JP2007098249A - 流動床石炭灰の固化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】流動床灰に、硫酸アルミニウムと金属イオンと水を加え、固化処理を行うことを特徴とする流動床灰の固化方法、前記固化方法により得られる固化物、及び、硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水を含み前記固化方法に用いられる固化剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、このような問題点に対処するため、流動床灰が固化するまでの時間を短縮し、さらに得られる固化物の強度を短時間で増進せしめ、なおかつ経時強度をも増進させることができ、しかも、固化処理時に発生する有害物質の発生を抑制することもできる流動床灰の固化方法を提供することを目的とする。
また、流動床灰中に残留する微量の硫黄分が、硫酸アルミニウムを加え流動床灰を固化する際に硫化水素として発生することがあるが、更に金属イオンを添加することにより、硫化水素の放出量を抑制することができることをも見出した。
更に、流動床灰に硫酸アルミニウムと金属と水を加えて固化して得られる固化物は、道路の下層路盤材や埋め戻し材として有用であることをも見出すと共に、硫酸アルミニウム、水および金属イオンの組み合わせは、固化剤として有用であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、具現化した態様として下記発明を提供するものである。
〔2〕 金属イオンが、銅、鉄、亜鉛、および銀のうちいずれか一種類以上である上記〔1〕記載の固化方法。
〔3〕 硫酸アルミニウムと金属イオンと水とを予め混合し、金属イオンを含む硫酸アルミニウム水溶液として流動床灰に加え、固化処理を行うことを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の流動床灰の固化方法。
〔4〕 上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の固化方法により得られる固化物。
〔5〕 硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水を含み、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の固化方法に用いられる固化剤。
そして、本発明により得られる流動床灰の固化物は、必要に応じて造粒処理を施しても、或いは造粒せずに成型しても良く、いずれにしても流動床灰の固化を促進することができ、道路の下層路盤材や埋め戻し材として利用することができる。
また、本発明の固化方法は、硫酸アルミニウムと金属イオンと水を含む固化剤を利用してより効率よく行うことができる。
石炭火力発電所における石炭の燃焼方式には、微粉炭燃焼方式と流動床燃焼方式とがあるが、本明細書において、流動床灰(流動床石炭灰)とは、これらの方式のうち特に流動床燃焼方式による石炭灰をいう。流動床燃焼方式には、加圧と常圧の方式があるが、本明細書の流動床灰は、自硬性を持つものであれば、これらのいずれの方式により得られるものであっても良い。常圧流動床灰は、少量の石灰、石膏を加えないと硬化強度が低いので、本発明においては、加圧式流動床灰が好ましい。
流動床灰は石灰分を含み自硬性を有するという特徴を持つ。その化学成分組成は、一般には、石灰石の成分であるCaOが30%前後、SiO2が45%前後、Al2O3が15%前後、Fe2O3が2%前後、SO3が5%前後であり、微粉炭燃焼方式で得られるフライアッシュと比較してCaO、SO3が多く、SiO2、Al2O3が少ないことを特徴とする。
本発明においては硫酸アルミニウムを添加することが必須である。ここで、硫酸アルミニウムに代えて、硫酸アルミニウム以外の硫酸塩を添加したとしても、本発明の効果は発揮されない。例えば、硫酸アルミニウムの代わりに硫酸第一鉄や硫酸第二鉄を添加した場合には、固化処理後の固化物内部に酸化鉄が生じ強度低下や膨張破壊に至る。また、硫酸マグネシウムを添加した場合には、固化処理初期の硬度(強度)(初期強度)は発現するが、経時強度が劣る。
さらに、硫酸アルミニウムを硫酸塩以外の物質に置き換えても、本発明の効果は発揮されない。例えば、硫酸アルミニウムの代わりにポリビニルアルコール、澱粉、合成系分散剤などの有機系の物質を添加した場合には、流動床灰の固化が阻害される。また、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、水ガラスなどのアルカリ性の液体とした場合には、吸湿により膨張破壊を生じる。
硫化水素は、火山性ガスや温泉の臭気として知られており、0.03ppm程度から感知できるが、高濃度の場合は人を死に至らしめることもある有毒な気体である。さらに硫化水素は金属類を腐食させる。そのため、硫化水素は大気中に放出されないことが望ましい。
流動床灰への混合は、添加する成分が均一に混ざるような公知の方法に準じて行えば良く、例えば、高速撹拌型の混合機(例えば、アイリッヒミキサー(日本アイリッヒ(株))等)、万能混合攪拌機などを用いて混合することが望ましい。
造粒する場合に用いられる造粒機としては、用途に応じて適切なものを選択することができる。造粒の様式も特に限定されず、例えば、粉体を、押し出し、ロール間圧縮、打錠などの圧縮力により円柱状ペレット(顆粒)、錠、ブリケットなどをつくる圧密様式の造粒(強制造粒)が挙げられる。一方、混合処理と造粒処理を一体にして行う機器を用いても良い。
造粒のために加える圧力は、用途、固化物の組成等により定められ、一般には9.8N/mm2〜147N/mm2、好ましくは、70N/mm2〜98N/mm2の範囲で適宜設定することができる。
このような本発明の固化物は、道路の下層路盤材や埋め戻し材として用いることができる。
本発明の固化剤には、硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水のほか、得られる固化物に添加されるバインダー、減水剤、保水剤、防水剤などの混和剤を更に含ませることができる。また、本発明の固化剤は、適当な袋、容器等に充填して販売等に供することもでき、更に、固化剤を流動床灰に添加する際に用いられる容器を添付することもできる。
本発明においては、流動床灰に硫酸アルミニウムと金属イオンと水を添加することにより、以下の反応が起きていると推測される。
すなわち、(1)硫酸アルミニウムに由来するアルミニウムイオンが、流動床灰中のアルカリ成分と瞬時に反応し、ゲル状の水酸化アルミニウムを生じる。この水酸化アルミニウムは流動床灰粒子同士を強固に結合させる粘結剤としての役割を果たす。
そして、(2)この水酸化アルミニウムは流動床灰中の水酸化カルシウムと反応し、カルシウムアルミネート水和物(3CaO・Al2O3・6H2O)を生成し短時間で固化する。
また、その一方で、(4)硫酸アルミニウムに由来する硫酸イオンは、流動床灰中の石灰と反応することで硫酸カルシウム水和物(CaSO4・2H2O)を生成し、これもエトリンガイトと同様に固化物組織の空隙を充填することにより固化物の強度は増大する。
また、本発明における硫酸アルミニウムと流動床灰との反応は、一種の中和反応であり発熱を伴うため、固化物の表面が半乾燥状態となり固化物同士の固着は生じない上に、蓄熱された状態で養生される結果、上述の(1)〜(4)の反応が速やかに進行し、造粒直後の強度が向上すると共に、経時強度の早期発現をも促進する。
このため、本発明の固化方法によれば、崩壊・粉化の抑制による歩留りの向上のみならず、養生期間を短縮させることが可能になるため、生産性を大きく向上できる。
・圧壊強度試験:得られた流動床灰混合物を一定量(40g)とり、ステンレス製円柱型枠に入れ、圧縮試験機((株)東京試験機製作所 引張強さ試験機)を用いて9.8N/mm2の圧力でプレス成型し、円柱形ブリケットを得た。これを20℃にて封緘養生した後、圧縮試験機((株)東京試験機製作所 引張強さ試験機)を用いて、荷重速度2.5mm/分で圧壊強度を測定した。
表1の配合処方に示す流動床灰(中国電力(株)大崎発電所、加圧式流動床灰)、水、その他の成分を、実施例または比較例ごとにそれぞれ万能混合撹拌機(5DM (株)ダルトン)で2分間撹拌混合した。なお、各金属イオンは、銅イオンは硫酸銅、鉄(III)イオンは硫酸第二鉄、亜鉛イオンは硫酸亜鉛、銀イオンは硫酸銀の形で添加した。以下の実施例においても、流動床灰として上述と同じものを用い、また、金属イオンの添加は上述のようにして行った。
得られた流動床灰固化物の圧壊強度試験を行うと共に、硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
流動床灰に水のみを添加した比較例1と、水とセメントのみを添加した比較例5とを比較すると、初期強度(固化処理直後の圧壊強度)はほぼ同等であることから、セメントを加えても初期強度の増進に寄与しないことがわかった。
一方、流動床灰に、硫酸アルミニウムを添加した実施例1〜実施例7および比較例2の初期強度は、無添加の比較例1に比べ大きく増進し、さらに7日目および28日目の強度(経時強度)も、比較例1を上回るレベルで推移していた。このことから、硫酸アルミニウムが流動床灰に及ぼす強度増進効果が確認できた。また、流動床灰に、硫酸アルミニウムの代わりに硫酸第一鉄や硫酸第二鉄を添加した比較例3と比較例4においては、初期強度、経時強度共に硫酸アルミニウムを添加した実施例の結果と比べて劣っていた。特に、経時強度ではブランクである水のみを添加した比較例1よりも下回る結果となった。
流動床灰に硫酸アルミニウムと水のみを添加し、金属イオンを添加しなかった比較例2では、硫化水素が20ppm検出された。一方、硫酸アルミニウムと水と金属イオンを加えた実施例1〜実施例7では、検出量は大幅に減少した。
これらのことから、流動床灰に硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水を添加することにより、流動床灰の固化時間を短縮し、経時強度も増進させることができると共に、固化処理時に発生する硫化水素の発生を抑制しながら、固化処理を効率よく達成できることが確認できた。
実施例7と同様の配合割合で、流動床灰、水及び硫酸アルミニウムを配合し、金属イオンを表3に示す割合で添加した。実施例7と同様にして、撹拌し硫化水素濃度を測定した。測定結果を表4に示す。
流動床灰に添加される金属イオンおよび硫酸アルミニウムを、予め水溶液として作成し、この水溶液を用いて流動床灰の固化処理を行った。
25重量%の硫酸アルミニウム水溶液100重量部に対し、表5に示す割合で各種金属イオンを添加し、6種類の金属イオン含有硫酸アルミニウム水溶液を作成した。各金属イオンの流動床灰100重量部に対する添加量が0.08重量部となるよう、表6に示す配合処方で流動床灰に添加し、万能混合撹拌機(5DM (株)ダルトン)を用いて2分間撹拌混合した。
得られた流動床灰固化物の圧壊強度試験および硫化水素濃度測定を実施した。測定結果を表7に示す。
硫酸アルミニウム水溶液のみを添加した比較例7は、前述の硫酸アルミニウムを固形混合した比較例2(表2参照)よりも高い初期強度を示した。これは水溶液添加により流動床灰との混合が均一に行われ、流動床灰との固化反応が効果的に進行したためである。
また、硫酸アルミニウム水溶液に金属イオンを加えた実施例24〜実施例27についても、高い初期強度を発現した。更に、硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸第一鉄水溶液を添加した比較例8は、初期強度および経時強度が共に硫酸アルミニウム水溶液を添加した実施例よりも劣り、特に経時強度ではブランクである水のみを添加した比較例1よりも下回る結果となった。
硫酸アルミニウム水溶液を添加した比較例7では、硫化水素が20ppm検出されたが、硫酸アルミニウム水溶液に金属イオンを加えた実施例24〜実施例27は検出量が大幅に減少した。
これらのことから、流動床灰に硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水を添加することにより、流動床灰の固化時間を短縮し、経時強度も増進させることができると共に、固化処理時に発生する硫化水素の発生を抑制しながら、固化処理を効率よく達成できることが確認できた。
Claims (5)
- 流動床灰に、硫酸アルミニウムと金属イオンと水を加え、固化処理を行うことを特徴とする流動床灰の固化方法。
- 金属イオンが、銅、鉄、亜鉛、および銀のうちいずれか一種類以上である請求項1記載の固化方法。
- 硫酸アルミニウムと金属イオンと水とを予め混合し、金属イオンを含む硫酸アルミニウム水溶液として流動床灰に加え、固化処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の流動床灰の固化方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の固化方法により得られる固化物。
- 硫酸アルミニウム、金属イオンおよび水を含み、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固化方法に用いられる固化剤。
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