JP2007152883A - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料インクを用いたインクジェット記録において、後処理をすることなく、光沢性に優れた記録を行う。
【解決手段】記録媒体上に、顔料粒子を溶媒に分散した顔料インクを付着させるインクジェット記録において、記録媒体の非記録部分と単独ドット表面との平均高低差hが300nm以下である。また、顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50と、記録媒体の非記録部分と単独ドット表面の平均高低差hとが、D90>h>D50である。これらの条件を満たすような記録媒体および/またはインクを用いて記録する。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法に関し、詳しくは、顔料インクを用いて記録媒体に記録する画像などの光沢性の調整に関するものである。
近年、デジタルカメラやコンピューターの普及に伴い、画像データを紙等の記録媒体に記録するための記録技術が急速に普及して来ている。これらの記録技術の1つの目標は、銀塩写真並みの画質の記録を行うことであり、特に、色再現性、濃度、質感、解像度、光沢性、耐候性等において銀塩写真に劣らない記録を行うことである。
記録方式には電子写真方式やインクジェット方式、昇華型感熱転写方式等様々な方式がある。中でも、インクジェット方式の記録装置は、比較的安価であり、モノクロ高速記録から高画質カラー記録まで幅広い用途に対応できるという汎用性の高さから、近年急速に普及している。このインクジェット記録方式では、写真画質の印刷に適した専用紙を用いることによって銀塩写真並みの画質で記録を行うことが可能となっている。ここで、写真画質の記録に適した専用紙としては、膨潤型記録媒体や空隙間型記録媒体のような光沢型記録媒体が好ましく用いられる。
一方、インクジェット記録方式で用いられるインクは、色剤が溶媒に溶解している染料インクと色剤が溶媒に分散している顔料インクの2つに大別される。このうち染料インクは溶媒に溶解していることから、発色性がよく、彩度も高い傾向にあるため、写真画質の記録に好ましく用いられる。しかし、染料インクは一般的に光やオゾン等のガスによる退色が起こりやすく、看板やポスターのようにある期間の掲示を行うためには、表面にラミネート処理等を施す必要がある。これに対し、顔料インクは一般的に光やオゾン等のガスによる退色が起こりにくいため、ポスター等の掲示物に好ましく用いられている。顔料インクは、以前は分散安定性の点から粒径を大きくせざるを得ず、銀塩写真等の印刷には不向きであった。しかし、近年の分散技術の向上により、粒径を小さくすることが可能となり、銀塩写真調の記録も行われるようになって来ている(特許文献1)。
特開2003−128955 号公報
しかしながら、上述した従来の顔料インクを用いて記録媒体に記録を行う場合、顔料粒子が記録媒体表面において多く存在した状態となることによる問題がある。例えば、上述の写真画質の記録に用いられる膨潤型記録媒体は媒体表面に孔が存在しないし、あるいは空隙間型記録媒体のように孔が開いていても、孔径と比較して顔料粒子の粒径が大きい。このため、顔料粒子の大部分は記録媒体のインク吸収層内部に侵入できず、記録媒体表面に露出することになる。この結果、記録媒体の顔料インクで記録部分では、露出した顔料粒子により新たな表面が形成されることになる。従って、記録媒体に露出した顔料粒子の堆積状態によっては、表面の平滑性が、記録媒体表面と異なる場合がある。そして、この平滑性の違いは、記録媒体の記録部と非記録部との間の光沢の違いとして現れることとなる。記録媒体内に光沢の異なる領域が存在すると、違和感として感じられ、銀塩写真の光沢感とはほど遠いものとなることがある。
特に、従来の顔料インクは、記録媒体表面に堆積した顔料粒子によって、表面平滑性は記録媒体表面より粗くなる傾向がある。このため、光沢性が低くなり、違和感の強い画像になりやすいという問題がある。
こうした問題に対し、記録後にラミネート処理等の後処理を行う方法が知られている。しかし、これらの後処理を用いる方法は、記録後の処理に手間がかかり、また、比較的大きなエネルギーを要することや、装置の大型化、コストアップにつながるなどの問題を有している。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、顔料インクを用いたインクジェット記録方法において、後処理をすることなく、光沢性に優れた記録を行うことが可能なインクジェット記録方法を提供することである。
そのために本発明では、記録媒体に、顔料粒子を溶媒に分散した顔料インクを付着させて記録を行うためのインクジェット記録方法において、前記記録媒体の非記録部分と前記顔料インクによって形成される単独ドット表面との平均高低差hが300nm以下であり、かつ、前記顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、前記顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50と、前記平均高低差hとが、D90>h>D50を満たすことを特徴とする。
以上の構成によれば、顔料インクを用いたインクジェット記録において、後処理をすることなく、光沢性に優れた記録を行うことが可能となる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本願発明者らは、顔料インクを用いて記録を行う場合に光沢を低下させる要因について検討した結果、顔料粒子によって形成されたドットと非記録部の境界部に生じる段差(以下、ドット段差ともいう)が光沢性を低下させる支配的要因であることを見いだした。顔料粒子は、染料と異なり、記録媒体のインク吸収層内部に侵入できずに記録媒体表面に露出した状態で固定化される。このため、顔料粒子によって形成されたドットと非記録部で段差が形成され、その結果、記録部の表面の平滑性が失われることとなり、光沢性の低下をもたらすものと考えられる。
上記ドット段差に相当する指標として、記録媒体の非記録部分と顔料粒子によって形成される単独のインクドット表面との平均高低差h(以下、ドット段差hともいう。)を用いて検討を行った。この平均高低差は、実施例において後述されるように、記録媒体に形成された複数個の相互に連結していない顔料インクのドットそれぞれと記録媒体のドットが形成されていない被記録部分に対する高さの平均をとったものである。
検討の結果、ドット段差hが300nm以下であり、さらにドット段差hが、顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50の間にあるという関係を満たすときに、高い光沢が得られることを見いだした。ここで、顔料粒子の「粒度分布の90%累積値D90」や「粒度分布の50%累積値D50」とは、顔料インクにおける顔料粒子の粒子径の度数分布をとり、その分布において累積相対度数がそれぞれ90%、50%となる粒子径を意味している。
以上のようなドット段差hと累積値Dとの関係の意味するところは、以下のように考えられる。先ず、上記関係において、累積値D50が示す粒子径はそのインクの顔料粒子径の平均値を表す指標の一つであり、また、累積値D90が示す粒子径はそのインクの顔料粒子径の最大値に近い値である。このことを考慮すると、ドット段差hが累積値D90と累積値D50の間にある場合、ドットを形成する顔料粒子は、単分子膜に近い状態にあると考えられる。従って、上記関係は、ドットを形成する顔料粒子が単分子膜に近い構造をとるときの条件を表すものと考えられる。
また、検討の結果、ドット段差hが300nm以下であることと、ドット段差hが上記関係の範囲内にあることの両方を満たすことによって、十分な光沢を得ることができる。例えば、ドット段差hが300nm以下であっても、累積値D50より小さい場合は、ドット段差hはそのドットを形成する顔料粒子の平均粒子径よりも小さいと考えられる。このような場合、そのドットでは顔料粒子が間引かれた状態であって密な状態ではなく、これによってドットの盛り上がりが少なくドット段差を低くなっている。すなわち、そのドットは、顔料粒子がまばらな状態で単分子膜の構造ではない状態にあると考えられる。つまり、ドット内の顔料粒子密度が低下し、ドット内の顔料粒子間に隙間が多く発生することとるため、ドット表面の平滑さが失われ、光沢が低下してしまうと考えられる。
なお、ドット段差hが上記のように300nm以下であることについて、好ましくは、250nm以下であり、さらに好ましくは、200nm以下であることが確認されている。
以上の条件において、記録媒体の非記録部分と単独ドット表面との平均高低差hを求める方法は、特に制限はない。例えば、原子間力顕微鏡(AtomicForceMicroscopy:AFMセイコーインスツルメンツ(株)製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニット)等を用いて高低差を求める方法がある。また、顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90および50%累積値D50は、顔料粒子の粒度分布から求めることができる。そして、この粒度分布は、動的光散乱法等を用いた粒径測定機器により測定した散乱強度を、ヒストグラム法のMarquadt解析法で解析した際の頻度分布から求める事ができる。ここで、散乱強度分布を測定するための具体的な測定装置としては、例えば、電気泳動光散乱光度計ELS−8000(大塚電子株式会社製)等が挙げられ、上記解析処理は付属のソフトウエアにより処理することができる。
本発明の特に好ましい実施形態では、さらに、顔料インク中の固形分濃度が0.5〜3wt%であることを特徴である。固形分濃度が3wt%より大きい場合には、顔料インクによって形成されるドットの固形分比率が比較的高いものとなって顔料粒子数が相対的に増加する結果、ドット段差hが大きくなるため好ましくない。また、固形分濃度が0.5wt%以下では、十分な発色を得られない可能性がある。
以上説明した、ドットを単分子膜に近い膜構造とする条件を満たす記録方法は、上記条件に応じて調整された記録媒体および同じく上記条件に応じて調整された顔料インクを用いて記録することである。以下、これら記録媒体および顔料インクの調整について説明する。
(1)記録媒体による膜構造の実現
水溶性バインダーの種類あるいは使用量の最適化、バインダーの架橋度の調整等によって記録媒体のインク溶媒吸収速度を調整する。
記録媒体の溶媒吸収速度の調整によって、顔料インクの溶媒の吸収速度を遅くすることができる。これにより、記録媒体上に着弾した顔料インクが浸透するまでの時間が(相対的に)長くすることができる。そして、この時間の間に顔料インクのドット表面部分やドット同士が重なりあう部分が平らになる。その結果、顔料インク中の顔料粒子が、記録媒体上に(相対的に)均一に近い状態で分布し単分子膜に近い膜構造になる。例えば、この調整は、所定のインク溶媒吸収速度を持つ記録媒体を製造してそれを初期記録媒体とし、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈する記録媒体を目的として、上記溶媒吸収速度を初期記録媒体よりも遅くすることによって行うことができる。
(2)インクによる膜構造の実現
顔料インクの調整は、顔料粒子の1次粒径、2次粒径の最適化、界面活性剤、水溶性溶媒の種類あるいは使用量の調整による顔料インクの動的表面張力の最適化、または分散剤種類あるいは使用量の最適化およびインク組成の調整等による分散粒子の安定化を行う。あるいはこれらを適宜組み合わせた調整を行う。これにより、記録部分で顔料粒子がとる構造を制御することができる。
(2−1)1次粒子の径、2次粒子の径の最適化によって、特に粒子径の分布をシャープにし、粒径のばらつきを小さくすることができる。これにより、顔料インク中の顔料粒子が記録媒体上に(相対的に)均一に近い状態で分布し、単分子膜に近い膜構造になると考えられる。逆に言えば、顔料粒子径のばらつきが大きい場合は、粒子径の大きい粒子と、粒子径の小さい粒子が混在し、大きさの異なる粒子が隣接する箇所に隙間(凹凸)が生じることがある。この隙間部分に、粒子径の小さい粒子が入り込むことによって、単分子膜に近い膜構造ではなくなると考えられる。例えば、この調整は、先ず所定の1次粒子の径、2次粒子の径を持つインクを製造してそれを初期インクとする。そして、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈するインクを目的として、1次粒子の径、2次粒子の径を上記初期インクよりもより最適化することによって行うことができる。
(2−2)動的表面張力の調整によって動的表面張力を下げ、これにより、記録媒体上で顔料インクのドットが(相対的に)広がるようにし、顔料インク中の顔料粒子が記録媒体上で(相対的に)均一に近い状態で分布するようにすることができる。これにより、単分子膜に近い膜構造を実現することができる。例えば、この調整は、所定の動的表面張力を持つインクを製造してそれを初期インクとし、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈することができるインクを目的として、動的表面張力を上記初期インクよりもより下げることによって行うことができる。
(2−3)分散粒子の安定化によって顔料粒子の凝集を(相対的に)低減することができる。その結果、顔料インク中の顔料粒子が記録媒体上で(相対的に)均一に近い状態で分布するようにすることができる。これにより、単分子膜に近い膜構造を実現することができる。例えば、この調整は、先ず所定の分散粒子の安定性を持つインクを製造してそれを初期インクとする。そして、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈することができるインクを目的として、分散粒子の安定性を上記初期インクよりもより高くすることによって行うことができる。
(2−4)上述したそれぞれのインクの調整の組み合わせによっても、単分子膜に近い膜構造を形成できる。
(3)記録媒体とインクの組み合わせによる膜構造の実現
上述した記録媒体とインクそれぞれの調整を組み合わせることによっても、好ましい膜構造を実現することができる。
本発明の実施形態で用いる記録媒体は、上述のように調整されたものであるが、以下の組成を持つものである。本発明の実施形態の記録媒体は微粒子および水溶性樹脂を含有する。この微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を用いることができるが、特に、高光沢で、かつ高発色濃度が得られ、さらに微粒が容易に得やすいことから無機微粒子が望ましい。そのような無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、ハイドロタルサイト、炭酸力ルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等があるが、もちろんこれらに限られるものではない。
また、水溶性樹脂は、特に限られるものではないが、いわゆる水性インクを受容でき、水性インクに対して溶解性を示すものであればよい。具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、力チオン変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メラミン樹脂、あるいはこれらの変性物等の合成樹脂、また、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂などの水溶性樹脂を挙げることができるがこれらに限られるものではない。
また、本発明の実施形態の記録媒体を構成する基材としては、吸収性支持体(例えば紙など)や非吸収性支持体を用いることができるが、より高品位な印字物が得られる観点から、非吸水性支持体が望ましい。好ましく用いられる非吸収性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルムが用いられる。あるいは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
本発明の実施形態の記録媒体を作成するに当たっては、先ず上記組成物を、必要により他の添加剤と共に、水あるいはアルコール、多価アルコール類、または他の適当な有機溶媒に溶解、または分散し、塗工液を調整する。得られた塗工液を、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコーター法、力−テンコーター法などにより基材表面に塗工する。その後、例えば熱風乾燥炉、熱ドラムなどを用いて乾燥し、本発明で用いる記録媒体が得られる。さらに必要に応じてインク受容層の平滑化或は表面強度を上げるためにスーパーカレンダー処理などを施してもよい。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録方法で用いる記録ヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)をもちいることができる。また、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)なども用いることができる。
次に、本発明の実施形態の顔料インクは、上述した膜構造を形成するための条件を満たすものであるが、その組成は以下に示すものである。本発明の実施形態の顔料インクの顔料は、顔料インクの全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。また、本発明の実施形態において使用される顔料としては、具体的には、黒色の顔料としてはカーボンブラックが好ましく用いられ、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックである。これは、一次粒子径が15〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものである。
このような特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(以上、コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FWl、COLOR Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
また、イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83等が挙げられ、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられ、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。また、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も、勿論、使用することが可能である。
また、顔料の分散剤としては、水溶性樹脂ならどのようなものでもよいが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲のものを使用する。このような分散剤として、具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性の重合性単量体)からなるブロック共重合体、或いは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
あるいは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。尚、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、着色顔料インクの全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
特に、上述したような顔料が含有されている顔料インクの場合には、顔料インクの全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。このようなものとすれば、分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れた着色顔料インクとすることができるので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。
この使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記したような顔料及び分散剤である水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散又は溶解される。
本発明の実施形態で使用される顔料が含有された顔料インクにおいて好適な水性液媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上述したような水溶性有機溶剤の顔料インク中の含有量は、一般的には、顔料インクの全質量の3〜50質量%の範囲、より好ましくは3〜40質量%の範囲で使用する。また、使用される水の含有量としては、顔料インクの全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
また、本発明の実施形態における顔料インクとしては、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つ顔料インクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に浸透促進剤として機能する界面活性剤は、記録媒体に反応液と顔料インクの液体成分を速やかに浸透させる役割を担うための適量を添加する必要がある。添加量の例としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%が好適である。
アニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものを何れも好ましく使用することができる。
上述したような顔料が含有された顔料インクの作製方法としては、始めに、分散剤としての水溶性樹脂と水とが少なくとも含有された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌する。その後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液にサイズ剤及び上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明で使用する顔料インクとする。
なお、分散剤として前記したようなアルカリ可溶型樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要となる。この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましく使用される。
また、顔料が含有されている顔料インクの作製方法においては、顔料を含む水性媒体を攪拌し、分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。すなわち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、ナノマイザー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
また、最適な粒度分布を有する顔料を用いるが、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすることによる方法がある。また、分散機の処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組合せ等の手法が挙げられる。
(実施例)
以上説明した本発明の実施形態に係る記録媒体とインク、およびそれらを用いたインクジェット記録装置の具体例、さらには評価について次に説明する。
インクジェット記録装置
図1は、本発明を適用可能な記録装置の概略構成を説明するための斜視図である。本例の記録装置50はシリアルスキャン方式の記録装置であり、ガイド軸51,52によって、キャリッジ53が矢印Aの主走査方向に移動自在にガイドされている。キャリッジ53は、キャリッジモータおよびその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復動される。キャリッジ53には、記録ヘッド10(図1においては不図示)と、その記録ヘッド10にインクを供給するインクタンク54が搭載される。記録ヘッド10とインクタンク54は、インクジェットカートリッジを構成するものであってもよい。インクタンク54に貯留される各色インクは上記実施形態で説明した顔料インクである。記録媒体としての用紙Pは、装置の前端部に設けられた挿入口55から挿入された後、その搬送方向が反転されてから、送りローラ56によって矢印Bの副走査方向に搬送される。この記録媒体も上記実施形態で説明した記録媒体である。
記録装置50は、記録ヘッド10を主走査方向に移動させつつ、プラテン57上の用紙Pのプリント領域に向かってインクを吐出させる記録動作と、その記録幅に対応する距離だけ用紙Pを副走査方向に搬送する搬送動作と行う。そして、これらの動作を繰り返すことによって、用紙P上に順次画像を記録する。
キャリッジ53の移動領域における図1中の左端には、キャリッジ53に搭載された記録ヘッド10の吐出口15の形成面と対向する回復系ユニット(回復処理手段)58が設けられている。回復系ユニット58には、記録ヘッド10の吐出口15のキャッピングが可能なキャップと、そのキャップ内に負圧を導入可能な吸引ポンプなどが備えられている。そして、吐出口15を覆ったキャップ内に負圧を導入することにより、吐出口15からインクを吸引排出させて、記録ヘッド10の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吸引回復処理」ともいう)をする。また、キャップ内に向かって、吐出口15から画像の寄与しないインクを吐出させることによって、記録ヘッド10の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吐出回復処理」ともいう)をすることもできる。
顔料インク
下記に述べるようにして、夫々顔料とアニオン性化合物とを含む顔料インクを得た。なお、以下の記載において、「部」又は「%」とあるものは特に断わらない限り質量基準である。
(顔料分散液の作製)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価240、重量平均分子量=5,000)
1.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 81.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたピグメントレッド7を10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
さらに、遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液とした。
(顔料インク1の作製)
上記の分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製して顔料インクとした。このときの表面張力は34mN/mであった。
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・N−メチルピロリドン 5.0部
・エチルアルコール 2.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1.0部
・イオン交換水 47.0部
(顔料インク2〜4の作製)
上記顔料インク1の調整において、分散条件を適宜調整して、同じく表1に記載の顔料インクの粒度分布となるようにした以外は同様にして、顔料インク2〜5を精製した。
(顔料インク5の作製)
上記顔料インク1の調整において、顔料分散液を50.0部とし、イオン交換水を27.0部とした以外は同様にして、顔料インク5を精製した。
顔料インクの粒度分布の測定方法
上記顔料インク1から5における顔料粒子の粒度分布は下記の方法によって測定した。
顔料粒子の固形分濃度が0.1%になるように、顔料インクをイオン交換水で希釈した後、超音波洗浄機にて5分間分散させて、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)社製、ELS−8000、液温25℃、石英セル使用)を用いて散乱強度を測定した。粒度分布は、付属のソフトウェアを用い、ヒストグラム法のMarquadt解析法により求めた。さらに得られた粒度分布によりD50値、D90値求めた。
評価方法
上記で得られた顔料インク1から5について、表1に、下記の評価方法で評価した評価結果を夫々示した。
(評価用記録試料の作製)
上述の方法により作製した顔料インク1〜6、および記録媒体(プロフェッショナルフォトペーパーPR101(キヤノン株式会社製);この例では、記録媒体の前述した調整は行われていない。)を用いて、下記に記載の方法に則り記録を行い、評価用記録試料1〜5を作製した。
この記録は、図1にて上述したインクジェット記録装置を用いて行う。すなわち、ノズル孔径20μm、駆動周波数12kHz、1色当たりのノズル数256、ノズルの配列ピッチ600dpiである記録ヘッドを用い、最大記録密度1200dpi×1200dpiのドット密度で記録を行うインクジェットプリンタを使用して行った。具体的には、各記録媒体に反射濃度として1.0を与える各単色ベタ画像パターン、および各ドットが互いに独立して離散的に記録される単色画像パターンを記録し使用した。なお、ここでdpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数をいう。
非記録部分と単独ドット表面との平均高低差の測定
上記記録した各ドットが互いに独立して離散的に形成される単色画像パターンを使用し、以下に示す方法に従って、全くドットが形成されていない非記録部分と各単独ドット表面との平均高低差hを測定した。高低差hは、原子間力顕微鏡((AtomicForceMicroscopy:AFMセイコーインスツルメンツ(株)製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニット)を用いて測定した。記録媒体の300μm×300μmの測定領域に総てのドットを形成し、各色インクについて50ドットの高低差を測定し、その算術平均値を平均高低差hとした。
光沢度の評価基準
上記記録した単色ベタ画像パターンについて、JIS―Z―8741に基づく20度鏡面光沢度を、デジタル変角高度計UGV−5D(スガ試験機製)を用いて測定した。
Figure 2007152883
上記表1に示すように、本発明の実施例にかかる顔料インク、すなわち、平均高低差と累積値D50、D90との関係が前述の条件を満たす顔料インクを用いて記録した画像は、光沢性に優れた記録物を得ることができる。
本発明の一実施例にかかるインクジェット記録装置を示す斜視図である。
符号の説明
54 インクタンク
P 記録媒体

Claims (4)

  1. 記録媒体に、顔料粒子を溶媒に分散した顔料インクを付着させて記録を行うためのインクジェット記録方法において、
    前記記録媒体の非記録部分と前記顔料インクによって形成される単独ドット表面との平均高低差hが300nm以下であり、かつ、
    前記顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、前記顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50と、前記平均高低差hとが、D90>h>D50を満たす
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記顔料インク中の固形分濃度が0.5wt%から3wt%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 記録媒体に、顔料粒子を溶媒に分散した顔料インクを付着させて記録を行うインクジェット記録であって、
    前記記録媒体の非記録部分と前記顔料インクによって形成される単独ドット表面との平均高低差hが300nm以下であり、かつ、
    前記顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、前記顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50と、前記平均高低差hとが、D90>h>D50を満たす、
    記録に用いられる記録媒体の製造方法において、
    予め定められたインク溶媒吸収速度を持つ記録媒体を製造してそれを初期記録媒体とし、前記顔料インクによるドットが単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈する記録媒体を目的として、前記溶媒吸収速度を初期記録媒体よりも遅くすることを特徴とする記録媒体の製造方法。
  4. 記録媒体に、顔料粒子を溶媒に分散した顔料インクを付着させて記録を行うインクジェット記録であって、
    前記記録媒体の非記録部分と前記顔料インクによって形成される単独ドット表面との平均高低差hが300nm以下であり、かつ、
    前記顔料粒子の粒度分布の90%累積値D90と、前記顔料粒子の粒度分布の50%累積値D50と、前記平均高低差hとが、D90>h>D50を満たす、
    記録に用いられる顔料インクの製造方法において、
    予め定められた1次粒子の径、2次粒子の径を持つインクを製造してそれを初期インクとし、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈することができるインクを目的として、前記1次粒子の径、2次粒子の径を前記初期インクよりもより最適化することによって行い、または
    予め定められた動的表面張力を持つインクを製造してそれを初期インクとし、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈することができるインクを目的として、前記動的表面張力を前記初期インクよりもより下げることによって行い、または
    予め定められた分散粒子の安定性を持つインクを製造してそれを初期インクとし、単分子膜に近い膜構造で一定以上の光沢度を呈することができるインクを目的として、前記分散粒子の安定性を上記初期インクよりもより高くすることによって行う、
    ことの少なくとも1つを行うことを特徴とする顔料インクの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009249446A (ja) * 2008-04-03 2009-10-29 Konica Minolta Ij Technologies Inc 水性インクジェットインク及びインクジェット記録方法

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