JP2007222477A - 生体内吸収性材料含有繊維性医療材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性に富んだ漏血量を減らした医療材料の提供
【解決手段】疎水性繊維性基材の繊維間隙に生体内吸収性疎水性高分子材料を含有することを特徴とする医療材料である。

Description

本発明は、合成繊維性又はe-PTFE製の布や管を血液に接する場、特に血管や血管壁又は心臓壁において、漏血量を減らした医療材料、例えば、パッチ材料や人工血管等の低漏血性医療材料に関する。
血液に触れる場に用いられる人工血管や心臓壁パッチの基材ではポリエステル繊維等の合成繊維製やe-PTFE製の布や管が使用されている。これらは柔軟性付与と同時に、繊維間隙に細胞が侵入することによる生体組織との一体化促進の目的で多孔質構造とされている。
e-PTFE製の材料では、それを延伸することによって無数の亀裂を生じさせ、多孔質構造を得ている。その多孔質程度の表現は、亀裂によって生じた結節間を結びつける細いフィブリルと呼ばれる繊維の長さ、言い換えれば、個々の結節間の距離でもって表わす。臨床では30ミクロンの長さの製品が主に使用されている。この間隙では結節間には無数のフィブリルが存在することから血液は漏れない。
しかしながら血液の血球成分が漏れないにしても、血清成分がにじみ出る、いわゆる「汗かき」と呼ばれる現象が生じる。そのためe-PTFE製の人工血管周囲に透明な血清が貯留する「セローマ」が形成され、人工血管を周囲から圧迫する不都合が生じることがある。
このような多孔質構造の人工血管を使用するにあたっては、植え込み直前に人工血管を血液に触れさせて、繊維間隙に血栓を人為的に作らせ、この血栓によって繊維間隙を一時的に目詰まりさせる操作、いわゆるプレクロッティング(Preclotting)が行われている。
しかしながら血管外科手術では血液凝固を防ぐ目的でヘパリンを使用することが多く、プレクロッティング操作による目詰まりが不完全になることがあり、これに加えて自然現象である線維素溶解現象によってフィブリンが溶け始める状態が手術後に発生すると、繊維間隙を占めていた血栓組織は容易に溶解されてしまうことから、術後に生命を脅かすほどの大量出血を来す危険性があった。
その為、医療材料では、生体内で分解吸収される材料を塗布することによって、血液の漏れを一時的に防ぐ工夫がなされてきた。これがいわゆる被覆人工血管や被覆パッチである。コラーゲンやゼラチンは生体由来材料であり、細胞にとって良好な足場を提供することから、市販の被覆人工血管はほとんどすべてコラーゲンもしくはゼラチンによる被覆が採用されている
以下に述べる特許文献1〜9に示す技術はコラーゲンやゼラチンの被覆人工血管に関し、臨床で多用されている。
米国特許4,842,575号公報、 米国特許5,108,424号公報、 米国特許5,197,977号公報、 米国特許5,851,229号公報、 米国特許6,177,609号公報、 米国特許6,299,639号公報、 米国特許5,584,875号公報、 米国特許6,368,347号公報、 米国特許6,670,096号公報、
ところが最近牛由来のコラーゲンがBSEいわゆる狂牛病のおそれが出たため、細胞との親和性においてはコラーゲンに勝ることができないが、合成高分子材料が被覆材料として注目されてきた。
以下の文献では、合成高分子材料が採用されている
米国特許4,990,158号公報、 ASAIO Trans. 1988 Jul-Sep;34:789-93 J Surg Res. 2001 Feb;95:152-60 J Biomater. 1996 Apr;10:309-29 ASAIO Trans. 1988 Jul-Sep;34:789-93 J Surg Res 2001 Feb;95:152-60 J Biomater Sci Polym Ed. 2003;14:1057-75 Int J Artif Organs 2002 Aug;25:777-82 Int J Artif Organs 1999 Dec;22:843-53 Terry E. Lawler et al. Properties of lactide/caprolactone copolymers and polyblends."The 11th Annual meeting of the Society for Biomaterials San Diego, California, USA,April 25-28,1985" 特開2004-313310号公報 特開2005-34239号公報 international publication Number: WO 80/02641
これらの文献では、生体内吸収性合成高分子材料の例として、ポリL-乳酸、ポリDL-乳酸、ポリε-カプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、それらの重合体、等が被覆材として使用されており、特許文献11(特開2004-313310号公報)では非特許文献7や非特許文献5の記載と同様の技術で、ポリL-乳酸、ポリD,L,-乳酸、ポリビニールアルコール、ポリグリコール酸及び/又は、ポリε―カプロラクトンから選ばれた(共)重合体やその混合物が被覆材として使用され、更に非特許文献9に記載の手法と同様の手法で、ステント材として金属材料によるメッシュ形態の多孔質材料もそれらによって被覆され、透水率がゼロになると、記載されている。
しかしながらこれらの被覆人工血管の問題点として、手術中の操作によって厚い被覆層が剥がれて大出血を来す危険性があった。
末梢血管の再建術に使用されるe-PTFE人工血管ではこのような生体内吸収材料によって被覆された被覆人工血管は使用されていないが、前述のように、繊維間隙から血清の漏れが持続的に生じ、人工血管周囲にセローマと呼ばれる血清成分の貯留した貯留種が形成されるため、被覆人工血管が検討されているが、未だ解決策は示されていない。
被覆層の剥がれ問題はポリエステル繊維製の人工血管を被覆した場合において臨床の現場でも見られる。ポリエステル繊維製の人工血管は胸部や腹部の大動脈に植え込まれる事が多く、手術手技も複雑であるため人工血管を度々鉗子で挟んだりピンセットでつまむことが繰り返される。そして手術時間も長くなり、その間の血液凝固を阻止するため抗凝固療法も併用することから、ひとたび被覆層がはがれると、その部分から出血が始まり、その止血に長時間を要することがある。
本発明ではこの現象の解明とその解決方法を鋭意検討した結果、以下のことを明らかにした。すなわち、被覆層は繊維製人工血管の内面及び外面にあって、繊維全体を覆っている。この被覆層の厚さは10ミクロンから200ミクロン程度である。またポリエステル繊維性人工血管は屈曲させやすくするため蛇腹加工が施されており、被覆層も個々の蛇腹構造に沿って形成されている。この蛇腹は手術中に人工血管を適度の長さにのばすことから可動域が広く、その操作によって被覆層と人工血管の間に解離が生じやすいことが判った。そしてそのような状態で鉗子で挟んだりピンセットでつまむと余計に被覆層がはがれやすいことも判明した。
被覆層のはがれやすい理由は、被覆層の固定に問題があった。つまり、被覆層の一部が人工血管繊維の繊維束の間に入り込み、根を生やすような形でのアンカリング効果によって付着している。しかしながら、被覆層の広さ、厚み、可動範囲に比べて、繊維束の間に入り込み量が少ないことが判った。また、繊維束の間に被覆物質が入り込んではいるものの、個々の繊維の間、すなわち繊維間隙には被覆物質がほとんど入り込んでいないことが判明した。結果的には、被覆層の厚みとアンカリングの根とのアンバランスで効果が弱くなり、少しの機械的刺激で被覆層がはがれる結果につながっていることが判明した。
このようなことから、被覆型人工血管では手術操作によって被覆層が剥がれる危険性を常に抱えて居ることとなっていた。
上記の「被覆層の剥がれ」の問題を解決すべく種々検討した結果、本発明を完成したもので、本発明は、繊維性の多孔質構造を持ちながらも漏血量を減らし、手術中の操作、すなわち蛇腹構造を持つ人工血管を引き伸ばしたり、鉗子で挟んだりピンセットでつまむことを行ったにしても、血液を漏らさない医療材料を提供することにある。
本発明の要旨は、疎水性繊維性基材の繊維間隙に生体内吸収性疎水性高分子材料を含有することを特徴とする医療材料である。即ち、本発明は合成繊維性又はe-PTFE製の布や管などの疎水性繊維性からなる多孔質構造を持つ基材を血液に接する場、特に血管や血管壁又は心臓壁において用いる場合、漏血量を減らした医療材料、例えば、パッチ材料や人工血管等の低漏血性医療材料であり、繊維性基材の繊維間隙に疎水性を持つ生体内吸収性材料を含有させているところを特徴としている。
本発明においては、繊維性疎水性基材の繊維間隙に生体内吸収性材料が含有されているので、被覆層がなくても血液は漏れず、たとえその被覆層が形成され、手術操作中に剥がれても血液が漏れにくく、出血するという危険性を回避することができる。そして、本発明の医療材料は、植え込み後は繊維間隙に含有された吸収性材料が分解吸収され、早急に繊維間隙に細胞の侵入するスペースを与え、結果として植え込み後は自然の治癒力によって繊維性基材を枠組みとした新しい自家組織が形成されるのである。
本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する繊維性基材に関しては、本発明の医療材料は生体内で長期間安定して存在し、生体に受け入れられる事を目的とし、材料と細胞との一体化を目指す観点から材料は繊維性基材に多孔質構造を持たせており、素材については、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、及びそれらの誘導体、のグループから選ばれた少なくとも一つの繊維を用いる。そして、繊維性基材の繊維は従来技術と同じく衣料用に製造される1.2デシデックス(detex)程度の太さで従来技術の転用で可能である。
ただ、本発明においては1.2デシデックス(detex)程度の太さ繊維に極細繊維を混在させることが好ましいが、この点については後述する。
合成繊維性の医療材料では、多孔質構造を作る繊維間隙の広さを一般的には透水率(Water permeability, もしくはporosity)や空隙率(Void content)として表現する。このうち、前者の表現方法が一般的であり、アメリカFDAの人工血管におけるガイドラインにもその測定方法が記載されている。(非特許文献10 Guidance for Industry and FDA Staff. Guidance Document for Vascular prostheses 510(k) Submissions, U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Devices and Radiological Health, Document issue. on : November 26, 1999参照)。
透水率は、120mmHgに相当する圧力をかけた水が1cm2の広さの布の繊維間隙を一分間に通過する量で表現される。織り組織を持つ人工血管では通常50mlから500mlの間の製品が使用されており、編み組織を持つ布製人工血管の場合は通常500mlから1500ml程度の製品が使用される。
繊維間隙が広ければ、すなわち透水率が高ければ、生体内に植え込まれると繊維間隙に細胞が侵入し、生体組織と繊維構造とが一体化し、安定化するので、長期植え込み医療材料に使用されている。
その為、生体組織と繊維性医療材料との生体内一体化による生体内安定状態を得る事を目的とする場合には透水率の高い組織、すなわち繊維間隙の広い布や管が選択されている。しかしながら、繊維間隙が広ければ血液が漏れやすい欠点も同時に抱え込む。したがって、血液が漏れない程度に低い透水率であって、細胞が侵入し易い程度に広い繊維間隙を持つ、と言う、相反する条件下で適当な透水率を持つ人工血管を、使用する身体の部位によって選択するのが常である。
本発明において、繊維性基材がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、及びそれらの誘導体からなる合成高分子性の繊維である場合には0〜2,000mlの範囲内の透水率をもつ程度の繊維間隙をもつ材料を選ぶ。この場合好ましくは10〜1,500ml、更には100〜1,000mlの範囲で有ることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンのe-PTFEの場合は、フィブリル長が5〜150ミクロンの範囲であれば、いかなる形態のe-PTFE基材であってもかまわないが、5〜90ミクロンのフィブリル長、さらには5〜60ミクロンの基材が好ましい。本発明の繊維性基材は多孔質構造であって、ミクロな多孔質構造の孔のサイズとしては、1ミクロン以下であれば材料が疎水性であることから、水をはじき、血液の漏れを防ぎうるので、孔のサイズとして1ミクロン以下を推奨する。
多孔質の形成手段として塩の結晶を混在させて、その後に塩を水の中で溶解させて、塩の結晶の存在していた部分に孔を作らせて、多孔質構造とする手法も一般的である。そのほかで生体内吸収性材料を多孔質にするための手段としては、造孔成分の混在、凍結乾燥、湿式溶媒除去、のいずれかの手法を用いことができる。
つぎに、空隙率について検討する。これに関しては従来技術では検討されたことがなかった。それは、被覆が行われていれば、繊維間隙がどのように生体内吸収性材料で占拠されていようが、問題なかったからである。
しかしながら本発明では繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させるところに特徴があり、それでいて完全に含有させると細密充填的になって繊維基材が硬化することから、それを多孔質としたのである。しかしながら、多孔質にしすぎると血液の漏れが生じる。そのため至適な占拠率、つまり全体的な空隙率を決定する必要が出てきた。
本発明では、基礎実験の結果、生体内吸収性材料が繊維間隙に含有された後の状態として、その空隙率が10%〜95%の範囲内であれば好都合で有り、更に好ましくは15%〜85%の範囲内であれば好都合であり、更に好ましくは20%〜65%の範囲内であれば好都合であることを見いだした。空隙率がこれ以上に高くなると血液の漏れが生じやすくなり、逆にこれ以下であれば、たとえ柔軟性に富み、分解吸収性の早い材料を使用したとしても繊維基材の全体が硬化して取り扱い性において難しくなることを明かにした。
しかしながら、このように多孔質にして分解性の早い材料を使用した場合、問題点が出てきた。それは分子量の低い材料やグリコール酸を多く含む材料では、力学的強度が数分の一に低下する問題である。そのため、従来技術で作成したポリエステル繊維性人工血管、特に透水率が1500ml以上の高有孔性人工血管では繊維間隙が広くなるので生体内吸収性材料が繊維間隙からはずれる恐れがある。
しかしながら、このような従来技術の繊維性基材を使用するだけでは、「生体内吸収性材料が繊維間隙からはずれる恐れ」の問題の解決にはならない。そこで本発明では繊維性の基材の選択に配慮した。具体的には、繊維性基材の繊維は従来技術と同じく衣料用に製造される1.2デシデックス(dtex)程度の太さの繊維が使用されるが、本発明では、特許文献14(特開2005-124959号)に示されるように、ポリエステル繊維の太さが1.2デシデックス(dtex)程度の通常繊維に0.5デシデックス(dtex)以下の極細繊維を混在させた技術の導入を推奨する。特に0.5デシデックス(dtex)以下の細さでありながら3g/dtex以上の強度を持つ極細繊維を総繊維本数の50%以上持つ様な繊維性基材の使用を推奨する。極細繊維が混在すれば、力学的な強度の低下が危惧されるが、ここに示した強度を持つ繊維であれば混在は問題がなくなる。
極細繊維が混在することによって、透水率が高くとも極細繊維の総表面積が広くなることから血小板やフィブリンが付着しやすくなるために出血が少ないという利点があり、更には、細胞は「細い繊維の存在を好み細い繊維に積極的に付着する特性」を活用して治癒を促進させるという利点もある。丁度、コラーゲンが細胞にとって良好な足場を提供するように、極細繊維も細胞には好都合の環境を提供するため、再生医療的も高齢患者の術後治癒の促進にも貢献する新しい技術である。
このような極細繊維を混在させると狭い繊維間隙を作り得るので、繊維間隙に含有させた生体内吸収性材料を安定保持可能となる。それによって従来の生体内吸収性材料の被覆による漏血防止を、生体内吸収性材料の繊維間隙での含有によって果たすことができる。この効果によって被覆層がはがれて出血する、という現象から解放される。
極細繊維の混在は、高い透水率の繊維性基材の場合に特に有利となる。高い透水率の繊維性基材では繊維間隙が広いため、生体内吸収性材料を安定して保持し難くなる傾向があるが、極細繊維の混在によって、丁度土壁を塗るときに泥土に藁を混ぜると安定しやすいように、生体内吸収性材料の粘度が低くても安定して含有させる。特に生体内高分子材料の分子量が低くなると、安定保持が難しくなる傾向があるので、このような場合には極細繊維が通常繊維の繊維間隙に存在すると繊維間隙が狭くなり、少量の生体内吸収性物質でも保持出来て極めて有効である。
狭い繊維間隙に生体内吸収性材料が膜を張るようにして血液の漏れを防ぐ現象はラプラスの表面張力の法則で説明可能である。つまり2点間に張られた幕にかかる張力は2点間の距離に反比例するので、距離が離れると強い力が膜にかかる。逆に言えば距離が近ければそれにかかる張力は小さくなり、小さな力で支えることができるため、膜が破れる危険性は低くなる。本発明で推奨する極細繊維が50%以上混在することで、少なくとも多くの繊維間隙には極細繊維が絡まるように存在することから、個々の繊維間隙、つまり2点間が狭くなるので、力学的強度の弱い生体内吸収性材料の含有であったにしても、高い血圧のかかる場で十分に耐えうる状況となる。このような事実を本発明では明らかにしたので、本発明では、基材としては、極細繊維を混在させた繊維性基材を推奨する。
次に本発明で使用する生体内吸収材料について述べる。
本発明で使用する生体内吸収性材料は、当然のことながら、異物反応、発ガン性がないこと等の生体内に植え込むに当たり安全性が確保された材料である。更にはBSEいわゆる狂牛病の恐れのある病原性タンパクを含まない非生物由来材料である。このような観点から選別した結果、生体内吸収性高分子材料は合成高分子もしくは鉱物油のいずれかであることが好ましい。
本発明における生体内吸収性材料は、合成高分子材料や鉱物材料から選択されていて、従来技術で多用されている牛由来のコラーゲンなどは使用していない事から、BSEいわゆる狂牛病等の病原性タンパクの混入、未知ウイルスなどの混入など、予期せぬ危険性を回避することができる。
臨床で多用されているコラーゲンやゼラチンを用いると被覆に頼らざるを得ない、という理由は本発明の検討では以下の通りであった。すなわち、コラーゲンやゼラチンは分子全体としては親水性である。ところが医療用に使用される繊維性基材はポリエステルやテフロンの様に疎水性の繊維が多い。しかも血液が漏れないように繊維間隙を狭く設計している。その結果、溶液状や懸濁液状としても疎水性の繊維の繊維間隙には侵入し難い。従って繊維束の表面にあって被覆層を形成するのみとなる。そしてその僅か一部が繊維束の間に押し込められてアンカリング効果を発揮して被覆層を固定している。そのようなことから血液の漏れを防ぐにはこの被覆層をしっかりとした厚みのある層にしておかねばならなかった。
この現象は疎水性の物質を使用しても容易に解決がつかない場合があることも本発明では明らかにした。なぜならば、分子量が1000以下の比較的小さな高分子材料では疎水的な性質を持つ有機溶媒に溶解すれば、狭い繊維間隙に含浸させることが可能であるが、大きな分子量、例えば10万以上の分子量を持つ高分子材料ではそれが不可能となる。それは繊維間隙が狭いため、溶媒のみが繊維間隙に入り込み、溶解物が入らない現象、いわば限外濾過的な現象が生じるためである。
具体例をもってそれを説明しよう。特許文献11(特開2004-313310号)の実施例には分子量10万のポリε-カプロラクトンが被覆材として使用されている。溶剤としてはテトラヒドロフランを使用し、10%溶液を作成し、それにポリエチレンテレフタレートすなわちポリエステル繊維で作成した透水率1700mlの管状物および布を浸している。そして乾燥させ、更に浸し乾燥させる操作を3回繰り返した結果、元の基材(壁厚64ミクロン)が被覆層によって厚くなり被覆層は内面と外面に形成され、その層の厚みは200ミクロンとなったと記載されている。管状物の内腔に心軸を挿入した場合は外面にのみ被覆され、その厚みは250ミクロンとなり、被覆層が外面に形成されていたと記載されている。金属材料を用いたメッシュに被覆した場合も75ミクロンのメッシュの内面と外面に被覆層が形成されトータルの厚みが300ミクロンとなったとの記載がある。その他の記載もあるが、いずれにしても被覆層が金属繊維やポリエステル繊維で構成される繊維性の基材を高分子材料が溶解されている液に浸すと被覆層が形成されるとの記載がある。そしてその再現実験を行うとその通りとなる。
そのようにして作成した被覆物の切片を作成してその断面を観察したところ、記載どおりの被覆層が繊維性の基材の内面にも外面にも形成されていることが判明した。ところが、よくよくその切片で断面構造を観察すると、繊維間隙への合成高分子材料の含浸はごくわずかであって、大半の合成高分子材料は繊維性基材の内外面に付着した被覆層にあることがわかった。
この現象に関して本発明での解析は以下の通りである。まず、合成高分子材料の10%溶液を疎水性の溶媒に溶解して繊維間隙にしみこます。そして乾燥させる。すると、繊維間隙に入り込む高分子材料は繊維間隙の容積の最大で10%である。しかし現実には繊維間隙が狭ければ大きな分子量の高分子材料の場合は10%も入らない。なぜならば繊維束の表面で限外濾過的な現象が現れて溶液のみが入り、高分子材料は表面に付着するにとどまり被覆層を形成するからである。このような状態で2回目の浸漬を行えば、表面にたとえ薄くとも被覆層が存在することから、大半の合成高分子材料は被覆層に付着し、繊維間隙へは溶媒のみがはいる。ここではっきりした限外濾過的現象が全面にでる。そうして乾燥させるとしっかりした被覆層が形成される。この状態で3回目の浸漬を行えば、ますます被覆層に高分子材料が蓄積して更に厚みのある被覆層が完成する。そして一方の繊維間隙には溶媒のみが入るため、それが乾燥すれば腔ができてアンカリングとなるべき高分子材料による根が張ってくれない。そのため厚い被覆層と弱いアンカリングの根との組み合わせとなって、剥がれやすい構造ができあがる。
すなわち、コラーゲンのような親水性の生体由来材料を用いようともカプロラクトンの様な合成高分子材料を用いようとも、繊維間隙の狭い材料では同じように被覆層ばかりが厚くなり、その結果、暑い被覆層がはがれると出血しやすくなる。そして手術中には剥がれの原因となるような手術操作が多いことから、本発明では被覆層に頼る出血防止には限界が有ることを明らかにした。
そこで本発明ではその問題解決のため、被覆に頼らずに、繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させる方式を採用した。すなわち従来方法が被覆coat方式であったのに対して本発明では含有impregnate方式を採用した。このようにすることで被覆層の存在は漏血防止とは無関係となり、それが剥がれても剥がれなくとも漏血はしない。しかもピンセットでつまんでも被覆層の剥離は気にならない。被覆層がなくても良いのである。
従って従来の被覆方式で生体内吸収性材料の処置を行った場合、被覆前と被覆後の壁の断面における壁厚の比、もしくは被覆後の壁断面の繊維部分の厚さと生体内吸収性材料の層を含めた厚みとの比が、本発明の方法で処置を行った場合とは全く異なってくる。
具体的に説明すれば、特許文献11(特開2004−313310号公報)では従来の被覆方式を採用しており、ポリエチレンテレフタレートすなわちポリエステル繊維で作成した透水率1700mlの管状物および布の場合は壁厚64ミクロンが200ミクロンへと200%以上の増加率である。金属材料を用いたメッシュに被覆した場合も75ミクロンが300ミクロンへと300%の増加である。しかしながら本発明の含有方式では被覆層は形成されないか、もしも形成されてもごく僅かな付着程度に厚みにしかならないので、壁厚の増加率は20%未満となる。これが大きな違いとなる。
このような利点をもつ本発明はそれなりの条件が満足されねばならない。その条件に関して鋭意検討した結果、本発明では以下のことを明らかにした。
つまり、繊維性材料が疎水性材料であること、生体内吸収性高分子材料が疎水性で有ること、それを溶解する溶媒が有機溶媒であること、その平均分子量が10万以下であること、等が必須の条件であることを明らかにした。
市販品ではポリε-カプロラクトンは分子量190,000までの製品、ポリL-乳酸では160,000の製品、ポリD,L-乳酸では120,000の製品などが販売されているが、これらの大きな分子を持つ材料の使用は好ましくない。
更には、このような条件を満たすだけでは必要十分量の高分子材料が入らない事から、含有方法として本発明では高分子材料を加熱により液状又は有機溶媒により溶液状態にして、これを繊維性基材の繊維間隙に加熱状態のまま含浸させる、もしくは繊維性基材の一面から他面に向かって圧力差を設ける、揉む、振動を加える、等の物理的機械的刺激を絶え間なく加えることによって繊維間隙に十分に含有させ、限外濾過的な現象を起こさせない工夫を要求している。
e-PTFEの繊維間隙についても、生体内吸収性材料を有機溶剤に溶解した後にe-PTFEからなる多孔質構造を有する基材に含浸させ、その後に有機溶剤を除くことによって該生体内吸収性材料を配する。また、生体内吸収性材料を温度変化によって溶解させた後にe-PTFEからなる多孔質構造を有する基材に含有させ、その後に常温に戻すことによって該生体内吸収性材料を配する工夫を行う。
しかしながらこのような工夫を行って漏血防止に必要十分な高分子材料を繊維間隙に含有させると逆に不都合なことが生じることも判った。それは十分量の材料の含有によって繊維間隙に細密充填的な現象が生じて、繊維間の滑りが悪くなり、繊維性基材が全体として硬化する現象が生じ、医療材料としての取り扱い性が低下する問題である。この問題解決のため本発明では、使用する高分子材料の選択と含有時の構造に工夫を凝らした。
具体的に説明すると、使用する高分子材料には柔軟性を要求した。例えば特許文献11(特開2004-313310号公報)には分子量10万のポリε-カプロラクトンが実施例で使用されているが、これを繊維間隙に含有させると、乾燥状態になれば硬化して繊維性基材の取り扱い性が極めて悪くなるので、このような高分子の単独重合体は選択しない。重合体に関しては、共重合には交互共重合(Alternating co-polymerization)とランダム共重合(Random Polymerization)、ブロック重合体、櫛型重合体などの構造を持つ重合体の高分子材料が有る中では、交互共重合(Alternating co-polymerization)は構造的に硬くなり易いので、それ以外の重合体を推奨する。
さらには、高分子材料であっても結晶構造の少ない形態を持つ高分子材料の使用を推奨する。例えば同じポリ乳酸においてはpoly(L-lactide)とpoly(DL-lactide)とがあるが、前者は結晶構造を持ち、後者はアモルファスな構造であることから、ポリ乳酸を使用する場合にはアモルファス構造を持つpoly(DL-lactide)を選択する。
このような考え方を持った上で具体的に推奨する疎水性の生体内吸収性の合成高分子材料を列記すれば、平均分子量が10,000〜100,000間の範囲内にあり、poly(DL-lactide){ポリ乳酸}とpoly(glycolide){ポリグリコール酸}との配合比が15/85から85/15の間のランダム重合体、平均分子量が10,000〜100,000間の範囲内にあり、poly(DL-lactide)とpoly(ε-caprolactone){ポリカプロラクトン}との配合比が15/85から85/15の間のランダム重合体、等の使用が推奨される。
このような条件を満たす高分子材料では、柔軟性を持つと同時に生体内での分解吸収性が早まることが本発明で明らかとなった。具体的に言えば、本発明ではポリエステル繊維間隙に種々の高分子材料を含有させて動物の組織内に挿入し鋭意検討した結果、ポリ乳酸とポリグリコール酸との配合比が15/85から85/15の間の共重合体、もしくはポリ乳酸とポリカプロラクトンとの配合比が15/85から85/15の間の共重合体の柔軟性が高くなると同時に、急速に生体内で分解され始めることを明らかにした。
この配合比は、いずれの組み合わせにおいても、更には等量の配合比に近づけば分解されやすくなったので、25/75から75/25の範囲内での組み合わせのほうがより分解されやすい。例えば、50/50の組み合わせの場合、ポリ乳酸やポリグリコール酸、ポリカプロラクトンなどの単独重合体の場合に比べると約10倍の吸収速度の加速が可能であったので、単独重合体ではなく共重合体にして使用することが望ましい。
これは、有る意味では不思議な現象であった。10万以上の分子量を持つ2種類の高分子材料からランダム共重合体を作成すると、分子量が約80%に低下する。そして動物の体内に植え込み、吸収性のテストをしたところ、生体内での分解期間は数分の一に短縮された。この時の共重合体の形態が交互共重合ではなくランダム共重合で有るところに特徴があった。また、重合まで行かなくともブレンド状態であっても分解時間の短縮が可能であった。
高分子における平均分子量の測定は一般的な光散乱光度計を使用する(例えば、大塚電子SLS-6000など)。このような厳密な測定を行った場合、分子量分布には幅があり、正確に表現し得ない事があるので、粘度を持って表す場合があり、高分子材料ごとに粘度と分子量の相関関係が明らかにされている。本発明で使用を推奨している、(a)平均分子量が10,000〜100,000間の範囲内にあり、poly(DL-lactide){ポリ乳酸}とpoly(glycolide){ポリグリコール酸}との配合比が15/85から85/15の間のランダム共重合体、(b) 平均分子量が10,000〜100,000間の範囲内にあり、poly(DL-lactide)とpoly(ε-caprolactone){ポリカプロラクトン}との配合比が15/85から85/15の間のランダム共重合体、のいずれにおいても、生体内吸収速度の早い材料では粘度が低い。本発明ではいずれも粘度0.15〜1.20dL/gの間、更に好ましくは0.25〜1.05 dL/gの間、更に好ましくは0.26〜0.99 dL/gの間の粘度を持つ材料を推奨する。これ以下の粘度の材料は形態維持性に欠けて生体内で一定の形態を保つことができず、これ以上の粘度を持つ材料は生体内での分解吸収が遅くなる事を本発明では明らかにしたことから、この範囲内の粘度を持つ材料の使用を推奨する。
本発明では更なる工夫として、繊維間隙に少しの隙間を持たせる工夫も行い、細密充填現象の回避できる材料の選択も行った。具体例の一つとして、それが撥水性であれば、完全に繊維間隙を占拠するようにしなくとも漏血を阻止しうる。具体例としては、炭化水素で鉱物油の一つであるワセリンを加温して溶解し繊維間隙にしみこませると、少量のワセリンが繊維間隙に入り撥水性を発揮し、繊維表面に被覆層を形成しないにもかかわらず血液の漏れを防ぐ事ができるので、このような撥水性の炭化水素の使用を推奨する。
この材料はワセリンに限定されることなく、生体にとって異物反応を示さない炭化水素であればパラフィンの様な材料でも可能である。融点35〜80℃の炭化水素化合物では、具体的にはワセリン、いわゆるペトロラタムや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、等が石油ワックスとして知られているが、それ以外に動・植物や鉱物のワックス、具体的には蜜蝋なども使用可能である。更にはポリエチレンワックスやフィッシャー、ポリエチレンワックスなどの合成ワックスでも良い。撥水性を持てばその効果は高くなる。但し常温で液状であれば固定維持が難しく、更には分子量が大きくなりすぎると吸収性が遅れることも明かとなったので、その最適化を図ったところ、溶解温度で平均分子量を知ることが可能となったことから、融点が35℃から80℃の間にある炭化水素であるならば、その目的を達する。
この炭化水素を採用する考え方は、強い疎水性を持つ材料に限らず、弱い疎水性部分を分子内に持つような、具体例ではポリエチレングルコールの様な材料でも可能である。ポリエチレングリコールは一般的には親水性と考えられているが、分子内で炭素原子が2つずつ並ぶため、疎水的な性質を持ち、アセトンのような有機溶媒に溶ける。そうなると溶解液を疎水性の繊維間隙内に容易に含ませることが可能であり、溶媒を除去することによってポリエチレングリコールを繊維間隙に残すことができ、それを電子線で不溶化できる。そうなると被覆に頼らず繊維間隙への含有によって血液の漏れを防ぐことができて、被覆物資が剥がれる不都合がなくなり、最小量の材料で血液の漏れ防止という目的を達成する。
従って、有機溶媒に溶解可能な生体内吸収性材料でも本発明の目的を達成するので、ポリエチレングリコールに限定されないが、生体内での分解性も考慮する必要がある。ポリエチレングリコールの場合は、分子量20,000以下が望ましいが、それが小さすぎると液体となるので取り扱いが難しくなる。従って分子量1,000〜20,000の間を推奨する。
ポリエチレングリコールは親水性、疎水性を持つと共に、含水性も発揮して膨潤する。そうなると狭い繊維間隙に有機溶媒で溶解させて含有させておくことで、水に触れると膨潤することから血液の漏れを完全に防ぐことが可能である。撥水性の材料の場合は繊維間隙に少しの隙間があった場合でも血液の漏れを防ぎうると同様に、ポリエチレングリコールの場合も、繊維間隙を完全に占める事なく、膨潤によって血液の漏れが生じなくなる。
本発明では、このようにして生体内で分解しやすい材料を選択するほかに、繊維間隙を完全に材料で占めなくとも血液の漏れを阻止し、さらにこれらを急速に分解吸収させるために生体内で分解酵素に触れ易くさせ分解吸収され易くする工夫を加えた。具体的には多孔質構造による表面積拡大現象を採用した。すなわち造孔成分の混在、凍結乾燥、湿式溶媒除去、のいずれかの手法で多孔質にする。そうすることによって総表面積が格段に広がり急速な分解吸収が進行する。造孔成分としては塩などの結晶成分、ポリエチレングリコールなどを用いるが、効率よく多孔質にするならば、従来技術の転用も推奨される。
具体的に言えば、ポリエチレングリコールは親水性の代表的な高分子であるが、分子内に2つずつ炭素原子が並んでいるため、この部分が少し疎水的となって、アセトンやDMSo、ジオキサンなどの有機溶媒に溶解可能となる。そうなるとpoly(DL-lactaide-co-glycolide)やpoly(DL-lactaide-co-ε-caprolactone)との共通溶媒ができることから、両者を均質に溶解し合える。そのようにした後に水の中に放置すれば、ポリエチレングリコールは容易に溶解され、溶け出て行き、そこにはミクロな多孔質構造が形成される。グリセリンも炭素が3つ並んでおり有機溶媒に溶解され得るので、同様にこの目的のために使用可能である。
疎水性の炭化水素もこの目的に使用可能である。例えばワセリン、いわゆるペトロラタムや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、等が石油ワックスとして知られているが、それ以外に動・植物や鉱物のワックス、更にはポリエチレンワックスやフィッシャーなどの合成ワックスでも、或いはスクワラン、スクワレンの様な魚類から採取した炭化水素でも有機溶媒で前記共重合体やランダム重合体などの生体内吸収性材料と均質に混ぜることができるので、これらを混ぜて固め、その後にそれらを取り除けば、もしくは少なくとも生体内でそれらの炭化水素が比較的早く材料から抜け出るので、その現象を利用すれば材料は多孔質となって柔軟性が出ると共に少量の材料での被覆が可能となり、更には生体内で急速に分解が進む。
本願発明に係る医療材料の製造方法について説明する。本発明では、繊維質基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる繊維で織る、編む、不織布等からなり、織り方、編み方等にはとらわれない。0.5デシデックス(dtex)以下の細さでありながら、3g/dtex以上の強度を持つ、疎水性(親油性)極細繊維を総繊維本数の50%以上持つような多孔質構造の基材において本発明は特にその効果を発揮する。
以上のような工夫を行うことで、本発明によって十分に繊維間隙に生体内吸収性材料が含有されると、繊維性基材の表面に被覆層を作らなくとも透水率が低下するが、それは繊維性基材の表面への前記生体内吸収性材料の被覆ではなく、主に該繊維間隙への固定による。そしてその含浸された生体内吸収性材料は、手術中の操作によっては剥れることもなく、従って出血に悩まされることがなくなる。
次に、本願発明に係る医療材料の製造方法について説明する。
本発明では、繊維質基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる繊維で織る、編む、不織布等からなり、織り方、編み方等にはとらわれない。0.5デシデックス(dtex)以下の細さでありながら、3g/dtex以上の強度を持つ、疎水性(親油性)極細繊維を総繊維本数の50%以上持つような多孔質構造の基材において本発明は特にその効果を発揮する。
本発明の繊維性基材を構成する個々の繊維の間隙へ生体内吸収性材料を含有させる手段としては、該生体内吸収性材料を有機溶剤により、もしくは加熱により溶液状態とし、これを該繊維性基材の一面から他面に向かって圧力差を設けたり、繊維性基材を揉んだり、繊維性基材に振動を加えたり、加温したり等して含浸させる、該繊維性基材の一面から他面に向かって圧力差を設ける、揉む、振動を加える、加温する等の少なくとも1種の物理的機械的刺激によって該繊維性基材の繊維間隙に含有させるのである。この手法は高分子材料を用いる場合溶媒のみが繊維間隙に入り込み、溶解物が入らない現象、いわば限外濾過的な現象が生じないように配慮した方式である。
更に、本発明の医療材料は、該生体内吸収性材料が生体内で広い表面積を持つことによる分解促進効果を発揮するため、造孔成分の混在、凍結乾燥、湿式溶媒除去のいずれかの手法で多孔質にする過程を持つ事が好ましい。造孔成分のうちで、塩の結晶などは植え込み前に洗浄により除去することが好ましいが、ワセリンやポリエチレングリコール等を使用した場合、必ずしも取り除いておく必要はない。
以上のような工夫を行うことで、本発明によって十分に繊維間隙に生体内吸収性材料が含有されると、繊維性基材の表面に被覆層を作らなくとも透水率が低下するが、それは繊維性基材の表面への前記生体内吸収性材料の被覆ではなく、主に該繊維間隙への固定による。そしてその含有された生体内吸収性材料は、手術中の操作によっては剥れることもなく、従って出血に悩まされることがなくなる。
このようにして作製した被覆性の繊維性材料は血液に触れる場、例えば人工血管などとして生体内の管腔臓器や管腔組織の代替えもしくはその一部に使用される。あるいは、人工心膜、人工心臓壁、人工血管壁、などとして、生体内の臓器や組織にパッチ状に使用されることが好適となる。
次に実施例を以て更に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本技術の有効性を示すための実施例を以下に示す。医療材料の作成に当たって、本発明の実施例では繊維性基材を生体内吸収物質の溶液もしくは液状生体内物質に含浸すると共に加圧又は揉む等の何らかの物理的な刺激を与えつつ含有させるのに対して、対照例(従来技術)では、単純な浸漬と自然乾燥の繰り返しである。
得られた試料についての検討項目は、
a.)疎水性の生体内吸収性材料における分子量の相違、それを用いて血液の漏れを防ぐための疎水性繊維材料への疎水性の生体内吸収性材料の含有状態を調べた。
b.)絡ませた後に水が漏れるか否かのテスト。
c.)動物の皮下組織内に植え込んだ後に、どのように吸収されるかのテスト。
d.)含有させた管状の繊維性材料を人工血管として用い、体外に動物の血液を導き出して実際に血液を内腔に流してみて、血液が漏れるかどうかのテスト。その際、同時にそのようにして絡ませた繊維性材料をピンセットでつまむことにより、被覆している物質が剥がれて血液が漏れるようになるか否かのテスト。
e.)実際に動物の体内に植え込んで、人工血管として役に立つかどうか、また、血液が漏れないか否かを観察した。
f.)植え込んだ状態を維持し、その後一定期間を経過させた後に、生体内吸収性材料が実際に吸収されてしまうか否かの確認を行った。
g.)吸収性物質が吸収された後に、その部位に組織修復を促す細胞が入り込んで、新しく血管壁を創成しているかどうかの確認を行った。
使用する疎水性の繊維性基材として、以下の2種類の合成高分子繊維基材を用いた。一つは、1.2デシデックスのポリエステル繊維を用いた織り組織に、0.3デシデックスのポリエステル極細繊維を50%以上、絡まるように組み込まれた繊維ばかりからなる基材であり、透水率は約200mlであった(以下、基材Aと言う場合あり)。この基材Aは円筒状の人工血管を用いた。
もう一つの疎水性の繊維性基材としてはポリテトラフルオロエチレン製の人工血管e-PTFEの代表として、市販の人工血管Gore Tex Graft (Gore社製、フィブリル長:30ミクロン)を用いた(以下、基材Bと言う場合あり)。
観察方法及び測定装置は次の通りである。
作成した試料の重量は電子天秤(メトラー・トレド社製AX26DR)を用いて測定した。表面性状を観察する際は倍率10倍のループを用いた。厚みを測定する方法としては、走査型電子顕微鏡(日立S-800)を用いたほか、組織包埋用樹脂テクノビット7,100(Kulzer & Co. GmbH, Friedrichsdorf, Germany)で静かに包埋し、それを試料に直角に、すなわち最も断面積の小さくなる角度で、ガラスナイフで厚み4ミクロンに切り、それを通常の光学顕微鏡で観察して計測した。
繊維製基材の有孔性はそれを通過する水の量(透水率)で表した。すなわち、120mmHgに相当する水圧をかけたときに、基材の1平方センチメートルの面積の部分を1分間に通過する水の量で表した。
実施例1
疎水性の合成繊維製基材として、透水率は約200mlの基材Aより成る人工血管を用いた。その繊維性基材の断面における壁厚の測定は、それをテクノビット樹脂に胞埋しガラスナイフで厚さ4ミクロンに切り光学顕微鏡を用いて測定した結果、生体内吸収性材料を含有させる前の壁厚が5カ所の測定の平均値で約655ミクロンであった。
この繊維性人工血管に下記の生体内吸収性高分子材料をそれぞれ20%の濃度になるように1,4-ジオキサンに溶解し、内腔に注射器を用いて圧力をかけ、揉む操作を加えて含浸させた後に凍結乾燥によって1,4-ジオキサンをとばし、生体内吸収性高分子材料が繊維間隙に含有された状態とした。
1)平均分子量60,000の50/50Poly(DL-lactide-co-glycolide) ( SIGMA社製)
2)平均分子量77,100の50/50Poly(DL-lactide-co-ε-caprolactone)(SIGMA社製)
3)平均分子量10,000のポリエチレングリコール
得られた繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させた試料(人工血管)について重量を測定したところ、1.15〜1.50倍の範囲の間で増加していたことから、含有量は50%未満であった。そして、これらを肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察を行ったところ、何れの試料も表面への付着は見られず、空隙率は約85〜90%で柔軟性は維持されていた。
これらの試料を走査型電子顕微鏡及び光学顕微鏡で断面を観察したところ、ポリエステル繊維間隙に生体内吸収性材料と思われる材料が含有されていた。そして、さらに生体内吸収性物質はミクロな多孔質構造をもっていた。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で682ミクロンであり、含有によって壁自体が厚みを増していた。壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は1.05〜1.19の間であった。すなわち全ての例において含有による厚みの変化は20%未満であった。
これらの試料の含浸後に透水率を測定したところ、いずれも10ml以下であった。すなわち、少量の生体内吸収性材料を用いて、繊維性基材に被覆層を作ることなく、繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させることで、透水率を下げることに成功した。
これらの試料を電子線で滅菌し、ラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取した。採取した試料を光学顕微鏡で観察したところ、全ての生体内吸収性材料はポリエステル繊維間隙から消失していたことが判明した。
次に、このようにして作成した人工血管に於いて血液の漏れテストを行った。まず、これらの人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。この状態で30分間観察した結果、それぞれの人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだが、血液の漏れは見られなかった。この結果、本発明の手法で生体内吸収性材料を繊維間隙に含有させると、漏血を完全に阻止可能である事が明らかとなった。
次に、作成した人工血管のうちで、50/50 Poly(DL-lactide-co-ε-caprolactone)を含有した人工血管(内径7mm、長さ6cm)を選び、成犬体重約10kgを全身麻酔し、清潔操作下に左第6肋間を開いて胸部下降大動脈を露出し、それを切除してその部に準備した人工血管を植え込んだ。植え込みに際しては、人工血管はプレクロッティングをしなかった。植え込み直後の人工血管壁は赤くなったものの、壁からの血液の漏れは認められなかった。
植え込み後2ヶ月目に採取したところ、内面の約40%は光沢のある白色の膜で覆われ、他の部位は薄いフィブリンを含む血栓が付着していた。光学顕微鏡による観察では、50/50poly(DL-lactide-co-ε-caprolactone)は完全に消失しており、繊維間隙には繊維芽細胞が多数侵入している像が見られ、内腔側には平滑筋細胞が層をなして覆っており、その表面には血管内皮細胞が覆っていて、天然の血管壁に酷似した形態を再生させていた。血栓の付着していた部位には内皮細胞は見られなかったが、平滑筋細胞の層は形成されており、まだ再生途中の段階であることを示していた。人工血管周囲は緩やかな結合の粗性結合組織で覆われ、あたかも天然の血管壁外側を覆う外膜組織のごとき状態であった。この結果、50/50poly(DL-lactide-co-ε-caprolactone)が2ヶ月以内の早い時期に吸収され、それと入れ替わって生体の細胞が繊維間隙に侵入し、新しい血管壁を形成していることが判明した。
同様の動物への植え込み実験を平均分子量60,000の50/50Poly(DL-lactide-co-glycolide)及び平均分子量10,000のポリエチレングリコールについて行ったところ、同じ結果を得た。
実施例2
疎水性の繊維性基材として、前述のポリエステル繊維性基材(基材A 透水率200ml)を使用し、生体内吸収物質として融点35〜80℃の炭化水素化合物である白色ワセリン(Petrolatum)(和光純薬株式会社製)を使用して繊維間隙への含有を試みた。先ず、白色ワセリンを60℃に加温して溶解し、これを人工血管内腔に注射器で注入し、人工血管壁内の繊維間隙に含有させ、その後、室温に戻して固化させた。次にその人工血管をオートクレーブ滅菌した。その結果、肉眼的には少し湿潤様に見えたが、ワセリンの付着は肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察では付着が認められなかった。しかし触れた感じは少し柔軟になった感じであった。このようにしてワセリンを含有させた人工血管の重量を測定したところ、ワセリンを含有させる前と後では、重量が1.35倍になっていたことから、ワセリン量は35%であり、空隙率は85〜90%ぐらいで少量の材料の含有で十分であることが判明した。走査型電子顕微鏡で観察したところ、ポリエステル繊維間隙にワセリンと思われる材料が含有されていた。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で662ミクロンであり、含有によって壁自体が厚みをごく僅か増していた。しかし、その表面には被覆層は認められなかった。壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は1.02〜1.08の間であった。すなわち全ての例において含有による厚みの変化は10%未満であった。
次に、この材料の含浸後に透水率を測定したところ、いずれも10ml以下であった。すなわち、少量の生体内吸収性材料を用いて、繊維製基材に被覆層を作ることなく、繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させることで、透水率を下げることに成功した。次にこれを電子線で滅菌した後、ラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取したところ、ワセリンは基材Aの繊維間隙から消失していた。
次に、このようにして作成した人工血管の血液の漏れテストを行った。まず、この人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。
この状態で30分間観察した結果、それぞれの人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだが、血液の漏れは見られなかった。この結果、本発明の手法で生体内吸収性材料を繊維間隙に含有させると、漏血を完全に阻止可能であることが明らかとなった。
この人工血管が実際に動物に人工血管として植え込まれた場合、生体内吸収性材料が生体内で如何なる挙動をとり、実際に繊維間隙から消失し、その部位に細胞が侵入するかどうかを検討した。方法としては実施例1で示したと同様の方法を用いた。成犬体重約10kgを全身麻酔し、清潔操作下に左第6肋間を開いて胸部下降大動脈を露出し、それを切除してその部に準備した人工血管を植え込んだ。植え込みに際しては、人工血管はプレクロッティングをしなかった。植え込み直後の人工血管壁は赤くなったものの、壁からの血液の漏れは認められなかった。
植え込み後2ヶ月目に採取したところ、内面の約40%は光沢のある白色の膜で覆われ、他の部位は薄いフィブリンを含む血栓が付着していた。光学顕微鏡による観察では、ワセリンは完全に消失しており、繊維間隙には繊維芽細胞が多数侵入している像が見られ、内腔側には平滑筋細胞が層をなして覆っており、その表面には血管内皮細胞が覆っていて、天然の血管壁に酷似した形態を再生させていた。血栓の付着していた部位には内皮細胞は見られなかったが、平滑筋細胞の層は形成されており、まだ再生途中の段階であることを示していた。人工血管周囲は緩やかな結合の粗性結合組織で覆われ、あたかも天然の血管壁外側を覆う外膜組織のごとき状態であった。この結果、ワセリンが2ヶ月以内の早い時期に吸収され、それと入れ替わって生体の細胞が繊維間隙に侵入し、新しい血管壁を形成していることが判明した。
実施例3
実施例1で使用した疎水性合成繊維製基材であるポリエステル繊維(基材A)に代えて、前述したe-PTFE(基材B)を用い、実施例1と同様の実験を行った。使用した生体内吸収性材料として、実施例1に記載の1)〜3)を使用し、実施例1と同様の手段によって、繊維間隙への含有を試みた。
含有した壁の断面を切片作成後に光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、5カ所の平均で545ミクロンであった。この人工血管を用いて、実施例1と同じく生体内吸収性材料を20%の濃度になるように1,4-ジオキサンに溶解し、人工血管壁内に含有させる操作を同様に内腔に注射器を用いて圧力をかけ、揉む操作を加えて含浸させた後に凍結乾燥方法を用いて溶媒の1,4-ジオキサンを除去し、生体内吸収性材料が繊維間隙に含有させた。
このようにして繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させた試料を肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察を行ったところ、表面への付着は見られなかったが、触れた感じは少し柔軟になった。空隙率は75〜80%程度であった。走査型電子顕微鏡及び光学顕微鏡で断面を観察したところ、e-PTFEの繊維間隙に生体内吸収性材料と思われる材料が含有されていた。そしてさらに生体内吸収性物質はミクロな多孔質構造をもっていた。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で562ミクロンであり、含有によって壁自体がごく僅か厚みを増していた。壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は1.01〜1.08の間であった。すなわち全ての例において含有による厚みの変化は10%未満であった。
次に、これらの材料の含浸後に透水率を測定したところ、いずれも0ml以下であった。すなわち、少量の生体内吸収性材料を用いて、繊維製基材に被覆層を作ることなく、繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させることで、透水率を下げることに成功した。
次にこれらを電子線で滅菌した後、ラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取したところ、全ての材料はe-PTFE繊維間隙から消失していた。
このようにして作成した人工血管に於いて血液の漏れテストを行った。まず、これらの人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。この状態で30分間観察した結果、それぞれの人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだが、血液の漏れは見られなかった。この結果、本発明の手法で生体内吸収性材料を繊維間隙に含有させると、漏血を完全に阻止可能であることが明らかとなった。
このようにして作成した人工血管が実際に動物に人工血管として植え込まれた場合、生体内吸収性材料が生体内で如何なる挙動をとり、実際に繊維間隙から消失し、その部位に細胞が侵入するかどうかを検討した。方法としては実施例1で示したと同様の方法を用いた。成犬体重約10kgを全身麻酔し、清潔操作下に左第6肋間を開いて胸部下降大動脈を露出し、それを切除してその部に準備した人工血管を植え込んだ。植え込みに際しては、人工血管はプレクロッティングをしなかった。植え込み直後の人工血管壁は赤くなったものの、壁からの血液の漏れは認められなかった。
これらの人工血管を植え込み後2ヶ月目に採取したところ、内面の約40%は光沢のある白色の膜で覆われ、他の部位は薄いフィブリンを含む血栓が付着していた。光学顕微鏡による観察では、生体内吸収性物質は完全に消失しており、繊維間隙には繊維芽細胞が多数侵入している像が見られ、内腔側には平滑筋細胞が層をなして覆っており、その表面には血管内皮細胞が覆っていて、天然の血管壁に酷似した形態を再生させていた。血栓の付着していた部位には内皮細胞は見られなかったが、平滑筋細胞の層は形成されており、まだ再生途中の段階であることを示していた。人工血管周囲は緩やかな結合の粗性結合組織で覆われ、あたかも天然の血管壁外側を覆う外膜組織のごとき状態であった。この結果、生体内吸収性物質が2ヶ月以内の早い時期に吸収され、それと入れ替わって生体の細胞が繊維間隙に侵入し、新しい血管壁を形成していることが判明した。
実施例4
繊維性基材としてe-PTFE(基材B)を用い、生体内吸収性物質としては融点35〜80℃の炭化水素化合物の中での白色ワセリン(Petrolatum和光純薬株式会社製)を使用した。ワセリンを60℃に加温して溶解し、これを人工血管内腔に注射器で注入し、人工血管壁内の繊維間隙に含有させ、その後、室温に戻して固化させた。次いで、この人工血管をオートクレーブ滅菌した。その結果、肉眼的には少し湿潤様に見えたが、ワセリンの付着は肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察では認められなかった。しかし触れた感じは少し柔軟になった。繊維間隙への含有の後に壁の断面を切片作成後に光学顕微鏡及で観察したところ、5カ所の平均で560ミクロンであった。走査型電子顕微鏡で観察では、繊維間隙にワセリンと思われる材料が含有されていた。しかし、その表面には被覆層は認められなかった。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で569ミクロンであり、含有によって壁自体がごく僅か厚みを増していた。壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は1.02〜1.12の間であった。すなわち全ての例において含有による厚みの変化は15%未満であった。このようにしてワセリンを含有させた人工血管の重量を測定したところ、ワセリンを含有させる前と後では、重量が1.10倍になっていたことから、ワセリン量は10%であることが判明した。
生体内吸収性材料を含有させたe-PTFE人工血管で、実際に血液が漏れるかどうかのテストを行った。まず、実施例3で示した手法と同様に生体内吸収性材料を繊維間隙に含有させたe-PTFE人工血管を得た。これらの人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。この状態で30分間観察した結果、人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだが、血液の漏れは見られなかった。この結果、本発明の手法で生体内吸収性材料を繊維間隙に含有させると、漏血を完全に阻止可能であることが明らかとなった。
次に、これらの材料の含浸後に透水率を測定したところ、0mlであった。すなわち、少量の生体内吸収性材料を用いれば、繊維製基材に被覆層を作ることなく、繊維間隙に生体内吸収性材料を含有させることで、透水率を下げることに成功した。次にこれらを電子線で滅菌した。次にそれをラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取したところ、ワセリンは光学顕微鏡の観察では繊維間隙から消失していた。
対照例1
対照実験として、従来技術の方法に則り、従来技術で用いられている生体内吸収性材料を用いて、ポリエステル繊維(基材A)製人工血管への被覆を試みた被覆の手法は特開2004-313310号公報に記載のある浸み込み方法を採用し、3回塗布を行った。但し加圧処理や揉むなどの物理的な手法は用いなかった。
使用した生体内吸収性材料としては、1)平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)、2)平均分子量100,000のpoly(L-lactide)、3)平均分子量100,000のpoly(glycolide)、4)平均分子量100,000のpoly(ε-caprolactone)、5)平均分子量120,000の85/15 poly(DL-lactaide-co-ε-caprolactone)、6)平均分子量4000,000のポリエチレングリコールの5種類である。
このようにして繊維間隙に生体内吸収性材料を被覆させた人工血管を得た。この場合、溶媒を除去する方法としては自然乾燥法を用いた。
次にそれらの人工血管の繊維間隙に生体内吸収性材料を被覆させた試料を肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察を行ったところ、表面へ生体内吸収性材料が層状をなして付着していた。触れた感じは少しごわごわした感じであった。そして細いピンセットで層状をなす部分をつまむと、切断端からは容易に剥離可能であった。
次にこの生体内吸収性材料を含有させた人工血管の重量を測定したところ、いずれも含有させる前と後では、重量が2.90〜3.85倍の間に増加していたことから、含量は200%以上であり、大量の材料が使用されていることが判明した。走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡で観察したところ、ポリエステル繊維間隙には生体内吸収性材料と思われる材料が少量含有されていた。それと同時に布の表面にはポリエステル繊維層よりも少なくとも3倍以上厚い被覆層が形成されていた。被覆層内部には多孔質構造は認められなかった。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で1550ミクロンであり、含有によって壁自体の厚みの変化に比べると、壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は2.12〜3.69の間であった。すなわち全ての例において含有による厚みの変化は200%以上であった。
次に、透水率を測定したところ、いずれも10ml以下であった。すなわち、大量の生体内吸収性材料を被覆することによって透水率を下げることができた。しかしピンセットでつまむ行為で被覆層のはがれる可能性を示した。
次にこれらを電子線で滅菌し、ラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取したところ、全ての材料がポリエステル繊維の付近に残存していた。すなわち、生体内吸収性材料の被覆によっては短期間には分解吸収されないことが判明した。
この人工血管で血液が漏れるかどうかのテストを、平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)について動物を用いて行った。方法としてはこれらの人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。
この状態で30分間観察した結果、人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだところ、部分的に被覆層がはがれ、その部位からごく僅かではあるが血液が漏れ始め、その後10分間以上漏れが持続したので、この部位は圧迫止血をせざるを得なかった。この結果、本発明の手法で、対照として従来の被覆方式や特開2004-313310号公報記載の手法の被覆では被覆層が何かの刺激ではがれることがあり、剥がれると出血が持続することが明らかとなった。
このようにして作成した人工血管が実際に動物に人工血管として植え込まれた場合、生体内吸収性材料が生体内で如何なる挙動をとり、実際に繊維間隙から消失し、その部位に細胞が侵入するかどうかを検討した。方法としては平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)が被覆された人工血管を用いた。成犬体重約10kgを全身麻酔し、清潔操作下に左第6肋間を開いて胸部下降大動脈を露出し、それを切除してその部に準備した人工血管を植え込んだ。植え込みに際しては、人工血管はプレクロッティングをしなかった。植え込み直後の人工血管壁は赤くなったものの、壁からの血液の漏れは認められなかった。
植え込み後2ヶ月目に採取したところ、内面の約10%、すなわち天然の血管との吻合部付近のみは光沢のある白色の膜で覆われていたが、他の部位は厚い血栓が付着していた。光学顕微鏡による観察では、吻合部付近の生体内吸収性物質は完全に消失しており、繊維間隙には繊維芽細胞が多数侵入している像が見られ、内腔側には平滑筋細胞が層をなして覆っており、その表面には血管内皮細胞が覆っていて、天然の血管壁に酷似した形態を再生させていた。しかし吻合部から5mmほど離れると血栓が厚く付着し、この部分には内皮細胞は見られず、平滑筋細胞の層も見られなかった。そしてその部位では内側及び外側に生体内吸収性物質が層をなして残存していた。この結果、厚く被覆された生体内吸収性物質が2ヶ月経過後も残存していて、新しい血管壁の形成を、吻合部以外では、阻害していることが判明した。
対照例2
対照例1で行った動物への植え込み試験と同様の試験を行った。使用した生体内吸収性物質として、対象例1の平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)に代えて平均分子量100,000のpoly(L-lactide)、平均分子量100,000のpoly(glycolide)、平均分子量100,000のpoly(ε-caprolactone)、平均分子量120,000の85/15 poly(DL-lactaide-co-ε-caprolactone)、平均分子量4000,000のポリエチレングリコールを使用、それ以外は対照例1と全く同様の手段で行った。その結果、対照例1と同様の結果であり、厚く被覆された生体内吸収性物質が2ヶ月経過後も残存し、新しい血管壁の形成を、吻合部以外では、阻害していることが判明した。
対照例3
ポリテトラフルオロエチレン製の人工血管e-PTFEの代表として、市販の人工血管GoreTex Graft (Gore社製、フィブリル長:30ミクロン)を用いた。この人工血管に対して、対照例1と同様の方法で生体内吸収性物質を被覆させた。使用した生体内吸収性材料としては対照例3と同じく特開2004-313310号公報や特開2005-34239号公報に記載のある以下の材料を選んだ。すなわち使用した生体内吸収性材料は1)平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)、2)平均分子量40,000のpoly(L-lactide)、3)平均分子量100,000のpoly(glycolide)、4)平均分子量100,000のpoly(ε-caprolactone)、5)平均分子量120,000の85/15 poly(DL-lactaide-co-ε-caprolactone)、及び6)平均分子量4000,000のポリエチレングリコールである。いずれもSIGMA社もしくはAbsorbable polymers international社の製品である。
作成した人工血管の壁を肉眼的および10倍のルーペによる拡大観察を行ったところ、表面へ生体内吸収性材料が層状をなして付着していた。触れた感じは少しごわごわした感じであった。そして細いピンセットで層状をなす部分をつまむと、切断端からは容易に剥離可能であった。
生体内吸収性材料を含有させた人工血管の重量を測定したところ、いずれも含有させる前と後では、重量が2.40〜3.15倍の間に増加していたことから、含有量は200%以上であることが判明した。走査型電子顕微鏡で観察したところ、e-PTFEの繊維間隙に生体内吸収性材料と思われる材料はほとんど見ることができなかった。走査型電子顕微鏡及び光学顕微鏡で断面を観察したところ、繊維間隙に生体内吸収材料が含有されていた。しかし、その表面には被覆層は認められなかった。壁の厚みは5カ所の測定部位での平均で1307ミクロンであり、含有によって壁自体が大幅に厚みを増していた。壁断面における繊維部分とトータルの厚みとの比率は2.04〜3.11の間であった。すなわち全ての例において被覆による厚みの変化は200%以上であった。
次に、これらの材料の含浸後に透水率を測定したところ、いずれも0mlであった。
次にこれらを電子線で滅菌した。次にそれをラットの皮下組織に植え込み、2ヶ月後に採取したところ、全ての材料がe-PTFEの付近に残存していた。
次にこれらの人工血管で血液が漏れるかどうかのテストを動物を用いて行った。方法としてはこれらの人工血管で、内径が6mmの製品を選び、長さ10cmに揃えて、塩化ビニールチューブに直列に接続して、一本の管にした。成犬体重約10kgを全身麻酔し、左頸動脈を露出し、この部に作製した管を挿入して、ex-vivoで動脈動脈のシャントを作製した。この状態で動物にヘパリンを1ml静脈注射し、ACT値(凝固時間)300秒以上に血液状態を維持した。
この状態で30分間観察した結果、人工血管は赤く血液が滲みはしたものの壁面から漏れることはなかった。その後、ピンセットで各人工血管を10回以上きつくつまんだところ、部分的に被覆層がはがれ、その部位からごく僅かではあるがその部分から血清様の液がにじみ出て「汗かき現象」が見られた。この結果、対照例で示した特許文献11(特開2004-313310号)の手法の被覆では、被覆層が手術操作によって剥がれてセローマを形成する可能性が有ることが判った。
このようにして作成した人工血管が実際に動物に人工血管として植え込まれた場合、生体内吸収性材料が生体内で如何なる挙動をとり、実際に繊維間隙から消失し、その部位に細胞が侵入するかどうかを検討した。方法としては平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)が被覆されたe-PTFE人工血管を用いた。成犬体重約10kgを全身麻酔し、清潔操作下に左第6肋間を開いて胸部下降大動脈を露出し、それを切除してその部に準備した人工血管を植え込んだ。植え込みに際しては、人工血管はプレクロッティングをしなかった。植え込み直後の人工血管壁は赤くなったものの、壁からの血液の漏れは認められなかった。
植え込み後2ヶ月目に採取したところ、内面の約8%、すなわち天然の血管との吻合部付近のみは光沢のある白色の膜で覆われていたが、他の部位は厚い血栓が付着していた。光学顕微鏡による観察では、吻合部付近の生体内吸収性物質は完全に消失しており、繊維間隙には繊維芽細胞が多数侵入している像が見られ、内腔側には平滑筋細胞が層をなして覆っており、その表面には血管内皮細胞が覆っていて、天然の血管壁に酷似した形態を再生させていた。しかし吻合部から4mmほど離れると血栓が厚く付着していた。光学顕微鏡による観察では、人工血管周囲に100,000のpoly(DL-lactide)と思われる無構造の物質が残存し、その部分へは平滑筋細胞や内皮細胞、線維芽細胞等の侵入が見られなかった。吻合部付近のみは宿主の動脈壁から伸展してきた内皮細胞に覆われていたが、吻合部から約1cm離れると、人工血管内面は血栓組織に覆われたままであった。人工血管周囲は肉芽組織から瘢痕組組織の様な固い結合組織で覆われ、瘢痕組織形成への途上過程状態であった。この結果、人工血管壁ではpoly(ε-caprolactone)が残存し、細胞の侵入を阻止していることが判明し、自然な治癒が進行せず、人工血管内面では血栓組織が付着し、それが剥がれやすい状況に有ることが判明した。
対照例4
対照例3では動物への植え込みし際して、平均分子量100,000のpoly(DL-lactide)が被覆された人工血管を用いたが、その代わりに、平均分子量100,000のpoly(L-lactide)、平均分子量100,000のpoly(glycolide)、平均分子量100,000のpoly(ε-caprolactone)、平均分子量120,000の85/15 poly(DL-lactaide-co-ε-caprolactone)、平均分子量4000,000のポリエチレングリコールをそれぞれ被覆した人工血管でも同様の動物への植え込みをおこなった。その結果、対照例3と同様の結果であり、厚く被覆された生体内吸収性物質が2ヶ月経過後も残存していて、新しい血管壁の形成を、吻合部以外では、阻害していることが判明した。

Claims (5)

  1. 疎水性繊維性基材の繊維間隙に生体内吸収性疎水性高分子材料を含有することを特徴とする医療材料。
  2. 前述の疎水性生体内吸収性高分子材料が合成高分子もしくは鉱物油のいずれかであることを特徴とする請求項1の医療材料。
  3. 医療材料が人工血管や人工気管などとして生体内の管腔臓器や管腔組織の代替えもしくはその一部に使用され、又は、人工心膜、人工心臓壁、人工腹壁、人工血管壁、人工胸壁、人工硬膜、人工膀胱壁などとして生体内の臓器や組織にパッチ状に使用されることを特徴とする請求項1〜2のいずれかの項に記載の医療材料。
  4. 前記疎水性生体内吸収性材料を加熱もしくは有機溶剤により、液状又は溶液状態とし、これを該繊維性基材の繊維間隙に含浸させる、該繊維性基材の一面から他面に向かって圧力差を設ける、揉む、振動を加える、加温する等の少なくとも1種の物理的機械的刺激によって繊維間隙に含有させることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項に記載の医療材料の製造方法。
  5. 前記疎水性生体内吸収性材料が、造孔成分の混在、凍結乾燥、湿式溶媒除去のいずれかの手法で多孔質にする過程を持つことを特徴とする請求項4項記載の医療材料の製造方法。
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