JP2007149861A - イオンミリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミリングレートのモニタリングが常時可能であり、安定した加工を行うことができると共に、ミリング加工の進度の正確な検出が可能であって所望のミリングレートで加工を終了できるイオンミリング装置を提供する。
【解決手段】被加工物5を自公転させながらミリング加工を行うイオンミリング装置1であって、振動子38と、振動子の振動周波数を検出する周波数検出部42と、振動周波数変化量をミリング加工量に換算する加工量換算部43と、換算されたミリング加工量が設定値に達した場合に加工停止させる加工制御部41とを備え、振動子の配置位置を、ホルダ部材31の被加工物配置面中心からビームライン全長の5〜50%相当の距離だけイオンビーム源2側に離隔し、且つ、公転外周円半径の40〜100%に相当する距離をビーム直交軸Yへの投影距離だけビーム照射軸Xの中心から離隔した位置に設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、被加工物に対してイオンビーム源からイオンビームを照射してミリング加工を行うイオンミリング装置に係り、特に、自転機構及び公転機構によって被加工物を自公転させながらミリング加工を行うイオンミリング装置に関する。
半導体基板の微細加工に用いられるイオンミリング装置では、イオンビーム源に対してホルダ部材を公転させながらホルダ部材に保持された基板を自転させることによって、基板のミリング誤差の面内分布を改善している(例えば、特許文献1参照)。しかし、基板を自公転させるため基板位置が一定せず、基板表面のミリングレートの管理が難しい。
例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)では、発光分光型や質量分析型のエッチング加工の終点検出法が用いられている(例えば、特許文献2参照)。これは、エッチング進度に応じて反応性ガス中における特定の元素量の変化を発光スペクトルや質量スペクトルをモニタすることによって捉え、これによりエッチング加工の終点を検出するものである。しかし、イオンミリング装置では、イオンミリングされた元素が反応性ガス中に放出され難く、コストや感度などの面から用いられていない。
したがって、従来のイオンミリング装置のミリングレートの管理は、予め加工時間に対応するミリング加工量の実測データを作成しておき、そのデータに基づいてミリング加工の終点を判断していた。
特開平8−134668号公報 特開平8−124904号公報
しかしながら、前記した従来の装置では、加工中の電圧や電流の変動による不安定性、電極等の経時的変化および長時間の連続処理によるミリングレートの変動などの種々の変動要素が介在し、実際のミリングレートにばらつきがあるので、実測データに基づき単に時間だけで判断すると正確なミリング加工の終点を判断することができないという問題あった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミリングレートのモニタリングが常時可能であり、安定した加工を行うことができると共に、ミリング加工の進度の正確な検出が可能であって所望のミリングレートで加工を終了することができるイオンミリング装置を提供することにある。
本発明のイオンミリング装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、イオンビームを加工ステージ側に向けて照射するイオンビーム源と、加工ステージにおけるビーム照射領域に被加工物を複数保持可能なホルダ部材と、当該ホルダ部材に保持された被加工物を自転させる自転機構と、ホルダ部材を回転させることにより被加工物を公転させる公転機構とを有し、
前記自転機構及び前記公転機構によって被加工物を自公転させながら当該被加工物に対してイオンビーム源からのイオンビームを照射してミリング加工を行うイオンミリング装置であって、
励振器の励振動作によって振動する振動子と、
前記振動子の振動周波数を検出する周波数検出部と、
当該周波数検出部によって検出された振動周波数変化量を、被加工物のミリング加工量に換算する加工量換算部と、
前記加工量換算部によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、ミリング加工を停止させる加工制御部とを備え、
ホルダ部材の被加工物配置面の中心を通るビーム照射軸における振動子の配置位置を、ホルダ部材の被加工物配置面の中心からビームライン全長の5〜50%に相当する距離だけイオンビーム源側に離隔した位置に設定し、且つ、ビーム照射軸に直交するビーム直交軸における振動子の配置位置を、被加工物の公転外周円半径の40〜100%に相当する距離をビーム直交軸に投影した投影距離だけビーム照射軸中心から離隔した位置に設定したことを特徴とする。
なお、「ビームライン全長」とは、イオンビーム源の引出電極からホルダ部材の被加工物配置面の中心までの距離を意味する。また、「被加工物の公転外周円」とは、被加工物が公転したときの軌跡が描く最外周の円を意味する。
上記の発明によれば、イオンミリング加工中に被加工物と共に振動子を加工し、該振動子の振動周波数を周波数検出部で検出し、検出された振動周波数変化量を加工量換算部によって被加工物のミリング加工量に換算することにより、ミリング加工の進度に応じて変化する振動子の振動周波数によりミリングレートのモニタリングが常時可能となる。したがって、安定したイオンミリング加工を行うことができ、ミリング加工の進度を正確に検出することが可能となる。
そして、加工量換算部によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合には、加工制御部がミリング加工を停止させるので、所望のミリングレートで加工を終了することができる。
また、振動子の配置位置を上記のようなビーム照射軸及びビーム直交軸に基づく適切な範囲に設定したので、ミリング加工の面内均一性とミリング速度比を確保することができる。
上記構成において、前記振動子を、前記公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲でビーム直交方向に往復移動させる振動子移動機構を設けることが望ましい。
このように構成すると、振動子移動機構により振動子を公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲で往復移動するので、ミリング加工の面内均一性をより向上させることができる。
上記各構成において、前記加工制御部は、ビーム照射領域に進退自在に設けられたシャッタを有し、ミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、前記シャッタをイオンビーム照射領域に進出させて当該シャッタによって前記振動子及び前記ホルダ部材に対するイオンビームを遮蔽することが望ましい。
この構成によれば、加工制御部によりシャッタを進出させてイオンビームを強制的に遮蔽するので、予め定められた設定値でミリング加工を確実に終了させることができる。
上記構成において、前記加工制御部は、前記シャッタによって前記振動子及び前記ホルダ部材に対するイオンビームを遮蔽した後、イオンビーム源を駆動するための駆動電源を切断することが望ましい。
この構成によれば、加工制御部が、シャッタによってイオンビームを遮蔽した後、イオンビーム源の駆動電源を切断するので、電源を切断後にもかかわらず被加工物にイオンビームが照射されるのを防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明に係るイオンミリング装置のシステム構成の一形態を示す模式図である。
図示するように、本実施形態のイオンミリング装置1は、プラズマを発生するイオンビーム源2を区画するアークチャンバ3と、このアークチャンバ3内で発生したプラズマ中のArイオンをイオンビームとして引き出す引出電極4と、被加工物5を配置する加工チャンバ10とを備えている。この加工チャンバ10は、アークチャンバ3と連通しており、これらのチャンバ3,10によって真空チャンバが構成される。即ち、加工チャンバ10は、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、この真空ポンプによってアークチャンバ3及び加工チャンバ10内のガスが排気されて減圧状態に維持されている。
上記アークチャンバ3は、一端(図1において右側)が加工チャンバ10と連通した横向きの有底円筒状を呈しており、その外面側には多数の磁石11が当該アークチャンバ3の周囲を囲繞する状態で配設されており、磁石11によって、アークチャンバ3の内壁近傍にカスプ磁界を形成している。カスプ磁場は、高温のプラズマがアークチャンバ3の内壁に直接接触しないように、磁力線の壁でプラズマをアークチャンバ3内に閉じ込めると共に、放電領域に磁界をかけて電子の飛程距離を長くしてイオン化率を増大させる機能を有する。このアークチャンバ3の内側には、チャンバ内の空間に熱電子を放出する複数のイオン源フィラメント15が取り付けられている。これらのフィラメント15は、例えばタングステン等から成り、アークチャンバ3の内壁に近い側(外側)にマイナス端子が位置されるようにフィラメント電源16に並列接続され、該フィラメント電源16から所定の電圧が印加される。また、アークチャンバ3にはアーク電源19の正極側が接続され、負極側は上記フィラメント電源16の正極側に接続されて、アーク電圧が印加される。さらに、アークチャンバ3にはガス供給口20が開設されており、このガス供給口20を通じてガス供給装置(図示せず)からのArガスがチャンバ内に導入される。したがって、フィラメント15のマイナス端子とアークチャンバ3のアノード内壁間の放電によって、ガス供給口20から導入されたArガスがイオン化されるようになっている。
上記引出電極4は、アークチャンバ3の開口部近傍に取り付けられており、加速電極4aと減速電極4bとにより構成されている。加速電極4a及び減速電極4bは、例えば厚さ約1mmの円盤状のモリブデン板に、多数の通孔を全面に亘って開設したものであり、互いに所定間隔を隔てた状態で配置されている。そして、加速電極4aには、加速電源25の正極が接続されて正電圧が印加される。また、加速電源25の正極側は抵抗26を介して上記アーク電源19の正極側に接続されており、負極側は接地されている。他方、減速電極4bには、減速電源27の負極が接続されて負電圧が印加され、減速電源27の正極側は接地されている。これらの加速電極4aおよび減速電極4bに印加する電圧を調整することによってイオンビームの照射を制御することができるように成っている。
上記フィラメント電源16、アーク電源19、加速電源25及び減速電源27は、本実施形態のイオンミリング装置1の駆動電源40を構成している。
上記加工チャンバ10は接地されており、この加工チャンバ10内に区画された加工ステージ32には円板状のホルダ部材31が設けられ、該ホルダ部材31のアークチャンバ3と対向する面には、その円周方向に沿って均等間隔に複数の被加工物5が保持される。このホルダ部材31はアークチャンバ3からのイオンビーム照射領域に設けられており、イオンビーム照射方向に対して所定角度(例えば−38度)に傾斜させた状態で配置されて、ミリング効率を上げる工夫が施されている。また、ホルダ部材31には、該ホルダ部材31を矢印R方向に公転可能な公転機構(図示せず)と、被加工物5を矢印r方向に自転可能な自転機構(図示せず)とが備えられており、被加工物5が公転しながら自転するように成っている。公転機構及び自転機構は、例えば、歯車機構によって形成され、公転機構による矢印R方向の公転は3rpm〜8rpm程度で回転し、自転機構による矢印r方向の自転は10rpm〜25rpm程度で回転する。イオンミリング加工の対象となる被加工物5としては、例えば、半導体基板やインクジェットプリンタ等の液体噴射装置の記録ヘッドのヘッド基板が挙げられる。
また、加工チャンバ10内には、ミリング加工中の被加工物5の表面の電荷を中性化させるマイクロ波ニュートラライザ(中性化装置)35と、シャッタ36と、被加工物5と共にイオンミリング加工される振動子38と、が配設されている。なお、振動子38としては、例えば、水晶振動子などの薄膜振動体を用いることができる。
マイクロ波ニュートラライザ35は、加工チャンバ10内に形成した磁場中にマイクロ波を照射してプラズマを生成させ、このプラズマを電子過剰にすることによって、加工チャンバ10内に中和電子(e)を発生させる。この中和電子によってイオンビームのArイオンが中和されると共に被加工物5の表面に帯電したプラス電荷が中和される。シャッタ36は、ミリング加工前後のアークチャンバ3側から照射されるイオンビーム及びマイクロ波ニュートラライザ35からの中和電子が被加工物3に照射されるのを防止する遮蔽板として機能するものであり、マイクロ波ニュートラライザ35とホルダ部材31との間の領域に開閉自在に配置されている。このシャッタ36は、円板状を呈しており、ソレノイド等の進退手段37に接続され、該進退手段37には加工制御部41が接続されている。この加工制御部41によって進退手段37の作動が進退制御されることにより、該シャッタ36の閉状態においては、イオンビーム照射領域外からイオンビーム照射領域内に進出してイオンビームおよび中和電子を遮蔽し、これらが被加工物5に照射されるのを防止する。また、このシャッタ36は、被加工物5に対するエッチング加工時には、イオンビーム照射領域内からイオンビーム照射領域外に退避して開状態となる。なお、加工制御部41は、上記駆動電源40にも接続されている。
振動子38は、励振器(図示せず)の励振動作によって振動し、該振動子38の振動周波数はこれに電気的に接続された周波数カウンタ等の周波数検出部42によって検出される。この周波数検出部42には加工量換算部43が電気的に接続されており、該加工量換算部43は周波数検出部42によって検出された振動周波数変化量を被加工物5のミリング加工量に換算する。この加工量換算部43には上記加工制御部41が電気的に接続され、加工量換算部43によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合には、加工制御部41がミリング加工を停止させる。具体的には、加工制御部41は、加工量換算部43によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、まず、上記進退手段37の作動を進出制御してシャッタ36をイオンビーム照射領域に進出させて当該シャッタ36によって振動子38及びホルダ部材31に対するイオンビームを遮蔽し、その後、イオンビーム源2を駆動するための駆動電源40を切断する。
上記加工量換算部43は、図2に示すように、周波数検出部42からの振動周波数変化量の検出データを受信する受信部51と、換算プログラムや予め設定される設定値等を記録するROM52と、該ROM52に記憶された換算プログラムに従って演算を行うCPU53と、周波数検出部42からの検出データや換算データ等を記憶するRAM54と、換算データを加工制御部41に出力する出力部55と、を備えて構成される。
また、上記加工制御部41は、図3に示すように、上記加工量換算部43からの換算データを受信する受信部61と、制御プログラム等を記憶するROM62と、該ROM62に記憶された制御プログラムに従って進退手段37及び駆動電源40を制御するCPU63と、換算データ等を記憶するRAM64と、進退手段37及び駆動電源40に制御信号を出力する出力部65とを備えて構成される。
上記振動子38は、加工ステージ32のイオンビーム照射領域において次のような範囲に配置される。即ち、ホルダ部材31の被加工物配置面の中心を通るビーム照射軸Xにおける振動子38の配置位置は、ホルダ部材31の被加工物配置面の中心からビームライン全長の5〜50%に相当する距離だけイオンビーム源2側に離隔した位置に設定されている。ここで、「ビームライン全長」とは、イオンビーム源2の引出電極4からホルダ部材31の被加工物配置面の中心までの距離を意味する。且つ、ビーム照射軸Xに直交するビーム直交軸Yにおける振動子38の配置位置は、被加工物5の公転外周円半径の40〜100%に相当する距離をビーム直交軸Yに投影した投影距離だけビーム照射軸Xの中心から離隔した位置に設定されている。ここで、「被加工物の公転外周円」とは、被加工物5が公転したときの軌跡が描く最外周の円を意味する。本実施形態では、ホルダ部材31に備えた公転機構及び自転機構により被加工物5を自公転させてイオンミリング加工を行うと共に、被加工物表面と振動子38との距離を上記のような適切な範囲に設定することにより、ミリング加工の面内均一性とミリング速度比を確保することができる。例えば、振動子38の配置位置を設定する際、面内均一性を優先する場合には振動子38を被加工物表面から遠く設定し、ミリング速度の精度を求める場合には被加工物表面に近く設定する。
また、上記振動子38には、該振動子38を上記公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲でビーム直交方向(Y方向)に往復移動させる振動子移動機構44が備えられている。この振動子移動機構44は、例えば、ソレノイド、ボールネジ機構またはラック・アンド・ピニオン等の往復移動機構によって形成されている。このように、振動子38を公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲で往復移動させることにより、ミリング加工の面内均一性をより向上させることができる。
次に、上記構成のイオンミリング装置1によるイオンミリング加工について説明する。
まず、液体噴射ヘッド用流路形成基板等の被加工物5における被加工部分以外にレジストを形成し、該被加工物5をホルダ部材31にセットする。次に、フィラメント電源16からフィラメント15に電流を流し、これによりフィラメント15からは熱電子(e)が発生する。なお、ミリング加工開始前は、シャッタ36は閉状態にあり、イオンビームおよび中和電子はシャッタ36によって遮蔽される。また、熱電子が放出される時のフィラメント15の温度は非常に高温になるため、フィラメント15の端子には水冷導入端子が用いられており、フィラメント15を冷却するようになっている。
続いて、熱電子がアークチャンバ3内に多数放出された状態でチャンバ内にガス供給口20からArガスを供給し、フィラメント15にフィラメント電源16から電圧を印加すると共に、アークチャンバ3にアーク電源19から電圧を印加すると、フィラメント電源16のマイナス端子とアークチャンバ3のアノード内壁との間に放電が発生し、この放電によりAr分子が熱電子と激しく衝突してAr分子が電離し、Arイオン(Ar)に変化(イオン化)する。これにより、Arイオン、電子、及び電離していないAr分子がアークチャンバ3内に混在し、イオンビーム源2には全体として電荷的に中性のプラズマが生成される。その際、アークチャンバ3の周囲に配設された磁石11によって、アークチャンバ3の内壁近傍にカスプ磁界が形成されており、このカスプ磁場によって電子の飛程距離を長くしてイオン化率が増大される。
次に、加工制御部41により進退手段を退出制御することにより、シャッタ36がイオンビーム照射領域内から照射領域外に退避して開状態となる。この開状態において、加速電極4aに加速電源25から所定の加速電圧を印加すると、プラズマ中のArイオンが加速され、イオンビームとなってホルダ部材31に保持された被加工物5に向かって勢い良く飛び出す。また、減速電極4bに減速電源27から負の減速電圧を印加すると、イオンの飛び出す方向が軌道修正され、イオンビームがチャンバ内をほぼ直進するようになる。そして、このイオンビームをホルダ部材31に保持されたセラミクス製基板などの被加工物5の表面に衝突させることによって被加工部分が削られてミリング加工される。その際、ホルダ部材31に備えられた公転機構によって該ホルダ部材31と共に被加工物5が矢印R方向に公転しながら、自転機構によって被加工物5が矢印r方向に自転する。このように被加工物5が自公転しながらイオンミリング加工が施されるので、ミリング誤差の面内分布が±1,2%くらいに抑えられ、面内均一性が確保される。被加工物5を自公転させない場合には、面内分布が±10%〜20%程度になってしまうので、被加工物5の自公転によりミリング誤差を改善することができる。
このミリング加工の過程において、被加工物5と共にその近傍に配置した振動子38も加工される。この振動子38は励振器の励振動作によって振動し、該振動子38の振動周波数を周波数検出部42で検出し、該周波数検出部42で検出された振動周波数変化量を加工量換算部43によって被加工物5のミリング加工量に換算する。
ここで、振動子38の振動周波数変化量をミリング加工量に換算する原理を式を用いて説明する。厚み振動、あるいは厚みすべり振動する振動子の厚みをt、伝搬速度をvとしたとき、振動子の共振周波数fはf=v/2t=k/tで表わされる。この振動子の厚み変化Δtに対する共振周波数の変化Δfは、Δf=−fΔt/t=−f2Δt/kとなり、振動子の厚み変化量に比例する。したがって、被加工物の材料と振動子を形成する振動板材料とのミリングレート比Cと、振動子設置位置の差によるミリング量差Dと、を予め求めておくことにより、Δf=−fΔt/t=−f2ΔT/kCDの式のように、振動子共振周波数の変化量Δfを被加工物のミリング加工量ΔTに換算することができる。
このように、ミリング加工の進度に応じて変化する振動子38の振動周波数変化量がミリング加工量に換算されることによりミリングレートのモニタリングが常時可能となり、安定した加工を行うことができ、ミリング加工の進度の正確な検出が可能となる。また、上記加工量換算部43は加工制御部41に電気的に接続されており、加工量換算部43によって換算されたミリング加工量は加工制御部41に常時出力されている。加工制御部41は、加工量換算部43から入力されたミリング加工量の換算データがROM62に予め記録された設定値に達した場合には、ミリング加工の終点であると判断し、進退手段37及び駆動電源40に制御信号を出力し、ミリング加工を停止させる。
このように、加工制御部41は、予め定められた設定値に基づいてミリング加工の終点を判断し、ミリング加工を停止させるので、所望のミリングレートで加工を終了することができる。
上述したように、ミリング加工の終点の判断は加工制御部41が受け持ち、ミリング加工の終点であると判断した場合には次の手順でミリング加工を停止させる。即ち、加工制御部41は、まず、進退手段37の作動を進出制御してシャッタ36をイオンビーム照射領域に進出させ、当該シャッタ36によって振動子38及びホルダ部材31に対するイオンビームを遮蔽する。このように、シャッタ36を進出させてイオンビームを強制的に遮蔽するので、予め定められた設定値でミリング加工を確実に終了させることができる。その後、加工制御部41は、イオンビーム源2を駆動するための駆動電源40に制御信号を出力して各電源を切断する。
なお、シャッタ36によってイオンビームを遮蔽した後に、イオンビーム源2の駆動電源40を切断するのは、電源を切断しても直ぐにはイオンビームの照射が停止されないからである。
以上のように構成された本実施形態のイオンミリング装置によれば、周波数検出部42によって検出された振動子38の振動周波数変化量が加工量換算部43によってミリング加工量に換算されるので、ミリングレートのモニタリングが常時可能であり、安定した加工を行うことができる。また、ミリング加工の進度の正確な検出が可能であり、加工量換算部43によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、加工制御部41がミリング加工の終点であると判断し、ミリング加工を停止させるので、所望のミリングレートで加工を終了することができる。
また、振動子38の配置位置を、ホルダ部材31の被加工物配置面の中心からビームライン全長の5〜50%に相当する距離だけイオンビーム源2側に離隔した位置に設定し、且つ、被加工物5の公転外周円半径の40〜100%に相当する距離をビーム直交軸Yに投影した投影距離だけビーム照射軸中心から離隔した位置に設定したので、被加工物5を自公転させてイオンミリング加工を行うだけでなく、同時に被加工物5の表面と振動子38との距離をビーム照射軸X及びビーム直交軸Yに基づく適切な範囲に設定され、ミリング加工の面内均一性とミリング速度比を確保することができる。
さらに、振動子移動機構44により振動子38を公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲で往復移動させるので、ミリング加工の面内均一性をより向上させることができる。
また、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態では、加工換算部43は振動子38の振動周波数変化量をミリング加工量に換算し、換算したミリング加工量を加工制御部41に常時入力し、予め定められた設定値に基づくミリング加工の終点の判断は加工制御部41が受け持っているが、ミリング加工の終点の判断を加工換算部43に受け持たせて、加工終点を判断したときにのみ加工制御部41に指令信号を入力するように構成してもよい。
また、上記の実施形態において、加工換算部43及び加工制御部41はCPU、ROM、RAM、受信部及び送信部など共通の構成要素を備えているので、加工換算部43及び加工制御部41を単体の装置として構成してもよい。
さらに、上記の実施形態では、当該アークチャンバ3の周囲を囲繞する状態で磁石11を配設しているが、磁石11に代えて電磁コイルを配設してもよい。
イオンミリング装置のシステム構成の一形態を示す模式図である。 加工換算部の構成要素の一形態を示すブロック図である。 加工制御部の構成要素の一形態を示すブロック図である。
符号の説明
1 イオンミリング装置,2 イオンビーム源,5 被加工物,31 ホルダ部材,32 加工ステージ,36 シャッタ,38 振動子,40 駆動電源,41 加工制御部,42 周波数検出部,43 加工量換算部,44 振動子移動機構,X ビーム照射軸,Y ビーム直交軸

Claims (4)

  1. イオンビームを加工ステージ側に向けて照射するイオンビーム源と、加工ステージにおけるビーム照射領域に被加工物を複数保持可能なホルダ部材と、当該ホルダ部材に保持された被加工物を自転させる自転機構と、ホルダ部材を回転させることにより被加工物を公転させる公転機構とを有し、
    前記自転機構及び前記公転機構によって被加工物を自公転させながら当該被加工物に対してイオンビーム源からのイオンビームを照射してミリング加工を行うイオンミリング装置であって、
    励振器の励振動作によって振動する振動子と、
    前記振動子の振動周波数を検出する周波数検出部と、
    当該周波数検出部によって検出された振動周波数変化量を、被加工物のミリング加工量に換算する加工量換算部と、
    前記加工量換算部によって換算されたミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、ミリング加工を停止させる加工制御部とを備え、
    ホルダ部材の被加工物配置面の中心を通るビーム照射軸における振動子の配置位置を、ホルダ部材の被加工物配置面の中心からビームライン全長の5〜50%に相当する距離だけイオンビーム源側に離隔した位置に設定し、且つ、ビーム照射軸に直交するビーム直交軸における振動子の配置位置を、被加工物の公転外周円半径の40〜100%に相当する距離をビーム直交軸に投影した投影距離だけビーム照射軸中心から離隔した位置に設定したことを特徴とするイオンミリング装置。
  2. 前記振動子を、前記公転外周円半径の40〜100%に相当する投影距離の範囲でビーム直交方向に往復移動させる振動子移動機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載のイオンミリング装置。
  3. 前記加工制御部は、ビーム照射領域に進退自在に設けられたシャッタを有し、ミリング加工量が予め定められた設定値に達した場合に、前記シャッタをイオンビーム照射領域に進出させて当該シャッタによって前記振動子及び前記ホルダ部材に対するイオンビームを遮蔽することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオンミリング装置。
  4. 前記加工制御部は、前記シャッタによって前記振動子及び前記ホルダ部材に対するイオンビームを遮蔽した後、イオンビーム源を駆動するための駆動電源を切断することを特徴とする請求項3に記載のイオンミリング装置。
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