JP2007161586A - カバノアナタケ抽出液、カバノアナタケ抽出液の製造方法、カバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法、カバノアナタケ抽出液を果実・野菜・花卉に使用する方法、カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法 - Google Patents

カバノアナタケ抽出液、カバノアナタケ抽出液の製造方法、カバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法、カバノアナタケ抽出液を果実・野菜・花卉に使用する方法、カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物の生命力を高めて収穫物を増量したり、耐病性や耐菌性を高める用途に用いられる植物活性剤に用いて好適な、カバノアナタケ抽出液を提供する。
【解決手段】原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケを、当該カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸しS100、S102、その後当該水を基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出させたS104ことを特徴としている。
【効果】穀物、果実、野菜などの植物性食品を生産する植物に使用すると、生産性を高めたり食味を良くすると共に、花卉や観葉植物のように食用以外の用途の植物についても生命力を高めて耐病性や耐菌性を高める。
【選択図】 図1

Description

本発明は、植物の生命力を高めて収穫物を増量したり、耐病性や耐菌性を高める用途に用いられる植物活性剤に用いて好適な、カバノアナタケ抽出液に関する。また本発明は、カバノアナタケに含有される植物活性作用を有する有効成分を効果的に抽出するカバノアナタケ抽出液の製造方法に関する。また本発明は、カバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法、果実・野菜・花卉に使用する方法、並びにファレノプシスに対して使用する方法に関する。
植物活性剤とは、穀物や果実などの植物性食品の生産性を高めたり食味を良くすると共に、花卉や観葉植物のように食用以外の用途の植物についても生命力を高めて耐病性や耐菌性を高める用途に用いられるものである。また、カバノアナタケとは、担子菌類サルノコシカケ科に属するサビアナタケ属、カバノアナタケ属の菌核で、学名はInonotus obliquus又はFuscopiria obliquaである。カバノアナタケは、古来ロシアではチャーガの名称で飲用されているキノコの菌核で、ノーベル賞作家ソルジェニーツインの作品「癌病棟」で紹介されて、その効能が知られるようになって来た。例えば、特許文献1にはカバノアナタケの抽出物からなる抗がん性物質が提案されている。
ここで、チャーガの菌核とは、子実体(キノコ)ではなく、菌糸体(第2次菌糸体)でもなく、子実体と同じ第3次菌糸体が栄養分をためて塊になったものである。第3次菌糸体の栄養分は、子実体の育成に使われる。ところが、菌核の細胞壁はキチン質や高分子のβーD−グルカン等で構成されていて固いので、煎じる等の抽出方法ではβーD−グルカン等の多糖類の遊離が少ない。そこで、細胞壁を破砕すれば高分子の結合が解けて遊離するので、吸水性が向する。そして、例えば、特許文献2にはカバノアナタケ等の有効成分を効率良く抽出する方法が提案されている。
そして、チャーガは無味無臭であるが、エキス末(純粋末)に加工すると俄然、強烈な苦味が出てくる。また、エキス末に加工するとSOD(活性酸素除去酵素)の数値が跳ね上がる特性がある。SODは最近世界的に注目を集め、βーD−グルカンとは異なる価値を評価されている。
特開平10−323168号公報 段落番号0002 特開2002−262820号公報
ところで、本発明者がカバノアナタケの用途について、飲用などの人の利用以外にも効用があるのではないかと、鋭意検討を加えた。現在のように、飲用等の用途に限定されている場合には、消費量が限定されている為に生産の振興が充分でないと共に、カバノアナタケの用途が拡大して量産が必要な規模に需要が増大すれば、量産化に伴ってカバノアナタケの単価も低減する可能性があるからである。しかし、例えば植物に使用する場合に、カバノアナタケの効用がどのような態様であるか判明していないと、カバノアナタケの使用態様が明らかでないという課題があった。
本発明は上述した課題を解決するもので、第1の目的は、植物の生命力を高めて収穫物を増量したり、耐病性や耐菌性を高める用途に用いられる植物活性剤に用いて好適な、カバノアナタケ抽出液を提供することである。第2の目的は、カバノアナタケに含有される植物活性作用を有する有効成分を効果的に抽出するカバノアナタケ抽出液の製造方法を提供することである。第3の目的は、カバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法を提供することである。第4の目的は、カバノアナタケ抽出液を果実・野菜・花卉に使用する方法を提供することである。第5の目的は、カバノアナタケ抽出液を花卉の代表的品種であるファレノプシスに対して使用する方法を提供することである。
上記第1の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液は、例えば図1に示すように、原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケを、当該カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸し(S100、S102)、その後当該水を基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出させた(S104)ことを特徴としている。
このように構成されたカバノアナタケ抽出液においては、原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケが沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸されるので、カバノアナタケの菌核の細胞壁を構成するキチン質やβーD−グルカン等が水分を含有して、菌核の細胞壁を通過してカバノアナタケの有効成分が抽出用の温水に溶出しやすくなる。沸点よりも2〜4℃程度低い準沸騰温度に維持して、少ない熱エネルギーでカバノアナタケ粉末を煮沸してもよく、また沸騰点で煮沸してもよい。次に、当該沸騰水を基準抽出温度に抽出保持時間維持する。基準抽出温度は水の沸点温度に比較して低い、例えば70℃程度に定められるので、カバノアナタケの有効成分のうち、高温で組成が変化しやすいアミノ酸や蛋白質の変性が防止できる。また、抽出保持時間は、例えば半日〜2日程度に定められる為、基準抽出温度の温水中で煎じることで、カバノアナタケの有効成分におけるカバノアナタケ内から抽出液中への溶出割合を増大させる。なお、カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水の量は、植物にカバノアナタケ抽出液を供給する際の、カバノアナタケ抽出液の有効成分が一意に定まる値とするのがよく、例えばカバノアナタケ10gに対して水1リットルとする。
好ましくは、本発明のカバノアナタケ抽出液において、例えば図1に示すように、カバノアナタケ抽出液において、さらに、所定粒径以上の微粉末を濾過により除去する(S108)とよい。微粉末を含むカバノアナタケ抽出液を果実、葉野菜や花卉に噴霧すると、微粉末が葉や花弁に付着することにより、微粉末の乾燥に起因して葉や花弁の色彩にムラを発生させるような被害を与える危険がある。また、農薬噴霧等と併用する場合には、噴霧器の管路が微粉末によって閉塞すると除去作業や清掃作業が煩雑になる。そこで、微粉末を濾過により除去して、カバノアナタケ抽出液の使用態様の範囲を広くする。そこで、「所定粒径以上の微粉末」とは、農薬噴霧器の管路が閉塞するような粒径の微粉末や、葉や花弁の色彩にムラを発生させる程度の粒径の微粉末を言い、例えば粒径0.1〜0.2mmφのものをいう。
好ましくは、本発明のカバノアナタケ抽出液において、例えば図1に示すように、カバノアナタケ抽出液において、さらに、当該カバノアナタケ抽出液を冷蔵温度で、少なくとも1週間以上の熟成期間の間、保持する(S110)とよい。冷蔵温度で熟成を行なうことは、リグニン等の栽培植物に不要な成分を一定程度分解し、かつ諸成分の安定的な混合をはかることによって、カバノアナタケ抽出液の植物活性液としての効用をより高めるためである。
好ましくは、本発明のカバノアナタケ抽出液において、例えば図1に示すように、カバノアナタケ抽出液において、さらに、使用対象となる植物の生長に必要とされるミネラル等の微量成分を所定比率で添加する(S112)とよい。カバノアナタケ抽出液は植物の生長を促進する作用がある。生長が速いということは、植物が通常より栄養素を余計に摂取するということである。そこで、カバノアナタケ抽出液にミネラル等の微量成分を添加して、利用者においてミネラル等の微量成分を植物に供給する手間を省くことができる。
好ましくは、本発明のカバノアナタケ抽出液において、例えば図1に示すように、カバノアナタケ抽出液において、さらに、褐藻類抽出液を所定比率で添加する(S112)とよい。褐藻類は、添加するミネラル等の微量成分の供給源として有用である。褐藻類には、成長ホルモンの一種であるオーキシンが含まれており、これがカバノアナタケの成分とあいまって生長促進効果をもたらす。
上記第2の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液の製造方法は、例えば図1に示すように、原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケを、当該カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸するステップ(S100、S102)と、その後当該水を基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出させるステップ(S104)と、所定粒径以上の微粉末を濾過により除去するステップ(S108)とを有する。好ましくは、更に当該カバノアナタケ抽出液を冷蔵温度で、少なくとも1週間以上の熟成期間の間、保持するステップ(S110)を追加しても良く、更に使用対象となる植物の生長に必要とされるミネラル等の微量成分を所定比率で添加するステップ(S112)を附加しても良い。
上記第3の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法は、カバノアナタケ抽出液を水田に使用する時期が、田植えの後10〜15日、穂孕期、出穂期の少なくとも何れか一回に対応することを特徴とする。田植えの後10〜15日は、最初の除草剤の効果が切れるころであり、カバノアナタケ抽出液の有効成分が効果的に稲に吸収されると共に、雑草に吸収されて雑草が繁茂する事態を未然に防止できる。穂孕期は、水を最も必要とする時期であり、稲の成長が最も旺盛となっているため、カバノアナタケ抽出液の有効成分が稲の生育に対して効果的に寄与する。出穂期は、開花の直前であり、カバノアナタケ抽出液の有効成分が稲粒の結実に寄与する。
上記第4の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液を果実、野菜又は花卉の少なくとも1種類に使用する方法は、前記使用の時期が前記果実、野菜又は花卉の少なくとも1種類についての農薬散布の時期に、前記農薬散布の薬液にカバノアナタケ抽出液を混和して、当該果実、野菜又は花卉に使用することを特徴とする。農薬散布の時期に同期してカバノアナタケ抽出液を果実・野菜・花卉に対して使用することで、利用者のカバノアナタケ抽出液の散布負荷を軽減する。また、農薬散布の時期は通常果実、野菜又は花卉の生育段階に合わせて適切な時期に設定されるので、この散布時期と同期することでカバノアナタケ抽出液の植物活性剤としての効用にも大略合致した周期での使用となる。
上記第5の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法において、前記使用の時期は、前記ファレノプシスの幼苗が、寄せ植え鉢に数本まとめて寄せ植えされた段階、当該寄せ植えされた苗が成長して一本毎に個別の育成鉢に植え替えた段階、もしくは個別の育成鉢から栄養生長用の個別の栄養生長鉢に植え替えた段階の少なくとも一つの段階を含んで、使用することを特徴とする。カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用することで、ファレノプシスの栄養生長と生殖生長が同時に促進されるので、栄養生長段階で多数の開花を栄養面で支える葉と根を増やし生長させると共に、併せて生殖生長が促進されて花を多くすることができる。
上記第5の目的を達成する本発明のカバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法において、前記使用の時期は、前記ファレノプシスの幼苗が、寄せ植え鉢に数本まとめて寄せ植えされた段階、当該寄せ植えされた苗が成長して一本毎に個別の育成鉢に植え替えた段階、個別の育成鉢から栄養生長用の個別の栄養生長鉢に植え替えた段階、もしくは花芽が出現してから開花するまでの段階の少なくとも一つの段階を含んで、使用することを特徴とする。カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用することで、ファレノプシスの耐寒性、耐暑性が強化されるので、ファレノプシスを育成し、生殖生長させ、生殖生長させ、或いは開花させる温室内の温度調整範囲を拡大することが可能となる。
本発明のカバノアナタケ抽出液によれば、穀物、果実、野菜などの植物性食品を生産する植物に使用すると生産性を高めたり食味を良くすると共に、花卉や観葉植物のように食用以外の用途の植物についても、栄養生長と生殖生長を同時に促進することによって、生命力を高めて耐病性や耐菌性を高める。更に、栽培植物の耐寒性、耐暑性、耐病性も強化される。
そこで、例えば地球温暖化現象によって植物の生育環境が変化しても、植物の活性が高まって、環境変化に対応して収穫が維持できる。また穀物、果実、野菜などの植物性食品を生産する植物に使用すると、食料増産に寄与して、飢餓の撲滅にも寄与する。更に、栽培植物の耐寒性・耐暑性が強まる効用は、ハウス栽培の場合に顕著であって、暖房・冷房用のエネルギーを削減することができ、燃料代が少なくて済みコスト節減をもたらす。特に、原油価格の上昇が生じている期間において、栽培植物の耐寒性・耐暑性を高めるカバノアナタケ抽出液の経済効果は大きくなる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、カバノアナタケを用いた植物活性剤の精製方法の一例を示す流れ図である。図において、まず水1リットル当たりカバノアナタケ10gの割合で、材料を準備する(S100)。カバノアナタケは、水によるカバノアナタケの有効成分の抽出に適するような粒度分布の粉末や形状とするのが良い。例えば、粉末にする場合は機械的な粉砕機により0.5〜5.0mmφ程度の粉末とする。また、カバノアナタケを小割りする場合は、25〜50mmφ程度の塊とする。また、カバノアナタケを原状で用いても良い。
カバノアナタケは、乾燥体としての重量で、水分を含まない重さとする。従って、カバノアナタケが生体で水分を含有している場合は、この含有水分を考慮して抽出用の水の量を加減する。カバノアナタケ抽出液は、稀釈して植物に供給されることが予定されているので、冷却してもカバノアナタケの有効成分が析出して沈殿するのが防止できる濃度が維持できればたりる。また稀釈を前提にすれば、カバノアナタケの有効成分の含有量が問題となるため、カバノアナタケ10gに対して水の量は一定値とし、例えば1リットルや2リットル等の統一された値を用いる。
次に、カバノアナタケ粉末を、例えば水温96℃の温水中で30分間煮沸する(S102)。この煮沸時間と水温は、水の沸点温度付近におけるカバノアナタケの有効成分の抽出に適するものであればよく、例えば圧力容器を用いて水の沸点温度を102℃〜105℃程度にする場合には、これに応じて煮沸時間を短くし、例えば1/2〜1/3程度にしてもよい。沸騰点で温度維持することは、水の蒸発潜熱により大量の熱エネルギーを消費するため、熱効率の点から好ましくない。そこで、沸点よりも2〜4℃程度低い準沸騰温度に維持して、少ない熱エネルギーでカバノアナタケ粉末を煮沸する。沸騰水にカバノアナタケ粉末を浸すことで、菌核の細胞壁を構成するキチン質やβーD−グルカン等が水分を含有して、菌核の細胞壁を通過してカバノアナタケの有効成分が抽出用の温水に溶出しやすくなる。
カバノアナタケは多糖類、配糖体、アミノ酸、ミネラル類、ビタミン類等の非常に多くの天然成分を含有しているが、それらの有効成分のうち、沸点付近での煮沸で抽出しやすいもの(たとえば抗酸化活性物質)と長時間の沸点付近での煮沸では分解しやすいもの(たとえばβグルカンの一部)がある。そこで、沸点付近での煮沸を20分乃至1時間の比較的短時間として菌核の細胞壁を柔軟にすると共に、長時間の沸点付近での煮沸下で分解することを防止する。
次に、水の沸点温度付近に加熱したカバノアナタケの含有液を、例えば基準抽出温度としての70℃の温水中に、抽出保持時間としての8時間程度維持し、温水中に水溶性成分を抽出する(S104)。例えば、水温70℃の温水中で半日程度維持することで、菌核の細胞壁を通過してカバノアナタケの有効成分が抽出用の温水に溶出する。基準抽出温度は水の沸点温度に比較して低いので、カバノアナタケの有効成分のうち、高温で組成が変化しやすいアミノ酸や蛋白質の変性が防止できる。また、抽出保持時間の間、基準抽出温度の温水中で煎じることで、カバノアナタケの有効成分がカバノアナタケ内から抽出液中への溶出割合を増大させる。ここでは、アーレニウスの式を適用して、基準抽出温度70℃での抽出保持時間である8時間を基準として、60℃では抽出保持時間を24時間程度とし、80℃では抽出保持時間を3時間程度とするように、抽出保持時間を適宜調整するとよい。
次に、濾過した大略基準抽出温度のカバノアナタケの含有液を、例えば室温で25時間冷却し、抽出液中への水溶性成分の抽出を継続する(S106)。微粉末を濾過した基準抽出温度の溶液を室温に冷却し、カバノアナタケの有効成分がカバノアナタケ内から抽出液へ溶出することを継続すると共に、次工程である濾過作業を容易にする。
次に、抽出液中に含まれる微粉末を濾過により除去する(S108)。この微粉末の濾過には、例えば市販のコーヒーフィルタを用いることができる。S106で得られる抽出液中には、微細なカバノアナタケの微粉末が浮遊している。そこで、例えば稲作のように水田に散布する態様では、この微粉末が害にならないため直接利用できる。また、露天栽培のように一定の降水を予定している場合には、この微粉末は大気中の塵埃程度の作用をするに過ぎないから、微粉末が抽出液に残存していてもよい。
しかし、S106で得られる抽出液をそのままビニールハウス栽培での葉や花弁に用いると、抽出液に残存する微粉末が葉や花弁に付着し、葉や花弁の色彩にムラが生じたり、花弁から生じる果実に微粉末に起因する被害が生ずる蓋然性がある。また、農薬噴霧等と併用する場合には、噴霧器の管路が微粉末によって閉塞すると除去作業や清掃作業が煩雑になる。さらに、植物に付着した微粉末の内部に有効成分が残存し、それが葉や果実や花の表面に漏れ出た場合、その濃度は原液に近くなる。溶液は希釈されていても、微粉末付着部分は高濃度のカバノアナタケのエキスにさらされる。一般に、高濃度のカバノアナタケのエキスは、濃厚過ぎて植物の生育には却って有害である。したがって、カバノアナタケ抽出液を園芸植物や果樹園などの用途で使用する為に、微粉末の除去を行なっている。
次に、抽出液を例えば冷蔵温度(例えば3℃〜7℃)で1週間乃至数ヶ月熟成する(S110)。熟成期間は、カバノアナタケ抽出液の冷蔵庫での低温熟成温度にも依存するが、好ましくは1ヶ月程度とするのが、カバノアナタケ抽出液の生産効率からは好ましい。低温熟成を行なうのは、リグニン等の栽培植物に不要な成分を一定程度分解し、かつ諸成分の安定的な混合をはかることによって、植物活性液としての効果をより高めるためである。氷点下以下で保存することは、液体中の低温熟成に得られる有効成分の安定的な混合ができない。また、低温熟成でなく常温熟成したのでは、混入する雑菌の繁殖によって1ヶ月以上の長期間の保存に適さない。
次に、カバノアナタケ抽出液に、ミネラル等の微量成分を一定比率で添加する(S112)。カバノアナタケ抽出液は植物の生長を促進する作用がある。生長が速いということは、植物が通常より栄養素を余計に摂取するということである。そのうち肥料成分は使用者が追加的な施肥によって補充するが、ミネラル等の微量成分もまた補充しなければならない。カバノアナタケ抽出液にミネラル等の微量成分を添加するのは、その微量成分を前もってカバノアナタケ抽出液中に補充しておくという意味がある。なお、ミネラル等の微量成分の添加は、使用者がミネラル等の不足しがちな成分を含む農業資材を併用してもよい。
好ましくは、添加するミネラル等の微量成分として、例えば褐藻類を用いる。添加するミネラル等の微量成分の供給資材としては、経済性(たとえばコンブは高価すぎる)と水溶性(単なる乾燥粉末では水に溶けない)の二点を考慮してなされる。使用量は、例えばカバノアナタケ抽出液1リットルに対し褐藻類10gを添加する。褐藻類には、成長ホルモンの一種であるオーキシンが含まれており、これがカバノアナタケの成分とあいまって生長促進効果をもたらしていると推測される。なお、添加するミネラル等の微量成分はマグネシーム、カリウム等褐藻類で補充できるものであり、褐藻類に代えてカバノアナタケ抽出物では不足するミネラル等の微量成分の添加剤として、具体的には魚介類の内臓や骨・頭や畜産物の内臓や骨・頭、プランクトンや、工業的に生産される化学物質(添加剤)でもよい。
そして、S112で調整されたカバノアナタケ抽出液を植物活性液として、使用者向けに出荷する(S114)。使用者は、カバノアナタケ抽出液を栽培する植物に対して、適切な量を適切な時期に適切な態様で使用する。一般には、S112で調整されたカバノアナタケ抽出液(原液)を一定倍率で稀釈して用いることで、栽培植物に適した量のカバノアナタケ抽出液の有効成分を供給する。
なお、カバノアナタケ抽出液の製造方法としては、カバノアナタケの形状と濾過の形態により、以下の組合せが考え得る。第1は、カバノアナタケの粉末(0.5〜5.0mmφ)から煮沸抽出+加熱抽出の組合せを併用するものであるが、実施例で摘示した1時間乃至一日程度の抽出時間と比較して、一桁程度短い時間の抽出を行なうもので、真空引き等で布フィルターを用いて強力に濾過するものである。第2は、カバノアナタケの小さい塊(30〜50mmφ)から、実施例に示すような煮沸抽出+加熱抽出の組合せを併用した1時間乃至一日程度の時間抽出し、紙製フィルター等で重力式で簡易に濾過するものである。第3は、カバノアナタケの粉末(0.5〜5.0mmφ)から、実施例に示すような煮沸抽出+加熱抽出の組合せを併用した1時間乃至一日程度の時間抽出し、真空引き等で布フィルターを用いて強力に濾過するものである。要するに、カバノアナタケの有効成分を抽出液中に効率良く抽出できる態様であればよく、カバノアナタケの形状、抽出媒体の温度や添加される触媒等の微量成分の態様、濾過の態様を適宜に組合せることができる。
次に、このように調整されたカバノアナタケ抽出液の栽培植物への適用例を説明する。図2は、カバノアナタケ抽出液の栽培植物への使用態様と効能を説明する図である。栽培植物としては、米、果実、野菜、花卉を用いた。カバノアナタケ抽出液を栽培植物に応じた濃度に稀釈して、栽培植物に応じて葉面散布・土壌灌水・灌漑用水への注入という態様で使用した結果、以下に説明するような効果があった。
適用例1:米では食味向上と収量増大が得られた。
米の代表的品種であるコシヒカリに、カバノアナタケ抽出液を年2〜3回、水田1反(1000m2)当たり各回500ccを使用した。具体的な使用態様は、水田の注水口からカバノアナタケ抽出液の原液を灌水に注入した。使用時期の1回目は、田植えの後10〜15日(最初の除草剤の効果が切れるころ)とし、2回目は穂孕期、3回目は出穂期とした。穂孕期は、出穂前11日〜20日程度の期間で、水を最も必要とする期間で間断かん水が行なわれると共に、追肥が行なわれる。出穂期は、稲の花が咲く時期のことで、田植えをしてから早稲(わせ)では50日、晩稲(おくて)では80日後である。出穂期に天候が不順だと受粉が進まず、収獲量に影響が出る。
カバノアナタケ抽出液を使用した水田では、コシヒカリの食味指数が通常70前後であったところ、カバノアナタケ抽出液を上記態様で3回使用した結果、食味指数が79から81と大幅に向上した。ここで、食味指数とは、日本の稲作で一般に使われている食味の分析方法で、代表的な稲作品種である「日本晴」を基準値65とした場合の数値で表される。食味指数は、蛋白質、水分、アミロース、脂肪酸の数値を測定して判定する。
コシヒカリの食味指数を向上させる場合、従来食味向上に効果があると称される各種肥料が用いられていたが、コシヒカリの収量が落ちるケースが多く、単価の向上効果を収量減少で相殺してしまい、総収益の点で農家の利益とならなかった。この点、カバノアナタケ抽出液を使用した水田では、反当たり収量が2俵から3俵増加するため、単価の向上効果と収量増の相乗効果が期待でき、総収益の点で農家の利益大である。また、稲作の場合はカバノアナタケ抽出液の水田への噴霧も有効である。
適用例2:果実では糖度向上と生育促進が得られた。
ブドウやナシ等の果樹の場合、カバノアナタケ抽出液は土壌灌水でなく葉面散布(噴霧)する。農家の作業効率という事情から、カバノアナタケ抽出液単体で散布するのでなく、農薬を散布するとき、その農薬にカバノアナタケ抽出液を混合して散布するのが一般的である。したがって、全ての農薬散布機会にカバノアナタケ抽出液を添加する場合には、カバノアナタケ抽出液の使用頻度が農薬散布頻度に等しくなる。すなわち、代表的な数値では果実の成長期間中、1月当たり2〜4回である。このカバノアナタケ抽出液を葉面散布する場合、1千〜3千倍に希釈するので、その使用量はカバノアナタケ抽出液換算で1回1反当たり100〜300ccとなる。
カバノアナタケ抽出液を使用したブドウでは、糖度が18から24に上がった(品種:スチューベン)。カバノアナタケ抽出液を使用したナシでは、糖度が12から15に上がった(品種:幸水)。糖度の測定には、市販の農業用糖度計を使用した。すなわち20℃の液体を通過する光の屈折を測定することにより蔗糖液100g中に含まれる蔗糖のグラム数を判定する。
ブドウやナシの場合も果実の色づきが早く、出荷が通常より約1週間早まった。この果実の色づきの判断基準は、栽培農家の目視による。
適用例3:野菜では、食味向上と生育促進が得られた。
野菜の場合は、ブドウやナシ等の果樹と同様に、カバノアナタケ抽出液を葉面散布する。農家の作業効率という事情から、カバノアナタケ抽出液単体で散布するのでなく、農薬を散布するとき、その農薬にカバノアナタケ抽出液を混合して散布するのが一般的である。したがって、全ての農薬散布機会にカバノアナタケ抽出液を添加する場合には、カバノアナタケ抽出液の使用頻度が農薬散布頻度に等しくなる。このカバノアナタケ抽出液を葉面散布する場合、1千〜3千倍に希釈するので、その使用量はカバノアナタケ抽出液換算で1回1反当たり100〜300ccとなる。使用対象となる野菜の品種は、春菊、ネギ、ほうれん草、小松菜、白菜、ブロッコリー、カリフラワー、モロヘイヤ、大根、人参、ジャガイモ、サツマイモ、きゅうり、なす、トマト、カボチャ、ゴーヤなどがあるが、カバノアナタケ抽出液の使用対象となる野菜は在来の日本種に限定されるものではなく、ヨーロッパ大陸や中国大陸で栽培される固有品種でもよい。
使用した農家の感想によると、カバノアナタケ抽出液を使用しない通常と比較すると、カバノアナタケ抽出液を用いることで根の発育がよく、葉が茂り、実が大きくなり、収穫が早まり、うまみが増した。このカバノアナタケ抽出液の使用に関して、実験区と対照区を比較した数値的なデータが、たとえばホウレンソウを房総地区で栽培した場合について得られている。これによると、房総地区の気候条件では、種蒔きから収穫まで、ホウレンソウは55日を要するが、カバノアナタケ抽出液を与えた場合、1週間収穫が早まった。他方では、分けつ部分から葉の頂上までの長さ29cm、葉の幅9cmになった。
これに対して、この地域のカバノアナタケ抽出液を用いない通常のホウレンソウの大きさは、分けつ部分から葉の頂上までの長さ約23cm、葉の幅約7cmである。従って、カバノアナタケ抽出液を与えた場合、長さ、幅とも通常栽培と比較して約20〜25%大きい。また、葉肉の厚さも通常より厚かった。しかし、カバノアナタケ抽出液を与えたホウレンソウは、葉の長大化と肥大化がそのまま延々と続くのではない。前記の大きさにまで葉が肥大した後は、花茎が立ち始めた。このことによって、カバノアナタケ抽出液が栄養生長ばかりでなく生殖生長をも促進していることがわかる。
適用例4:花卉では、花数増大と生育促進が得られた。
花卉として胡蝶蘭という品種を選定した。植物学的に言う胡蝶蘭とは、らん科のファレノプシス(Phalaenopsis)である。胡蝶蘭の栽培は、例えば水苔を用いた栽培により行なわれ、ガラス温室内で行われる。胡蝶蘭は、自然界では樹上生活をおくるため、多量の水分を用いるとかえって根腐病を発生してしまう。そこで、胡蝶蘭に対して、水耕栽培による栽培は行なわれず、また根菜類のような露地栽培は行なわれていない。この結果、ハウス内の水苔栽培の場合には、天水にさらされず、栽培者が与える比較的少量の水分を摂取することに加え、室温も制御されていることにより、植物活性液の効果が判定しやすいという性質がある。そこで、胡蝶蘭に対してカバノアナタケ抽出液の5千〜1万倍の希釈液を灌水して、カバノアナタケ抽出液の植物活性剤としての効力を実験した。使用頻度は、胡蝶蘭の水苔に対する通常の灌水のときで、例えば5日に1回とする。胡蝶蘭に対するカバノアナタケ抽出液の使用量は、カバノアナタケ抽出液の原液換算で、1回1反当たり250〜500ccである。
胡蝶蘭の栽培は、例えば以下のようにしてなされる。まず、胡蝶蘭の種子は1さや数十万という単位で入っている。その種子を、例えばフラスコのような無菌環境が実現可能な環境中に撒き、約1年ほど培養する。なお、胡蝶蘭は、組織培養(メリクロン)を用いて栄養繁殖させても良い。フラスコ内で、胡蝶蘭の苗の移植を3回乃至4回程度繰り返し1フラスコあたりの苗の数は最終的に30本乃至40本になる。フラスコには、例えば500mlの物を使用する。
胡蝶蘭の苗をフラスコから丁寧に出し、寄せ植え鉢に数本まとめて水苔で寄せ植えする。寄せ植え後、少し日射を弱めに管理し馴らした後、更に3ヶ月乃至6ヶ月栽培して、苗の左右2枚の葉長合計が、例えば10cm以上になるのを待つ。なお、寄せ植え鉢としては、例えば3号鉢(直径9cm)や4号鉢(直径12cm)が用いられる。
寄せ植え鉢で約半年育成した後に、育成鉢として例えば2.5号鉢(直径7.5cm)に1苗ずつ植える。その時鉢の直径の倍ぐらい葉幅があれば適当な大きさである。植え付け後、典型的には更に半年ぐらい苗を育成する。そして、育成鉢の苗は、半年から10ケ月育成され、苗のリーフスパン(葉幅)が基準値、例えば23cm以上になるのを待つ。苗から花をつけた出荷品まで単一の栽培農家で一貫生産する場合もあるが、苗と出荷品では栽培環境が相違することから、苗段階の生産者と出荷品段階の生産者で工程を二分割するリレー栽培も採用される。リレー栽培をする場合、苗の葉幅が取引基準値の大きさまで栽培するのが第一段階の生産者の分担となり、例えば寄せ植え鉢からの移植から合計12ヶ月乃至15ヶ月かかる。
第一段階の生産者から引き取られた苗は、栄養生長鉢としての4号鉢に植えられ、更に7〜8ケ月間、例えば19℃〜27℃程度で管理され、花芽の発生を抑制しながら栽培される。良い株の条件は、例えば、葉幅30cm以上、葉の枚数6枚乃至7枚以上、下葉が落ちてなく健康で根が鉢の中に充分回っていることである。栽培農家としては、1株当たりの輪数が胡蝶蘭の価値を決める重要な目安となる為、花を多くするために、多数の開花を栄養面で支える葉と根を増やし生長させなければならない。そこで花芽を抑制して栄養生長の充実をはかることが必要になる。
この点、カバノアナタケ抽出液は栄養生長と生殖生長を同時に促進する働きがあり、カバノアナタケ抽出液を使えば「花芽の抑制」過程のかなりの部分は省略できる。従って、カバノアナタケ抽出液を使えば、ファレノプシスにおいて栄養生長期間として従来必要とされた7〜8ケ月間の期間を大幅に短縮することが可能となる。ただし、ファレノプシスの品種や求める花の輪数によっては、1年又はそれ以上の栄養生長期間が望ましい場合がある。そこで、栄養生長期間が長期に渡る場合は、期間中の「花芽の抑制」が必要になるため、カバノアナタケ抽出液を栄養生長期間の中途から供給したり、或いは基準量に比較して少量を栄養生長期間の最初から供給することになる。
充分に成長させた株は、開花室に搬入され、約1月後花芽が出現して、更に花芽が伸長するまでに2ヶ月乃至3ヶ月ほど要する。開花室は、カバノアナタケ抽出液を用いない通常栽培によれば、1年中最低気温18℃、最高25℃に管理しなければならず、冬は暖房、夏は冷房とエネルギーを非常に多く使う。しかし、カバノアナタケ抽出液を用いる栽培によれば、耐寒性、耐暑性が強化されるので、開花室の温度調整範囲を拡大することが可能となる。そして、株は開花して、寄せ植えされて出荷される。胡蝶蘭は、カバノアナタケ抽出液を用いない通常栽培では、フラスコから出して例えば合計2年程度かかって出荷可能となる。他方、カバノアナタケ抽出液を用いる栽培によれば、例えば数週間程度短縮することが可能となる。
花卉類は、胡蝶蘭も含めて通常、栄養生長と生殖生長が順を追って進行する。しかし、カバノアナタケ抽出液を「花芽の抑制」が必要になる栄養生長期間で使用した場合、胡蝶蘭の栄養生殖と生殖生長が重なり合って進行した。たとえば、胡蝶蘭の一種(Phal. Wedding Promenade)では、カバノアナタケ抽出液を用いない通常の水耕栽培によれば、1株20輪ほどの花をつけるが、カバノアナタケ抽出液を使用した場合、1株30輪又はそれ以上の花をつけた。また、苗から開花まで通常5か月かかるが、2週間早まった。この結果は、ハウス室温を夏期は通常より2℃高く設定し、冬季は通常より2℃低く設定した中で得られた。即ち、従って開花が早く、葉や根も立派なので花数も多い、という結果を得た。なお、カバノアナタケ抽出液を使用する時期は、上述の実験例では、「花芽の抑制」が必要になる栄養生長期間で使用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、胡蝶蘭の苗を寄せ植え鉢に数本まとめて水苔で寄せ植えする時期や、寄せ植え鉢から1苗ずつ植え替える時期から使用してもよい。
カバノアナタケ抽出液について、花卉の栄養生殖と生殖生長が重なり合って進行する原因となる成長ホルモン(植物生長調整物質)に相当する有効成分は、添加される海藻エキスにオーキシンが含まれており、これがカバノアナタケの成分とあいまって生長促進効果をもたらしていると推測される。
カバノアナタケには、例えば数十もの天然成分が含まれていることが成分分析の結果から判明している。しかし、カバノアナタケの何れの含有成分、又は含有成分の組合せが、栽培植物に対する品質向上・収量増・成長促進・耐寒性・耐病性の強化という効果をもたらすのか、生化学的に解明されているわけではなく、経験的に知られているに止まる。このうちアミノ酸については、カバノアナタケに含まれるアミノ酸類で栽培植物に影響を与えるものとして次の事項が知られている。メチオリンは、果実の成熟促進に効果大である。プロリンは、優勢花を作り、着果をよくし、強い甘みを作る。グルタミン酸は、抗菌性があると共に、耐寒性を強める。ロイシンは、弱い苦みをもった強い旨味を作ると共に、色をよくする。アスパラギン酸は、光合成の触媒で、アミノ酸合成に必要である。リジンは、植物の必要栄養素で、不足すると稲はイモチ病が出る。(山脇岳士著『アミノ酸、核酸、有機酸の効かせ方』、新企画出版、ファーム21」、1995年6月号、50ページ参照)。
適用例5:栽培植物の耐寒性、耐病性の強化
いずれの栽培品目にも共通する効果として、水の過多でも根腐れしにくく、乾燥や寒冷に対する抵抗力が強まり、病気にかかりにくくなった。軟腐病が発生したネギ畑で使用したケースでは、病気の進行が止まった。
カバノアナタケ抽出液は植物活性剤であり、農薬ではない。従って、カバノアナタケ抽出液には病原体を攻撃したり発病後の疾病を治癒させる働きはない。その効果は植物の抵抗力を増進することによる疾病の予防、又は病変の進行の緩和である。現に発生してしまった病気に対してこの植物活性液を使用した例としては、白ネギの軟腐病がある。このケースでは、1千倍の希釈溶液を農薬に混ぜて葉面散布と土壌灌水を同時におこなった。1回1反当たりカバノアナタケ抽出液の原液換算で300ccである。カバノアナタケ抽出液の2回目の使用で、白ネギの病変の進行が止まった。この場合も、植物活性液によって病原体が除去されたのでなく、その存在にもかかわらず病変の発現が止まったと解釈すべきであろう。また、同時に使用された農薬が病原体を攻撃しているので、白ネギ軟腐病用の農薬とカバノアナタケ抽出液との複合効果も考えられる。
カバノアナタケは、第一に、スーパーオキシド消去活性(生物体内や体表面で発生する活性酸素を除去する作用)が非常に強力である。その力は、分析法によって差はあるが、日本食品分析センターによれば、35,000単位/gあるとされている。病気の発生も病変の発現も、その多くは細胞の酸化を伴うが、その酸化を阻止するカバノアナタケの作用が病気の予防に関与していると推測できる。第二に、アミノ酸類の働きがある。第三に、添加される海藻に含まれるサイトカイニンの効果も付加されている。従って、これらの作用の発現が、栽培植物の耐寒性、耐病性の強化として現われていると考えられる。
図3は、カバノアナタケ抽出液の精製段階と使用対象植物の関係を説明する図である。カバノアナタケ抽出液の精製段階は、図1で説明したように、『煮沸抽出』(S102)のみ、『煮沸抽出』(S102)+『加熱抽出』(S104)、『煮沸抽出』(S102)+『加熱抽出』(S104)+『濾過』(S108)、『煮沸抽出』(S102)+『加熱抽出』(S104)+『濾過』(S108)+『冷蔵熟成』(S110)、『煮沸抽出』(S102)+『加熱抽出』(S104)+『濾過』(S108)+『冷蔵熟成』(S110)+『ミネラル等の微量成分』添加(S112)が考えられる。なお、『加熱抽出』とは、基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出することをいう。
そして、水田の場合には上記全ての精製段階のカバノアナタケ抽出液が有効に作用する。水田における灌水注入では、カバノアナタケの微粉末が浮遊していても、特段の問題は生じない。何故なら、粒径の小さな微粉末は、灌水注入の妨げにならないからである。もっとも、水田でも葉面散布を行う場合は、農薬噴霧器の管路に微粉末が詰まると好ましくないので、『濾過』してカバノアナタケ抽出液中から微粉末を除去しておくことが望ましい。
果実・野菜・花卉では、個別株にカバノアナタケ抽出液を一定量使用する場合のように、カバノアナタケの微粉末が浮遊していても、特段の問題は生じない態様で使用する場合には、『濾過』していないカバノアナタケ抽出液も使用できる。しかし、通常は作業効率の点から、農薬散布用の噴霧器を用いるのが好ましく、この点で果実・野菜・花卉用では、『濾過』してカバノアナタケ抽出液中から微粉末を除去しておくことが望ましい。
なお、上記の実施の形態においては、水田や果実、野菜又は花卉に使用するカバノアナタケ抽出液は、図1に示すような煮沸抽出と基準抽出温度での所定抽出保持時間による二段階抽出によって抽出されたものを用いたが、このような加熱温水を用いて抽出されるものに限定されるものではない。例えば、水に抽出促進用の触媒や酵素を附加して、カバノアナタケの有効成分を抽出したものであってもよい。
カバノアナタケを用いた植物活性剤の精製方法の一例を示す流れ図である。 カバノアナタケ抽出液の栽培植物への使用態様と効能を説明する図である。 カバノアナタケ抽出液の精製段階と使用対象植物の関係を説明する図である。

Claims (10)

  1. 原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケを、当該カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸し、その後当該水を基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出させたことを特徴とするカバノアナタケ抽出液。
  2. 請求項1に記載のカバノアナタケ抽出液において、さらに、
    所定粒径以上の微粉末を濾過により除去したことを特徴とするカバノアナタケ抽出液。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のカバノアナタケ抽出液において、さらに、
    当該カバノアナタケ抽出液を冷蔵温度で、少なくとも1週間以上の熟成期間の間、保持したことを特徴とするカバノアナタケ抽出液。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のカバノアナタケ抽出液において、さらに、
    使用対象となる植物の生長に必要とされるミネラル等の微量成分を所定比率で添加したことを特徴とするカバノアナタケ抽出液。
  5. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のカバノアナタケ抽出液において、さらに、
    褐藻類抽出液を所定比率で添加したことを特徴とするカバノアナタケ抽出液。
  6. 原状、小割り又は粉末状にしたカバノアナタケを、当該カバノアナタケの量に応じた沸騰水又は準沸騰温度の水で煮沸するステップと、
    その後当該水を基準抽出温度に抽出保持時間維持して、当該水に当該カバノアナタケの水溶性成分を抽出させるステップと、
    所定粒径以上の微粉末を濾過により除去するステップと、
    を有するカバノアナタケ抽出液の製造方法。
  7. カバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法において、
    前記使用の時期は、田植えの後10〜15日、穂孕期、出穂期の少なくとも何れか一回に対応することを特徴とするカバノアナタケ抽出液を水田に使用する方法。
  8. カバノアナタケ抽出液を果実、野菜又は花卉の少なくとも1種類に使用する方法において、
    前記使用の時期は、前記果実、野菜又は花卉の少なくとも1種類についての農薬散布の時期に、前記農薬散布の薬液にカバノアナタケ抽出液を混和して、当該果実、野菜又は花卉に使用することを特徴とするカバノアナタケ抽出液を果実・野菜・花卉に使用する方法。
  9. カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法において、
    前記使用の時期は、前記ファレノプシスの幼苗が、寄せ植え鉢に数本まとめて寄せ植えされた段階、当該寄せ植えされた苗が成長して一本毎に個別の育成鉢に植え替えた段階、もしくは個別の育成鉢から栄養生長用の個別の栄養生長鉢に植え替えた段階の少なくとも一つの段階を含んで、使用することを特徴とするカバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法。
  10. カバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法において、
    前記使用の時期は、前記ファレノプシスの幼苗が、寄せ植え鉢に数本まとめて寄せ植えされた段階、当該寄せ植えされた苗が成長して一本毎に個別の育成鉢に植え替えた段階、個別の育成鉢から栄養生長用の個別の栄養生長鉢に植え替えた段階、もしくは花芽が出現してから開花するまでの段階の少なくとも一つの段階を含んで、使用することを特徴とするカバノアナタケ抽出液をファレノプシスに対して使用する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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