JP2007211805A - 固定式等速自在継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ケージと外輪の擦れによる発熱で耐久性の低下や伝達トルクの損失を招かず、かつ、ケージの重量を増大させず、作動角の高角化を容易に実現する。
【解決手段】 内球面12に複数のボール溝14を形成した外輪10と、外球面22に外輪のボール溝と対をなす複数のボール溝24を形成した内輪20と、外輪と内輪の両ボール溝間に介在してトルクを伝達する複数のボール30と、外輪の内球面と内輪の外球面間に介在してボールを保持するケージ40とを備え、ケージの外球面中心と内球面中心は継手中心に対して軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされ、ケージの縦断面において、外輪の開口端側を厚肉にし、外輪のボール溝を開口端に向けて拡径したテーパ状にすると共に、内輪のボール溝を反開口端側に向けて拡径したテーパ状とし、ケージの外球面42の厚肉部41を軸方向に向けて延在させ、その厚肉部41の内球面側周縁に凹陥部45を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】 内球面12に複数のボール溝14を形成した外輪10と、外球面22に外輪のボール溝と対をなす複数のボール溝24を形成した内輪20と、外輪と内輪の両ボール溝間に介在してトルクを伝達する複数のボール30と、外輪の内球面と内輪の外球面間に介在してボールを保持するケージ40とを備え、ケージの外球面中心と内球面中心は継手中心に対して軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされ、ケージの縦断面において、外輪の開口端側を厚肉にし、外輪のボール溝を開口端に向けて拡径したテーパ状にすると共に、内輪のボール溝を反開口端側に向けて拡径したテーパ状とし、ケージの外球面42の厚肉部41を軸方向に向けて延在させ、その厚肉部41の内球面側周縁に凹陥部45を設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明は固定式等速自在継手に関し、詳しくは、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用されるもので、駆動側と従動側の二軸間で作動角度変位のみを許容する固定式等速自在継手に関する。
近年、自動車の乗車空間拡大の観点からホイールベースを長くすることがあるが、それに伴って車両回転半径が大きくならないようにするため、自動車のドライブシャフト等の連結用継手として使用されている固定式等速自在継手の高角化による前輪の操舵角の増大が求められている。
一般的に、固定式等速自在継手は、図9に示すように内球面112に複数のボール溝130を円周方向等間隔に軸方向に沿って開口端118に向けて形成した外側継手部材110と、外球面122に外側継手部材110のボール溝114と対をなす複数のボール溝124を円周方向等間隔に軸方向に沿って形成した内側継手部材120と、外側継手部材110のボール溝114と内側継手部材120のボール溝124との間に介在してトルクを伝達する複数のボール130と、外側継手部材110の内球面112と内側継手部材120の外球面122との間に介在してボール130を保持するケージ140とを備えている。
前述した高角化のニーズに対する固定式等速自在継手としては、外側継手部材110のボール溝114の開口端側溝底を、その外側継手部材110の開口端118に向けて直線的に拡径したテーパ状にすると共に、内側継手部材120のボール溝124の反開口端側溝底を、その外側継手部材110の反開口端側に向けて直線的に拡径したテーパ状とすることにより、高角域の作動を実現している(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2001−153149号公報
特開2001−304282号公報
特開2001−349332号公報
ところで、前述した各特許文献1〜3に開示された固定式等速自在継手では、外側継手部材110および内側継手部材120の両ボール溝114,124をテーパ形状にすることで作動角の高角化を容易にしている。図10は、この固定式等速自在継手が最大作動角θをとった状態、つまり、外側継手部材110の回転軸Xと内側継手部材120の回転軸Yが最大作動角θをとった状態を示す。
しかしながら、固定式等速自在継手が高角域に入っていくにしたがって、図10に示すようにボール130がケージ140をその開口側に押す力mが大きくなる。特に、ボール130が外側継手部材110の最も奥側に位置する位相(位相角φ=180°)付近の力が大きい。
これにより、ケージ140の外球面142の開口端側端部は外側継手部材110の内球面112と激しく擦れ合うことになる(図中のA部分)。この時、ケージ140と外側継手部材110間の接触面積が小さいと、発熱量が大きくなり、耐久性の低下、ひいては伝達トルクの損失を招くという問題がある。
この問題を解消するための手段として、継手が最大作動角をとった状態、つまり、外側継手部材110の回転軸と内側継手部材120の回転軸とが最大角度をとった状態で、内側継手部材120に取り付けられたシャフト150がケージ140の開口側端部と干渉しない程度に、ケージ140の外球面142の開口端側端部を軸方向に向けて延在させることが考えられる。
一方、この等速自在継手では、大きな作動角を取り得る構造とするため、ケージ140の内球面144の曲率中心O3と外球面142の曲率中心O4とは、継手中心Oに対して等距離fだけ軸方向に逆向きにオフセットされている(ケージオフセット)。このケージオフセットを設けたことにより、ケージ140の縦断面において、外側継手部材110の開口端側が厚肉になると共にその反開口端側が薄肉となっている。
従って、前述したようにケージ140の外球面142の開口端側端部が外側継手部材110の内球面112と激しく擦れ合うことを回避するため、ケージ140の外球面142の開口端側端部、つまり、開口端側厚肉部141を軸方向に向けて延在させると、その厚肉部141の容積が大きくなることから、ケージ140の重量が非常に大きくなり、その結果、等速自在継手全体の重量が大きくなってしまう問題が発生することになる。
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ケージと外側継手部材が擦れ合うことによる発熱でもって耐久性の低下や伝達トルクの損失を招かず、かつ、ケージの重量を増大させることなく、作動角の高角化を容易に実現し得る固定式等速自在継手を提供することにある。
前記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、内球面に複数のボール溝を円周方向等間隔に軸方向に沿って開口端に向けて形成した外側継手部材と、外球面に外側継手部材のボール溝と対をなす複数のボール溝を円周方向等間隔に軸方向に沿って形成した内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材の両ボール溝間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、ケージの外球面中心と内球面中心は継手中心に対して軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされ、ケージの縦断面において、外側継手部材の開口端側を厚肉にすると共にその反開口端側を薄肉にし、外側継手部材のボール溝の開口端側溝底を、開口端に向けて直線的に拡径したテーパ状にすると共に、内側継手部材のボール溝の反開口端側溝底を、その反開口端側に向けて直線的に拡径したテーパ状とし、ケージの外球面の開口端側厚肉部を軸方向に向けて延在させ、その開口端側厚肉部の内球面側周縁に凹陥部を設けたことを特徴とする。
本発明では、ケージの外球面の開口端側厚肉部を軸方向に向けて延在させる。この場合、継手が最大作動角をとった状態、つまり、外側継手部材の回転軸と内側継手部材の回転軸とが最大角度をとった状態で、内側継手部材に取り付けられたシャフトがケージの開口端側厚肉部と干渉しない程度にその外球面の開口端側厚肉部を延在させる。
このように高角域においてもケージの外球面と外側継手部材の内球面との接触面積を確保することができることにより、最大作動角をとった時に、ボールがケージを開口端側へ押し、そのケージの外球面の開口端側厚肉部と外側継手部材の内球面が強く擦れ合っても発熱による耐久性の低下や伝達トルクの損失を最小限に抑えることができる。また、ケージの剛性を最大限に確保することができるので、ケージ自体の強度も向上する。
一方、ケージの外球面の開口端側厚肉部を延在させると、その厚肉部の容積が大きくなることから、ケージの重量が非常に大きくなり、その結果、等速自在継手全体の重量が大きくなってしまうことになる。
そこで、本発明では、ケージの開口端側厚肉部の内球面側周縁に凹陥部を設ける。このようにケージの開口端側厚肉部の内球面側周縁に凹陥部を設けたことにより、ケージの重量軽減を図ることができる。この凹陥部は内球面側周縁に設けていることから、ケージの外球面については、外側継手部材の内球面との接触面積を確保することができて、最大作動角時に、ケージの外球面と外側継手部材の内球面との擦れ合いでの発熱による耐久性の低下や伝達トルクの損失を最小限に抑えることができる効果を維持できる。
この凹陥部は、ケージの軸方向に平行な内径面と径方向に平行な端面とを持ち、その凹陥部の形状を、凹陥部内径面における内径寸法と、ケージ端面から凹陥部端面までの軸方向寸法とで規定することが望ましい。このように凹陥部の形状を規定すれば、その寸法管理方法が容易になるため、製品コストの削減を図ることができる。
本発明では、外側継手部材および内側継手部材の両ボール溝をテーパ状とすることにより、外側継手部材の外径を大きくすることなく、作動角の高角化を容易に実現する上で、外側継手部材の肉厚を薄くしてもその外側継手部材の強度および加工性を低下させないように、この固定式等速自在継手の内部諸元の中で、ボール溝をテーパ状にすることによる影響および傾向を検証し、前述のボール溝のテーパ角度の最適値としてその上限値を12°に規定した。
本出願人は、従来必要な基本性能である強度や耐久性を確保しながら、静的内部力解析、有限要素法(FEM)解析を用いて検討を進め、ボール溝のテーパ角度の範囲を絞り込んで最適設定した。そして、テーパ角度を変えたサンプルの評価結果と解析結果との整合性を確認した。
前述の構成において、ケージの外球面中心と内球面中心とのケージオフセット量fと、外側継手部材のボール溝の曲率中心または内側継手部材のボール溝の曲率中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さPCRとの比の値f/PCRが0.12以下であることが望ましい。このケージオフセット量fは、ケージの縦断面における肉厚差に関係するため、この点を考慮してケージオフセット量fを設定することが望ましい。
例えば、ケージオフセット量fを大きく設定することにより、外側継手部材の開口端側にケージの厚肉側を位置させるようにすれば、外側継手部材の開口端側のケージの肉厚を増大させて強度向上を図ることができる利点を有する。また、外側継手部材の開口端側のケージの肉厚を増大させることによって、作動角をとった時、外側継手部材の開口端から飛び出そうとするボールをケージで拘束することができる。
ただし、ケージオフセット量fが大きすぎると、ケージのポケット内におけるボールの周方向移動量が大きくなり、ボールの適正な運動を確保するため、ケージのポケットの周方向寸法を大きくする必要が生じるので、ケージの柱部が細くなり、強度面が問題となる。また、外側継手部材の反開口端側のケージの肉厚が小さくなり、強度面が問題となる。
以上より、ケージオフセット量fが過大であるのは好ましくなく、ケージオフセット量fを設ける意義と前述の強度面での問題との均衡を図り得る最適範囲が存在する。ただ、ケージオフセット量fの最適範囲は継手の大きさによって変わるので、継手の大きさを表わす基本寸法との関係において求める必要がある。そのため、ケージオフセット量fと、外側継手部材のボール溝の曲率中心または内側継手部材のボール溝の曲率中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さPCRとの比f/PCRを用いる。
そこで、前述の構成におけるケージオフセット量は、そのケージオフセット量fと、作動角0°時における外側継手部材のボール溝の曲率中心または内側継手部材のボール溝の曲率中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さPCRとの比f/PCRを0より大きく、かつ、0.12以下とすることが望ましい。
この比f/PCRが0.12より大きいと前述の強度面での問題がある。逆に、0以下であるとケージオフセット量fを設ける意義がなくなる。すなわち、ケージオフセット量fが0の場合、トラックオフセット量も0のため、オフセットが0となり、くさび角=0でボール(ケージ)位置が定まらず、作動性が著しく悪化することから、0以下の範囲では、その目的が達成できない。従って、ケージ強度の確保、耐久性の確保の点から、比f/PCRが0より大きく、かつ、0.12以下であることが、ケージオフセット量fの最適範囲である。
なお、本発明は、ボール数が6個あるいは8個である固定式等速自在継手に適用可能であるが、ボール数が8個の固定式等速自在継手に適用すれば、固定式等速自在継手のコンパクト化が図れる点で有効である。
本発明によれば、ケージの外球面の開口端側端部を最大作動角時でもシャフトに干渉することがない程度まで軸方向に向けて延在させることで、高角域においてもケージの外球面と外側継手部材の内球面との接触面積を確保することができ、最大作動角時、ケージの外球面の開口端側厚肉部と外側継手部材の内球面が強く擦れ合っても発熱による耐久性の低下や伝達トルクの損失を抑制することができる。
また、ケージの開口端側厚肉部の内球面側周縁に凹陥部を設けることにより、高角域においてケージの外球面と外側継手部材の内球面との接触面積を確保しつつ、ケージの重量を軽減することができ、等速自在継手の軽量化を容易に図ることができる。
その結果、作動角の高角化を容易に実現することができ、近年における自動車の乗車空間拡大の観点からホイールベースを長くする要望に対して、車両回転半径が大きくならないように前輪の操舵角の増大を容易に対応することができる。
本発明に係る固定式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。
図1に示す固定式等速自在継手は、外輪10と、内輪20と、ボール30と、ケージ40を主要な構成要素としている。この固定式等速自在継手によって連結すべき二軸、例えば従動側の回転軸(図示せず)を外輪10と結合し、駆動側の回転軸(図示せず)を結合して、両者が角度をなした状態でも等速でトルクを伝達するようになっている。なお、図1は外輪10の回転軸Xと内輪20の回転軸Yとがなす作動角θが0°の状態を示し、図3はその作動角θが最大の状態を示す。
外側継手部材としての外輪10はマウス部16とステム部(図示せず)とからなり、ステム部にて従動側の回転軸とトルク伝達可能に結合する。マウス部16は一端にて開口した椀状で、その内球面12に、軸方向に延びた複数のボール溝14が円周方向等間隔に形成されている。そのボール溝14はマウス部16の開口端18まで延びている。
内側継手部材としての内輪20は、その外球面22に、軸方向に延びた複数のボール溝24が円周方向等間隔に形成されている。そのボール溝24は内輪20の軸方向に切り通されている。内輪20は駆動側の回転軸とトルク伝達可能に結合するためのスプライン孔26を有している。
外輪10のボール溝14と内輪20のボール溝24とは対をなし、各対のボール溝14,24で構成されるトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール30が転動可能に組み込んである。ボール30は外輪10のボール溝14と内輪20のボール溝24との間に介在してトルクを伝達する。
各ボール30はケージ40の円周方向に配設したポケット46内に収容されている。ボール30の数、換言すれば、ボール溝14,24の数は任意であるが、例を挙げるならば6あるいは8である。特に、ボールが8個の場合、コンパクトな等速自在継手を実現することができる。
ケージ40は外輪10と内輪20との間に摺動可能に介在し、外球面42にて外輪10の内球面12と接し、内球面44にて内輪20の外球面22と接する。外輪10の内球面12の曲率中心とケージ40の外球面42の曲率中心とは一致し、図2に符号O4で示している。同様に、内輪20の外球面22の曲率中心とケージ40の内球面44の曲率中心とは一致し、図2に符号O3で示している。なお、図面では、外輪10の内球面12とケージ40の外球面42との間、内輪20の外球面22とケージ40の内球面44との間のすきまが誇張して示している。
外輪10のボール溝14は円弧部分14aと直線部分14bとからなり、円弧部分14aはマウス部16の奥側つまり反開口端側に位置し、直線部分14bは開口端側に位置する。そして、ボール溝14は、開口端側の溝底を、開口端18に向かって直線的に拡径するテーパ角度αのテーパ状としている。
内輪20のボール溝24は円弧部分24aと直線部分24bとからなり、円弧部分24aは外輪10の開口端側に位置し、直線部分24bは反開口端側に位置する。そして、ボール溝24は、外輪10の奥側つまり反開口端側の溝底を、反開口端側に向かって直線的に拡径するテーパ角度αのテーパ状としている。
この継手では、大きな作動角θを取り得る構造とするため、図2に示すように、外輪10のボール溝14の曲率中心O1は内球面12の中心O4に対して、内輪20のボール溝24の曲率中心O2は外球面22の中心O3に対して、等距離Fだけ軸方向に逆向きにオフセットさせている(トラックオフセット)。同様に、ケージ40の外球面42の曲率中心O4と内球面44の曲率中心O3は、継手中心Oに対して等距離fだけ軸方向に逆向きにオフセットさせている(ケージオフセット)。
図3に示すように、外輪10の回転軸Xと内輪20の回転軸Yが0°以外のある作動角θをとったとき、両回転軸X,Yのなす角度θの二等分線に垂直な平面すなわち継手中心面P内にすべてのボール30があれば、ボール中心から両回転軸X,Yまでの距離が相等しく、したがって、両回転軸X,Y間で等角速度で回転運動の伝達が行われる。継手中心面Pと回転軸X,Yとの交点を継手中心Oと称する。固定式等速自在継手では、作動角θに関わりなく継手中心Oは固定されている。
対をなす外輪10のボール溝14と内輪20のボール溝24とで構成されるトラックは、外輪10のマウス部16の奥側から開口端側に向かって径方向間隔が徐々に拡大する楔状を呈している。そして、継手が作動角θをとった状態でトルクを伝達するとき、図2に白抜き矢印で示すように、楔状のトラックの狭い方から広い方へボール30を押し出そうとする力が作用する。この力によってボール30からケージ40のポケット46の壁面に作用する荷重をポケット荷重と呼ぶ。
ケージ40は、前述したようにケージオフセットを設けたことにより、外輪10の開口端側に向けて厚肉で、その反開口端側に向けて薄肉となった形状を有する。つまり、外輪10の開口端側に厚肉部41、その反開口端側に薄肉部43が配されている。図4は、(a)に実施形態のケージ40を示し、このケージ40と比較するため、(b)に従来のケージ140(図9参照)を示す。
この実施形態のケージ40は、従来品よりも、その外球面42の厚肉部41を軸方向に向けて延在させ、その厚肉部41の内球面側周縁に凹陥部45を設けている。このケージ40の厚肉部41では、図3に示すように外輪10と内輪20が最大作動角θをとった状態で、内輪20にスプライン嵌合により取り付けられたシャフト50がケージ40の厚肉部41と干渉しない程度にその外球面42の厚肉部41を延在させる。
このように高角域においてもケージ40の外球面42と外輪10の内球面12との接触面積を確保することができることにより、最大作動角θをとった時に、ボール30がポケット荷重によりケージ40を開口端側へ押し、そのケージ40の外球面42の厚肉部41と外輪10の内球面12が強く擦れ合っても発熱による耐久性の低下や伝達トルクの損失を最小限に抑えることができる。また、ケージ40の剛性を最大限に確保することができるので、ケージ40自体の強度も向上する。
一方、ケージ40の外球面42の厚肉部41を延在させると、その厚肉部41の容積が大きくなることから、ケージ40の重量が非常に大きくなり、その結果、等速自在継手全体の重量が大きくなってしまうことになる。
そこで、ケージ40の厚肉部41の内球面側周縁に凹陥部45を設ける。このようにケージ40の厚肉部41の内球面側周縁に凹陥部45を設けたことにより、ケージ40の重量軽減を図ることができる。この凹陥部45は内球面側周縁に設けていることから、ケージ40の外球面42については、外輪10の内球面12との接触面積を確保することができて、最大作動角時に、ケージ40の外球面42と外輪10の内球面12との擦れ合いでの発熱による耐久性の低下や伝達トルクの損失を最小限に抑えることができる効果を維持できる。
この凹陥部45は、図4(a)に示すようにケージ40の軸方向に平行な内径面47と径方向に平行な端面48とを持ち、その凹陥部45の形状を、凹陥部内径面47における内径寸法φDと、ケージ端面49から凹陥部端面48までの軸方向寸法Lとで規定することが可能である。このように凹陥部45の形状を規定すれば、その寸法管理方法が容易になるため、製品コストの削減を図ることができる。なお、凹陥部45は、ケージ40の全周に亘って環状に形成する以外に、部分的に形成するようにしてもよい。
外輪10と内輪20が最大作動角θをとったとき、外輪10のマウス部16の開口端18からボール30が飛び出すことを防止するため、ケージ40のポケット46で拘束できるようにケージオフセット量fを従来のものよりも大きく設定する。すなわち、ケージオフセット量をf、ボール30の中心軌跡半径値、すなわち、作動角0°時における外輪10のボール溝14の曲率中心O1または内輪20のボール溝24の曲率中心O2とボール30の中心O5とを結ぶ線分の長さをPCRとした場合、f/PCRが0より大きく、かつ、0.12以下となるように設定する。
このように、外輪10および内輪20の両ボール溝14,24をテーパ状とすれば、最大作動角の高角化と共に、外輪10のボール溝14におけるボール30との接触長さを確保することができるので、外輪10と内輪20との間で安定したトルク伝達を確保することができる。また、作動角をとった時にボール30が最も飛び出そうとする位相(位相角φ=0°)(図3および図5参照)のトラック荷重およびポケット荷重を低減することができるので、外輪10と内輪20の高角域での作動において有利である。ここで、トラック荷重とは、接触するボール30からボール溝14,24が受ける荷重を意味する。
また、ケージ40の外球面42は外輪10の内球面12に接触案内され、ケージ40の内球面44は内輪20の外球面22に接触案内され、トルク伝達時にケージ40と外輪10または内輪20との間で球面力が作用するが、その球面力の最大値を低減することができ、継手内部での発熱を抑制できる。さらに、鍛造型が抜き易いことから冷間鍛造による加工性がよく、製造コストの低減も図れる。
外輪10および内輪20の両ボール溝14,24をテーパ状とすることにより、前述したトラック荷重、ポケット荷重および球面力からなる内部力の影響および傾向を検証し、有限要素法(FEM)解析を実施することで、ボール溝14,24のテーパ角度α(図1および図2参照)の範囲を絞り込んで最適設定した。
まず、ボール溝14,24のテーパ角度αを大きくすることによる内部力(トラック荷重、ポケット荷重および球面力)の傾向は、表1のとおりである。なお、表1において、ボール30が最も飛び出そうとする位相(位相角φ=0°)と内部力が最大値となるボール30の位相、つまり、ボール30が最も奥に入る位相(位相角φ=180°付近)について検証した(図3および図5参照)。また、球面力の変動幅とは、球面力の最大値と最小値との差を意味する。
表1から明らかなようにテーパ角度αを大きくすると、ポケット荷重の最大値が大きくなるが、ボール30が最も奥に入る位相(位相角φ=180°付近)で外輪10の肉厚を大きく、また、ケージオフセット量を大きくしてケージ40の肉厚を大きくすることにより強度を確保することができるので問題にはならない。
次に、テーパ角度αの上限値を決定するために、有限要素法(FEM)解析を実施した。テーパ角度αが大きくなれば、ボール30が最も飛び出そうとする位相(位相角φ=0°)では内部力(トラック荷重およびポケット荷重)が小さくなり、強度的に有利になるが、外輪10の開口端18でありその肉厚が小さくなるため、ボール溝14に発生する応力値を継手強度に換算して傾向を確認した。その結果は、図6に示すとおりである。同図に示す特性から明らかなようにテーパ角度αが12.9°で継手強度が必要強度を下回ることから、テーパ角度αの最適範囲としてその上限値を12°として規定した。
なお、前述の実施形態では、トラックオフセットを設けた場合について例示したが、そのトラックオフセットを設けずにトラックオフセット量Fを0にしてもよい。トラックオフセットを設けていると、外輪10のボール溝14の円弧部分14aがその奥側に向けて浅くなることから、作動角をとった時にボール溝14の最奥部に位置するボール30の乗り上げが生じる可能性がある。
そこで、外輪10のボール溝14の曲率中心O1をその内球面12の曲率中心O4に一致させ、かつ、内輪20のボール溝24の曲率中心O2をその外球面22の曲率中心O3に一致させてトラックオフセット量Fを0とすることにより、外輪10のボール溝14の円弧部分14aが奥側に向けて浅くなることがなく均一な深さとなることから、作動角をとった時にボール溝14の最奥部に位置するボール30の乗り上げを抑制することができる。
トラックオフセット量F、ケージオフセット量f、テーパ角度αの各因子を変動させて内部力解析を行った結果を次に述べる。ここで、トラックオフセットについては、高角域に入っても許容負荷トルクが落ちない超高角固定式等速自在継手の特性を考慮してトラックオフセット量F=0すなわち「トラックオフセットなし」とした。ケージオフセットについては、内部力の観点からはできるだけ小さい方がよいが、継手の機能確保のためにはある程度ケージオフセットをつけなくてはならないことから、0≦f/PCR≦0.150で変動させた。テーパ角度αについては、0°から12°までの範囲で変動させた。
ケージオフセット量f=0(f/PCR=0)ならば、テーパ角度αが1.1°以上のとき、ボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)のトラック荷重およびポケット荷重はゼロになる。一方、テーパ角度α=12°ならば、ケージオフセット量f=3.94(f/PCR=0.114)以下のとき、ボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)のトラック荷重およびポケット荷重はゼロになる。
つまり、ケージオフセット量fとテーパ角度αとの関係が図7の斜線領域内に設定されていれば、ボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)のトラック荷重およびポケット荷重はゼロになる。ここで、図7は内部力解析により算出したデータに基づいて作図したもので、横軸がテーパ角度α(deg)、縦軸がf/PCRを表している。
これより、ボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)に負荷される荷重を極力小さくし、より高角作動域において有利となる内部仕様は次のようになる。
トラックオフセット:なし
ケージオフセット量f:0<f/PCR≦0.12
テーパ角度α:1°≦α≦12°
トラックオフセット:なし
ケージオフセット量f:0<f/PCR≦0.12
テーパ角度α:1°≦α≦12°
また、この実施形態では、ボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)における荷重が低減する一方、ピークの荷重は従来の等速自在継手と比較して大きくなることから、強度を確保するため、ケージ40の厚肉部41を外輪10の開口端側に向けた配置とするのが好ましい。
前述の内部仕様で寸法を設定した本発明による固定式等速自在継手(実施例)と従来の固定式等速自在継手(比較例)について、最大作動角時のボール30が最も飛び出そうとする位相(0°位相)におけるトラック荷重およびポケット荷重を算出したところ、結果は図8に示すとおりであった。同図より、比較例に対して実施例が、トラック荷重とポケット荷重のいずれも8割以上減少していることが分かる。
10 外側継手部材(外輪)
12 外側継手部材(外輪)の内球面
14 外側継手部材(外輪)のボール溝
18 開口端
20 内側継手部材(内輪)
22 内側継手部材(内輪)の外球面
24 内側継手部材(内輪)のボール溝
30 ボール
40 ケージ
41 厚肉部
42 ケージの外球面
43 薄肉部
44 ケージの内球面
45 凹陥部
f ケージオフセット量
F トラックオフセット量
O1 外側継手部材(外輪)のボール溝の曲率中心
O2 内側継手部材(内輪)のボール溝の曲率中心
O3 ケージの内球面中心
O4 ケージの外球面中心
O5 ボールの中心
α ボール溝のテーパ角度
12 外側継手部材(外輪)の内球面
14 外側継手部材(外輪)のボール溝
18 開口端
20 内側継手部材(内輪)
22 内側継手部材(内輪)の外球面
24 内側継手部材(内輪)のボール溝
30 ボール
40 ケージ
41 厚肉部
42 ケージの外球面
43 薄肉部
44 ケージの内球面
45 凹陥部
f ケージオフセット量
F トラックオフセット量
O1 外側継手部材(外輪)のボール溝の曲率中心
O2 内側継手部材(内輪)のボール溝の曲率中心
O3 ケージの内球面中心
O4 ケージの外球面中心
O5 ボールの中心
α ボール溝のテーパ角度
Claims (5)
- 内球面に複数のボール溝を円周方向等間隔に軸方向に沿って開口端に向けて形成した外側継手部材と、外球面に前記外側継手部材のボール溝と対をなす複数のボール溝を円周方向等間隔に軸方向に沿って形成した内側継手部材と、前記外側継手部材と内側継手部材の両ボール溝間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材の内球面と内側継手部材の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備え、
前記ケージの外球面中心と内球面中心は継手中心に対して軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされ、ケージの縦断面において、外側継手部材の開口端側を厚肉にすると共にその反開口端側を薄肉にし、
前記外側継手部材のボール溝の開口端側溝底を、前記開口端に向けて直線的に拡径したテーパ状にすると共に、前記内側継手部材のボール溝の反開口端側溝底を、その反開口端側に向けて直線的に拡径したテーパ状とし、
前記ケージの外球面の開口端側厚肉部を軸方向に向けて延在させ、その開口端側厚肉部の内球面側周縁に凹陥部を設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。 - 前記凹陥部は、ケージの軸方向に平行な内径面と径方向に平行な端面とを持ち、その凹陥部の形状を、前記凹陥部内径面における内径寸法と、ケージ端面から前記凹陥部端面までの軸方向寸法とで規定した請求項1に記載の固定式等速自在継手。
- 前記外側継手部材および内側継手部材の両ボール溝のテーパ角度の上限値を12°とした請求項1又は2に記載の固定式等速自在継手。
- 前記ケージの外球面中心と内球面中心とのケージオフセット量fと、作動角0°時における外側継手部材のボール溝の曲率中心または内側継手部材のボール溝の曲率中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さPCRとの比の値f/PCRが0より大きく、かつ、0.12以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
- 前記ボールの個数を8個とした請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定式等速自在継手。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006029567A JP2007211805A (ja) | 2006-02-07 | 2006-02-07 | 固定式等速自在継手 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006029567A JP2007211805A (ja) | 2006-02-07 | 2006-02-07 | 固定式等速自在継手 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007211805A true JP2007211805A (ja) | 2007-08-23 |
Family
ID=38490445
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2006029567A Withdrawn JP2007211805A (ja) | 2006-02-07 | 2006-02-07 | 固定式等速自在継手 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2007211805A (ja) |
-
2006
- 2006-02-07 JP JP2006029567A patent/JP2007211805A/ja not_active Withdrawn
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