JP2007169231A - 歯科用組成物 - Google Patents

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浩司 松重
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Abstract

【課題】 本発明は歯科医療分野等における歯の修復に際し、酸水溶液などによるエッチング処理を必要としないで且つ修復材料と歯質との優れた接着強度および接着耐久性を実現する為の歯科用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 樹脂酸、好適にはアビエチン酸等のロジン系樹脂酸を、リン酸基等の強酸性基含有重合性単量体、水、及び水溶性有機溶媒からなる歯科用前処理材に配合する。また、同じく樹脂酸を、強酸性基含有重合性単量体、水、および光重合開始剤からなる歯科用接着材に配合する。
【選択図】 なし

Description

本発明は歯科用組成物に関し、詳しくは歯科用前処理材や歯科用接着材として有用な歯科用組成物に関する。
齲蝕等により損傷を受けた歯の修復には、主にコンポジットレジンと呼ばれる充填材料が用いられる。このコンポジットレジンは歯の空洞に充填後重合硬化して使用されることが一般的である。しかし、この材料自体歯質への接着性を持たない為、歯科用接着材が併用される。この接着材にはコンポジットレジンの硬化に際して発生する内部応力、即ちコンポジットレジンと歯質との界面に生じる引張り応力に打ち勝つだけの接着強度が要求される。さもないと過酷な口腔環境下での長期使用により脱落する可能性があるのみならず、コンポジットレジンと歯質の界面で間隙を生じ、そこから細菌が侵入して歯髄に悪影響を与える恐れがあるためである。
歯の硬組織はエナメル質と象牙質から成り、臨床的には双方への接着が要求される。従来、接着性の向上を目的として、接着材塗布に先立ち歯の表面を前処理する方法が用いられてきた。このような前処理材としては、歯の表面を脱灰する酸水溶液が一般的であり、リン酸、クエン酸、マレイン酸等の酸水溶液が用いられてきた。エナメル質の場合、処理面との接着機構は、酸水溶液の脱灰による粗造な表面へ、接着材が浸透して硬化するというマクロな機械的嵌合であるのに対し、象牙質の場合には、脱灰後に歯質表面に露出するスポンジ状のコラーゲン繊維の微細な空隙に、接着材が浸透して硬化するミクロな機械的嵌合であると言われている。但し、コラーゲン繊維への浸透はエナメル質表面ほど容易ではなく、酸水溶液による処理後に更にプライマーと呼ばれる浸透促進材が一般的に用いられる。即ち、この方法ではエナメル質と象牙質の双方に対して良好な接着強度を得るためには、歯科用接着材を塗布する前に2段階の前処理が必要な3ステップシステムであり、操作が煩雑であるという問題があった。
近年、この操作の煩雑さの軽減を目的として、酸水溶液の脱灰機能と象牙質プライマーの浸透促進機能を併せ持つセルフエッチングプライマーと呼ばれる前処理材と歯質接着材で処理する2ステップシステム(特許文献1、2)が提案され、さらに、酸水溶液の脱灰機能と象牙質プライマーの浸透促進機能及び歯質への接着材としての機能すべてを併せ持つ接着材で処理する1ステップシステム(特許文献3、4参照)が提案されている。
これら2ステップシステムの前処理材および1ステップシステムの接着材には、いずれも歯質を脱灰するために、酸性基を有する重合性単量体が用いられている。しかしながら、このような酸性基含有重合性単量体は、一般的に機械的強度が低く、また耐水性も悪いため、水分を多く含む口腔内という過酷な条件下で長期間安定した接着強度を維持するには必ずしも十分とは言えなかった。
一方、カルボン酸基を有する重合性単量体、重合開始剤から成る組成物の任意の添加剤の一種として樹脂酸が示され、その場合に優れた接着強度及び耐久性を発現する象牙質プライマーが得られることが提案されている(特許文献5)。しかしながら、該前処理材は中性条件で使用する必要があると説明されており、歯質脱灰機能は有していない。また、上記組成物の溶媒の具体例の中には水も示されているが、上記樹脂酸と組合わせて使用するような開示は、実施例を含めて全く存在しない。その為、この象牙質プライマーを用いても歯質との接着をなす為には予め、酸水溶液などによるエッチング処理が必要であり操作性に問題があった。また、樹脂酸の酸性条件下での挙動及び歯科用接着材として使用した時の挙動についての知見は一切不明であった。
特開平06−009327号公報 特開平06−024928号公報 特開平10−236912号公報 特開平10−245525号公報 特表平11−503150号公報
以上の背景にあって、本発明は歯科用修復物の歯質との接着に関して、優れた接着力および接着耐久性を有する前処理材や接着材を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、強酸性基含有重合性単量体に、樹脂酸及び水を組合せて用いた組成物を基にした歯科用前処理材や歯科用接着材を用いれば、歯質に対して優れた接着強度や接着耐久性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)強酸性基含有重合性単量体、(B)樹脂酸、および(C)水を含有してなることを特徴とする歯科用組成物である。
該歯科用組成物を歯科用前処理材として用いる場合には、(A)強酸性基含有重合性単量体、(B)樹脂酸、(C)水に、さらに、(D)水溶性有機溶媒を加えることにより、歯質の脱灰力および歯質への浸透力に優れ、且つ、歯質に対して優れた接着強度及び接着耐久性が得られる。また、該歯科用組成物を歯科用接着材として用いる場合には、(A)強酸性基含有重合性単量体、(B)樹脂酸、(C)水に、さらに、(E)光重合開始剤を加えることにより、前処理などを一切しなくても歯質に対して優れた接着強度及び接着耐久性が得られる。
本発明の歯科用組成物は、(A)強酸性基含有重合性単量体、(B)樹脂酸、(C)水から成ることを特徴とし、該組成物を歯科用前処理材や歯科用接着材として使用することで、エナメル質や象牙質などの歯質に対し優れた接着強度および接着耐久性をえることができる。この優れた接着性の効果は、本発明の歯科用組成物を歯質に塗布した際に、被着体である歯質と本発明の組成物との界面付近の組成物が急激に増粘し、それにより重合活性が高まることに起因する。このように本発明の歯科用組成物において、歯質に塗布した際に増粘が生じる原因は必ずしも定かではないが、樹脂酸が、強酸性基含有重合性単量体と水の作用で脱灰された歯質から生じるカルシウムイオンを介して自己組織化することによって、高分子化する為ではないかと推測される。
したがって、本発明の歯科用組成物を基にした歯科用接着材や歯科用前処理材を用いれば、齲蝕の治療に際して、歯科用修復物と歯質とを優れた接着性で接着でき、その結果、接着界面からの齲蝕菌の侵入が抑制でき、齲蝕の再発を高度に防止できる。
また、この優れた接着効果は、歯科用接着材や歯科用前処理材を使用するに際して予め酸水溶液などによるエッチング処理をしなくても良好に維持できる。よって、これらの歯科用接着材や歯科用前処理材を用いれば、該エッチング処理が必要ない操作性の優れた、前記2ステップシステムや1ステップシステムにおいて、前記したような優れた接着効果を達成でき、極めて有用である。
本発明の歯科用組成物において、(A)強酸性基含有重合性単量体としては、1分子中に少なくとも1つの強酸基と少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
上記強酸基とは、酸解離定数(pKa)が3.0以下のものをいう。具体的にはリン酸基、スルホン酸基等が挙げられ、このうち象牙質接着性の点から、リン酸基であるのが特に好ましい。こうした強酸基の分子内の数は、1〜4個が一般的であり、1〜2個が特に好ましい。
また、重合性不飽和基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、このうち(メタ)アクリル基であるのが特に好ましい。こうした重合性不飽和基の分子内の数は、1〜2個が一般的である。
この強酸基含有重合性単量体のうち、強酸基としてリン酸基を有するものの代表例を示せば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1、3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1、3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
この他の強酸基としてスルホン酸基を有するものの代表例を示せば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、2または1ースルホー1または2ープロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモー2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの強酸基含有重合性単量体は、単独または二種以上を混合して使用することができる。
上記強酸基含有重合性単量体の中でも、象牙質接着性及び硬化体強度の点から、単官能モノマーである2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートや10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート等と、2官能モノマーであるビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートなどを組み合わせて使用することが最も好ましい。
本発明の最大の特徴は、上記(A)強酸性基含有重合性単量体を重合性成分とする歯科用組成物において、(B)樹脂酸と(C)水とを組合せて配合したことにある。このような樹脂酸の使用により、被着体である歯質と本発明の組成物との界面付近の重合活性が著しく向上し、優れた歯質接着性能を得ることができるようになる。これは、本発明の組成物では、(A)強酸性基含有重合性単量体が(C)水と共に歯質脱灰作用を発揮し、カルシウムイオンが生成するが、該カルシウムイオンを介して上記樹脂酸が自己組織化することによって高分子化される為ではないかと推察される。すなわち、該樹脂酸が高分子化されることによって被着体である歯質と本発明の組成物との界面付近の組成物の粘度は急激に増加し、これが重合活性を向上させているものと思われる。
(B)樹脂酸は、天然樹脂酸中に遊離またはエステルとして存在する有機酸を総称するものであり、本発明では、該有機酸の公知のものが制限なく使用できる。また、かかる樹脂酸は、必ずしも天然樹脂から分離したものだけでなく、同じ化合物であれば合成品も使用できる。
こうした樹脂酸は脂肪族系のものが効果が高く、特に、ロジンの中に含まれているロジン系樹脂酸が、好適に使用される。こうしたロジン系の樹脂酸としては、具体的には、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸類、およびテトラヒドロアビエチン酸類が挙げられる。無論、これらの混合物であるガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、付近化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジンなども使用できる。これらの樹脂酸のなかでも、カルシウムイオン存在下での増粘性および歯質に対する接着性が優れている点で、アビエチン酸が特に好ましい。
なお、これら樹脂酸は単独で用いても、複数の種類のものを併用しても良い。
本発明の歯科用組成物における樹脂酸の配合量は特に限定されないが、(A)強酸性基含有重合性単量体100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましい。より好ましくは、5〜30質量部である。
また、上記(B)樹脂酸と組合せて使用する(C)水は、(B)強酸性基含有重合性単量体と共に歯質脱灰作用を持たせる為に必須である。
前記したとおり、本発明の組成物において、(B)樹脂酸が優れた接着性に関する効果を発揮するためには歯質脱灰によるカルシウムイオンの生成が必要であり、そのためには、(B)強酸性基含有重合性単量体を歯質に浸透させ、強酸性基の酸性を機能させなければならず、該水の存在が重要になる。
(C)水は、保存安定性、生体適合性および接着性に有害な不純物を実質的に含まないことが好ましく、例としては脱イオン水、蒸留水等が挙げられる。
本発明の歯科用接成物における(C)水の配合量は、特に限定されるものではなく適宜設定すれば良いが、前処理材とした場合には、(A)強酸性基含有重合性単量体100質量部に対して、10〜180質量部であることが好ましい。より好ましくは、50〜125質量部である。また、接着材とした場合には、(A)強酸性基含有重合性単量体100質量部に対して、5〜75質量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜40質量部である。
本発明の組成物を歯科用前処理剤として使用する場合において、該前処理剤は、本発明の組成物をそのまま使用することも可能であるが、好適には、(A)成分である樹脂酸の溶解性、及び歯質への浸透性の観点から(D)水溶性有機溶媒を配合するのが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、水溶性を示すものであれば公知の有機溶媒が何等制限なく使用できる。ここで言う水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることを言う。
このような水溶性有機溶媒として具体的に例示すると、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する為害性を考慮すると、エタノール、プロパノール又はアセトンが好ましい。
本発明の歯科用前処理材における(D)水溶性有機溶媒の配合量は特に限定されるものではなく適宜設定すれば良いが、(A)強酸性基含有重合性単量体100質量部に対して、25〜200質量部であることが好ましい。特に好ましくは、75〜125質量部である。
この他、本発明の組成物を歯科用前処理材として使用する場合には、上記(A)〜(D)成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で歯科用前処理剤の配合成分として公知の他の成分、例えば、強酸性基を有しない重合性単量体、紫外線吸収剤、重合禁止剤、重合抑制剤、染料、顔料、無機充填剤などを配合してもよい。
他方、本発明の組成物を歯科用接着材として使用する場合においては、該組成には、通常、(E)光重合開始剤を配合するのが好ましい。この光重合開始剤としては、公知のものが制限なく使用可能であるが、具体的には、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体、ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、さらには、アリールボレート化合物/色素/光酸発生剤からなる系が挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、α−ジケトン系の光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤、及びアリールボレート化合物/色素/光酸発生剤を組み合わせた系からなる光重合開始剤である。
上記α−ジケトンとしてはカンファーキノン、ベンジルが好ましく、また、アシルホスフォンオキサイドとしては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。なお、これらα−ジケトン及びアシルホスフォンオキサイドは単独でも光重合活性を示すが、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ラウリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミン化合物と併用することがより高い活性を得られて好ましい。
また、アリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系の光重合開始剤については特開平9−3109号公報等に記されているものが好適に用いられるが、より具体的には、テトラフェニルホウ素ナトリウム塩等のアリールボレート化合物を、色素として3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(4−シアノ−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン系の色素を、光酸発生剤として、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、またはジフェニルヨードニウム塩化合物を用いたものが特に好適に使用できる。
該光重合開始剤はそれぞれ単独で配合するのみならず、必要に応じて複数の種類を組み合わせて配合することもできる。
これら光重合開始剤の配合量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、調整する硬化性組成物の用途や目的に応じ適宜決定すれば良いが、成分中の重合性単量体の合計100質量部に対して、0.001〜50質量部であることが好ましい。また、α−ジケトン又はアシルホスフィンオキサイドを使用する場合には、成分中の重合性単量体の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部であり、さらに必要に応じてアミン化合物を0.01〜20質量部加えれば良い。また、アリールボレート化合物/色素/光酸発生剤系の場合、色素が0.001〜1質量部、光酸発生剤が0.01〜10質量部とすれば良い。
この他、本発明の組成物を歯科用接着材として使用する場合には、上記(A)〜(C)および(E)成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、歯科用接着材の配合成分として公知の他の成分、例えば、強酸性基を有しない重合性単量体、紫外線吸収剤、重合禁止剤、重合抑制剤、染料、顔料、無機充填剤、および前記した(D)水溶性有機溶媒などを配合してもよい。
上記本発明の組成物を歯科用前処理材や歯科用接着材として使用する場合において、任意成分として配合可能な強酸性基を有しない重合性単量体を説明すると、歯科分野で使用可能な公知のものが制限なく使用できる。具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、11,11−ジカルボキシウンデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記した強酸性基を有しない重合性単量体の配合量は特に限定されるものではなく適宜設定すれば良いが、(A)強酸性基含有重合性単量体100質量部に対して、1〜300質量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜120質量部である。
次に、本発明の歯科用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、歯科用前処理材や歯科用接着材における公知の製造方法に従えばよい。一般的には、赤色光などの不活性光下に、配合される全成分を秤取り、均一溶液になるまでよく混合すればよい。
本発明の歯科用組成物の使用方法もまた、歯科用前処理材や歯科用接着材における公知の方法に従えばよく、例えば、前処理材として使用する場合には、齲蝕部を取り除くなどした被着体となる歯質に本発明の前処理材を塗布、5〜60秒程度放置後に圧縮空気などを軽く吹き付けて揮発成分を揮発させた後、市販の歯科用接着材で処理すればよい。また、歯科用接着材として使用する場合には、齲蝕部を取り除くなどした被着体となる歯質に本発明の接着材を塗布、5〜60秒程度放置後に圧縮空気などを軽く吹きつけて揮発性成分を揮発させ、ついで歯科用照射器を用いて可視光を照射し重合、硬化させればよい。
その他、本発明の歯科用組成物は、上記歯科用前処理材や歯科用接着材の用途の他にも、その歯質への優れた接着性に関する効果を生かして、シーラント材、審美用コーティング材、充填用の歯科用セメント等の歯面を処理する用途において好適に使用可能である。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
なお、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を(1)に、本発明の歯科用組成物の増粘性評価方法を(2)に、重合活性評価方法を(3)に、歯科用前処理材および歯科用接着材のエナメル質および象牙質に対する接着強度の測定方法を(4)に示す。
(1)略称及び構造
(A)強酸性基含有重合性単量体
PM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物
MDP;10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
(B)樹脂酸
AE;アビエチン酸
LP;レボピマル酸
PA;ピマル酸
(D)水溶性有機溶媒
EtOH;エチルアルコール
(E)光重合開始剤
CQ;カンファーキノン
DMBE;N,N−ジメチルp−安息香酸エチル
TPO;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
その他の重合性単量体
MAC−10;11,11−ジカルボキシウンデシルメタクリレート
UDMA;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルオキサン
HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(2)増粘性評価方法
歯科用組成物1.0gを5mlサンプル管瓶に入れ、ヒドロキシアパタイト粉末0.1gを添加して攪拌し、接着材の流動性が無くなるまでの時間を比較し、増粘性を評価した。
(3)重合活性評価方法
歯科用接着材1.0gを5mlサンプル管瓶に入れ、ヒドロキシアパタイト粉末0.1gを添加して5分間放置し、増粘させた試料を調整した。各試料に照射距離0.5cmから歯科用の光照射器(TOKUSO POWER LITE、(株)トクヤマ社製)によって光照射を行った。この時、接着材が十分に硬化するまでの時間、即ち硬化体表面が短針で刺さらなくなるまでの時間において、ヒドロキシアパタイト粉末を添加していない試料と比較し、増粘による重合活性への影響を評価した。
(4)エナメル質、象牙質に対する接着強度の測定方法
(4)−1 前処理材
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、往水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、この平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、ついで厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞内に本発明の前処理材を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。
次に歯科用接着材(トクソーマックボンドII ボンディングエージェント、トクヤマデンタル社製)を模擬窩洞内に塗布し可視光線照射器(パワーライト、トクヤマデンタル社製)にて10秒間光照射し接着剤を硬化させた。更にその上に歯科用コンポジットレジン(パルフィークエステライトΣ、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片を作製した。
上記接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り、歯牙とコンポジットレジンの引張り接着強度を測定した。1試験当り、4本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を初期接着強度とした。また、同様に作製した接着試験片を熱衝撃試験機にて4℃と60℃の水中に1分間ずつ交互に浸漬し、これを3000回行った後で上記と同様に引張り接着強度を測定し、その値を耐久性後の接着強度とした。
(4)−2 接着材
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、往水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、この平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、ついで厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞内に本発明の接着剤を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。次に可視光線照射器(パワーライト、トクヤマデンタル社製)にて10秒間光照射し接着剤を硬化させた。更にその上に歯科用コンポジットレジン(パルフィークエステライトΣ、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片を作製した。
上記接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り、歯牙とコンポジットレジンの引張り接着強度を測定した。1試験当り、4本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を初期接着強度とした。また、同様に作製した接着試験片を熱衝撃試験機にて4℃と60℃の水中に1分間ずつ交互に浸漬し、これを3000回行った後で上記と同様に引張り接着強度を測定し、その値を耐久性後の接着強度とした。
実施例1
(A)成分として10gのPM、(B)成分として1.0gのアビエチン酸(AE)、(C)成分として2.5gの水、(E)成分として0.05gのCQ、0.05gのDMBEを量り取り、混合し本発明の接着材を調製した。ついで、該接着材1.0gを5mlサンプル管瓶に入れ、ヒドロキシアパタイト粉末(以降Hapと表す。)0.1gを添加して攪拌し、増粘性及び重合活性を評価した。接着材の組成および評価結果を表1に示す。
実施例2〜8、比較例1〜6
実施例1の方法に準じ組成の異なる接着材を調整し、増粘性及び重合活性を評価した。接着材の組成および評価結果を表1に示す。
Figure 2007169231
実施例1〜8は各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、いずれの場合においてもHapを添加してから急激に粘度が上昇し、15分以内には流動性がなくなるという挙動を示し、増粘後の重合活性はHap添加前の重合活性と比較して著しく硬化性が向上した。
これに対して比較例1は、本発明で示される(A)成分〜(C)成分すべてを含んでいない場合であるが、Hapを添加しても増粘は見られず、重合活性についても変化がなかった。比較例2〜3は本発明で示される(A)成分である強酸性基含有重合性単量体を含んでいない場合であるが、Hapを添加しても増粘は見られず、重合活性についても変化がなかった。比較例4〜5は本発明で示される(B)成分である樹脂酸を含んでいない場合であるが、いずれの場合においてもHapを添加しても増粘は見られず、重合活性についても変化がなかった。また、比較例6は本発明で示される(C)成分である水を含んでいない場合であるが、Hapを添加しても増粘は見られず、重合活性についても変化がなかった。
実施例9
(A)成分として10gのPM、(B)成分として1.0gのアビエチン酸(AE)、(C)成分として8.0gの水、(D)成分として10gのエタノール(EtOH)を量り取り、混合し本発明の前処理材を調製した。該前処理材を用いて、エナメル質、象牙質接着強度を測定した。前処理材の組成を表2に、エナメル質、象牙質に対する初期及び耐久性後の接着強度を表3示す。
実施例10〜20、比較例7〜11
実施例9の方法に準じ組成の異なる前処理材を調整した。前処理材の組成を表2に、接着強度の測定結果を表3に示す。
Figure 2007169231
Figure 2007169231
実施例9〜20は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、いずれの場合においても初期及び耐久性後において高い接着強度が得られている。
これに対して、比較例7〜9では、(A)成分である強酸性基含有重合性単量体が配合されていない為、初期接着強度および耐久性後の接着強度が低下している。比較例10は、(B)成分である、樹脂酸が配合されていない為、初期および耐久性後の接着強度が低下している。比較例11は(C)成分である水を配合していない為、歯質の脱灰力が弱く初期および耐久性後の接着強度が低下している。
実施例21
(A)成分として10gのPM、(B)成分として1.0gのアビエチン酸(AE)、(C)成分として2.5gの水、(E)成分として0.05gのCQ、0.05gのDMBEを量り取り、混合し本発明の接着材を調製した。該接着材を用いて、エナメル質、象牙質接着強度を測定した。接着材の組成を表4に、エナメル質、象牙質に対する初期及び耐久性後の接着強度を表5に示す。
実施例22〜30、比較例12〜16
実施例21の方法に準じ組成の異なる接着材を調整した。該接着材の組成を表4に、接着強度の測定結果を表5に示す。
Figure 2007169231
Figure 2007169231
実施例21〜30は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、いずれの場合においても初期及び耐久性後において高い接着強度が得られている。
これに対して、比較例12〜14では、(A)成分である強酸性基含有重合性単量体が配合されていない為、いずれの場合においても初期および耐久性後の接着強度が低下している。比較例15は(B)成分である樹脂酸が配合されていない為、初期および耐久性後の接着強度が低下している。比較例16は(C)成分である水を配合していない為、歯質の脱灰力が弱く、初期および耐久性後の接着強度が低下している。

Claims (4)

  1. (A)強酸性基含有重合性単量体、(B)樹脂酸、および(C)水を含有してなることを特徴とする歯科用組成物。
  2. (B)樹脂酸がロジン系樹脂酸である請求項1記載の歯科用組成物。
  3. 請求項1または請求項2記載の歯科用組成物に、さらに、(D)水溶性有機溶媒を含有してなることを特徴とする歯科用前処理材。
  4. 請求項1または請求項2記載の歯科用組成物に、さらに、(E)光重合開始剤を含有してなる歯科用接着材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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