JP2007180437A - リチウムイオンキャパシタ - Google Patents
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Abstract
【課題】エネルギー密度や出力密度が高い値が実現できる改良されたリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えるリチウムイオンキャパシタであって、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、かつ、上記正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【選択図】なし
【解決手段】正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えるリチウムイオンキャパシタであって、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、かつ、上記正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【選択図】なし
Description
本発明は、エネルギー密度と出力密度が高く、かつ静電容量の大きいリチウムイオンキャパシタに関する。
近年、グラファイト等の炭素材料を負極に用い、正極にLiCoO2等のリチウム含有金属酸化物を用いた所謂リチウムイオン二次電池は高容量であり有力な蓄電装置として、主にノート型パソコンや携帯電話の主電源として実用化されている。リチウムイオン二次電池は、電池組立後、充電することにより正極のリチウム含有金属酸化物から負極にリチウムイオンを供給し、更に放電では負極のリチウムイオンを正極に戻すという、いわゆるロッキングチェア型電池であり、高電圧及び高容量を特長としている。
一方、環境問題がクローズアップされる中、ガソリン車にかわる電気自動車用又はハイブリッド自動車用の蓄電装置(メイン電源と補助電源)の開発が盛んに行われ、また、自動車用の蓄電装置として、これまでは鉛電池が使用されてきた。しかし、車載用の電気設備や機器の充実により、エネルギー密度、出力密度の点から新しい蓄電装置が求められるようになってきている。
かかる新しい蓄電装置としては、上記のリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタが注目されている。しかし、リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高いものの出力特性、安全性やサイクル寿命には問題を残している。一方、電気二重層キャパシタは、ICやLSIのメモリーバックアップ用電源として利用されているが、一充電当たりの放電容量は電池に比べて小さい。しかし、瞬時の充放電特性に優れ、数万サイクル以上の充放電にも耐えるという、リチウムイオン二次電池にはない高い出力特性とメンテナンスフリー性を備えている。
電気二重層キャパシタはこうした利点を有してはいるが、従来の一般的な電気二重層キャパシタのエネルギー密度は3〜4Wh/l程度で、リチウムイオン二次電池に比べて二桁程度小さい。電気自動車用を考えた場合、実用化には6〜10Wh/l、普及させるには20Wh/lのエネルギー密度が必要であるといわれている。
こうした高エネルギー密度、高出力特性を要する用途に対応する蓄電装置として、近年、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタとも呼ばれる蓄電装置が注目されている。ハイブリッドキャパシタでは、通常、正極に分極性電極を使用し、負極に非分極性電極を使用するもので、電池の高いエネルギー密度と電気二重層の高い出力特性を兼ね備えた蓄電装置として注目されている。一方、このハイブリッドキャパシタにおいて、リチウムイオンを吸蔵、脱離しうる負極をリチウム金属と接触させて、予め化学的方法又は電気化学的方法でリチウムイオンを吸蔵、担持(以下、ドーピングともいう)させて負極電位を下げることにより、耐電圧を大きくしエネルギー密度を大幅に大きくすることを意図したキャパシタが提案されている。(特許文献1〜特許文献4参照)
この種のハイブリッドキャパシタでは、高性能は期待されるものの、負極にリチウムイオンをドーピングさせる場合に、ドーピングが極めて長時間を要することや負極全体に対する均一性のあるドーピングに問題を有し、特に、電極を捲回した円筒型装置や、複数枚の電極を積層した角型電池のような大型の高容量セルでは実用化は困難とされていた。
しかし、この問題は、セルを構成する、負極集電体及び正極集電体の表裏に貫通する孔を設け、この貫通孔を通じてリチウムイオンを移動させ、同時にリチウムイオン供給源であるリチウム金属と負極を短絡させることにより、セルの端部にリチウム金属を配置するだけで、セル中の全負極にリチウムイオンをドーピングすることができる発明により、一挙に解決するに至った(特許文献5参照)。なお、リチウムイオンのドーピングは、通常、負極に対して行なわれるが、負極とともに、又は負極の代わりに正極に行う場合も同様であることが特許文献5に記載されている。
かくして、電極を捲回した円筒型装置や、複数枚の電極を積層した角型電池のような大型のセルでも、装置中の全負極に対して短時間にかつ負極全体に均一にリチウムイオンがドーピングでき、耐電圧が向上した事でエネルギー密度が飛躍的に増大し、電気二重層キャパシタが本来有する大きな出力密度と相俟って、高容量のキャパシタが実現する見通しが得られた。
しかし、かかる高容量のキャパシタを実用化するためには、さらに、高容量、高エネルギー密度及び高出力密度とすることが要求されている。
特開平8−107048号公報
特開平9−55342号公報
特開平9−232190号公報
特開平11−297578号公報
国際公開WO98/033227号公報
本発明は、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物
質であり、かつ負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極及び/又は正極をリチウムイオン供給源と電気化学的に接触させて、予め負極にリチウムイオンをドーピングする方式のリチウムイオンキャパシタにおいて、更に、エネルギー密度の高い値が実現できる、改良されたキャパシタを提供することを課題とする。
質であり、かつ負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極及び/又は正極をリチウムイオン供給源と電気化学的に接触させて、予め負極にリチウムイオンをドーピングする方式のリチウムイオンキャパシタにおいて、更に、エネルギー密度の高い値が実現できる、改良されたキャパシタを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を行った結果、正極と負極を短絡させた後の正極及び負極電位が2.0V以下となるように、負極及び/又は正極に対してリチウムイオンを予めドーピングさせたリチウムイオンキャパシタにおいては、そこで使用される、正極活物質である活性炭の物性が、得られるキャパシタのエネルギー密度と関係し、該正極活物質がラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子から形成することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
かくして、本発明は、以下の要旨を有することを特徴とするものである。
(1)正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えるリチウムイオンキャパシタであって、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、かつ、上記正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
(2)前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンがドーピングされる上記(1)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(3)負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質重量よりも大きい上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(4)活性炭粒子が、アルカリ賦活処理され、かつ比表面積が600〜3000m2/gである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(5)活性炭粒子の50%体積累積径(D50)が1μm以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(6)活性炭粒子が、フェノール樹脂系活性炭、石油ピッチ系活性炭、石油コークス系活性炭、又は石炭コークス系活性炭である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(1)正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えるリチウムイオンキャパシタであって、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、かつ、上記正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
(2)前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンがドーピングされる上記(1)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(3)負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質重量よりも大きい上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(4)活性炭粒子が、アルカリ賦活処理され、かつ比表面積が600〜3000m2/gである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(5)活性炭粒子の50%体積累積径(D50)が1μm以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(6)活性炭粒子が、フェノール樹脂系活性炭、石油ピッチ系活性炭、石油コークス系活性炭、又は石炭コークス系活性炭である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
本発明によれば、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピング
する、特に大容量のキャパシタであって、高いエネルギー密度と高い出力密度を有するキャパシタが提供される。容量は、両極に同じ活性炭を用いた場合C(正極)≒C(負極)より、セル全体容量はC/2となり、全体容量は片極の半分しか出ないが、本発明のリチウムイオンキャパシタでは、1/C(正極)≫1/C(負極)となるため、C(全体)≒C(正極)に近づき、正極活性炭の容量がセル全体の容量にできる。
する、特に大容量のキャパシタであって、高いエネルギー密度と高い出力密度を有するキャパシタが提供される。容量は、両極に同じ活性炭を用いた場合C(正極)≒C(負極)より、セル全体容量はC/2となり、全体容量は片極の半分しか出ないが、本発明のリチウムイオンキャパシタでは、1/C(正極)≫1/C(負極)となるため、C(全体)≒C(正極)に近づき、正極活性炭の容量がセル全体の容量にできる。
本発明において、上記したラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子から正極を形成することにより、得られるキャパシタが何故に高いエネルギー密度を有するかについては、必ずしも明らかではないが、次のように推定される。一般的に酸性官能基量の多い活性炭は反応に関与するエッジ面が多く存在すると言われている。官能基量の多い正極活性炭を使用したリチウムイオンキャパシタを充放電すると、エッジ面にてなんらかの可逆的な化学反応が起こり容量が増大していると考えられる。化学的な反応の一つには、エッジ面に付いた酸性官能基がケトエノール反応することで容量が向上し、また、活性炭表面に官能基が存在すると、電解液に対する濡れ性が向上すると考えられる。また、本発明のリチウムイオンキャパシタでは、濡れ性改善によって、含浸が不十分であった細孔内に電解液が浸透し、容量が向上したとも考えられる。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備え、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、かつ負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質である。ここで、「正極」とは、放電の際に電流が流れ出る側の極であり、「負極」とは放電の際に電流が流れ込む側の極をいう。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、負極及び/又は正極に対するリチウムイオンのドーピングにより正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下にされていることが必要である。負極及び/又は正極に対するリチウムイオンのドーピングされていないキャパシタでは、正極及び負極の電位はいずれも約3Vであり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位は約3Vである。なお、本発明で、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下とは、以下の(A)又は(B)の2つのいずれかの方法で求められる正極の電位が2.0V以下の場合をいう。即ち、(A)リチウムイオンのドーピングの後、キャパシタセルの正極端子と負極端子を導線で直接結合させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、0.5〜1.5時間内に測定した正極電位、(B)充放電試験機にて12時間以上かけて0Vまで定電流放電させた後に正極端子と負極端子を導線で結合させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、0.5〜1.5時間内に測定した正極電位をいう。
また、本発明において、正極と負極とを短絡させた後の正極電位が2.0V以下というのは、リチウムイオンがドーピングされたすぐ後だけに限られるものではなく、充電状態、放電状態あるいは充放電を繰り返した後に短絡した場合など、いずれかの状態で短絡後の正極電位が2.0V以下となることである。
本発明において、正極と負極とを短絡させた後の正極電位が2.0V以下になるということに関し、以下に詳細に説明する。上述のように活性炭や炭素材は通常3V(Li/Li+)前後の電位を有しており、正極、負極ともに活性炭を用いてセルを組んだ場合、いずれの電位も約3Vとなるため、短絡しても正極電位はかわらず約3Vである。また、正極に活性炭、負極にリチウムイオン二次電池にて使用されている黒鉛や難黒鉛化性炭素のような炭素材を用いた、いわゆるハイブリッドキャパシタの場合も同様であり、いずれの電位も約3Vとなるため、短絡しても正極電位はかわらず約3Vである。正極と負極の重量バランスにもよるが充電すると負極電位が0V近傍まで推移するので、充電電圧を高くすることが可能となるため高電圧、高エネルギー密度を有したキャパシタとなる。一般的に充電電圧の上限は正極電位の上昇による電解液の分解が起こらない電圧に決められるので、正極電位を上限にした場合、負極電位が低下する分、充電電圧を高めることが可能となるのである。しかしながら、短絡時に正極電位が約3Vとなる上述のハイブリッドキャパシタでは、正極の上限電位を例えば4.0Vとした場合、放電時の正極電位は3.0Vまでであり、正極の電位変化は1.0V程度と正極の容量を充分利用できていない。更に、負極にリチウムイオンを挿入(充電)、脱離(放電)した場合、初期の充放電効率が低い場合が多く、放電時に脱離できないリチウムイオンが存在していることが知られている。これは、負極表面にて電解液の分解に消費される場合や、炭素材の構造欠陥部にトラップされる等の説明がなされているが、この場合正極の充放電効率に比べ負極の充放電効率が低くなり、充放電を繰り返した後にセルを短絡させると正極電位は3.0Vよりも高くなり、さらに利用容量は低下する。すなわち、正極は4.0Vから2.0Vまで放電可能であるところ、4.0Vから3.0Vまでしか使えない場合、利用容量として半分しか使っていないこととなり、高電圧にはなるが高容量にはならないのである。
ハイブリッドキャパシタを高電圧、高エネルギー密度だけでなく、高容量そして更にエネルギー密度を高めるためには、正極の利用容量を向上させることが必要である。
短絡後の正極電位が3.0Vよりも低下すればそれだけ利用容量が増え、高容量になるということである。2.0V以下になるためには、セルの充放電により充電される量だけでなく、別途リチウム金属などのリチウムイオン供給源から負極にリチウムイオンをドーピングすることが好ましい。正極と負極以外からリチウムイオンがドーピングされることにより、短絡させた時には、正極、負極、リチウム金属の平衡電位になるため、正極電位、負極電位ともに3.0V以下になる。リチウム金属の量が多くなる程に平衡電位は低くなる。負極材、正極材が変われば平衡電位も変わるので、短絡後の正極電位が2.0V以下になるように、負極材、正極材の特性を鑑みて負極に担持させるリチウムイオン量の調整が必要である。
本発明において、キャパシタセルに、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピングし、正極と負極を短絡させた後の正極の電位を2.0V以下にすることにより、正極の利用容量が高くなるため高容量となり、大きいエネルギー密度が得られる。リチウムイオンの供給量が多くなる程、正極と負極を短絡させた時の正極電位は低くなりエネルギー密度は向上する。更に高いエネルギー密度を得る上では1.5V以下、特には、1.0V以下が更に好ましい。正極及び/又は負極に供給されたリチウムイオンの量が少ないと正極と負極を短絡させた時に正極電位が2.0Vよりも高くなり、セルのエネルギー密度は小さくなる。
本発明で、リチウムイオンのドーピングは、負極と正極の片方あるいは両方いずれでもよいが、例えば正極に活性炭を用いた場合、リチウムイオンのドーピング量が多くなり正極電位が低くなると、リチウムイオンを不可逆的に消費してしまい、セルの容量が低下するなどの不具合が生じる場合がある。このため、負極と正極にドーピングするリチウムイオンは、それぞれの電極活物質を考慮し、これらの不具合を生じないようにするのが好ましい。本発明では、正極のドーピング量と負極のドーピングの量を制御することは工程上煩雑となるため、リチウムイオンのドーピングは好ましくは負極に対して行われる。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、特に、負極活物質の単位重量当たりの静電容量が正極活物質の単位重量当たりの静電容量の3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質重量よりも大きくする場合、高電圧且つ高容量のキャパシタが得られる。また、それと同時に、正極の単位重量当たりの静電容量に対して大きな単位重量当たりの静電容量を持つ負極を用いる場合には、負極の電位変化量を変えずに負極活物質重量を減らすことが可能となるため、正極活物質重量が多くなりセルの静電容量及び容量が大きくなる。正極活物質重量は負極活物質重量に対して大きいことが好ましいが、1.1倍〜10倍であることが更に好ましい。1.1倍未満であれば容量差が小さくなり、10倍を超えると逆にセル容量が小さくなる場合もあり、また正極と負極の厚み差が大きくなり過ぎるのでセル構成上好ましくない。
なお、本発明において、キャパシタセル(以下、単にセルもいう)の静電容量及び容量は次のように定義される。セルの静電容量とは、セルの単位電圧当たりセルに流れる電気量(放電カーブの傾き)を示し、単位はF(ファラッド)である。セルの単位重量当たりの静電容量とはセルの静電容量に対するセル内に充填している正極活物質重量と負極活物質重量の合計重量の除で示され、単位はF/gである。また、正極又は負極の静電容量とは、正極あるいは負極の単位電圧当たりセルに流れる電気量(放電カーブの傾き)を示し、単位はFである。正極あるいは負極の単位重量当たりの静電容量とは正極あるいは負極の静電容量をセル内に充填している正極あるいは負極活物質重量の除で示され、単位はF/gである。
更に、セル容量とは、セルの放電開始電圧と放電終了電圧の差、即ち電圧変化量とセルの静電容量の積であり単位はC(クーロン)であるが、1Cは1秒間に1Aの電流が流れたときの電荷量であるので本発明においては換算してmAh表示する。正極容量とは放電開始時の正極電位と放電終了時の正極電位の差(正極電位変化量)と正極の静電容量の積であり単位はCまたはmAh、同様に負極容量とは放電開始時の負極電位と放電終了時の負極電位の差(負極電位変化量)と負極の静電容量の積であり単位はCまたはmAhである。これらセル容量と正極容量、負極容量は一致する。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおいて、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピングさせる手段は特に限定されない。例えば、リチウムイオンを供給可能な、リチウム金属などのリチウムイオン供給源をリチウム極としてキャパシタセル内に配置できる。リチウムイオン供給源の量(リチウム金属等の重量)は、所定の負極の容量が得られる量だけあればよい。この場合、負極とリチウム極は物理的な接触(短絡)でもよいし、電気化学的にドーピングさせてもよい。リチウムイオン供給源は、導電性多孔体からなるリチウム極集電体上に形成してもよい。リチウム極集電体となる導電性多孔体としては、ステンレスメッシュ等のリチウムイオン供給源と反応しない金属多孔体が使用できる。
大容量の多層構造のキャパシタセルでは正極及び負極にそれぞれ電気を受配電する正極集電体及び負極集電体が備えられるが、かかる正極集電体及び負極集電体が使用され、かつリチウム極が設けられるセルの場合、リチウム極が負極集電体に対向する位置に設けられ、電気化学的に負極にリチウムイオンをドーピングすることが好ましい。この場合、正極集電体及び負極集電体として、例えばエキスパンドメタルのように表裏面を貫通する孔を備えた材料を用い、リチウム極を負極あるいは正極に対向させて配置する。この貫通孔の形態、数等は特に限定されず、後述する電解液中のリチウムイオンが電極集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できるように、設定することができる。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、負極にドーピングするリチウム極をセル中の局所的に配置した場合もリチウムイオンのドーピングが均一に行うことができる。従って、正極及び負極を積層もしくは捲回した大容量のセルの場合も、最外周又は最外側のセルの一部にリチウム極を配置することにより、スムーズにかつ均一に負極にリチウムイオンをドーピングできる。
電極集電体の材質としては、一般にリチウム系電池に提案されている種々の材質を用いることができ、正極集電体にはアルミニウム、ステンレス等、負極集電体にはステンレス、銅、ニッケル等をそれぞれ用いることができる。また、セル内に配置されたリチウムイオン供給源との電気化学的接触によりドーピングする場合のリチウムイオン供給源とは、リチウム金属あるいはリチウム−アルミニウム合金のように、少なくともリチウム元素を含有し、リチウムイオンを供給することのできる物質をいう。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおける正極活物質は、リチウムイオンと、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持できる物質からなる。本発明で正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子から形成される。ラクトン状カルボキシル官能基が0.07mmol/gより小さい場合には、後に比較例で示されるように目的とする静電容量もエネルギー密度も達成できない。なかでも、0.07mmol/g〜0.3mmol/gであるのが好適である。なお、活性炭粒子中のラクトン状カルボキシル官能基の測定は、炭酸ナトリウム水溶液(Na2CO3aq)に活性炭を投入し、抽出され、求めた官能基量から炭酸水素ナトリウム水溶液(NaHCO3aq)より抽出され、求めた官能基量を差し引くことによって求めた。
本発明において、活性炭粒子中のラクトン状カルボキシル官能基を上記の範囲に制御する方法に制限はないが、例えば、賦活処理した活性炭を任意の温度において熱処理することで行われる。その際の温度は活性炭の原料の種類、加熱時間等によって異なるが、通常、加熱時間が1〜20時間程度とされる場合、500〜1000℃に設定される。加熱雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどで行われる。
本発明で活性炭の原料は、好ましくは、フェノール樹脂、石油ピッチ、石油コークス、ヤシガラ、又は石炭コークスなどが使用されるが、好ましくはフェノール樹脂、石炭コークスが比表面積を高くできる理由で好適である。これらの活性炭の原材料は、焼成して炭化処理され、アルカリ賦活処理され、洗浄処理した後、粉砕される。上記の炭化処理は、原材料を加熱炉等に収容し、原材料が炭化する温度で所要時間加熱して行われる。その際の温度は原材料の種類、加熱時間等によって異なるが、通常、加熱時間が1〜20時間程度とされる場合、500〜1000℃に設定される。加熱雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
得られる炭化物の賦活に使用されるアルカリ活性化剤は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンの塩類または水酸化物が好ましく、なかでも、水酸化カリウムが好適である。アルカリ賦活の方法は、例えば、炭化物と活性剤を混合した後、不活性ガス気流中で加熱することにより行う方法、活性炭の原材料に予め活性化剤を担持させた後加熱して、炭化及び賦活の工程を行う方法、炭化物を水蒸気などのガス賦活法で賦活した後、アルカリ活性化剤で表面処理する方法が挙げられる。
アルカリ活性化剤として、水酸化カリウムなどの一価の塩基を用いる場合には、炭化物とアルカリ活性化剤との割合は、重量比で、1:1〜1:10が好ましく、さらに1:1〜1:5がより好ましく、特に1:2〜1:4が最も好ましい。炭化物1重量部に対する活性化剤の割合が、1重量部未満であると、賦活が充分に進行せず、一方、4重量部を超えると、体積当たりの静電容量が低下する恐れがある。
アルカリ賦活の温度は、400〜800℃が好ましく、特に600〜800℃付近がより好ましい。賦活温度が400℃未満であると、賦活が進行せず、静電容量が小さくなる。一方、900℃を超えると、賦活化率が極端に低下し好ましくない。賦活時間は、1〜10時間が好ましく、特に1〜5時間がより好ましい。賦活時間が1時間未満であると、正極として用いた際の内部抵抗が増大し、一方、10時間を超えると、単位体積当たりの静電容量が低下する。また、賦活処理後は多量に含まれているアルカリ活性化剤を充分に酸洗浄することにより取り除くことが必要である。酸洗浄の方法は特に限定するものではないが、通常、80℃、1〜3規定程度の塩酸などによる酸洗浄を数回繰り返すことによりアルカリ成分を充分に取り除くことが必要である。更に、アンモニア水などを用いて充分に中和洗浄することも必要である。
酸洗浄されたアルカリ賦活活性炭は、次いで粉砕される。粉砕は、ボールミル等の既知の粉砕機を用いて行われる。かかる粉砕により、活性炭の粒度は一般的に使用される広い範囲のものが使用できる。例えば、その50%体積累積径(D50ともいう)が1μm以上であり、好ましくは2〜50μm、特に2〜20μmが最も好ましい。これより小さい粒度の場合には、正極を形成することができない。また、平均細孔径が好ましくは10nm以下であり、比表面積が好ましくは600〜3000m2/gであるのが好適である。本発明の正極活物質である活性炭は、比表面積が600m2/g以上であることが必要であり、これより小さい場合には、正極としてセルに用いて充放電した際に体積の2倍以上に膨張するため、体積あたりの容量は半分になり、本発明で目的とする効果は達成できない。なかでも、800m2/g以上、特には1300〜2500m2/gであるのが好適である。
本発明における正極は、上記の活性炭粉末から形成されるが、その手段は既存のものが使用できる。即ち、活性炭粉末、バインダー、必要に応じて導電材及び増粘材(CMCなど)を、水系又は有機溶媒中に分散させてスラリーとし、該スラリーを必要に応じて使用される集電体に塗布するか、又は上記スラリーを予めシート状に成形し、これを集電体に貼り付けてもよい。ここで使用されるバインダーとしては、例えば、SBR等のゴム系バインダーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、アクリル系共重合体などを用いることができる。
また、上記で必要に応じて使用される導電材としては、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、VGCF(気相成長法炭素繊維)、金属粉末等が挙げられる。導電材の使用量は、負極活物質の電気伝導度、電極形状等により異なるが、正極活物質に対して1〜40重量%の割合で加えることが適当である。
一方、本発明における負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質から形成される。好ましい物質としては、例えば、グラファイト、ハードカーボン、コークスなどの炭素材料、ポリアセン系物質(以下、PASともいう)等を挙げることができる。PASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものが用いられる。炭化処理は、上記した正極における活性炭の場合と同様に、加熱炉等に収容し、フェノール樹脂等が炭化する温度で所要時間加熱することによって行われる。その際の温度は加熱時間等によって異なるが、通常、400〜800℃に設定される。粉砕工程は、ボールミル等の既知の粉砕機を用いて行われる。
本発明の負極活物質として、なかでも、PASは、高容量が得られる点でより好ましい。PASに400mAh/gのリチウムイオンを担持(充電)させた後に放電させると650F/g以上の静電容量が得られ、また、500mAh/g以上のリチウムイオンを充電させると750F/g以上の静電容量が得られる。PASはアモルファス構造を有し、担持させるリチウムイオンの量を増加させるほど電位が低下するので、得られるキャパシタの耐電圧(充電電圧)が高くなり、また、放電における電圧の上昇速度(放電カーブの傾き)が低くなるため、容量が若干大きくなる。よって、求められるキャパシタの使用電圧に応じて、リチウムイオンの量は活物質のリチウムイオン吸蔵能力の範囲内にて設定することが望ましい。
また、PASはアモルファス構造を有することから、リチウムイオンの挿入・脱離に対して膨潤・収縮といった構造変化がないためサイクル特性に優れ、またリチウムイオンの挿入・脱離に対して等方的な分子構造(高次構造)であるため急速充電、急速放電にも優れるので好適である。PASの前駆体である芳香族系縮合ポリマーとは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物である。芳香族炭化水素化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等の如き、いわゆるフェノール類を好適に用いることができる。具体的には、下記式
また、上記芳香族系縮合ポリマーとしては、上記のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の一部にフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化合物、例えばキシレン、トルエン、アニリン等で置換した変性芳香族系縮合ポリマー、例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を用いることもできる。更に、メラミン、尿素で置換した変性芳香族系ポリマーを用いることもでき、フラン樹脂も好適である。
本発明でPASは、次のようにして製造される。即ち、上記芳香族系縮合ポリマーを、非酸化性雰囲気(真空も含む)中で400〜800℃の適当な温度まで徐々に加熱することにより、水素原子/炭素原子の原子数比(以下H/C比と記す)が0.5〜0.05、好ましくは0.35〜0.10の不溶不融性基体となる。
上記の不溶不融性基体は、X線回折(CuKα)によれば、メイン・ピークの位置は2θで表して24°以下に存在し、また該メイン・ピークの他に41〜46°の間にブロードな他のピークが存在する。即ち、上記不溶不融性基体は、芳香族系多環構造が適度に発達したポリアセン系骨格構造を有し、かつアモルファス構造を有し、リチウムイオンを安定にドーピングすることができる。
本発明で負極活物質の有する粒度特性は、50%体積累積径(D50ともいう)が0.5〜30μmである負極活物質粒子から形成され、好ましくは0.5〜15μmであり、特には0.5〜6μmが好適である。また、本発明の負極活物質粒子は、比表面積が好ましくは0.1〜2000m2/gであるのが好適であり、好ましくは0.1〜1000m2/gであり、特には0.1〜600m2/gが好適である。
本発明における負極は、上記の負極活物質粉末から形成されるが、その手段は、上記正極の場合と同様に、既存のものが使用できる。即ち、負極活物質粉末、バインダー、必要に応じて、導電材及び増粘材(CMCなど)を、水系又は有機溶媒中に分散させてスラリーとし、該スラリーを上記した集電体に塗布するか、又は上記スラリーを予めシート状に成形し、これを集電体に貼り付けてもよい。ここで使用されるバインダーとしては、例えば、SBR等のゴム系バインダーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、アクリル重合体などを用いることができる。バインダーの使用量は、負極活物質の電気伝導度、電極形状等により異なるが、負極活物質に対して2〜4重量%の割合で加えることが適当である。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおける、非プロトン性有機溶媒電解質溶液を形成する非プロトン性有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。更に、これら非プロトン性有機溶媒の二種以上を混合した混合液を用いることもできる。
また、上記の単一あるいは混合の溶媒に溶解させる電解質は、リチウムイオンを生成しうる電解質であれば、あらゆるものを用いることができる。このような電解質としては、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2等が挙げられる。上記の電解質及び溶媒は、充分に脱水された状態で混合され、電解質溶液とするのであるが、電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため少なくとも0.1モル/l以上とすることが好ましく、0.5〜1.5モル/lの範囲内とすることが更に好ましい。
また、本発明のリチウムイオンキャパシタとしては、特に、帯状の正極と負極とをセパレータを介して捲回させる捲回型セル、板状の正極と負極とをセパレータを介して各3層以上積層された積層型セル、あるいは、板状の正極と負極とをセパレータを介した各3層以上積層物を外装フィルム内に封入したフィルム型セルなどの大容量のセルに適する。これらのセルの構造は、国際公開WO00/07255号公報、国際公開WO03/003395号公報、特開2004−266091号公報などにより既に知られており、本発明のキャパシタセルもかかる既存のセルと同様な構成とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはもちろんである。
(正極製造法)
活性炭として、下記の3種類のものを用いた。アルカリ賦活処理品については、充分に酸洗浄を施し、中和洗浄を行ったものを試料として用いた。
(a)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.071mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(実施例1)、
(b)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.162mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(実施例2)、
(c)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.05mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(比較例1)、
上記の各活性炭(a)〜(c)を10重量部、ケッチェンブラック粉体0.5重量部、四フッ化エチレンバインダー1重量部となる組成にて充分混合し、イソプロパノールを20重量部加えて混練し、得られた塊を圧延することで正極シート状電極(a1)、(b1)及び(c1)を得た。
活性炭として、下記の3種類のものを用いた。アルカリ賦活処理品については、充分に酸洗浄を施し、中和洗浄を行ったものを試料として用いた。
(a)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.071mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(実施例1)、
(b)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.162mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(実施例2)、
(c)ラクトン状カルボキシル官能基量が0.05mmol/gにアルカリ賦活処理されたフェノール樹脂系活性炭(比較例1)、
上記の各活性炭(a)〜(c)を10重量部、ケッチェンブラック粉体0.5重量部、四フッ化エチレンバインダー1重量部となる組成にて充分混合し、イソプロパノールを20重量部加えて混練し、得られた塊を圧延することで正極シート状電極(a1)、(b1)及び(c1)を得た。
厚さ38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)集電体両面に水系のカーボン系導電接着剤をコーティングし、すぐに正極シート状電極(a1)、(b1)及び(c1)をそれぞれ集電体の両面に貼り付け、圧延ローラーにて集電体と正極シート状電極を密着させた後、真空乾燥し、正極全体の厚さ(両面の正極電極層厚さと両面の導電層厚さと正極集電体厚さの合計)が165μmの正極(a2)、(b2)及び(c2)を得た。
(正極の単位重量当たりの静電容量測定)
正極シート状電極(a1)、(b1)及び(c1)を、カーボン系導電接着剤を用いて厚さ20μmのアルミニウム箔片面に接着固定させ、乾燥することにより正極箔電極(a3)、(b3)及び(c3)を得た。
上記正極箔電極(a3)、(b3)及び(c3)を2.0×2.0cm2サイズに2枚切り出し、評価用正極及び対極とした。正極、対極を厚さ60μmの紙製不織布をセパレータとして介しキャパシタの模擬セルを組んだ。参照極としてリチウム金属を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
正極シート状電極(a1)、(b1)及び(c1)を、カーボン系導電接着剤を用いて厚さ20μmのアルミニウム箔片面に接着固定させ、乾燥することにより正極箔電極(a3)、(b3)及び(c3)を得た。
上記正極箔電極(a3)、(b3)及び(c3)を2.0×2.0cm2サイズに2枚切り出し、評価用正極及び対極とした。正極、対極を厚さ60μmの紙製不織布をセパレータとして介しキャパシタの模擬セルを組んだ。参照極としてリチウム金属を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
充電電流8mAにて参照極(Li/Li+)に対して3.825Vまで充電しその後定電圧充電を行い、総充電時間1時間の後、8mAにて2.425Vまで放電を行った。3.825V〜2.425V間の放電時間より求めた各正極単位重量当たりの静電容量を結果表1に示す。
(負極製造法)
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコニット電気炉中に入れ、窒素雰囲気下で550℃まで50℃/時間の速度で、更に10℃/時間の速度で670℃まで昇温し、熱処理し、PASを合成した。かくして得られたPAS板をボールミルで粉砕することにより、平均粒子径が4μmのPAS粉体を得た。このPAS粉体のH/C比は0.2であった。
次に、上記PAS粉体92重量部、アセチレンブラック粉体6重量部、SBR5重量部、カルボキシメチルセルロース4重量部、水200重量部となる組成にて充分混合することによりスラリーを得た。
厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に負極のスラリーをロールコーターにて該負極集電体の両面に成形し、真空乾燥後、全体の厚さ(両面の負極電極層厚さと両面の導電層厚さと負極集電体厚さの合計)が134μmの負極(a)を得た。
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコニット電気炉中に入れ、窒素雰囲気下で550℃まで50℃/時間の速度で、更に10℃/時間の速度で670℃まで昇温し、熱処理し、PASを合成した。かくして得られたPAS板をボールミルで粉砕することにより、平均粒子径が4μmのPAS粉体を得た。このPAS粉体のH/C比は0.2であった。
次に、上記PAS粉体92重量部、アセチレンブラック粉体6重量部、SBR5重量部、カルボキシメチルセルロース4重量部、水200重量部となる組成にて充分混合することによりスラリーを得た。
厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に負極のスラリーをロールコーターにて該負極集電体の両面に成形し、真空乾燥後、全体の厚さ(両面の負極電極層厚さと両面の導電層厚さと負極集電体厚さの合計)が134μmの負極(a)を得た。
(負極の単位重量当たりの静電容量測定)
上記負極(a)をそれぞれ1.5×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。負極と対極として1.5×2.0cm2サイズ、厚み200μmのリチウム金属を厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。電解液としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
この模擬セルに対し、充電電流1mAにて負極(a)の負極活物質重量に対して600mAh/g分のリチウムイオンを充電し、その後1mAにて1.5Vまで放電を行った。放電開始後1分後の負極の電位から0.2V電位変化する間の放電時間より負極(a)の単位重量当たりの静電容量は912F/gであった。
上記負極(a)をそれぞれ1.5×2.0cm2サイズに切り出し、評価用負極とした。負極と対極として1.5×2.0cm2サイズ、厚み200μmのリチウム金属を厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。電解液としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
この模擬セルに対し、充電電流1mAにて負極(a)の負極活物質重量に対して600mAh/g分のリチウムイオンを充電し、その後1mAにて1.5Vまで放電を行った。放電開始後1分後の負極の電位から0.2V電位変化する間の放電時間より負極(a)の単位重量当たりの静電容量は912F/gであった。
(小型フィルムセル作成方法)
1セル当たり、正極を2.4cm×3.8cmに5枚カットし、負極を2.4cm×3.8cmに6枚カットし、セパレータ(レーヨン100%)を介して積層し、150℃12時間乾燥した後、最上部と最下部はセパレータを配置させて4辺をテープ留めして電極積層ユニットを得た。正極(a2)〜(c2)及び負極(a)の組み合わせを表2に示す。負極(a)の負極活物質重量に対して600mAh/g分のリチウム金属としては、厚さ110μmのリチウム金属箔を厚さ23μmのステンレス網に圧着したものを用い、負極と対向するように電極積層ユニットの最外部に1枚配置した。負極(6枚)とリチウム金属を圧着したステンレス網はそれぞれ溶接し、接触させ電極積層ユニットを得た。上記電極積層ユニットの正極集電体の端子溶接部(5枚)に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した巾3mm、長さ50mm、厚さ0.1mmのアルミニウム製正極端子を重ねて超音波溶接した。同様に負極集電体の端子溶接部(6枚)に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した巾3mm、長さ50mm、厚さ0.1mmのニッケル製負極端子を重ねて超音波溶接し、縦60mm、横30mm、深さ3mmに深絞りした外装フィルム1枚と深絞りしていない外装フィルム1枚の間に設置した。
1セル当たり、正極を2.4cm×3.8cmに5枚カットし、負極を2.4cm×3.8cmに6枚カットし、セパレータ(レーヨン100%)を介して積層し、150℃12時間乾燥した後、最上部と最下部はセパレータを配置させて4辺をテープ留めして電極積層ユニットを得た。正極(a2)〜(c2)及び負極(a)の組み合わせを表2に示す。負極(a)の負極活物質重量に対して600mAh/g分のリチウム金属としては、厚さ110μmのリチウム金属箔を厚さ23μmのステンレス網に圧着したものを用い、負極と対向するように電極積層ユニットの最外部に1枚配置した。負極(6枚)とリチウム金属を圧着したステンレス網はそれぞれ溶接し、接触させ電極積層ユニットを得た。上記電極積層ユニットの正極集電体の端子溶接部(5枚)に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した巾3mm、長さ50mm、厚さ0.1mmのアルミニウム製正極端子を重ねて超音波溶接した。同様に負極集電体の端子溶接部(6枚)に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した巾3mm、長さ50mm、厚さ0.1mmのニッケル製負極端子を重ねて超音波溶接し、縦60mm、横30mm、深さ3mmに深絞りした外装フィルム1枚と深絞りしていない外装フィルム1枚の間に設置した。
外装ラミネートフィルムの端子部2辺と他の1辺を熱融着した後、電解液としてエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を真空含浸させた後、残り1辺を減圧下にて熱融着し、真空封止を行うことによりフィルム型キャパシタセルを各2セル組立てた。
(セルの特性評価)
14日間室温にて放置後、各フィルム型キャパシタセルにつき1セルを分解したところ、リチウム金属はいずれも完全に無くなっていたことから、負極活物質の単位重量当たりに912F/gの静電容量を得るためのリチウムイオンが予めドーピングされたと判断した。各フィルム型キャパシタの負極の静電容量は、正極の静電容量は5.8倍以上となった。
14日間室温にて放置後、各フィルム型キャパシタセルにつき1セルを分解したところ、リチウム金属はいずれも完全に無くなっていたことから、負極活物質の単位重量当たりに912F/gの静電容量を得るためのリチウムイオンが予めドーピングされたと判断した。各フィルム型キャパシタの負極の静電容量は、正極の静電容量は5.8倍以上となった。
残ったフィルム型キャパシタの各セルを、25℃で24時間放置した後に、100mAの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1時間行った。次いで、100mAの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。この3.6V−2.2Vのサイクルを繰り返し、3回目の放電容量を測定した。測定結果を表2に示す。
上記測定終了後に正極と負極を短絡させ正極の電位を測定したところ、いずれも0.65〜0.95Vの範囲であり、2.0V以下であった。正極と負極を短絡させた時の正極電位が2.0V以下になるよう負極及び/または正極に予めリチウムイオンを担持させることにより、高いエネルギー密度を有したキャパシタが得られた。
表2に示されているとおり、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子を用いることにより容量及びエネルギー密度の大きいキャパシタが得られた。
表2に示されているとおり、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子を用いることにより容量及びエネルギー密度の大きいキャパシタが得られた。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの駆動用または補助用蓄電源として極めて有効である。また、電動自転車、電動車椅子などの駆動用蓄電源、ソーラーエネルギーや風力発電などの各種エネルギーの蓄電装置、あるいは家庭用電気器具の蓄電源などとして好適に用いることができる。
Claims (6)
- 正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えるリチウムイオンキャパシタであって、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、かつ、上記正極活物質は、ラクトン状カルボキシル官能基を0.07mmol/g以上有する活性炭粒子であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンがドーピングされている請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質重量よりも大きい請求項1又は2に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 活性炭粒子が、アルカリ賦活処理され、かつ比表面積が600〜3000m2/gである請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 活性炭粒子の50%体積累積径(D50)が1μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 活性炭粒子が、フェノール樹脂系活性炭、石油ピッチ系活性炭、石油コークス系活性炭、又は石炭コークス系活性炭である請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
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