JP2007153842A - ビタミンアパタイト複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体への吸収が容易であり、ビタミン単独を直接に投与するよりも大きな活性を発現させることのできるビタミンアパタイト複合体を提供すること。
【解決手段】アパタイトにビタミン及び/又はビタミン前駆体を吸着させて成ることを特徴とするビタミンアパタイト複合体。
【選択図】なし
【解決手段】アパタイトにビタミン及び/又はビタミン前駆体を吸着させて成ることを特徴とするビタミンアパタイト複合体。
【選択図】なし
Description
この発明は、ビタミンアパタイト複合体に関し、さらに詳しくは、生体への吸収が容易であり、ビタミン単独を直接に投与するよりも大きな活性を発現させることのできるビタミンアパタイト複合体に関する。
従来から、アパタイトは、その優れた有機分子吸着特性を活かした材料として、ガス吸着材、ウイルス吸着材、カラム材等に利用されている。また、医療分野への応用として、骨誘導タンパク(BMP)等のたんぱく質をアパタイトに吸着させた骨補填材の開発が試みられている(非特許文献1、2の内容を要約した。)。
インターネット<URL:http://www.jda.or.jp/text/no158.doc
青木秀希 「驚異の生体物質 アパタイト」発行所医歯薬出版株式会社,1999年9月20日第1版第1刷発行
一方、ビタミンには様々な効果がある。ビタミンA(レチノール)は、視覚機能の維持、及び、皮膚、粘膜の維持等に必要なビタミンである。また、体内でビタミンAに変化するベータカロチンは抗酸化作用がある。葉酸(別名ビタミンM)は、DNAの生成、修正に大きく関与する栄養素で、DNA生成に働きかけると同時に、DNAの正確な作成にも関係している。葉酸は、ミスコピーされたDNAを分解する酵素の働きを左右するため、癌予防の上でも重要な栄養素である。ビタミンCは、コラーゲン産生の補助及び抗酸化物質として知られる栄養素である。ビタミンD、ビタミンKは、骨形成に深く関わるビタミンとして知られ、活性型ビタミンD及びビタミンKは骨粗しょう症の治療薬としても臨床応用されている。これらは、骨芽細胞の活性化に深く関与している。ビタミンEは、代表的な抗酸化物質で、ビタミンCと共に細胞を傷つける活性酸素を消去する働きを持つ(以上の内容は、非特許文献3、4、5の内容を要約した。)。
糸川嘉則,柴田克巳編,栄養・健康科学シリーズ 「栄養学総論」発行所 株式会社 南江堂,2004年2月20日第3版第2刷発行,第119,224,226,238,229,240頁
インターネット<URL:http://www.ss.iij4u.or.jp/~ana/vitamin.htm
インターネット<URL:http://www3.ocn.ne.jp/~eiyou-km/newpage69.htm
これらのビタミンは通常、経口で摂取される。ビタミンが受動輸送により、細胞内に吸収されるためには、ビタミンの大量摂取が必要であり、しかも、必要量以上のビタミンは排出されてしまう。ビタミンは高価であるから大量にビタミンが排出されることは経済的無駄である。
この発明は、大量のビタミン摂取を必要とすることなく、必要最少量のビタミンを細胞内に効率的に輸送することのできるビタミンアパタイト複合体を提供することを、課題とする。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、アパタイトにビタミン及び/又はビタミン前駆体を吸着させて成ることを特徴とするビタミンアパタイト複合体であり、
請求項2は、アパタイトが、水酸アパタイトである請求項1記載のビタミンアパタイト複合体であり、
請求項3は、ビタミンが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、及び、葉酸よりなる群から選択される少なくとも一種であり、ビタミン前駆体がベータカロチンである請求項1又は2に記載のビタミンアパタイト複合体であり、
請求項4は、ビタミンは、その吸着量がアパタイトに対して0.005〜5質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のビタミンアパタイト複合体である。
請求項1は、アパタイトにビタミン及び/又はビタミン前駆体を吸着させて成ることを特徴とするビタミンアパタイト複合体であり、
請求項2は、アパタイトが、水酸アパタイトである請求項1記載のビタミンアパタイト複合体であり、
請求項3は、ビタミンが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、及び、葉酸よりなる群から選択される少なくとも一種であり、ビタミン前駆体がベータカロチンである請求項1又は2に記載のビタミンアパタイト複合体であり、
請求項4は、ビタミンは、その吸着量がアパタイトに対して0.005〜5質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のビタミンアパタイト複合体である。
この発明によると、アパタイトをビタミン担体としているので、細胞内への吸収性に優れ、したがって、大量のビタミンを経口投与しなくても必要最少量のビタミンを効率よく細胞内に輸送することのできるビタミンアパタイト複合体を提供することができる。この発明のビタミンアパタイト複合体は、生体に対する悪影響が極めて小さい。アパタイトにビタミンが吸着されているので、投与時のビタミン量が殆ど浪費されることなく、細胞内に輸送されるので、細胞に必要な微量のビタミンを細胞に吸収させるために大量のビタミンを生体に投与するにも拘わらず必要量以上のビタミンが排泄されて無駄になるといった問題点が、この発明のビタミンアパタイト複合体により、解決される。
したがって、この発明のビタミンアパタイト複合体は高価なビタミンを浪費することがない。
この発明におけるアパタイトは、厳密な定義によると、組成式M10(ZO4)6X2で表されることができる。前記組成式において、Mは、Ca2+、Cd2+、Sr2+、Ba2+、Pb2+、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Ra2+、H+、H3O+、Na+、K+、Al3+、Y3+、Ce3+、Nd3+、Ka3+、C3+空隙等を示し、ZO4は、PO4 3+、CO3 2+、CrO4 3+、AsO4 3+、VO4 3−、UO4 3−、SO4 2−、SiO4 4−、GeO4 4−等を示し、Xは、OH−、OD−、F−、Cl−、Br−、BO2 −、CO3 −、O2 −等を示す。この発明におけるアパタイトは、天然物及び合成物のいずれをも使用されることができる。天然に産出されるアパタイトとしては、リン灰石があり、リン灰石をこの発明におけるアパタイトとして使用可能である。また、天然物として産生するとは言えないかもしれないが、天然物なる用語を人工的に製造されたものではないという意味で使用するとすれば、天然のアパタイトとして生体アパタイトを挙げることができ、この生体アパタイトもまたこの発明におけるアパタイトとして使用可能である。この生体アパタイトとしては、例えば動物の歯又は骨から得ることのできるアパタイトを挙げることができる。人工合成されたアパタイトとしては、溶液法、固相法(乾式法)、水熱法、アルコキシド法(熱分解反応)、及びフラックス法等の方法により合成されたアパタイトを挙げることができる。
この発明においてはアパタイトとして水酸アパタイト及びフッ素アパタイトを好適例として挙げることができる。また、水酸アパタイトの中でも炭酸イオンを含有するアパタイトを炭酸含有水酸アパタイトと称され、この炭酸含有水酸アパタイトもまたこの発明におけるアパタイトとして好適に使用されることができる。
なお、水酸アパタイトは、ハイドロキシアパタイト、ハイドロオキシアパタイト、ヒドロキシアパタイト、ヒドロキシルアパタイト等と称されることがある。この発明においては、この発明の作用効果と同等の作用効果を奏することのできるアパタイト鉱物及びその外のものもまた、この発明におけるアパタイトの均等物である。
使用するアパタイトの形状としては、ビタミンを吸着させることができ、しかも生体に投与可能である限り、特に限定されるものではない。例えば、このビタミンアパタイト複合体を経口投与可能な錠剤にする場合、錠剤に形成可能な粉体となるようにアパタイトの形状を調製することが望ましい。このビタミンアパタイト複合体を経口投与可能な粉末剤にする場合には、水等に均一に分散可能な粉末としてアパタイトの形状を調製することが望ましい。このビタミンアパタイト複合体を経皮投与可能な粉体にする場合には、ナノオーダーの径を有する微粉末に調製することが望ましい。
いずれの形状にするにせよアパタイトの形態としては、平均粒径が0.01〜2μm、好ましくは0.03〜1μmである粒子(これを一次粒子と称することがある。)、又は平均粒径が0.1〜50μm、好ましくは1〜25μmであるところの、前記一次粒子が凝集して形成された粒子(これを二次粒子と称することがある。)を挙げることができる。
この発明におけるビタミンとしては、水溶性ビタミン、脂溶性ビタミンを挙げることができ、水溶性ビタミンとしてはビタミンB1(化学名:チアミン)、ビタミンB2(化学名:リボフラビン)、ビタミンB3(化学名:ニコチン酸)、ビタミンB4(化学名:アルギニン)、ビタミンB5(化学名:パントテン酸)、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB8、ビタミンB9、ビタミンB10、ビタミンB11、ビタミンB12(化学名:コバラミン)、ビタミンB13(化学名:オロット酸)、ビタミンB14、ビタミンB15、ビタミンB17等のビタミンB、ビタミンC、ビタミンH、及び葉酸等を挙げることができ、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA1(化学名:レチノール)等のビタミンA、ビタミンD2(化学名:エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(化学名:コレカルシフェロール)、活性型ビタミンD3(化学名:カルシトリオール)等のビタミンD、ビタミンE(化学名:トコフェロール)、ビタミンK1(化学名:キロフェノン)、ビタミンK2(化学名:メナキニオン)等のビタミンK等を挙げることができる。なお、ビタミンD3は、肝臓で水酸化されて25ビタミンD3(化学名:カルシフェジオール)になり、さらに腎臓で水酸化されて前記活性型ビタミンD3になり、いずれも作用する。
また、ビタミン前駆体(なお、ビタミン前駆体はプロビタミンと称されることもある。)はビタミンと同様にアパタイトに吸着されることができる。ビタミン前駆体としては、例えば、ビタミンAの前駆体であるベータカロチンを挙げることができる。
また、ビタミン前駆体(なお、ビタミン前駆体はプロビタミンと称されることもある。)はビタミンと同様にアパタイトに吸着されることができる。ビタミン前駆体としては、例えば、ビタミンAの前駆体であるベータカロチンを挙げることができる。
前記各種のビタミンのうちいずれのビタミンを採用するかは、ビタミンアパタイト複合体に機能させようとする、生体に対する活性乃至生理作用に応じて適宜に決定されることができる。例えば、生体の視覚作用を維持し、上皮細胞例えば皮膚及び粘膜を正常に維持し、発育促進及び生命維持の生理作用をビタミンアパタイト複合体に発揮させようとするのであれば、アパタイトに吸着されるビタミンとして、ビタミンAを選択するのがよい。ビタミンAを含有するビタミンアパタイト複合体は、生体に投与されると、夜盲症の防止並びに皮膚及び粘膜の角化を防止することができる。また、小腸からカルシウムとリンとの吸収を促進し、カルシウム及びリンの代謝調節をし、骨及び歯にカルシウムの沈着を促進させようとするのであれば、アパタイトに吸着されるビタミンとして、ビタミンDを選択するのがよい。ビタミンDを含有するビタミンアパタイト複合体は、生体に投与されると、くる病、骨軟化症、骨粗鬆症等を防止することができる。例えば血液の凝固に関与している物質の産生を促進し、グルコースの代謝に関与し、骨タンパク質の形成に関与させようとするのであれば、アパタイトに吸着されるビタミンとして、ビタミンKを選択するのがよい。ビタミンKを含有するビタミンアパタイト複合体は、生体に投与されると、出血性疾患の治療に有効である。例えば生殖機能を正常に維持し、抗酸化作用を発揮して過酸化脂質の生成を防止し、筋肉の萎縮を防止させようとするのであれば、アパタイトに吸着されるビタミンとして、ビタミンEを選択するのがよい。ビタミンEを含有するビタミンアパタイト複合体は、生体に投与されると、不妊治療、溶血性貧血の治療に有効である。
上述したビタミンの生理作用については、例えば非特許文献3の第222〜223ページに記載の表14−1に記載されているので、この非特許文献3の記載を参考にすることにより、アパタイトに吸着させるビタミンの種類を適宜に決定することができる。また、アパタイトに吸着させるビタミンは一種単独であっても、また、二種以上であってもよい。
ビタミンアパタイト複合体におけるビタミンの含有量は、ビタミンの種類により相違し、また、ビタミンの種類に応じて適宜に決定することができるのであって、通常の場合、アパタイトに対して0.005〜5質量%であることが好ましい。
この発明に係るビタミンアパタイト複合体は、経口投与、経皮投与、静脈注射、皮下注射、座薬投与、体内埋め込みによる投与等の各種形態をもって、生体に投与される。したがって、ビタミンアパタイト複合体の投与の態様に応じた形態にビタミンアパタイト複合体が調製される。既に一部説明をしたように、経口投与可能なビタミンアパタイト複合体は、錠剤、粉末剤の形態にされ、経皮投与又は注射等の投与形態であればビタミンアパタイト複合体は微粉末、又は微粉末含有液の形態に調製される。ビタミンアパタイト複合体を座薬として投与する場合には、ビタミンアパタイト複合体を挿入可能な形状に成形してなる成形体とすればよい。
この発明に係るビタミンアパタイト複合体を生体に投与するときのその投与量は、ビタミンの種類に応じて適宜に決定される。
この発明に係るビタミンアパタイト複合体は、以下のように製造することができる。
アパタイトに吸着させるべく適宜に選択された一種又は二種以上のビタミンを適宜の溶媒に溶解し、ビタミン含有液を調製する。そのビタミン含有液におけるビタミンの濃度は、ビタミンアパタイト複合体が目指す目的に応じて決定されるが、通常は、1〜10mg/mlが好ましい。溶媒としては、ビタミンを溶解することができるのであれば、特に限定されなく、例えば水溶性ビタミンにおいては、水、及び水とアルコールとの混合物等の水性溶媒を挙げることができ、脂溶性ビタミンにおいては、キシレン、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトン等をあげることができる。さらには、ビタミンD3においては、エタノール、キシレン等が好ましく、活性型ビタミンD3においては、エタノール、メタノール等が好ましい、ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンKにおいては、アセトン等が好ましい。ビタミン含有液に適当量のアパタイトを添加し、混合し、次いで静置した後に、固液分離により液成分を除去することにより、固形分としてビタミンアパタイト複合体を得ることができる。前記の静置に要する時間は、適宜に決定することができる。ビタミン含有液とアパタイトとの混合に際し、必要に応じて加熱下に混合してもよい。前記の静置中に、ビタミン含有液を加熱してもよく、具体的には、加熱によりビタミン含有液を40℃くらいまでに昇温してもよい。固液分離には遠心分離法、ろ過法等を適宜に採用することができる。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(実施例1)
溶媒としてキシレン、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシドにビタミンD3(コレカルシフェロール)を1mg/mlの濃度なるように溶解し、得られた溶液から採取された1mlの溶液をガラス管に入れ、このガラス管内の溶液に水酸アパタイト(以下において単にアパタイトと称する。)0.1gを添加した。添加後に、ガラス管を室温にて5分間静置した。5分が経過した後、そのガラス管を遠心分離機に装着してガラス管内の内容物を遠心分離した。ガラス管内の上澄み液に含まれるビタミンD3の含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC,HITACHI L-2420 UV-VIS Detector)により測定した。前記溶液中に含まれるビタミンD3の全体量から上澄み液中に含まれていたビタミンD3の含有量を差し引くことにより、アパタイトに吸着されたビタミンD3の吸着量を定量した。またビタミンが吸着されるアパタイトには、加焼しなかったアパタイト(1次粒子径0.05〜1μm、2次粒子径15〜35μm)と、500℃で2時間の加焼を行ったアパタイト(1次粒子径0.5〜3μm、2次粒子径20〜50μm)との2種類を用いた。
溶媒としてキシレン、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシドにビタミンD3(コレカルシフェロール)を1mg/mlの濃度なるように溶解し、得られた溶液から採取された1mlの溶液をガラス管に入れ、このガラス管内の溶液に水酸アパタイト(以下において単にアパタイトと称する。)0.1gを添加した。添加後に、ガラス管を室温にて5分間静置した。5分が経過した後、そのガラス管を遠心分離機に装着してガラス管内の内容物を遠心分離した。ガラス管内の上澄み液に含まれるビタミンD3の含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC,HITACHI L-2420 UV-VIS Detector)により測定した。前記溶液中に含まれるビタミンD3の全体量から上澄み液中に含まれていたビタミンD3の含有量を差し引くことにより、アパタイトに吸着されたビタミンD3の吸着量を定量した。またビタミンが吸着されるアパタイトには、加焼しなかったアパタイト(1次粒子径0.05〜1μm、2次粒子径15〜35μm)と、500℃で2時間の加焼を行ったアパタイト(1次粒子径0.5〜3μm、2次粒子径20〜50μm)との2種類を用いた。
キシレンを用いて得られた溶液を用いるとビタミンD3は0.158質量%の割合でアパタイトに吸着され、また、クロロホルムを用いて得られた溶液を用いるとビタミンD3は0.091質量%の割合でアパタイトに吸着され、他の溶媒を用いた場合には吸着量は検出限界以下であった。また、加焼されたアパタイトと加焼されていないアパタイトとでは、ビタミンの吸着量に差が見られなかった。
これらの結果から、溶媒を適切に選択することによりビタミンがアパタイトに吸着されることが、理解される。
(実施例2)
ビタミンとして25ビタミンD3(化学名:カルシフェジオール)を採用し、ビタミンを溶解する溶媒としてキシレン、クロロホルム、アセトン、及びジメチルスルホキシドの代わりにキシレン、クロロホルム、メタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドを採用する他は、前記実施例1と同様に実施した。
ビタミンとして25ビタミンD3(化学名:カルシフェジオール)を採用し、ビタミンを溶解する溶媒としてキシレン、クロロホルム、アセトン、及びジメチルスルホキシドの代わりにキシレン、クロロホルム、メタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドを採用する他は、前記実施例1と同様に実施した。
その結果、溶媒としてメタノールを用いたときには、アパタイトにビタミンが0.12質量%の割合で吸着した。キシレン、クロロホルムには25ビタミンD3は不溶であり、他の溶媒では吸着量は検出限界以下であった。また、加焼されたアパタイトと加焼されていないアパタイトとでは、ビタミンの吸着量に差が見られなかった。
これらの結果から、溶媒を適切に選択することによりビタミンがアパタイトに吸着されることが、理解される。
(実施例3)
吸着条件(温度・時間)を変えることによる、キシレン溶媒に溶解したビタミンD3(化学名:コレカルシフェロール)のアパタイトへの吸着量を、測定した。すなわち、溶媒としてキシレンを選択し、5分間の静置時間から種々の時間の静置時間に変化させ、また静置時の温度を常温から4〜37℃の種々の静置時温度に変えた他は、前記実施例1と同様に実施した。
吸着条件(温度・時間)を変えることによる、キシレン溶媒に溶解したビタミンD3(化学名:コレカルシフェロール)のアパタイトへの吸着量を、測定した。すなわち、溶媒としてキシレンを選択し、5分間の静置時間から種々の時間の静置時間に変化させ、また静置時の温度を常温から4〜37℃の種々の静置時温度に変えた他は、前記実施例1と同様に実施した。
その結果として、静置中の前記溶液の温度を4〜37℃のいずれの温度に維持した場合には、0.080〜0.176質量%の範囲でアパタイトにビタミンの吸着が見られた。しかしながら、前記溶液を50℃に維持しながら静置したときには、アパタイトへのビタミンの吸着は認められなかった。また、吸着時間に応じた吸着量の差異が認められなかった。また、加焼されたアパタイトと加焼されていないアパタイトとでは、ビタミンの吸着量に差が見られなかった。
(実施例4)
溶媒としてキシレンを用いて前記実施例1と同様にして、加焼なしアパタイトにビタミンD3を0.15質量%の割合で吸着してなるビタミンアパタイト複合体を製造した。このビタミンアパタイト複合体100mgを1mlの生理食塩水に浸漬し、そのまま37℃の温度に維持しつつビタミンアパタイト複合体含有の生理食塩水を静置した。24時間後、及び48時間後に、前記ビタミンアパタイト複合体含有の生理食塩水中に遊離しているビタミンD3を、HPLCにて測定した。そして当初にアパタイトに欠乏したビタミンD3量から、生理食塩水中に遊離したビタミンD3の量を差し引くことにより、ビタミンD3の溶出量を、測定した。
溶媒としてキシレンを用いて前記実施例1と同様にして、加焼なしアパタイトにビタミンD3を0.15質量%の割合で吸着してなるビタミンアパタイト複合体を製造した。このビタミンアパタイト複合体100mgを1mlの生理食塩水に浸漬し、そのまま37℃の温度に維持しつつビタミンアパタイト複合体含有の生理食塩水を静置した。24時間後、及び48時間後に、前記ビタミンアパタイト複合体含有の生理食塩水中に遊離しているビタミンD3を、HPLCにて測定した。そして当初にアパタイトに欠乏したビタミンD3量から、生理食塩水中に遊離したビタミンD3の量を差し引くことにより、ビタミンD3の溶出量を、測定した。
その結果、アパタイトからのビタミンD3の溶出量は、24時間後、及び48時間後のいずれにおいても検出限界以下であった。このことは、アパタイトにビタミンD3が安定的に吸着していることを示すと考えられる。
(実施例5)
前記実施例1における手順に沿って製造されたところの、ビタミンD3の吸着量が0.4μgであるビタミンアパタイト複合体0.1mgを使用して、これとは別に、アパタイトに吸着させることなく、かつアパタイトとを併用することなくビタミンD30.4μgを使用して、又、ビタミンD3を吸着も並存もさせない状態にあるアパタイト0.1mgを使用して、マウス由来骨芽細胞(MC3T3−E1)の各試料に対するアルカリフォスファターゼ活性を測定した。
前記実施例1における手順に沿って製造されたところの、ビタミンD3の吸着量が0.4μgであるビタミンアパタイト複合体0.1mgを使用して、これとは別に、アパタイトに吸着させることなく、かつアパタイトとを併用することなくビタミンD30.4μgを使用して、又、ビタミンD3を吸着も並存もさせない状態にあるアパタイト0.1mgを使用して、マウス由来骨芽細胞(MC3T3−E1)の各試料に対するアルカリフォスファターゼ活性を測定した。
MC3T3−E1細胞2万個を各ウエルに培地とともに入れ、インキュベータ内にて、37℃、5%CO2、湿度100%雰囲気にて、静置する。24時間後、培地を新しいものに取替え、各試料を入れて、再び前述と同様の雰囲気にて培養を行なった。48時間後に各試料におけるアルカリフォスファターゼ活性を測定した。測定には、和光純薬製ラボアッセイを用い、吸光度測定にはBioRad社製model680を用いて、波長には405nmを使用した。結果を図1に示した。
図1より、ビタミンアパタイト複合体は他の試料に比べてアルカリフォスファターゼ活性が最も高いことがわかり、骨形成能が高いことがわかる。
(実施例6)
ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンK2それぞれをキシレンに溶かし、また、ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンK2それぞれをアセトンに溶かし、得られたそれぞれの6試料につき、実施例1に準じた操作を行ってアパタイトに対する吸着量を測定した。
ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンK2それぞれをキシレンに溶かし、また、ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンK2それぞれをアセトンに溶かし、得られたそれぞれの6試料につき、実施例1に準じた操作を行ってアパタイトに対する吸着量を測定した。
その結果、アセトンに溶解した試料につき、ベータカロチン及びビタミンEは検出限界以下であり、ビタミンK2は0.17〜0.21質量%の吸着量であり、キシレンに溶解した試料につき、ベータカロチンは0.20〜0.25質量%、ビタミンEは0.01〜0.03質量%の吸着量であり、ビタミンK2はHPLC波形のピークが分裂して正確な測定ができなかった。
(実施例7)
ビタミンD3、25ビタミンD3、ビタミンK2それぞれを、メタノール、エタノール、アセトンそれぞれに添加した。ビタミンK2はエタノール及びメタノールに溶解しなかった。結局、前記三種の溶媒それぞれにビタミンそれぞれを溶解して1.0mg/mlの濃度を有する7種のビタミン含有液を調製した。これらのビタミン含有液1.0mlとアパタイト100mgとを各別にマイクロチューブに入れ、20℃の温度に維持しつつ混合した。10分後、前記マイクロチューブ内に窒素ガスを導入して溶媒を除去し、その後に除去した溶媒と同じ溶媒1.0mlを新たに入れ、アパタイトに吸着されなかったビタミンを溶媒中に溶解した。さらに10分経過後に、上澄みの各ビタミン濃度(C1)を測定した。また、吸着操作中のビタミンの劣化を考慮するために、あらかじめ、コントロールとして、同濃度のビタミン溶液を収容するマイクロチューブ内に窒素ガスを導入して溶媒を除去し、更にこのマイクロチューブ内に除去した溶媒と同じ溶媒を1.0ml入れ、そのときのマイクロチューブ内のビタミン濃度(C2)を測定し、C2−C1をアパタイトへの吸着量とした。
ビタミンD3、25ビタミンD3、ビタミンK2それぞれを、メタノール、エタノール、アセトンそれぞれに添加した。ビタミンK2はエタノール及びメタノールに溶解しなかった。結局、前記三種の溶媒それぞれにビタミンそれぞれを溶解して1.0mg/mlの濃度を有する7種のビタミン含有液を調製した。これらのビタミン含有液1.0mlとアパタイト100mgとを各別にマイクロチューブに入れ、20℃の温度に維持しつつ混合した。10分後、前記マイクロチューブ内に窒素ガスを導入して溶媒を除去し、その後に除去した溶媒と同じ溶媒1.0mlを新たに入れ、アパタイトに吸着されなかったビタミンを溶媒中に溶解した。さらに10分経過後に、上澄みの各ビタミン濃度(C1)を測定した。また、吸着操作中のビタミンの劣化を考慮するために、あらかじめ、コントロールとして、同濃度のビタミン溶液を収容するマイクロチューブ内に窒素ガスを導入して溶媒を除去し、更にこのマイクロチューブ内に除去した溶媒と同じ溶媒を1.0ml入れ、そのときのマイクロチューブ内のビタミン濃度(C2)を測定し、C2−C1をアパタイトへの吸着量とした。
その結果、エタノールを使用した試料につき、ビタミンD3は0.22〜0.32質量%、25ビタミンD3は0.62〜0.73質量%、ビタミンK2は不溶であり、メタノールを使用した試料につき、ビタミンD3は0.20〜0.25質量%、25ビタミンD3は0.27〜0.37質量%、ビタミンK2は不溶であり、アセトンを使用した試料につき、ビタミンD3は検出限界以下であり、25ビタミンD3も検出限界以下であり、ビタミンK2は0.62〜0.75質量%であった。
(実施例8)
ビタミンCを蒸留水に溶かし、1.0mg/ml、5.0mg/ml、10mg/mlのビタミンC溶液それぞれにアパタイト0.1gを浸漬し、実施例1に準じた操作を行ってアパタイトの吸着量を測定した。
ビタミンCを蒸留水に溶かし、1.0mg/ml、5.0mg/ml、10mg/mlのビタミンC溶液それぞれにアパタイト0.1gを浸漬し、実施例1に準じた操作を行ってアパタイトの吸着量を測定した。
その結果、濃度に比例して吸着量が増加し、アパタイトに対して、ビタミンCは1mg/ml溶液につき0.03〜0.06質量%、5.0mg/ml溶液につき0.61〜0.85質量%、また10mg/ml溶液につき2.5〜4.2質量%の吸着量を示した。
これらの結果から、ビタミンの種類によりアパタイトに対する吸着量が相違することが明らかになった。
(実施例9)
アパタイト及びアルミナ粉末に対する細胞の活性度を調べた。MC3T3−E1細胞二万個を各ウエルに培地とともに入れ、アパタイト及びアルミナ粉末それぞれを0.1mg/mlを添加し、インキュベータ内にて、37℃、5%CO2、湿度100%雰囲気にて、静置する。細胞活性度の測定には、MTT法(テトラゾリウム塩染色法)を用いた。MTT法とは1983年にMosmannにより開発された細胞の呼吸数を調べる方法である。この呼吸数が細胞の活性度を表す。試料添加後、1日、2日、4日、7日に呼吸度を、570nmの測定波長にて測定した。
アパタイト及びアルミナ粉末に対する細胞の活性度を調べた。MC3T3−E1細胞二万個を各ウエルに培地とともに入れ、アパタイト及びアルミナ粉末それぞれを0.1mg/mlを添加し、インキュベータ内にて、37℃、5%CO2、湿度100%雰囲気にて、静置する。細胞活性度の測定には、MTT法(テトラゾリウム塩染色法)を用いた。MTT法とは1983年にMosmannにより開発された細胞の呼吸数を調べる方法である。この呼吸数が細胞の活性度を表す。試料添加後、1日、2日、4日、7日に呼吸度を、570nmの測定波長にて測定した。
図2より、アルミナに比べてアパタイトのほうが細胞に効果的に取り込まれ、しかも、細胞活性度の高いことがわかる。
(実施例10)
この実施例はビタミンアパタイト複合体のビタミン徐放性に関する。前記実施例4と同様の方法により25ビタミンD3をアパタイトに吸着させてなるビタミンアパタイト複合体(溶媒としてエタノールを使用)、及びビタミンK2をアパタイトに吸着させてなるビタミンアパタイト複合体(溶媒としてアセトンを使用)を生理食塩水に浸漬してビタミンの徐放性を測定した。
24時間が経過してもこれら2種のビタミンアパタイト複合体にあってはビタミンは検出限界以下であり、48時間後には、25ビタミンD3を吸着させてなるビタミンアパタイト複合体からの25ビタミンD3の遊離量は0.19〜0.23質量%であり、ビタミンK2を吸着させてなるビタミンアパタイト複合体からのビタミンK2の遊離量は0.14〜0.19質量%であった。
(実施例10)
この実施例はビタミンアパタイト複合体のビタミン徐放性に関する。前記実施例4と同様の方法により25ビタミンD3をアパタイトに吸着させてなるビタミンアパタイト複合体(溶媒としてエタノールを使用)、及びビタミンK2をアパタイトに吸着させてなるビタミンアパタイト複合体(溶媒としてアセトンを使用)を生理食塩水に浸漬してビタミンの徐放性を測定した。
24時間が経過してもこれら2種のビタミンアパタイト複合体にあってはビタミンは検出限界以下であり、48時間後には、25ビタミンD3を吸着させてなるビタミンアパタイト複合体からの25ビタミンD3の遊離量は0.19〜0.23質量%であり、ビタミンK2を吸着させてなるビタミンアパタイト複合体からのビタミンK2の遊離量は0.14〜0.19質量%であった。
Claims (4)
- アパタイトにビタミン及び/又はビタミン前駆体を吸着させて成ることを特徴とするビタミンアパタイト複合体。
- アパタイトが、水酸アパタイトである請求項1記載のビタミンアパタイト複合体。
- ビタミンが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、及び、葉酸よりなる群から選択される少なくとも一種であり、ビタミン前駆体がベータカロチンである請求項1又は2に記載のビタミンアパタイト複合体。
- ビタミンは、その吸着量がアパタイトに対して0.005〜5質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のビタミンアパタイト複合体。
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- 2005-12-07 JP JP2005354037A patent/JP2007153842A/ja active Pending
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