JP2007106918A - 断熱塗膜材 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価で、使用性が良好な断熱塗膜材を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤を含有する溶液又は分散液からなる断熱塗膜材。
【選択図】なし

Description

本発明は、建物の窓ガラス等に塗布することにより断熱効果の得られる断熱塗膜材に関する。
一般に密閉された空間、例えば建物や容器等において、内部から外部あるいは外部から内部への熱伝達を遮断するために無機系あるいは有機系断熱材等が用いられている。
無機系断熱材としてはガラス繊維及び泡ガラス等のガラス系断熱材、石綿、スラグ綿、パーライト及びバーミキュライト等の鉱物系断熱材、多孔質シリカ、多孔質アルミナ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア及び耐火れんが等のセラミックス系断熱材、黒鉛及び炭素繊維等の炭素系断熱材がある。
一方、有機系断熱材としては発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン及び発泡ポリウレタン等の発泡プラスチック系断熱材、木質ボード、コルク及び植物繊維等の天然物系断熱材がある。さらに、気体の低熱伝導性を利用し、空気等の気体をアルミニウム、紙及びプラスチック等に封入した空気層断熱材も知られている。
このように、従来の断熱材はその細孔あるいは空隙を多くして密度を小さくすることによって熱伝導率が減少し、断熱効率が増加することをその機序とする。
この低密度化は機械的強度の減少及び温度上昇により起こる気体の対流に起因する熱伝導性の増大を引き起こすために、この方法での断熱効率の上昇には限界がある。
また、断熱材の厚さの増加による断熱効果の上昇は、断熱材使用量の増加に伴うコスト高及び断熱材の容量増大に伴う実用面での不利をもたらす。
一方、最近外壁に塗布するタイプの断熱材が用いられているが、これはセラミックを塗布するものであり、極めて高価であるため、広く使用されるに至っていない。
従って、本発明の目的は、安価で、使用性が良好な断熱塗膜材を提供することにある。
本発明者は、種々の塗膜を形成してその断熱効果を検討してきたところ、シランカップリング剤をガラス等の表面に塗布すれば、優れた断熱塗膜が形成され、使用性が良好であり、ガラス等の基材に悪影響を及ぼさないことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、シランカップリング剤を含有する溶液又は分散液からなる断熱塗膜材を提供するものである。
本発明の断熱塗膜材を用いれば、例えば建物の室内のガラス表面等に塗布するだけで、冬期においては室外側への放熱を抑制し、夏期においては室外側からの放射を抑制することによって室内を断熱できる。
本発明の断熱塗膜材は、シランカップリング剤を含有する水性溶液又は水分散液からなるものである。シランカップリング剤としては、少なくとも1個のシラノール基形成性のアルコキシ基と、有機官能基とを有するシラン化合物であればよく、例えば下記一般式(1)
Figure 2007106918
(式中、R1、R2及びR3の少なくとも1個はアルコキシ基又は水酸基を示し、残余はアルコキシ基、水酸基又はアルキル基を示し、Xは有機官能基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
1、R2及びR3で示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。これらのアルコキシ基は、塗膜を形成するための基材、例えばガラスや金属等の無機材料、有機材料又は金属材料表面上で水分と反応して加水分解を受けてシラノールとなり、無機材料や金属材料の表面に存在する水酸基との間で水素結合する。あるいは、アルコキシ基の加水分解によって生じたケイ素上のシラノールと無機材料や金属材料の表面に存在する水酸基との間に脱水縮合が起こって共有結合が形成されることによって、無機材料や金属材料へのシランカップリング剤の吸着が起こる。さらに、無機材料や金属材料上のシランカップリング剤のシラノール同士においても脱水縮合反応が起こり、無機材料や金属材料上にシランカップリング剤の透明で強固な膜を形成することができる。
なお、式(1)中のR1、R2及びR3のアルコキシ基の一部は水酸基となっていてもよい。R1、R2及びR3で示されるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基等が挙げられる。R1、R2及びR3のうち少なくとも1個はアルコキシ基又は水酸基であるが、2個以上がアルコキシ基であるものが特に好ましい。
Xで表される有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、及びこれらの基を含有するアルキル基などが挙げられる。かかるXは、無機材料、金属材料又は有機材料上に結合したシランカップリング剤の有機官能基同士で水素結合、脱水縮合反応あるいはポリマー化反応を起こし、強固な塗膜を形成する。また、Xは樹脂などの有機材料と化学結合又は架橋して強固に結合することから、有機材料上にシランカップリング剤の透明で、強固な膜を形成することができる。
シランカップリング剤の例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、信越化学工業、東レ・ダウコーニング社等から市販されているものを使用することができる。
これらのシランカップリング剤は、溶液又は分散液として用いられる。シランカップリング剤の溶媒としては、塗布前は、非水系の溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノールあるいはアセトンなどに保存しておくのが好ましい。塗布直前には、これに水を加えて用いてもよい。溶液又は分散液中のシランカップリング剤の濃度は、0.005〜50質量%、さらに0.01〜40質量%、特に0.01〜30質量%が好ましい。
シランカップリング剤を含有する溶液又は分散液には、さらに顔料、染料等の着色剤を含有させてもよい。なお、これらの着色剤を配合しない場合には、得られる断熱塗膜は透明であり、基材の色等に影響を及ぼさない。
本発明の断熱塗膜材の塗布対象は、有機材料、無機材料、金属材料のいずれでもよい。無機材料としてはガラス、セラミック、大理石及びコンクリートなどが挙げられる。金属材料としてはアルミニウム、スズ、亜鉛、モリブデン、タングステン、チタン、金、銀、銅、ニッケル、鉄、及びこれらの合金などが挙げられる。有機材料(樹脂材料)としてはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン及び強化ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
本発明の断熱塗膜材は基材として使用される無機材料、金属材料及び樹脂材料の表面に塗布することによって低熱伝導性透明層を形成させるために用いることができる。すなわち、無機材料、金属材料又は有機材料上に形成された本発明の断熱塗膜材による塗膜は無機材料、金属材料又は有機材料からの低温帯域への放熱を抑制し、シランカップリング剤の層と無機材料、金属材料又は有機材料との逆方向の温度差が大きくなり、高温帯域から低温帯域への対流、伝導及び放射による熱伝導を低下させることができる。
このことから、高温帯域側に本発明の断熱塗膜材による塗膜を積層させた時、高温帯域から低温帯域への対流、伝導及び放射による熱伝導を低下させることによって、高温帯域側の温度低下を抑制し、断熱効果をもたらす。すなわち、冬期において、高温帯域となる窓ガラスの室内側に本発明の断熱塗膜材による塗膜を積層させた時、室内から低温帯域となる室外への対流、伝導及び放射による熱伝導を低下させることによって、室内の温度低下を抑制し、断熱効果をもたらす。
一方、低温帯域側に本発明の断熱塗膜材による塗膜を積層させた時、高温帯域から低温帯域への放射による熱伝導を低下させることによって、低温帯域側の温度上昇を抑制し、断熱効果をもたらす。すなわち、夏期において、低温帯域となる窓ガラスの室内側に本発明の断熱塗膜材による塗膜を積層させた時、高温帯域となる室外から室内への放射による熱伝導を低下させることによって、室内の温度上昇を抑制し、断熱効果をもたらす。
また、一般に、結露発生条件として、温度20℃、湿度50%における室内において、水蒸気の露点温度は9.6℃になることから、窓の室内側の表面温度が9.6℃以下になると結露が発生する。しかしながら、本発明によるこの塗膜による断熱効果により、室内側の窓ガラスの表面温度低下を抑制することから、窓ガラス表面に発生する結露を抑制することができる。
本発明の断熱塗膜材を用いた断熱塗膜加工は簡便に行うことができることから、既存の窓ガラスに簡便に断熱加工を行うことができる。さらに、本発明の断熱塗膜材を用いた断熱塗膜加工は、窓ガラスの構造を変更することなく行うことができることから、建物の窓ガラスだけでなく、自動車等の乗物の窓ガラスにも施すことができる。
以下、実施例により具体的に説明する。
実施例1
夏期において容積42m3の部屋の窓ガラス(1.2m×0.9m)の室内側に信越化学工業株式会社製KBM6123、0.5gを水999.5gで希釈した液を、1m2あたり6mg塗布することを2回繰り返すことによって断熱塗膜加工し、同様の部屋の窓ガラスには加工をせず、ガラス面が外気になるようにそれぞれ取り付けた。これらの部屋は測定開始と共にエアコンディショナーを18℃設定で稼働状態とし、室内の経時変化を測定した。その結果を図1に示す。
図1に夏期における室内の窓ガラスに断熱塗膜加工した場合の室内温度、未加工の場合の室内温度及び室外の気温の経時変化を示した。断熱塗膜加工及び未加工の場合の室内温度の初期値は28.2及び28.9℃であったのに対して、測定開始と共にエアコンディショナーを18℃設定で稼働すると、1時間後の室内温度はそれぞれ26.8及び27.9℃を示し、8時間後では20.8及び24.2℃であった。断熱塗膜加工及び未加工の場合の差は1及び8時間後ではそれぞれ1.1及び3.4℃の値を示した。初期温度に対して8時間後の断熱塗膜加工及び未加工の場合の温度低下率はそれぞれ26及び16%の値を示し、断熱塗膜加工の断熱効果は未加工の場合と比較すると1.6倍の効果が認められた。
また、電力で考察すると、8時間後の室内温度に対して断熱塗膜加工した場合では、62%の電力量で未加工の場合と同様の断熱効果を示すことになり、このことから38%の電力を低減できることが推定された。
実施例2
冬期における容積42m3の部屋の窓ガラス(1.2m×0.9m)の室内側に信越化学工業株式会社製KBM6123、0.5gを水999.5gで希釈した液を、1m2あたり6mg塗布することを2回繰り返すことによって断熱塗膜加工し、同様の部屋の窓ガラスには加工をせず、ガラス面が外気になるようにそれぞれ取り付けた。これらの部屋を夜間において2300kcal/h の温風暖房機で室温を20℃まで上昇させた後、この温風暖房機を停止し、室内温度の経時変化を測定した。その結果を図2に示す。
図2に冬期における室内の窓ガラスに断熱塗膜加工した場合の室内温度、未加工の場合の室内温度及び室外の気温の経時変化を示した。断熱塗膜加工及び未加工の場合の室内温度の初期値はそれぞれ20.2及び20.3℃であったのに対して、1時間後ではそれぞれ16.1及び12.8℃を示し、6時間後では8.4及び5.8℃であった。断熱塗膜加工及び未加工の場合の差は1及び6時間後ではそれぞれ3.3及び2.6℃の値を示した。初期温度に対して6時間後の断熱塗膜加工及び未加工の場合の温度低下率はそれぞれ58及び71%の値を示し、断熱塗膜加工の断熱効果は未加工の場合と比較すると1.2倍の効果が認められた。
また、電力で考察すると、6時間後の室内温度に対して断熱塗膜加工した場合では、82%の電力量で未加工の場合と同様の断熱効果を示すことになり、このことから18%の電力を低減できることが推測された。
実施例3
室温を24℃、湿度を45%に設定した恒温恒湿室において、縦0.35m、横0.55m及び奥行き0.60mの一面を解放した冷凍庫の解放面に信越化学工業株式会社製KBM6123、0.5gを水999.5gで希釈した液を、1m2あたり6mg塗布することを2回繰り返すことによる断熱塗膜加工及び未加工ガラス面が外側になるように取り付け、冷凍庫内の温度を−10℃に保ち、表面に発生する結露の状態を観察した。その結果を表1に示す。
Figure 2007106918
未加工のガラス表面には30分後に結露が発生したのに対して、断熱塗膜加工したガラス表面には結露の流滴の発生は観察されなかった。このことから、本発明の活性ケイ素誘導体による断熱塗膜加工にはガラス表面の断熱効果に起因する結露抑制効果が認められた。
これらの結果から、本発明の断熱塗膜材を用いた断熱塗膜加工は断熱材として有効であり、窓ガラスの構造を変更することなく、断熱機能を有することが認められた。
夏期における窓ガラスに対して本発明の断熱塗膜加工した場合(黒丸)及び未加工の場合(黒三角)の室内温度と室外温度(黒四角)を示す図である。 冬期における窓ガラスに対して本発明の断熱塗膜加工した場合(黒丸)及び未加工の場合(黒三角)の室内温度と室外温度(黒四角)を示す図である。

Claims (5)

  1. シランカップリング剤を含有する溶液又は分散液からなる断熱塗膜材。
  2. 溶液又は分散液中のシランカップリング剤の濃度が0.005〜50質量%である請求項1記載の断熱塗膜材。
  3. シランカップリング剤が、下記一般式(1)
    Figure 2007106918
    (式中、R1、R2及びR3の少なくとも1個はアルコキシ基又は水酸基を示し、残余はアルコキシ基、水酸基又はアルキル基を示し、Xは有機官能基を示す)
    で表される化合物である請求項1又は2記載の断熱塗膜材。
  4. ガラス表面塗布用である請求項1〜3のいずれか1項記載の断熱塗膜材。
  5. 建物の室内側の窓ガラス表面塗布用である請求項1〜4のいずれか1項記載の断熱塗膜材。
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