JP2007103076A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 点検、交換、清掃、運搬といった作業の際の作業性の向上に寄与できる鉛蓄電池を得る。
【解決手段】 各セルに対応した排気孔6を電槽蓋3に設け、前記電槽蓋3の上面に、排気孔6全体を覆うとともに周縁の一部に開口5を形成し、前記排気孔6と前記開口5との間を排気のための経路4とするシート10が貼着され、電槽2または電槽蓋3の帯電時に開口5から排気孔6に至る放電路が形成されないようする。
【選択図】 図1

Description

本発明は鉛蓄電池に関するものであり、特に、電槽または電槽蓋の帯電による障害が防止できる形状に関するものである。
鉛蓄電池は、過充電を行なうと、活物質の充電反応とは別に副反応として電解液中の水が電気分解して正極板より酸素が、負極板より水素が発生し、これらはそのセル内上部の空間に滞留する。
特許文献1には、鉛蓄電池の排気筒にゴムパッキンを介して液口栓を嵌合させ、液口栓と排気筒との嵌合部分における、ゴムパッキンからの距離を、帯電する最大静電気電圧に対して火花放電を発生させない距離とするものが開示されている。すなわち、ゴムパッキンを介在させることによってセル内外の液密性と気密性を高めることができるので、点検、交換、清掃、運搬などの作業中に鉛蓄電池の帯電があり、これに反対電荷を持った物体あるいは一端をアースした非導電性の物体などが接近しても放電路を形成されないようにしている。
特開2002−42782号公報 特許文献2には、鉛蓄電池の電槽蓋の合成樹脂に表面固有抵抗値が1012Ω以下、108Ω以上になるようにカーボンブラックを混入したものを用いることが開示されている。すなわち、このような合成樹脂を用いることによって電槽蓋の加工性や成形性を損なうことなく、電槽蓋に電荷が蓄積されないようにしている。 特開昭59−211954号公報 また、このような問題に対しては、上記特許文献1、2以外に、たとえば、鉛蓄電池の内圧が規定値以上に上昇した場合にセル内のガスを放出する排気弁を備えた液口栓を用いたり、ガスの排出経路となる液口栓の内部にフィルターを取り付けたり、といったことが行われている。
また、鉛蓄電池の表面や接続部の清掃の際には、あらかじめ作業者の静電気を除去したうえで、帯電しやすい乾いた布や化繊の布を用いたり、はたきがけをしたり、といったことをせずに、湿った布を用いて清掃をし、電池の運搬時には、ビニールシートなどの帯電しやすいシート類で覆わないようにするなどの対策が講じられるとともに、取扱説明書によって注意、警告をするなどの対策が講じられてきた。
また、鉛蓄電池に対しても、セル内上部の空間にビーズを充填したり、セル内上部の空間でポリウレタンを発泡させたり、といった手段を講じて、セル内の上部空間にガスが充満しないように、該空間の容積を減少させることも行われてきた。
上記した種々の対策を講じても、特許文献1の場合には、電解液が液口栓と排気筒との嵌合面を通して這い上がってゴムパッキンの下面に達していると、前述した放電路が形成されることがあり、特許文献2の場合には、電槽蓋の帯電は防止できるが、電槽の帯電まで防止できるものではない。
上記した課題に鑑み、本発明は、這い上がった電解液がゴムパッキンの下面に達していたり、また電槽蓋がこのような電解液によって濡れていたりしていると、前述した放電路が形成されやすいことに着目し、このような電解液があっても、放電路が形成されないようにしたものである。すなわち、各セルに対応した排気孔を電槽蓋に設け、前記電槽蓋の上面に、排気孔全体を覆うとともに周縁の一部に開口を形成し、前記排気孔と前記開口との間を排気のための経路とするシートが貼着され、電槽または電槽蓋の帯電時に開口から排気孔に至る放電路が形成されないようにしたことを特徴とする鉛蓄電池(請求項1)であり、前記排気のための経路の長さを少なくとも14mmを超えるようにしたことを特徴とする鉛蓄電池(請求項2)であり、前記シートは、一部に電解液を保持するための電解液保持体が充填された突出部を有し、この突出部が前記シートの貼着によって形成される経路に位置していることを特徴とする鉛蓄電池(請求項3)であり、前記電槽蓋は、一部に電解液を保持するための電解液保持体が充填された凹部を有し、この凹部がシートの貼着によって形成される経路に位置していることを特徴とする鉛蓄電池(請求項4)であり、前記突出部または凹部から開口までの経路の長さを少なくとも14mmを超えるようにしたことを特徴とする鉛蓄電池(請求項5)である。
請求項1〜5記載の発明によれば、排気孔全体を覆うシートの周縁の一部に開口を形成し、排気孔と開口との間を排気のための経路としているから、該経路の電気抵抗を高くすることができ、電槽または電槽蓋が帯電しても、開口から排気孔に至る経路または開口から突出部もしくは凹部に至る経路に放電路が形成されないようにすることができる。
以下、本発明を、その実施の形態に基づいて説明する。
図1は本発明に係る実施の形態に係る鉛蓄電池を示し、図1(a)は全体図を、図1(b)は要部拡大図を示す。図1の鉛蓄電池1は、内部に極板群を収納するセルを有する電槽2が、前記セルに対応して設けられた排気孔6を備えた電槽蓋3によって密閉されてなり、かつ前記電槽蓋3には、シート10を、前記排気孔6全体を覆い、周縁の一部に幅が30mmの開口5が形成され、この開口5と排気孔6との間に排気のための経路4が形成されるように、経路4と開口5以外で前記シート10を電槽蓋2に貼着するようにしたもので、排気孔6から排出される酸素や水素が経路4を通して排気できるようにしている。
上記した鉛蓄電池1では、開口5と経路4をシート10が電槽蓋3に貼着されないようにして形成しているため、開口5の断面積は実質的にゼロで、電槽2または電槽蓋3の帯電時に、開口5から排気孔6に至る経路4に放電路が形成されるかどうかは、経路4の長さと開口5の幅に基づいて考えることができる。
以下、上記した「放電路が形成されるかどうか」を確認するため、排気孔を有した排気弁のゴムパッキン下面を電解液で濡らした、公称電圧が12Vで、公称容量が50AHの動力車用の密閉形鉛蓄電池と、ゴムパッキン下面を濡らしていない同じ密閉形鉛蓄電池をそれぞれ準備し、両方に上述した絶縁性シートを、その開口から排気孔までの長さ(距離)を、電解液で濡らしたものは1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、10mm、15mm、20mmになるように、電解液で濡らしていないものは1mm、2mm、3mm、10mmになるように貼着するとともに、それぞれの長側面に静電気発生装置(シシド静電気株式会社製STATILER 20−DP)で発生させたマイナス電荷を電槽に帯電させることができるようにアルミニウム板を貼付し、一端を排気弁のゴムパッキン下面に接続し、他端を48Ωの抵抗を介して接地してから、5Aの定電流で11時間の充電を行った後、15時間後に、温度が24℃、湿度が38%の雰囲気下で、5Aの定電流充電を30分間行う過程で、以下の条件の実験を行った。
すなわち、充電終了時に水素濃度を水素ガス濃度計(新コスモス電機製XP−314)で測定(6セルのうちの最大値)し、充電終了30分経過後、前記アルミニウム板を介して鉛蓄電池の電槽を帯電させていって、電槽から排気弁内側のゴムパッキン下面に至る経路の放電路が形成された際の静電気電圧と開口から排気孔までの距離との関係を調査した。調査した結果を図4に示す。なお、充電終了時に測定された水素ガス濃度は排気弁内側で18%、排気弁外側で0%であった。
図4から、ゴムパッキン下面が電解液で濡れているものは、開口から排気孔までの距離を1mmとした場合、静電気電圧が3.5kVで前述した放電路が形成されたのに対し、濡れていないものは、静電気電圧が15.8kVになるまで放電路は形成されなかった。また、静電気電圧が16kVの場合、ゴムパッキン下面が電解液で濡れているものは、開口から排気孔までの距離が14mm以下であると前述した放電路が形成されることがわかった。また、この試験に供した鉛蓄電池と同材質(PP樹脂)の電槽および電槽蓋からなる鉛蓄電池を、手に持ったポリカーボネ−トで擦りつけて帯電量を10回測定したところ、最低値が−2kV、最高値が−16kVであった。このことから、上記した16kVの静電気電圧で前述した放電路が形成されない距離、すなわち、開口から排気孔までの距離が14mmを超えるようにすることで、前述した放電路の形成が防止できる、と言える。なお、本実施形態では、開口の幅を、考えられる排気弁の最大幅の30mmにしているが、開口の幅が30mmより小さくなると、ゴムパッキン下面が電解液で濡れていて、静電気電圧が16kVの場合で、開口から排気孔までの距離が14mm以下でも、放電路が形成されないことが考えられる。しかしながら、このような放電路の形成は鉛蓄電池1の使用環境によって静電気電圧のバラツキが考えられるため、距離は少なくとも14mmを超えるようにし、可能であれば20mm程度にするのが好ましい。
次に、図2(a)、(b)に示した鉛蓄電池は、上記した図1の鉛蓄電池に対し、シート10の一部に幅が30mm、長さが3mmの突出部7を設け、この突出部7の内部に電解液を保持するための電解液保持体9を充填し、シート10の貼着によって形成される経路4の、排気孔から5mmの位置に突出部7の内側がくるようにしたことを特徴とする。なお、この鉛蓄電池は、図1の排気弁の代わりに液口栓を備えた液式(開放形)のものである。
また、図3(a)、(b)に示した鉛蓄電池は、図2と同じ液式鉛蓄電池であり、電槽蓋3の一部に幅が30mm、長さが3mmの凹部8を設け、この凹部8に電解液を保持するための電解液保持体9を充填し、シート10の貼着によって形成される経路4の、排気孔から5mmの位置に凹部8の内側がくるようにしたことを特徴とする。
上記した各鉛蓄電池について、図1の実施の形態とは、排気弁を液口栓に変更した以外は同じ条件の試験に供し、結果を図5に示す。なお、結果は図2の鉛蓄電池も図3の鉛蓄電池も同じであった。
図5から、電解液保持体に電解液を含浸させ、液口栓のゴムパッキン下面が電解液で濡れているものは、開口から電解液保持体までの距離を1mmとした場合、静電気電圧が3.5kVで前述した放電路が形成されたのに対し、電解液を含浸させず、液口栓のゴムパッキン下面が電解液で濡れていないものは、静電気電圧が16kVになるまで放電路は形成されなかった。また、静電気電圧が16kVの場合、開口から電解液保持体までの距離が14mm以下であると前述した放電路が形成されることがわかった。また、この試験に供した鉛蓄電池と同材質(PP樹脂)の電槽および電槽蓋からなる鉛蓄電池を、手に持ったポリカーボネ−トで擦りつけて帯電量を10回測定したところ、最低値が−2kV、最高値が−16kVであった。このことから、上記した16kVの静電気電圧で前述した放電路が形成されない距離、すなわち、開口から電解液保持体までの距離が14mmを超えるようにすることで、前述した放電路の形成が防止できる、と言える。ここでも、開口の幅を、考えられる排気弁の最大幅の30mmにしているが、前述した如く、開口の幅が30mmより小さくなると、ゴムパッキン下面が電解液で濡れていて、静電気電圧が16kVの場合で、開口から排気孔までの距離が14mm以下でも、放電路が形成されないことが考えられる。しかしながら、このような放電路の形成は鉛蓄電池1の使用環境によって静電気電圧のバラツキが考えられるため、距離は少なくとも14mmを超えるようにし、可能であれば20mm程度にするのが好ましい。
なお、上記した電解液保持体9としては、電解液の吸収保持性能がすぐれた微細ガラスマットなどがよい。
また、上記したシート10としては、材質が電槽の材質と同等あるいは絶縁性が電槽の材質と同程度の、ポリエチレン系のもの、ポリプロピレン系のもの、ポリエステル系のもの、ポリカーボネート系のもの、シリコンゴムなどのゴム系のもの、あるいはマイカテープのようなものがよく、これらを、それぞれの材質に適合した接着剤で貼着するのがよいが、シート以外に前述した材質の薄板も使用できる。
本発明は、排気孔から電解液の溢出のない密閉形鉛蓄電池を図1で想定し、排気孔から電解液の溢出のある開放形鉛蓄電池を図2、3で想定し、いずれの場合にも効果があることがわかった。
本発明によれば、鉛蓄電池が帯電した状態においても、その点検、交換、清掃、運搬に伴う静電気電圧による放電路が形成されないので、このような作業時の作業性の向上に寄与することができる。
本発明の実施の形態に係る鉛蓄電池の全体図(a)と要部斜視図(b)である。 経路に突出部を設けた実施の形態に係る鉛蓄電池の全体図(a)と要部斜視図(b)である。 経路に凹部を設けた実施の形態に係る鉛蓄電池の全体図(a)と要部斜視図(b)である。 図1の鉛蓄電池について、静電気電圧と放電路が形成される距離との関係を示した図である。 図2、図3の鉛蓄電池について、静電気電圧と放電路が形成される距離との関係を示した図である。
符号の説明
1 鉛蓄電池
2 電槽
3 電槽蓋
4 経路
5 開口
6 排気孔
7 突出部
8 凹部
9 電解液保持体
10 シート

Claims (5)

  1. 各セルに対応した排気孔を電槽蓋に設け、前記電槽蓋の上面に、排気孔全体を覆うとともに周縁の一部に開口を形成し、前記排気孔と前記開口との間を排気のための経路とするシートが貼着され、電槽または電槽蓋の帯電時に開口から排気孔に至る放電路が形成されないようにしたことを特徴とする鉛蓄電池。
  2. 請求項1記載の鉛蓄電池において、排気のための経路の長さを少なくとも14mmを超えるようにしたことを特徴とする鉛蓄電池。
  3. 請求項1記載の鉛蓄電池において、シートは、一部に電解液を保持するための電解液保持体が充填された突出部を有し、この突出部が前記シートの貼着によって形成される経路に位置していることを特徴とする鉛蓄電池。
  4. 請求項1記載の鉛蓄電池において、電槽蓋は、一部に電解液を保持するための電解液保持体が充填された凹部を有し、この凹部がシートの貼着によって形成される経路に位置していることを特徴とする鉛蓄電池。
  5. 請求項3または4記載の鉛蓄電池において、突出部または凹部から開口までの経路の長さを少なくとも14mmを超えるようにしたことを特徴とする鉛蓄電池。
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