JP2007219031A - 感光性平版印刷版およびその製造方法 - Google Patents

感光性平版印刷版およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温短時間乾燥の下でも現像液に対し広いラチチュードを有し、なおかつ、特に耐傷性が良好な感光性平版印刷版、特に赤外線レーザ用感光性平版印刷版の製造方法を提供すること。
【解決手段】 高分子化合物及び赤外線吸収剤を含む感光性組成物を沸点の異なる3以上の有機溶剤混合物中に溶解して塗布溶液を調製する調液工程、及び、該塗布溶液を親水性表面を有する支持体上に塗布し乾燥して感光層を塗設する塗設工程、を含む感光性平版印刷版の製造方法であって、該有機溶剤混合物は、沸点が50℃以上100℃未満の低沸点有機溶剤Aがa重量部、沸点が100℃以上150℃未満の中沸点有機溶剤Bがb重量部、及び、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤Cがc重量部、からなり、b>aかつb>cであることを特徴とする、感光性平版印刷版の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は感光性平版印刷版およびその製造方法に関し、詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザ光を走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な感光性平版印刷版およびその製造方法に関する。
近年におけるレーザの発展は目覚しく、特に近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ固体レーザや半導体レーザでは、高出力化と小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等から出力されたディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
前述の近赤外および赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザを露光光源として使用する、赤外線レーザ用平版印刷版材料の一例は、バインダー樹脂と光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とする平版印刷版材料である。該赤外線レーザ用平版印刷版材料に前記赤外線レーザを露光すると、ポジ型の場合、未露光部(画像部)では該赤外線レーザ用平版印刷版材料中のIR染料等が、前記バインダー樹脂との相互作用により該バインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、前記IR染料等が光を吸収して熱を発生するため、該IR染料等と前記バインダー樹脂との相互作用が弱くなる。したがって現像時には、前記露光部(非画像部)がアルカリ現像液に溶解し、平版印刷版が形成される。
このような赤外線レーザ用平版印刷版材料においては、現像液に対するラチチュードをいかに確保するかが課題の1つである。すなわち、現像液の濃度が濃い場合などの高活性の現像液では、画像部が溶出してしまい画像形成できないが、一方で現像液の濃度が薄い場合などの低活性の現像液では、非画像部の溶出が不十分であり残色や汚れの発生につながるといった問題があるため、この活性の幅をいかに広くするかが課題にあげられる。
この課題に対し、特定構造を有する2種類の溶剤を混合し塗布溶剤として使用することが提案されているが(特許文献1参照)、特に高生産性を必要とする高温短時間乾燥では、その効果が不十分であった。
またこのような赤外線レーザ用平版印刷版材料においては、耐傷性を向上させることも別の課題として挙げられる。この課題に対しても種々の検討がなされており、例えば感光層中にフッ素系ポリマーを含有させることが提案されているが(特許文献2参照)、更なる耐傷性向上が望まれている。
特開2000−3031号公報 特開2003−66607号公報
本発明の目的は、高温短時間乾燥の下でも現像液に対し広いラチチュードを有し、なおかつ、特に耐傷性が良好な感光性平版印刷版、特に赤外線レーザ用感光性平版印刷版およびそれらの製造方法を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、上述した課題目的が、以下に列記する赤外線レーザ用感光性平版印刷版およびその製造方法により達成されることを見出した。
1)高分子化合物及び赤外線吸収剤を含む感光性組成物を沸点の異なる3以上の有機溶剤混合物中に溶解して塗布溶液を調製する調液工程、及び、該塗布溶液を親水性表面を有する支持体上に塗布し乾燥して感光層を塗設する塗設工程、を含む感光性平版印刷版の製造方法であって、該有機溶剤混合物は、沸点が50℃以上100℃未満の低沸点有機溶剤Aがa重量部、沸点が100℃以上150℃未満の中沸点有機溶剤Bがb重量部、及び、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤Cがc重量部、からなり、b>aかつb>cであることを特徴とする、感光性平版印刷版の製造方法、
2)該溶解工程及び該塗設工程に引き続いて、塗設された感光層の組成と異なっても良い別の感光層を塗設する工程を含む、1)記載の感光性平版印刷版の製造方法、
3)高分子化合物としてマレイミド化合物を構成単位とする共重合体を含む1)又は2)記載の感光性平版印刷版の製造方法、
4)1)〜3)いずれか1つに記載の製造方法により製造された感光性平版印刷版。
本発明により、広い現像ラチチュードを有し、なおかつ耐傷性に優れた感光性平版印刷版を提供することができる。
本発明の平版印刷版、好ましくは赤外線レーザ用感光性平版印刷版の製造方法は、高分子化合物と赤外線吸収剤とを、沸点が50℃以上100℃未満の有機溶剤Aのa重量部、沸点が100℃以上150℃未満の有機溶剤Bのb重量部、沸点が150℃以上の有機溶剤Cのc重量部、の3種類の塗布溶剤よりなる混合溶剤に溶解した感光性組成物溶液を調液する工程、親水性表面を有する支持体上に前記溶液を塗布した後乾燥する塗設工程を含む製造方法であって、感光性組成物溶液における3種類の塗布溶剤の重量部がb>aかつb>cであることを特徴とする。
本発明の平版印刷版の製造方法は、上記溶解工程及び上記塗設工程に引き続いて、塗設された感光層の組成と異なっても良い別の感光層を塗設する工程を含んでもよい。
以下に、各項目について順次説明する。
本発明の感光性平版印刷版は、沸点がA<B<Cである少なくとも3種類の塗布溶剤A・B・Cを、それぞれの溶剤の重量部a、b及びcがb>aかつb>cになるよう使用することで、高温短時間乾燥の下でも現像液に対し広いラチチュードを有し、なおかつ耐傷性に優れた赤外線レーザ用感光性平版印刷版を得ることが可能である。この理由は以下のように考えられる。すなわち、高沸点有機溶剤Cの含有率が高いと平版印刷版中に含まれる残留溶剤が多くなるため、現像ラチチュードが狭くなりまた耐傷性が劣化する。また低沸点有機溶剤Aの含有率が高いと、高温短時間乾燥の初期に溶剤蒸発が一気に進むため表面皮膜が形成し、溶剤の蒸発が抑制されるため残留溶剤が多くなり、現像ラチチュードが狭くなりまた耐傷性が劣化する。一方、中沸点有機溶剤Bの含有率が高いと、いずれの事象も発生せず残留溶剤が少なくなり、広い現像ラチチュードを得ることができなおかつ耐傷性に優れると考えられる。
〔塗布溶剤〕
本発明の平版印刷版、好ましくは赤外線レーザ用感光性平版印刷版は、少なくとも高分子化合物と赤外線吸収剤とを、沸点が50℃以上100℃未満の有機溶剤Aのa重量部、沸点が100℃以上150℃未満の有機溶剤Bのb重量部、沸点が150℃以上の有機溶剤Cのc重量部、の3種類の塗布溶剤よりなる混合溶剤に溶解した感光性組成物溶液を、親水性表面を有する支持体上に塗設した後乾燥することにより感光層を設けることで得ることができる。ここで、3種類の塗布溶剤A・B・Cの各重量部がb>aかつb>cであることを特徴としている。
ここで使用する塗布溶剤A、B及びCとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタングリコール、ジメチルトリグリコール、フルフリルアルコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ブチルフェニルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、イソホロン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、炭酸プロピレン、酢酸フェニル、酢酸−sec−ブチル、酢酸シクロヘキシル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、3−エトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−エチル−1−ペンタノール、4−エトキシ−1−ペンタノール、5−メトキシ−1−ヘキサノール、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−3−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、3−メチル−3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、メチルセルソルブ(MC)、エチルセルソルブ(EC)、アリルアルコール、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルカルビトール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、アセトン、メチルプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、n−ペンタン、2−メチルペンタン、3−エチルペンタン、メチルシクロペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、クメン、n−アミルベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルジグリコール(DMDG)、といった溶剤を例示することができる。これらの溶媒の定圧における沸点が50℃以上100℃未満の有機溶剤A、沸点が100℃以上150℃未満の有機溶剤B、沸点が150℃以上の有機溶剤C、に分類し、それぞれから少なくとも1種類を選ぶことで達成される。2種以上の有機溶媒を併用する場合には、それらの有機溶媒の総量を該当する重量部(a,b,c)とする。また、有機溶媒A、B及びCは、それぞれ2種以上を併用しても良いが、単独使用が好ましい。なお、高沸点有機溶媒の沸点は、好ましくは150−250℃、より好ましくは150−210℃である。
これらのうち、沸点が50℃以上100℃未満の有機溶剤Aとして好ましいのは、メタノール(沸点64.5℃)、エタノール(沸点78.3℃)、イソプロパノール(沸点82.4℃)、アセトン(沸点56.1℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)であり、特に好ましいのは、メタノール、メチルエチルケトンである。また、沸点が100℃以上150℃未満の有機溶剤Bとして好ましいのは、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、2−メトキシエタノール(沸点125℃)、乳酸メチル(沸点145℃)であり、特に好ましいのは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチルである。さらに、沸点が150℃以上の有機溶剤Cとして好ましいのは、ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、ジメチルアセトアミド(沸点166℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)であり、特に好ましいのジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンである。
有機溶媒A、B、Cは、その混合溶媒が、高分子化合物、赤外線吸収剤等の感光層成分を溶解するための適度の極性を有することが好ましい。いずれの溶媒も、誘電率が10以上であることが好ましく、更に以下の誘電率範囲にあることが特に好ましい。有機溶媒Aは10〜35(25℃)の誘電率を有し、有機溶媒Bは10〜20(25℃)の誘電率を有し、又、有機溶媒Cは、10〜50(25℃)の誘電率を有することが好ましい。
また3種類の塗布溶剤A・B・Cの組成比としては、溶剤の重量部がb>aかつb>cであることが必要である。具体的には、溶剤Aの重量比a/(a+b+c)は5〜40%が好ましく、15〜35%が特に好ましい。この範囲内であると残留溶剤が減少し、現像ラチチュードが広くなる。溶剤Bの重量比b/(a+b+c)は35〜65%が好ましく、35〜55%が特に好ましい。溶剤Cの重量比c/(a+b+c)は5〜30%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。この範囲内であると残留溶剤が減少し、現像ラチチュードが広くなり、また現像性が向上する。
なお、3種類の混合溶剤に、少なくとも高分子化合物と赤外線吸収剤とを溶解して感光性組成物溶液とするが、混合溶媒中の全固形分の濃度は1〜50質量%であり、好ましくは1〜30質量%である。
以下に、感光性組成物溶液の溶質成分について述べる。
〔高分子化合物〕
本発明の感光性平版印刷版の感光層では、高分子化合物を必須成分として含有する。以下に高分子化合物の好ましい例を記載するが、この条件を満たす樹脂であれば特に限定されない。
本発明の平版印刷版の感光層に用いられる高分子化合物は、現像性を確保する観点から、アルカリ可溶性もしくはアルカリ膨潤性の高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖中及び/又は側鎖中に有する高分子化合物をあげることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO32
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する高分子化合物としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有する高分子化合物としては、ノボラック樹脂、キシレノール樹脂、レゾール樹脂等が挙げられ、具体的には、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール樹脂、キシレノール/フェノール混合樹脂、キシレノール/ノボラック混合樹脂、キシレノール/ノボラック/フェノール混合樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。また、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた高分子化合物を挙げることもでき、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等を共重合成分とした高分子化合物が挙げられる。
(2)スルホンアミド基を有する高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記式(i)〜式(v)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2007219031
〔式中、X1、X2は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。〕
式(i)〜式(v)で表される化合物のうち、本発明の重層感材型印刷版原版では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(3)活性イミド基を有する高分子化合物としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
Figure 2007219031
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(4)カルボン酸基を有する高分子化合物としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。本発明の重層感材型印刷版原版では、特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸を好適に使用することができる。
(5)スルホン酸基を有する高分子化合物としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有する高分子化合物としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
上述以外にも、(1)〜(6)の酸性基を側鎖に有し、連結基として尿素結合を有する不飽和化合物を用いた重合体も使用可能である。
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する高分子化合物の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基および(4)カルボン酸基を有する高分子化合物が好ましく、特に、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基または(4)カルボン酸基を有する高分子化合物が、最も好ましい。
また前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
高分子化合物が共重合体である場合は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に3モル%以上含まれているものが好ましく、5モル%以上含まれているものがより好ましい。3モル%未満であると、実質的に溶剤を含まないアルカリ性現像液への溶解性が低下してしまう。
前記酸性基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマー成分としては、例えば、下記(m1)〜(m11)に挙げるモノマーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
本発明における高分子化合物は、異なる2種以上の高分子化合物を併用しても良い。
以上例示した高分子化合物のうち、ノボラック樹脂、キシレノール樹脂が好適に用いられ、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール樹脂、キシレノール/フェノール混合樹脂、キシレノール/ノボラック混合樹脂、キシレノール/ノボラック/フェノール混合樹脂等をあげることができる。また、スルホンアミド基またはカルボン酸基を有する高分子化合物も好適に用いられ、共重合体であることが好ましい。その共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどが好適に用いられるが、その他前述のモノマー成分を微量含有させてもよい。さらに、N−フェニルマレイミドなどのマレイミドを構成成分とする共重合体も高分子化合物として特に好適に用いられ、その共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、などが用いられるが、その他前述のモノマー成分を微量含有させてもよい。
本発明において高分子化合物がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。それ以外の高分子化合物の場合は、重量平均分子量は2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
本発明においては、高分子化合物の添加量としては30〜99重量%、好ましくは50〜99重量%、特に好ましくは65〜99重量%の添加量で用いられる。高分子化合物の添加量が前記の範囲内であると感熱層の耐久性が高く感度が高いため、好ましい。
〔赤外線吸収剤〕
赤外線吸収剤としては、公知の種々の顔料や染料等が好適に挙げられる。前記顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
前記顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
前記顔料は、表面処理をせずに用いてもよく、表面処理をほどこして用いてもよい。該表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。前記表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
前記顔料の粒径としては、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。前記顔料の粒径が、前記の範囲内にあると塗布液が安定であり、均一な感光層が得られる。
前記顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。前記分散には、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等の分散機が用いられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。前記顔料、又は染料のうち赤外光、又は近赤外光を吸収する顔料・染料が、赤外光又は近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で、特に好ましい。
前記赤外光、又は近赤外光を吸収する顔料としては、カーボンブラックが好適に用いられる。また、前記赤外光、又は近赤外光を吸収する染料としては、例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、前記染料としては、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、Epolight III−178、EpolightIII−130、Epolight III−125、EpolightV−176A等は特に好ましく用いられる。
また、前記染料として、特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料が挙げられる。前記顔料又は染料の添加量としては、印刷版材料全固形分に対し0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。前記染料の場合には、0.5〜10重量%が特に好ましく、顔料の場合には、3.1〜10重量%が特に好ましい。前記の範囲内にあると高い感度が得られ、均一な感光層が維持でき記録層の耐久性が高い。
〔記録層の層構成〕
本発明の感光性平版印刷版の記録層は単層構造、相分離構造、及び重層構造のいずれでも用いることができる。
単層型記録層としては、例えば特開平7−285275号公報、国際公開97/39894号パンフレット記載の感光層、相分離型記録層としては、例えば特開平11−44956号公報記載の感光層、重層型記録層としては、例えば特開平11−218914号公報、米国特許第6352812B1号、米国特許第6352811B1号、米国特許第6358669B1号、米国特許第6534238B1号、欧州特許第864420B1号明細書記載の感光層として用いることができるが、これらに限定されない。また重層構造の場合、本発明の高分子化合物および赤外線吸収剤については、下層、及び上層に限定されず、いずれの層に含まれていてもよい。また下層と上層の高分子化合物は、同一でも異なっていてもよい。
〔その他の成分〕
本発明に関する塗布層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、記録層の溶解性を調節するために、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することが好ましく、中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性を制御できる点で好ましい。
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩、4級アンモニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましい。特に、ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。また4級アンモニウム塩としては、特開2002−229186号公報に記載の(化5)、(化6)中の(1)〜(10)に示される4級アンモニウム塩が好ましい。またスルホニウム塩としては、特開2005−266003号公報に記載の(化2)中の一般式(II)で示されるスルホニウム塩が好ましい。
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸、及び2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸が好適である。
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
また、本発明の感光性組成物には、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および可塑剤も、本発明のポジ型記録層に使用することができる。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類、及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
更に、本発明の感光性組成物には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
〔塗布方法等〕
本発明の感光性平版印刷版は、前述の感光性組成物溶液を適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。また、目的に応じて、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
塗布、乾燥後に得られる固形分塗布量は、単層の場合0.3〜5.0g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0g/m2の範囲である。また重層の場合は、上層は0.05〜2.0g/m2、下層は0.3〜5.0g/m2がそれぞれ好ましく、より好ましくは、上層は0.1〜1.0g/m2、下層は0.5〜3.0g/m2の範囲である。また上層と下層との塗布量の比は、0.05〜1が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8の範囲である。
記録層塗布液を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
〔支持体〕
本発明の感光性平版印刷版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフイルム(例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフイルム等が挙げられる。
感光性平版印刷版に適用し得る支持体としては、ポリエステルフイルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用である素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.12mm〜0.4mmである。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組合せた方法も利用することができる。このうち、少なくとも塩酸電解液中で粗面化する工程を含むことが好ましい。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
〔下塗層〕
本発明の感光性平版印刷版は、支持体上に先述したような画像記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。この下塗層を設けることで、支持体と記録層との間の下塗層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この下塗層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が下塗層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの下塗層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この下塗層は有用であると考えられる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
さらに下記式で示される構造単位を有する有機高分子化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む下塗層も好ましい。
Figure 2007219031
式中、R11は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、−OR14、−COOR15、−CONHR16、−COR17若しくは−CNを表すか、又はR12及びR13が結合して環を形成してもよく、R14〜R17はそれぞれ独立してアルキル基又はアリール基を表し、Xは水素原子、金属原子、NR18192021を表し、R18〜R21はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基若しくは置換アリール基を表すか、又はR18及びR19が結合して環を形成してもよく、mは1〜3の整数を表す。
また、本発明における好適な下塗層成分として、特開2000−241962号公報に記載の酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を挙げることができる。具体的には、酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。酸基として好ましいのは酸解離指数(pKa)が7以上の酸基であり、より好ましくは−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、または−SO2NHSO2−であり、特に好ましくは−COOHである。酸基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、上記酸基を有するスチレンなどが挙げられる。オニウム塩として好ましいのは、周期表V族あるいは第VI族の原子からなるオニウム基であり、より好ましくは窒素原子、リン原子あるいは硫黄原子から成るオニウム塩であり、特に好ましくは窒素原子から成るオニウム塩である。オニウム塩を有するモノマーの具体例としては、側鎖にアンモニウム基を有するメタクリレート、メタクリルアミド、第4級アンモニウム基などのオニウム基を含む置換基などのオニウム基を含む置換基を有するスチレン等が挙げられる。
さらに、特開2000−108538号公報、特願2002−257484号公報、特願2003−78699号公報、等に記載されているような化合物についても、必要に応じて用いることができる。
これらの下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
〔露光〕
本発明の感光性平版印刷版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましく、記録材料に照射されるエネルギーは10〜500mJ/cm2であることが好ましい。
〔現像〕
本発明においては、露光された感光性平版印刷版は、実質的に有機溶剤を含まないpH12以上のアルカリ性水溶液で現像されることが好ましい。ここで「実質的に有機溶剤を含まない」とは、環境衛生、安全性、作業性等の観点からみて不都合を生じる程度までは有機溶剤を含有しない、の意味であるが、本発明においては現像液中の有機溶剤の割合が0.5重量%以下であることをいい、好ましくは0.3重量%以下、全く含有しないのが最も好ましい。またpHは12.0以上であるが、より好ましくは12.0〜14.0である。
現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記のアルカリ水溶液の内、本発明による効果が発揮される現像液は、一つは塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、いわゆる「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液で、もう一つのより好ましい現像液は、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」である。
前者においては、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能であり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4質量%であり、かつ該現像液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有している、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液が好適に用いられる。
また、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基とを含有したいわゆる「ノンシリケート現像液」も好適に使用できる。この場合、pHの変動を抑える緩衝性を有する非還元糖を含有することが好ましい。非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明において用いることができる。なお、本発明においては、特開平8−305039号公報に記載された非還元糖を好適に使用することができる。
前記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース等が挙げられる。前記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。前記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等が挙げられる。更に、二糖類のマルトースに水素添加したマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等が好適に挙げられる。これらの非還元糖の中でも、トレハロース型少糖類、糖アルコールが好ましく、その中でも、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめ、等が適度なpH領域に緩衝作用があり、低価格である点で好ましい。
これらの非還元糖は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。前記非還元糖の前記ノンシリケート現像液中における含有量としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記の含有量範囲内であると、適切な緩衝作用が得られる。
また、前記非還元糖と組合せて用いられる塩基としては、従来より公知であるアルカリ剤、例えば、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤等が挙げられる。無機アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等が挙げられる。
有機アルカリ剤としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等が挙げられる。
前記塩基は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの塩基の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。また、本発明においては、前記ノンシリケート現像液として、非還元糖と塩基との併用に代えて、非還元糖のアルカリ金属塩を主成分としたものを用いることもできる。
また、前記ノンシリケート現像液に、前記非還元糖以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を併用することができる。前記弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましく、例えば、Pergmon Press 社発行のIonization Constants of Organic Acidsin Aqueous Solution 等に記載されているものから選択できる。
具体的には、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール等のアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(、ピリジン−4−アルデヒド(等のアルデヒド類、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、カテコール、没食子酸、スルホサリチル酸、3,4−ジヒドロキシスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール、o−、m−,p−クレゾール、レゾルソノール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトキシム、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム、ジメチルグリオキシム、エタンジアミドジオキシム、アセトフェノンオキシム等のオキシム類、アデノシン、イノシン、グアニン、シトシン、ヒポキサンチン、キサンチン等の核酸関連物質、その他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸、ベンズイミダゾール、バルビツル酸等が好適に挙げられる。
前記現像液及び補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散または、印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。前記界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が好ましい。更に、前記現像液及び補充液には、必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤等を加えることができる。
前記現像液及び補充液を用いて現像処理された画像形成材料は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。前記画像形成材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。 上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の感光性組成物を用いた平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
本発明の感光性組成物を用いた平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フイルムのフイルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を経て処理することで支持体を作製した。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
電解液としては、温度43℃、濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)の硫酸を用いた。電流密度は約30A/dm2で行い、最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
上述した(a)〜(j)の工程を組み合わせることで、以下に示す支持体A〜Dを作製した。
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体Aを作製した。
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Bを作製した。
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Cを作製した。
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体Dを作製した。
このようにして得られた支持体A〜Dには、引き続き下記(k)に示すシリケート処理、および下塗りの形成を行った。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の1号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層へ10秒間浸せきすることで、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。シリケート付着量は5.5mg/m2であった。
〔下塗りの形成〕
このように処理されたアルミニウム板に、まずワイヤーバーを用いて次の下塗り液(1)を塗布したあと80℃で20秒間乾燥した。乾燥後の塗布量は0.02g/m2であった。
下塗り液
下記化合物 0.1g
Figure 2007219031
メタノール 100.0g
このあと、後述する感光層の形成1〜3いずれかの方法で、感光性平版印刷版を作製した。
[感光層の形成1]
中間層を設けた支持体に、下記組成の塗布液Aを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を0.8g/m2とし、下層を設けた。
また下層を設けた後、下記組成の塗布液Bをワイヤーバーで塗布した。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.0g/m2として感光性平版印刷版を得た。
<塗布液A>
・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル=35/35/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量6.5万) 3.5g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量6000) 0.6g
・下記赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.25g
Figure 2007219031
・エチルバイオレットの対アニオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料
0.15g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・塗布溶剤 表1参照
<塗布液B>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、重量平均分子量8000) 1.7g
・上記赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.15g
・下記化合物Q 0.35g
Figure 2007219031
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 33.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 67.0g
[感光層の形成2]
中間層を設けた支持体に、下記組成の塗布液Cを、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.3g/m2とし、下層を設けた。
また下層を設けた後、上記組成の塗布液Bをワイヤーバーで塗布した。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、総塗布量を1.8g/m2として感光性平版印刷版を得た。
<塗布液C>
・N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸=45/35/20(モル比)の共重合体(重量平均分子量50,000) 0.85g
・エチルバイオレット 0.05g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・塗布溶剤 表1参照
[感光層の形成3]
中間層を設けた支持体に、下記組成の塗布液Dを、ワイヤーバーで塗布したのち、160℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.20g/m2として感光性平版印刷版を得た。
<塗布液D>
・2−(N’−(4−カルボキシフェニル)ウレイド)エチルメタクリレート/N−フェニルマレイミド=75/25(重量比)の共重合体(重量平均分子量30,000) 0.40g
・N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸=45/35/20(モル比)の共重合体(重量平均分子量50,000) 0.45g
・上記赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.10g
・エチルバイオレット 0.05g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g
・塗布溶剤 表1参照
以上の作成方法により、支持体、感光層塗布液に用いる溶剤、感光層の形成方法をそれぞれ表1のように組み合わせて、実施例1〜16、比較例1〜4の感光性平版印刷版を得た。
Figure 2007219031
〔感光性平版印刷版の評価〕
[残留溶剤の測定]
得られた感光性平版印刷版の残留溶剤量を、ガスクロマトグラフィーを用い測定した。各溶剤での検量線をあらかじめ描いておき、印刷版の小片中に含まれる溶剤量を定量化した。
[現像ラチチュードの評価]
得られた感光性平版印刷版を、Creo社製Trendsetterにて、露光エネルギー150mJ/cm2でテストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像し、評価用サンプルを得た。このとき現像液としては、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2Rと水道水とを1:6.5の比率で混合した液に炭酸ガスを吹き込んだ液を使用した。またガム液としては、富士写真フイルム(株)製ガム液FG−1と水道水とを1:1の比率で混合し希釈したものを使用した。
現像液の電導度を42mS/cmから58mS/cmまで2mS/cm間隔で変化させ、得られたサンプルの画像部と非画像部を観察した。非画像部についてはルーペでポツ状の残膜を観察して、残膜が発生しなくなる最も低い電導度を低液感側の現像ラチチュードと、また画像部については濃度を目視で観察して、濃度低下が発生しなくなる最も高い電導度を高液感側の現像ラチチュードとし、それぞれ数値化した。
[耐傷性の評価]
得られた感光性平版印刷版を、ロータリーアブレーションテスター(TOYOSEIKI社製)を用い、250gの加重下、アブレーザーフェルトCS5で50回摩耗させた。その後、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像し、サンプルを得た。このとき現像液としては、富士写真フイルム(株)製現像液DT−2と水道水とを1:8の比率で混合した液を使用した。またガム液としては、富士写真フイルム(株)製ガム液FG−1と水道水とを1:1の比率で混合し希釈したものを使用した。得られたサンプルの磨耗させた部分と磨耗させなかった部分の濃度をMacbeth反射濃度計のシアンモードを用い測定し、その差を求めた。値が小さいほど耐傷性に優れていることを示している。
これらの測定結果を表2にまとめた。
Figure 2007219031
表2より、実施例の感光性平版印刷版はいずれも残留溶剤が少なく、広い現像ラチチュードを有し、良好な耐傷性を示した。一方、溶剤Bの比率が少ない比較例1、比較例2の感光性平版印刷版や、2種類しか溶剤を使用しなかった比較例3、比較例4の感光性平版印刷版は、残留溶剤が多いためと考えられるが、現像ラチチュードが狭く、また耐傷性でも劣っていた。

Claims (4)

  1. 高分子化合物及び赤外線吸収剤を含む感光性組成物を沸点の異なる3以上の有機溶剤混合物中に溶解して塗布溶液を調製する調液工程、及び、
    該塗布溶液を親水性表面を有する支持体上に塗布し乾燥して感光層を塗設する塗設工程、
    を含む感光性平版印刷版の製造方法であって、
    該有機溶剤混合物は、沸点が50℃以上100℃未満の低沸点有機溶剤Aがa重量部、
    沸点が100℃以上150℃未満の中沸点有機溶剤Bがb重量部、及び、
    沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤Cがc重量部、からなり、
    b>aかつb>cであることを特徴とする、
    感光性平版印刷版の製造方法。
  2. 該溶解工程及び該塗設工程に引き続いて、
    塗設された感光層の組成と異なっても良い別の感光層を塗設する工程を含む、
    請求項1記載の感光性平版印刷版の製造方法。
  3. 高分子化合物としてマレイミド化合物を構成単位とする共重合体を含む
    請求項1又は2記載の感光性平版印刷版の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれか1つに記載の製造方法により製造された感光性平版印刷版。
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