JP2007168272A - 繊維強化プラスチック成形品の成形方法および繊維強化プラスチック成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】プリプレグを積層して得られる屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品を、強化繊維の乱れがなく、シワもなく、安価に確実に成形することができる繊維強化プラスチック成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】実質的に直線の稜線を持つ少なくとも一箇所以上の屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品1を成形型内で加熱加圧して得る成形方法において、熱硬化性樹脂をマトリックスとする強化繊維配向プリプレグ4の少なくとも2層以上の積層体であって、かつ、該積層体が、前記稜線に垂直な方向から30°以内の方向に強化繊維を配向したプリプレグ4を少なくとも1層以上含む平板状プリプレグ積層体として形成した後、この平板状プリプレグ積層体を成形型内に沿うように賦形する。
【選択図】図1
【解決手段】実質的に直線の稜線を持つ少なくとも一箇所以上の屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品1を成形型内で加熱加圧して得る成形方法において、熱硬化性樹脂をマトリックスとする強化繊維配向プリプレグ4の少なくとも2層以上の積層体であって、かつ、該積層体が、前記稜線に垂直な方向から30°以内の方向に強化繊維を配向したプリプレグ4を少なくとも1層以上含む平板状プリプレグ積層体として形成した後、この平板状プリプレグ積層体を成形型内に沿うように賦形する。
【選択図】図1
Description
本発明は、屈曲部での強化繊維の乱れの無い繊維強化プラスチック成形品の成形方法および繊維強化プラスチックに関するものである。
繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高いことや、強化繊維の種類や配向を適宜組み合わせることにより材料の物性を設計できることなどから、宇宙、航空機分野をはじめ、医療用品、スポーツ・レジャー用品、電気・電子機器用部品などに使用されている。
プリプレグを積層して得られる板状の繊維強化プラスチック成形品に屈曲部を設ける方法は、大きく分けて2通り存在する。
一つめの方法は、当初から成形品の形状にプリプレグを積層する方法で、従いわゆるハンドレイアップ法と呼ばれる成形法である。プリプレグの積層は、積層後に加熱、加圧して成形品を得るための成形型上で行うことも、成形型と同じ形状を持った積層専用の型を別に用意して、この型上で行うこともできる。この方法によると、屈曲部を有しつつ強化繊維の乱れがない、プリプレグを積層した板状の繊維強化プラスチック成形品を得ることが可能である。しかしながらこの方法では、屈曲部を有する形状に順次全てのプリプレグを積層する必要があるため、積層に手間を要することと、成形型上で積層を行う場合は、成形型の加熱と冷却に時間がかかること、また積層専用の型を用いる場合は、成形品の形状を持つ型を複数必要とすることより、成形に要するコストが高くなるという問題がある。
二つ目の方法は、プリプレグを平面上に積層し、得られた積層体を加熱下または常温下で型に沿うように加圧賦形する方法であり、いわゆるドレープ法と呼ばれる成形法である。しかしながらこの方法では、一旦平面状に積層したプリプレグ積層体全体を屈曲させるため、屈曲部の厚さ方向外側に位置するプリプレグと内側に位置するプリプレグで、屈曲部に垂直な面内での長さの違いが生じ、その結果成形体に強化繊維の乱れが生じるという問題があり、特に強化繊維の配向をそのまま外観意匠にする場合には、限界があった。
例えば特許文献1のように、かかるドレープ法の欠点を解決する手段も提案されているが、新たに副資材やそれを設置する手間を必要とするなど、成形に伴う廃棄物の増加や、工程の増加を伴うといった問題があった。
特開平6−71763号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点に対し、プリプレグを積層した屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品を、強化繊維の乱れがなく、シワもなく、安価に確実に成形することができる繊維強化プラスチック成形品の成形方法および繊維強化プラスチック成形品を提供せんとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック成形品の成形方法は、実質的に直線の稜線を持つ少なくとも一箇所以上の屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品を成形型内で加熱加圧して得る成形方法において、熱硬化性樹脂をマトリックスとする強化繊維配向プリプレグの少なくとも2層以上の積層体であって、かつ、該積層体が、前記稜線に垂直な方向から30°以内の方向に強化繊維を配向したプリプレグを少なくとも1層以上含む平板状プリプレグ積層体として形成した後、この平板状プリプレグ積層体を成形型内に沿うように加圧し、賦形することを特徴とするものである。
本発明によると、ドレープ法の欠点を、新たに副資材や皇帝の増加を伴わずに解決することができ、屈曲部を有しつつ強化繊維の乱れがない、プリプレグを積層した板状の繊維強化プラスチック成形品を、生産性良く得ることができる。
本発明の繊維強化プラスチック成形品の成形方法は、実質的に直線の稜線を持つ少なくとも一箇所以上の屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品を高品位に成形するために、少なくとも1層以上の屈曲部の稜線に対してに垂直な方向から30°以内の方向に強化繊維を配向した屈曲中立層を含むことを特徴とするものである。本発明では、角度は特に符号を伴わない場合は、絶対値で表すものとし、基準となる方向に対し、両方向を含むものとする。すなわち30度以内とは基準となる方向に対し、−30°〜+30°を表すこととする。
少なくとも2層以上のプリプレグからなる平板状プリプレグ積層体を、成形型内において加熱加圧して屈曲した成形品を成形する場合、プリプレグの各層間が容易に剪断方向に相対移動できない限り、屈曲部において、曲率内側の層は稜線と垂直な断面内の長さが短くなり、曲率外側の層は稜線と垂直な断面内の長さが長くなる。通常、プリプレグは作業性向上のためタック粘着性(タック性ともいう)を有しており、各層間は容易には剪断方向に相対移動できないので、平板状プリプレグ積層体を屈曲させる場合、その屈曲部において、内側の層にはシワが入り、外側の層は引き延ばされて繊維目が開く方向に繊維配向の乱れを生じる。
ここで、上記のような屈曲中立層を配置すると、この層は、他の層と比較して屈曲部の稜線に垂直な断面内方向の引張および圧縮剛性が高いため、屈曲部では、この層を長さの変化しない中立位置として、各層の長さの変化が生じる。すなわち、この層よりも内側では、この層から離れるに従って稜線と垂直な断面内の長さが短くなり、この層よりも外側では、この層から離れるに従って稜線と垂直な断面内の長さが長くなる。
従って、屈曲部全体から見ての位置に関係なく、この層の近くに配置された層では、屈曲部において稜線と垂直な断面内の長さの変化が小さくなり、シワの発生や繊維配向の乱れを小さくすることが可能となる。
本発明における成形材料は熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグの積層体である。プリプレグの強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられ、成形品の用途による要求特性に応じて選択することができるが、本発明の、屈曲中立層の強化繊維には、強化繊維の乱れを効果的に防ぐ観点から、最も弾性率が高い炭素繊維を用いることが好ましい。また、本発明におけるプリプレグのマトリックス樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられるが、成形品の表面品位、成形性からエポキシ樹脂が好ましい。
本発明の対象とする成形プロセスは、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグの積層体を加圧すると同時に加熱硬化して板状の成形品を得るプロセスであるが、その方法は特に限定されるものではない。例えば、加熱された一対の成形型間に油圧等により加圧力を加えるプレス法や、一つの成形型上に配置したプリプレグの積層体の上にバッグフィルムを配置し、成形型とバッグフィルム間を真空吸引することにより加圧力を得るバッグ法、さらにバッグフィルムの外側を気体で加圧するオートクレーブ法等が挙げられるが、いずれの成形プロセスも用いることが可能であり、成形品の要求特性やマトリックス樹脂の種類に応じて選択することができる。
成形品の形状は、少なくとも一箇所以上の実質上直線と見なせる屈曲部を有する板状のものとなる。具体的にはL字形やコ字形、Z字形、扇形等の断面を有した梁や矩形板、またこれらを組み合わせた形状、例えばハット形断面の梁や矩形板、波板などが挙げられる。
本発明における成形品では、少なくとも一箇所以上の実質上直線と見なせる屈曲部を有すると共に、少なくとも1層以上の屈曲中立層を含む。
プリプレグを平面上に積層し、得られた積層体を加熱下または常温下で型に沿うように加圧賦形する場合、屈曲部の曲率外側に位置するプリプレグと曲率内側に位置するプリプレグで、屈曲部の稜線に垂直な断面内での長さの違いが生じる。この長さの違いは、屈曲部における板厚t(mm)、および屈曲部の開始位置と終了位置における板の法線のなす角度θ(°)から式(1)により算出される。
2π×t×θ/360 ・・・(1)
このとき、一旦積層したプリプレグの各層の間は、プリプレグ自身の持つタック性により粘着しているため、長さ方向の違いをプリプレグ各層間の相対的な移動によって吸収することはできない。その結果、長さが大きくなる層では強化繊維の配列間隔が開いたり、長さが小さくなる層ではしわが寄って強化繊維の直線性が失われる等、強化繊維の乱れが生じる。特に、上記の式(1)で算出される長さの違いが0.5(mm)以上になると、強化繊維の乱れが大きくなり、成形品の強度や剛性を低下させるばかりでなく、特に強化繊維の配向をそのまま外観意匠にする場合には外観上の欠点となり、実用上問題となる。
このとき、一旦積層したプリプレグの各層の間は、プリプレグ自身の持つタック性により粘着しているため、長さ方向の違いをプリプレグ各層間の相対的な移動によって吸収することはできない。その結果、長さが大きくなる層では強化繊維の配列間隔が開いたり、長さが小さくなる層ではしわが寄って強化繊維の直線性が失われる等、強化繊維の乱れが生じる。特に、上記の式(1)で算出される長さの違いが0.5(mm)以上になると、強化繊維の乱れが大きくなり、成形品の強度や剛性を低下させるばかりでなく、特に強化繊維の配向をそのまま外観意匠にする場合には外観上の欠点となり、実用上問題となる。
本発明の繊維強化プラスチック成形品は、上記のようなプリプレグの積層体を高品位に成形するために、少なくとも1層以上の屈曲中立層を含むことを特徴とするものである。屈曲中立層は、他の層と比較して屈曲部の稜線に垂直な断面内方向の引張および圧縮剛性が高いため、先に述べたようにこの層の近くでは屈曲部における長さの変化が小さくなり、強化繊維の乱れを防ぐことができる。従来、強化繊維の配向は、成形品に必要な各方向の強度および剛性を満たすべく設計されてきたが、本発明ではさらに、屈曲部での強化繊維の乱れを防ぐことを強化繊維の配向を決定する設計要件に加える点で意義が大きいものである。
強化繊維の乱れを防ぐ効果をより高めるためには、この層の屈曲部の稜線に垂直な断面内方向の引張および圧縮剛性を高め、屈曲部における長さの変化をより小さくすることが好ましい。従って、この層の強化繊維は、屈曲部の稜線に対して垂直な方向に近いほど好ましい。また、この層の強化繊維には、弾性率の高い炭素繊維を用いることが好ましい。
先に述べたように、屈曲中立層による屈曲部における強化繊維の乱れを防ぐ効果は、この層に隣接または比較的近い位置にある層に対して特に有効に発揮される。この層の屈曲部の稜線に垂直な断面内方向の引張および圧縮剛性が高いため、この層においては屈曲部における長さの変化が小さくなるが、この層からの厚さ方向の距離が大きくなるに従って、屈曲部の曲率外側では屈曲部の稜線に垂直な断面内での長さが長くなるため、その結果強化繊維の配列間隔が開きやすくなり、また、屈曲部の曲率内側では屈曲部の稜線に垂直な断面内での長さが短くなるため、しわが寄って強化繊維の直線性が失われやすくなる。従って、屈曲中立層は、積層された各プリプレグ層の中でも、特に強化繊維の配向の乱れを防ぎたい層、例えば強化繊維の配向をそのまま外観意匠とする層や、成形品の剛性に最も影響を及ぼす層に隣接して配することが望ましい。
また、板状の繊維強化プラスチック成形品内に、屈曲中立層を複数配置することもでき、この形態も本発明に含まれる。これらの層を複数配置した場合は、これらの各々の層について屈曲部における長さの変化が小さくなるため、これらの層間あるいはこれらの層の間に位置する層の層間では、平面状のプリプレグ積層体を加熱下または常温下で型に沿うように加圧賦形する際に、層間の粘着力に逆らって各層の屈曲部における長さの変化を小さくする方向に内部に力が作用する。このため、屈曲中立層の間に位置する層について、全体的に強化繊維の配列間隔の開きやしわの発生を防ぎ、効果繊維の配向の乱れを防止することが可能となる。
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施態様にかかる繊維強化プラスチック成形品の部分断面図である。
図1において、1は繊維強化プラスチック成形品であり、本実施態様では直線状の一箇所の屈曲部2を有するL字形断面をした梁状をしている。一般的に、このような梁構造体は、その長さ方向に高い曲げ剛性を必要とすることが多く、長さ方向に近い方向に強化繊維を配向したプリプレグ4を主体とした積層構成を採用することが多い。このような積層構成では、プリプレグを平面上に積層し、得られた積層体を加熱下または常温下で型に沿うように加圧賦形する方法を採用した場合、屈曲部において長さが大きくなる層である曲率外側において、強化繊維の配列間隔が開いて屈曲部やその近辺の強化繊維配向が乱れ、成形品の強度や剛性、また外観品位を損なう結果となることが多い。
3は屈曲中立層であり、図1に示す実施態様では、曲率外側から2層めに配置され、強化繊維は屈曲部の稜線に対して垂直な方向に配向されている。この層は屈曲部の稜線に対して垂直な断面内の引張、圧縮に対して剛性が高く、加圧賦形時にも長さの変化はほとんどない。このため、曲率外側の層での屈曲部における強化繊維の乱れを防ぎ、成形品の強度や剛性、また外観品位を良好に保つことができる。
図2は、本発明の別の実施態様にかかる繊維強化プラスチック成形品の部分断面図である。
図2において、1は繊維強化プラスチック成形品であり、本実施態様では直線状の二箇所の屈曲部2を有するコ字形断面をした箱状をしている。例えば、コ字形状の内側に別の部材を取り付ける場合など、内側の寸法精度が重要になる場合は、プリプレグを平面上に積層し、得られた積層体を加熱下または常温下で型に沿うように加圧賦形する方法を採用した場合、屈曲部において長さが小さくなる層である曲率内側において、プリプレグにしわが寄って屈曲部やその近辺の強化繊維配向が乱れ、成形品の内側寸法精度が落ちることがある。
3は屈曲中立層であり、図2に示す実施態様では、曲率内側の最外層に配置され、強化繊維は屈曲部の稜線に対して垂直な方向に配向されている。この層は屈曲部の稜線に対して垂直な面内での引張、圧縮に対して剛性が高く、加圧賦形時にも長さの変化はほとんどない。このため、曲率内側での屈曲部における強化繊維の乱れを防ぎ、成形品の内側寸法精度を良好に保つことができる。
図3は、本発明における平板状プリプレグ積層体の一例を示すのものである。図3の積層構成にて作成された平板状プリプレグ積層体を、図4に示す型内にて加圧、賦形した後、そのまま加熱硬化してコ字状断面を持った板状の繊維強化プラスチック成形品を得、さらに不要部を機械加工により切除して、図5に示す箱状の繊維強化プラスチック製品を得ることができる。この場合、図5の屈曲部2の稜線に対して、図3の3に示す層が、屈曲中立層となる。
図6は、図3と比較して本発明の特徴を示すための比較例となる平板状プリプレグ積層体の一例を示すのものである。図6の積層構成にて作成された平板状プリプレグ積層体を、図4に示す型内にて加圧、賦形した後、そのまま加熱硬化してコ字状断面を持った板状の繊維強化プラスチック成形品を得、さらに不要部を機械加工により切除して、図5に示す箱状の繊維強化プラスチック製品を得ることができる。この場合、図6に示す各層は、いずれも本発明の特徴である屈曲中立層に相当しない。
実施例1
図3に示すように、300mm×700mmにカットされた東レ株式会社製「トレカ(登録商標)プリプレグ」を、長手方向を0°方向として、45°/−45°/90°/―45°/45°に5層、平面上に積層したプリプレグ積層体を作成し、図4に示す270mm×630mm(外周部除く)の金型にて加圧、賦形した後、そのまま加熱硬化してコ字形断面を持った板状の繊維強化プラスチック成形品を得、さらに不要部を機械加工により切除して、図5に示すようなコ字形断面を持った150mm×270mm×5mmの箱状の繊維強化プラスチック製品を得た。この成形品の厚さは0.7mmであったので、90°の角度をなす屈曲部における、曲率外側に位置するプリプレグと曲率内側に位置するプリプレグとの間の長さの差は、式(1)より約1.1mmであった。このとき、プリプレグ積層体と金型の間には、賦形前に離型フィルムを設置し、また、金型はあらかじめ160℃に昇温しておいた。金型の630mm長さの辺は、型締め時のクリアランス形状が上下方向に5mmの垂直面を持つように、上型の外周部が下方に張り出している。賦形はおよそ5mm/秒の型締め速度で行い、型締め後の加圧力は60t、加圧時間は20分とした。
図3に示すように、300mm×700mmにカットされた東レ株式会社製「トレカ(登録商標)プリプレグ」を、長手方向を0°方向として、45°/−45°/90°/―45°/45°に5層、平面上に積層したプリプレグ積層体を作成し、図4に示す270mm×630mm(外周部除く)の金型にて加圧、賦形した後、そのまま加熱硬化してコ字形断面を持った板状の繊維強化プラスチック成形品を得、さらに不要部を機械加工により切除して、図5に示すようなコ字形断面を持った150mm×270mm×5mmの箱状の繊維強化プラスチック製品を得た。この成形品の厚さは0.7mmであったので、90°の角度をなす屈曲部における、曲率外側に位置するプリプレグと曲率内側に位置するプリプレグとの間の長さの差は、式(1)より約1.1mmであった。このとき、プリプレグ積層体と金型の間には、賦形前に離型フィルムを設置し、また、金型はあらかじめ160℃に昇温しておいた。金型の630mm長さの辺は、型締め時のクリアランス形状が上下方向に5mmの垂直面を持つように、上型の外周部が下方に張り出している。賦形はおよそ5mm/秒の型締め速度で行い、型締め後の加圧力は60t、加圧時間は20分とした。
得られた製品は、屈曲部の曲率外側を含む面全面を体裁面とし、45°方向の強化繊維の配向をそのまま外観意匠にするものであるが、本実施例では、図3に示す積層構成で、中央の90°層が本発明の特徴である屈曲中立層3に相当するので、屈曲部およびその付近においても強化繊維の乱れはなく、良好な状態であった。
比較例1
図6に示すように、300mm×700mmにカットされた東レ株式会社製「トレカ(登録商標)プリプレグ」を、長手方向を0°方向として、45°/−45°/0°/―45°/45°に5層、平面上に積層したプリプレグ積層体を作成し、以降は実施例1と全く同様にして、箱状の繊維強化プラスチック製品を得た。
図6に示すように、300mm×700mmにカットされた東レ株式会社製「トレカ(登録商標)プリプレグ」を、長手方向を0°方向として、45°/−45°/0°/―45°/45°に5層、平面上に積層したプリプレグ積層体を作成し、以降は実施例1と全く同様にして、箱状の繊維強化プラスチック製品を得た。
得られた製品は、本発明の特徴である屈曲中立層が配置されておらず、屈曲部の曲率外側最外層である45°層において、屈曲部を起点とすると考えられる強化繊維の配列間隔の開きが生じており、強化繊維の配向をそのまま外観意匠とするのに適した製品は得られなかった。また、隣接する−45°層にも生じた強化繊維の配列間隔の開きにより、外側表面に−45°方向の凹みが認められた。
本発明は、X線カセッテ、密着板、X線装置天板などの医療用品、スキー板、スノーボード板や競技用自転車のホイールなどのスポーツ・レジャー用品、ノートパソコン筐体などの電気・電子機器用部品に広く利用することができるが、その応用範囲は、これらに限られるものではなく、多層プリント板のプレス成形などにも利用することができる。
1:繊維強化プラスチック成形品
2:屈曲部
3:屈曲中立層
4:プリプレグ
5:上型
6:下型
2:屈曲部
3:屈曲中立層
4:プリプレグ
5:上型
6:下型
Claims (11)
- 実質的に直線の稜線を持つ少なくとも一箇所以上の屈曲部を有する繊維強化プラスチック成形品を成形型内で加熱加圧して得る成形方法において、熱硬化性樹脂をマトリックスとする強化繊維配向プリプレグの少なくとも2層以上の積層体であって、かつ、該積層体が、前記稜線に垂直な方向から30°以内の方向に強化繊維を配向した屈曲中立層を少なくとも1層以上含む平板状プリプレグ積層体として形成した後、この平板状プリプレグ積層体を成形型内に沿うように加圧し、賦形することを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 賦形後前記成形型上で加熱硬化させることにより成形品を得ることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 成形品の形状が、L字状の同一断面を持つ棒状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 成形品の形状が、コ字状の同一断面を持つ棒状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 前記屈曲中立層が、屈曲部の曲率外側から3層目までに配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 前記屈曲中立層が、屈曲部の曲率内側の1層目に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 前記屈曲中立層の強化繊維配向方向が、屈曲部の稜線に対して5°以内の方向であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 前記屈曲中立層の強化繊維が炭素繊維であるであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の成形方法により成形されたものである繊維強化プラスチック成形品。
- 屈曲部における板厚t(mm)、および屈曲部の開始位置と終了位置における板の法線のなす角度θ(°)から式(1)により算出される値が、0.5mm以上であることを特徴とする、請求項9に記載の繊維強化プラスチック成形品
2π×t×θ/360 ・・・(1) - 電子機器用筐体の板状部に、請求項9または10に記載の繊維強化プラスチック成形品を用いたことを特徴とする電子機器用筐体。
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