮革様シートが得られる点で40〜170g/mの範囲のものを用いることが好ましい。短繊維ウェブと織物の重ね方としては、(i)短繊維ウェブ/織物とする重ね方、(ii)(i)をニードルパンチしたものを2枚用いて、織物/短繊維ウェブ/短繊維ウェブ/織物とする重ね方、(iii)織物/短繊維ウェブ/織物とする重ね方があり、かかる(i)の方法で重ねた場合には、短繊維ウェブの面からのみニードルパンチする事で短繊維ウェブ面に織物を構成する複合繊維の露出を抑制することができる。このように重ねた短繊維ウェブと織物にニードルパンチを行うことで、短繊維同士を絡合させると共に、短繊維を織物の厚み方向に貫通させ、短繊維ウエブと織物を絡合一体化させることができる。
また、水系の液体で処理し、海成分を溶出する際の長さ方向の伸びを10%以下とするには、前記(A)または(B)のいずれかの製造方法により、長さ方向の10%伸長時の応力を200〜400N/cmとすることにより達成することができる。短繊維不織布(b)は製造方法(A)により得ることができる。例えば、海島型複合繊維の島成分が90重量%である、単繊維繊度が3.3デシテックス、繊維長52mmの複合繊維からなる目付300g/mの短繊維ウェブをワンバーブのニードルでパンチする場合、ニードルパンチ数は2000〜4500本/cmであることが好ましく、2400〜3500本/cmであることがさらに好ましい。このようなニードルパンチ条件で、見掛け密度を0.25〜0.45とすることは、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである短繊維不織布(b)を得やすく、海成分溶出時に水系の液体が浸透しやすい点で好ましい。
また、繊維構造体(c)は、製造方法(B)により得ることができる。例えば、単繊維繊度が3.3デシテックス、繊維長52mmの複合繊維からなる、目付が150g/mの短繊維ウェブとタテ糸にS撚りとZ撚りの55デシテックスのPET延伸糸からなるS撚り2500T/m(撚係数18540)の糸とZ撚り2500T/m(撚係数18540)の糸を交互に配し、ヨコ糸にはタテ糸と同じS撚りの糸を用いた、織密度70×70本/2.5cm、目付55g/mの平織物をワンバーブのニードルでパンチする際は、短繊維ウェブと同士の絡合および短繊維ウェブと織物が十分に絡合し、短繊維ウェブ面に織物の単繊維の露出を抑制できる点で、ニードルパンチ数は800〜4000本/cmがであることが好ましく、ニードルパンチ数が1000〜3500本/cmであることはより好ましく、1200〜3000本/cmであることがさらに好ましい。また、針伸度としては少なくとも、ニードルのバーブ部が織物の表側から裏側まで貫通するような針深度で行うことが好ましい。このようなニードルパンチ条件で、見掛け密度を0.15〜0.4g/cmとすることにより、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである繊維構造体(c)を得ることができる。
次に、前記の方法により得られた短繊維不織布(b)または繊維構造体(c)を乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、高密度化することが好ましい。収縮方法は特に限定されるものではなく、例えば、拡布状で85〜98℃の熱水浴に2〜3分浸けるなどにより収縮させることができる。これにより、皮革様シート状物にした際、緻密な立毛を得ることができ表面品位を向上させることができる。また、この収縮処理によって、水系の液体による処理時の寸法変化を抑制することができるため好ましい態様である。また、収縮の際に熱水浴に界面活性剤を入れ、付着している油剤を落とすことは、次に行う水系の液体の浸透性を向上させ、シート状物内に均一に含ませることができるため好ましい。
次いで、水系の液体を含浸した後に加熱処理し、短繊維ウェブの海成分を溶出する極細化処理を行う。
極細化処理の方法としては、拡布状態にて、海成分を溶出できる水系の液体、例えば、水、pH8〜14のアルカリ性水溶液、pH1〜6の酸性水溶液などを含浸した後、乾熱または湿熱で熱処理することにより、短繊維不織布(b)または繊維構造体(c)中の海成分の溶出を行う。その後、後述する高速流体処理により極細繊維を絡合させ、単糸状で存在する極細繊維と束状に収束した極細繊維が混在する状態とすることにより、表面に変化のある色調を有する皮革様シート状物を得ることができる。
また、極細化処理の際に海成分を完全に溶出せず、短繊維不織布(b)または繊維構造体(c)に含まれる海成分の85〜98重量%にとどめることで、島成分が部分的に海成分(水系の液体により溶出可能な樹脂)によって9mmに1箇所以上の頻度で一部拘束された構造のものが得られ、さらに変化に富んだ色調を得ることができるためより好ましい。前記範囲のpHを達成するアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属塩または、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の水溶液が挙げられる。また、酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸、氷酢酸、リンゴ酸、酒石酸などがあげられる。中でも、水酸化ナトリウムを用いることは取り扱い性と価格の点から好ましい。
海成分溶出の際、水系の液体の含浸量は、短繊維不織布(b)または繊維構造体(c)内に均一に含ませることができ、含浸量のコントロールが容易な点で、シート状物に対して100〜250重量%とすることが好ましい。含浸量のコントロール方法は特に限定されるものではなく、マングルによる圧搾などの方法でコントロールすることが可能である。なお、水系の液体を含浸する際の温度は、含浸する際に海成分の溶出を抑えることが容易である点で40℃未満であることが好ましい。
また、アルカリ性水溶液を用いる場合は、浸透性と海成分を溶出させるために必要な量から、アルカリ成分が10〜200g/lの濃度で含まれていることが好ましい。アルカリ成分濃度が10g/l未満であると減量効率が低下し、200g/lを超えるとシート状物内への浸透速度が低下するため好ましくない。
また、水系の液体が界面活性剤を含むことは、浸透性が向上するため好ましい態様であり、界面活性剤は5〜30g/lの濃度で含まれていることが好ましい。また、アルカリ水溶液の反応効率を向上できる点で、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアミンや減量促進剤が含まれていても良い。
例えば、海成分がPETである場合、短繊維不織布(b)中の海成分を完全に溶出するには海成分の100〜105重量%を溶出できる量のアルカリ性水溶液を上述の条件で含浸させ熱処理を行うことにより達成することができる。また、9mmに1箇所以上の頻度で極細繊維が未脱海部分で一部拘束された構造を有する極細繊維不織布を得るには、短繊維不織布(b)に含まれる海成分の85〜98重量%を溶出することができる量のアルカリ性水溶液を上述の条件で含浸させ熱処理を行うことにより達成することができる。極細繊維が未脱海部分で拘束された箇所の頻度は、海成分の溶出量により調整することができ、海成分の溶出量を98%とすれば、およそ9mmに平均1箇所程度の頻度となり、海成分の溶出量を減らすことにより拘束箇所の頻度を多くすることができる。アルカリ性水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である場合は、PETと水酸化ナトリウムが100%の効率で反応すると、水溶液中に含まれる水酸化ナトリウム1gでPETをおよそ2.4g溶出することができるので、実際の反応効率とアルカリ濃度から溶出量は概算可能である。
また、繊維構造体(c)では、シート状物内に含まれる織物も短繊維ウェブと同素材のものと考え、海成分の85〜98重量%または100〜105重量%を溶出することができる量の水系の液体を短繊維不織布(b)と同様の条件で含浸させ、熱処理を行うことにより、極細繊維が脱海された構造体(d)または未脱海部分で一部拘束された構造を有する繊維構造体(d)を得ることができる。また、繊維構造体(d)の織物がポリエステル系繊維で構成されており、水系の液体がアルカリ性水溶液であれば織物が減量されることとなり、柔軟性向上の効果が得られる。
また、海成分を溶出する際、長さ方向の伸びを抑制するためには、熱処理の際の加熱ゾーンを可能な限り短くし、反を通すロール数を削減することでも達成できる。海成分溶出時の長さ方向の伸びを10%以下とするには、90℃以上のスチームとマイクロ波による熱処理を行い、短時間で海成分を溶出することにより達成することが容易となるため好ましい。
なお、熱処理する際のシート状物搬送の駆動方式がロールである場合は、工程張力を軽減できる点でシート状物前後のロールが独立で駆動する方式が好ましい。
水系の液体による処理後は、残留する分解物や薬剤を除去するために洗浄し、乾燥を行う。洗浄の方法は特に限定されるものではなく、水浴や温水浴によって抽出することができる。また、海成分を溶出後にネットなどのコンベア上に乗せ、水流を当てることにより洗浄することはタテ方向に張力をかけず洗浄することができるため好ましい。洗浄の際に、弱酸性や弱アルカリ性の水溶液により中和したり、分解物などの除去が容易となるように界面活性剤を入れても良い。なお、必要であれば海成分の溶出前または海成分を溶出し極細繊維を発生させた後に、厚み方向に垂直に2枚以上にスプリット処理して、目付けの調整を行うことができる。海成分の溶出後の厚さが薄くスプリット処理が困難な場合は、短繊維不織布(b)または繊維構造体(c)の状態でスプリット処理した後に海成分を溶出することが好ましい。スプリット処理の方法としては特に限定されるものではなく、スライス機などを用いて行うことができる。また、必要であれば、厚み方向に垂直に2枚以上にスプリット処理を行うことができる。
その際、工程通過性を向上させるため、水溶性の樹脂を含浸して繊維構造体の硬度を上げることが好ましい。また、水溶性の樹脂の中でも、以降の工程で行う高速流体処理で脱落させることが容易なものが好ましい。このような樹脂としては例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVA)を例示することができる。
前記の工程により得られたシート状物のままでは、マーチンデール法における摩耗試験において、20000回摩耗した時の摩耗減量を8mg以下とすることが困難となり、また、使用上の耐久性に欠けるため、高速流体処理を行うことが必要である。高速流体処理を行うことで、極細繊維が互いに絡合した構造とすることができ、実用に耐える耐久性を持つ皮革様シート状物を得ることができる。
また、高速流体処理の際、短繊維不織布(b)の海成分を溶出して得られた極細繊維不織布に織編物を重ねて処理することにより、極細繊維不織布単体では得られないストレッチ性やドレープ性などの性能を皮革様シート状物に付与することができるため好ましく、あらかじめ織編物と短繊維不織布(a)を重ねて高速流体処理を行ったシート状物と極細繊維不織布を重ねて高速流体処理することは、ストレッチ性やドレープ性などの性能を付与できる他、極細繊維不織布の裏面に織編物が露出せず、皮革様シート状物の表面品位を高めることができるためさらに好ましい。なお、ストレッチ性よりもドレープ性を優先させる場合は、編物を用いることが好ましく、編物の組織としては丸編、トリコット、ラッセルなどが挙げられる。
高速流体処理で極細繊維不織布と重ねる織編物としては特に限定されるものではないが、ストレッチ性やドレープ性を付与するには、繊維構造体(c)を作製するために用いる織物で述べた、サイドバイサイド型や偏心芯鞘型の複合繊維からなる繊維を用い、撚係数が7000〜20000で撚糸された糸からなる織編物が好ましい。さらに、この織編物を液流染色機により100〜130℃でリラックス処理し、捲縮を発現させた織編物を用いることは、皮革様シート状物に高度なストレッチ性とドレープ性を付与することができるためさらに好ましい。
また、高速流体処理の際に用いる短繊維不織布(a)は特に限定されるものではないが、平均単繊維繊度が0.01〜0.5デシテックスであると、得られる皮革様シート状物の表面品位が優れるため好ましい。このような短繊維不織布(a)の製造法は特に限定されないが、例えば平均繊維長0.1〜1cm、平均単繊維繊度が0.01〜0.5デシテックスの繊維を水溶性樹脂などを含む水中で叩解し、0.0001〜0.1%程度の濃度で分散させた分散液を金網などに抄造して製造することができる。なお、織編物上に抄造ウェブを一挙に形成させる場合は、金網上に織編物を置き、その上から抄造する方法によって製造することができる。
高速流体処理としては、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチ処理を行うことが好ましい。この時、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流は、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させることで得られる。かかる処理は、異物によるノズル詰まりを防ぎ、効率的な絡合性と良好な表面品位を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.06〜0.12mm、間隔は1mm以下がより好ましい。これらのノズルスペックは、複数回処理する場合、すべて同じ条件にする必要はなく、例えば大孔径と小孔径のノズルを併用することも可能であるが、少なくとも1回は上記構成のノズルを使用することが好ましい。
極細繊維同士を高度に絡合させ、引張強力、引裂強力、耐摩耗性など実使用に耐える耐久性を向上させるためには、流体圧力10MPa以上の圧力で処理することが重要であり、15MPa以上であることが好ましい。また上限は特に限定されないが、圧力が上昇する程コストが高くなり、また、低目付不織布の場合は厚みが不均一になりやすく、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは40MPa以下であり、より好ましくは30MPa以下である。この際、極細繊維不織布と織編物を重ねて処理することで極細繊維と織編物を絡合させることができ、一体化したシート状物を得ることができる。この際、前記サイドバイサイド型や偏心芯鞘型に複合された織物を用いることにより、極細繊維不織布単体よりもタテ方向の伸長率を向上させることができ、タテ方向の伸長率5%以上の皮革様シート状物を得やすいため好ましい。
なお、織編物と短繊維不織布(a)を流体圧力3MPa〜10MPaの圧力で処理し、あらかじめ織編物と短繊維不織布(a)を絡合させたものを作製し、織編物の側が極細繊維不織布に接するように重ねて、流体圧力10MPa〜40MPaの圧力で処理することで、極細繊維不織布と織編物と短繊維不織布(a)からなる皮革様シート状物を得ることができる。また、繊維構造体(d)の場合も流体圧力10MPa〜40MPaの圧力で処理することで極細繊維同士を高度に絡合させることができ、耐久性を向上させることが可能である。
ウォータージェットパンチ処理の際には、シート状物の厚さ方向に均一な絡合を達成する目的および/または表面の平滑性を向上させる目的で、好ましくは多数回繰り返して処理を行う。その際、スプリット処理でPVA樹脂を使用していた場合は、極細繊維が互いに絡合し、皮革様シート状物の耐摩耗性の向上効果が得られるため、PVA樹脂のべたつきが感じられなくなってから、極細繊維の面だけでなく、シート状物の両面を複数回繰り返して処理を行うことが好ましい。この時の処理は、極細繊維面の表面品位を良くすることができる点で、極細繊維面を複数回処理した後、裏面を複数回処理することが好ましい。また、ウォータージェットパンチ処理の圧力は、処理する不織布の目付によって適宜選択し、高目付のもの程高圧力とすることが好ましい。
通常、極細繊維発生型繊維から得た極細繊維の場合、極細繊維が集束した極細繊維束が絡合しているものが一般的であるが、このような処理を行うことにより、極細繊維束による絡合がほとんど観察されない程度にまで極細繊維同士が絡合した繊維構造体を得ることができる。
なお、ウォータージェットパンチ処理を行う前に、水への浸漬処理を行ってもよい。さらに表面の品位を向上させるために、ノズルヘッドとウォータージェットパンチ処理を行うシート状物を相対的に移動させる方法や、絡合後のシート状物をノズルの間に金網などを挿入して散水処理するなどの方法を行うこともできる。
ウォータージェットパンチ処理後は、スエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物とするため、サンドペーパーやブラシなどによる立毛処理を行うことが好ましい。かかる立毛処理は後述する染色の前または後に行うことができるが、染色後に行うとサンドペーパーやブラシに着色した繊維が付着するため、染色前に行うことが好ましい。
また、皮革様シート状物の耐摩耗性をさらに向上させるため、ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーをを付与することができる。該バインダーは、前記の立毛処理前または立毛処理後のいずれの段階で付与しても良いが、表面の平滑さが得られる点で立毛処理後に付与することが好ましく、立毛処理後にバインダーを付与した状態でさらにサンドペーパーやブラシで立毛処理を行うことがより好ましい。ポリウレタン等の高分子弾性体からなるバインダーを付与する手段としては、パッド法、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法等、適宜選択することができる。
次いで、染色することによりスエード調やヌバック調の立毛を有した皮革様シート状物を得ることができる。染色方法は特に限定されるものではなく、用いる染色機としても、液流染色機、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機等いずれでもよいが、得られる皮革様シート状物の風合いが優れる点で液流染色機を用いて染色することが好ましい。染色の条件は特に限定されないが、液流染色機を用い、100〜140℃で10〜60分間行うことが好ましい。
上述した方法により、本発明の表面に変化のある色調を有する皮革様シート状物を得ることができる。
また、本発明の皮革様シート状物の耐摩耗性をさらに向上させるため、微粒子を付与することができる。微粒子の材質は水に不溶であれば特に限定されるものではなく、例えばシリカやコロイダルシリカ、酸化チタン、アルミニウム、マイカ等の無機物質や、メラミン樹脂等の有機物質を例示することができる。
微粒子の平均粒子径は、洗濯耐久性に優れ、耐摩耗性性向上効果が得られる点で、好ましくは0.001〜30μmであり、より好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。なお、微粒子の平均粒子径は個々の材質やサイズに応じて適した測定方法、例えばBET法やレーザー法、動的散乱法、コールター法などを用いて測定することができる。本発明においては、特にBET法を用いて求めた体積(質量)平均粒子径が好ましい。
これらの微粒子の含有量は、皮革様シート状物の風合いが硬くならず、耐摩耗性向上効果が得られる点で、皮革様シート状物の0.01〜10重量%が好ましく、0.02〜5重量%がより好ましく、0.05〜1重量%がさらに好ましい。
微粒子を付与する手段としては、パッド法、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法等、適宜選択することができる。
また、柔軟な風合いとなめらかな表面タッチを得るために、本発明の皮革様シート状物は柔軟剤を含むことが好ましい。柔軟剤としては、織編物に一般的に使用されているものを繊維種に応じて適宜選択することが好ましい。例えば染色ノート第23版(発行所 株式会社色染社、2002年8月31日発行)において、風合い加工剤、柔軟仕上げ剤の名称で記されているものを適宜選択することができる。その中でも柔軟性の効果が優れる点でシリコーン系エマルジョンが好ましく、アミノ変成やエポキシ変成されたシリコーン系エマルジョンがより好ましい。これらの柔軟剤が含まれると耐摩耗性は低下する傾向があるため、この柔軟剤の量と上記の微粒子の量は、目標とする風合いと耐摩耗性のバランスを取りながら、適宜調整することが好ましい。従って、その量は特に限定されるものではないが、風合いと耐摩耗性がバランスし、べたつき感を抑えられる点で皮革様シート状物の0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
皮革様シート状物に柔軟剤を付与する手段としては、パッド法、液流染色機やジッガー染色機を用いる方法、スプレーで噴射する方法等、微粒子付与の際と同様に適宜選択することができる。コストの点からは微粒子と柔軟剤は同時に付与することが好ましい。なお、微粒子や柔軟剤は、好ましくは染色後に付与する。染色前に付与すると、染色時の脱落により効果が減少する場合や、染色ムラが発生する場合があるため好ましくない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)撚り係数K
糸の撚り係数Kを、下式により求めた。
撚係数K=T×D0.5
ここで、T:糸長さ1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(デシテックス)
ここで、糸長さ1m当たりの撚数Tとは、電動検撚機にて90×10−3cN/dtexの荷重下で解撚し、完全に解撚したときの解撚数を解撚した後の糸長で割った値である。
(2)目付、厚さ、見掛け密度
目付は、JIS L 1096 8.4.2(1999)に記載された方法で測定した。また、厚みをダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”(登録商標))により測定し、目付の値を厚みの値で割って見掛け密度を求めた。
(3)繊度の測定
不織布の断面を光学顕微鏡にて観察した。繊維断面を100個ランダムに選んで断面積を測定し、100個の繊維断面積の数平均を求めた。求められた繊維断面積の平均値と繊維の比重から、繊度を計算により求めた。なお、繊維の比重はJIS L 1015 8.14.2(1999)に基づいて測定した。
(4)繊維長の測定
不織布の任意の3箇所から、それぞれ繊維を100本抜き出して繊維長を測定した。測定した300本分の繊維長の数平均を求めた。
(5)10%伸長時の応力
JIS L 1913(1998)6.3.1に準じて、シート状物を10%伸長した際の荷重を測定した(つかみ間隔は20cmである)。得られた測定値と測定に使用した試料の幅と厚みから、以下の式により求めた。
10%伸長時応力(N/cm)=10%伸長した際の荷重(N)/試料幅(cm)/厚み(cm)
(6)長さ方向の伸び
アルカリ水溶液含浸前シート状物の全長をL0とし、海成分溶出後シート状物の全長をL1として、以下の式により求めた。
長さ方向の伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
(7)タテ方向の伸長率
JIS L 1096(1999)8.14.1 A法(定速伸長法)において、柔軟剤および帯電防止剤付与後の皮革様シート状物の伸長率を測定した(つかみ間隔は20cmである)。
(8)極細繊維の拘束構造
皮革様シート状物の極細繊維が形成する面において一辺3mmの正方形の観察区域を30箇所以上ランダムに選び、該観察区域をSEMにより150〜500倍で表面を観察した際に、極細繊維同士が樹脂によって拘束されている部分が平均で1箇所以上確認できることとした。なお、平均値は確認できた全観察区域での拘束部分総数を観察区域数で除した算術平均値である。
(9)水系の液体への溶出性
SEMにより極細繊維が接合されている部分が確認された試料片を、80℃、50g/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に20分間浸漬後、SEMにより同様の倍率で観察した際に、接合部が確認できない場合、水系の液体により溶出可能な樹脂とした。
(10)色調
15人に皮革様シート状物の色調の官能評価を行ってもらい、色調が単調と感じた人よりも色調に変化があると感じた人が多ければ、色調に変化がある、逆の場合を単調な色調とした。
(11)マーチンデール摩耗試験
皮革様シート状物から、直径3.8cmの試験片を採取し、重量を測定した。JIS L 1096(1999)8.17.5 E法(マーチンデール法)家具用荷重(12kPa)に従って、極細繊維が形成している面をマーチンデール摩耗試験機のピリングポジション設定(THREE DRIVE ROLLERS=POSITION B)にて耐摩耗性試験を実施した。20000回摩擦したところで試験機を止め、試験前に対する試験後の試験片の重量減を評価した。
(12)風合い
15人に皮革様シート状物を風合いの官能評価を行ってもらい、硬いと感じた人よりも柔らかいと感じた人が多ければ、風合いが柔らかい、逆の場合を風合いが硬いとした。
製造例1(短繊維不織布(a)の製造)
0.1デシテックスのPET繊維を長さ0.5cmにカットし、抄造法により20g/mの短繊維不織布(a)を得た。
製造例2(編物(1)の製造)
極限粘度が0.40のPET100%からなる低粘度成分と、極限粘度が0.75のPETからなる高粘度成分とを重量複合比50:50でサイドバイサイドに貼りあわせて紡糸および延伸し、56デシテックス12フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで1500T/m(撚係数11225)の撚りをかけ、65℃でスチームセットを行った後、44ゲージ、77g/mのダブル丸編を作成し得た。この編物を液流染色機にて、110℃で20分間リラックス処理を行い、目付が103g/mの編物(1)を得た。
製造例3(織物(1)の製造)
極限粘度が0.66のPET成分を紡糸および延伸し、56デシテックス48フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで800T/m(撚係数5987)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った。これをタテ糸とヨコ糸に用い、織組織を平織とし、93×64本/2.54cmの織密度で織物を作製し、57g/mの織物(1)を製造した。
製造例4(織物(2)の製造)
極限粘度が0.66のPET成分を紡糸および延伸し、56デシテックス48フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った。同様に、Z撚りで2400T/m(撚係数17960)で撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った糸を作製した。タテ糸に、S撚りの糸とZ撚りの糸を交互に配し、ヨコ糸にS撚りの糸を用い、織組織を平織とし、93×64本/2.54cmの織密度で織物を作製し、60g/mの織物(2)を製造した。
製造例5(織物(3)の製造)
極限粘度が0.40のPET100%からなる低粘度成分と、極限粘度が0.75のPETからなる高粘度成分とを重量複合比50:50でサイドバイサイドに貼りあわせて紡糸および延伸し、56デシテックス12フィラメントの複合繊維を得た。これをS撚りで2400T/m(撚係数17960)の撚りをかけ、75℃でスチームセットを行った。この糸をタテ糸、ヨコ糸に用い、織組織を平織とし、織密度が93×64本/2.54cm、57g/mの織物(3)を作製した。
実施例1
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてPET70部からなる平均単繊維繊度2.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が274g/mの短繊維ウェブを作製した。得られた短繊維ウェブを1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が360g/m、厚み1.1mm、繊維見掛け密度0.341g/cmの短繊維不織布(b)を得た。この短繊維不織布(b)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、263N/cmであった。
次に、この短繊維不織布(b)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向5.5%、ヨコ方向に14.1%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この短繊維不織布(b)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを100g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(b)に対して130重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに95℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、極細繊維不織布を得た。この際の長さ方向の伸びは9.5%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.04デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。次いでこの極細繊維不織布に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを極細繊維不織布に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した極細繊維不織布を、0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、0.08mmの孔径で、0.4mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、極細繊維不織布の裏面を流体圧力15MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維面は極細繊維が単繊維状に絡合した部分と、繊維束の状態のものが混在した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後、表面をサンドペーパーにて立毛処理をした。立毛処理後、水系ウレタン樹脂(“エバファノール AP12”日華化学株式会社製)とマイグレーション防止剤(“ネオステッカー N”日華化学株式会社製)を含む水溶液に浸漬し、マングルで液を絞った後、130℃で2分間乾燥を行った。乾燥後、重量を測定した結果、水系ウレタン樹脂付与前に比べ4%重量が増加していた。乾燥後に表面を、さらにサンドペーパーにて立毛処理をした。
次いで、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した後、柔軟剤(“ノニオン系柔軟剤“エルソフト N−500コンク”一方社油脂工業株式会社製)と帯電防止剤(“ナイスポール FL” 日華化学株式会社)を含む水溶液に浸積し、マングルで絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.040デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の極細繊維面には、単繊維状で絡合している部分と繊維束の状態の部分があり、色調に変化を持つものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ21.5mmであり、また、タテ方向の伸長率が6.1%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は3.8mgであり、風合いも柔らかいものであった。
実施例2
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてPET70部からなる平均単繊維繊度2.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が274g/mの短繊維ウェブを作製した。得られた短繊維ウェブを1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が360g/m、厚み1.1mm、繊維見掛け密度0.341g/cmの短繊維不織布(b)を得た。この短繊維不織布(b)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、263N/cmであった。
次に、この短繊維不織布(b)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向5.5%、ヨコ方向に14.1%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この短繊維不織布(b)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを100g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(b)に対して112重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、極細繊維不織布を得た。この際の長さ方向の伸びは9.3%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.043デシテックスであり、未脱海部分で一部拘束された構造を有するものであった。、
次いでこの極細繊維不織布に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した極細繊維不織布を、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、極細繊維不織布の裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後、表面をサンドペーパーにて立毛処理をした。さらに、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した後、柔軟剤(商品名“エルソフト”N−500コンク、一方社油脂工業株式会社製)とコロイダルシリカ微粒子(商品名“アルダック”SP−65、 一方社油脂工業株式会社製)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカの含有量が0.1%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.044デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の表面は、9mmに平均3.3箇所の頻度で極細繊維が樹脂により一部拘束されており、色調に変化を持つものであった。なお、拘束している樹脂はアルカリ性水溶液により溶出可能なものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ21.5mmであり、また、タテ方向の伸長率が5.4%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は2.4mgであり、風合いも柔らかいものであった。
実施例3
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル10部、島成分としてPET90部からなる平均単繊維繊度3.3デシテックス、70島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が300g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブを実施例2と同様にニードルパンチ処理を行い、目付が360g/m、厚み1.35m、繊維見掛け密度0.267g/cmの短繊維不織布(b)を得た。この短繊維不織布(b)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、240N/cmであった。
次に、この短繊維不織布(b)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向6.0%、ヨコ方向に12.0%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この短繊維不織布(b)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを40g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(b)に対して110重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに95℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、極細繊維不織布を得た。この際の長さ方向の伸びは7.5%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.043デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。
次いでこの極細繊維不織布に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した極細繊維不織布を、0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、次いで、0.08mmの孔径で、0.4mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、極細繊維不織布の裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後は、実施例1と同様の処理を行い、平均繊度が0.040デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造の皮革様シート状物を得た。また、該皮革様シート状物の極細繊維面には、単繊維状で絡合している部分と繊維束の状態の部分があり、色調に変化を持つものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ22.2mmであり、また、タテ方向の伸長率が5.9%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は4.5mgであり、風合いも柔らかいものであった。
実施例4
製造例1の短繊維不織布(a)と製造例2の編物(1)を重ね、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力10MPaにて1回のウォータージェットパンチ処理を行い、短繊維不織布(a)と編物(1)が絡合したシートを得た。このシートの織物面に実施例2のスプリット処理後の極細繊維不織布を重ね、同様のウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力10MPaの圧力にて極細繊維不織布の面から3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、極細繊維不織布の裏面の短繊維不織布(a)面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。以降の起毛処理、染色、柔軟剤と微粒子の付与を実施例2と同様に行い、皮革様シート状物を得た。
この皮革様シート状物は、平均繊度が0.044デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の表面は、9mmに平均3.1箇所の頻度で極細繊維が海成分により一部拘束され、色調に変化を持つものであった。なお、拘束している樹脂はアルカリ性水溶液により溶出可能なものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ21.5mmであり、また、タテ方向の伸長率が7.2%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量も2.8mgであり、風合いも柔らかいものであった。
比較例1
ウォータージェットパンチを行わない以外は実施例2と同様にして作製したところ、染色により極細繊維が脱落し、皮革様シート状物を得ることができなかった。
比較例2
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル45部、島成分としてPET55部からなる平均単繊維繊度3.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が268g/mの短繊維ウェブを作製した。得られた短繊維ウェブを1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が351g/m、厚み1.0mm、繊維見掛け密度0.342g/cmの短繊維不織布(b)を得た。この短繊維不織布(b)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、260N/cmであった。
次に、この短繊維不織布(b)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向5.0%、ヨコ方向に13.5%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この短繊維不織布(b)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを150g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(b)に対して130重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、極細繊維不織布を得た。この際の長さ方向の伸びは16.5%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.043デシテックスであり、未脱海部分で一部拘束された構造を有するものではなかった。
次いでこの極細繊維不織布に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した極細繊維不織布を、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、極細繊維不織布の裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後、表面をサンドペーパーにて立毛処理をした。さらに、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した後、柔軟剤(商品名“エルソフト” N−500コンク、一方社油脂工業株式会社製)とコロイダルシリカ微粒子(商品名“アルダック”SP−65、 一方社油脂工業株式会社製)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカの含有量が0.1%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.044デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であったが、皮革様シート状物の表面は、極細繊維が海成分により一部拘束された部分が存在せず(9mmに0箇所)、単調な色調のものであった。また、極細繊維の平均繊維長を測定したところ22.5mmであり、タテ方向の伸長率が3.8%と低く、風合いが硬いものであった。なお、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は1.8mgであった。
実施例5
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてPET70部からなる平均単繊維繊度2.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が274g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブの両面に製造例4で作製した織物(2)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が472g/m、厚み1.52mm、繊維見掛け密度0.311g/cmの繊維構造体(c)を得た。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、355N/cmであった。
次に、この繊維構造体(c)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向3.0%、ヨコ方向に8.5%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを87g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(c)に対して130重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは5.3%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.044デシテックスであり、未脱海部分で一部拘束された構造を有するものであった。次いでこの繊維構造体(d)に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した繊維構造体(d)の極細繊維不織布面を、0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後、表面をサンドペーパーにて立毛処理をした。さらに、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron(登録商標) Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した後、柔軟剤(商品名“エルソフト”N−500コンク、一方社油脂工業株式会社製)とコロイダルシリカ微粒子(商品名“アルダックSP−65、一方社油脂工業株式会社製)を含む水溶液に浸積し、コロイダルシリカの含有量が0.1%となるように絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.045デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の表面は、9mmに平均2.5箇所の頻度で極細繊維が樹脂により一部拘束されており、色調に変化を持つものであった。なお、拘束している樹脂はアルカリ性水溶液により溶出可能なものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ26.5mmであり、部分的に色調に変化を持つものであった。また、タテ方向の伸長率が6.3%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は3.1mgであり、風合いも柔らかいものであった。
実施例6
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてPET70部からなる平均単繊維繊度2.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が274g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブの両面に製造例5で作製した織物(3)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が468g/m、厚み1.5mm、繊維見掛け密度0.312g/cmの繊維構造体(c)を得た。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、340N/cmであった。
次に、この繊維構造体(c)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向5.3%、ヨコ方向に12.4%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを87g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、繊維構造体(c)に対して130重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは7.4%であった。
また、繊維構造体(d)は、平均単繊維繊度0.043デシテックスであり、未脱海部分で一部拘束された構造を有するものであった。以降のスプリット処理、ウォータージェットパンチ処理、起毛処理、染色、柔軟剤と微粒子の付与を実施例5と同様に行い、皮革様シート状物を得た。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.045デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の表面は、9mmに平均2.7箇所の頻度で極細繊維が樹脂により一部拘束されており、色調に変化を持つものであった。なお、拘束している樹脂はアルカリ性水溶液により溶出可能なものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ25mmであった。また、タテ方向の伸長率が7.4%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は3.3mgであり、風合いも柔らかいものであった。
比較例3
実施例5の織物(製造例4で作製した織物(2))を製造例3で作成した織物(1)に変えた以外は同様に作成したところ、短繊維ウェブと織物をニードルパンチで絡合一体化した際、織物の損傷が激しく、皮革様シート状物を得ることができなかった。
実施例7
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル10部、島成分としてPET90部からなる平均単繊維繊度3.3デシテックス、70島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が270g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブの両面に製造例4で作製した織物(3)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、3500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が466g/m、厚み1.50mm、繊維見掛け密度0.307g/cmの繊維構造体(c)を得た。これを、95℃に加温した重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥した。その際、タテ方向6.0%、ヨコ方向に10.4%収縮させた。その後、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、210N/cmであった。
この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを40g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、繊維構造体(c)に対して110重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは9.6%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.039デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。次に、繊維構造体(d)の極細不織布面を0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。さらに、0.08mmの孔径で、0.4mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、極細繊維不織布面の裏面を流体圧力15MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維面は極細繊維が単繊維状に絡合した部分と、繊維束の状態のものが混在した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後、表面をサンドペーパーにて立毛処理をした。立毛処理後、水系ウレタン樹脂(“エバファノール AP12”日華化学株式会社製)とマイグレーション防止剤(“ネオステッカー N”日華化学株式会社製)を含む水溶液に浸漬し、マングルで液を絞った後、130℃で2分間乾燥を行った。乾燥後、重量を測定した結果、水系ウレタン樹脂付与前に比べ4%重量が増加していた。乾燥後に表面を、さらにサンドペーパーにて立毛処理をした。
次いで、該繊維構造体を液流染色機にて“Sumikaron Blue S−BBL200”(住化ケムテックス(株)製)を用い20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色した後、柔軟剤(“ノニオン系柔軟剤“エルソフト N−500コンク”一方社株式会社製)と帯電防止剤(“ナイスポール FL” 日華化学株式会社)を含む水溶液に浸積し、マングルで絞った後、ブラッシングしながら100℃で乾燥させた。
このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.039デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の極細繊維面には、単繊維状で絡合している部分と繊維束の状態の部分があり、色調に変化を持つものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ20.5mmであり、また、タテ方向の伸長率が8.5%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は3.8mgであり、風合いが柔らかいものであった。
実施例8
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル10部、島成分としてPET90部からなる平均単繊維繊度3.3デシテックス、70島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維をカード機およびクロスラッパーに通して目付が268g/mの短繊維ウェブを作製した。実施例5と同様にニードルパンチ処理を行い、目付が480g/m、厚み1.53mm、繊維見掛け密度0.314g/cmの繊維構造体(c)を得た。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、358N/cmであった。
次に、この繊維構造体(c)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向4.0%、ヨコ方向に8.3%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを28g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(c)に対して110重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに95℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは4.0%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.040デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。次いでこの繊維構造体(d)に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。次に、スプリット処理した繊維構造体(d)の極細不織布面を、0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、0.08mmの孔径で、0.4mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、極細繊維不織布面の裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。この処理により、極細繊維面は、繊維束による絡合がほとんどない、極細繊維同士が絡合した構造となっていた。
ウォータージェットパンチ処理後は、実施例1と同様の処理を行い、平均繊度が0.040デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造の皮革様シート状物を得た。また、該皮革様シート状物の極細繊維面には、単繊維状で絡合している部分と繊維束の状態の部分があり、色調に変化を持つものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ22.0mmであり、また、タテ方向の伸長率が5.1%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は4.0mgであり、風合いも柔らかいものであった。
比較例4
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル45部、島成分としてPET55部からなる平均単繊維繊度3.1デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機およびクロスラッパーに通して目付が200g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブの片面に製造例5で作製した織物(3)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、800本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が300g/m、厚み1.23mm、繊維見掛け密度0.243g/cmの繊維構造体(c)を得た。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、185N/cmであった。
次に、この繊維構造体(c)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向6.7%、ヨコ方向に11.8%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。
この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを128g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、繊維構造体(c)に対して120重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内で8分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは14.9%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.042デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。このようにして得られた繊維構造体(d)を実施例6と同様にウォータージェットパンチ処理、立毛処理、染色、柔軟剤付与を行った。このようにして得られた皮革様シート状物は、平均繊度が0.042デシテックスの極細繊維不織布が相互に絡合した緻密な構造であった。また、皮革様シート状物の極細繊維面には、単繊維状で絡合している部分と繊維束の状態の部分があり、色調に変化を持つものであった。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ50.4mmであり、また、タテ方向の伸長率が3.7%、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は9.2mgと多く、風合いが硬いものであった。比較例5
実施例8と同じ海島型複合単繊維を用いて、カード機およびクロスラッパーに通して目付が420g/mの短繊維ウェブを作製した。この短繊維ウェブの両面に製造例4で作製した織物(2)を重ね、1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、4000本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が670g/m、厚み2.02mm、繊維見掛け密度0.302g/cmの繊維構造体(c)を得た。この繊維構造体(c)の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、431N/cmであった。
次に、この繊維構造体(c)を98℃の熱水に2分間浸積し、タテ方向3.4%、ヨコ方向に9.2%収縮させた。その後、100℃にて乾燥して水分を除去した。この繊維構造体(c)を拡布状態にて、水酸化ナトリウムを30g/l、界面活性剤を15g/l含むアルカリ水溶液中に浸漬し、短繊維不織布(b)に対して110重量%のアルカリ水溶液を含浸した後、直ちに90℃のスチームが充満したボックス内でマイクロ波により5分間、連続減量処理を行い、水洗・乾燥を行い、繊維構造体(d)を得た。この際の長さ方向の伸びは3.2%であった。また、極細繊維不織布は、平均単繊維繊度0.040デシテックスであり、未脱海部分がないものであった。
次いでこの繊維構造体(d)に、重合度500、ケン化度88%のPVA1.3%の水溶液に浸積し、PVAを繊維構造体に対し固形分換算で5%の付着量になるように含浸した後、乾燥し、室田製作所(株)製の標準型漉割機を用いて、層を厚み方向に対して垂直に2枚にスプリット処理した。
次に、スプリット処理した繊維構造体(d)の極細不織布面を、0.12mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、5m/分の処理速度で、流体圧力17MPaの圧力にて3回のウォータージェットパンチ処理を行った。なお、2回目のウォータージェットパンチ処理を行った後は、PVAのべとつき感がなくなり、PVAを除去することができた。次いで、0.08mmの孔径で、0.4mm間隔のノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、極細繊維不織布面の裏面を流体圧力17MPaの圧力でウォータージェットパンチ処理を3回行った。該極細繊維構造体(d)は、ウォータージェットパンチ処理の際の水通りが悪く、極細繊維面には所々で幅方向に段状のムラが発生した。この処理により、極細繊維面は、極細繊維同士が絡合した部分よりも極細繊維が繊維束の状態で多く存在する構造となっていた。
以降の処理は実施例8と同様に行い、皮革様シート状物を得た。この皮革様シート状物の極細繊維の平均繊維長を測定したところ22.0mmであり、色調に変化を持つものであったが、タテ方向の伸長率が3.6%と低く、マーチンデール摩耗試験後の摩耗減量は8.3mgであり、風合いが硬く、摩擦に弱いものであった。
Figure 2007224481
本発明によれば、製造時および廃棄時の環境負荷が少なく、風合いが柔軟で摩擦に強く、表面に変化のある色調を有する皮革様シート状物を提供でき、変化のある色調から、衣料、カーシート、家具、雑貨などの用途に好適に用いることができる。

Claims (15)

  1. 少なくとも一方の面が平均繊維繊度0.001〜0.5デシテックスの極細繊維が互いに絡合している不織布から形成され、実質的に繊維素材からなる皮革様シート状物であって、9mmに1箇所以上の頻度で該極細繊維が水系の液体により溶出可能な樹脂によって一部拘束されていることを特徴とする皮革様シート状物。
  2. タテ方向の伸長率が5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮革様シート状物。
  3. マーチンデール法における摩耗試験において、極細繊維が互いに絡合している不織布面を20000回摩耗した時の摩耗減量が8mg以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の皮革様シート状物。
  4. 織編物、または織編物と平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの短繊維不織布(a)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物。
  5. 平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて、ニードルパンチ法により、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである短繊維不織布(b)を作製した後、以下の(1)の工程、さらにその後に(2)の工程を行うことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
    (1)短繊維不織布(b)を拡布状にて水系の液体を含浸した後に加熱処理し、長さ方向の伸びを10%以下とするように短繊維不織布(b)中の海成分を溶出して、実質的に繊維からなる極細繊維不織布とする工程。
    (2)流体圧力10MPa以上で高速流体処理を行う工程。
  6. 前記(1)の工程において、海成分を全て溶出させないことにより、極細繊維が未脱海部分で一部拘束された構造とすることを特徴とする請求項5に記載の皮革様シート状物の製造方法。
  7. 高速流体処理において、極細繊維不織布に織編物、および平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの短繊維不織布(a)を積層し、絡合一体化させることを特徴とする請求項5または6に記載の皮革様シート状物の製造方法。
  8. 平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの極細繊維を発生することができ、極細繊維を形成する成分が70〜99重量%である、1〜8デシテックスの複合繊維の短繊維を用いて、短繊維ウェブを作製した後、以下の(1’)〜(3’)の工程を順に行うことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
    (1’)短繊維ウェブと撚係数が7000〜20000の繊維により構成される織物をニードルパンチ法により絡合一体化させ、長さ方向の10%伸長時の応力が200〜400N/cmである繊維構造体(c)を作製する工程。
    (2’)繊維構造体(c)を拡布状態にて水系の液体を含浸した後に加熱処理し、長さ方向の伸びが10%以下となるように繊維構造体(c)中の海成分を溶出して、実質的に繊維からなる繊維構造体(d)とする工程。
    (3’)流体圧力10MPa以上で高速流体処理を行う工程。
  9. 前記(1’)の工程において、海成分を全て溶出させないことにより、極細繊維が未脱海部分で一部拘束された構造とすることを特徴とする請求項8に記載の皮革様シート状物の製造方法。
  10. 高速流体処理において、繊維構造体(d)の織物面にさらに平均繊維繊度が0.001〜0.5デシテックスの短繊維不織布(a)を積層し、絡合一体化させることを特徴とする請求項8または9に記載の皮革様シート状物の製造方法。
  11. 短繊維不織布(b)を厚み方向に垂直に2枚以上にスプリット処理した後、(1)の工程を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  12. 繊維構造体(c)を厚み方向に垂直に2枚以上にスプリット処理した後、(2’)の工程を行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  13. 極細繊維を発生することができる1〜8デシテックスの複合繊維が海島型複合繊維であり、かつ、海成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し5〜20モル%含む共重合ポリエステル、ポリ乳酸、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールのいずれかであることを特徴とする請求項5〜12のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  14. 水系の液体が、10〜200g/lの濃度のアルカリ性水溶液であり、加熱処理が90℃以上のスチームとマイクロ波による加熱処理をすることを特徴とするものである請求項5〜13のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  15. 水系の液体が界面活性剤を5〜30g/l含むことを特徴とする請求項5〜14のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
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