JP2007125565A - 遠心鋳造製耐摩耗性部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 初晶MC炭化物を晶出する組成を有する溶湯を遠心鋳造すると、比重の小さなMC炭化物が内面側に濃化することを積極的に利用した、遠心鋳造製耐摩耗性部材を提供する。
【解決手段】 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、溶湯を遠心鋳造することにより、MC炭化物が濃化した内周層と、MC炭化物が乏しい外周層と、前記内周層と前記外周層の間でMC炭化物の面積率が変化する濃度傾斜層とからなる円筒体を作製し、前記MC炭化物が濃化した内周層を耐摩耗層としたことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、溶湯を遠心鋳造することにより、MC炭化物が濃化した内周層と、MC炭化物が乏しい外周層と、前記内周層と前記外周層の間でMC炭化物の面積率が変化する濃度傾斜層とからなる円筒体を作製し、前記MC炭化物が濃化した内周層を耐摩耗層としたことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、各種産業機械の部品、治具、装置類に用いられ、摩耗や摺動により耐摩耗性が要求される部分に耐摩耗性合金を形成した遠心鋳造製耐摩耗性部材に関するものである。
機械構造用部品、例えばロール、ローラ、シリンダ、スクリュ、金型、軸受、摺動部材などは、使用中に摩耗しないよう耐摩耗性に優れることが要求される。従来から硬質炭化物を含有する耐摩耗性合金を遠心鋳造法で形成することが行なわれている。
例えば、特許文献1は、質量%で、C:1.0〜3.0%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.1〜10.0%、V:1.0〜10.0%、W:0.1〜10.0%、Mo+W≦10.0%、及び残部Fe及び不純物からなる組成を有する外層と、鋳鉄又は鋳鋼の内層とからなる中実又は中空の遠心鋳造複合ロールを開示している。この文献には、Vが10.0質量%を超えると、遠心鋳造により軽い炭化物は内面側に偏析し、圧延に用いる外層の外表面では炭化物量が少ないことが記載されている。この現象は、溶湯が初晶で粒状炭化物を晶出する場合に発生しやすい。初晶粒状炭化物は比重が6 g/cm3程度と溶湯(比重:7〜8 g/cm3程度)より軽いので、遠心力により内面側に移動する。
特許文献2は、C:3.5〜5.5%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜1.2%、Cr:4.0〜12.0%、Mo:2.0〜8.0%、V:12.0〜18.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする熱間圧延用工具鋼を開示している。VCは比重が小さいので遠心鋳造により偏析するが、NbはVと比重の大きな複合炭化物(V, Nb)Cを形成するので、遠心分離による炭化物の偏析を防止する。
特許文献3は、遠心鋳造法により、シリンダの内面に耐摩耗性、耐食性、強度に優れたライニング層を形成するものであって、重量%で、炭化タングステン:30〜45%、ニッケル+コバルト(合計量):35〜50%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、珪素:1〜3%、マンガン:2%以下、鉄:8〜25%、炭素:1%以下を含有する遠心鋳造用炭化タングステン複合ライニング材を開示している。
前記のような遠心鋳造製の耐摩耗性部材は、目的の一つとして遠心分離による炭化物の偏析を防止することがあり、炭化物の偏析を積極的に利用するものではなかった。本発明の目的は、初晶MC炭化物を晶出する組成を有する溶湯を遠心鋳造すると、比重の小さなMC炭化物が内面側に濃化することを積極的に利用した、遠心鋳造製耐摩耗性部材を提供することである。
本発明の耐摩耗性部材は、例えば、圧延用ロール、搬送用ローラ、ガイドローラ、成形用ロール、ダイカスト用スリーブ、射出成形機用シリンダ、押出成形機用シリンダ、スクリュ、プランジャ、ポンプ用軸受、圧縮機用軸受、スラストベアリング、ラジアルベアリング、メカニカルシール、エンジン用シリンダライナー、エンジン用ピストン、成形機用ガイドピンブッシュ、ベーン、パイプ、金型、鋳型、粉砕機用部材、破砕機用部材、金属切粉や産業廃棄物などの圧縮成形機用スリーブ、XYテーブルなどの摺動面を有する部材に好適なものである。
本発明の耐摩耗性部材は、耐摩耗性が要求される少なくとも一部分に本発明の耐摩耗層が存在すればよい。本発明は遠心鋳造製であるがゆえ形状的には耐摩耗層をリング状に備えた円筒体の部材が望ましいが、耐摩耗層から成形加工した平板状、棒状やブロック状などいかなる形状の部材でもかまわない。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、下記の知見に基づき本発明に想到した。
初晶MC炭化物を晶出する組成を有する溶湯を遠心鋳造すると、比重の小さなMC炭化物が内面側に濃化することを積極的に利用し、遠心鋳造後MC炭化物が濃化した層を耐摩耗層とすれば、耐摩耗性に優れるMC炭化物が多い耐摩耗層を低コストで確実に形成することができる。
初晶MC炭化物を晶出する組成を有する溶湯を遠心鋳造すると、比重の小さなMC炭化物が内面側に濃化することを積極的に利用し、遠心鋳造後MC炭化物が濃化した層を耐摩耗層とすれば、耐摩耗性に優れるMC炭化物が多い耐摩耗層を低コストで確実に形成することができる。
すなわち、本発明の第一の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、溶湯を遠心鋳造することにより、MC炭化物が濃化した内周層と、MC炭化物が乏しい外周層と、前記内周層と前記外周層の間でMC炭化物の面積率が変化する中間層(MC炭化物の濃度が傾斜している層−単に「濃度傾斜層」という)とからなる円筒体を作製し、前記MC炭化物が濃化した内周層を耐摩耗層としたことを特徴とする。
本発明の第二の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有し、前記組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の最大内接円直径が150μmを超えないことを特徴とする。
本発明の第三の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有し、前記組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離が10〜40μmであることを特徴とする。
本発明の第一の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有することを特徴とする。
本発明の第一、第二及び第三の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層中のMC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする。
本発明の第一、第二及び第三の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層中の円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離Bと、MC炭化物の平均円相当直径Aとの比(B/A)が2以下であることを特徴とする。
本発明の第一、第二及び第三の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層に、面積率で円相当直径が1μm以上のM2C、M6C及びM7C3炭化物が総量で0〜5%分散していることを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が質量%で、C:2.5〜9%、V:11〜40%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる組成を有することを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層は、さらに質量%で、Si:0.1〜3.5%、Mn:0.1〜3.5%、Cr:1〜25%、Mo:0.5〜10%及びW:1〜40%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層は、Vの少なくとも一部が、下記式(1):
11%≦V%+0.55×Nb%≦40%(質量%)・・・(1)
を満たす量のNbで置換されていることを特徴とする。
11%≦V%+0.55×Nb%≦40%(質量%)・・・(1)
を満たす量のNbで置換されていることを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層は、下記式(2):
0≦C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2%(質量%)・・・(2)
を満たすことを特徴とする。
0≦C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2%(質量%)・・・(2)
を満たすことを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層は、さらに質量%で、2%以下のNi及び/又は10%以下のCoを含有することを特徴とする。
本発明の第四の遠心鋳造製耐摩耗性部材において、耐摩耗層は、さらに質量%で、2%以下のB、2%以下のCu、0.5%以下のTi及び0.5%以下のAlからなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする。
本発明の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、遠心鋳造法を用いて、MC炭化物を多量かつ均一に分散できるために、優れた耐摩耗性を有する耐摩耗層を低コストで製造することができる。
[1] 遠心鋳造法
本発明の耐摩耗層を製造するには、まず初晶MC炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を円筒形鋳型(もしくは外筒の中空部内面)に鋳込み、遠心鋳造する。遠心鋳造によるMC炭化物の遠心分離を利用する本発明では、溶湯組成は耐摩耗層の組成と異なる。
本発明の耐摩耗層を製造するには、まず初晶MC炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を円筒形鋳型(もしくは外筒の中空部内面)に鋳込み、遠心鋳造する。遠心鋳造によるMC炭化物の遠心分離を利用する本発明では、溶湯組成は耐摩耗層の組成と異なる。
請求項に記載の耐摩耗層組成を得るためには、溶湯組成は、質量%で、C:2.2〜6.0%、V:8〜22%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる。NbはVの少なくとも一部を置換し、かつMC炭化物として遠心鋳造により遠心分離するので、溶湯に、下記式(3):
8%≦V%+0.55×Nb%≦22%(質量%)・・・(3)
を満たす量のNbを添加することができる。
8%≦V%+0.55×Nb%≦22%(質量%)・・・(3)
を満たす量のNbを添加することができる。
好ましくは、溶湯組成は、質量%で、C:2.5〜6.0%、V:10〜22%を含有し、Nbを10%≦V%+0.55×Nb%≦22%(質量%)を満たす量だけ含有してもよい。
任意元素であるSi、Mn、Cr、Mo、Ni、Co、B、Cu及びAlはほとんど遠心分離しないので、溶湯中の含有量は耐摩耗層における含有量と同じでよい。W及びTiは、その一部が初晶MC炭化物に固溶するため、若干遠心分離される。
図4(a) に示すように、鋳型41内での遠心鋳造の際、溶湯42中で比重の小さな初晶MC炭化物43は中空部44に接する円筒体の内側に移動する。その結果、図4(b) 及び図4(c) に示すように、MC炭化物が濃化した内周層40aと、MC炭化物が乏しい外周層40bと、MC炭化物の面積率が変化する濃度傾斜層40cとからなる円筒体40が得られる。
本発明は、このMC炭化物が濃化した部分(主として内周層40a)を耐摩耗層とする。外周層40b及び濃度傾斜層40cの厚さは、溶湯の組成及び遠心鋳造条件により決まる。
本発明の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、MC炭化物が濃化した内周層40aが耐摩耗層であればよく、円筒体の場合、以下の構成が可能である。ただし、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
(1)円筒体40の外周層40bのすべてを切削除去して、濃度傾斜層40cのすべてあるいは濃度傾斜層40cの少なくとも一部を切削除去して、MC炭化物が濃化した内周層40aを露出させて、内周層40aの外表面を耐摩耗層とする。例えば、圧延ロールの外層(耐摩耗層)が挙げられる。
(2)円筒体40の外周層40b及び濃度傾斜層40cの少なくとも一部を外筒として用い、MC炭化物が濃化した内周層40aを耐摩耗層とする。例えば、圧縮成形機用スリーブの内層(耐摩耗層)が挙げられる。
(3)別個に作製した金属製外筒の中空部内面に、外周層40b、濃度傾斜層40c及び内周層40aからなる円筒体40を嵌合して、MC炭化物が濃化した内周層40aを耐摩耗層とする。この場合、円筒体40の外周層40bや濃度傾斜層40cは、少なくとも一部を切削等により除去してもよい。例えば、射出成形機用シリンダの内層(耐摩耗層)が挙げられる。
(4)別個に用意した金属製外筒の中空部内面に、本発明の溶湯を鋳込み遠心鋳造する。そして、外筒の中空部内面に、外周層40b、濃度傾斜層40c及び内周層40aからなる円筒体40を溶着形成させて、MC炭化物が濃化した内周層40aを耐摩耗層とする。
[2] 耐摩耗層の組織
(1) MC炭化物
粒状炭化物であるMC炭化物は、他の炭化物(M2C、M6C及びM7C3炭化物等)に比べると高硬度であり、耐摩耗性の向上に寄与する。MC炭化物が面積率で20%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、MC炭化物が面積率で60%を超えると、耐摩耗層の靭性が著しく低下する。その上、隣り合う粒状炭化物同士の間隔が狭く、クラックが伝播しやすくなるため、耐熱亀裂性が劣化する。従って、MC炭化物は面積率で20〜60%である。好ましい面積率は30〜50%である。
(1) MC炭化物
粒状炭化物であるMC炭化物は、他の炭化物(M2C、M6C及びM7C3炭化物等)に比べると高硬度であり、耐摩耗性の向上に寄与する。MC炭化物が面積率で20%未満では、耐摩耗性が不十分である。一方、MC炭化物が面積率で60%を超えると、耐摩耗層の靭性が著しく低下する。その上、隣り合う粒状炭化物同士の間隔が狭く、クラックが伝播しやすくなるため、耐熱亀裂性が劣化する。従って、MC炭化物は面積率で20〜60%である。好ましい面積率は30〜50%である。
(2) MC炭化物の大きさ
MC炭化物(粒状炭化物)の平均円相当直径は10〜50μmであるのが好ましい。MC炭化物の平均円相当直径が10μm未満では、基地がMC炭化物を十分に支持できず、耐摩耗性は低い。一方、平均円相当直径が50μmを超えると、靭性が低下する。MC炭化物の平均円相当直径はより好ましくは10〜40μmであり、最も好ましくは15〜30μmである。
MC炭化物(粒状炭化物)の平均円相当直径は10〜50μmであるのが好ましい。MC炭化物の平均円相当直径が10μm未満では、基地がMC炭化物を十分に支持できず、耐摩耗性は低い。一方、平均円相当直径が50μmを超えると、靭性が低下する。MC炭化物の平均円相当直径はより好ましくは10〜40μmであり、最も好ましくは15〜30μmである。
図1に示すように、MC炭化物1の円相当直径は、MC炭化物1と等しい面積の円10の直径をD10と定義する。MC炭化物1の面積をSとすると、D10=2×(S/π)1/2である。MC炭化物の平均円相当直径はD10の平均値である。
(3) MC炭化物間の平均距離
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離は10〜40μmであるのが好ましい。平均MC炭化物間距離が10μm未満であると、MC炭化物の偏在が多すぎ、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸が生じる。一方、平均MC炭化物間距離が40μm超であると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きく、耐摩耗性の向上が見られない。円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離は20〜30μmであるのがより好ましい。
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離は10〜40μmであるのが好ましい。平均MC炭化物間距離が10μm未満であると、MC炭化物の偏在が多すぎ、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸が生じる。一方、平均MC炭化物間距離が40μm超であると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きく、耐摩耗性の向上が見られない。円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離は20〜30μmであるのがより好ましい。
MC炭化物間の平均距離の求め方を、耐摩耗層の組織を概略的に示す図2により説明する。この組織は、円相当直径で15μm以上のMC炭化物(白色)1aと、円相当直径が15μm未満のMC炭化物(黒色)1bとを含有する。2は基地(M2C、M6C及びM7C3炭化物を含有する)を示す。この組織に任意の直線Lを引くと、MC炭化物1a1,1a2,1a3・・・1anが交差し、これらのMC炭化物間の距離L1,L2,L3・・・Lnが計測される。従って、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離は、[Σ(L1+L2+・・・・+Ln)]/nにより求まる。
(4) 平均MC炭化物間距離/平均円相当直径
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離Bと、MC炭化物の平均円相当直径Aとの比(B/A)は2以下であるのが好ましい。多量のMC炭化物を含有する本発明の耐摩耗層では、MC炭化物が凝集しやすい。MC炭化物が凝集すると、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸が生じる。B/A比はMC炭化物の凝集の程度を示す。B/Aが2を超えると、MC炭化物が凝集しすぎている。より好ましいB/A比は1.5以下である。
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離Bと、MC炭化物の平均円相当直径Aとの比(B/A)は2以下であるのが好ましい。多量のMC炭化物を含有する本発明の耐摩耗層では、MC炭化物が凝集しやすい。MC炭化物が凝集すると、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸が生じる。B/A比はMC炭化物の凝集の程度を示す。B/Aが2を超えると、MC炭化物が凝集しすぎている。より好ましいB/A比は1.5以下である。
(5) MC炭化物を含まない領域の最大内接円直径
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の最大内接円直径は150μmを超えないのが好ましい。最大内接円直径が150μm超であると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きい。最大内接円直径は120μm以下であるのがより好ましく、80μm以下であるのがより好ましい。
本発明の耐摩耗層の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の最大内接円直径は150μmを超えないのが好ましい。最大内接円直径が150μm超であると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きい。最大内接円直径は120μm以下であるのがより好ましく、80μm以下であるのがより好ましい。
円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の最大内接円直径は図3に示すように求める。図示の視野では、円相当直径が15μm以上のMC炭化物1a1,1a2,1a3,1a4に内接する円20の直径はD20である。同様にして、他のMC炭化物群に内接する円の直径を求める。この操作を任意の複数の視野について行い、最大の内接円直径D20maxを決める。
(6) 基地の硬さ
基地は主にFe及び合金元素からなり、熱処理による変態や極微細な炭化物の析出により硬さが変化する。基地の硬さがビッカース硬さでHv 550未満では、耐摩耗層の耐摩耗性が不十分である。耐摩耗性向上の観点から基地は硬いほうが望ましいが、Hv 900を超えると、基地の靭性が低下する。基地のより好ましい硬さはHv 650〜850であり、さらに好ましくはHv 650〜750である。
基地は主にFe及び合金元素からなり、熱処理による変態や極微細な炭化物の析出により硬さが変化する。基地の硬さがビッカース硬さでHv 550未満では、耐摩耗層の耐摩耗性が不十分である。耐摩耗性向上の観点から基地は硬いほうが望ましいが、Hv 900を超えると、基地の靭性が低下する。基地のより好ましい硬さはHv 650〜850であり、さらに好ましくはHv 650〜750である。
(7) 非粒状炭化物
本発明の耐摩耗層には、円相当直径が1μm以上の非粒状炭化物(M2C、M6C、及びM7C3炭化物)が合計面積率で0〜5%分散していても良い。非粒状炭化物の合計面積率が5%を超えると、非粒状炭化物が粗大化して耐摩耗層の靭性を損なうだけでなく、網目状に晶出した非粒状炭化物に沿ってクラックが進展することにより耐熱亀裂性が低下する。非粒状炭化物の合計面積率は少なければ少ないほど良い。円相当直径が1μm以上のM2C、M6C、及びM7C3炭化物の合計面積率はより好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0〜1%である。なおMC、M2C、M6C、及びM7C3炭化物以外の炭化物を微量含んでも良い。
本発明の耐摩耗層には、円相当直径が1μm以上の非粒状炭化物(M2C、M6C、及びM7C3炭化物)が合計面積率で0〜5%分散していても良い。非粒状炭化物の合計面積率が5%を超えると、非粒状炭化物が粗大化して耐摩耗層の靭性を損なうだけでなく、網目状に晶出した非粒状炭化物に沿ってクラックが進展することにより耐熱亀裂性が低下する。非粒状炭化物の合計面積率は少なければ少ないほど良い。円相当直径が1μm以上のM2C、M6C、及びM7C3炭化物の合計面積率はより好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0〜1%である。なおMC、M2C、M6C、及びM7C3炭化物以外の炭化物を微量含んでも良い。
[3] 耐摩耗層の組成(質量%)
(1) 必須成分
(a) C:2.5〜9%
Cは、主にV,Nb等の合金元素と結合し、MC炭化物を形成することにより耐摩耗性を向上させる必須元素である。合金元素と結合しないCは主に基地中に固溶するか極微細に析出し、基地を強化する。Cが2.5%未満ではMC炭化物の量が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが9%を超えると、炭化物が過多となり、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。C含有量は好ましくは3.5〜9%であり、より好ましくは4.5〜9%である。
(1) 必須成分
(a) C:2.5〜9%
Cは、主にV,Nb等の合金元素と結合し、MC炭化物を形成することにより耐摩耗性を向上させる必須元素である。合金元素と結合しないCは主に基地中に固溶するか極微細に析出し、基地を強化する。Cが2.5%未満ではMC炭化物の量が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが9%を超えると、炭化物が過多となり、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。C含有量は好ましくは3.5〜9%であり、より好ましくは4.5〜9%である。
(b) V:11〜40%
Vは主にCと結合し、MC炭化物を形成する元素である。耐摩耗層に多量のMC炭化物を含ませるために、11〜40%のVが必要である。Vが11%未満では、MC炭化物が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Vが40%超であると、MC炭化物が過剰となり、耐摩耗層の靭性が劣化する。V含有量は好ましくは15〜40%以下であり、より好ましくは18〜40%である。
Vは主にCと結合し、MC炭化物を形成する元素である。耐摩耗層に多量のMC炭化物を含ませるために、11〜40%のVが必要である。Vが11%未満では、MC炭化物が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Vが40%超であると、MC炭化物が過剰となり、耐摩耗層の靭性が劣化する。V含有量は好ましくは15〜40%以下であり、より好ましくは18〜40%である。
(c) Nb
NbはMC炭化物を形成する点でVと同様の作用を有する。原子量の比より、質量%で0.55×Nb%とV%とが等価である。従って、下記式(1):
11%≦V%+0.55×Nb%≦40%(質量%)・・・(1)
を満たす量のNbでVの一部又は全部を置換しても良い。(V%+0.55×Nb%)のより好ましい範囲は、質量%で、15〜40%であり、最も好ましい範囲は18〜40%である。
NbはMC炭化物を形成する点でVと同様の作用を有する。原子量の比より、質量%で0.55×Nb%とV%とが等価である。従って、下記式(1):
11%≦V%+0.55×Nb%≦40%(質量%)・・・(1)
を満たす量のNbでVの一部又は全部を置換しても良い。(V%+0.55×Nb%)のより好ましい範囲は、質量%で、15〜40%であり、最も好ましい範囲は18〜40%である。
またNbはC及びVと、下記式(2):
0≦C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2%(質量%)・・・(2)
を満たすのが好ましい。[C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)]の値が0未満であると、MC炭化物が十分に得られず、基地中にV及びNbが過剰となり、十分な硬さ及び耐摩耗性が得られない。一方、[C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)]の値が2%を超えると、M2C、M6C、及びM7C3炭化物等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。
0≦C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2%(質量%)・・・(2)
を満たすのが好ましい。[C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)]の値が0未満であると、MC炭化物が十分に得られず、基地中にV及びNbが過剰となり、十分な硬さ及び耐摩耗性が得られない。一方、[C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)]の値が2%を超えると、M2C、M6C、及びM7C3炭化物等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。
(2) 任意成分
耐摩耗性部材の用途及び使用方法に応じて、耐摩耗層は以下の元素を適宜含有しても良い。
耐摩耗性部材の用途及び使用方法に応じて、耐摩耗層は以下の元素を適宜含有しても良い。
(a) Si:0.1〜3.5%
Siは溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足し、鋳造欠陥を生じやすい。一方、Siが3.5%を超えると耐摩耗層は脆化する。Si含有量は好ましくは0.2〜2.5%であり、より好ましくは0.2〜1.5%である。
Siは溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足し、鋳造欠陥を生じやすい。一方、Siが3.5%を超えると耐摩耗層は脆化する。Si含有量は好ましくは0.2〜2.5%であり、より好ましくは0.2〜1.5%である。
(b) Mn:0.1〜3.5%
Mnは溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mn
が0.1%未満であると、これらの効果が不十分である。一方、Mnが3.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり、硬さを安定的に維持できず、耐摩耗性が劣化しやすくなる。Mn含有量は好ましくは0.2〜2.5%であり、より好ましくは0.2〜1.5%である。
Mnは溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mn
が0.1%未満であると、これらの効果が不十分である。一方、Mnが3.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり、硬さを安定的に維持できず、耐摩耗性が劣化しやすくなる。Mn含有量は好ましくは0.2〜2.5%であり、より好ましくは0.2〜1.5%である。
(c) Cr:1〜25%
Crは基地に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。Crが1%未満では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Crが25%を超えると、M7C3炭化物等のMC炭化物以外の炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいCr含有量は3〜15%である。
Crは基地に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。Crが1%未満では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Crが25%を超えると、M7C3炭化物等のMC炭化物以外の炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいCr含有量は3〜15%である。
(d) Mo:0.5〜10%
Moは基地に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。またMoの一部は粒状炭化物を形成する。Moが0.5%未満では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Moが10%を超えるとM2CやM6C等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。Mo含有量はより好ましくは2.5〜10%である。
Moは基地に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。またMoの一部は粒状炭化物を形成する。Moが0.5%未満では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Moが10%を超えるとM2CやM6C等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。Mo含有量はより好ましくは2.5〜10%である。
(e) W:1〜40%
Wは基地部に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。またWの一部は粒状炭化物を形成する。Wが1%未満であると、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Wが40%を超えるとM6CやM2C等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。W含有量はより好ましくは5〜40%であり、特に5〜20%である。
Wは基地部に固溶して、一部はCと結合して極微細な炭化物として析出し、基地を強化する。またWの一部は粒状炭化物を形成する。Wが1%未満であると、基地強化の効果が十分に得られない。一方、Wが40%を超えるとM6CやM2C等の非粒状炭化物が網目状に晶出し、耐摩耗層の耐熱亀裂性が劣化する。W含有量はより好ましくは5〜40%であり、特に5〜20%である。
本発明の耐摩耗層に十分な耐摩耗性を付与するために、基地の強化元素であるCr、Mo及びWの少なくとも一種を含有するのが好ましい。
(f) Ni:2%以下
Niが2%を超えると、基地のオーステナイトが安定化するため、基地の硬化効果が不十分である。
Niが2%を超えると、基地のオーステナイトが安定化するため、基地の硬化効果が不十分である。
(g) Co:10%以下
Coは基地に固溶し、基地強化の効果がある。またCoを含有すると、高温でも基地の硬さを維持できる。Coが10%を超えると、耐摩耗層の靭性が低下する。Coは高価であるので、経済性及び使用条件を考慮し、その含有量を決定するのが望ましい。
Coは基地に固溶し、基地強化の効果がある。またCoを含有すると、高温でも基地の硬さを維持できる。Coが10%を超えると、耐摩耗層の靭性が低下する。Coは高価であるので、経済性及び使用条件を考慮し、その含有量を決定するのが望ましい。
(h) B:2%以下
Bは耐摩耗性の向上に寄与する。2%を超えると、耐摩耗層の靭性が低下する。
Bは耐摩耗性の向上に寄与する。2%を超えると、耐摩耗層の靭性が低下する。
(i) Cu:2%以下
Cuは耐食性及び耐摩耗性の向上に寄与する。2%を超えると、耐摩耗層の脆化を招く。
Cuは耐食性及び耐摩耗性の向上に寄与する。2%を超えると、耐摩耗層の脆化を招く。
(j) Ti:0.5%以下
Tiは溶湯中で脱酸剤として作用するほか、Nと結合して窒化物を形成し、粒状炭化物の核となり、粒状炭化物を微細にする効果がある。また一部はCと結合して粒状炭化物となる。Tiの添加効果は0.5%以下で十分である。
Tiは溶湯中で脱酸剤として作用するほか、Nと結合して窒化物を形成し、粒状炭化物の核となり、粒状炭化物を微細にする効果がある。また一部はCと結合して粒状炭化物となる。Tiの添加効果は0.5%以下で十分である。
(k) Al:0.5%以下
Alは溶湯中で脱酸剤として作用するほか、粒状炭化物を微細にする効果がある。Alが0.5%を超えると、十分な基地硬さが得られなくなる。
Alは溶湯中で脱酸剤として作用するほか、粒状炭化物を微細にする効果がある。Alが0.5%を超えると、十分な基地硬さが得られなくなる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜3、従来例1及び2
表1に示す化学組成(質量%)に調整した溶湯を遠心鋳造用鋳型内で遠心鋳造し、円筒体を作製した。ただし比較例1のみ静置鋳造法を用いた。
表1に示す化学組成(質量%)に調整した溶湯を遠心鋳造用鋳型内で遠心鋳造し、円筒体を作製した。ただし比較例1のみ静置鋳造法を用いた。
得られた円筒体のうち、実施例4及び6並びに従来例2の円筒体について、円筒体の半径方向断面における元素分布及びMC炭化物分布を測定した。結果を図5〜図10に示す。
図5に示すように、実施例4の円筒体では、Vは外周層ではほぼ5質量%と少なかったが、内周層では25質量%以上と多く、またWも外周層ではほぼ10〜15質量%と少なかったが、内周層では20〜25質量%と多かった。Cも、外周層ではほぼ2.5質量%と少なかったが、内周層では5質量%以上と多かった。その他の元素(Cr,Mo)については、外周層〜内周層で濃度分布はほとんどなかった。
図6に示すように、MC炭化物の面積率分布もVの濃度分布とほぼ同じ傾向を示した。すなわち、MC炭化物の面積率は外周層ではほぼ4〜8面積%と乏しかったが、内周層ではほぼ35面積%以上と多かった。
図7に示すように、実施例6の円筒体では、Vは外周層ではほぼ6質量%以下と少なかったが、内周層では15質量%以上と多く、またC,Nb及びWも外周層ではほぼ5質量%以下と少なかったが、内周層では8質量%以上と僅かに多かった。Moについては、外周層〜内周層で濃度分布はほとんどなかった。
図8に示すように、MC炭化物の面積率は外周層ではほぼ4面積%以下と乏しかったが、内周層ではほぼ25面積%以上と多かった。
従来例2の円筒体では、図9及び図10に示すように、外周層と内周層との間で元素の濃度分布はほとんどなかった。MC炭化物はどの深さでもほぼ8面積%以下であった。
得られた耐摩耗層の組成を表2に示す。各シリンダ内層に対して、1000〜1200℃での焼入れ、及び500〜600℃での3回の焼戻しからなる熱処理を行った。ただし従来例1の耐摩耗層に対しては、400〜500℃での残留オーステナイト分解兼歪取り熱処理を行った。
また、得られた耐摩耗層の組成から求めた式(1)及び式(2)の値を表3に示す。式(1)は(V%+0.55×Nb%)(質量%)の値を示し、式(2)は[C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)](質量%)の値を示す。
各耐摩耗層から切り出した試験片に対して、MC炭化物の面積率(%)、円相当直径が1μm以上のM2C、M6C及びM7C3の合計面積率(%)、MC炭化物の平均円相当直径(μm)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離(μm)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値(μm)、基地のビッカース硬さ(Hv)、摩耗深さ(μm)を以下の方法により測定した。測定結果を表4に示す。なお、表4中のB/Aは、MC炭化物の平均粒子間距離/平均円相当直径を表わす。
(1) MC炭化物の面積率
各試験片を鏡面研磨し、重クロム酸カリウム水溶液で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食させた後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA-II)を使用して、それぞれ試験片の0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野で、MC炭化物の面積率(%)を測定し、測定値を平均した。
各試験片を鏡面研磨し、重クロム酸カリウム水溶液で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食させた後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA-II)を使用して、それぞれ試験片の0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野で、MC炭化物の面積率(%)を測定し、測定値を平均した。
(2) 非粒状炭化物(M2C、M6C及びM7C3)の合計面積率
各試験片を鏡面研磨し、村上試薬で腐食することによりM2C、M6C及びM7C3炭化物を黒色又は灰色に腐食させた後、上記画像解析装置を使用して、それぞれの試験片において0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野でM2C、M6C及びM7C3炭化物の合計面積率(%)を測定し、測定値を平均した。なお、識別が容易な円相当直径で1μm以上のM2C、M6C及びM7C3炭化物を測定対象とした。
各試験片を鏡面研磨し、村上試薬で腐食することによりM2C、M6C及びM7C3炭化物を黒色又は灰色に腐食させた後、上記画像解析装置を使用して、それぞれの試験片において0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野でM2C、M6C及びM7C3炭化物の合計面積率(%)を測定し、測定値を平均した。なお、識別が容易な円相当直径で1μm以上のM2C、M6C及びM7C3炭化物を測定対象とした。
(3) MC炭化物の平均円相当直径
各試験片を鏡面研磨し、重クロム酸カリウム水溶液で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食させた後、上記画像解析装置を使用して、それぞれの試験片において0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野で、MC炭化物の平均円相当直径(μm)を測定し、測定値を平均した。
各試験片を鏡面研磨し、重クロム酸カリウム水溶液で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食させた後、上記画像解析装置を使用して、それぞれの試験片において0.23mm×0.25mmの部分に相当する20個の任意の視野で、MC炭化物の平均円相当直径(μm)を測定し、測定値を平均した。
(4) MC炭化物間の平均距離
各試験片を鏡面研磨し、ピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食させた。この光学顕微鏡観察(200倍)では、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、M2C、M6C及びM7C3炭化物は白色に見えた。それぞれ試験片の1.0mm×1.5mmの部分に相当する20個の任意の視野で、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離(μm)を測定し、測定値を平均した。
各試験片を鏡面研磨し、ピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食させた。この光学顕微鏡観察(200倍)では、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、M2C、M6C及びM7C3炭化物は白色に見えた。それぞれ試験片の1.0mm×1.5mmの部分に相当する20個の任意の視野で、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離(μm)を測定し、測定値を平均した。
(5) MC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値
(4) と同様に腐食させた各試験片を光学顕微鏡(100倍)で観察し、それぞれ試験片の2.0mm×3.0mmの部分に相当する20個の任意の視野で、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値(μm)を測定し、測定値を平均した。
(4) と同様に腐食させた各試験片を光学顕微鏡(100倍)で観察し、それぞれ試験片の2.0mm×3.0mmの部分に相当する20個の任意の視野で、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値(μm)を測定し、測定値を平均した。
(6) 基地のビッカース硬さ
各試験片を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液で軽く腐食させた後、ビッカース硬さ試験機を用いて、試験片の任意の5箇所で、荷重50〜200gの範囲で、ビッカース硬さ(Hv)を測定し、測定値を平均した。
各試験片を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液で軽く腐食させた後、ビッカース硬さ試験機を用いて、試験片の任意の5箇所で、荷重50〜200gの範囲で、ビッカース硬さ(Hv)を測定し、測定値を平均した。
(7) 摩耗深さ
直径10×長さ15mmの試験片を採取し、耐摩耗試験に供した。耐摩耗試験はアブレイシブ摩耗試験を適用した。アブレイシブ摩耗試験は、各試験片を150rpmで回転するSiC砥粒サンドペーパー(#400)に90Nの圧力で一定時間押圧することで行った。評価は試験後の摩耗深さ(μm)を測定して行った。
直径10×長さ15mmの試験片を採取し、耐摩耗試験に供した。耐摩耗試験はアブレイシブ摩耗試験を適用した。アブレイシブ摩耗試験は、各試験片を150rpmで回転するSiC砥粒サンドペーパー(#400)に90Nの圧力で一定時間押圧することで行った。評価は試験後の摩耗深さ(μm)を測定して行った。
図11及び図12はそれぞれ実施例4及び比較例1の試験片の金属組織を示す。白色の部分はMC炭化物であり、黒色の部分は基地である。実施例4の試験片ではMC炭化物が高濃度に分布しているが、比較例1の試験片ではMC炭化物が部分的に偏在しているのが分かる。
図13は従来例2の金属組織を示す。白色の微細粒状部はMC炭化物であり、白色の網目状部分はM2C、M6C及びM7C3炭化物であり、黒色の部分は基地である。従来例2ではMC炭化物が部分的に偏在して分布し、M2C、M6C及びM7C3炭化物が網目状に分布しているのが分かる。
実施例1〜8の摩耗深さは、比較例及び従来例に比べ、耐摩耗性が極めて良好であることが分かる。
本発明の遠心鋳造製耐摩耗性部材は、遠心鋳造法を用いて、MC炭化物を多量かつ均一に分散できるために、優れた耐摩耗性を有する耐摩耗層を低コストで製造することができる。
1 MC炭化物、 1a 円相当直径で15μm以上のMC炭化物、 1b 円相当直径が15μm未満のMC炭化物、 2 基地、 40 円筒体、 40a 内周層、 40b 外周層、 40c 濃度傾斜層、 41 鋳型、 42 溶湯、 43 初晶MC炭化物、 44 中空部
Claims (13)
- 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、溶湯を遠心鋳造することにより、MC炭化物が濃化した内周層と、MC炭化物が乏しい外周層と、前記内周層と前記外周層の間でMC炭化物の面積率が変化する濃度傾斜層とからなる円筒体を作製し、前記MC炭化物が濃化した内周層を耐摩耗層としたことを特徴とする遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有し、前記組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の最大内接円直径が150μmを超えないことを特徴とする遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有し、前記組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離が10〜40μmであることを特徴とする遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層が金属基地に面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織を有することを特徴とする請求項1に記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層において、MC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均距離Bと、MC炭化物の平均円相当直径Aとの比(B/A)が2以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層において、面積率で円相当直径が1μm以上のM2C、M6C及びM7C3炭化物が総量で0〜5%分散していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 産業機械の部品、治具、装置類に用いられる耐摩耗性部材であって、耐摩耗層が質量%で、C:2.5〜9%、V:11〜40%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物元素からなる組成を有することを特徴とする遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層は、さらに質量%で、Si:0.1〜3.5%、Mn:0.1〜3.5%、Cr:1〜25%、Mo:0.5〜10%及びW:1〜40%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項8に記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層は、Vの少なくとも一部が、下記式(1):
11%≦V%+0.55×Nb%≦40%(質量%)・・・(1)
を満たす量のNbで置換されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。 - 前記耐摩耗層は、下記式(2):
0≦C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2%(質量%)・・・(2)
を満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。 - 前記耐摩耗層は、さらに質量%で、2%以下のNi及び/又は10%以下のCoを含有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
- 前記耐摩耗層は、さらに質量%で、2%以下のB、2%以下のCu、0.5%以下のTi及び0.5%以下のAlからなる群から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の遠心鋳造製耐摩耗性部材。
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