JP4239373B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛蓄電池の改良、殊にその液口栓の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池は、その構成上、過充電を行うと、活物質の充電反応とは別に副反応として電解液中の水が電気分解して酸素ガス及び水素ガスが発生する。そのため、電池外部でスパークが生じた場合、電池に引火する危険性がある。この問題に対しては、従来から以下のような対策がとられている。例えば、ガス排気経路に防爆フィルターを装着したり、電池内にガスが滞留し、水素ガスが爆発し得る濃度に上昇しないように、電池内圧が規定値以上に上昇した際に電池内部のガスを放出する排気弁を備えた液口栓を用いたりしている。また、車体を走行させると、空気摩擦により静電気が電池に帯電し、周辺に存在する対象物と静電気火花放電し電池内で爆発が起こり電池を破損する場合がある。この問題に対しては、電池の負極端子と車のボディーを導通させることにより、随時静電気を空気中に放電させ、火花放電が起こらないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが電池の交換、点検、清掃作業中、あるいは運搬時に、電池に静電気が帯電し、反対電荷あるいは片方がアースされた非導電性の樹脂や人体、または金属が近づくと、これらと電池の電解液との間において静電気火花放電してスパークが生じ、さらにその火花が電槽蓋に形成された排気筒とそれに嵌着された液口栓との隙間を通過し、電池内部に伝播し、電池内の水素ガスに引火して電池が破損する場合があった。これに対し、図5または6に示すように、排気筒4と液口栓6との間にゴムパッキン7を介在させ、液密性と気密性を高める対策が取られていた。しかし、この対策だけでは不十分であり、特に電池内の電解液が排気筒4内部と液口栓2との嵌合部を通して這い上がり、ゴムパッキン7に達すると、静電気がゴムパッキン7に付着する電解液を通じて電池内部に達し、電池内での爆発を誘発し易くなる。これら静電気による爆発は、前述の電池外部からの引火に対する予防策だけでは防止することができなかった。
【0004】
しかしながら、静電気による爆発に対する従来の対策は、前述の液口栓と蓋の嵌合部にゴムパッキンを設け、液密性と気密性を高めた構造の鉛蓄電池とすること、および取扱説明書に電池から離れたところで金属に触れるなど体の静電気を取り除いてから電池の交換、点検清掃作業すること、蓄電池の表面や接続部を乾いた布や化繊布やはたき掛けで清掃せずに湿った布で清掃作業をすること、ビニールシートなどの静電気が発生するシート類を電池にかぶせないように電池運搬作業をすること等を記載して注意、警告する方法が取られていた。しかし、このような対策だけでは電池の破損を完全に防ぐことは出来ず、電池内の上部空間を少なくしたり、詰め物をしてガス滞留空間を少なくするなどの対策がとられているが、コストアップなどの他の問題点を有していた。
【0005】
本発明は、電池が静電気に帯電した状態においても、電池の交換、点検、清掃、運搬作業が安全に出来、かつ電池の破損を防ぐことができる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決する為、電槽蓋に電池の内側と外側を連通させる排気筒を形成し、該排気筒の上部にゴムパッキンを介して液口栓を取り付けた鉛蓄電池において、前記液口栓と排気筒の嵌合部を、電槽蓋の上部に突出させた排気筒の周壁内部の螺子部と前記液口栓を螺合させるとともに、前記排気筒の周壁上縁に前記ゴムパッキンを配して前記排気筒と液口栓を当接させて形成し、かつ前記液口栓に排気筒の周壁外部と液口栓の間に隙間を確保する環状凹部を設け、前記ゴムパッキンの下縁から前記環状凹部の下縁に至る距離を、電池に帯電する最大静電気電圧に対する前記液口栓とアース間とで火花放電が発生する最大距離を超えるようにしたことを特徴とする。なお、ゴムパッキンは、液口栓により外部から遮断された構造とし、液口栓と排気筒の嵌合部は、必ずしも嵌合した各々の部分を指すのでなく、実施形態1で示すように液口栓と排気筒で囲まれた空間部分を含む場合がある。
【0007】
本発明に係る鉛蓄電池を用いたとき、液口栓と、蓋の排気筒との嵌合部における前記ゴムパッキンから環状凹部の下端までの最短距離が、電池が静電気に帯電したいかなる状態においても静電気火花放電が発生しない距離であるので、電池の交換、点検、清掃、運搬作業が安全に出来、かつ電池の爆発や爆発破損を防ぐことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態による液口栓を装着した鉛蓄電池の外観図、図2は、図1の液口栓を装着した部分の破断面図、図3は本発明の他の実施形態を示す要部断面図、図4は、液口栓にかかる静電気電圧と静電気火花放電が起こる対象物との距離の関係を示すグラフ、図5は、従来の液口栓を装着した一例を示す要部断面図、図6は、従来の他の例を示す要部断面図である。
【0010】
(実施形態)
本発明の鉛蓄電池1は、図1および図2に示すように極板群を収容するポリプロピレン製の電槽2と、該電槽2の開口部を封口し、かつその内側と外側を連通する排気筒4を備えた同じくポリプロピレン製の電槽蓋5と、前記排気筒4を閉塞するポリプロピレン製の液口栓6およびゴムパッキン7を備えたものである。前記液口栓6は、図2に示すように、排気筒4の螺子部4bで螺合されており、液口栓6のヘッド部3の上面には、電池内部で発生したガスを、電池外に排出する排気口8を有し、さらにヘッド部3内のガス排気経路には、電池外部から内部へ引火されるのを防止する防爆フィルター(図示しない)が装着されている。また、図2に示すように、液口栓6は、蓋5の上部に突出させた排気筒4の周壁4aを囲む環状凹部6aを有し、該環状凹部6aが前記周壁4aとの間に隙間9を確保しながら前記排気筒周壁4aを覆うように構成されている。また、前記液口栓6は、前記ゴムパッキンの下縁7aから前記環状凹部6aの外側下縁6bまでの最短距離(図2における点線部に環状凹部6aの厚さを加えた距離)を、本電池が帯電した場合の最大電圧に対する静電気火花放電が発生する液口栓とアース線との距離以上としたものである。すなわち、従来、図5に示すようにゴムパッキン7の周縁7bが露出したものは、反対電荷あるいは片方がアースされた非導電性の樹脂や人体、または金属が容易に前記ゴムパッキン下縁7aに接近できるのに対して、本実施形態では、環状凹部6aが排気筒周壁4aを覆ってゴムパッキン7までの最短距離を静電気火花放電が発生しない距離にできるので、電池内へ引火することがない。したがって、電池が静電気に帯電した状態においても、反対電荷あるいは片方がアースされた非導電性の樹脂や人体、または金属が近づいても、静電気による電池内の爆発を防止出来る。
【0011】
ここで環状凹部6aの材質は、部品コストを上げないために液口栓6の材質と等しくし、一体化することが好ましいが、静電気火花放電が起こるのを抑制するため、環状凹部6aの外周に静電気を空気中に逃がしやすい金属や親水性部材を配置することもできる。また、環状凹部6aの形状は、本実施形態に限定されるものではなく、ゴムパッキン下縁7aから環状凹部6aの外側下縁6bまでの最短距離が静電気火花放電を起こさない距離以上に確保した形状であればよく、例えば液口栓をカバーで覆ったり、環状凹部6aと排気筒周壁4aを嵌合させた構造であっても本発明の効果が得られる。このように、嵌合部を、排気筒周壁4aを環状凹部6aで包囲した構造にすることで、電池内の電解液がゴムパッキン下縁7aに達した場合、電解液が表面張力で嵌合部から蓋5の上面に達することを、環状凹部6aと排気筒周壁4aとの間に隙間を持たせることで、阻止することができる。
【0012】
また、図3に示したように、液口栓6(排気口および防爆フィルターは図示せず)の上面が蓋上面と相同等の高さである蓄電池(通称トップフラットタイプ)については、液口栓6のヘッド3の外周と排気筒4の内周との嵌合部におけるゴムパッキン7の上縁7cから蓋上面までの距離を静電気火花放電が起こらない距離以上にすればよい。
【0013】
(実施例)
以下、本発明による一実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
まず、動力車用電源として市販されている公称電圧12V、公称容量50AHの鉛蓄電池を用い、静電気火花放電による蓄電池破損実験を実施した。
【0015】
前記蓄電池に対しては、試験前日に5Aの電流で11時間の充電を行い、さらに試験直前に5Aの電流で30分の充電を行った。また、実験時の雰囲気温度は24℃、湿度を38%とした。
【0016】
ここで、充電直後から30分後までの電池内の水素濃度の推移を水素ガス濃度計(新コスモス電機製XP−314)で測定した。充電後30分間の電池内の水素ガス濃度は、約12〜18%の範囲内であり、この間のガス濃度の変化はほとんどなかった。また、実験直前の水素ガス濃度は、電池の液口栓外で0%、液口栓内で18%であった。このことから電池内および液口栓内では、爆発し得る水素ガス濃度(4〜75%)であることを確認した。
【0017】
静電気印加方法として静電気発生装置(シシド静電気株式会社製STATILER 20−DP)にて発生させたマイナス電荷を蓄電池長側面に貼り付けたアルミ板に印加させ、徐々に静電気電圧を電池に帯電させた。同時に各設定静電気電圧において、接地抵抗48Ωのアース線に接続した金属製クリップを液口栓のゴムパッキン部下縁7aに徐々に近付け静電気火花放電の発生する距離を測定した。ここで、試験電池の帯電量の範囲を調査したところ(電池の蓋をPP樹脂、人体(手)、ポリカーボネ−ト等で擦りつけ帯電量を測定)、−2〜−16KVとなった。従って、静電気電圧の設定範囲を、−1〜−18KVとした。また、液口栓のゴムパッキン下面が電解液で濡れているものといないものがあったので、その両者について蓄電池破損実験を実施した。
【0018】
図4に液口栓にかかる静電気電圧と静電気火花放電が起こる対象物との距離の関係を調査した結果を示す。
【0019】
図4から明らかなように、静電気火花放電は、液口栓部の静電気電圧と、火花が飛ぶ対象物間の距離との関係で決まり、液口栓のゴムパッキンが電解液で濡れている場合の方が、静電気火花放電が起き易い事がわかった。この実験で、静電気火花放電を起こしたすべての電池において、爆発による蓋の浮きが見られ、電槽の短側面には亀裂が発生した。
【0020】
以上の結果から、液口栓とアース線の距離を、液口栓にかかる最大帯電電圧(−16KV)での静電気火花放電する距離(14mm)より長くすることで、静電気火花放電による蓄電池破損を完全に防止することができる。そこで、図2および図3の液口栓または蓋構造の電池(ゴムパッキン下縁7aまたは上縁7cから電池外部までの最短距離15mm)を用いて実施例の静電気火花放電による蓄電池破損実験を実施したところ、静電気火花放電は起こらなかった。従って、ゴムパッキン下縁7aから電池外部までの最短距離を、静電気電圧16.5KV時の静電気火花放電した距離である15ミリ以上にすることで本発明の効果が得られる。
【0021】
なお、ばらつきや確実性、安全性を考慮に入れた場合、最短距離を20ミリ以上にすることで静電気火花放電による蓄電池破損を完全に防止することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した通り、電池が静電気に帯電した状態においても、電池の交換、点検、清掃、運搬作業が安全に出来、かつ電池の爆発や爆発破損を防ぐことができる鉛蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による液口栓を装着した鉛蓄電池の外観を示す図である。
【図2】図1の液口栓とその周辺を示す要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態をトップフラットタイプの蓄電池に示適用した場合の要部断面図である。
【図4】液口栓と蓋にかかる静電気電圧と静電気により火花放電が起こる対象物との距離の関係を示すグラフである。
【図5】液口栓とその周辺部の従来の一例を示す要部破断面である。
【図6】液口栓とその周辺部の従来の他の一例を示す要部破断面である。
【符号の説明】
4 排気筒
5 電槽蓋
6 液口栓
7 ゴムパッキン

Claims (1)

  1. 電槽蓋の排気筒にゴムパッキンを介して液口栓が嵌合している鉛蓄電池において、前記液口栓と排気筒の嵌合部を、電槽蓋の上部に突出させた排気筒の周壁内部の螺子部と前記液口栓を螺合させるとともに、前記排気筒の周壁上縁に前記ゴムパッキンを配して前記排気筒と液口栓を当接させて形成し、かつ前記液口栓に排気筒の周壁外部と液口栓の間に隙間を確保する環状凹部を設け、前記ゴムパッキンの下縁から前記環状凹部の下縁に至る距離を、電池に帯電する最大静電気電圧に対する前記液口栓とアース間とで火花放電が発生する最大距離を超えるようにしたことを特徴とする鉛蓄電池。
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