JP2007154162A - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)少なくとも一方の末端にカルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造のいずれかを有するポリアルキレングリコール又はその誘導体と、(C)前記熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有したビニル性モノマーを含む反応性化合物と、(D)無機充填材とを含有することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
<1>(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)少なくとも一方の末端にカルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造のいずれかを有するポリアルキレングリコール又はその誘導体と、(C)前記熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有したビニル性モノマーを含む反応性化合物と、(D)無機充填材とを含有することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<2>(B)ポリアルキレングリコール又はその誘導体において、カルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造の少なくともいずれかがアルキル基を有してなり、前記アルキル基の炭素数が5〜12である前記<1>に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<3>(C)反応性化合物が、更にスチレンを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<4>(C)反応性化合物において、熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基がエポキシ基である前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<5>(C)反応性化合物の重量平均分子量が6,000〜15,000であり、かつ、エポキシ価が0.8〜3.0meq/gである前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<6>(B)ポリアルキレングリコール又はその誘導体の含有量が0.5〜10質量%である前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<7>(C)反応性化合物の含有量が0.5〜10質量%である前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
<8>(D)無機充填材の含有量が1〜40質量%である前記<1>から<7>のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ポリアルキレングリコール又はその誘導体と、(C)反応性化合物と、(D)無機充填材とを含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、アルキレングリコールを主たるグリコール成分とする熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましい。
一方、前記アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。前記アルキレングリコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記極限粘度は、ISO1628により、オストワルド粘度計を使用し、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した場合の値であり、単位は100mL/gである。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物における、前記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60〜90質量%が好ましく、70〜80質量%がより好ましい。前記含有量が、60質量%未満であると、流動性が小さく成形性に劣ることがあり、90質量%を超えると、剛性、衝撃強度などの機械強度が低下することがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、流動性及び機械強度のいずれもが、よりバランス良く優れる点で、有利である。
前記ポリアルキレングリコール又はその誘導体は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の流動性、及び耐熱性を向上させる目的で使用される。
前記ポリアルキレングリコール又はその誘導体としては、少なくとも一方の末端にカルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造のいずれかを有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)
一方、前記ポリアルキレングリコール又はその誘導体の末端となる、前記カルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造の少なくともいずれかは、好ましくはアルキル基を有してなり、前記アルキル基の炭素数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性の点から、5〜12が好ましい。前記炭素数が、5未満であると、成形後にブリードアウトが発生しやすくなり、12を超えると、熱可塑性ポリエステル樹脂中への分散性が低下し、流動性及び耐熱性向上効果が低下することがある。
なお、前記ポリアルキレングリコール又はその誘導体の重量平均分子量は、300〜3,000であることが好ましく、350〜2,500であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、ポリスチレンを基準物質として、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用し示差屈折(RI)検出器を用いて測定することができる。また、前記一般式(1)中の(R1O)及びR2の炭素数及び構造については、1H−NMRにより分析し決定することができる。ポリアルキレングリコール成分の重合度(前記一般式(1)中のn)は、重量平均分子量から前記一般式(1)中の(R1O)及びR2の分子量を引き、ポリアルキレングリコールの単位分子量(前記一般式(1)中の−(R3O)−単位)で除することにより算出することができる。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物における、前記ポリアルキレングリコール又はその誘導体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、流動性及び耐熱性向上効果が小さく、10質量%を超えると、剛性、衝撃強度などの機械強度が低下することがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、流動性、耐熱性、及び機械強度のいずれもが、よりバランス良く優れる点で、有利である。
前記反応性化合物は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の剛性、及び衝撃強度を向上させる目的で使用される。
前記反応性化合物としては、前記熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有したビニル性モノマーを含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、更にスチレンを含むものが、前記熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性や、混練時の熱安定性の点で好ましい。また、ガラス転移点が向上し、固体状になるため、混練時のハンドリング性の点でも好ましい。
なお、前記「熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基」としては、熱可塑性ポリエステル樹脂の末端に結合している水酸基、カルボキシル基と反応性をもつ官能基が好適に挙げられ、このような官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、前記熱可塑性ポリエステル樹脂の末端の官能基との反応性が高い点で、好ましい。
なお、前記「熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有したビニル性モノマー」は、前記反応性化合物の主鎖に含まれていてもよく、また側鎖に含まれていてもよい。
これらの中でも特に、エポキシ基を含有するモノマーを共重合成分として有するARUFON UG−4030が好ましい。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物における、前記反応性化合物の含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、剛性、衝撃強度などの機械強度の向上効果が小さく、10質量%を超えると、機械強度は向上するが、流動性が低下し、成形性が損なわれることがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、機械強度及び流動性のいずれもが、よりバランスよく優れる点で、有利である。
前記無機充填材は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の耐熱性、剛性、及び衝撃強度を向上させる目的で使用される。
前記無機充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、雲母、タルク、マイカ、クレー、カオリン、雲母、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填材が好ましい。
前記炭素繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維の原糸を切断したチョップドストランドなどが挙げられる。前記炭素繊維としては、収束剤でガラス繊維密度が10k〜20kに収束された、繊維長3〜6mmのものが、ハンドリング性向上の点で好ましい。また、前記炭素繊維の繊維径は、5〜15μmが好ましく、7〜12μmがより好ましい。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物における、前記無機充填材の含有量は、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、剛性、衝撃強度などの機械強度、耐熱性の向上効果が小さく、40質量%を超えると、流動性が低下し、成形性が低下することがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、機械強度、耐熱性及び流動性のいずれもが、バランスよく優れる点で、有利である。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の添加剤、例えば、導電剤、可塑剤、熱安定剤、加工助剤、各種難燃剤、滑剤、着色剤、流動性改良剤、帯電防止剤、相溶化剤、耐候剤、結晶核剤、レーザーマーキング剤などが挙げられる。なお、前記レーザーマーキング剤としては、特に制限はなく、印字色など目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物における、前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の製造方法、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの予備混合機に、前記各成分を同時に添加して均一に混合する方法、定量・定容フィーダーを用いて、混練機に特定成分を個別に供給する方法などが挙げられる。
また、前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造に使用する装置としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二軸押出機、単軸押出機、ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。これらの中でも、上流側供給口と1ヶ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ポリアルキレングリコール又はその誘導体と、(C)反応性化合物とを、(D)無機充填材の供給前に混練することができる点で、好ましい。
前記熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、高剛性、高衝撃強度、高耐熱性であり、かつ流動性、製造性に優れていることから、例えば、射出成形や押出成形などの既存の成形機を用いて成形することにより、例えば、電気・電子部品用部材、OA部品用部材などに好適に用いることができる。前記電気・電子部品用部材、OA部品用部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、耐熱性や強度が重要視されるマガジン、トレイなどの電気・電子部品包装用成形品、プリンター、スキャナー、FAXの部材やカートリッジなどのOA部品用成形品などが挙げられる。
製造装置としては、ナカタニ機械社製NR−II57mm二軸押出機を用いた。前記押出機の上流側供給口より、あらかじめプレブレンドした(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)ポリアルキレングリコール誘導体、(C)反応性化合物、及びその他の成分の混合物を定量フィーダーにて供給した。前記混合物が完全に溶融したところで、前記押出機の下流側供給口より、(D)無機充填材を定量フィーダーにて供給して、混練した(シリンダ及びダイ温度は290〜270℃)。混練後、ダイスから排出されたストランド状のコンパウンドを冷却し、ペレタイザーを用いて円柱状のペレットとした。
(耐熱性)
得られた各ペレットを140℃にて3時間熱風乾燥した後、シリンダ温度280℃、金型温度80℃に設定された射出成形機(日精樹脂工業株式会社製FD120S5ASE)にてダンベル試験片を作製した。得られた試験片を使用し、ISO75−2Afに準拠して、荷重たわみ温度(HDT)を測定した。また、ASTM E831に準拠して、線膨張係数を測定した(試験機種:TMA/SS6000(セイコー電子工業)、測定範囲60℃〜138℃、昇温速度5℃/分、試験片形状 横5mm×縦10mm×厚み3.2mmで縦方向の線膨張係数を測定)。
なお、本実施例においては、前記荷重たわみ温度が130℃以上であり、かつ、前記線膨張係数が1.0(10−5×℃−1)以上であることを、高耐熱性の指標とした。
(剛性)
得られた各ペレットを140℃にて3時間熱風乾燥した後、シリンダ温度280℃、金型温度80℃に設定された前記射出成形機にてダンベル試験片を作製した。得られた試験片を使用し、ISO527−2/1A/5に準拠して引張強さを測定した。
なお、本実施例においては、前記引張強さが90MPa以上であることを、高剛性の指標とした。
(衝撃強度)
得られた各ペレットを140℃にて3時間熱風乾燥した後、シリンダ温度280℃、金型温度80℃に設定された前記射出成形機にてダンベル試験片を作製した。得られた試験片を使用し、ISO179/1eAに準拠してシャルピー衝撃強度を測定した。
なお、本実施例においては、前記シャルピー衝撃強度が4.0kJ/m2以上であることを、高衝撃強度の指標とした。
(流動性)
得られた各ペレットを140℃にて3時間熱風乾燥した後、ISO11443に準拠して溶融粘度を測定した(試験機種:安田精機社製140SAS2002、温度280℃、剪断速度1000sec−1、ダイ寸法 直径1mm×長さ10mm)。
なお、本実施例においては、前記溶融粘度が180Pa・s以下であることを、流動性に優れていることの指標とした。
(製造性)
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造性の指標として、前記二軸押出機から連続して押出されるストランド(糸状の樹脂組成物)が切れる回数を計測した(1時間あたり)。反応性化合物がゲル化し、押出機ダイス内部に堆積すると、ストランド切れが発生する。
なお、本実施例においては、ストランド切れが発生しない(ストランド切れ回数が0回である)ことを、製造性に優れていることの指標とした。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂として、(A−1)極限粘度=0.78(100mL/g)のポリエチレンテレフタレート樹脂(商品名:MA521−D25(三菱レイヨン株式会社製))を78.0質量%、(B)ポリアルキレングリコール誘導体として、(B−1)ポリエチレングリコールの両末端をエステル化したポリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキソエート(商品名:リオノンDEH−40(ライオン株式会社製))を3.0質量%、(C)反応性化合物として、(C−1)重量平均分子量が11,000、エポキシ価が1.8meq/gであるスチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体(商品名:アルフォンUG−4030(東亞合成株式会社製))を2.0質量%、(D)無機充填材として、(D−1)繊維径10μm、繊維長3mmチョップドストランドのガラス繊維(商品名:RES03−TP78(日本板硝子株式会社製))を15.0質量%、さらに着色剤として、ASTM D2414(DBPアブソープトメーター使用)によるDBP吸油量157mL/100gのカーボンブラック(商品名:旭F−200(旭カーボン株式会社製))1.5質量%と、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:AO−60(旭電化工業株式会社製))0.5質量%を用いて、前記製造方法により、実施例1の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。
各評価結果を、表1に示す。
表1に示す組成で、実施例1と同様にして、実施例2〜10の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。
なお、(B)ポリアルキレングリコール誘導体として、(B−2)ポリエチレングリコールの片側末端をエステル化し、もう一方の末端をエーテル化したメトキシポリエチレングリコールラウレート(レオファットLA90−92(ライオン株式会社製))を用いた。また、(C)反応性化合物として、(C−2)重量平均分子量が9,700、エポキシ価が1.4meq/gであるスチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体(アルフォンUG−4070)、(C−3)スチレンを含有しない、重量平均分子量2,900、エポキシ価が1.4meq/gであるメチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体(アルフォンXG−4010)、(C−4)熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基がカルボキシル基であり、重量平均分子量が15,000であるスチレン−アクリル酸−テトラデシルアクリレート共重合体(アルフォンUFX−5010)(全て東亞合成株式会社製)を用いた。
各評価結果を、表1に示す。
表2に示す組成で、実施例1と同様にして、比較例1〜7の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。
なお、(B)アルキレングリコール誘導体の比較例として、(B’−1)末端をエステル化もエーテル化もしていないポリエチレングリコール(商品名:PEG#400(ライオン株式会社製))を用いた。また、(C)反応性化合物の比較例として、(C’−1)ポリエステルとの反応性官能基を有しない、重量平均分子量8,000のスチレン−メチルメタクリレート共重合体(商品名:アルフォンUP−1100(東亞合成株式会社製))、(C’−2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828(油化シェルエポキシ株式会社製))、(C’−3)芳香族ポリカルボジイミド(商品名:スタバクソールP(バイエル社製))を用いた。
各評価結果を、表2に示す。
比較例1では、(B)ポリアルキレングリコール誘導体を配合していないので、流動性が低く、耐熱性も低い。比較例2では、カルボン酸エステル末端及びアルキルエーテル末端のいずれも有さない、本発明の範囲外の(B)ポリアルキレングリコールを配合しているので、流動性が低く、耐熱性も低い。比較例3では、(C)反応性化合物を配合していないので剛性、衝撃強度が低下する。比較例4では、熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有さない、本発明の範囲外の(C)反応性化合物を配合しているので、剛性、衝撃強度が低下する。比較例5、6では、本発明の範囲外の(C)反応性化合物を配合しているため、混練時にダイス内部に固化物が堆積し、ストランド切れが発生しやすくなり、製造性が著しく低下する。比較例7では、(D)無機充填材を配合していないので、耐熱性、剛性、衝撃強度が低下する。
実施例1で得られたペレットにレーザーマーキング剤(E)を加え、二軸押出機にて再混練し、表3に示す各組成のペレット(実施例11〜17)を調製した(表3中、各レーザーマーキング剤の添加量は、実施例1の組成物全体に対する質量%として表示した)。
レーザーマーキング剤としては、(E−1)黒酸化鉄(Fe3O4)で粒子径が15μm未満の雲母をコーティングしたコーティング雲母:LazerflairLF835(LF835;メルク社製)、(E−2)電子顕微鏡による算術平均粒子径が13μm、JIS K6217による窒素吸着比表面積が370m2/g、JIS K6217によるDBP吸油量が60cm3/100g、950℃で7分間加熱したときの揮発分が1.8%、pHが6.5である顔料用カーボンブラック:♯2600B(三菱化学社製)、(E−3)レーザー回折法による平均粒子径が60μm、灰分が0.3%、揮発分が0.7%である膨張黒鉛:BSP60AS(中越黒鉛社製)、(E−4)BET法による比表面積が6.3m2/g、X線回折法によるルチル化率が99.9%である二酸化チタン:CR−EL(石原産業社製)を用いた。
各ペレットのレーザーマーキング性を、以下のようにして評価した。
得られた各ペレットを140℃にて3時間熱風乾燥した後、シリンダ温度280℃、金型温度80℃に設定された前記射出成形機にてプレート試験片(縦10cm×横10cm×厚さ3.2mm)を作製した。得られた試験片の表面にYAGレーザーを用い、マーキングを行った。マーキング条件は以下の通り。評価結果を、表3に示す。
[マーキング条件]
YAGレーザー :ミヤチテクノス社製 ML−7110B
レーザーダイオード電流値:18.0A
マーキングスピード :1000mm/s
Qスイッチ周波数 :30.0kHz
この結果から、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、レーザーマーキングを施すのにも適した組成物であることが確認できた。
Claims (4)
- (A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)少なくとも一方の末端にカルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造のいずれかを有するポリアルキレングリコール又はその誘導体と、(C)前記熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基を有したビニル性モノマーを含む反応性化合物と、(D)無機充填材とを含有することを特徴とする熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
- (B)ポリアルキレングリコール又はその誘導体において、カルボン酸エステル構造及びアルキルエーテル構造の少なくともいずれかがアルキル基を有してなり、前記アルキル基の炭素数が5〜12である請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
- (C)反応性化合物が、更にスチレンを含む請求項1から2のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
- (C)反応性化合物において、熱可塑性ポリエステル樹脂と反応性をもつ官能基がエポキシ基である請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
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