JP2007190582A - フェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物並びに鋳型 - Google Patents

フェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物並びに鋳型 Download PDF

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Abstract

【課題】鋳型の変形や砂粒子の脱落等の発生を有利に抑制し得る、優れた耐熱性を発揮すると共に、造型後の抜型時や運搬時に壊れることのない初期強度を実現し得る、フェノールウレタン系の有機粘結剤を提供すること。
【解決手段】フェノール樹脂、ポリイソシアネート化合物及び有機溶剤と共に、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の特性改善樹脂を、必須成分として、フェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤を構成した。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤、及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物、並びにそのような鋳物砂組成物から造型される鋳型に関するものである。
従来より、砂型鋳造において使用される代表的な有機系鋳型の一つとして、2液性の有機粘結剤成分であるフェノール樹脂とポリイソシアネート化合物との重付加反応を利用して製造されるフェノールウレタン系鋳型があり、後述するようなコールドボックス法によって製造される量産型のガス硬化鋳型や、常温下に数時間乃至24時間程度放置して自硬化させる常温自硬性法によって製造される非量産型の自硬性鋳型が、広く知られている。そして、例えば、かかる一例として示されるコールドボックス法による鋳型の製造について、更に具体的に説明するならば、先ず、2液性の有機粘結剤(フェノール樹脂溶液とポリイソシアネート化合物溶液)と鋳物砂をミキサーで混練して、鋳物砂組成物を調製した後、これを、成形型内に加圧充填して、鋳型に成形する。次いで、この成形型内に、第三級アミン系硬化触媒を通気して、鋳型を硬化させて、造型を完了した後、最後に、かかる成形型より鋳型を抜型して、目的とする鋳造用のガス硬化鋳型が、製造されることとなるのである。
しかしながら、そのようにして得られたガス硬化鋳型は、粘結剤特有の熱解離し易い硬化構造を有することから、耐熱性に欠けるという特質があり、溶融金属を注湯する際に、鋳型の変形や砂粒子の脱落等を生じ易いという問題を内在しているのである。加えて、造型後の抜型時や運搬時に壊れ易い等の問題があり、鋳型強度、特に抜型直後の強度(以下、「初期強度」という。)の改善も求められているのである。
ところで、上述の如くして得られるフェノールウレタン系の鋳型の特性を改善すべく、従来から、種々なる提案が為されてきており、その一つの技術として、特開2004−42054号公報(特許文献1)においては、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールを反応して得られる、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、フェノール樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを、必須成分としてなる鋳型用粘結剤が、提案されている。
特開2004-42054号公報
かかる状況下において、本発明は、上述したような問題点を新たに解決するために為されたものであって、鋳造時の鋳型の変形や砂粒子の脱落等の発生を有利に抑制し得るような、優れた耐熱性を発揮すると共に、造型後の抜型時や運搬時に壊れることのない初期強度を実現し得る、フェノールウレタン系の有機粘結剤、及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物、並びにそのような鋳物砂組成物から造型される鋳型を提供することを、その目的としている。
ここにおいて、本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フェノールウレタン系の有機粘結剤に、新たな成分として、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の特性改善樹脂を添加、配合せしめることにより、鋳型の耐熱性や初期強度が効果的に向上され得ることを見出したのである。
そして、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、その要旨とするところは、フェノール樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、有機溶剤と、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の特性改善樹脂とを、必須成分としてなることを特徴とするフェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤にある。
なお、本発明は、また、フェノール樹脂とポリイソシアネート化合物と有機溶剤と共に、そのような有機溶剤に可溶性の前記特性改善樹脂をも、必須成分としてなることを特徴とするフェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤をも、その要旨とするものであり、さらに、前記石油樹脂は、有利には、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合樹脂又はジシクロペンタジエン系石油樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種である有機粘結剤である。
また、本発明は、所定の鋳物砂に対して、上記の有機粘結剤を被覆せしめてなる鋳物砂組成物、並びにそのような鋳物砂組成物を用いて、所定形状に成形して、硬化させてなる鋳型をも、それぞれ、要旨とするものである。このように、上記の有機粘結剤を用いて得られる鋳物砂組成物や鋳型においても、上述したような各種効果が、何れも、有利に享受され得るのである。
かかる本発明に従う有機粘結剤は、鋳型の耐熱性や初期強度の向上を有利に図り得るため、鋳造時の鋳型の変形や砂粒子の脱落等の問題の発生を効果的に防止することができることに加えて、鋳型の抜型時や運搬時の型壊れを回避して、生産性の改善に大きく寄与することができる等の効果を奏するものである。
また、本発明において、特性改善樹脂として、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、或いはジシクロペンタジエン系石油樹脂を用いる場合は、それらを有機粘結剤中に溶解することができるため、鋳物砂の調製時の作業性が有利に簡素化されることとなり、従って、生産性の向上に大いに寄与することができる特徴を発揮する。
ところで、このような本発明に従う有機粘結剤において、その主たる成分の一つとして使用されるフェノール樹脂は、特に限定されるものではなく、従来からフェノールウレタン系の鋳型を製造する際に用いられてきた各種のフェノール樹脂、具体的に例示すれば、フェノール類とアルデヒド類(好ましくは、ホルムアルデヒド)とを付加縮合反応させて得られる、有機溶剤に可溶なベンジルエーテル型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、及びそれらの変性フェノール樹脂、並びにこれらの混合物が、適宜に用いられることとなる。
そして、上記のフェノール樹脂は、具体的には、後述するポリイソシアネート溶液との相溶性、鋳物砂へのコーティング性、鋳型物性等の観点から、一般に、極性有機溶剤にフェノール樹脂を溶解させた後、樹脂の分離が生じない量の非極性有機溶剤で、約40〜80質量%の濃度に調整された溶液(以下、「フェノール樹脂溶液」という。)に低粘度化して使用される。また、かかるフェノール樹脂溶液には、必要に応じて、樹脂成分と鋳物砂との接着性の向上を図るための添加剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物や、可使時間延長剤として、イソフタル酸クロリドを代表例とする、酸クロリド等が配合される他、劣化防止剤、乾燥防止剤、離型剤等の、各種添加剤を配合することも可能である。
一方、本発明に従う有機粘結剤における主たる成分の他の一つとして使用されるポリイソシアネート化合物は、フェノール樹脂の活性水素と重付加反応して、砂粒子間の化学的結合を形成できるイソシアネート基を分子内に2以上有する化合物であり、特に制限されるものではないが、その具体例を例示するならば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(以下、「ポリメリックMDI」という。)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、これらのポリイソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるイソシアネート基を2以上有するプレポリマー等を挙げることができる。これらは、単独で用いられても、或いは2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
また、このようなポリイソシアネート化合物は、前記したフェノール樹脂と同様の理由から、一般に、非極性有機溶剤で、場合によっては非極性有機溶剤と極性有機溶剤とを併用して、約40〜90質量%の濃度の溶液に調整して、使用されることとなる。しかし、使用するポリイソシアネート化合物の種類等によっては、必ずしも、有機溶剤に溶解して使用する必要はなく、その原液のままで、用いることも、可能である。以下では、ポリイソシアネート化合物の原液、及びポリイソシアネート化合物を有機溶媒に溶解させた溶液を含めて、ポリイソシアネート溶液と呼称することとする。
さらに、本発明において使用される有機溶剤としては、ポリイソシアネート化合物には非反応性で、かつ溶解対象であるフェノール樹脂又はポリイソシアネート化合物に対して良溶媒であれば、特に制限されるものではないが、上述した如く、フェノール樹脂では極性溶剤と非極性溶剤との併用、またポリイソシアネート化合物では非極性溶剤の使用が、一般的である。
なお、上記の極性溶剤としては、環境安全性の観点から、例えば、カルボン酸ジメチルエステル混合物(商品名:DBE、デュポン社製)等のカルボン酸ジアルキルエステル、菜種油メチルエステル等の植物油メチルエステル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、これらの混合物等の脂肪酸モノエステルなどのエステル類が、特に好ましいが、その他、イソホロン等のケトン類、イソプロピルエーテル等のエーテル類、フルフリルアルコール等を、例示することができる。一方、非極性溶剤としては、一般に、パラフィン類、ナフテン類、アルキルベンゼン類等の石油系溶剤、具体的には、イプゾール150(商品名、出光興産株式会社製)、HAWS(シェル・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)、ハイゾール(商品名、昭和シェル石油株式会社製)、ソルベッソ(商品名、エクソンモービル社製)等を例示することができる。
ここで、本発明に従う有機粘結剤においては、上述せるフェノール樹脂、ポリイソシアネート化合物及び有機溶剤の他に、更なる必須の成分として、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、及び石油樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の特性改善樹脂が、使用される。なお、そこで、石油樹脂としては、ナフサ分解油C5留分を粗原料とする脂肪族系石油樹脂、ナフサ分解油C9留分を粗原料とする芳香族系石油樹脂、上記のC5留分/C9留分混合若しくはスチレン系純モノマーを粗原料とする脂肪族/芳香族共重合樹脂、C5留分中のジシクロペンタジエン(DCPD)を粗原料とするDCPD系石油樹脂等を挙げることができる。本発明では、それらの中でも、特に、有機溶剤可溶性のクマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂が、好適に用いられることとなる。また、かかる石油樹脂は、水酸基やエステル基等の極性基の導入によって溶剤可溶性の高められたものの他、水素化した水素化石油樹脂であっても良いし、有機溶剤に完全に溶解しない状態でも、使用することができる。
そして、このような特定の特性改善樹脂の使用による、鋳型の耐熱性や初期強度の向上により、鋳造時においては鋳型の変形や砂粒子の脱落が効果的に阻止され、また鋳型の抜型時や運搬時においては、型壊れに対する耐性を、効果的に実現し得るようになるのである。
また、そのような特性を付与し得る特性改善樹脂の更なる具体例としては、クマロン・インデン樹脂では、例えば新日鉄化学株式会社製の商品名「エスクロンL−5」、「エスクロンL−20」、脂肪族(C5)系石油樹脂では、例えば丸善石油化学株式会社製の商品名「マルカレッツR−100AS」、「マルカレッツT−100AS」、及びこれを水素化した水素化石油樹脂では、例えば出光興産株式会社製の商品名「アイマーブP-90」、「アイマーブP-140」、芳香族(C9)系石油樹脂では、例えば東ソー株式会社製の商品名「ペトコールLX」、「ペトコール120」、脂肪族/芳香族共重合樹脂では、例えば東ソー株式会社製の商品名「ペトロタック90」、「ペトロタック130」、ジシクロペンタジエン系石油樹脂では、例えば日本ゼオン株式会社製の商品名「クイントン1325」、「クイントン1500(エステル基含有)」、「クイントン1700(水酸基含有)」、スチレン樹脂では、例えば三洋化成工業株式会社製の商品名「ハイマーST95」、「ハイマーST120」、丸善石油化学株式会社製の商品名「マルカリンカーCST15」、「マルカリンカーCST70」、「マルカリンカーCST120」等の市販品を、挙げることができる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
さらに、これらの中でも、混練時の作業性の観点から、有機溶剤に溶解可能な、クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂、極性基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂等が、好適であるが、更に鋳型特性(耐熱性や初期強度)を考慮すると、クマロン・インデン樹脂やスチレン樹脂が、より好ましく用いられる。一方、有機溶剤に溶けない特性改善樹脂については、一般に、鋳物砂組成物を調製する際に、フェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液と共に、添加配合して使用されるが、鋳物砂組成物を調製する直前に、フェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液に添加、混合して用いられるようにすることも可能である。
なお、上記した特定の特性改善樹脂の配合量としては、一般に、鋳物砂100質量部に対して、0.01〜1.25質量部、好ましくは0.02〜0.75質量部、特に好ましくは0.05〜0.50質量部である。その配合量が0.01質量部未満では、鋳型特性の改善が充分に実現され得なくなる恐れがあり、逆に、1.25質量部を超えるようになると、経済性の悪化のみならず、鋳型強度の低下を伴う恐れがある。
また、本発明に従う鋳物砂組成物の形成は、実際には、適当なミキサーを用いて、フェノール樹脂溶液、ポリイソシアネート溶液、所定の特性改善樹脂及び必要に応じて所望の添加剤、例えば酸化鉄や香料等を、直接に鋳物砂に添加、配合した後、充分に混練することにより、実現され、そして、有機粘結剤等が鋳物砂の表面に、全体的ないし部分的に被覆されてなる鋳物砂組成物が、調製されることとなる。なお、かかる混練作業は、−10〜50℃の範囲の温度で行なわれることが、望ましい。
ところで、上述せる如きフェノール樹脂溶液とポリイソシアネート溶液は、それらを混合した段階で、重付加反応(ウレタン化反応)が徐々に生じるところから、予め、別々に調製して準備される。そして、それらは、通常、鋳物砂との混練時に混合される。また、本発明に従う特性改善樹脂は、鋳物砂組成物に均一に混合され得るように、別個に調製されるフェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液の何れか一方に、若しくは、両方に添加して、溶解乃至は分散、混合されるか、或いは、適当な有機溶剤に溶解乃至は分散状態に調製して、準備される。これらは、通常、鋳物砂との混練時に、フェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液と共に、混合されることとなる。
このようにして得られた鋳物砂組成物は、先ず、目的とする鋳型を与える所望の形状空間を有する成形型内に加圧充填されて、未硬化の鋳型に成形される。次いで、この成形型内に、コールドボックス法において通常使用されている硬化触媒である気体又はエアロゾル状の第三級アミンを通気して、その成形された鋳型を硬化させて造型を完了し、最後に、かかる成形型より硬化した鋳型を抜型して、鋳造用のガス硬化鋳型として製造される。なお、硬化触媒として用いられる第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン等、従来から公知のものが、何れも採用され得る。
また、常温自硬性法による鋳造用の自硬性鋳型の造型には、先ず、前記せる如き有機粘結剤と鋳物砂とを混練する際に一緒に添加した、常温下での硬化促進機能を有する、例えば塩基、アミン、金属イオン等の硬化触媒を含む鋳物砂組成物を調製し、次に、それを速やかに成形型枠内に充填(流し込み又は詰め込み)して、鋳型を成形する。その後、常温下に、数時間から24時間程度放置させることにより、かかる成形された鋳型を硬化させて、造型を完了し、最後に、成形型枠から、硬化した鋳型を取り出すことにより、製造されるのである。
なお、上記した鋳物砂組成物の調製において、フェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液の配合量としては、それぞれ、有効成分であるフェノール樹脂及びポリイソシアネート化合物の配合量が、鋳物砂の100質量部に対して、それぞれ、一般に0.01〜5.0質量部程度、好ましくは0.05〜3.0質量部、更に好ましくは0.1〜2.0質量部となる割合において、適宜に選定されることとなる。また、フェノール樹脂とポリイソシアネート化合物の配合比率としては、特に限定されるものではないが、一般に、質量基準で、フェノール樹脂:ポリイソシアネート化合物=60:40〜20:80となるように、フェノール樹脂溶液やポリイソシアネート溶液が組み合わされて、用いられる。
また、使用される鋳物砂としては、従来から鋳型用に用いられている耐火性のものであれば、天然砂であっても、人工砂であっても、何等差支えなく、特に限定されるものではない。例えば、ケイ砂、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ、ムライト系人工粒子(例えば、伊藤忠セラテック株式会社製の商品名「ナイガイセラビーズ」)及びこれらの再生砂等が、適宜に選択使用されることとなる。これらは、単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いられることとなる。なお、これらの中でも、使用済廃鋳型の研磨再生に有利な特質を有する、球状で、耐破砕性に優れるムライト系人工粒子が特に好適である。
かくして得られた鋳造用鋳型は、中子、主型等の砂型として、アルミニウム合金やマグネシウム合金、鉄等の各種金属からなる鋳物製品の鋳造において、好適に用いられることとなる。
なお、本発明に従う有機粘結剤によって、鋳型の耐熱性や初期強度が有利に改善される理由は、今までのところ、必ずしも明確なものではないが、特定の特性改善樹脂が有する高分子特性(多分子性等)によって、鋳型造型時の強度発現が容易になり、また鋳造時のような高温での粘結剤の分解が効果的に抑制されることとなるため、鋳型の耐熱性や強度が、より改善されるものと推察されている。
以下に、本発明を、その代表的な実施例を用いて更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
先ず、実施例及び比較例で用いたフェノール樹脂溶液及びポリイソシアネート溶液を、それぞれ、以下のようにして調製、準備した。
−フェノール樹脂溶液の調製−
還流器、温度計及び攪拌機を備えた三つ口反応フラスコ内に、フェノールの100質量部、92質量%パラホルムアルデヒドの41質量部、及び反応触媒としてナフテン酸鉛の0.32質量部を仕込み、還流温度で60分間反応を行なった後、加熱濃縮して、水分含有量が1質量%以下のベンジルエーテル型フェノール樹脂を得た。次いで、このフェノール樹脂の50質量部を、有効量のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと共に、有機エステル系溶剤(商品名:DBE、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル及びコハク酸ジメチルの混合物、デュポン社製)の25質量部に溶解した後、石油系溶剤(商品名:イプゾール100、出光興産株式会社製)の25質量部を加えて、50質量%のフェノール樹脂溶液を調製した。
−ポリイソシアネート溶液の調製−
攪拌機を備えた混合槽内で、ポリイソシアネート化合物であるポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(商品名:コスモネートM200、三井化学株式会社製)の80質量部と前記イプゾール150の10質量部を攪拌混合して、89質量%のポリイソシアネート溶液を調製した。
また、本実施例において造型された鋳型について、その初期強度及び耐熱性の評価は、次の試験法により実施した。
−鋳型の初期強度の測定−
ガス硬化鋳型は、コールドボックス造型機のサンドマガジン内に、実施例で調製したガス硬化型鋳物砂組成物を投入した後、この鋳物砂組成物を、曲げ強度試験片作製用金型内に、ゲージ圧:0.3MPaで充填した。次いで、かかる金型内に、ガスジェネレーターにより、ゲージ圧:0.2MPaで1秒間、トリエチルアミンを通気した後、ゲージ圧:0.2MPaで10秒間、エアーパージし、更に抜型して、幅30mm×長さ85mm×厚み10mmの初期強度測定用の鋳型を作製した。そして、その得られた鋳型の曲げ強度(N/cm2 )を、直ちにデジタル鋳物砂強度試験機(高千穂精機株式会社製)を用いて測定し、鋳型の初期強度とした。
−鋳型の耐熱性の評価−
鋳型の初期強度の測定の場合と同様に、ガス硬化により耐熱性評価用の鋳型6(幅30mm×長さ85mm×厚み10mm)を作製した。次に、図1に示されるような鋳型支持台2の下部に、秤4をセットした試験装置を用いて、その作製された鋳型6を支持台2にセットした後、鋳型6下端の一方の角部を、図2に示される如く、発熱体(エレマ棒)8の側面に当接させた状態において、かかる発熱体8を1秒間に約10℃の割合で100℃から800℃まで加熱昇温し、そして800℃に到達した後、当該温度を保持した。そして、経過時間(30秒、60秒、90秒)ごとに、昇温過程で崩落した砂の質量を測定した。なお、本測定は、発熱体8の温度が100℃付近になると、次の鋳型片6の測定を開始するような測定周期も考慮して、行った。
−実施例1−
実験用品川ミキサー(株式会社ダルトン製)を用いて、鋳物砂であるセラビーズ#650(商品名:伊藤忠セラテック株式会社製)1000質量部に、上記のポリイソシアネート溶液の9質量部にクマロン・インデン樹脂(商品名:エスクロンL−5、新日鉄化学株式会社製)の1質量部(鋳物砂に対して0.1質量%)を溶解させて得た溶液の10質量部を添加して、30秒間混練した後、上記のフェノール樹脂溶液の10質量部を添加し、更に30秒間混練して、ガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そして、この得られた鋳物砂組成物を用いて、上述の如き鋳型(6)を造型して、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。そして、それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−実施例2−
実施例1において、クマロン・インデン樹脂に代えて、特性改善樹脂として、スチレン樹脂(商品名:ハイマーST95、三洋化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そして、その得られた鋳物砂組成物を用いて造型した鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−実施例3−
実験用品川ミキサーを用いて、鋳物砂:セラビーズ#650の1000質量部に、前記フェノール樹脂溶液の10質量部にエステル基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂(商品名:クイントン1500、日本ゼオン株式会社製)の1質量部(鋳物砂に対して0.1質量%)を溶解させて得た溶液の10質量部を添加して、30秒間混練した後、前記ポリイソシアネート溶液の9質量部を添加し、更に30秒間混練して、ガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そして、その得られた鋳物砂組成物を用いて造型された鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−実施例4−
実験用品川ミキサーを用いて、鋳物砂:セラビーズ#650の1000質量部に、前記フェノール樹脂溶液の10質量部及び芳香族(C9)系石油樹脂(商品名:ペトコールLX、東ソー株式会社製)の1質量部(鋳物砂に対して0.1質量%)を添加して、30秒間混練した後、前記ポリイソシアネート溶液の9質量部を添加して、更に30秒間混練して、ガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そして、その得られた鋳物砂組成物を用いて造型された鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−実施例5、6−
上記実施例4において、芳香族(C9)系石油樹脂に代えて、脂肪族(C5)系石油樹脂(実施例5、商品名:マルカレッツR−100AS 丸善石油化学株式会社製)又は脂肪族/芳香族共重合樹脂(実施例6、商品名:ペトロタック90 東ソー株式会社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして、2種類のガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そして、その得られた鋳物砂組成物から造型された鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−比較例1−
先ず、前記89質量%のポリイソシアネート溶液の90質量部に、前記石油系溶剤:イプゾール150の10質量部を加えて、80質量%のポリイソシアネート溶液を、調製した。次に、実験用品川ミキサーを用いて、鋳物砂:セラビーズ#650の1000質量部に、上記80質量%のポリイソシアネート溶液の10質量部を添加して30秒間混練した後、前記フェノール樹脂溶液の10質量部を添加して、更に30秒間混練して、ガス硬化性の鋳物砂組成物を調製した。そしてその得られた鋳物砂組成物を用いて造型された鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
−比較例2−
実施例1において、クマロン・インデン樹脂に代えて、キシレン樹脂(商品名:ニカノール Y−50、三菱ガス化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、鋳物砂組成物を調製した。そして、その得られた鋳物砂組成物から造型された鋳型(6)について、上記の試験法に従って、鋳型の初期強度及び耐熱性の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を、下記表1と図3に併せ示した。
Figure 2007190582
実施例における耐熱性の評価方法の形態を示す正面説明図である。 図1に示される評価形態を右側から見た状態を示す右側面説明図である。 実施例において得られた耐熱性試験結果を示すグラフである。
符号の説明
2 鋳型支持台 4 秤
6 評価用鋳型 8 発熱体(エレマ棒)

Claims (5)

  1. フェノール樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、有機溶剤と、クマロン・インデン樹脂、ポリスチレン樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の特性改善樹脂とを、必須成分としてなることを特徴とするフェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤。
  2. 前記特性改善樹脂が、前記有機溶剤に可溶性のものである請求項1に記載のフェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤。
  3. 前記石油樹脂が、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合樹脂及びジシクロペンタジエン系石油樹脂からなる群より選ばれる請求項1又は請求項2に記載のフェノールウレタン系の鋳型用有機粘結剤。
  4. 鋳物砂に対して、請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のフェノールウレタン系の鋳型用粘結剤を混練せしめてなることを特徴とする鋳物砂組成物。
  5. 請求項4に記載の鋳物砂組成物を用いて、所定形状に成形し、硬化させてなることを特徴とする鋳型。
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JP2015188910A (ja) * 2014-03-28 2015-11-02 旭有機材工業株式会社 鋳型用ウレタン硬化型有機粘結剤及びこれを用いて得られる鋳物砂組成物並びに鋳型

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