JP2007217347A - 眼内病的血管新生阻害剤、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにそのスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 眼内血管新生を効果的に阻害する作用を有する眼内病的血管新生阻害剤及び眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにLnk欠損網膜虚血モデルを用いて予防・治療薬を効率よくスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】 本発明の眼内病的血管新生阻害剤は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有していることを特徴とする。前記眼内血管新生性疾患としては、虚血性増殖性網膜症、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、血管新生緑内障、角膜血管新生及び脈絡膜血管新生等が挙げられる。本発明の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法は、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の網膜虚血部位における血管再生の程度を評価することを特徴としている。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明の眼内病的血管新生阻害剤は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有していることを特徴とする。前記眼内血管新生性疾患としては、虚血性増殖性網膜症、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、血管新生緑内障、角膜血管新生及び脈絡膜血管新生等が挙げられる。本発明の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法は、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の網膜虚血部位における血管再生の程度を評価することを特徴としている。
【選択図】 なし
Description
Lnkノックアウトマウスに網膜虚血モデルを適用して得られたモデルマウスより得られた知見に基づき、眼内血管新生性疾患の予防・治療に有用な薬剤を得ることに関する。
虚血性増殖性網膜症は、糖尿病や網膜静脈閉塞症等の合併症や未熟児網膜症等として知られている。虚血性増殖性網膜症とは、網膜の一部に血液が流れていない虚血部分に非常に脆く出血しやすい増殖性毛細血管(新生血管)が形成され、これが刺激となって形成される薄層の増殖膜が網膜剥離を、また脆弱な新生血管が網膜内で破れて硝子体出血を引き起こし、放置しておくと失明に至る疾患である。現状では、このような網膜における血管新生を抑制する治療として、網膜光凝固術、網膜冷凍凝固術が行われているが、薬物療法は確立していない。
一方、Lnkは、アダプター蛋白として、造血幹細胞の産生制御において重要な役割を持つことが知られている。また、J. Exp. Med. 2002 Jan 21;195:151-160には、Lnkノックアウトマウスと野生マウスについて作製された下肢虚血モデルマウス及び骨折モデルマウスがにおいて、Lnkノックアウトマウスに有意な血流改善が認められたこと、Lnkが血管内皮前駆細胞(EPC)の制御に関与することなどが報告されている。
Lnkに制御を受ける血管内皮前駆細胞(EPC)に関しては、成体の循環血液中に存在し、重症虚血部位の血管形成に関与することが、本発明者より報告されている(例えば、Science. 1997 Feb 14;275(5302):964-7)。以来多くのin vivo/ in vitroの実験を通じてその治療応用の有用性を示唆する知見が集積され、現在、重症の冠動脈疾患(虚血性心疾患)や慢性重症下肢虚血疾患(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)患者の血管再生療法として臨床試験が始まっている(例えば、Nat Med. 1999 Apr;5(4):434-8)。
Science. 1997 Feb 14;275(5302):964-7
Nat Med. 1999 Apr;5(4):434-8
J. Exp. Med. 2002 Jan 21;195:151-160
本発明の目的は、眼内血管新生を効果的に阻害する作用を有する眼内病的血管新生阻害剤及び眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにLnk欠損網膜虚血モデルを用いて予防・治療薬を効率よくスクリーニングする方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスを作製し、虚血部位における病的な血管新生が抑制され、正常な血管の再生が促進されるという知見を得たことに基づき、Lnk遺伝子の機能を阻害することにより眼内血管新生を効果的に抑制できること、Lnk欠損網膜虚血モデルにおける網膜虚血部位の血管再生を指標として種々の眼内血管新生性疾患の予防や治療に利用できる薬剤を効率よくスクリーニングできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有する眼内病的血管新生阻害剤を提供する。眼内病的血管新生阻害剤は、Lnk遺伝子の発現を阻害する物質を有効成分として含有していることが好ましい。
また、本発明は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有する眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬を提供する。前記眼内血管新生性疾患には、虚血性増殖性網膜症、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、血管新生緑内障、角膜血管新生、及び脈絡膜血管新生が含まれる。
本発明は、また、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の網膜虚血領域における血管再生の程度を評価することを特徴とする眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。この際、網膜虚血モデル非ヒト動物の網膜虚血部位近傍の病的血管新生の程度を評価してもよい。
さらに、本発明は、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の骨髄に含まれる未分化細胞群における血管内皮前駆細胞分画の増減を評価することを特徴とする眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。前記非ヒト動物はマウスであってもよい。
本願明細書中、「血管新生」とは、血管を形成するプロセスであって、既存の血管から新しい血管を形成することを意味している。血管を形成するプロセスである点で類似する「脈管形成」は、胚形成期の初期の段階に見られる最初の血管形成の過程をいい、既存の血管からではなく中胚葉系の血管芽細胞の分化によって発生される点で両者は異なる。
本発明によれば、Lnk遺伝子の機能阻害により眼内血管新生を効果的に抑制することを指標として眼内病的血管新生阻害剤を容易に得ることができる。また、血管新生の阻害効果に基づけば眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療に利用可能な薬剤を得ることができる。さらに、Lnk欠損網膜虚血モデルを用いることにより、網膜虚血部位に表される症状を指標として、眼内血管新生性疾患に対する予防・治療効果に優れた薬剤を効率よくスクリーニングすることができる。
本発明の眼内病的血管新生阻害剤は、眼内における病的血管新生を阻害することにより、正常な血管再生を促す効果を奏する薬剤を意味しており、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有している。有効成分として、好ましくはLnk遺伝子の発現を阻害する物質が用いられる。
Lnkは、SH2ドメイン及びPHドメインをもつアダプター蛋白質である。Lnk遺伝子の塩基配列及びLnkのアミノ酸配列は公知であり、例えばマウスLnk cDNAの塩基配列としては、GenBank Accession No. U89992で表される配列等が挙げられる。本発明者らは、染色体上のLnk遺伝子の機能を欠損させたLnkノックアウトマウスを作製し、同マウスに網膜虚血モデルを適用して得られたモデルマウスを解析したところ、Lnk蛋白質が眼内血管新生に関与することを見出した。Lnk遺伝子には、ヒト、チンパンジー、ラット、ニワトリ、ショウジョウバエ等のホモログの存在が知られており、これらの塩基配列はGenBankに公開されている。従って、本発明の眼内病的血管新生阻害剤は、マウスのみならず、上記の動物及びその他の動物における眼内血管新生の阻害が要請される疾患に適用することも可能である。
眼内血管新生性疾患には、例えば、虚血性増殖性網膜症、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、血管新生緑内障、角膜血管新生及び脈絡膜血管新生等が含まれる。虚血性増殖性網膜症の具体例としては、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症などの合併症等が挙げられる。本発明によれば、特に虚血性増殖性網膜症における虚血の優れた改善効果を得ることができ、例えば、糖尿病網膜症等の防止、治療に有効な眼内病的血管新生阻害剤を提供できる。
本発明の眼内病的血管新生阻害剤は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有している。ここで、「発現」とは、蛋白質が産生されることを意味しており、「発現を阻害する物質」は、遺伝子の転写、転写後調節、蛋白質への翻訳、翻訳後修飾(チロシンリン酸化)、蛋白質フォールディング等の何れの段階で作用するものであってもよい。また、「機能を阻害する物質」は、蛋白質における蛋白質間相互作用部位(SH2ドメイン等)や活性部位(リン酸化チロシン等)等の機能部位に作用してシグナル伝達を低減又は抑制する物質;Lnk又はLnkと相互作用する蛋白質のドミナントネガティブ変異体等であってもよい。ここで、「ドミナントネガティブ変異体」とは、蛋白質に対する変異の導入(機能領域の欠失等)によりその生理活性が低減したものをいう。これらの変異体は野生型と競合して間接的にその機能を阻害することができる。
Lnkの発現を阻害する物質としては、例えば、転写抑制因子、RNAポリメラーゼ阻害剤、蛋白質合成阻害剤、蛋白質分解酵素、蛋白質変性剤、スプライシングやmRNAの細胞質移行を阻害しうる因子、mRNA分解酵素、mRNAに結合して不活化する因子等が挙げられるが、他の遺伝子や蛋白質への副作用を最小限にするため、標的分子に特異的に作用しうる物質が好ましい。このようなLnkの発現を特定的に阻害する物質としては、例えば、Lnk若しくはその均等物にsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アンチセンス核酸、アプタマー、デコイ核酸等の機能性核酸;抗体等の機能性蛋白質が好ましく用いられる。これらの機能性核酸及び蛋白質は、投与後に投与対象内で産生される形態であってもよく、必要に応じて発現ベクター、細胞等を用いて公知の方法で調製することができる。なかでも、標的分子の特異性を容易に付与でき、取扱性に優れる点で、機能性核酸が好ましく、特にsiRNA、アンチセンス核酸等が好ましく用いられる。機能性核酸を用いる場合には、標的分子と相補的又は同一である領域の長さが、例えば15〜30個、好ましくは18〜25個、より好ましくは20〜23個程度のヌクレオチドである。
Lnkの機能を阻害する物質としては、上記と同様の観点から、Lnk蛋白質に特異的に(特定部位に)結合する因子が好ましく用いられ、例えば、アプタマー、デコイ核酸等の機能性核酸;抗体、Lnkドミナントネガティブ変異体、Lnk蛋白と相互作用する蛋白質のドミナントネガティブ変異体等の機能性蛋白質が挙げられる。本発明においては、Lnk遺伝子の機能を阻害する物質を有効成分とする眼内病的血管新生阻害剤が好ましく用いられる。
Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有する眼内病的血管新生阻害剤は、例えば、適宜なビヒクルに溶解又は懸濁して、経口又は非経口投与される。非経口投与には、例えば、静脈、動脈、筋肉、腹腔、気道等を経路とする全身投与、又は虚血部位又はその近傍への局所投与を利用できるが、これらに限定されない。好ましくは非経口投与、より好ましくは網膜虚血部位又はその近傍へ局所投与される。
眼内病的血管新生阻害剤は、Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を虚血部位又はその近傍の細胞に安定に到達させ、細胞膜を透過し、リソソーム/エンドソームからの薬剤の遊離を促進しうるドラッグデリバリーシステムの設計がされていることが好ましい。ヌクレアーゼ耐性、細胞内移行、リソソーム/エンドソームからの薬剤の遊離の改善方法としては、例えば、アンチセンス核酸等のオリゴ核酸分子の場合、リン酸結合や糖部分に修飾を施したり、リン酸骨格の代わりにモルフィン骨格を有するオリゴ核酸、PNA等を用いる方法等の化学修飾を施す方法等の公知の方法を適用できる。
眼内病的血管新生阻害剤の剤形としては、液剤、固形剤の何れであってもよく、例えば、水、生理食塩水等の希釈液又は分散媒に有効量の阻害剤を溶解、分散、乳化させた液剤;有効量の阻害剤を固体や顆粒として含むカプセル剤、サッシェ剤、錠剤等の固形剤などが挙げられる。
眼内病的血管新生阻害剤は、また、有効成分となるLnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質がそのまま添加されていてもよく、有効成分がリポソームや徐放性材料等に封入された封入体や担体に担持された担持体などであってもよい。リポソーム等に封入することにより、有効成分をヌクレアーゼやプロテアーゼによる分解から保護し、リポソーム膜が細胞表面と結合してエンドサイトーシスにより細胞内に到達しやすくなる点で有利である。コラーゲン等の徐放性材料に封入することにより、有効成分の長期持続性が得られる。
眼内病的血管新生阻害剤には、上記以外に、医薬上許容される公知の添加剤を添加することができる。
眼内病的血管新生阻害剤の投与量は、同阻害剤の種類、投与方法、症状、投与対象の種類、大きさ、薬物特性等に応じて異なるが、通常、成人1日当たり有効成分量として例えば0.0001〜10mg/kg程度、好ましくは0.0005〜5mg/kg程度であり、1回又は複数回に分けて投与することができる。
本発明のスクリーニング方法は、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の網膜虚血領域における血管再生の程度を評価することにより眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬をスクリーニングする方法である(以下、「スクリーニング方法1」と称する場合がある)。
染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物は、Lnk遺伝子の機能が欠損している非ヒト動物を用いて網膜虚血モデルを作製することにより得ることができる。非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であれば特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のげっ歯類、サル、チンパンジー、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)、特にマウスを用いることができる。例えば、Lnkノックアウトマウスは、Lnk遺伝子の一部又は全部が欠失、置換若しくは他の塩基配列を付加されたことによりLnkの機能が低下又は抑制されているマウスを意味している。Lnkノックアウトマウスは、一般に特定の遺伝子ノックアウトマウスを作製する方法として公知乃至慣用の方法で作製することができ、例えば、Immunity vol.13, 599-609, 2000に記載の方法に従って作製できる。
網膜虚血モデル非ヒト動物(以下、「モデル動物」と称する場合がある)の作製方法は、マウスを用いた方法が広く知られており、マウス以外の非ヒト動物においても概ね同様の方法を適用可能である。例えば、網膜虚血モデルマウスは、生後7日目から12日までの5日間、75容量%酸素濃度雰囲気下で飼育した後、飼育環境を通常酸素雰囲気(約20容量%酸素濃度)へ戻し、所定期間(例えば5日間程度)飼育する方法により作製することができる。すなわち、Lnkノックアウトマウスを生後7日目から上記方法により飼育することにより、生後約17日経過後、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデルマウス(以下、「Lnk欠損網膜虚血モデルマウス」と称する場合がある)を得ることができる。
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、公知又は新規化合物の何れであってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物等の合成又は天然由来の有機化合物を用いることができる。
被検物質をモデル動物の投与方法は、特に限定されず、経口及び非経口投与の何れであってもよい。非経口投与には、例えば、静脈、動脈、筋肉、腹腔、気道等を経路とする全身投与、又は虚血部位又はその近傍への局所投与を利用できるが、これらに限定されない。好ましくは非経口投与、より好ましくは網膜虚血部位又はその近傍へ局所投与される。被検物質の投与量は、被検物質の種類、投与方法、モデル動物の種類、大きさ等に応じて適宜設定できる。
評価は、モデル動物の網膜虚血部位における血管再生の程度に基づいて行われる。「網膜虚血部位」とは、網膜における毛細血管の脱落領域であって、眼球から公知の処理を施して回収しうる網膜組織により肉眼で容易に判断することができる。「網膜虚血部位における血管再生の程度」は、例えば、網膜における毛細血管の脱落領域の面積変化で評価することができる。本発明のスクリーニング方法1によれば、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの網膜毛細血管の脱落領域の面積が、野生型網膜虚血モデルマウスに対して、例えば90%以下(例えば0〜90%)、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下であり、30%以下であってもよい。このように、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスは、野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、網膜毛細血管の脱落領域を著しく減少することができる。このような知見から、本発明者らは、Lnkの機能を阻害することにより網膜における血管再生が促進されること、同作用は眼内血管新生性疾患の予防・治療に有効に利用できることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明のスクリーニング方法1においては、「網膜虚血部位における血管再生の程度」は、「網膜虚血部位近傍の病的血管新生の程度」に基づいて評価されてもよい。「網膜虚血部位近傍の病的血管新生の程度」は、例えば、視神経を中心に周辺部方向に眼球矢状断切片を作製し(例えば図1中の12)、内境界膜より硝子体側に存在している細胞を「病的血管新生」により生成されたものと判断し、病的新生血管の細胞核数を評価することができる。
本発明のスクリーニング方法1によれば、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスにおいて病的血管新生が観察された単位面積当たりの細胞核数は、野生型モデルマウスにおける同細胞核数の90%以下(例えば0〜90%)、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下であり、30%以下であってもよい。このように、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスは、野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、病的血管新生を高度に抑制することができる。このような知見に基づき、Lnkの機能を阻害することにより網膜近傍の病的血管新生が抑制されることを見出した。本発明の方法によれば、この現象を指標とすることにより、眼内血管新生性疾患の予防・治療に有効な薬剤をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法の他の方法としては、染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の骨髄血における血管内皮前駆細胞分画の増減を評価することにより眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法が挙げられる(以下、「スクリーニング方法2」と称する場合がある)。Lnk欠損網膜虚血モデル非ヒト動物、被検物質及びその投与条件等は上記と同様である。
本発明のスクリーニング方法2は、Lnk欠損網膜虚血モデル非ヒト動物の骨髄に含まれる未分化細胞群における血管内皮前駆細胞分画の増減を評価することを主な特徴としている。「骨髄に含まれる未分化細胞群」とは、骨髄血中の造血幹細胞を含む未分化細胞(lineage陰性細胞)分画を意味しており、例えばマウス骨髄血においては、B220陰性、CD3陰性、Gr-1陰性、Mac-1陰性、TER-199陰性、BD陰性を示す細胞(lineage陰性細胞)が未分化細胞群に相当する。このような未分化細胞群は、MACS法等の公知の方法で分離可能である。「血管内皮前駆細胞(EPC)分画」とは、血管内皮前駆細胞のマーカー蛋白の発現を指標に選別され、例えばマウスのEPC分画については、c-Kit陽性/Sca-1陽性分画に相当する。
本発明のスクリーニング方法2によれば、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスにおける上記EPC分画を、野生型網膜虚血モデルマウスに対して例えば1.2倍以上(1.2〜20倍程度)、好ましくは1.5倍以上(1.5〜15倍低℃)、特に2倍以上増加させることが可能である。
本発明のスクリーニング方法(1,2)によれば、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬を効率よく得ることができる。こうして得られる眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬は、網膜虚血モデル非ヒト動物に投与した場合に、(i)眼内虚血部位における血管再生の促進、(ii)病的血管新生の抑制、(iii)骨髄に含まれる未分化細胞群における血管内皮前駆細胞分画の増加から選択される少なくとも一つの作用により、眼内血管新生性疾患に対する優れた予防及び/又は治療効果を発揮できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
参考例1(Lnkノックアウトマウスの作成)
Takaki et al, Nov;13(5):599-609;2000に記載の方法に従って、Lnkノックアウトマウスを作製した。具体的には以下の方法を用いた。
Lnk遺伝子(J Immunol.Li et al, May 15;164(10):5199-206; 2000;及びImmunity, Takaki et al, Nov;13(5):599-609;2000)をクローニングし、ORF部分をマーカー遺伝子(ネオマイシン[neo]、ガンシクロビル[gan c]耐性遺伝子など)で置換し遺伝子を破壊した。次に、破壊されたLnk遺伝子を有するES細胞を胚盤胞に注入してキメラ胚を作製した。その後、キメラ胚を仮親の子宮に移植し、キメラマウスを産ませた。最後に、キメラマウス同士を交配させ、Lnk遺伝子を機能欠損したマウス(Lnk欠損マウス)を作成した。
Takaki et al, Nov;13(5):599-609;2000に記載の方法に従って、Lnkノックアウトマウスを作製した。具体的には以下の方法を用いた。
Lnk遺伝子(J Immunol.Li et al, May 15;164(10):5199-206; 2000;及びImmunity, Takaki et al, Nov;13(5):599-609;2000)をクローニングし、ORF部分をマーカー遺伝子(ネオマイシン[neo]、ガンシクロビル[gan c]耐性遺伝子など)で置換し遺伝子を破壊した。次に、破壊されたLnk遺伝子を有するES細胞を胚盤胞に注入してキメラ胚を作製した。その後、キメラ胚を仮親の子宮に移植し、キメラマウスを産ませた。最後に、キメラマウス同士を交配させ、Lnk遺伝子を機能欠損したマウス(Lnk欠損マウス)を作成した。
参考例2(網膜虚血モデルマウスの作製)
既に未熟児網膜症として確立されている方法に基づき網膜虚血モデルマウスを作成した。詳細には、生後7日目のC57BL/6Jマウス(野生型マウス)、Lnkノックアウトマウスを、母親と共に75%酸素濃度下で5日間飼育することにより眼球中心部の網膜毛細血管を脱落させた後、生後12日目の時点で通常酸素濃度下へ戻し、さらに5日間飼育することにより、網膜血管新生が誘発された(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルを作成した。
既に未熟児網膜症として確立されている方法に基づき網膜虚血モデルマウスを作成した。詳細には、生後7日目のC57BL/6Jマウス(野生型マウス)、Lnkノックアウトマウスを、母親と共に75%酸素濃度下で5日間飼育することにより眼球中心部の網膜毛細血管を脱落させた後、生後12日目の時点で通常酸素濃度下へ戻し、さらに5日間飼育することにより、網膜血管新生が誘発された(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルを作成した。
実施例1(網膜虚血部位における血管再生)
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスについて、各眼球を摘出後、4%PFAで約30分間固定、その後強膜、網膜色素上皮、水晶体、角膜を除き、網膜のwhole mountを作成した。whole mountは、ブロッキングの後、1次抗体に、PECAM-1 (platelet endothelial cell adhesion molecule)、2次抗体にCy3を用いて免疫染色を行った。網膜毛細血管領域は、画像処理ソフトで処理したデジタル画像を用いて、生後7日目(P7)、12日目(P12)、17日目(P17)について評価した。
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスについて、各眼球を摘出後、4%PFAで約30分間固定、その後強膜、網膜色素上皮、水晶体、角膜を除き、網膜のwhole mountを作成した。whole mountは、ブロッキングの後、1次抗体に、PECAM-1 (platelet endothelial cell adhesion molecule)、2次抗体にCy3を用いて免疫染色を行った。網膜毛細血管領域は、画像処理ソフトで処理したデジタル画像を用いて、生後7日目(P7)、12日目(P12)、17日目(P17)について評価した。
各マウスにおける各網膜毛細血管の脱落面積を比較したところ、通常飼育したマウスについては、図2に示されるように、(a)野生型マウスと(b)Lnk欠損マウスはP7, P12, P17の何れも有意な差は認められなかった。一方、(c)野生型マウスと(d)Lnk欠損マウスについては、グラフ(i)に示されるように、P12では網膜毛細血管の脱落面積に大きな差は認められないが、グラフ(ii)に示されるように、P17では(c)野生型マウスの網膜毛細血管の脱落面積は4.5mm2程度であったのに対し、(d)Lnk欠損マウスは1mm2程度であって、網膜毛細血管の脱落面積が明らかに減少していた(P<0.01)。以上の結果より、野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスは、網膜毛細血管の再構築が亢進されていた。
実施例2(網膜虚血部位における病的血管新生)
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの各眼球を摘出し、4%PFAで固定した後パラフィンで包埋し、評価用切片として、3μm厚の眼球矢状断切片を、それぞれ視神経を中心に周辺部方向へ約140μm分作成した。得られた網膜組織切片はヘマトキシリンとエオジンを用いて染色し、内境界膜(図3のX)より硝子体側に存在している細胞核数を測定することにより、(a),(b),(c),(d)のマウスの病的網膜血管新生を比較した。これらの結果を図3に示す。
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの各眼球を摘出し、4%PFAで固定した後パラフィンで包埋し、評価用切片として、3μm厚の眼球矢状断切片を、それぞれ視神経を中心に周辺部方向へ約140μm分作成した。得られた網膜組織切片はヘマトキシリンとエオジンを用いて染色し、内境界膜(図3のX)より硝子体側に存在している細胞核数を測定することにより、(a),(b),(c),(d)のマウスの病的網膜血管新生を比較した。これらの結果を図3に示す。
図3は、図1における12の枠に対応する組織切片を、sが画面下、tが画面上となるように配置した図に対応し、白矢印は病的網膜新生血管を示している。病的網膜新生血管が認められた細胞核数を比較したところ、生後17日目における通常飼育した(a)野生型マウスと(b)Lnk欠損マウスは共に病的網膜毛細血管は出現しなかった。グラフに示されるように、(c)野生型網膜虚血モデルマウスにおいて病的血管新生が観察された細胞核数は60程度であったのに対し、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスは15程度であって、病的網膜新生血管は明らかに減少していた(P<0.01)。以上の結果より、Lnk欠損網膜虚血モデルマウスは病的網膜新生血管が減少していた。
実施例3(骨髄血未分化細胞群における血管内皮前駆細胞分画)
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、(c)参考例2で得た野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)参考例2で得たLnk欠損網膜虚血モデルマウスの各骨髄組織から骨髄細胞を分離した後、biotin化 Cocktail抗体の60倍希釈液(x60, 10 ul of cocktail Abs in 1x108, bio-B220, bio-CD3, bio-Gr-1, bio-Mac-1, bio-TER-119, BD)10ulを4℃、20分間反応させ、streptoavidin beads (x10, 15u/150ul of 2x106 cells, Miltenyi Biotec. )を用いて同条件下で反応を行い、次いで、MACS法(Miltenyi Biotec.)によって未分化細胞(lineage陰性細胞)を分離した。得られた未分化細胞分画について、更にc-kit (x200, PE-c-kit Abs, BD)と Sca-1(x200,FITC-Sca1,BD) の抗体を20分間反応させた後、 FACS (BD)法によって、Linage陰性/c-Kit陽性/Sca-1陽性分画をEPC分画として比較した。図4は、未分化細胞におけるc-Kit/Sca-1をマーカーに用いたFACS解析図を示しており、それぞれ(a)通常飼育した野生型マウス、(b)通常飼育したLnk欠損マウス、(c)野生型網膜虚血モデルマウス、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの解析図を示す。
(a)通常飼育した野生型マウス、参考例1で得た(b)通常飼育したLnk欠損マウス、(c)参考例2で得た野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)参考例2で得たLnk欠損網膜虚血モデルマウスの各骨髄組織から骨髄細胞を分離した後、biotin化 Cocktail抗体の60倍希釈液(x60, 10 ul of cocktail Abs in 1x108, bio-B220, bio-CD3, bio-Gr-1, bio-Mac-1, bio-TER-119, BD)10ulを4℃、20分間反応させ、streptoavidin beads (x10, 15u/150ul of 2x106 cells, Miltenyi Biotec. )を用いて同条件下で反応を行い、次いで、MACS法(Miltenyi Biotec.)によって未分化細胞(lineage陰性細胞)を分離した。得られた未分化細胞分画について、更にc-kit (x200, PE-c-kit Abs, BD)と Sca-1(x200,FITC-Sca1,BD) の抗体を20分間反応させた後、 FACS (BD)法によって、Linage陰性/c-Kit陽性/Sca-1陽性分画をEPC分画として比較した。図4は、未分化細胞におけるc-Kit/Sca-1をマーカーに用いたFACS解析図を示しており、それぞれ(a)通常飼育した野生型マウス、(b)通常飼育したLnk欠損マウス、(c)野生型網膜虚血モデルマウス、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの解析図を示す。
図4に示されるように、(a)通常飼育した野生型マウスと(b)通常飼育したLnk欠損マウスの各骨髄血中のEPC分画を比較したところ、(b)Lnk欠損マウスにEPC分画の増加を認めた。また、(c)野生型網膜虚血モデルマウスと(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスについては、(c)野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスのEPC分画は顕著に増加していた。以上の結果より、Lnkノックアウトマウスでは血管内皮前駆細胞分画が増加していた。
実施例4
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を、眼球壁の外側(強膜上)後方に注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例1に記載の方法に従って網膜毛細血管の脱落面積を測定する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの網膜毛細血管の脱落面積が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を、眼球壁の外側(強膜上)後方に注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例1に記載の方法に従って網膜毛細血管の脱落面積を測定する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの網膜毛細血管の脱落面積が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
実施例5
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例2に記載の方法に従って病的網膜血管新生を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの病的網膜新生血管が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例2に記載の方法に従って病的網膜血管新生を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの病的網膜新生血管が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
実施例6
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例3に記載の方法に従って病的網膜血管新生を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの病的網膜新生血管が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例3に記載の方法に従って病的網膜血管新生を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスに比べ、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスの病的網膜新生血管が明らかに減少する被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
実施例7
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの骨髄組織から骨髄細胞を分離し、実施例4に記載の方法に従ってEPC分画の差を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスのEPC分画は顕著に増加している被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウス、及び(d)Lnk欠損マウス網膜虚血モデルについて、それぞれ生後12日目に、被検物質を生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を硝子体内注射し、5日経過後、各マウスの骨髄組織から骨髄細胞を分離し、実施例4に記載の方法に従ってEPC分画の差を評価する。その結果、(c)野生型網膜虚血モデルマウスと比較して、(d)Lnk欠損網膜虚血モデルマウスのEPC分画は顕著に増加している被検物質は、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
実施例8
LnkのmRNAの部分配列に相補的な二本鎖オリゴRNA(siRNA)を合成し、生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を調製した。参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウスの生後12日目に、前記注射液又は生理的食塩水を眼球壁の外側(強膜上)後方に注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例1に記載の方法に従って網膜毛細血管の脱落面積を測定する。その結果、生理的食塩水が投与されたマウスに比べ、siRNAを投与されたマウスの網膜毛細血管の脱落面積が明らかに減少することから、眼内病的血管新生阻害剤として、また眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
LnkのmRNAの部分配列に相補的な二本鎖オリゴRNA(siRNA)を合成し、生理的食塩水に溶解して調製した15mg/0.5mlの注射液を調製した。参考例2で得た(c)野生型網膜虚血モデルマウスの生後12日目に、前記注射液又は生理的食塩水を眼球壁の外側(強膜上)後方に注射し、5日経過後、各マウスの眼球を摘出し、実施例1に記載の方法に従って網膜毛細血管の脱落面積を測定する。その結果、生理的食塩水が投与されたマウスに比べ、siRNAを投与されたマウスの網膜毛細血管の脱落面積が明らかに減少することから、眼内病的血管新生阻害剤として、また眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
1 強膜
2 脈絡膜
3 視神経
4 視神経乳頭
5 黄斑
6 中心窩
7 網膜
8 虹彩
9 角膜
10 硝子体
11 水晶体
12 実施例2に用いた評価用切片採取部位
2 脈絡膜
3 視神経
4 視神経乳頭
5 黄斑
6 中心窩
7 網膜
8 虹彩
9 角膜
10 硝子体
11 水晶体
12 実施例2に用いた評価用切片採取部位
Claims (9)
- Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有する眼内病的血管新生阻害剤。
- Lnk遺伝子の発現を阻害する物質を有効成分として含有する請求項1記載の眼内病的血管新生阻害剤。
- Lnk遺伝子の発現又は機能を阻害する物質を有効成分として含有する眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬。
- 眼内血管新生性疾患が、虚血性増殖性網膜症、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、血管新生緑内障、角膜血管新生及び脈絡膜血管新生からなる群から選択される少なくとも一の疾患である請求項3記載の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬。
- 染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の網膜虚血部位における血管再生の程度を評価することにより眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
- 網膜虚血モデル非ヒト動物の網膜虚血近傍の病的血管新生の程度を評価する請求項5記載の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
- 染色体上のLnk遺伝子の機能が欠損している網膜虚血モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、該非ヒト動物の骨髄に含まれる未分化細胞群における血管内皮前駆細胞分画の増減を評価することにより眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
- 非ヒト動物がマウスである請求項5〜7の何れかの項に記載の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
- 請求項5〜8の何れかの項に記載の眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法により得られる眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006040035A JP2007217347A (ja) | 2006-02-16 | 2006-02-16 | 眼内病的血管新生阻害剤、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにそのスクリーニング方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006040035A JP2007217347A (ja) | 2006-02-16 | 2006-02-16 | 眼内病的血管新生阻害剤、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにそのスクリーニング方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007217347A true JP2007217347A (ja) | 2007-08-30 |
Family
ID=38495014
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2006040035A Withdrawn JP2007217347A (ja) | 2006-02-16 | 2006-02-16 | 眼内病的血管新生阻害剤、眼内血管新生性疾患の予防及び/又は治療薬、並びにそのスクリーニング方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007217347A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104107429A (zh) * | 2014-08-01 | 2014-10-22 | 武汉大学 | Sh2b衔接蛋白3(sh2b3)在治疗心肌肥厚中的功能及应用 |
WO2021201170A1 (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-07 | スカイファーマ株式会社 | 医薬有効成分のスクリーニング方法、製造方法及び設計方法 |
CN114917230A (zh) * | 2022-03-09 | 2022-08-19 | 山东第一医科大学附属眼科研究所(山东省眼科研究所、山东第一医科大学附属青岛眼科医院) | Cb-839在制备抑制角膜新生血管生成的药物中的应用 |
-
2006
- 2006-02-16 JP JP2006040035A patent/JP2007217347A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104107429A (zh) * | 2014-08-01 | 2014-10-22 | 武汉大学 | Sh2b衔接蛋白3(sh2b3)在治疗心肌肥厚中的功能及应用 |
WO2021201170A1 (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-07 | スカイファーマ株式会社 | 医薬有効成分のスクリーニング方法、製造方法及び設計方法 |
CN114917230A (zh) * | 2022-03-09 | 2022-08-19 | 山东第一医科大学附属眼科研究所(山东省眼科研究所、山东第一医科大学附属青岛眼科医院) | Cb-839在制备抑制角膜新生血管生成的药物中的应用 |
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