JP2007187501A - 質量分析を用いたペプチド同定方法及び同定装置 - Google Patents

質量分析を用いたペプチド同定方法及び同定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】MSn分析により得られた質量スペクトルを基にペプチドのアミノ酸配列を決定する従来のプロテオーム解析用ソフトウエアでは、同定の信頼性が十分に高くなく1個のぺプチドに絞ることが難しい。
【解決手段】既存のソフトウエアにより複数の候補ペプチドを選定した後、それぞれの候補ペプチド毎に、全てのフラグメントイオンの解離エネルギーを理論的に求め(S14)、各解離エネルギーと実測の質量スペクトルから得られるフラグメントイオン強度との相関性を示す相関係数を計算する(S15)。各候補ペプチド毎に得られた相関係数を比較し、最も相関の高いものを可能性の高いペプチドとして同定する。解離エネルギーを迅速に求めるために、ジペプチドを用いた簡単なモデルから全てのアミノ酸の組み合わせに対応する解離エネルギーを求めてこれをデータベース化しておく。
【選択図】図2

Description

本発明は、ペプチド混合物を含む試料を質量分析し、これにより得られた質量スペクトルデータを用いて各ペプチドのアミノ酸配列を同定するための方法、及び主としてコンピュータを利用してそうした同定を行うための装置に関する。
近年、ポストゲノム研究としてタンパク質の構造や機能の解析が急速に進められている。このようなタンパク質の構造・機能解析手法(プロテオーム解析)の一つとして、質量分析装置を用いたタンパク質の発現解析や一次構造解析が広く行われるようになってきており、四重極型イオントラップや衝突誘起分解(CID)などによって特定のピークの捕捉と開裂を行う、いわゆるMS分析(nは2以上の整数)が威力を発揮している。一般にMS2(=MS/MS)分析では、まず、分析対象物から特定の質量数(m/z)を有するイオンをプリカーサイオンとして選別し、該プリカーサイオンをCIDによって開裂させる。その後、開裂によって生成したイオン(プロダクトイオン)を質量分析することによって、目的とするイオンの質量や化学構造についての情報を得ることができる。
上記のようなMSn分析によってタンパク質のアミノ酸配列を決定する場合には、まず、タンパク質を適当な酵素で消化してペプチド断片の混合物としてから、該ペプチド混合物を質量分析する。このとき、各ペプチドを構成する元素には質量の異なる安定同位体が存在するため、同一のアミノ酸配列から成るペプチドであっても、その同位体組成の違いによって質量数の異なる複数のピークを生じる。該複数のピークは、天然存在比が最大の同位体のみで構成されたイオン(主イオン)のピークと、それ以外の同位体を含むイオン(同位体イオン)のピークから成り、これらは1Da間隔で並んだ複数本のピークから成るピーク群を形成する。
続いて、上記のようなペプチド混合物の質量スペクトルデータの中から、単一のペプチドに由来する一組の同位体ピーク群をプリカーサイオンとして選択し、該プリカーサイオンを開裂させて得られたイオン(プロダクトイオン)の質量分析(MS2分析)を行う。
以上のようにして得られたプロダクトイオンのスペクトルパターンや、上記プリカーサイオンのスペクトルパターンをデータベース検索に供することによって、被検ペプチドのアミノ酸配列を決定することができる。このように質量分析により得られた質量スペクトルデータに基づいてペプチドを同定するための標準的なソフトウエアが従来より利用されている。例えば代表的なプロテオーム解析用データベース検索エンジンとして、マトリックスサイエンス社が提供しているマスコット(MASCOT)がよく知られている。
このソフトウエアを用いた場合の概略的な解析手順を図15に示す。即ち、得られた質量スペクトルに出現しているフラグメントイオンの質量数をキーとして、データベースに登録されているペプチドの中から質量数がマッチするペプチドを検索し(ステップS1)、検索により得られた複数の候補ペプチド名をマッチ度順にランク付けしてリストアップする(ステップS2)。
分析者はこのリストを参考にしてペプチドを推定するわけであるが、実際には候補ペプチドのリスト上で最高ランクのものが正解の物質でないことがよくあり、上記ソフトウエアによる検索は必ずしも信頼性が高いものではない。その理由として、上記ソフトウエアではフラグメントイオンの質量数のマッチングは考慮されているものの、フラグメントイオンのピーク強度とのマッチングは全く又は殆ど考慮されていないことに拠るものと考えられる。
MASCOTを用いた解析結果の一例として、正解の物質ではないペプチドがリスト上で1位にランクされてしまった例を図17に示す。この例は、アンジオテンシンII(AngiotensinII:アミノ酸配列=[DRVYIHPF]、質量数=1,046.5Da)を質量分析することにより図16に示すように得られた質量スペクトルを基に、MASCOTを利用してペプチド分子の候補を挙げたものである。その結果、正しいアミノ酸配列は候補に挙げられたものの順位4位にランク付けされてしまっている。この例では、マッチングの度合いをスコアで以て表しているが、最も高いスコア(31点)を得たのはアミノ酸配列が[DFHLDEDR]であるペプチドであり、正答であるAngiotensinIIはスコアが28点で4位に留まる。但し、1位から4位まではスコアが接近しており、この結果からは、これらのうちのどれが正解であるのかを結論付けるのは難しい。
従来、MASCOTとは別にサーモ・エレクトロン社が提供するシークエスト(SEQUEST)というデータベース検索エンジンも利用されている。このソフトウエアでは、フラグメントイオン質量数とそのピーク強度との両方のマッチングが考慮されている。しかしながら、基本的にはMASCOTと同様に、データベースとしては質量数に関するものしか備えておらず、強度に関しては非常に簡易的な強度予測(具体的にはb/yイオン強度は全て50、aイオンや脱水・脱塩イオン強度は10)の下で候補ペプチドのフラグメントイオン強度を与えて測定により得られた質量スペクトルデータとのマッチングを評価しているだけである。したがって、強度マッチングに関してはあまり信頼性を期待できない。
図18は図16に示した質量スペクトルデータを基にSEQUESTを用いて評価した例を示している。この結果では、正解のAngiotensinII[DRVYIHPF]が1位にランクされており、MASCOTで誤って1位にランクされていた[DFHLDEDR]は2位となっている。しかしながら、両者のスコアは0.3067と0.2977とで非常に接近しており、1位から3位までにランクされたペプチド分子の中でいずれが正答であるのか結論を下すのは難しい。
一般に、上述したような同定処理により1個のペプチドに絞ることが困難であった場合には、例えば情報として与えるフラグメントイオン質量数の情報を減らす又は増やす等して調整し、再度、同定を試みるといった作業が行われることが多い。しかしながら、こうした作業は試行錯誤的であり、必ずしも信頼性の高い結果が得られるとは限らず、それにも拘わらずスループットを低下させるという問題がある。
一方、最近、数十個のパラメータから成る数学的な算出モデルを仮定し、この仮定の下でフラグメントイオン強度のスペクトルパターンを予測する手段を与えることで、フラグメントイオンの質量数と強度とを合わせたマッチングを行う手法も提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この提案の方法で使用されているパラメータはプロトンアフィティー(プロトンを引きつける力の指標)や活性化エネルギー等についての物理的な意味合いを含んではいるものの、それらは、パラーメータフィッティングにより、限られた個数の実測データにできるだけ適合するように決められた単なる数値パラメータにすぎない。そのため、このモデル式を全ての種類のペプチドに適用するには信頼度に欠け、学問的には意味があるものの実用性には乏しい。
さらに特許文献1には、プロテオーム解析において、計算対象のペプチドが与えられると、そのペプチドのアミノ酸配列の各化学結合の解離エネルギーを計算し、その解離エネルギーを用いて各解離パターンに対応した強度を予測し、その予測強度値と測定により取得された質量スペクトルデータとのマッチングをとることでマッチング精度を高める手法が提案されている。しかしながら、この文献では、解離エネルギーを用いて反応速度を算出する等して各解離パターンに対応した強度(Intensity)を算出する、としているものの、その具体的な方法については明らかにされていない。
実際には、後述するように、理論的に解離エネルギーを用いて反応速度を算出することはできず、反応速度を求めるには解離エネルギーではなくその分子位置で開裂するのに必要な活性化エネルギーを用いなければならず、これは容易には求まらない。さらに反応速度を算出するにはその分子の温度や頻度因子といった他のパラメータも必要であり、これらも確定することは困難である。こうしたことから、上記提案の方法は実用には供せない。また、仮に解離エネルギーから強度の推定が可能であったとしても、その過程で不確定な要因が付加されるため、推定精度を高くすることが難しく、この推定強度と実測強度とを比較する際の信頼性に問題が生じるおそれがある。
特開2004−12355号公報 ジャン(Z.Zhang)、「プレディケイション・オブ・ロー−エナジー・コリジョン−インデュースド・ディソシエイション・スペクトラ・オブ・ペプチドズ(Predication of Low-Energy Collision-Induced Dissociation Spectra of Peptides)」、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、 Vol.76、No.14、July 15, 2004、 pp.3908-3922
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、質量スペクトルデータに基づくタンパク質やペプチドのアミノ酸配列の決定精度を高めることができるペプチド同定方法及び同定装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された第1発明は、MSn分析により取得された質量スペクトルデータに基づいて被検試料中のペプチド混合物のアミノ酸配列を決定するペプチド同定方法であって、
a)質量スペクトルデータに基づいて複数の候補ペプチドを選定する一次候補選定ステップと、
b)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、全てのフラグメントイオンに対応した解離エネルギーを求める解離エネルギー取得ステップと、
c)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、前記解離エネルギー取得ステップにより求められた解離エネルギーとそれに対応すると推定される前記質量スペクトルデータに基づく実測のフラグメントイオン強度との相関性を示す指標値を計算する相関性調査ステップと、
d)各候補ペプチド毎に得られた前記相関性を示す指標値に基づいて候補ペプチドを絞り込む二次候補選定ステップと、
を実行することを特徴としている。
また、上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明を具現化する装置であり、MSn分析により取得された質量スペクトルデータに基づいて被検試料中のペプチド混合物のアミノ酸配列を決定するペプチド同定装置であって、
a)質量スペクトルデータに基づいて複数の候補ペプチドを選定する一次候補選定手段と、
b)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、全てのフラグメントイオンに対応した解離エネルギーを求める解離エネルギー取得手段と、
c)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、前記解離エネルギー取得手段により求められた解離エネルギーとそれに対応すると推定される前記質量スペクトルデータに基づく実測のフラグメントイオン強度との相関性を示す指標値を計算する相関性調査手段と、
d)前記相関性調査手段により各候補ペプチド毎に得られた前記相関性を示す指標値に基づいて候補ペプチドを絞る二次候補選定手段と、
を備えることを特徴としている。
後で詳しく述べるように、開裂反応の反応速度を求めるには、その分子位置で開裂するために必要な活性化エネルギー、分子の温度、頻度因子といったパラメータを与える必要があり、これらを与えることは実際上不可能であるため、そのままでは反応速度は求まらない。しかしながら、本願発明者は、理論的な考察により、或るペプチドにおいて様々な結合部(分子位置)で開裂が生じるときに、その解離エネルギーとそれにより得られるフラグメントイオンの強度(イオン量)との関係は高い直線相関を有するものとなるとの結論を導出した。
そこで、まず、既存のプロテオーム解析用ソフトウエア(例えば上記MASCOTなど)を用いた一次候補選定ステップにより、質量スペクトルデータに基づいて可能性の高い複数の候補ペプチドを選定する。そして、それら候補ペプチドのそれぞれについて、解離エネルギー取得ステップにより、そのペプチドが開裂することで生じるフラグメントイオンに対応した解離エネルギー(そのフラグメントイオンを生み出すのに必要なエネルギー)を求める。解離エネルギーの取得は計算により行うことができるが、一般にこの計算には時間が掛かるため、同定処理の際に一々計算を行うことは実用的でない。そこで、予めペプチドのアミノ酸配列の組み合わせとその開裂する分子位置毎に解離エネルギーを計算したデータベースを用意しておき、該データベースを参照して対応する解離エネルギーを求めるようにすることができる。
そして相関性調査ステップでは、複数の候補ペプチドのそれぞれについて、上述のようにして求まった解離エネルギーと、それに対応すると推定される、つまりはその開裂で生じるフラグメントイオンの質量数に対して所定の許容誤差の範囲で一致する質量数のものを質量スペクトルデータから抽出した実測のフラグメントイオン強度と、の相関性を示す指標値例えば相関係数を計算する。二次候補選定ステップでは、各候補ペプチド毎に得られた指標値に基づき、例えば最も相関が高いと判定された唯一の候補ペプチドを最も可能性の高いペプチドとして選定する。
但し、解離エネルギーを求めるために予め用意したデータベースを使用するにしても、ペプチドに含まれるアミノ酸の数は多く、アミノ酸配列の異なるペプチドの種類は膨大であって全てについて解離エネルギーを予め計算しておくこともあまり実用的ではない。そこで、本発明の一態様として、三個以上のアミノ酸が結合したペプチドを、着目する結合部を挟んだ二個のアミノ酸から成るジペプチドにモデル化し、該ジペプチドの解離エネルギーで以て元のペプチドの解離エネルギーを代替するようにするとよい。
これにより、全ての共通アミノ酸の組み合わせによるジペプチドについて解離エネルギーを予め算出してデータベース化しておき、前記解離エネルギー取得ステップでは、候補ペプチドの任意のフラグメントイオンに対する解離エネルギーを求める際に前記データベースから対応するジペプチドの解離エネルギーを呼び出してこれを用いるものとすることができる。
第1発明に係るペプチド同定方法及び第2発明に係るペプチド同定装置によれば、質量スペクトルに現れているピークの質量数に関する情報だけでなく強度に関する情報も有効に利用することができ、従来よりも高い確度で以てタンパク質やペプチドのアミノ酸配列を決定することができる。
特に、ジペプチドモデルを利用して簡略化した同定方法によれば、リーズナブルな計算時間で以て解離エネルギーデータベースを用意することができ、同定対象がどのようなペプチドであっても、該データベースを利用して迅速に解離エネルギーを求めて同定が迅速に行える。これにより、タンパク質やペプチド同定のためのコストを削減することができるとともに、同定処理のスループットを向上させることができる。
まず、本発明に係るペプチド同定方法の基本原理について説明する。
分子イオンが或る分子位置で開裂する反応はいわゆる単分子の化学反応と呼ばれるもので、一般的な化学反応の一つである。化学反応の標準的な理論によれば、その反応の速度は、アーレニウス(Arrheniius)の式と呼ばれる式に類似しており次の(1)式となる。
Figure 2007187501
ここでkはフラグメントイオン強度、Aは頻度因子と呼ばれる前指数因子、Eaはその分子位置で開裂するのに必要な活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは分子の温度である。即ち、反応速度を求めるためには、活性化エネルギー、頻度因子、温度といった各パラメータが必要であり、このことから、前述したように特許文献1に記載の方法では反応速度が求まらず、それ故に強度を推定するのも困難であることが分かる。
この反応速度は反応生成物の量、つまり、その分子位置での開裂により生成されたフラグメントイオンの総量に比例する量である。図3は分子イオンの開裂時のエネルギー変化の状態を示す模式図である。一例としていま分子イオンがXY+であるとすると、開裂はXとYとの間の結合部で起こり、その結果、X+フラグメントイオンとY+フラグメントイオンの二種類の発生が考えられるが、そのフラグメントイオンの量(強度)の和が上記(1)式で示す反応速度kに比例する量になっている。
したがって、X+フラグメントイオンとY+フラグメントイオンとにそれぞれに分けて強度を求めようとすれば、図3に示す解離エネルギー(反応前の状態から個々のフラグメントイオンに分解するまでのエネルギー)Ex、Eyを考える必要がある。その分割割合Rx、Ryは熱力学的平衡を考えれば、次の(2)式、(3)式となる筈である。
Figure 2007187501
これら分割比を用いれば、X+フラグメントイオンとY+フラグメントイオンのそれぞれの強度は、(1)式に(2)式を乗じたもの、又は(1)式に(3)式を乗じたものに比例するものとなる。そして(2)式、(3)式の分母は共通であるから、X+フラグメントイオンとY+フラグメントイオンのそれぞれの強度Ix、Iyは、次の(4)式のように解離エネルギーEx、Eyを用いて表すことができる。
Figure 2007187501
ここでA’は比例係数である。
(4)式の両辺の自然対数をとればわかるように、X、Yの区別なく次の(5)式で表すことができる。
Figure 2007187501
即ち、フラグメントイオン強度Iと解離エネルギーEとの間に次の(6)式の直線関係が成り立つことになる。
Figure 2007187501
この関係は特定の分子位置について導かれた関係式であるが、他の分子位置で開裂が生じた場合、必ずしも前指数因子A’が同じとは限らない。しかしながら、或る一つの分子に関する開裂であって開裂の分子反応メカニズムが類似しているものであれば、前指数因子Aはそれほど大きく変わらないと考えて構わない。こうしたことを考慮すれば、(6)式よりもさらに一般的な関係を示す(7)式が成り立つものと考えられる。
Figure 2007187501
この(7)式は、例えば1つの分子の様々な開裂位置での解離エネルギーを横軸にとり、縦軸にその開裂により生成されるフラグメントイオンの強度をとって相関グラフを作成すれば、大きな直線相関を示すことを意味している。
このように、前述の如く開裂反応の反応速度自体は計算できなくても、上記のような解離エネルギーとフラグメントイオン強度との相関性を利用することでフラグメントイオン強度を考慮した分子の同定が可能であることがわかる。このことは当然ペプチド分子にも適用可能である。したがって、既存のプロテオーム解析用データベース検索ソフトウエア、例えばMASCOTで質量数マッチングを行って、ある程度候補ペプチドの数を絞ったあと、その候補ペプチドの解離エネルギーを全てのフラグメントイオンについて計算などで求めておけば、その解離エネルギーと、対応する実測フラグメントイオン強度との相関表あるいは相関図を作成することができ、その関係が(7)式のような強い直線相関の関係となるものが、正しい答えである可能性が高いと推定できる。
なお、相関性を判断する指標値の一例としては、変数X=解離エネルギー、変数Y=フラグメントイオン強度の対数、としたときに、次のように定義された相関係数(ピアソンの積率相関係数)rを用いることができる。
r=(変数Xと変数Yとの共分散)/(変数Xの標準偏差)×(変数Yの標準偏差) …(8)
この相関係数rは−1から1までの範囲の値をとり、負の値のときは負の相関があるといい、正のときは正の相関があるという。そして、値が0に近いときは相関は殆どなく、値が1又は−1のときは一つの直線の上にすべての点(X,Y)が乗っている。したがって、正しい答えが得られた場合は(7)式のように負の相関が高いと考えられる。
さて、上述したように原則としては或る一つの分子の様々な開裂位置で解離エネルギーを計算する必要がある。データ解析を行う際に解離エネルギーを一々計算するのは非常に時間が掛かって実用的でなくなるおそれがあるので、好ましくは、全ての結合の解離エネルギーを予め計算により求めてデータベース化しておき、結合を与えるとそのデータベースから対応した解離エネルギーが導出されるようにしておくとよい。ところが、共通アミノ酸の種類はたかだか20種類であるが、例えば5個のアミノ酸配列の組み合わせを考えただけでも、bイオン、yイオンの2種を考えると、解離エネルギーの計算対象は205×2=64×105と膨大な数となり、これを全て計算するのには膨大な時間を要する。
つまり、実用性の範囲で上述したような原理に則った方法により候補ペプチドを絞るには、特に解離エネルギーのデータベースを作成するために要する計算量を削減することが必要になる。そこで、N末端とC末端とに挟まれた三個以上のアミノ酸配列を二個のアミノ酸の結合のみでモデル化したジペプチドに簡略化する方法を用いる。
ペプチド分子の場合、ジペプチドモデルを使った簡略化したモデルから解離エネルギーを求め、三個以上のアミノ酸配列を持つペプチドにおける解離エネルギーをこの値で代用することができる。前述のように共通アミノ酸の種類は20種類程度であるから、全ての組み合わせについてジペプチドの解離エネルギーを計算しても、その数は20×20×2=800個程度であり、これであれば比較的容易にそれら解離エネルギーのテーブル等のデータベースを用意できる。その結果、どのような種類のペプチドであってもそのデータベースから即座に解離エネルギーが求まり、迅速にアミノ酸配列の決定を行うことができる。
ジペプチドモデル化した場合の解離エネルギーの求め方について説明する。図4は一般のペプチドの開裂の原理を説明するための図であり、プロトン(H+)でイオン化した一般のペプチド分子イオンが、主にペプチド基と呼ばれる結合部で開裂を起こして、yイオン、bイオンと呼ばれる二つのグループのフラグメントイオンのピークが質量スペクトル上に得られる様子を示している。図4(a)に示すように、y2−b6で示す境界線にてペプチド基が開裂した場合、これに対応して図4(b)に示すように、質量スペクトル上でy2フラグメントイオン及びb6フラグメントイオンのそれぞれのピークが観測される。
このペプチド基を、図5に示すように、開裂位置の両側にあるアミノ酸でジペプチドを構成したものにモデル化する。そして、それをプロトンイオン化したものについて、ペプチド基の解離エネルギーをbイオン発生又はyイオン発生の場合のそれぞれについて計算し、その値をbイオン又はyイオンの解離エネルギーとして用いることとする。
解離エネルギーは、量子力学的な波動方程式に基づいた分子動力学的な計算により得ることができる。具体的には、解離エネルギーはフラグメント化反応の前の状態からフラグメントイオンに分解した状態までのエネルギー変化量であるので、反応前後の状態エネルギーをそれぞれ計算し、その差から求めればよい。
このエネルギー差を求めるには、実際にどのような分子反応で以てフラグメント化が生じているのかを知る必要がある。過去の研究により、フラグメント化分子反応は、大きく二つのメカニズムで起きていることが知られている。その一つはモバイルプロトンモデルと呼ばれるものであり、他の一つはリモートプロトンモデルと呼ばれる反応メカニズムである。ジペプチドモデルは、これら二つのフラグメント化モデルのそれぞれについて、以下のようにモデル化し解離エネルギーを計算する。
〔1〕モバイルプロトンモデルの場合
モバイルプロトンモデルでは、プロトンが移動して或るペプチド基に到達するとフラグメント化(開裂)が始まる。即ち、図6に示すように、最初プロトンはエネルギー的に最も低い位置(多くの場合、N末端)に存在しているが、CIDなどのガス衝突を通じて運動エネルギーを獲得するとプロトンはその位置を離れて移動する(i)。そして、そのプロトンが或るペプチド基のNに到達すると開裂が始まる(ii)。一般のアミノ酸配列の場合には、このモデルで以て計算することができる。
図7はジペプチドモデルによる解離エネルギーの計算原理の説明図であり、N末端でイオン化されている場合の例である。図7(a)に模式的に示すように、ペプチドXYUZ(X、Y、U、Zはそれぞれアミノ酸残基を記号で表したもの)について、最初N末端に存在していたプロトンはN末端から離脱し、Y−Z間のペプチド基に到達する(中間状態)。その後、Y−Z間の結合が切れてプロトンがY側に付いたbイオンとプロトンがZ側に付いたyイオンとに開裂する。解離エネルギーは正確には図7(a)の反応に従って計算すべきであるが、これを図7(b)のようにジペプチドモデル化して近似計算する。即ち、図7(b)中でペプチド結合Y−Z間の解離エネルギーは、初期状態も途中の状態(中間状態)も全てジペプチドに置き換えた状態で計算を行う。
図7(b)で示すジペプチドモデルの模式図を具体的な分子反応式で表した例が図8である。図8は最も簡単なジペプチドであるグリシル-グリシン(glycyl-glycine)の例を示しているが、他のジペプチドの分子反応式も同様に考えることができる。図8において、反応経路(i)がyイオンをフラグメントイオンとする経路であり、同時に、三角環状分子のアジリジノーネ(Azirizinone)と呼ばれる中性分子が生成される。一方、反応経路(ii)のbイオン生成経路では、アミノ酸(Gly)が中性分子として同時に生成される。この反応により最初に生成されるb1イオンは不安定構造であるため、すぐに安定なa1イオンに解離するが、エネルギー的には大きな相違はない。それ故、bイオンに対する解離エネルギーの計算は安定なa1イオンを生成する反応経路で行えばよい。
〔2〕リモートプロトンモデルの場合
上述したモバイルプロトンモデルとは異なり、リモートプロトンモデルは、プロトンそのものが、例えばアルギニン又はヒスチジンの塩基性アミノ酸のように特定のアミノ酸の側鎖分子と深く結合した状態にあって、CIDガスとの衝突によってもその側鎖からプロトンがなかなか離れない場合に生じる特殊なフラグメント反応である。こうした反応は、塩基性アミノ酸や酸性アミノ酸のような特定のアミノ酸が存在する位置で起き易い。
図9は、アルギニンとアスパラギン酸が同じペプチドに含まれている場合のフラグメント化分子反応の推定図である。この図は、タプライリス(G.Tsaprailis)ほか7名、「インフルエンス・オブ・セカンダリ・ストラクチャ・オン・ザ・フラグメンテイション・オブ・プロトネイテッド・ペプチドズ(Influence of Secondary Structure on the Fragmentation of Protonated Peptides)」、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am Chem. Soc.)、1999,121,pp5142-5154、に記載の二価ペプチドイオンに対する図を参考に、そこから類推して一価ペプチドイオンに対する反応式を表したものである。
図9の例において、プロトンはアルギニン側鎖のイミノ基(NH=)に結合して、NH2 +=となり、この態様で側鎖と深く結びついている。既に述べたように、この状態でCIDガスを衝突させてもその側鎖からプロトンが離れにくいので、アスパラギン酸を除いてはフラグメントイオンは容易には生じない。しかしながら、アスパラギン酸は自らの側鎖にカルボキシル基(−COOH)を持っており、このカルボキシル基と隣接するペプチド基との相互作用で開裂が始まる。その結果、五角形の特殊な形の環状構造を持った分子イオン(この図ではbイオン)と中性ペプチドが生成される。このフラグメント化反応で、アルギニンの側鎖にあるプロトンイオンは移動せず、そのままの結合状態を保つ。
上記のような場合の解離エネルギーの計算は、最初プロトンがアルギニンの側鎖にあるとして図9のフラグメント化反応に沿って計算すれば求まるが、これをジペプチドモデルで求めるには、着目する結合部を挟んだ2個のアミノ酸から成るジペプチドを考え、図9を基にその解離エネルギーを計算すればよい。
なお、CIDガスの衝突等により与えられるエネルギーが大きくなると、アルギニンなど塩基性アミノ酸の側鎖に捕らわれたプロトンが移動できるようになり、その場合は、モバイルプロトンモデルで考えることになる。この場合の解離エネルギーの計算は、図10に示す模式図に沿ってジペプチドモデル化して計算すればよい。即ち、図10(a)に示すように、最初のアルギニン(R)の側鎖がプロトンイオン化されたペプチドの状態と、最後のbイオン又はyイオンにフラグメント化した状態との間に、図に示す仮想状態(N末端がプロトンイオン化されている状態)と中間状態(プロトンがペプチド基に到達した状態)とを差し挟む。そして、最初の状態から仮想状態までのエネルギー変化を第1ステップ、仮想状態から最後のフラグメント化状態までを第2ステップと分けて、図10(b)に示すように、それぞれのステップについて異なるジペプチドモデルを設定する。
第2ステップのジペプチドモデル化は図7と同様に行える。第1ステップについては、図10(b)に示すようにアルギニン(R)を含むジペプチドで、プロトンがアルギニンの側鎖からN末端に移動するのに必要なエネルギーを計算する。そして、第1ステップで求めた解離エネルギーと第2ステップで求めた解離エネルギーとの和が求める解離エネルギーであるとする。
上述したようなジぺプチド化の手法により、解離エネルギーを計算すべき対象のフラグメントイオンを減らし、それにより、解離エネルギーデータベースの作成に要する時間を抑えることができる。
上述した本発明に係るペプチド同定方法を実施する同定装置について具体的に説明する。このペプチド同定装置の実体はコンピュータであり、新規のプロテオーム解析用ソフトウエアをコンピュータ上で動作させることにより、後述するペプチドのアミノ酸配列の決定処理を実行することができる。
図1は本装置によるペプチド同定の概略的な処理手順を示すフローチャートである。ステップS1及びS2は従来のプロテオーム解析用データベース検索ソフトウエア、例えばMASCOTにより実現され得る処理であり、質量分析(MSn)で得られた質量スペクトルに出現しているフラグメントイオンの質量数をキーとして、データベースに登録されているペプチドの中から質量数がマッチするペプチドを検索し、検索により得られた複数のペプチドをマッチ度順にランク付けしてリストアップする。
その後、リストアップされたペプチドの中で他と比べて明らかにスコアが高い複数の候補ペプチドを選定し、上記説明したように各候補ペプチドについてそれぞれ解離エネルギーと実測フラグメントイオン強度との相関による強度マッチング評価を行い(ステップS3)、その相関性の評価結果を比べて最も可能性の高い候補ペプチドを選定する(ステップS4)。このステップS3及びS4による新規の機能が、従来の標準的なデータベース検索ソフトウエアによる機能と組み合わせられ、これにより従来よりも信頼度の高い同定結果が期待できる。
図2は上記ステップS3及びS4の処理内容の詳細なフローチャートである。即ち、まず質量分析(MSn分析)により得られた質量スペクトルデータを入力するとともに、上記ステップS1、S2により絞られたn(n≧2)個の候補ペプチドを入力する(ステップS11)。それから変数Nに1をセットし(ステップS12)、N番目、つまり最初は1番目の候補ペプチドを計算対象に設定する(ステップS13))。
次いで、その候補ペプチドに関し、全てのフラグメントイオンについて解離エネルギーを求める(ステップS14)。このとき、上述したようにジペプチドモデル化することで予め用意された解離エネルギーデータベースを利用する。即ち、前述したように着目する開裂位置を挟んだ二個のアミノ酸配列がフラグメント化するものとして、その二個のアミノ酸の組み合わせとイオンの種類(bイオン又はyイオン)とをデータベースに与えることで対応する解離エネルギーを導出する。事前に用意されたデータベースを利用することで、解離エネルギーを迅速に求めることができる。
その候補ペプチドにおける全てのフラグメントイオンの解離エネルギーを求めた後、各開裂に対応した理論的なフラグメントイオン質量数に対し所定の許容範囲を設定し、実測の質量スペクトルデータから対応すると想定されるフラグメントイオンのピークを見つけてその強度を得る。それから、解離エネルギーとフラグメントイオン強度とを対応付けて、相関性を評価する指標値として例えば上記のような相関係数を計算する(ステップS15)。
このようにして1番目の候補ペプチドについて相関係数が求まったならば、変数Nがnであるか否かを判定し(ステップS16)、Nがnに一致していなければNに1を加算して新たにNとして(ステップS17)ステップS13に戻る。そして、次の候補ペプチドについて上記ステップS13〜S15の処理を実行して相関係数を求める。こうして全ての候補ペプチドの相関係数を得る。n個の全ての候補ペプチドの相関係数が求まるとステップS16でYesと判定されステップS18に進み、各候補ペプチドについての解離エネルギーとフラグメントイオン強度との相関係数を比較して、最も直線相関の高いものを最も正解である可能性の高いペプチドとして選定する。この同定(アミノ酸配列決定)結果を表示部に表示して(ステップS19)、処理を終了する。
次に、本発明に係るペプチド同定方法及び装置の効果を検証するため、図16で示すAngiotensinII(DRVYIHPF)の質量スペクトルデータに対してMASCOTにより同定した結果、図17に示すように別のペプチドを1位にランクアップした例を挙げ、本発明による方法によれば正確に同定が可能であることを示す。
図11、図12には、MASCOTによる同定で1位にランクされたペプチド[DFHLDEDR]と正答であるAngiotensinII(DRVYIHPF)について、それぞれ本発明による方法の中のジペプチドモデルで計算した解離エネルギーと実測フラグメントイオン強度との比較を、bシリーズイオンとyシリーズのイオンのグループに分けて行った結果を示す。横軸はbmイオンあるいはymイオンの番号mを表し、グラフの上辺にその番号を示している。下辺はペプチドのアミノ酸配列を表し、bmイオン又はymイオンがどのアミノ酸配列の位置で開裂を生じるかを示している。一方、縦軸は解離エネルギー(絶対値)及びフラグメントイオン強度(相対値)を表す。
図11、図12の結果から、解離エネルギーの変化の様子とフラグメントイオン強度の変化の様子を見比べて、MASCOT評価1位のペプチドに関しその一部(例えばy5,y6,y7イオン)において解離エネルギーの変化とフラグメントイオン強度の変化とが極端に乖離していることが分かる。
図13は、図11及び図12の結果を元に、解離エネルギーを横軸に、フラグメントイオン強度の対数値を縦軸にとって両者の相関を示したグラフである。このグラフからも分かるように、図13(b)のAngiotensinII(DRVYIHPF)には負の直線相関が明らかに見受けられる。一方のMASCOTランク1位の[DFHLDEDR]は、図13(a)に見られるように相関性が明確に読み取れない。
図14は、bシリーズイオンとyシリーズイオンとに分けて図13から(8)式により相関係数を求めた結果を示す図である。AngiotensinII(DRVYIHPF)では、bシリーズイオン、yシリーズイオンの場合とも、相関係数が−0.5〜−0.7の大きな負の相関を示している。これに対し、MASCOTランク1位のDFHLDEDRでは、bシリーズイオンでは大きな相関性がみられるが、yシリーズイオンの相関係数は0に近く相関が殆どないと判断できる。こうしたことから、本発明の方法によれば、MASCOTランク1位の[DFHLDEDR]ではなく、正答であるAngiotensinII(DRVYIHPF)を明確に正答である可能性が高いと結論付けることができる。
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
本発明の一実施例のペプチド同定装置によるペプチド同定の概略的な処理手順を示すフローチャート。 図1中のステップS3及びS4の処理内容の詳細なフローチャート。 分子イオンの開裂時のエネルギー変化の状態を示す模式図。 一般のペプチドの開裂の原理を説明するための模式図。 ジペプチドモデル化の一例を示す図。 モバイルプロトンモデルでの開裂のメカニズムの説明図。 ジペプチドモデルによる解離エネルギーの計算原理の説明図(モバイルプロトンモデルの場合)。 ジペプチドモデルの模式図を具体的な分子反応式で表した一例を示す図。 アルギニンとアスパラギン酸が同じペプチドに含まれている場合のフラグメント化分子反応の推定図(リモートプロトンモデルの場合)。 ジペプチドモデルによる解離エネルギーの計算原理の説明図(塩基性アミノ酸が含まれるときのモバイルプロトンモデルの場合)。 ペプチド[DFHLDEDR]について本発明による方法の中のジペプチドモデルで計算した解離エネルギーと実測フラグメントイオン強度との比較を、bシリーズイオンとyシリーズのイオンのグループに分けて行った結果を示す図。 AngiotensinII(DRVYIHPF)について図11と同様の比較を行った結果を示す図。 図11及び図12の結果を元に、解離エネルギーを横軸にフラグメントイオン強度の対数値を縦軸にとって両者の相関を示したグラフ。 bシリーズイオンとyシリーズイオンとに分けて図13から相関係数を求めた結果を示す図。 既存のプロテオーム解析用ソフトウエアを用いたペプチド同定の概略的な解析手順を示すフローチャート。 アンジオテンシンIIを質量分析することにより得られた質量スペクトルを示す図。 図16に示した質量スペクトルデータを基にMASCOTを用いて評価した例を図。 図16に示した質量スペクトルデータを基にSEQUESTを用いて評価した例を示す図。

Claims (5)

  1. MSn分析により取得された質量スペクトルデータに基づいて被検試料中のペプチド混合物のアミノ酸配列を決定するペプチド同定方法であって、
    a)質量スペクトルデータに基づいて複数の候補ペプチドを選定する一次候補選定ステップと、
    b)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、全てのフラグメントイオンに対応した解離エネルギーを求める解離エネルギー取得ステップと、
    c)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、前記解離エネルギー取得ステップにより求められた解離エネルギーとそれに対応すると推定される前記質量スペクトルデータに基づく実測のフラグメントイオン強度との相関性を示す指標値を計算する相関性調査ステップと、
    d)各候補ペプチド毎に得られた前記相関性を示す指標値に基づいて候補ペプチドを絞り込む二次候補選定ステップと、
    を実行することを特徴とする質量分析を用いたペプチド同定方法。
  2. 三個以上のアミノ酸が結合したペプチドを、着目する結合部を挟んだ二個のアミノ酸から成るジペプチドにモデル化し、該ジペプチドの解離エネルギーで以て元のペプチドの解離エネルギーを代替することを特徴とする請求項1に記載の質量分析を用いたペプチド同定方法。
  3. 全ての共通アミノ酸の組み合わせによるジペプチドについて解離エネルギーを予め算出してデータベース化しておき、前記解離エネルギー取得ステップでは、候補ペプチドの任意のフラグメントイオンに対する解離エネルギーを求める際に前記データベースから対応するジペプチドの解離エネルギーを呼び出してこれを用いることを特徴とする請求項2に記載の質量分析を用いたペプチド同定方法。
  4. MSn分析により取得された質量スペクトルデータに基づいて被検試料中のペプチド混合物のアミノ酸配列を決定するペプチド同定装置であって、
    a)質量スペクトルデータに基づいて複数の候補ペプチドを選定する一次候補選定手段と、
    b)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、全てのフラグメントイオンに対応した解離エネルギーを求める解離エネルギー取得手段と、
    c)前記複数の候補ペプチドのそれぞれについて、前記解離エネルギー取得手段により求められた解離エネルギーとそれに対応すると推定される前記質量スペクトルデータに基づく実測のフラグメントイオン強度との相関性を示す指標値を計算する相関性調査手段と、
    d)前記相関性調査手段により各候補ペプチド毎に得られた前記相関性を示す指標値に基づいて候補ペプチドを絞る二次候補選定手段と、
    を備えることを特徴とする質量分析を用いたペプチド同定装置。
  5. 三個以上のアミノ酸が結合したペプチドを、着目する結合部を挟んだ二個のアミノ酸から成るジペプチドにモデル化し、全ての共通アミノ酸の組み合わせによるジペプチドについて解離エネルギーが予め算出された結果を含む解離エネルギーデータベースを有し、
    前記解離エネルギー取得手段は、候補ペプチドの任意のフラグメントイオンに対する解離エネルギーを求める際に前記解離エネルギーデータベースから対応するジペプチドの解離エネルギーを呼び出してこれを用いることを特徴とする請求項4に記載の質量分析を用いたペプチド同定装置。

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