JP2007132871A - エンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置 - Google Patents

エンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低速回転域だけでなく高速回転域の回転速度も、安定して高精度に測定できるエンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置を提供する。
【解決手段】エンジンの燃料噴射管2又は気筒の燃料噴射ノズル3部に設けた振動センサ(6又は5)と、その出力信号S3を入力として噴射振動に対応する生成パルスを発生する波形整形回路20と、前記生成パルスの周期をサイクル毎に測定し結果の周期データを保持する周期測定回路30と、前記生成パルスが発生する度に前記周期測定回路30から前サイクルの周期データを入力する手段41と、前記入力した前サイクルの周期データから回転数を算出する手段42と、算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出する手段43と、このマスク領域に対応するタイミングと時間幅で前記波形整形回路20の入力を禁止する手段(44、10)とを備えた構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン、特にディーゼルエンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置に関するものである。
従来から、ディーゼルエンジンの回転数の測定は、ディーゼルエンジンの出力軸またはこれに比例して回転する燃料噴射ポンプのカム駆動軸に機械的検出器または磁気的検出器を取り付け、この検出器による検出信号に基づいて行われていた。しかし、この場合には、ディーゼルエンジンを自動車等に組み込んだ状態などでは出力軸やカム駆動軸への検出器の取り付けが困難である等の欠点があった。
一方、ディーゼルエンジンの燃料噴射管を伝搬する振動成分のうち、当該燃料噴射管に対応する気筒の噴射ノズル内部のニードルバルブが噴射終りに発生する振動成分が他の振動成分と比べて振幅が大きいことが知られている。そこで、ディーゼルエンジンの燃料噴射管を伝搬する振動を振動センサで電気信号に変換し、その振幅が所定レベルに対して大きいか否かによって上記噴射終りに発生する振動成分のみを信号として選別すれば、この信号に基づいてディーゼルエンジンの回転数を測定することができる(下記特許文献1、2参照)。この場合には、上記振動センサは燃料噴射管に取り付ければよいので、上記従来のごとく回転軸に検出器を取り付ける場合に比べて、取り付けが著しく簡単となるものである。
現在市販されているディーゼルエンジンの回転計は、(1)ディーゼルエンジンの燃料噴射管を固定金具ではさみ込んで、燃料噴射管を伝搬する振動つまり圧力脈動を圧電素子から成る振動センサにより検出する方式のものと、(2)エンジンと同期して回転する回転軸に反射マーク円板を取り付け、その反射マークの明暗を光センサ及び光ファイバを用いて測定する方式のものがほとんどである。いずれも振動センサ又は光センサが検出した信号をパルスに整形し、そのパルスを計数するか、またはパルスの周期を測定する「パルス計数方式」である。
前者の(1)の燃料噴射管の圧力脈動を検出する方式では、圧力脈動に対する振動センサとして圧電素子を燃料噴射管に取り付ければよいので、取り付けが著しく簡単であるが、後者の(2)の反射マークを、光センサを用いて測定する方式では、エンジンと同期して回転する回転軸が露出していて、その周辺に光センサの取り付け空間が存在することが必要であり、光センサの取り付けも容易ではないという状況にある。
上記の「パルス計数方式」のほかに、センサからの検出信号をパルスに整形することなく、そのままの信号を周波数解析して、ディーゼルエンジンの回転数を求める「FFT演算方式」のものがあるが、この方式の場合、ディーゼルエンジンの回転数に同期したパルス出力が得られない。
ディーゼルエンジンの回転数に比例したパルスは、振動や音響の解析ないし分析の際に基準周波数として必要となる情報であり、これがないと各種の解析・分析が出来なくなる。
特開昭58−174153号公報(第6頁左下欄、第1図、第2図) 特開昭60−153469号公報(第6頁左上欄、第7頁右上欄、第3図、第4図)
しかし、従来のディーゼルエンジンの回転計は、低速回転時には正確に回転数を測定することができるが、高速回転時には正確に回転数を測定することができない。これは高速回転時には、燃料噴射管を伝搬する振動成分のうち、この燃料噴射管に対応する気筒の噴射ノズル内部のニードルバルブが噴射終りに発生する振動成分(以下、「信号振動成分」という)のみならず、他の気筒の噴射ノズル内部のニードルバルブが噴射終りに発生する振動成分(以下、「ノイズ振動成分」という)も、所定レベルより大きくなることがあり、そのため、ノイズ振動成分も信号振動成分として検出されることがあることによる。この原因として、燃料噴射管の圧力脈動を検出する方式では、燃料噴射管がエンジンに接触していることや、噴射ノズルまでの燃料パイプが他の気筒へのパイプと合わせて振動防止のためにクランプされていることなどから、回転数が上がるほど、エンジンや他の燃料噴射管から回り込むノイズ成分が多くなり、安定した回転測定が困難となるため、と考えられる。
他方、ディーゼルエンジンの回転測定において、気筒の燃料噴射ノズル部に取り付けた加速度振動センサで、当該噴射ノズルの振動を検出し、その検出信号を波形整形して得られたパルスを計数するか、またはパルスの周期を測定することで、エンジンの回転数を求める方式も一般的である。しかし、この方式においても、エンジンの回転数が上がるほど、振動センサを取り付けていない気筒の噴射ノズルの振動が、振動センサに回り込んで来るようになり、安定した測定が出来ないという現象がおきていた。
具体的に図8を参照しながら説明する。図8は、ディーゼルエンジンの燃料噴射管を伝搬する振動を圧力脈動センサ6で検出して、エンジンの回転数に比例したパルスを生成し、エンジンの回転数を測定する装置の構成を示す。
ディーゼルエンジンの4つの気筒4毎に燃料噴射ノズル3が設けられており、燃料ポンプ1から燃料噴射管2が各気筒4の燃料噴射ノズル3まで配管され、その途中をクランプ部材7でクランプされている。燃料噴射管2に取り付けた圧力脈動センサ6で検出した信号S2、または、燃料噴射ノズル3に取り付けた加速度振動センサ5で検出した信号S1が、噴射振動信号S3(図10参照)として、波形整形回路20に入力され、そこで生成したパルスがマイクロコンピュータから成る回転数算出装置50に入力される。
図9は波形整形回路20の構成を示したもので、噴射振動信号S3の半波の信号S4を取り出して絶対値とする絶対値回路21、ローパスフィルタ22、増幅器23、コンパレータ24、そのしきい値レベルSHLを定める設定器25から構成されている。図10にこの波形整形回路20による低速回転時の波形整形の様子を、また図11に高速回転時の波形整形の様子を示す。
低速回転(1000rpm以下)時は、エンジンや他の気筒の噴射ノズルから回り込むノイズ成分が少なく、加速度振動センサ5又は圧力脈動センサ6の振動センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分SA1)が強く現れ、その他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分SA2)は小さなレベルにある(図10(a))。従って、両者の振動成分を含む噴射振動信号S3を、絶対値回路21、ローパスフィルタ22、増幅器23を通して整形処理すると、ノイズ振動成分SA2については、絶対値回路21から出力される信号S4が小さいため、ローパスフィルタ22により除去され、ローパスフィルタ22及び増幅器23の出力には、信号振動成分SA1に対応するパルス状の信号S5、S6だけが現れる(図10(b)〜(d))。この信号振動成分SA1に対応するパルス状の信号S6は、コンパレータ24での比較において、しきい値レベル設定器25のしきい値レベルSHLよりも大きくなり、コンパレータ24からパルス信号PS(生成パルスPS1)として取り出される(図10(e))。
従って、低速回転(1000rpm以下)時では、センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分SA1)だけがパルス信号PSとなり、マイクロコンピュータから成る回転数算出装置50で正しく周期が測定でき、その周期から正確な回転数が算出され、表示装置に表示される。
しかし、高速回転(2000rpm以上)になると、図11(a)に示すように、噴射振動信号S3は、他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分SA2)がセンサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分SA1)とほとんど同じレベルで検出されるようになる。このため、噴射振動信号S3を、波形整形回路20を通して上記低速回転時と同じ過程でパルス信号(生成パルス)PSを生成すると、図11(e)に示すように、信号振動成分SA1に対応する生成パルスPS1の他に、ノイズ振動成分SA2に対応する生成パルスPS2が現れてしまい、正しい周期の測定ができなくなる。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、低速回転域だけでなく高速回転域の回転速度も、安定して高精度に測定できるエンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のエンジンの回転数測定方法は、エンジンの燃料噴射管を伝搬する振動又は気筒の燃料噴射ノズル部の振動を振動センサにより検出し、該振動センサの出力信号を波形整形手段に入力して噴射振動に対応する生成パルスを発生させ、この生成パルスの周期をサイクル毎に測定して結果の周期データを保持し、前記生成パルスが発生する度に、前記保持されている前サイクルの周期データに基づいて回転数を算出し、この算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出し、このマスク領域に対応するタイミングと時間幅で前記波形整形手段の入力又は動作を禁止することを特徴とする。
また本発明のエンジンの回転数測定装置は、エンジンの燃料噴射管又は気筒の燃料噴射ノズル部に設けた振動センサと、該振動センサから出力される噴射振動信号を入力として受け、これを波形整形して噴射振動に対応する生成パルスを発生する波形整形回路と、前記生成パルスの周期をサイクル毎に測定し結果の周期データを保持する周期測定回路と、前記生成パルスが発生する度に前記周期測定回路から前サイクルの周期データを入力する手段と、前記入力した前サイクルの周期データから回転数を算出する回転数算出手段と、算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出する手段と、このマスク領域に対応するタイミングと時間幅で前記波形整形回路の入力又は動作を禁止する手段とを備え、前記周期測定回路又は前記回転数算出手段から出力を取り出すようにしたことを特徴とする。
本発明のエンジンの回転数測定方法及び回転数測定装置では、生成パルスの次サイクルの周期内においてノイズ振動成分の発生区間をマスクするので、振動センサを取り付けた気筒の噴射振動に基づく信号振動成分のみを確実に捕らえて、その周期及び回転数を正しく測定し出力することができる。
また、エンジンの低速回転域だけでなく高速回転域においても、信号振動成分のみを確実に捕らえて、その周期及び回転数を安定して高精度に測定することができる。その理由として、エンジンは、必ず、低速回転からスタートして、高速回転域へと移行する。低速回転域ではノイズ振動成分が小さいため、マスク作用の有無に拘わらず目的の噴射振動に対応する生成パルスが正しく得られることから、本発明によるエンジンの回転数測定も、正確な測定値から出発することになる。高速回転域はこの低速回転域に連続したものとして存在するので、高速回転域に移った場合でも、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分を適正にマスクして、高精度にエンジンの回転数を測定することができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの回転数測定装置の構成を示す。
ディーゼルエンジンの4つの気筒4毎に燃料噴射ノズル3が設けられており、燃料ポンプ1から燃料噴射管2が各気筒4の燃料噴射ノズル3まで配管され、その途中をクランプ部材7でクランプされている。気筒4の1つの燃料噴射ノズル3には、噴射振動を電気的な噴射振動信号に変換する振動センサとして、加速度振動センサ5が取り付けてある。また、その燃料噴射管2には、噴射振動を電気的な噴射振動信号に変換する振動センサとして、圧電素子から成る圧力脈動センサ6が取り付けられ、ディーゼルエンジンの燃料噴射管2を伝搬する振動を検出するようになっている。図1には、加速度振動センサ5と圧力脈動センサ6で検出した信号S1、S2の両方が、アナログスイッチ10を通して波形整形回路20に入力されるように描いてあるが、信号S1、S2のいずれか一方が、噴射振動信号S3として波形整形回路20に入力されれば足りる。
この加速度振動センサ5で検出した信号S1または圧力脈動センサ6で検出した信号S2が、噴射振動信号S3(図10参照)として、波形整形回路20に入力される点は、従来の図8の場合と同じである。
しかし、従来と異なり、波形整形回路20の入力側にはアナログスイッチ10が前置されており、マイクロコンピュータ40内のスイッチ制御手段44によりオンオフ制御される。また波形整形回路20の出力には、周期測定回路30が接続されている。40はマイクロコンピュータであり、周期データ入力手段41、回転数演算手段42、マスク領域算出手段43、及びスイッチ制御手段44を備えている。
図2に、アナログスイッチ10以降の構成部分の詳細を示す。波形整形回路20の構成は、図9で説明した通りであり、噴射振動信号S3の半波の信号S4を取り出して絶対値とする絶対値回路21、ローパスフィルタ22、増幅器23、コンパレータ24、そのしきい値レベルSHLを定める設定器25から構成されている。この波形整形回路20はハード的に構成されているが、ソフト的に構成したものでもよく、本明細書において「波形整形手段」というときは両者を含めた意味で用いる。
波形整形回路20は、上記の振動センサ(加速度振動センサ5または圧力脈動センサ6)から出力される噴射振動信号S3を入力として受け、これを波形整形して噴射振動に対応するパルス信号(生成パルス)PSを発生する。図3に、低速回転(1000rpm以下)時の噴射振動信号S3の波形とその波形整形の過程を、また図4に、高速回転(2000rpm以上)時の噴射振動信号S3の波形とその波形整形の過程を示す。まだマスクされていないため、噴射振動信号S3の入力波形は、振動センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分SA1)と、その他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分SA2)とを重ね合わせたものとなる(図3(a)、図4(a))。
ここで、低速回転時は、エンジンや他の気筒の噴射ノズルから回り込むノイズ振動成分SA2が少ないため、信号振動成分SA1に対応する生成パルスPS1だけが現れる(図3(a)(b))。しかし、高速回転時には、ノイズ振動成分SA2が信号振動成分SA1とほとんど同じレベルで検出されるようになるため(図4(a))、波形整形回路20からは、信号振動成分SA1に対応する生成パルスPS1の他に、ノイズ振動成分SA2に対応する生成パルスPS2が現れることになる(図4(b))。しかし、本発明の場合、後述するマスク作用によりノイズ振動成分SA2が除去されて、信号振動成分SA1のみとなる(図3(d)、図4(d))。この結果、生成パルスPS2は波形整形回路20から出力されず、生成パルスPS1のみが発生されることになる。
周期測定回路30は、上記生成パルスPS1が発生する度に、その生成パルスPS1の周期をサイクル毎に測定する。この測定結果である周期データは、次の生成パルスPS1の到来によって更新されるまで、周期測定回路30に保持される。
マイクロコンピュータ40は、ソフト的に次の機能を有する。生成パルスPS1が発生する度に周期測定回路30から前サイクルの周期データを入力する周期データ入力手段41と、入力した前サイクルの周期データから回転数を算出する回転数算出手段42と、算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出するマスク領域算出手段43と、波形整形回路20の入力側に前置したアナログスイッチ10をオンオフ制御して、上記算出されたマスク領域の区間において波形整形回路20への入力を禁止するスイッチ制御手段44である。このスイッチ制御手段44と上記アナログスイッチ10により、上記マスク領域に対応するタイミングと時間幅で波形整形回路20への入力を禁止する手段が構成されている。そして、この実施形態の回転数測定装置では、回転数算出手段42から出力を取り出し、図示してない表示装置により表示する構成となっている。
マイクロコンピュータ40のプログラムは、上記生成パルスPS1に同期した割込信号の有無を常時チェックしており(図2中のステップST1)、割込信号があったときは、周期データ入力手段41を作動させる。周期データ入力手段41は、上記周期測定回路30が保持している前サイクルの周期データ(例えば図3(b)に示す周期T)を読み込み、これを保持する(図2中のステップST2)。
次に、マイクロコンピュータ40のプログラムは、回転数算出手段42を作動させる。回転数算出手段42は、前記入力した前サイクルの周期データから回転数を算出し、その算出した回転数を出力し、表示装置に表示させる(図2中のステップST3)。
次に、マイクロコンピュータ40のプログラムは、マスク領域算出手段43を作動させる。マスク領域算出手段43は、算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域Mを算出する。
図3(c)と図4(c)に、このマスク領域Mを例示する。このマスク領域Mの説明は、図による表現上、低速回転域の方が判り良いので、以下図3を中心に説明する。
上記マスク領域Mは、生成パルスPS1の1周期T内で、当該生成パルスPS1を発生させた噴射振動(信号振動成分SA1)の消失後から、次の生成パルスPS1が発生する手前までの区間として定められる。すなわち、図3(c)において、マスク領域Mは、生成パルスPS1の1周期T内で、噴射振動(信号振動成分SA1)が消失すると予想される時刻を開始点t2とし、且つ、次の生成パルスPS1が発生する手前の時刻を終了時点t3として定められる。ここで、生成パルスPS1の発生時点t1(パルス前縁)からマスク領域Mの開始点t2までの遅延時間d1は、上記噴射振動(信号振動成分SA1)が消失するに十分な時間幅として定められる。また、マスク領域Mの終了時点t3から次の生成パルスPS1が発生する時刻t4までの時間幅d2は、この時間幅d2と上記遅延時間d1との和である時間幅d3(時刻t3〜t5)内に、次の噴射振動(信号振動成分SA1)が入るように定められる。
このマスク領域Mは、回転数が高いほど長くすることが好ましい。その理由として、回転数と周波数fは比例関係にあるが、周期TはT=1/fの関係にあり、図7のグラフが示す様に、低速回転の時は周期Tが急激に変化し、高速回転の時は大きな変化を示さない。従って、周期Tが急激に変化する低速回転時にマスク領域Mを広くとると、噴射振動信号の通過可能領域(図3の時間幅d3)を狭くする結果となり、噴射振動信号(信号振動成分SA1)を正確に捕らえられなくなる危険性がある。また、高速回転になるほどノイズ成分が増えてくるので、マスク領域はできるだけ広くとりたいという事情もある。そこで低速回転時は、マスク領域Mを狭く、つまり噴射振動信号の通過可能領域を広く設定し、高速回転時は、マスク領域Mを広く設定する。
次に、マイクロコンピュータ40のプログラムはスイッチ制御手段44を作動させる。スイッチ制御手段44は、上記のマスク領域Mの区間に対応するタイミングと時間幅で上記波形整形回路20への入力を禁止するように、波形整形回路20の入力側に前置したアナログスイッチ10をオンオフ制御する。
ところで、上記マスク領域Mは、前サイクルの周期を基準として、当該マスク領域Mの区間が生成パルスPS1の1周期T内で占める割合を、百分率K%で表し、数値化して表現することができる。ここで、時刻t1において発生した生成パルスPS1の時間軸上の位置は検出された既知のものであり、これを基準に考えると、遅延時間d1もほぼ一定の固定された時間長さとして扱うことが可能である。上記マスク領域Mを定める上で重要となるのは、時間軸上の位置が絶えず変動するという意味において、次サイクルの生成パルスPS1が発生する手前の位置、すなわちマスク領域Mの終了時点t3である。そこで、このマスク領域Mの終了時点t3を算出するための基準点として、生成パルスPS1が発生する時刻t1をとると、遅延時間d1を変動値の計算から外すことができ、生成パルスPS1の発生時点t1からマスク領域Mの終了時点t3までの区間を、上記マスク領域Mに代わる擬似マスク領域MSとして扱うことができる。
そこで、この実施形態では、上記擬似マスク領域MSが生成パルスPS1の1周期T内で占める割合、つまりマスク率Kを百分率(%)で表し、数値化して表現する。このマスク率Kは、低速回転域でのマスク率をK1(%)とし、また高速回転域でのマスク率をK2(%)としたとき、K1<K2の関係に設定する。すなわち、回転数が上がるほど、擬似マスク領域MSの前周期Tに対する割合を大きくする。マスク領域算出手段43は、周期データから擬似マスク領域MSを算出するに際し、周期データ×K(%)=マスク領域として、擬似マスク領域MSを決定する。
この様に制御することにより、振動センサを取り付けた気筒の噴射振動(信号振動成分SA1)間に在る他の気筒の噴射振動(ノイズ振動成分SA2)は、図3(d)に長方形の囲み45で示すマスクによりカットされて、波形整形回路20に入力されなくなり、波形整形回路20からは生成パルスPS1のみが出力されることになる。よって、センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分SA1)については、これを外すことなく正確に検出し、また、他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分SA2)については、これを確実にマスクして除去して、正確にエンジンの回転周期Tと回転数を算出し表示することができる。
さらに、この実施形態の回転数測定装置は、エンジンの回転数Nに関し、その回転数領域を複数の領域に分け、それぞれの回転数領域に長さの異なる複数のマスク領域(正確には擬似マスク領域MS)の1つを、高い回転数領域のものほど長いマスク領域が属するように割り当てておき、上記算出された回転数がどの回転数領域に属するかに応じて、当該回転数領域に割り当てたマスク領域を選択し、これにより上記マスク領域算出手段43がマスク領域を算出するように構成されている。また上記複数の擬似マスク領域MSを、当該マスク領域が前記生成パルスの1周期内で占める割合が80%以上88%以下の範囲で、互いに異なる値に定めている。
具体的には、エンジンの回転数領域を、回転数768rpm、1024rpm、1536rpmを境界として、下記表1の如く4つの回転域A〜Dに分け、これに応じて擬似マスク領域MSのマスク率Kを4段階の設定としている。
第1の回転域A(回転数N<768rpm)は、マスクすることが不要な低速回転域であることから、マスク率0%のマスクオフ領域とし、マスクのリセットに用いる。この第1の回転域Aは、上記複数の回転数領域の最も低速の回転数領域に相当するもので、この例では768rpm未満の領域として定めているが、1000rpm以下の任意の回転数値以下の領域として定め、これにマスク領域ゼロを割り当てればよい。第2の回転域B(768rpm≦回転数N<1024rpm)ではマスク率80%とし、前サイクルの周期の80%をマスクする。第3の回転域C(1024rpm≦回転数N<1536rpm)ではマスク率84%とし、前サイクルの周期の84%をマスクする。第4の回転域D(1536rpm≦回転数N)ではマスク率88%とし、前サイクルの周期の88%をマスクする。
このように回転数に応じてマスク率Kを変化させる理由は、次による。すなわち、図7のグラフに示す様に、低速回転の時は周期Tが急激に変化し、高速回転の時は大きな変化を示さないことから、周期Tが急激に変化する低速回転時にマスク領域Mを広くとると、噴射振動信号の通過可能領域(図3の時間幅d3)を狭くすることになり、噴射振動信号(信号振動成分SA1)を正確に捕らえられない危険性がある。また、高速回転になるほどノイズ成分が増えてくるので、擬似マスク領域MSはできるだけ広くとりたいという事情もある。そこで低速回転時は、擬似マスク領域MSを狭く、つまり噴射振動信号の通過可能領域を広く設定し、高速回転時は、擬似マスク領域MSを広く設定する様にしている。
上記回転域A〜Dに割り当てる4種類のマスクを生成するため、アナログスイッチ10は、並列に接続された第1スイッチA−SW、第2スイッチB−SWと、波形整形回路20の入力を接地する第3スイッチC−SWから構成されている。
スイッチ制御手段44は、これらのアナログスイッチA−SW、B−SW、C−SWに対し、それらのコントロール信号A−SW−CONT、B−SW−CONT、C−SW−CONTを出力する。図1には総括的にコントロール信号46として示す。
図5は、このコントロール信号とアナログスイッチのオンオフの関係を示したもので、回転数Nが768rpm未満の領域では、アナログスイッチのA−SWのみがオンされ、B−SWとC−SWはオフされているため、アナログスイッチのA−SWを経て、信号振動成分SA1がそのまま波形整形回路20に入力される。従って、マスク率0%のマスクオフ領域(マスクのリセット)が作成される。しかし回転数が768rpm以上の領域はマスクオン領域となり、図2のアナログスイッチ10のA−SWがオフで、B−SW、C−SWが逆位相でオン/オフを繰り返す。そして、このマスクオン領域のうちで、B−SWがオフでC−SWがオンの状態がマスク領域であり、この間においては噴射振動信号がC−SWを通じてGNDレベルに固定される。
図6のフローチャートに従って、アナログスイッチ10の制御によるマスクの生成の仕方を説明する。ステップST1〜ST3は既に図2で述べたところと同じである。
本発明では、ディーゼルエンジンの回転数測定において、ノイズ振動成分であるセンサを取り付けていない他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分)をマスクし、振動センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分)のみを波形整形回路に入力するもので、このことにより高速回転域においてもノイズ成分に影響されない正確な回転数の算出が可能となる。
マスク領域を正確に設定するには、下記の(1)〜(4)の手順を踏む必要がある。
(1)所定の回転数以下の低速回転時をマスクのリセット領域とする(マスクのリセット)。
(2)サイクル毎に周期を測定しマスク領域算出の基準値とする(基準となる周期の測定:ステップST1〜ST2)。
(3)基準値である前サイクルの周期データを基にマスク領域を算出し設定する(マスク領域の算出と設定:ステップST4〜ST10)。
(4)回転数に応じてマスク領域を拡大または縮小する(回転数に応じたマスクの設定:ステップST11〜ST14)。
図6において、マイクロコンピュータ40のプログラムは、ステップST4〜ST6で、エンジンが上記回転域A〜Dのいずれにあるかを判断する。
回転数Nが768rpm未満(回転域A)の場合には、ステップST4の判断がYesとなり、マスク領域算出手段43でマスク率0%が算出され(ステップST7)、これに応じてスイッチ制御手段44からのコントロール信号はマスクのリセットが指示される(ステップST11)。これを受けて、アナログスイッチ10では、A−SWのみがオン(B−SW、C−SWはオフ)の状態とされ、信号振動成分SA1がそのまま波形整形回路20に入力される。
低速回転の場合は、センサを取り付けてない他の気筒の燃料噴射ノズルから回り込んで来るノイズ成分が小さく、マスクを施さなくても通常の波形整形を施しただけで、正確な周期の測定が可能である。そこで回転数Nが768rpm未満の領域は、マスクリセット領域とし、マスクオフとする。このことにより、仮に、急加速や急減速により、正規の噴射振動信号がマスク領域をはずれてしまい、誤った周期を測定し、回転数算出手段42の回転数の算出・表示に不具合が生じた場合でも、回転数がこの領域まで下がれば、マスクはリセットされ正確な周期の測定が出来る様になる。
回転数Nが768rpm≦回転数N<1024rpm(回転域B)の場合には、ステップST5の判断がYesとなり、マスク領域算出手段43でマスク率80%が算出され(ステップST8)、これに応じてスイッチ制御手段44からのコントロール信号もマスク率80%を指示する(ステップST12)。これを受けて、アナログスイッチ10では、C−SWがオン(B−SW、C−SWはオフ)の状態、つまりマスク区間が1周期のうちで80%を占めるように動作する。これにより、ノイズ振動成分は除去され、信号振動成分のみが波形整形回路20に入力される。
回転数Nが1024rpm≦回転数N<1536rpm(回転域C)の場合には、ステップST6の判断がYesとなり、マスク領域算出手段43でマスク率84%が算出され(ステップST9)、これに応じてスイッチ制御手段44からのコントロール信号もマスク率84%を指示する(ステップST13)。これを受けて、アナログスイッチ10では、C−SWがオン(B−SW、C−SWはオフ)の状態、つまりマスク区間が1周期のうちで84%を占めるように動作する。これにより、ノイズ振動成分は除去され、信号振動成分のみが波形整形回路20に入力される。
回転数Nが1536rpm≦回転数N(回転域D)の場合には、ステップST6の判断がNoとなり、マスク領域算出手段43でマスク率88%が算出され(ステップST10)、これに応じてスイッチ制御手段44からのコントロール信号もマスク率88%を指示する(ステップST14)。これを受けて、アナログスイッチ10では、C−SWがオン(B−SW、C−SWはオフ)の状態、つまりマスク区間が1周期のうちで84%を占めるように動作する。これにより、ノイズ振動成分は除去され、信号振動成分のみが波形整形回路20に入力される。
このように回転数に応じてマスク領域の大きさを変化させることにより、センサを取り付けた気筒の噴射振動信号を外すことなく、他の気筒の噴射振動信号を確実にマスクして、正確な周期を測定し、正確な回転数を算出、表示することができる。
上記実施形態では、スイッチ制御手段44で波形整形回路20の入力を禁止する形態として説明したが、波形整形回路20の動作を禁止する形態とすることもでき、これによっても同様のノイズ振動成分を除去する効果を得ることができる。
また、上記実施形態の回転数測定装置では、回転数算出手段42から出力を取り出す構成として説明しているが、出力は周期測定回路30から取り出してもよい。
本発明にかかるエンジンの回転数測定方法ないし回転数測定装置は、エンジンの低速回転域のみならず、高速回転域においてもノイズ成分に影響されない正確な回転数の算出が可能となるものであり、ディーゼルエンジン以外のエンジンの回転数測定にも適する。
本発明のエンジンの回転数測定装置を示すブロック図である。 図1中のアナログスイッチ以降の構成部分の詳細を示す図である。 本発明における低速回転(1000rpm以下)時の噴射振動信号S3の波形とその波形整形の過程を示す図である。 本発明における高速回転(2000rpm以上)時の噴射振動信号S3の波形とその波形整形の過程を示す図である。 本発明におけるアナログスイッチのオンオフとそのコントロール信号との関係を示す図である。 本発明のエンジンの回転数測定方法を示すフローチャートである。 エンジンの回転数と周期の関係を示すグラフである。 従来のエンジンの回転数測定装置を示すブロック図である。 図8の波形整形回路の構成を示すブロック図である。 従来における低速回転(1000rpm以下)時の噴射振動信号の波形整形の過程を示す図である。 従来における高速回転(2000rpm以上)時の噴射振動信号の波形整形の過程を示す図である。
符号の説明
1 燃料ポンプ、
2 燃料噴射管、
3 燃料噴射ノズル、
4 気筒、
5 加速度振動センサ(振動センサ)、
6 圧力脈動センサ(振動センサ)、
7 クランプ部材、
20 波形整形回路、
21 絶対値回路、
22 ローパスフィルタ、
23 増幅器、
24 コンパレータ、
30 周期測定回路、
40 マイクロコンピュータ、
41 周期データ入力手段、
42 回転数算出手段、
43 マスク領域算出手段、
44 スイッチ制御手段、
46 コントロール信号、
K マスク率、
K1 低速回転域でのマスク率、
K2 高速回転域でのマスク率、
M マスク領域、
MS 擬似マスク領域、
SA1 振動センサを取り付けた気筒の噴射振動信号(信号振動成分)、
SA2 他の気筒の噴射振動信号(ノイズ振動成分)、
T 周期、
PS1 生成パルス、
PS2 生成パルス。

Claims (8)

  1. エンジンの燃料噴射管を伝搬する振動又は気筒の燃料噴射ノズル部の振動を振動センサにより検出し、
    該振動センサの出力信号を波形整形手段に入力して噴射振動に対応する生成パルスを発生させ、
    この生成パルスの周期をサイクル毎に測定して結果の周期データを保持し、
    前記生成パルスが発生する度に、前記保持されている前サイクルの周期データに基づいて回転数を算出し、
    この算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出し、
    このマスク領域に対応するタイミングと時間幅で前記波形整形手段の入力又は動作を禁止することを特徴とするエンジンの回転数測定方法。
  2. 前記マスク領域を、前記生成パルスの1周期内で、当該生成パルスを発生させた噴射振動の消失後から、次の生成パルスが発生する手前までの区間として定めることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの回転数測定方法。
  3. 前記マスク領域を、回転数が高いほど長くすることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの回転数測定方法。
  4. エンジンの回転数領域を複数の領域に分け、それぞれの回転数領域に長さの異なる複数のマスク領域の1つを、高い回転数領域のものほど長いマスク領域が属するように割り当てておき、
    前記算出された回転数がどの回転数領域に属するかに応じて、当該回転数領域に割り当てたマスク領域を選択し、これにより前記マスク領域を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの回転数測定方法。
  5. 前記複数のマスク領域を、当該マスク領域が前記生成パルスの1周期内で占める割合が80%以上88%以下の範囲で、互いに異なる値に定めることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの回転数測定方法。
  6. 前記複数の回転数領域の最も低速の回転数領域として、1000rpm以下の任意の回転数値以下の領域を定め、この最低速の回転数領域に割り当てる前記マスク領域をゼロとすることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの回転数測定方法。
  7. エンジンの燃料噴射管又は気筒の燃料噴射ノズル部に設けた振動センサと、
    該振動センサから出力される噴射振動信号を入力として受け、これを波形整形して噴射振動に対応する生成パルスを発生する波形整形回路と、
    前記生成パルスの周期をサイクル毎に測定し結果の周期データを保持する周期測定回路と、
    前記生成パルスが発生する度に前記周期測定回路から前サイクルの周期データを入力する手段と、
    前記入力した前サイクルの周期データから回転数を算出する回転数算出手段と、
    算出された回転数に応じて、次サイクルの周期内で発生すると予想されるノイズ振動成分をマスクする時間軸上のマスク領域を算出する手段と、
    このマスク領域に対応するタイミングと時間幅で前記波形整形回路の入力又は動作を禁止する手段とを備え、
    前記周期測定回路又は前記回転数算出手段から出力を取り出すようにしたことを特徴とするエンジンの回転数測定装置。
  8. 前記マスク領域に対応して前記波形整形回路の入力又は動作を禁止する手段が、前記波形整形回路の入力側に前置されたアナログスイッチと、このアナログスイッチをオンオフ制御して、前記算出されたマスク領域の区間では前記波形整形回路の入力を禁止するスイッチ制御手段とを有することを特徴とする請求項7に記載のエンジンの回転数測定装置。
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