JP2007169972A - コンクリートの補修・補強方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 錆びる材料を使用せず、施工後には、既設コンクリートと補修・補強材料が剥がれず、施工中に粉塵や、施工後に剥離・剥落しないように面で受け、さらにアンカーで板を固定することにより板の落下を防止でき、作業員の技量によらない施工方法で品質が一定となるように、工場製作や安易な施工を行うことができるコンクリートの補修・補強方法を開発・提供することにある。
【解決手段】 曲げ強度2.0N/mm2以上有するセメント系板の片面に繊維シートをエポキシ樹脂で含浸した繊維シート板(7,9)または板と間に繊維シートを含浸した板(9′)を既設コンクリート(10)にアンカー(5)で固定し、接合は接合幅100mm以上重ね合わせる。既設コンクリートと繊維シート板の隙間には充填材(6)を注入して一体化してコンクリートの補修・補強を行う。
【選択図】 図2

Description

この発明は、コンクリートの補修・補強方法に関するものであり、特に、既設コンクリートにひび割れや断面欠損および強度不足等の変状が発生している場合のコンクリートの補修・補強を目的として実施される。
従来のコンクリートの補修・補強技術は、現状で大分類すると
〔1〕鋼板による補強方法
〔2〕繊維シートを直接貼り付ける方法
〔3〕セメント系やアクリル系等を吹き付ける方法
これらの三つの方法が行われている。
しかし、上記で示した〔1〕鋼板による補強方法では、鋼材が錆びるという欠点を有し、かつ、鋼材の重量(比重7.85)が重く、施工に当たっては大型機械の導入が必要であった。
次に、〔2〕繊維シートを直接貼り付ける方法は、水分がある箇所では貼り付けることが困難であり、仮に、貼り付けることができても、将来、剥がれる危険性が高く、作業工程が多く必要であるという欠点があった。
更に、〔3〕吹き付ける方法は、品質が均一とならないため施工後に剥離・剥落する確率が大きく、かつ、施工中には粉塵が発生し、作業環境が悪くなるという欠点があった。 また、〔2〕および〔3〕の方法では、作業員の技量により品質が均一とならないという欠点も有している。
そこでこの発明は、錆びる材料を使用せず、施工後には、既設コンクリートと補修・補強材料が剥がれず、施工中に粉塵や、施工後に剥離・剥落しないように面で受け、さらにアンカーで板を固定することにより板の落下を防止でき、作業員の技量によらない施工方法で品質が一定となるように、工場製作や安易な施工を行うことができるコンクリートの補修・補強方法を開発・提供することにある。
そこでこの発明は、錆びる材料を使用せず、繊維シートを用い、施工後には、既設コンクリートと補修・補強材料が剥がれず、施工中に粉塵や、施工後に剥離・剥落しないように面で受け、さらにステンレスアンカーで板を固定することにより板材の落下を防止でき、作業員の技量によらない施工方法で品質が一定となるように、工場製作や安易な施工を行うことができるコンクリートの補修・補強方法を開発・提供することにある。
本発明のコンクリートの補修・補強を簡単な施工方法によると、施工速度が速く、特殊な機械・工具を用いることなく、しかも、熟練でなく、普通作業員で施工でき、面で荷重を受けることができ、品質も安定するものであり、錆びる材料を一切用いていないため耐久性に優れ、従来の工法に比べて経済的となる等の有益なる効果を奏する。
具体的項目を次に示すと、
〔1〕全体を面で覆うことができるため、荷重に対して有利となる。
〔2〕薄い板が軽いため(厚さ7mmの場合m2当り約12kg)作業性に優れる。
〔3〕作業員の技量によらず普通作業員で施工でき品質が均一となる。
〔4〕工場製作するため繊維シートの含浸が良好で品質が安定している。
〔5〕接合部を設けることにより繊維シートが連続体となり構造補強ができる。
〔6〕板の強度が大きいため、現場で人手により曲率を付加することができる。
〔7〕板板はセメント系で錆びる材料を一切用いていないため耐久性に優れる。
〔8〕鉄筋量に応じて繊維シート量を選定できる。
〔9〕機械工具は、市販されている小型工具の汎用品を用いる。
〔10〕表面にセメント系板を用いるため導電対策、耐熱対策が施されている。
〔11〕アンカーによる固定を行い、板の落下に対して充填材と二重の安全対策を実施して いる。
この発明の最良の形態としては、厚さ3〜20mm(重量は、厚さ7mmで約12kgと軽量)、曲げ強度2.0N/mm2 以上の板材を工場で製造し、該板材の片面に繊維シートを含浸させた繊維シート板を設けた本体繊維シート板と、該板材の端面に幅100mm以上の接合長を余らせた接合部を有する接合繊維シート板を製造するか、または、板材と板材との間に、繊維シートを含浸させた本体繊維シート板と、幅200mm( 片側100mm+100mm) 以上の接合部を設けた複合板を製造し、(100mmの接合部はステンレス材およびアルミニウム材で設けた接合板の面に繊維シートを含浸することもできる)または、接合部分に接合用繊維シートを幅100mm以上重なるように確保して、この繊維シート上に本体繊維シート板と接合繊維シート板とを付き合わせる。
既設コンクリートと板材と繊維シート板との取付けは、ステンレスアンカーで固定する。尚、接合部には900mm当り3本以上のアンカーで固定して繊維シートを連続体とする。既設コンクリートと繊維シート板の隙間には、エポキシ樹脂やアクリル樹脂およびセメント系グラウト材を自動式低圧注入機械で充填することで、繊維シート板とコンクリートを一体化するコンクリートの補修・補強方法とするものである。
次に、この発明の一実施例を図面に基づいて詳述すると、板材(1)の原料は、m3 当り、
セメント 600kg
水 210kg
細骨材 800kg
混和材 50kg
減水剤 2kg、
ビニロン繊維(容積当り0.4%)= 5.24kg
を練り混ぜて、型枠〔7mm×900mm×1800mm〕に打ち込み、養生し、製作する。該板材(1)の片面に、炭素繊維シート等の繊維シート(2)200g/mm2 を1方向をエポキシ樹脂等の含浸用樹脂で含浸、接合長120mmを有する接合部(4)を設け、接合繊維シート板(7)を設ける。〔図1(a)、及び図4を参照〕
また、上記原料を練り混ぜて、型枠〔7mm×900mm×1800mm〕に打ち込み、養生し、製作する。該板材(1)の片面に、炭素繊維シート等の繊維シート(2)〔200g/mm2 〕を1方向をエポキシ樹脂等の含浸樹脂(3)で含浸して、本体繊維シート板(9)を設ける。〔図1(b)を参照〕
さらに、板材(1)と板材との間に、接着剤を含浸した繊維シート(2)を貼着した繊維シート板(9′)を設け、該繊維シート板(9′)の一端を、端面より適当幅ほど接合部(4)を余らせて設けた繊維シート板であってもよい。〔図4、図5参照〕
そして、繊維シート板(本体繊維シート板、および接合繊維シート板)を工場から現場に運搬して、既設コンクリート(10)の表面をサンダー掛け、接合部(4)はエポキシ樹脂等の充填材(6)により接着、接合部の上面に接合部がない、即ち、本体繊維シート板(9)の端面を付き合わせる。板材(1)をステンレスアンカー(5)で固定、既設コンクリート(10)と板材(1)の隙間にエポキシ樹脂等の充填材(6)を充填して一体化して固定するものである。〔図6(a)参照〕
次に、この発明に用いる板材(1)について詳述すると、本発明に用いる板材は、工場において製造し、該板材(1)は、セメント、水、混和材(細骨材は用いても用いなくてもよい)および短繊維を容積当り0.1〜0.5%混入して練り混ぜる。板厚さは3〜20mmとする。この曲げ強度がJIS A 1106 試験方法において2.0N/mm2以上を有する。短繊維を混入する理由は、薄い板の場合、ひび割れが発生する確率が大きいことや曲率を付加すると割れてしまうため、これらを解決するために用いる。
また、板材(1)の原料に使用する短繊維は、ビニロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維等いずれでもよい。この形状は、直径0.01〜1mmで長さ6〜30mmが適している。混入量は容積当り0.1〜0.5%がよい。これは、混入量が0.5%以上の場合に繊維がファイバーボール(魂まり)となり均一に分散できない。
さらに0.1%未満の場合にひび割れ抑制効果が現れない。短繊維を混入し、水セメント比が35%以下で練り混ぜ製造した板を用いる。曲げ強度が2.0N/mm2 未満の場合、板厚さ3mmでは、曲率を半径1500mmに付加したとき、板材(1)にひび割れが発生することが実験で確認できた。
このような試験結果から本発明では、曲げ強度の値が2.0N/mm2 以上有することにした。
板厚さが3〜20mmとした理由は、板材(1)が厚すぎたとき、重量が重くなり作業性が劣る、本発明は大型機械を用いないで施工できることが合理化コストダウンにつながるため板厚さは20mmまでとした。板厚さを3mm未満としたのは、これより薄いとひび割れが発生しやすく、曲げた場合に折れるためである。
そして、板材(1)の好ましい寸法は、厚さ7mm、縦900mm、横1800mmであり、該板材(1)の片面に、炭素繊維等の繊維シート(2)〔200g/mm2 〕を、1方向をエポキシ樹脂で含浸し、縦方向の端面に、幅120mmの接合用繊維シートを設けて接合部(4)とする接合繊維シート板(7)を設ける。
この接合繊維シート板(7)を、既設コンクリート(10)に、ステンレスアンカー(5)(φ6長さ25mm)15本/2m2(接合部のアンカーを含める)で取付る。
接合部(4)はエポキシ樹脂により接着する。接合部はステンレスアンカー(φ6長さ25mm)900mm当り3本打ち込む。既設コンクリート(10)と接合繊維シート板(7)の隙間には、エポキシ樹脂等の充填材(8)を充填する。
さらに、この発明に使用する繊維シート(2)について、詳述すると、補強する繊維シート(2)は、炭素繊維シート、アラミド繊維シート、ガラス繊維シート、ビニロン繊維シート等いずれのシートを用いてもよい。繊維シートは、設計に応じて繊維シートの目付け量を増減できる。繊維シートの方向についても1方向および2方向(直角方向)も貼り付けることができる。
繊維シート(2)の含浸用樹脂である含浸樹脂(3)は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等を用いることができるが、エポキシ樹脂が繊維シートの接着強度上、望ましい。
また、この発明の接合長についても、詳述すると、繊維シート(2)を連続で繋ぐため、板材(1)の端面に接合長を設ける。接合長は板材(1)の片面に炭素繊維シートを貼り付け幅30mm、長さ600mm、厚さ7mm、接合長さを50mm、100mm、150mm(接合部はエポキシ樹脂で含浸した)接合無しの4タイプ×3ケース=12体で両端を固定して引張強度試験を実施した。この試験結果は、接合無しの引張強度を100%としたとき、接合長さ50mmが86%、接合長さ100mmが100%、接合長さ150mmが100%となった。これより繊維シートを連続体として判定できる接合長さは、100mm以上でよい。
さらに、接合方法は、
〔1〕 板材(1)の端面から繊維シートを幅100mm以上確保する
〔2〕 板材(1)の端面から厚さ0.2〜1mmのステンレス材またはアルミニュム材を幅100mm以上張り出し、この片面に繊維シートをエポキシ樹脂で含浸する。
〔1〕および〔2〕の接合部を有する板、即ち、接合繊維シート板(7)と、接合のない板、即ち、本体繊維シート板(9)とを突合せ、エポキシ樹脂で含浸し重ね合わせる。〔3〕 幅200mm以上の繊維シート(2)をエポキシ樹脂で貼り付け、片方の板が100mm以上確保できるようにエポキシ樹脂で重ねる。もう片方は、突合せエポキシ樹脂で接合する。
〔4〕 〔3〕のシートの台座として厚さ0.2〜1mmのステンレス材あるいはアルミニュム材等の小接合板(7a)を用い、片面に繊維シート(2)を含浸し、〔3〕と同様の方法で接合する。
〔5〕 板材(1)と板材(1)との間に繊維シート(2)を含浸したもの厚さ7mmは、板と板を突合せ端面には片面100mm以上の接合幅厚さ3mmを設ける、板の片面に繊維シートを含浸した接合板厚さ3mmを重ねてエポキシで含浸する。
〔6〕 板と板の間に繊維シート(2)を含浸した板厚さ7mmの端面を幅100mm以上厚さ3mmで下側、これに対して上側に幅100mm以上を厚さ3mmで重ね合わせエポキシで含浸させる。
以上のように、〔1〕〜〔6〕のいずれの方法においても、接合部は既設コンクリート(10)と板材(1)が一体化できるように、ステンレスアンカー(φ6〜8mmが適している)(5)を1m当り3本以上打ち込み固定する。ステンレスアンカー(φ6mm以上)を1m当り3本以上打ち込む理由は、接合面は本体板に比べて面積が少ないため繊維シート(2)を連続体で繋ぐ場合、弱点とならないようにするためである。また、既設コンクリート(10)と板材を一体化するため、この隙間に充填する注入圧力に対して1m当り2本の場合、アンカーの間隔が広くなり、この部分のアンカーとアンカーの中央部が膨らむことが実験で確認できた。これらにより繊維シートが連続体となる。
最後に、この発明における繊維シート板の取付方法について、詳述すると、既設コンクリート(10)と繊維シート板の取付方法は、m2 当り5〜10本のステンレスアンカー(φ6〜8mmが適している)(5)で固定、接合部は、明細書の[0009]に示す方法で固定、既設コンクリート(10)と、接合繊維シート板(7)および本体繊維シート板(9)との隙間は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セメント系グラウト材で充填する。
充填手段は、自動式低圧注入機を用い、板には空気抜き孔を設け(m2 当り2〜3箇所がよい)、この孔から充填材料が湧出した段階で終了とする。
なお、充填の確認は小型ハンマーによる打音で行い、未充填箇所にはハンディタイプ式注入機により手動でエポキシ樹脂を再注入する。
本発明の補強効果を確認するため曲げ試験をJIS A 1106に準拠して行った。〔図7(a)を参照〕試験体の形状は、図7(b)に示すように、100mm×100mm×600mm、この下面に繊維シート板(炭素繊維シート200g/mm2 を1方向)を貼り付けた。無補強試験体の最大荷重は12KN。接合部を設けた試験体の最大荷重は39KN。接合部無し試験体の最大荷重は40KN。この結果から本発明の接合方法は、無補強に対して3.3倍程度の補強効果が確認できた。
本発明の技術を確立し、実施することにより、建設分野の維持・管理におけるコンクリート構造物全般に利用できる。また、利用可能性が大きい補修・補強対象構造物は、桟橋、橋梁、擁壁、水路、トンネル、ボックスカルバート、建築の柱・壁・梁であり、産業上の利用可能性は大きいものである。
本発明に使用する板材と繊維シート板と接合を示した断面の説明図であり、(a)は、繊維シートで接合した本体繊維シート板の説明図であり、(b)は、繊維シートの接合部を有する接合繊維シートの説明図である。 本発明の一実施例を示す説明図である。 本発明の他の実施例を示す説明図である。 本発明のさらに他の実施例を示す説明図である。 本発明のさらに他の実施例を示す説明図である。 本発明の使用例を示し、(a)は、一部欠截正面図であり、(b)は、一部欠截底面図である。 本発明に使用する繊維シート板の曲げ強度試験を示し、(a)は、結果例を示すグラフ図であり、(b)は、試験体の斜視図であり、(c)は、各種の繊維シート板の例を図示した説明図である。
符号の説明
1 板材
2 繊維シート
3 含浸樹脂
4 接合部
5 ステンレスアンカー
6 充填材
7 接合繊維シート板
8 樹脂シール
9 本体繊維シート板
9′繊維シート板
10 既設コンクリート
11 樹脂接着
12 曲げ試験
13 補強試験体形状
14 無補強試験体
15 接合部有り試験体
16 接合部無し試験体
17 ステンレス材

Claims (3)

  1. 所定の原料を用いて、曲げ強度が2.0N/mm2 以上を有する、適宜な厚みの板材を設け、該板材の片面に接着剤を含浸した繊維シートを貼着した繊維シート板を設け、あるいは、板材と板材との間に、接着剤を含浸した繊維シートを貼着した繊維シート板を設け、これら繊維シート板を複数枚設け、これら繊維シート板を、繊維シートを介してつなぎ合わせた連続体とし、この連続体を既設のコンクリート面に設置し、ステンレスアンカーを用いて固定することを特徴とするコンクリートの補修・補強方法。
  2. 板材の片面に、接着剤を含浸した繊維シートを貼着した繊維シート板において、繊維シートを板材の端面より適当幅ほど接合部を余らせて設けたことを特徴とする請求項1記載のコンクリートの補修・補強方法。
  3. 板材と板材との間に、接着剤を含浸した繊維シートを貼着した繊維シート板において、繊維シート板の両端部の一をずらして、接合部として繊維シートを適当幅ほど露出するように設けたことを特徴とする請求項1記載のコンクリートの補修・補強方法。
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