JP2007090328A - 分子媒介種材料、分子媒介種組成物及び分子濃縮装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化還元処理によって対象分子の捕捉及び脱離を制御可能であり、且つその酸化還元状態を電気化学的に制御可能な荷電部位と、非プロトン性の極性基を有する分子媒介種材料である。酸化還元電位が+1000mV〜−3000mV(Ag/Ag+基準)である。対象分子が、一酸化炭素、二酸化炭素、二硫化炭素、窒素酸化物又は硫黄酸化物である。
上記分子媒介種材料と分子性溶媒を含有して成る分子媒介種組成物である。
電解質槽、一対の電極及び電極間の電位差制御手段を備え、電解質槽には、分子媒介種材料や分子媒介種組成物を含有する電解液が満たされる分子濃縮装置である。
【選択図】なし
Description
特に、二酸化炭素の固定化・隔離・分離濃縮などについては、従来から、膜分離、吸着分離及び吸収分離技術を適用した手法が実施されていたが、これらの手法はいずれも低濃度の二酸化炭素を分離・濃縮するには十分とは言い難かった。
この手法は、電解質中でCO2メディエータが二酸化炭素を同伴して一方の電極側に搬送し、二酸化炭素を一方の電極側に電気化学的にポンピングして分離濃縮するので、従来法に比し低濃度の二酸化炭素を含むガスからの分離濃縮が可能であり、且つ高純度の二酸化炭素を分離濃縮できる利点を有する。
The Journal of Electrochemical Society 150(5) D91−98(2003)
一方、二酸化炭素以外の温室効果ガスなどについて、このような電気化学的分離濃縮法を適用した事例は、現時点では見当たらない。
で表される構造を有することを特徴とする。
電解質槽には、上述の分子媒介種材料又は上述の分子媒介種組成物を含有する電解液が満たされ、
一方の電極に対象分子を含む気体を接触させ、他方の電極から対象分子を回収し得ることを特徴とする。
例えば、対象分子がCO2の場合には、次の一般式(3)
代表的には、対象分子がCO2の場合、酸化還元電位が+1000mV〜−3000mV(Ag/Ag+基準)であることが好ましい。
上記酸化還元電位外では、メディエーター分子又はそれを溶解させた電解質溶液が不可逆な構造変化を起こし、目的の分子の捕捉・放出ができない。
具体的には、対象分子がCO2の場合は、置換又は非置換のベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン又はフェナントレンキノン構造を有する部位を例示できる。
これにより、電解質溶液中への溶解度を飛躍的に向上させることを実現でき、対象分子の効率的な補足の点で有利である。
なお、非プロトン性であることが好適な理由は、対象分子の捕捉の際に、プロトンが電解還元によって生じたアニオン部位の対カチオンとなることで、目的の捕捉分子と競合し、効率的な捕捉を妨げるためである。
また、かかる非プロトン性極性基は、電解質溶液への親和性を向上し、当該分子媒介種材料を液化するのに寄与し得る。
これらは、ポリエーテル鎖を1〜4本含むことが特に好ましい。
で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
上述如く、本発明の分子媒介種組成物は、上述した分子媒介種材料と分子性溶媒を含有して成るものである。
0.05モル/Lよりも分子媒介種材料が低濃度の場合は、対象分子の捕捉を十分に行うことが困難となることがある。また、0.5モル/Lを超えた高濃度の場合は、溶液の粘性の上昇により、酸化還元速度が低下することがある。
上述の如く、本分子濃縮装置は、電解質槽、一対の電極及びこれら電極間の電位差制御手段、例えばポテンシオスタット等を備えて成る。
また、電解質槽には電解液が満たされる。この電解液は、上記分子媒介種材料若しくは上記分子媒介種組成物、又はこれらに電解質を加えて成る。
更に、一方の電極に対象分子を含む気体(低濃度の対象分子)を接触させ、他方の電極から対象分子を回収し得る。
なお、後述する実施例では、キノンの水素をジエチレングリコール、トリエチレングリコール、塩素などで置換した系について述べるが、ここでは、簡便のため分子媒介種材料としてキノンを用いた系について説明する。
この分子濃縮装置は、CO2放出槽1とCO2吸着槽2を通路3で連結した二室型電解質槽を備え、該電解質層には分子媒介種組成物を含む電解液が満たされている。
また、CO2放出槽1は、CO2放出側グラッシーカーボン電極4を備え、CO2吸着槽2は、CO2吸着側グラッシーカーボン電極5を備えている。
更に、これら双方の電極は電気的に接続されている。また、電極間にポテンシオスタット6を備えている。
このため、この電極上では、以下の一般式、
C + 2e− → D
で表される反応により酸化体Cから還元体Dが生成される。
CO2放出槽のグラッシーカーボン電極4では、図1に示す電位V2より貴な電位に設定する。
このため、この電極上では、以下の一般式、
B → A + 2e−
で表される反応が起こる。
このAは、CO2との親和性が低いため、直ちにCO2を放出してCとなる。Cは濃度勾配によって、CO2吸着槽2へ拡散する。
(1)酸化体と還元体において、CO2との親和性が変化すること。
(2)溶媒への溶解度が高いこと。
(3)分子媒介種材料の溶媒内における拡散速度が高いこと。
(4)分子媒介種材料の電極反応が充分に速いこと。
(5)分子媒介種材料とCO2の吸着、脱離が充分に速いこと。
なお、実施例1では、酸化体と還元体において、CO2との親和性が変化すること、を確認した。また、実施例1,2では、比較例1,2に対して分子媒介種材料の溶媒への溶解度が高いこと、を確認した。
分子媒介種材料としてジエチルグリコールキノン(DEG−Q)を2種類の調製方法により得た。
水素化ナトリウム(NaH)6.0gにトルエン100mlを加え、懸濁液とした後、これを氷浴中で冷却した。
一方、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)20mlにトルエン80mlを加え、均一溶液とした。氷浴中に置いたNaH/トルエン懸濁液を攪拌しながら、そこにDEGMME/トルエンを徐々に滴下した。この際、反応に従って水素ガスが発生するので、これを系中から追い出し、圧力が一定になるようにした。
同定は1H−NMRによって行った。
1H−NMRDEG−Q(δ,ppm)=
3.26(3H,−C2H4−OCH3),3.40−3.41(2H,−O−CH2−CH2−OCH3),3.53−3.55(2H,−O−CH2−CH2−O−CH3),3.75−3.76(2H,−CH2−O−C2H4−OCH3),4.72−4.73(2H,C(quinone)(=CCl,−C=O)−O−CH2−)
DEGMME11mlにトルエン200mlを加え、氷浴中で冷却した。この溶液にクロラニル10.5gを加えた後攪拌し、懸濁液とした。
一方で、トリエチルアミン(TEA)15mlにトルエン35mlを加え、溶液とした。このTEAのトルエン溶液を先に調製したDEGMME/クロラニルのトルエン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。滴下終了後、徐々に室温に戻し、更に約5時間攪拌を続けた。反応溶液をペーパーフィルターでろ過し、副生物であるTEAの塩酸塩を除去した。このろ液から一度トルエンを留去した後、もう一度冷トルエン300mlを加えることで残存するTEA塩酸塩の大部分を析出させ、ペーパーフィルターでろ別した。得られた溶液からトルエンを留去させると、針状の粗結晶が得られた。生成物をクロロホルムの濃厚溶液とした後にシリカゲルカラムを通過させ、残存のTEA塩酸塩をほぼ完全に除去した。最後にエーテル中で再結晶することにより、目的物を得た。
同定は1H−NMRによって行った。
1H−NMRDEG−Q(δ,ppm)=
3.32(3H,−C2H4−OCH3),3.46−3.49(2H,−O−CH2−CH2−OCH3),3.59−3.61(2H,−O−CH2−CH2−O−CH3),3.77−3.79(2H,−CH2−O−C2H4−OCH3),4.67−4.68(2H,C(quinone)(=CCl,−C=O)−O−CH2−)
このグラフから明らかなように、CO2存在下では、CVの形状が明らかにN2雰囲気下の場合と異なる。このことは、従来例と同様に、卑な電位では、DEG−Qの還元体がCO2と結合し、貴な電位においてCO2とDEG−Qの結合した還元体が酸化されていることを示している。
分子媒介種材料としてトリエチレングリコールキノン(TEG−Q)を次の調製方法により得た。
TEGMME15mlにトルエン150mlを加え、氷浴中で冷却した。この溶液にクロラニル10.2gを加えた後攪拌し、懸濁液とした。
一方で、TEA17mlにトルエン35mlを加え、溶液とした。このTEAのトルエン溶液を先に調製したTEGMME/クロラニルのトルエン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。
同定は1H−NMRによって行った。
1H−NMRTEG−Q(δ,ppm)=
3.36(3H,−C2H4−OCH3),3.51−3.64(6H,−CH2−O−C2H4−OCH3),4.66−4.67(2H,C(quinone)(=CCl,−C=O)−O−CH2−)
比較のために、従来からCO2の電気化学濃縮の媒体として用いられている2,6−di−tert−butyl−1,4−bennzoquinone(DtBBQ)及びPhenanthrenequinone(PhQ)を用意した。
なお、DEG−Qは、メタノール、エタノールクロロホルム、塩化メチレン、アセトン、トルエン、へキサン、ポリエチレングリコール400、ポリプロピレングリコール400などにも優れた溶解性を示す。
2 CO2吸着槽
3 分子媒介種組成物
4 CO2放出側グラッシーカーボン電極
5 CO2吸着側グラッシーカーボン電極
6 ポテンシオスタット
7 高濃度CO2
8 低濃度CO2
Claims (16)
- 酸化還元処理によって対象分子の捕捉及び脱離を制御可能であり、且つその酸化還元状態を電気化学的に制御可能な荷電部位と、非プロトン性の極性基を有することを特徴とする分子媒介種材料。
- 上記酸化還元処理が電解酸化又は電解還元であり、上記対象分子を捕捉及び脱離する酸化還元電位が、この電解酸化又は電解還元に用いられる溶媒の電位窓の範囲内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の分子媒介種材料。
- 上記酸化還元電位が+1000mV〜−3000mV(Ag/Ag+基準)であることを特徴とする請求項2に記載の分子媒介種材料。
- 上記荷電部位が、芳香族環を構成する水素原子の2個以上を酸素原子で置換した構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記荷電部位が、骨格内に、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン又はフェナントレンキノン構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記非プロトン性極性基中に、電気的に極性を有する部位と、極性を有しない部位が共存していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記極性基が、ポリエーテル基及びポリエーテルを除くヘテロ原子を含むオリゴマー鎖から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記極性基が、ハロゲン基、ヘテロ環式基、ヒドロキシアルキル基、アセトキシアルキル基、ニトリル基、トシル基及びメシル基から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記極性基が、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、ハロゲノアルキル基、アリール基及びアルキルアリール基から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料。
- 上記対象分子が、一酸化炭素、二酸化炭素、二硫化炭素、窒素酸化物又は硫黄酸化物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の分解媒介種材料。
- 請求項1〜11のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料と分子性溶媒を含有して成ることを特徴とする分子媒介種組成物。
- 上記分子性溶媒が、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ポリエチレンオキシド、及びポリプロピレンオキシドから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項12に記載の分子媒介種組成物。
- 上記分子性溶媒への溶解度が、常温において、0.05モル/L以上であることを特徴とする請求項12又は13に記載の分子媒介種組成物。
- 電解質槽、一対の電極及びこれら電極間の電位差制御手段を備える分子濃縮装置であって、
電解質槽には、請求項1〜11のいずれか1つの項に記載の分子媒介種材料を含有する電解液が満たされ、
一方の電極に対象分子を含む気体を接触させ、他方の電極から対象分子を回収し得ることを特徴とする分子濃縮装置。 - 電解質槽、一対の電極及びこれら電極間の電位差制御手段を備える分子濃縮装置であって、
電解質槽には、請求項12〜14のいずれか1つの項に記載の分子媒介種組成物を含有する電解液が満たされ、
一方の電極に対象分子を含む気体を接触させ、他方の電極から対象分子を回収し得ることを特徴とする分子濃縮装置。
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