JP2007118029A - アルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法と、それに使用される凝固ロールと連続製造装置 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法と、それに使用される凝固ロールと連続製造装置 Download PDF

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貢 本村
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Abstract

【課題】従来の棒材製作プロセスは複雑であるため、製造される棒材がコスト高であった。
【解決手段】溝がロール外周面周方向にリング状に形成された一つの凝固ロールを、その外周面を受け材に対向させて又は対向させずに回転させ、回転中にその溝内にアルミニウムの溶湯を連続供給して溝内で急冷凝固し、そのアルミニウムを当該溝から連続的に送り出して長尺材を製造するようにした。溝が周方向にリング状に形成された二つの凝固ロールを、それら溝を対向させて回転させ、回転中に夫々の溝にアルミニウムの溶湯を連続供給して夫々の溝内で急冷凝固し、そのアルミニウムを夫々の溝から連続的に送り出しながらそれらの半凝固状態の自由凝固部同士を突合せ接合させて長尺材を製造するようにした。突合せ接合されるアルミニウムの自由凝固部内でネジ形成軸を回転させてネジ付き長尺材を製造するようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明はアルミニウム又はアルミニウム合金の線、丸棒、角棒、異形棒、丸パイプ、角パイプ、丸或は角の半割れパイプ、内面に溝やネジの付いたパイプや半割れパイプといった各種形状の長尺物を連続鋳造(製造)する方法と、その製造に使用される凝固ロール及び製造装置に関するものである。
アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造品及び管材は製品の機械的性質及び信頼性が高いことから、自動車、産業機械、家電等の部品として広く使用されている。前記鍛造用素材としてアルミニウム又はアルミニウム合金の細径連鋳棒及び管が使用されている。
細径連鋳棒の製造方法として図13に示す水平連続鋳造法がある。この鋳造法は湯槽A内の溶湯Bを湯槽Aの出口Cから鋳型D内に流出させ、鋳型Dの出口の外側でアルミニウム又はアルミニウム合金の鋳塊Eに冷却水Wを噴射してそれらを凝固させながら水平に引く方法である。この水平連続鋳造法は設備コストが少なく、自動化、省力化、連続生産が可能であるという利点があるが、鋳塊と鋳型の接触状態が上下面で違うため、製造された鋳造品の組織が上下で異なるという品質面での課題がある。また、鋳造速度が遅い、鋳造品のサイズ切り替えが頻繁な場合は連続鋳造の利点が生かされない等の課題がある。このため、細径連鋳棒は図12に示す棒材製作プロセスで製造されている。
図12に示す棒材製作プロセスは、アルミニウムのインゴットの溶解→溶湯処理→鋳造→均質化処理→切断→ビレット→加熱→押出しを経てアルミニウムの棒材を得ている。前記溶湯処理は、主に脱ガス処理(溶湯内に含まれる水素ガスを塩素・不活性混合ガスの吹込みによる除去)と、溶湯内に含まれる酸化物等の非金属介在物の除去(フラックスの散布・攪拌及びフィルタの設置)であり、前記均質化処理は合金の成分や組織の均質化や晶出物の微細化、過飽和に固溶化して内部応力を生じて組織として不平衡状態にある鋳塊を高温で長時間、加熱保持して均質化する処理である。
前記細径連鋳棒の製作プロセスは工程が多いため生産性が低い。また、夫々の工程に製造機器や製造装置が必要となるため、設備が大掛かりになり、設備費もかさみ、夫々の工程に作業者を必要とするため人件費もかさみ、いずれもコスト高の要因となっている。このため、アルミニウム又はアルミニウム合金の鍛造品も高価である、という課題がある
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金(説明の便宜上、以下では両者を合わせて「アルミニウム」という。)の線材や棒材(説明の便宜上、以下では両者を合わせて「棒材」という。)、パイプ材、異形棒材等を、簡潔な設備及び工程で、連続的に、効率良く製造できるようにしたものである。
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、請求項1記載のように、溝がロール外周面周方向にリング状に形成された一つの凝固ロールを、その外周面を受け材に対向させて又は対向させずに回転させ、回転中にその溝内にアルミニウムの溶湯(説明の便宜上、以下では単に「溶湯」という。)を連続供給し、それを溝内で急冷凝固させながら連続的に送り出して長尺材にする方法である。溝内への溶湯の連続供給はノズルからの溝内への注入、凝固ロールの回転による溝内への掻き上げにより行なう。
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、請求項2記載のように、溝が周方向にリング状に形成された二つの凝固ロールを、それら溝を対向させて回転させ、回転中に夫々の溝に溶湯を連続供給して夫々の溝内で急冷凝固させ、夫々の溝から連続的に送り出しながら半凝固状態の自由凝固部同士を突合せ接合させて長尺材にする方法である。
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、請求項3記載のように、凝固ロールの溝内に溶湯を供給し、半凝固状態の自由凝固部に溶湯材料とは異種の材料を供給し、その異種材料を溶湯と複合化して溝から連続的に送り出すこともできる。
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、請求項4記載のように、前記製造方法において、凝固ロールの溝内で急冷凝固されるアルミニウムの半凝固状態の自由凝固部で軸を固定或は回転させて、溝からの連続送り出し中に前記自由凝固部の長手方向に溝又はネジを形成して、内面が溝付き又はネジ付きである長尺材とすることもできる。
本願発明のアルミニウム長尺材連続製造用凝固ロールは、請求項5記載のように、溝がロール外周面周方向に一本又は二本以上のリング状に形成され、二本以上の溝は形状又はサイズが同じ又は異なるものであり、ロール内に、外部から供給される冷媒を流して凝固ロールを冷却する冷媒通路を備えたものである。
本願発明のアルミニウム長尺材連続製造装置は、請求項6記載のように、冷媒通路を備えたロールの外周面周方向に一本又は二本以上の溝がリング状に形成された凝固ロールと、その溝に溶湯を供給するノズルと、前記冷媒通路に前記溝内の溶湯を急冷凝固させる冷媒を供給する冷媒供給体を備えたものである。この製造装置は請求項7記載のように、凝固ロールの溝の下方に、溝内で急冷凝固されたアルミニウムを溝から剥離する剥離装置を備えることもできる。また、請求項8記載のように、一つの凝固ロールの溝内又は対向する二つの凝固ロールの溝間に軸を固定又は回転自在に配置し、その軸の外周に、溝から連続的に送り出されるアルミニウムの半凝固状態の自由凝固部に溝又はネジを形成する一つ乃至二つ以上の突起が形成されたものとすることもできる。
本願の請求項1記載のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、回転中の凝固ロールの溝内に溶湯を供給して溝内で急冷凝固させ、そのアルミニウムを溝から連続して送り出すので、次のような効果がある。
(1)溝内への溶湯供給量を溝に沿って薄く広がる程度にすれば、半割れパイプを連続製造することができる。
(2)溝内への溶湯供給量を溝内に充満する程度に多くすれば、半割れ棒を連続製造することができる。
(3)溝内への溶湯供給を溝内の途中まで充満する程度にすれば、断面形状が異形の半割れ棒を連続製造することができる。
(4)凝固ロールの溝形状を変えれば、外形の一部又は全部が溝形状と同じであるアルミニウム長尺材を連続製造することができる。
(5)凝固ロールの溝に受け材を対向させて、製造される棒やパイプの外側面を受け材に接触させれば、外側面の形状が安定したアルミニウム長尺材を製造することができる。
(6)溶湯を凝固ロールの溝に供給するだけで所望形状の長尺材を連続製造することができるため、製造工程が簡略化されて設備費が大幅に削減され、製造装置の小型化、製造作業の省力化ができ、それにも拘わらず生産性が向上するため、コスト安のアルミニウム長尺材を連続製造することができる。
本願の請求項2記載のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、溝がロール外周面周方向にリング状に形成された二つの凝固ロールを、それら溝を対向させて回転させ、回転中に両溝に溶湯を供給して溝内で急冷凝固させ、そのアルミニウムを溝から連続的に送り出しながらアルミニウムの自由凝固部同士を突合せ接合させて両溝間から連続的に送り出すので次のような効果がある。
(1)両凝固ロールの夫々の溝内への溶湯の供給量を、夫々の溝に沿って薄く広がる程度にすれば、夫々の溝で形成された半割れパイプが突合せ接合されたパイプが連続製造される。
(2)夫々の溝内へのアルミニウム溶湯の供給量を、夫々の溝に充満する量にすれば、夫々の溝で形成された半割れ棒が突合せ接合されて棒材が連続製造される。
(3)凝固ロールの溝形状を変えれば、外形が溝と同じ形状である長尺材を連続製造することができる。
(4)溶湯を凝固ロールの溝に供給するだけで長尺材を連続製造できるため、製造工程が簡略化され、設備費も大幅に削減され、製造装置が小型化され、製造作業が省力化でき、それにも拘わらず生産性が向上するため、コスト安のアルミニウム長尺材を連続製造することができる。
本願の請求項3記載のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、凝固ロールの溝内の溶湯の自由凝固部に、溶湯材料と異種の材料を供給して、その異種材料と自由凝固部を複合化して送り出すので、製造された長尺材は引張強度、耐力、耐摩耗性、高温化における機械的性質の向上等々の特性を備えた高品質になる。ちなみに、近年、機械、装置、構造物などの使用環境や性能要求は極めて厳しく、それらを取り巻く環境は高温、高圧、高負荷である。これら環境への対応は、単一金属、プラスチック材料では難しくなっているのが現状であり、2種類以上の材料を組合せた複合材の開発が要求されている。本願の請求項3の製造方法によればこれら要求に応えることができる。
本願の請求項4記載のアルミニウム長尺材の連続製造方法は、溝内で急冷凝固されるアルミニウムの自由凝固部に、一つ乃至二つ以上の突起が形成された軸を接触させるので、その軸により内面が平滑化されて内面精度の高いパイプや半割れパイプが形成され、また、内周面にその長手方向に溝やネジが切られたアルミニウムの溝付き或はネジ付きのパイプや半割れパイプを手軽に連続製造することができる。ちなみに、溝付き或はネジ付きのパイプは液体移送管、ヒートパイプとして使用することができる。これらパイプでは溝やネジがあるため、パイプ内部を移送される液体が乱流もなくスムースに流れる。
本願の請求項5記載の凝固ロールは、ロール外周面周方向に一本又は二本以上の溝がリング状に形成され、二本以上の溝は形状又はサイズが同じ又は異なるものであり、ロール内に外部から供給される冷媒を流して凝固ロールを冷却する冷媒通路を形成したので次のような効果がある。
(1)一つの凝固ロールに同一形状の二本以上の溝がある場合は、一つの凝固ロールで同時に同じ形状の長尺材を、溝が一本の場合よりも二倍以上製造できるので量産に適する。
(2)一つの凝固ロールに、形状の異なる二本以上の溝がある場合は、一つの凝固ロールで同時に形状の異なる2種類以上の長尺材を製造できるため、多品種生産に適する。
(3)冷媒通路に冷媒を流しながら溝内の溶湯を急冷凝固できるため、従来のように、アルミニウムに外部から冷水をかけるための液体噴射ノズルを必要としないため、アルミニウム製造装置が簡潔になり、小型化される。
本願の請求項6記載のアルミニウム長尺材の連続製造装置は、冷媒通路が形成されたロールの外周面周方向に一本又は二本以上の溝がリング状に形成された凝固ロールと、溶湯を供給するノズルと、溝内の溶湯を急冷凝固させる冷媒を前記冷媒通路に供給する冷媒供給体を備えたので次のような効果がある。
(1)構成が簡潔で、小型の製造装置となる。
(2)ノズルの出口を凝固ロールの溝の上方に配置して、溶湯を溝の上方から注入できるようすれば、溝内へのアルミニウム溶湯の供給が確実になり、溶湯が溝の外にこぼれたり溢れたりすることもなく、アルミニウム溶湯の無駄がほとんどなく、長尺材のコスト削減に寄与できる。
(3)ノズル位置を、凝固ロールによる掻き上げに適した高さにすれば、凝固ロールの回転で自動的に掻き上げることもできる。
(4)冷媒通路に冷媒を流して溝内の溶湯を急冷凝固させることで、製造される長尺材の機械的性質及び鍛造性の向上が期待でき、鍛造素材として適したものとなる。ちなみに、アルミニウムの鍛造加工・押出加工などの塑性加工性も、機械的性質と同様に金属組織因子の大きさによって影響を受け、特に、鍛造性に代表される塑性加工性は鍛造用素材としてDASが20μmになると飛躍的に良好になると報告されている。
(5)急冷凝固により組織を微細にした長尺材の製造が可能であるため、鍛造用素材として一般的な6000系アルミやパイプ材としての4000系などはもとより、これまで困難だった過共晶Al−Si系合金をはじめとした、Al−Si系合金の長尺材への適応が容易となり、産業界への応用・展開が可能となる。過共晶Al−Si系合金を含めたAl−Si系合金は耐摩耗性、低熱膨張係数、高強度等の特性が良好なため、新しいアルミニウム鍛造の適用範囲が広がることが考えられる。
(6)製造された長尺材は限界圧縮率が大きい(変形し易い)ことが望まれる。限界圧縮率は圧縮が進んだときに素材の外周に亀裂や割れが入る限界を言う。本願発明ではアルミニウムを半凝固状態で急冷するため、アルミニウムの結晶粒が微細となり限界圧縮率が高まる。
本願の請求項7記載のアルミニウム長尺材の連続製造装置は、凝固ロールの溝の下方に、溝内で急冷凝固されたアルミニウムを溝から剥離する剥離装置を備えているので、溝内で凝固したアルミニウムを溝から確実に剥離することができ、溝へのアルミニウムの詰まりがなくなり、円滑な連続鋳造が可能となる。
本願の請求項8記載のアルミニウム長尺材の連続製造装置は、一つの凝固ロールの溝内又は対向する二つの凝固ロールの溝間に軸を固定又は回転自在に配置し、その軸の外周に、溝から連続的に送り出されるアルミニウムの半凝固状態の自由凝固部に溝又はネジを形成する一つ乃至二つ以上の突起が形成されているので、その軸を固定或は回転させることにより、溝から送り出されるアルミニウムの自由凝固部がその突起で精密に加工されて内面精度の高いパイプや半割れパイプを製造できると共に、内面に溝付き或はネジ付のパイプや半割れパイプを形成することができる。
(実施形態1)
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法、それに使用される凝固ロール及び製造装置の実施形態の例を、図面を参照して以下に説明する。
図1(a)(b)の実施形態は、ロール1の外周面周方向に断面形状半円状の溝2がリング状に形成された凝固ロール3を一つ(単独で)使用し、その凝固ロール3を回転させ、回転中にその溝2内に溶湯4をノズル5から連続注入し、溝2内の溶湯を凝固ロール3の回転中に同ロール3で急冷凝固させて溝2から連続的に送り出す方法である。この場合、溶湯4の供給量を溝2に充満する量とすることにより、溝2から送り出される長尺材6の断面形状を図1(c)のように円弧面7が溝2の形状と同じ形状で、大気側(外側面)8が溶湯の表面張力で少し膨れた半割れ丸棒とすることができる。
図1(a)(b)の実施形態において、溶湯の供給量を溝2の内周面全般に薄く行き渡る程度の量とすることにより、溝2から送り出される長尺材6の断面形状を図1(d)のように円弧面7が溝2の形状と同じ形状である半割れパイプとすることができる。この場合、図1(a)に仮想線で示すように、溝2内に軸29を縦向きに固定又は回転自在に配置し、その軸29として図3(a)に示すように外周面軸方向に直線突起30が一つ縦向きに形成されたものを使用することにより、溝2から押し出される半割れパイプの内面に縦溝が1本形成された溝付き半割れパイプを製造することができる。軸29として図3(b)に示すように直線突起30が等間隔で四本縦向きに形成されたものを使用することにより、溝2から押し出される半割れパイプの内面に縦溝が等間隔で4本形成された溝付き半割れパイプを製造することができる。軸29として図3(c)に示すように螺旋突起(傾斜突起)31が形成されたものを使用することにより、溝2から押し出される半割れパイプの内面に螺旋溝が形成された溝付き(ネジ付き)半割れパイプを製造することができる。直線突起30、螺旋突起31の高さ、幅等を異なるものとすることにより、各種サイズ、寸法の溝やネジが形成されたパイプとすることができる。また、前記軸29を設けることにより、アルミニウムの自由凝固部(面)がその軸と接触して自由凝固部(面)の凹凸が平滑になり、内面が平滑なパイプが製造される。
前記実施形態において、溶湯の供給量を溝2に充満するよりもやや少なめにすることにより、溝2から送り出される長尺材6の断面形状を図1(e)のように円弧面7が溝2の形状と同じ形状であり、外側面8が窪んだ三日月形の棒とすることができる。
(実施形態2)
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法の第2の実施形態を図2に示す。この実施形態は図1の凝固ロール3と同じ形状、構造の凝固ロール3を使用するが、図1と異なるのは凝固ロール3の外周面に板状の受け材9を宛がうこと、溶湯4を凝固ロール3の回転で溝2内に掻き上げること、溝2から送り出される半凝固状態のアルミニウムの自由凝固部(外側面)8を受け材9に接触させることである。この場合、溶湯4の掻き上げ量を溝2内に充満する量とすることにより、溝2から送り出される長尺材6の断面形状を図2(b)のように円弧面7が溝2と同じ形状で、外側面8が平面状の半割れ棒とすることができる。外側面8は凝固中に受け材9と接触しているため凹凸のある自由凝固部(面)の表面が滑らかになる。
図2(a)の実施形態において、溶湯4の供給量を溝2の内周面全般に薄く行き渡る程度の量とすることにより、溝2から送り出される長尺材6の断面形状を図2(c)のように円弧面7が溝2と同じ形状であり、開口端面11が受け材9と接触して平面になった半割れパイプの長尺物6となる。この場合、図2(d)のように受け材9を半円棒状にし、その膨出部9aを図2(c)の連続的に送り出される半割れパイプ(長尺材)6の内面6aに合った形状、サイズとすることにより、半割れパイプ(長尺材)6の内面6aが受け材9の膨出部9aに接触して凹凸が防止され、平滑になって内面精度の高い半割れパイプとなる。図2(e)のように板状の受け材9の長手方向任意の位置に半円盤状の突起9bを設け、その突起9bの外周面を図2(c)の半割れパイプ(長尺材)6の内面6aに合った形状、サイズにしても前記と同様に内面精度の高い半割れパイプを製造することができる。前記突起9bは図2(f)のように半円盤状の突起9bの外周面に、多数のV字状突起9cを形成しておくことにより、それと接触して成型される半割れパイプの内面6aにその軸方向(長手方向)に沿った多数の細かい溝を形成することもできる。前記突起9bの形状を変えることにより、半割れパイプ(図2c)の内周面に形成される溝形状を変えることができる。
(実施形態3)
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法の第3の実施形態を図4(a)(b)に示す。この実施形態はロール1の外周面周方向に溝2がリング状に形成された二つの凝固ロール3を、溝2同士を対向させて配置した2ロール方式(双ロール方式)である。この実施形態では、両凝固ロール3を回転させ、回転中に夫々の凝固ロール3の溝2にアルミニウム溶湯4をノズル5から連続注入し、そのアルミニウムを夫々の溝2内で急冷凝固させて溝2から送り出す方法である。この場合、溝2への溶湯4の供給量を、夫々の溝2内に充満する量にして、溝2内で急冷凝固されるアルミニウムが溝2と同じ外形の半割れ棒12(図5a)となるようにし、夫々の溝2から送り出される半割れ棒12の自由凝固面(外側面)8同士を突合わせ接合することにより、丸棒の長尺材6(図5a、b)を両溝2間から連続的に送り出す方法である。
(実施形態4)
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法の第4の実施形態は、図4(a)(b)において、凝固ロール3の溝2に供給する溶湯4を、夫々の溝2の内周面に沿って広がる程度の量として、溶湯4が溝2内で半割れパイプ10(図5c)に凝固されるようにし、その半割れパイプ10の自由凝固端部(開口端面)11同士を突合わせ接合することにより丸パイプの長尺物6(図5c、d)を製造する方法である。
(実施形態5)
本願発明のアルミニウム長尺材の連続製造方法の第4の実施形態を図6に示す。この実施形態は溶湯4を凝固ロール3の回転で溝2内に掻き上げる方法である。この場合も、溶湯4の掻き上げ量を調節することにより、溝2から送り出されるアルミニウムを半割れ棒12(図5a)とし、その自由凝固面(開口端面)8同士を突合わせ接合することにより、丸棒の長尺物6(図5a、b)を製造する方法である。
(実施形態6)
図7は断面H形の棒材の製造方法であり、この製造方法ではロール1の外周面周方向にコ字状(H形の半割れ形状)の溝2がリング状に形成された二つの凝固ロール3を、溝2を対向させて配置して、対向する両溝2間にH字状の空間13を形成し、両凝固ロール3の回転中に夫々の溝2に溶湯を連続供給し、夫々の溝2への供給量を夫々の溝2内に充満する量として、夫々の溝2内でコ字形の棒(H字形の半割れ棒)に凝固させ、その半割れ棒を夫々の溝2から送り出しながらそれらの自由凝固面(外側面)同士を突合わせ接合させてH字状の長尺物にして連続的に送り出す方法である。
(実施形態7)
本発明の長尺物製造方法で使用される凝固ロール3は溝2が他の断面形状のものであってもよい。例えば、外向きコ字形の溝が形成されたものでもよい。この凝固ロールを使用して、その溝にアルミニウム溶湯を供給し、その供給量を溝に充満する量として、夫々の溝2内で凝固されるアルミニウムを半割れ角棒にし、溝から送り出される半割れ角棒の自由凝固面(外側面)同士を突き合わせ接合すれば任意断面の角棒を連続製造することができる。
前記外向きコ字形の溝へのアルミニウム溶湯の供給量を溝2の内周面全般に薄く広がる程度にして、溝2内で凝固されるアルミニウムを半割れ角パイプにし、溝から送り出される半割れ角パイプの自由凝固面(開口端面)同士を突き合わせ接合すれば角パイプを連続製造することができる。
(実施形態8)
凝固ロール3は図8のようにロール外周面に二本以上の溝2がリング状に形成されたものでもよい。図8の溝2はサイズの異なる同じ形状であるが、溝2の形状やサイズは異なるものでもよい。
(実施形態9)
本願発明では、前記実施形態において、凝固ロール3の溝2内で急冷凝固された半凝固状態のアルミニウムの自由凝固部に、溶湯材料とは異種の材料を供給し、自由凝固部と異種材料を一体にして複合化させながら溝2から連続的に送り出すことができる。異種材料としては、引張強さ、耐力、耐摩耗性、耐熱性、耐温性等に優れた材料が好ましく、例えば、金属、合金、カーボン等があり、それらの長繊維、粒子、薄片といった各種形状、サイズのものが考えられる。
(実施形態10)
前記した2ロール式の実施形態では、図5(a)(c)のように、突合わせ接合される半割れ棒、半割れパイプ間に図3(a)〜(c)のいずれかの軸29を固定又は回転自在に配置することにより、凝固ロール3の溝2間から送り出されるパイプ内面の長手方向に直線溝又は螺旋溝(ネジ)が形成された溝付き或はネジ付きの棒、パイプを製造することができる。この場合も、直線突起30、螺旋突起31の高さ、幅等を異なるものとすることにより、各種サイズ、寸法の溝やネジが形成されたパイプを製造することができる。また、前記軸29を設けることにより、アルミニウムの自由凝固部(面)がその軸と接触して自由凝固部(面)の凹凸が平滑になる。
(実施形態11)
前記いずれの実施形態においても図9のように、凝固ロール3の溝と、その溝内の凝固アルミニウムとの間にドクターナイフとか他の形状、構造の分離器32を配置することにより、溝内の凝固アルミニウムを溝から円滑に剥離することができ、長尺材の連続製造がスムースになる。分離器32も製造装置のフレームに高さ設置して、凝固ロールの直径、溝の深さ等に合せて分離に適した位置に調節できるようにしてある。
(実施形態12)
前記いずれの実施形態で使用される凝固ロール3も、その内部に図10に示すように冷媒通路20が形成されている。冷媒は外部の冷媒供給部からロータリージョイント21で連結されている回転軸22の連通路23に供給され、この連通路23から凝固ロール3内の冷媒通路20に送られて、溝2内のアルミニウムを急冷凝固させることができるようにしてある。冷媒は図9に矢印で示すように、回転軸22の連通路23の往路→凝固ロール3の冷媒通路20の往路→凝固ロール3の冷媒通路20の復路→回転軸22の連通路24の復路を通って循環するようにしてある。
(実施形態13)
前記実施形態で使用される凝固ロール3は凝固装置のフレームに設置されている。凝固ロール3は図2(a)のように受け材9と組み合わせて使用する場合は、受け材9と凝固ロール3の外周面を対向させてフレームに設置する。受け材9と凝固ロール3はその間の間隔を調節できるように、いずれか一方又は双方を互いに接近、離間できるようにスライド可能にフレームに取り付けてある。
二つの凝固ロール3を使用する場合はその二つを図4(a)(b)のように対向させて製造装置のフレームに設置する。この場合も両凝固ロール3間の間隔を調節できるように、いずれか一方又は双方を互いに接近、離間できるようにスライド可能にフレームに取り付けてある。
前記いずれの実施形態におけるノズル5も、凝固ロール3の溝2内に溶湯4を供給するためのものであり、図1(a)、図4(a)の場合はノズル5の出口24を溝2の位置よりも少し高い位置に設置して、溝の2の上方から溝2に溶湯4を注入できるようにしてある。ノズル5内の溶湯4を凝固ロール3の溝2で掻き上げる場合(図2a、図6)は、ノズル5は掻き上げに適した高さに配置される。ノズル5内の溶湯4の液面位置が低過ぎると、凝固ロール3で掻き上げられた溶湯4が凝固ロール3の回転に伴って頂上まで回転してきた時にノズル5内に逆流してしまうことがある。逆に、溶湯4の液面位置が高過ぎると溶湯4が回転方向先方に流れ出てしまうことがあるため、その液面位置を掻き上げに適した高さに調節する必要がある。凝固ロール3の溝2に掻き上げられた溶湯4が逆流も、流れ出しもない程度の高さ、例えば、凝固ロール3の頂点位置よりも数mm程度低い位置に調整するのが好ましい。前記いずれの実施形態においても、図1(a)(b)、図2(a)、図4(a)(b)、図6のように、ノズル5の両側壁25に差込み溝26を設け、その差込み溝26に上方からオリフィス用板27を差込み、オリフィス用板27の下面とノズル5の底面との間に隙間(溶湯流通口:オリフィス)28を形成して、ノズル5内の溶湯4がオリフィス28からノズル5の出口24側に流れ込んで、ノズル5の出口24側の溶湯が波打つことなく、一定量ずつ凝固ロール3の溝2に注入或は掻き上げられるようにしてある。
本発明の製造方法における注湯温度、溶湯高さ(図2のB)、液面位置(図2のA)、ノズル位置、ノズルの出口幅(図11(a)、(b)のW)、ノズルの出口角度(図11(c)のθ)、ロール周速等のパラメータは、凝固ロール3の直径、材質、溝2の容積、冷却温度等に応じて選択することができる。例えば、図4(a)(b)において、二つの凝固ロール3から送り出されて図5(a)(c)のように突合わせ接合されて成型される丸棒、丸パイプ(長尺材)6の接合面に界面ができないようにするためには、掻き上げ位置の溶湯温度は615℃以上、二つの凝固ロースのキス部(突合せ接合部)の溶湯温度は580℃以上必要であるため、ノズル5への注湯温度は680度程度とするのがよい。
(a)は本発明の1ロール方式の製造方法において溝にその上方のノズルから溶湯を注入する場合の側面説明図、(b)は平面図、(c)は製造された半割れ棒の断面図、(d)は製造された半割れパイプの断面図、(e)は製造された三日月棒の断面図。 (a)は本発明における1ロール方式の長尺材製造方法の側面説明図、(b)は製造された半割れ棒の断面図、(c)は製造された半割れパイプの断面図、(d)〜(f)は受け材の異なる例の説明図。 (a)〜(c)は形状の異なる軸の例を側面図、(d)は(a)の平面図、(e)は(b)の平面図。 (a)は本発明における2ロール方式の長尺材製造方法の側面説明図、(b)は(a)の平面図。 (a)は本発明の長尺材製造方法で製造される丸棒の突合せ接合途中の説明図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は本発明の長尺材製造方法で製造されるパイプの突合せ接合途中の説明図、(d)は(c)のC−C断面図。 本発明における1ロール方式の長尺材製造方法であって、溶湯をノズルから掻き上げる製造方法の側面説明図。 対向する2つの凝固ロールでH字形棒材を製造する場合の平面説明図。 本発明の凝固ロールの一例であって、サイズの異なる溝が2本平行に形成された凝固ロールの説明図。 本発明の製造装置における凝固ロールと剥離器の配置関係を示す説明図。 本発明の製造装置における凝固ロールの冷却部の説明図。 (a)は本発明の製造装置においてノズル出口幅が凝固ロールの溝幅と同じ場合の説明図、(b)はノズル出口幅が凝固ロールの溝幅よりも狭い場合の説明図、(c)はノズルの角度説明図。 従来の棒材製造プロセスの説明図。 従来の水平連続鋳造法の説明図。
符号の説明
1 ロール
2 溝
3 凝固ロール
4 アルミニウム溶湯
5 ノズル
6 長尺材
6a 半割れパイプの内面
7 円弧面
8 半割れ棒の外側面(大気側面:自由凝固面)
9 受け材
9a 受け材の膨出部
9b 受け材の突起
9c 受け材のV字状突起
10 半割れパイプ
11 半割れパイプの自由凝固面(開口端面)
12 半割れ棒
13 空間
20 冷媒通路
21 ロータリージョイント
22 回転軸
23 連通路
24 ノズルの出口
25 ノズルの側壁
26 差込み溝
27 オリフィス用板
28 オリフィス
29 軸
30 直線突起
31 螺旋突起(傾斜突起)
32 分離器

Claims (8)

  1. 溝がロール外周面周方向にリング状に形成された一つの凝固ロールを、その外周面を受け材に対向させて又は対向させずに回転させ、回転中にその溝内にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を連続供給して溝内で急冷凝固させ、そのアルミニウム又はアルミニウム合金を当該溝から連続的に送り出して長尺材にすることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法。
  2. 溝がロール外周面周方向にリング状に形成された二つの凝固ロールを、それら溝を対向させて回転させ、回転中に夫々の溝内にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を連続供給して夫々の溝内で急冷凝固させ、そのアルミニウム又はアルミニウム合金を夫々の溝から連続的に送り出しながらそれらアルミニウム又はアルミニウム合金の半凝固状態の自由凝固部同士を突合せ接合させて、長尺材にすることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載のアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法において、凝固ロールの溝内で急冷凝固されるアルミニウム又はアルミニウム合金の半凝固状態の自由凝固部に溶湯材料とは異種の材料を供給して両者を複合化しながら溝から連続的に送り出すことを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法において、凝固ロールの溝内で急冷凝固されるアルミニウム又はアルミニウム合金の半凝固状態の自由凝固部に一つ乃至二つ以上の突起が形成された軸を固定或は回転させて配置することにより、溝からの連続送り出し中に前記自由凝固部の長手方向に溝又はネジを形成して、内面が溝付き又はネジ付きの長尺材を製造することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造方法に使用される凝固ロールであり、溝がロールの外周面周方向に一本又は二本以上のリング状に形成され、二本以上の溝は形状又はサイズが同じ又は異なるものであり、ロール内に、外部から供給される冷媒が流れて凝固ロールを冷却する冷媒通路を備えたことを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造用凝固ロール。
  6. 内部に冷媒通路を備えたロールの外周面周方向に一本又は二本以上の溝がリング状に形成された凝固ロールと、その溝にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯を供給するノズルと、前記冷媒通路に冷媒を供給する冷媒供給体を備えたことを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造装置。
  7. 請求項6記載のアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造装置において、凝固ロールの溝の下方に、溝内で冷却凝固されたアルミニウム又はアルミニウム合金を溝から剥離する剥離装置を備えたことを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造装置。
  8. 請求項6又は請求項7記載のアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造装置において、一つの凝固ロールの溝内又は対向する二つの凝固ロールの溝間に軸が固定又は回転自在に配置され、その軸の外周に、溝から連続的に送り出されるアルミニウム又はアルミニウム合金の半凝固状態の自由凝固部に溝又はネジを形成する一つ乃至二つ以上の突起が形成されていることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金長尺材の連続製造装置。
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