JP2007132927A - 腹膜機能マーカー、その分析方法およびその用途 - Google Patents

腹膜機能マーカー、その分析方法およびその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】腹膜機能を診断するための新たなマーカーならびにその分析方法を提供する。
【解決手段】ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質を腹膜機能のマーカーとし、腹膜透析により得られる透析排液中に含まれる前記マーカーを定性または定量する。この結果から、腹膜機能を評価することができる。前記マーカーを定性または定量する方法が、免疫学的手法および電気泳動法の少なくとも一方を用いた方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、腹膜機能を診断するための指標となるマーカー、その分析方法およびその用途に関する。
腎不全の療法である腹膜透析を長期にわたって行った場合、その刺激によって患者の腹膜の機能が低下する傾向にあることが知られている。そして、これが原因となって腹膜透過能が亢進し、結果として透析の効果が低下すると共に、被嚢性腹膜硬化症(EPS)を発症する危険性がある。
このため透析医療の分野においては、透析患者の腹膜機能の低下を早期に診断する必要があり、現在、腹膜機能の検査方法としてPET(腹膜平衡試験:Peritoneal Equilibration Test)が採用されている(非特許文献1参照)。PETは、患者の腹膜に透析液を貯留し、貯留期間における透析液(すなわち貯留期間後の透析排液)中および血液中のクレアチニン濃度やブドウ糖濃度の変動を測定して腹膜の老廃物除去能や除水能を評価し、この評価結果から腹膜機能を分類する方法である。なお、クレアチニン濃度の変動は老廃物除去能の指標となり、ブドウ糖濃度の変動は除水能の指標となる。クレアチニン濃度の変動は、透析治療中の任意時間における透析液中クレアチニン濃度(D)と血液中クレアチニン濃度(P)との比である「D/Pクレアチニン」の値、グルコース濃度の変動は、任意の時間の透析液中のグルコース濃度と注液直後の透析液中のグルコース濃度との比「D/D0」の値によってそれぞれ評価される。D/PクレアチニンならびにD/D0とPETの各カテゴリーとの関係は、例えば、非特許文献2に開示されており、例えば、D/Pクレアチニンについて、値の高い方、すなわち、透過能の高い方から、「High」、「High Average」、「Low Average」および「Low」という4つのカテゴリーに分類されている。そこで、透析患者のD/PクレアチニンやD/D0を測定し、PETによる4つのカテゴリーへの分類を行い、その分類結果に応じて、透析液の浸透圧の調整、透析頻度、血液透析との併用や血液透析への移行等を決定することにより、例えば、前述のような合併症の併発防止に役立てている。なお、PETの4つのカテゴリーをより詳細に説明すると、透過能が高い「High」は、相対的に老廃物除去能が高く除水能が低く、透過能がやや高い「High Average」は、相対的に老廃物除去能が普通であり除水能がやや低く、透過能がやや低い「Low Average」は、相対的に老廃物除去能がやや低く除水能が普通であり、透過能が低い「Low」は、相対的に老廃物除去能が低く除水能が高いという評価になる。
しかしながら、このPETは、透析開始後、数回にわたって(例えば、開始後0時間、2時間および4時間)透析液を排液させることが必要であり、それだけでなく、さらに、血液の採取も必要となる。このため、患者は、所定時間ごとにおける排液回収のために長時間拘束され、さらに、採血の苦痛を伴い、患者および医師の双方に労力がかかるという問題がある。また、オリジナルPET法を簡易化したfast PET法であっても、患者が透析液回収のために拘束される時間は同じであり、また、少なくとも経時的に排液させた透析液3種類および血液の合計4種類について、グルコース濃度やクレアチニン濃度を測定する必要があるため、測定自体に手間もかかる。
Twardowski ZJ, et al. Peritoneal equilibration test. Perit Dial Bull1987; 7: 138-47. 「よくわかる腹膜透析の基礎」、東京医学社、山下明泰、発行年月日1998年10月1日
そこで、本発明の目的は、新たな腹膜機能の診断方法を提供するための、腹膜機能(腹膜の透過能)の新たなマーカー、ならびにその分析方法の提供である。
本発明の腹膜機能マーカーは、腹膜機能の診断のためのマーカーであって、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質を含むことを特徴とする。
また、本発明の分析方法は、腹膜機能マーカーの分析方法であって、前記マーカーが、本発明のマーカーであり、腹膜透析の排液に含まれる前記マーカーを定性または定量する工程を含むことを特徴とする。
被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する方法であって、下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする。
(A) 本発明の分析方法によって、被検体の腹膜透析排液に含まれる本発明の腹膜機能マーカーを測定する工程
(B) 腹膜機能が既知である患者の腹膜透析排液に含まれる本発明の腹膜機能マーカーの測定値を基準値として、前記基準値と前記(A)工程における被検体の測定値とを比較し、前記被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する工程
本発明者らは、鋭意研究の結果、腹膜透析患者の腹膜機能(腹膜透過能)に依存して、腹膜透析排液においてある一群のタンパク質の含有量が変動することを見出した。すなわち、腹膜透過能が高い患者と腹膜透過能が低い患者の腹膜透析排液において、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体の計4種類のタンパク質について、含有量の変動が見られた。このため、これらのタンパク質を腹膜機能の指標として、腹膜透析により得られる透析排液における有無や濃度を定性・定量すれば、この結果に基づいて腹膜透析患者の腹膜機能を診断できる。したがって、本発明のマーカーやその分析方法を腹膜機能の検査に利用すれば、新たな診断方法の提供につながる。また、従来から広く採用されているPETは、前述のように透析排液と血液の両方を試料として採取する必要があるが、本発明の分析方法を利用すれば透析排液を採取するのみで足りるため、患者の苦痛も低減できる。さらに、本発明の分析方法を利用した場合、腹膜機能の検査に使用する試料は一種類の透析排液で足りるため、複数の検査試料の採取が必要であり且つ検査項目も複数であるPETよりも、操作自体が簡便となる。したがって、本発明を利用すれば、患者および医師の双方の労力を低減して、腹膜機能の検査を簡便に行うことができる
本発明のマーカーは、前述のように、腹膜機能の診断のためのマーカーであって、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質であることを特徴とする。
これら4種類のマーカーのうち、腹膜透過能が相対的に高いことを示すタンパク質は、ロイシンリッチα2グリコプロテインであり、腹膜透過能が相対的に低いことを示すタンパク質は、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体である。具体的には、透過能が相対的に高い場合には、透過能が相対的に低い排液と比べて、例えば、透析排液中のロイシンリッチα2グリコプロテイン濃度は高くなり、他の3種のタンパク質濃度はそれぞれ低くなり、透過能が相対的に低い場合には、透過能が相対的に高い排液と比べて、例えば、ロイシンリッチα2グリコプロテインの排液中の濃度は低くなり、他の3種のタンパク質濃度はそれぞれ高くなる。したがって、後述するように、透析排液におけるこれらのタンパク質の定性もしくは定量によって、ロイシンリッチα2グリコプロテインが存在しまたは相対的に高い濃度であれば、相対的に腹膜透過能が高いと判断でき、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体が存在または相対的に高い濃度であれば、相対的に腹膜透過能が低いと判断できる。なお、具体的な判断方法については後述する。
つぎに、本発明の分析方法は、前述のように、腹膜機能マーカーの分析方法であって、前記マーカーが、本発明のマーカーであり、腹膜透析の排液に含まれる前記マーカーを定性または定量する工程を含むことを特徴とする。この分析方法においては、いずれか一種類のマーカータンパク質のみを定性または定量してもよいが、より詳細に分析するために、腹膜透過能が相対的に高いことを示すロイシンリッチα2グリコプロテインと、腹膜透過能が相対的に低いことを示すフィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体のいずれか1種(もしくは2種以上)とを定性または定量することが好ましい。
以下に、本発明の分析方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されない。
まず、患者の腹膜に貯留している透析液を排液させる。貯留の時間は、特に制限されないが、患者間や分析毎の条件を一定させることが好ましい。具体例としては、例えば、予め腹腔に2〜12時間貯留した透析液を排液したものを分析試料とし、好ましくは8〜12時間貯留である。
続いて、得られた分析試料における本発明のマーカーの定性または定量を行う。定性方法および定量方法は、特に制限されず、免疫学的手法、一次元電気泳動や二次元電気泳動等の各種電気泳動法等があげられる。前記免疫学的手法としては、抗原抗体反応を利用する従来公知の方法があげられ、例えば、ELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)法、ウエスタンブロッティング法等が採用できる。また、前記電気泳動法の中でも二次元電気泳動法によれば、1回の電気泳動(一次元および二次元の電気泳動)によって、全てのマーカータンパク質の分離が可能であるため、泳動後のゲルにおけるマーカータンパク質のスポットの有無や、前記スポットの濃淡から、一度に全てマーカータンパク質の定性または定量を行うことができる。また、定性または定量によるマーカーの分析結果は、例えば、予め作成した検量線によりタンパク質量として算出してもよいし、スポットの濃淡を数値化してもよく、特に制限されない。
つぎに、本発明の分析方法を用いた腹膜機能の検査方法について説明する。
本発明のマーカーは、後述する実施例にも示すように、PETにより「High」、「High Average」、「Low Average」および「Low」に分類された患者の透析排液について研究した結果、PETのカテゴリーに応じて、その有無や濃度に変動が生じることを発明者が見出したことによって特定されたタンパク質である。したがって、前述の本発明の分析方法によって、透析排液における腹膜機能マーカーを定性または定量すれば、例えば、その分析結果から患者のPETカテゴリーを決定できる。つまり、PETとは異なる方法によって透析排液のみを分析することによって、いずれのPETカテゴリーに相当するかを評価できる。また、PETは、4種類のカテゴリーに分類するにとどまるが、本発明の分析方法によりマーカーを定量すれば、同じカテゴリーに分類される患者であっても、より詳細に透過能の高低を評価することも可能である。
以下に、腹膜機能の検査方法の一例を示す。なお、本発明の分析方法を使用し、本発明のマーカーを指標とする以外は、以下の内容には限定されない。
(第1形態)
検査対象の排液試料について二次元電気泳動を行い、泳動後のゲルを染色する。二次元電気泳動の条件や、電気泳動に供する試料の全タンパク質量等は、試料間で一定にすることが好ましい。染色方法は、特に制限されず、例えば、銀染色、クーマシーブリリアントブルー(CBB)染色や、SYPRO Ruby染色(商品名)等の蛍光染色があげられる。
そして、染色後の泳動ゲルにおけるマーカータンパク質のスポットを確認する。ここで、ロイシンリッチα2グリコプロテインのスポットが濃い程、透過能が高い患者、すなわちPETの「High」カテゴリーに相当すると判断でき、他方、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体に対応するスポットが濃い程、透過能が低い患者、すなわち「Low Average」または「Low」カテゴリーに相当すると判断できる。
(第2形態)
本発明の分析方法を利用して、PETカテゴリーへの分類をより詳細に行うには、以下の方法をとることもできる。
まず、コントロールとして、予め、PETカテゴリーを分類した患者の排液、例えば、4つのPETカテゴリー患者の排液、または、「High」カテゴリーおよび「Low」カテゴリー(ならびに「Low Average」カテゴリー)」の患者の排液について、二次元電気泳動を行い、泳動ゲルの染色を行う。他方、検査対象の排液試料について同様の条件で二次元電気泳動ならびにゲル染色を行う。そして、コントロールの電気泳動像と検査対象の電気泳動像とを照らし合わせ、マーカーのスポットの有無または染色の濃淡を比較することによって、マーカーが同様の挙動を示しているPETカテゴリーに属すると評価する。
(第3形態)
検査対象の排液試料におけるマーカーの濃度を測定することによっても、PETカテゴリーへの分類を行うことができる。
まず、評価基準として、PETカテゴリーを分類した患者の排液、例えば、4つのPETカテゴリー患者の排液、または、「High」カテゴリーおよび「Low」カテゴリー(ならびに「Low Average」カテゴリー)」の患者の排液について、一定量の全タンパク質あたりの各マーカータンパク質の含有割合を測定する。他方、検査対象の排液試料について、同様にして一定量の全タンパク質あたりの各マーカータンパク質の含有割合を測定する。そして、検査対象の排液試料における各マーカータンパク質の含有割合と評価基準の結果とを照らし合わせ、同程度の含有割合を示す評価基準のカテゴリーに属すると評価する。
さらに、本発明は、被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する方法であって、下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする。
(A) 本発明の分析方法によって、被検体の腹膜透析排液に含まれる本発明の腹膜機能マーカーを測定する工程
(B) 腹膜機能が既知である患者の腹膜透析排液に含まれる本発明の腹膜機能マーカーの測定値を基準値として、前記基準値と前記(A)工程における被検体の測定値とを比較し、前記被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する工程
前記(B)工程における基準値は、特に制限されないが、例えば、PETカテゴリーが、High、High Average、Low AverageおよびLowからなる群から選択された少なくとも一つのカテゴリーである患者の測定値であることが好ましい。具体例としては、前述の腹膜機能の検査方法で述べた評価基準があげられる。
このように、各カテゴリーを示す本発明のマーカーの基準値と、被検者の基準値とを比較すれば、いずれのカテゴリーに属するか、また、いずれのカテゴリーに近づいているかを判断できる。このため、本発明によれば、被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定でき、特に、定期的に透析排液に含まれるマーカーの量を本発明により分析することによって、腹膜機能の変動等を判断し、例えば、治療方法等の変更に反映することが可能となる。
以下、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
従来のPET検査により「High」カテゴリーに分類された患者5名、「Low Average」カテゴリーに分類された患者2名および「Low」カテゴリーに分類された患者3名に対して、腹腔内に透析液を8〜12時間貯留させた後、排液を行った。腹腔透析の排液4mlを商品名アミコンウルトラ4(ミリポア社製)に注入して2330gで20分間遠心し、排液中のタンパク質を限外ろ過により濃縮した。この濃縮排液中のタンパク質濃度を試薬(商品名DC Protein Assay:日本バイオラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。
8M 尿素、4重量%CHAPS、1重量%DTTおよび2重量%両性電解質を含む膨潤バッファー300μlに、タンパク質が120μgとなるように前述の濃縮排液を懸濁し、サンプルを調製した。このサンプルを等電点電気泳動用ゲル(商品名IPGストリップゲル:日本バイオラッドラボラトリーズ社製)に添加し、一次元目に等電点電気泳動、二次元目にSDS‐PAGEを行った後、前記ゲルを銀染色してタンパク質スポットを可視化させた。そして、二次元電気泳動ゲルにおいて可視化された電気泳動像を、デンシトメーター(商品名GS‐800:日本バイオラッドラボラトリーズ社製)によりコンピューター内に取りこんだ。図1に、Highカテゴリー患者の透析排液を用いた電気泳動像の一例を、図2に、Lowカテゴリー患者の透析排液を用いた電気泳動像の一例をそれぞれ示す。
得られた画像データを画像解析ソフト(商品名PD-Quest:日本バイオラッドラボラトリーズ社製)により解析した。そして、各患者のサンプルを使用したゲル間で、スポットの分布から同一とみなすことのできるタンパク質スポットを認識(マッチング)させた。マッチングしたスポットは280個であった。
続いて、280個のスポットにつき、患者ごとに排液中濃度を算出した。この目的スポットの濃度は、各ゲルについて、「目的のスポットの濃さ」を「ゲル全体の濃さ」で割った値とした。これによってゲル間における染色の濃淡の標準化を行った。
そして、各患者の排液における280個のスポットの濃度から、High患者群の平均値と、Low Average−Low患者群の平均値とをそれぞれ算出し、これらを比較して1.5倍以上の差があるスポットを選択した。さらに、選択したスポットのうち、High患者群とLow Average−Low患者群との群間でt検定を行い、p<0.05であるスポット9個を選択した。このように二段階で選択したスポットは、High患者群とLow Average−Low群との間で、明らかに排液中の含有量が異なるスポットであり、PETカテゴリーの違いを示すタンパク質であると考えられる。なお、スポットの9個のうち、以下に示すように種類が特定されたタンパク質について、平均値ならびにt検定の結果を下記表1に示す。
Figure 2007132927
最終的に選択された9個のスポットをゲルから切り出し、公知の方法(谷口寿章、菊池美紀「最新プロテオーム解析プロトコル(3)プロテアーゼによるゲル内消化」細胞工学21:524−534、2002年)によりゲル内のタンパク質をトリプシン消化させ、得られたペプチド断片をESI-Q-TOF型質量分析計(商品名Q-STAR:アプライド・バイオシステムズ社製)に供した。質量分析法(MS)で観測された「親イオン」についての、MS/MS法で得られた「娘イオン」のスペクトルデータを用いて、コンピューターによるデータベース検索結果から、アミノ酸配列に基づくタンパク質の同定を行った。この結果、9個のスポットのうち4個は、それぞれロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4a、アルブミン前駆体と同定された。
前述の二次元電気泳動像のうち、これら4種類のマーカータンパク質のスポット部分のみの画像を図3に示す。図3は、Highカテゴリー患者(1検体)とLowカテゴリー患者(1検体)に関する、4種類のマーカータンパク質のスポットを示す画像写真である。図3に示すように、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体は、Low Average−Low患者群で濃いスポットが確認され、ロイシンリッチα2グリコプロテインは、High患者群で濃いスポットが確認された。このことから、患者の腹膜透析の排液について、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体の濃度を確認することによって、PETカテゴリーのHigh患者群およびLow Average−Low患者群のいずれに該当するかを評価できることかがわかる。
このように本発明の腹膜機能マーカーを定性または定量する分析方法を利用すれば、排液試料を使用するのみで腹膜機能を検査できるため、従来のように透析排液だけでなく血液試料の採取が必要であったPETよりも、患者への負担を軽減し、且つ、簡便に検査を行うことができる。このため、本発明の分析方法を利用する検査方法は、従来のPETの代替方法として極めて有用といえる。
図1は、本発明の実施例において、Highカテゴリー患者の透析排液に関する二次元電気泳動の結果を示す写真である。 図2は、前記実施例において、Lowカテゴリー患者の透析排液に関する二次元電気泳動の結果を示す写真である。 図3は、前記実施例において、Highカテゴリー患者ならびにLowカテゴリー患者の透析排液に関する二次元電気泳動のうち、本発明のマーカータンパク質のスポット部分を示す写真である。

Claims (8)

  1. 腹膜機能の診断のためのマーカーであって、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質を含むことを特徴とする腹膜機能マーカー。
  2. 腹膜透過能が相対的に高いことを示すマーカーが、ロイシンリッチα2グリコプロテインである、請求項1記載の腹膜機能マーカー。
  3. 腹膜透過能が相対的に低いことを示すマーカーが、フィブリノーゲンガンマ、C4aおよびアルブミン前駆体からなる群から選択された少なくとも一つのタンパク質である、請求項1記載の腹膜機能マーカー。
  4. 腹膜機能マーカーの分析方法であって、
    前記マーカーが、請求項1から3のいずれか一項に記載のマーカーであり、
    腹膜透析の排液に含まれる前記マーカーを定性または定量する工程を含むことを特徴とする、腹膜機能マーカーの分析方法。
  5. 前記マーカーを定性または定量する方法が、免疫学的手法および電気泳動法の少なくとも一方を用いた方法である、請求項4記載の分析方法。
  6. 前記腹膜透析の排液が、腹膜透析の開始から8〜12時間で回収された排液である、請求項4または5記載の分析方法。
  7. 被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する方法であって、下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする危険度決定方法。
    (A) 請求項4から6のいずれか一項に記載の分析方法によって、被検体の腹膜透析排液に含まれる請求項1記載の腹膜機能マーカーを測定する工程
    (B) 腹膜機能が既知である患者の腹膜透析排液に含まれる請求項1記載の腹膜機能マーカーの測定値を基準値として、前記基準値と前記(A)工程における被検体の測定値とを比較し、前記被検体の腹膜機能が低下する危険度を決定する工程
  8. 前記(B)工程における基準値が、腹膜平衡試験のカテゴリーが、High、High Average、Low AverageおよびLowからなる群から選択された少なくとも一つである患者の測定値である、請求項7記載の危険度決定方法。
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