JP2007089788A - CD49d強陽性細胞除去材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】標的物質であるCD49d強陽性細胞を全血中より直接、特異的かつ選択的に捕捉するために実用上利用可能な血液成分除去材料及びデバイスを提供すること。
【解決手段】白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子が水不溶性担体に固定化されており、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料であって、上記認識分子の固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2であることを特徴とする血液成分除去材料。
【選択図】なし
【解決手段】白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子が水不溶性担体に固定化されており、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料であって、上記認識分子の固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2であることを特徴とする血液成分除去材料。
【選択図】なし
Description
本発明は、血液等の生物学的液体より分離対象物を選択的に吸着または除去するための血液成分除去材料およびそれを用いた血液成分除去方法に関する。より詳細には、本発明は、血液中のCD49d強陽性細胞を除去するための血液成分除去材料およびそれを用いた血液成分除去方法に関する。
血液浄化療法とは、特定疾患の治療のため、その発症や誘発、増悪に関連していると考えられる物質成分を血液中から除去することで生体内の恒常性維持をはかることを目的とした治療であり、アフェレシス治療とも呼ばれる。現在行われている血液浄化療法は、除去対象成分及び除去メカニズムにより大きく4つに分類できる。
(1)血液透析・血液濾過・血液濾過透析療法:急性腎不全、慢性腎不全などが適応。尿として体外に排出されるべき成分(尿素・窒素などの低分子量成分)を血液中から直接浄化する療法で、主に血液中の低分子成分が対象である。
(2)血漿交換療法:劇症肝炎、急性肝不全、閉塞性動脈硬化症、重症筋無力症、ギランバレー症候群、多発性硬化症、骨髄腫、薬物中毒、天疱瘡などが適応。体内に蓄積又は産生された成分を血液中から分離除去する療法で、主にコレステロール、免疫グロブリンなどの血液中のやや大きめの成分が対象である。血液透析・血液濾過・血液濾過透析と血漿交換との違いは、血液中から除去される物質の大きさであると理解できる。すなわち、血液透析では分子量が数千Daまでの小分子量物質が除去され、また、血液濾過では分子量2〜3万Da以下の中分子量が除去されるが、血漿交換ではそれよりも分子量の大きい蛋白質や蛋白と結合して血中に存在する有害物質(抗体、炎症性サイトカイン、免疫複合体や中毒物質などの液性因子)が除去される。
(3)吸着式血液浄化療法:エンドトキシンまたはグラム陰性菌感染症による敗血症性ショック、家族性高脂血症、閉塞性動脈硬化症、巣状糸球体硬化症、透析アミロイド症などが適応。吸着剤に血液や血漿を接触させ、物理化学的現象を利用して病因(関連)物質を除去する療法である。除去対象は、エンドトキシン、LDL、β2ミクログロブリンなどの血漿成分である。ここで用いられている吸着剤の代表的な例は活性炭である。また、エンドトキシンの活性中心であるリピドAと結合し、その活性を中和する作用のあるポリミキシンBを固定化してエンドトキシンを吸着するものが知られている。
(4)血球成分(白血球)除去療法:吸着式血液浄化療法の一種ではあるが、除去対象物質が血球成分であることから別に分類する。潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、皮膚疾患、免疫疾患などが適応である。血液を接触させ、物理化学的現象あるいは免疫反応を利用して病因(関連)物質である細胞、特に白血球を除去する療法である。現在用いられているものは、酢酸セルロースビーズなどによる顆粒球や単球の選択的吸着、あるいは活性化白血球や血小板を選択的に吸着する表面状態の担体など、担体の物理化学的性質を利用して選択性を実現している。
近年、上記の血球成分除去療法において、免疫反応などの生物学的相互作用を利用して、理論的に病因と推定される病因細胞を選択的に捕捉することで副作用を減らし、安全性と治療効果を高めるための研究が行われている。さらに、こうした血液細胞処理の技術は再生医療における幹細胞採集・輸注領域にも応用できることから、血球成分を分離し処理する全般的な医療技術にまで及ぶと考えられる。
CD49d分子は分子量150kDaのインテグリンα4鎖であり、130kDaのインテグリンβ1鎖(CD29分子)と非共有結合的に結合してVLA−4複合体を形成する。VLA−4は、フィブロネクチンや活性化した血管内皮細胞上のVCAM−1のレセプタとして知られている。一方、粘膜リンパ球のインテグリンβ7サブユニットと結合したものはLPAM−1と呼ばれ、Mucosal vascular Adressin(MadCAM−1)のレセプタである。このCD49d分子は、T細胞、B細胞、単球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、NK細胞、胸腺細胞、ランゲルハンス細胞などに発現しているが、正常な赤血球、血小板、ヒトの好中球には発現が知られていない。(例えば、非特許文献1を参照。)
白血球上のインテグリンファミリー分子は、細胞接着や細胞刺激に重要な役割を担っているため、過剰な炎症による各種病態を改善するための有望なターゲット分子として考えられている。実際、CD49d分子を対象にしたアンタゴニスト抗体での治験ではクローン病、多発性硬化症で有効との報告があり、VLA−4/LPAM−1を対象にした治験では喘息で有効、LPAM−1を対象にした治験ではUCで有効との報告がある。(例えば、非特許文献2、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照。)
特に、血液脳関門を越えた脳実質組織内へのT細胞の進入を抗CD49d抗体が阻止するとの考え方から多発性硬化症の抗CD49d抗体治療が積極的に考えられている。(例えば、非特許文献3、特許文献4を参照。)
CD49d陽性細胞の中でも病態の悪化に関わる分画は、CD4陽性CD45RO陽性CD49d強陽性の細胞であるとの報告もある。(例えば、非特許文献4を参照。)
しかし、CD49d分子に対して一律に結合することで細胞接着をブロックし炎症部位への白血球の進入を阻止する方法は、同時に局所免疫力の低下という副作用をもたらす。実際にヒト化抗CD49d抗体を用いた多発性硬化症治療に於いて2例の進行性多巣性白質脳症の発症(うち1例は死亡)、クローン病では1例の進行性多巣性白質脳症による死亡例が報告されている。(例えば、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8を参照。)
そこで抗CD49d抗体などのアンタゴニストを患者体内に投与するのではなく、上述の血球成分(白血球)除去療法によりCD49d強陽性細胞を体外循環にて選択的に除去し、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、皮膚疾患、免疫疾患などに適用することにより、副作用の少ない治療が期待できるが、これまで試みられてこなかった。
強い副作用が懸念される抗CD49dアンタゴニスト治療に代わり、特定のCD49d陽性細胞を選択的に除去する血球成分(白血球)除去療法は、副作用の少ない安全な治療法として期待されるが、実用上利用可能な技術として確立されていない問題がある。本発明が解決しようとする課題は、標的物質であるCD49d強陽性細胞を全血中より直接、特異的かつ選択的に捕捉するために実用上利用可能な血液成分除去材料及びデバイスを提供することである。さらに本発明が解決しようとする別の課題は、上記の血液成分除去材料を用いて血液中のCD49d強陽性細胞を除去する方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。CD49d陽性細胞の中でも病態の悪化に関わるCD49d強陽性細胞をより積極的に除去することが望ましい。本発明者は既に、標的物質と認識分子との結合親和性を定量的に示す指標としての解離定数:KD(値が低いほど結合親和性は高い)と細胞の特異的捕捉能には相関が見られない場合が存在することを見出している(特願2005−175035)。固定化された認識分子に対し、標的蛋白分子溶液を解離定数濃度の50倍及至5000倍濃度である濃度C(M)で、流速v(L/秒)で時間t(秒)供給する場合、標的蛋白分子が供給される担体表面積S(mm2)上に固定化された認識分子のモル表面密度d(mol/mm2)との間に、
100<Cvt/Sd<2x105
の関係が成り立つように供給したとき、認識分子が持つ標的蛋白分子結合部位数の50%以上が標的蛋白分子と結合した状態になるように条件設定することが標的物質である細胞を全血中より直接特異的に捕捉するための必要条件である。表面に固定化できる認識分子数は表面積により上限があるため、たとえ認識分子の固定化量を増やしても、この値が50%以下の場合には、細胞表面の標的タンパク質分子を効果的に捕捉することが困難となるため、実用上利用不可能となる。しかし、健常者全血中のCD49d陽性細胞における細胞1個あたりのCD49d分子数の平均値を基準としたとき、この基準平均値よりも多く細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(強陽性細胞)の除去率が90%以上で、且つ、この基準平均値よりも少なく細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(弱陽性細胞)の除去率が80%未満になるためには、これだけでは不十分である。詳細な検討の結果、標的蛋白分子に対して結合親和性を有する少なくとも1種類の認識分子の固定化密度が20ng/cm2から200ng/cm2の範囲にあるときに強陽性細胞の除去率が90%以上、且つ、弱陽性細胞除去率が80%未満になることを見出し、本発明を完成するに至った。
100<Cvt/Sd<2x105
の関係が成り立つように供給したとき、認識分子が持つ標的蛋白分子結合部位数の50%以上が標的蛋白分子と結合した状態になるように条件設定することが標的物質である細胞を全血中より直接特異的に捕捉するための必要条件である。表面に固定化できる認識分子数は表面積により上限があるため、たとえ認識分子の固定化量を増やしても、この値が50%以下の場合には、細胞表面の標的タンパク質分子を効果的に捕捉することが困難となるため、実用上利用不可能となる。しかし、健常者全血中のCD49d陽性細胞における細胞1個あたりのCD49d分子数の平均値を基準としたとき、この基準平均値よりも多く細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(強陽性細胞)の除去率が90%以上で、且つ、この基準平均値よりも少なく細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(弱陽性細胞)の除去率が80%未満になるためには、これだけでは不十分である。詳細な検討の結果、標的蛋白分子に対して結合親和性を有する少なくとも1種類の認識分子の固定化密度が20ng/cm2から200ng/cm2の範囲にあるときに強陽性細胞の除去率が90%以上、且つ、弱陽性細胞除去率が80%未満になることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) 白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子が水不溶性担体に固定化されており、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料であって、上記認識分子の固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2であることを特徴とする血液成分除去材料。
(2) 上記認識分子が共有結合を介して水不溶性担体の表面に固定化されている、(1)に記載の血液成分除去材料。
(1) 白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子が水不溶性担体に固定化されており、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料であって、上記認識分子の固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2であることを特徴とする血液成分除去材料。
(2) 上記認識分子が共有結合を介して水不溶性担体の表面に固定化されている、(1)に記載の血液成分除去材料。
(3) 上記認識分子と、白血球表面上に発現しているCD49d分子との解離定数が1μM以下である、(1)又は(2)に記載の血液成分除去材料。
(4) 上記認識分子が、抗ヒトCD49dモノクローナル抗体である、(1)から(3)の何れかに記載の血液成分除去材料。
(4) 上記認識分子が、抗ヒトCD49dモノクローナル抗体である、(1)から(3)の何れかに記載の血液成分除去材料。
(5) 白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子を、固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2となるように水不溶性担体に固定化することを含む、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料を製造する方法。
(6) (1)から(4)の何れかに記載の血液成分除去材料を、入口と出口を有する容器に充填した、血液成分除去用デバイス。
(7) CD49d強陽性細胞が関与する疾患の治療のために使用される、(6)に記載の血液成分除去用デバイス。
(8) 多発性硬化症の治療のために使用する、(6)又は(7)に記載の血液成分除去用デバイス。
(7) CD49d強陽性細胞が関与する疾患の治療のために使用される、(6)に記載の血液成分除去用デバイス。
(8) 多発性硬化症の治療のために使用する、(6)又は(7)に記載の血液成分除去用デバイス。
(9) (1)から(4)の何れかに記載の血液成分除去材料を、入口と出口を有する容器に充填した、血液成分除去用デバイスに血液を通液することを含む、血液中のCD49d強陽性細胞を除去する方法。
本発明によれば、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、皮膚疾患、免疫疾患などに対する治療法として、抗CD49dアンタゴニスト治療よりも低副作用が期待される治療法を提供できる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
血球成分除去療法において除去対象となる「病因細胞」とは、腫瘍細胞やバクテリア、あるいは、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、又は単球)、血小板などの血球のうち、特定疾患の病因と推定されるものである。例えば、自己免疫疾患において細胞性免疫の亢進が懸念される場合、白血球細胞表面上に発現されている免疫グロブリンスーパーファミリー分子を指標に病因細胞を区別することが望ましい。具体的には、CD2陽性細胞、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、CD28陽性細胞、CTLA−4(CD152)陽性細胞、PECAM−1(CD31)陽性細胞、ICAM−1(CD54)陽性細胞、ICAM−2(CD102)陽性細胞などがある。また、インテグリンファミリー分子で区別するのも有効である。例えば、VLA−1(CD49a/CD29)陽性細胞、VLA−2(CD49b/CD29)陽性細胞、VLA−3(CD49c/CD29)陽性細胞、VLA−4(CD49d/CD29)陽性細胞、VLA−5(CD49e/CD29)陽性細胞、VLA−6(CD49f/CD29)陽性細胞、LFA−1(CD11a/CD18)陽性細胞、Mac−1(CD11b/CD18)陽性細胞、p150,95(CD11c/CD18)陽性細胞、gpIIb/IIIa(CD41/CD61)陽性細胞、LPAM−1陽性細胞などである。
血球成分除去療法において除去対象となる「病因細胞」とは、腫瘍細胞やバクテリア、あるいは、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、又は単球)、血小板などの血球のうち、特定疾患の病因と推定されるものである。例えば、自己免疫疾患において細胞性免疫の亢進が懸念される場合、白血球細胞表面上に発現されている免疫グロブリンスーパーファミリー分子を指標に病因細胞を区別することが望ましい。具体的には、CD2陽性細胞、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、CD28陽性細胞、CTLA−4(CD152)陽性細胞、PECAM−1(CD31)陽性細胞、ICAM−1(CD54)陽性細胞、ICAM−2(CD102)陽性細胞などがある。また、インテグリンファミリー分子で区別するのも有効である。例えば、VLA−1(CD49a/CD29)陽性細胞、VLA−2(CD49b/CD29)陽性細胞、VLA−3(CD49c/CD29)陽性細胞、VLA−4(CD49d/CD29)陽性細胞、VLA−5(CD49e/CD29)陽性細胞、VLA−6(CD49f/CD29)陽性細胞、LFA−1(CD11a/CD18)陽性細胞、Mac−1(CD11b/CD18)陽性細胞、p150,95(CD11c/CD18)陽性細胞、gpIIb/IIIa(CD41/CD61)陽性細胞、LPAM−1陽性細胞などである。
CD49d強陽性細胞とは、健常者全血中のCD49d陽性細胞における細胞1個あたりのCD49d分子数の平均値を基準としたとき、この基準平均値よりも多く細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞をいう。具体的な分子数は測定条件や測定誤差により多少の変動があるが、おおむね10,000分子/細胞以上を強陽性という。好ましくは20,000分子/細胞以上、さらに好ましくは50,000分子/細胞以上をいう。
CD49d弱陽性細胞とは、健常者全血中のCD49d陽性細胞における細胞1個あたりのCD49d分子数の平均値を基準としたとき、この基準平均値よりも少なく細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞をいう。具体的な分子数は測定条件や測定誤差により多少の変動があるが、おおむね1,000分子/細胞以上、10,000分子/細胞未満を弱陽性という。
細胞あたりのCD49d分子数は、例えば、DAKO QIFIKIT(ダコ・サイトメーション株式会社)を用いてフローサイトメトリーにより測定することができる。すなわち、5段階の異なる既知量の抗体を結合させた直径約10μmのキェリブレーションビーズに蛍光標識2次抗体を反応させ、そのフローサイトメーターのヒストグラムから各ピークの平均蛍光強度と既知のビーズ表面抗体結合量をプロットすることで検量線を作成する。測定したい細胞のCD49d分子に未標識抗CD49dマウスモノクローナル抗体を反応させた後、検量線作成時と同じ条件で蛍光標識2次抗体を結合させ、フローサイトメーターにて測定する。得られた平均蛍光強度から上記検量線を用いて目的の細胞表面数を未標識マウスモノクローナル抗体の結合量として数値化する。
本発明で用いられる「担体」とは、常温の水溶液中で固体状態にあるものをいい、形状としては特に限定されないが、液相中の目的細胞との接触頻度を高めるために表面積が大きいものであることが好ましい。形状を例示すると、球状、立方状、平面状、平膜状、チップ状、繊維状、綿状、布状、糸状、束状、織布状または不織布状などの繊維構造体、スポンジなどの高分子多孔質体、ビーズ状、ゲル状あるいは中空糸等が挙げられる。これらのうち、細密充填のしやすさ、認識分子を均質に表面に保持しやすい点、実有効面積を比較的多く確保できる点、及び血液に代表される生物学的液体の流通面から、球状、粒状及び繊維状のものが望ましい。特に、血液中の細胞を分離または吸着する場合、吸着効率の点から織布状または不織布状が好ましく、さらには、担体の構造制御が容易であるという点から不織布状が最も好ましい。
担体の材質は、少なくとも所定量の認識分子を安定して固定できるものであれば、無機化合物、有機化合物を問わないが、様々な形状に加工でき、認識分子を直接または間接的に化学結合でき、かつ血液に代表される生物学的液体との接触時に溶出物が少ないなど、医療材料として安全に用いることができるものが好ましい。例えば、ガラス、カオリナイトまたはベントナイトなどの無機材料、セルロース等の植物由来の多糖類系化合物、デキストラン、キチン、キトサン、デンプン、アガロース、タンパク質(コラーゲンなど)または天然ゴムなどの天然ポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等のビニル系化合物あるいはその誘導体の重合体及び共重合体、ナイロン6あるいは66等のポリアミド系化合物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系化合物、またはポリアミノ酸などの合成ポリマーあるいは活性炭等が挙げられる。
不織布状担体を選択する場合、強度、加工性または安全性の点から、不織布状担体を構成する繊維は、セルロース、ポリエステルまたはポリプロピレンであることが好ましい。また、構成繊維の平均繊維直径を適宜選択することで、不織布担体の構造を制御することができる。この担体構成繊維の平均繊維直径は2.5μm以上50μm未満であることが好ましい。なぜなら、平均繊維直径が2.5μm未満であると、不織布状とした際に目が細かくなる傾向があり、目的細胞以外の細胞を物理的に捕捉する非特異的細胞吸着が起こるため好ましくない。一方、50μm以上の場合、不織布状とした際に目が粗くなる傾向があり、目的細胞との接触頻度が著しく低下し、従って除去効率が下がるので好ましくない。
本発明で用いられる「認識分子」とは、抗体の他、蛋白工学もしくは分子生物学および遺伝子工学的手法を用いて作成した人工的な分子も含む。この人工的な分子としては、抗体のF(ab')2部分、Fab部分、Fab'部分、ペプチド、遺伝子組換え蛋白質、核酸、糖鎖、低分子化合物などから選択されるが、望ましくは、遺伝子組換え蛋白質または核酸である。人工的な分子の場合、熱安定性の優れたものを大量生産により低価格で供給できるメリットがある。こうした認識分子は対象に対して特異的に結合することから人工抗体と呼ばれることもある。人工抗体は、通常、抗体V領域の3次構造と類似の構造分子を利用してそのループ形成部分をランダム化もしくは抗体V遺伝子のCDR3を組み込むことにより作製する。Protein Aを抗体化したAffibody(K.Nord, O.Nord, M.Uhlen, et al., Eur.J.Biochem, 268, 4269 (2001))、GFPを抗体化した光る抗体Fluorobody(I.S.Kim, J.H.Shim, Y.T.Suh, et al., Biosci.Biotechnol.Biochem., 66, 1148 (2002))、fibronectinのdomain 10を抗体化したMinibody(V.Batori, A.Koide, S.Koide, Protein Eng., 15, 1015 (2002))、ペプチドミミック分子と抗体の融合分子Pepbody(E.Lunde, V.Lauvrak, I.B.Rasmussen, et al., Biochem.Soc.Trans., 30, 500 (2002))、ラクダ抗体の構造を利用した一本鎖抗体Nanobody(A.Muruganandam, J.Tanha, S.Narang, D.Stanimirovic, The FASEB J. 16, 240 (2002))などがある。また、核酸構造を持ったAptamerやRNAの光学異性体enatio-RNAを利用したSpiegelmer(B.Wlotzka, S.Leva, B.Eschgfaller, et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 99, 8898 (2002))などがある。
本発明で用いられる「解離定数」とは、一般にKDで表され、解離の度合いを表している。数字が小さいほど結合の強さが強い。認識分子に対し、様々な濃度の標的蛋白分子を十分に結合させた後、遊離している標的蛋白分子の量を定量測定することで計算することができる。定量方法はELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)による方法、分光学的方法、水晶発振子を用いる方法、Frontal Affinity Chromatography(M.Nishikata, K.Kasai, S.Ishii, J.Biochem. 82, 1475 (1977))による方法、RI標識した標的蛋白分子を用いる方法、表面プラズモン共鳴現象を利用した方法などがある。このうち、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサでは、金薄膜を蒸着したガラス表面を処理してセンサチップとし、そこに認識分子を固定化した後、標的蛋白分子溶液を流して認識分子と標的蛋白分子を接触させる。接触の前後で一定の波長の光を金薄膜にあておき反射光の時間変化を観測する。反射光は表面プラズモン共鳴現象によって金薄膜近傍の物質の密度の影響をうけるため、表面密度の変化からリアルタイムの結合量変化がわかり、結合速度定数、解離速度定数が求まることから解離定数を容易に知ることができる。
より具体的には、センサチップ上に担体固定化と同条件で固定化した認識分子に対して、アナライトとして標的物質もしくは標的蛋白分子を流してセンサグラムを取得する。例えば、標的物質が細胞で認識分子が認識する標的が細胞表面上の蛋白分子である場合は、遺伝子工学的に可溶性分子として調製、精製した可溶化標的分子をアナライトとしてもよい。
本発明で用いられる「特異的」とは、抗体抗原結合に代表されるような生物学的相互作用によって、基本的に標的物質もしくは標的蛋白分子に対してのみ、高い結合親和性で結合することを言い、固定化された認識分子とアナライトとの解離定数は1μM以下であるべきであるが、望ましくは10nM以下、さらに望ましくは1nM以下である。
センサチップ上に固定化された認識分子は、センサグラム上、質量密度増加として検出できるので、センサチップ上単位面積あたりの認識分子モル数が計算できる。こうしてセンサチップ上の固定化された認識分子に対し、アナライトとして標的物質ないし可溶化標的分子を過剰量充分時間反応させた際に単位面積あたりに結合するアナライトの質量を測定し結合したアナライトのモル数を知ることができる。これをRmax-realとする。
過剰量とは、アナライトを解離定数濃度の50倍濃度以上5000倍濃度程度までの濃度で反応させることを言う。十分時間とは、1秒以上12時間程度までの反応時間を言う。過剰量充分時間反応させたとき、固定化された認識分子に対し、解離定数濃度の50倍及至5000倍濃度である濃度C(M)の標的蛋白分子溶液を、流速v(L/秒)で時間t(秒)供給する場合、標的蛋白分子が供給される担体表面積S(mm2)上に固定化された認識分子のモル表面密度d(mol/mm2)との間に100<Cvt/Sd<2x105の関係が成り立つ。
一方、認識分子1モルに対してアナライトが何モル結合するかは理論的に知ることができるので、センサチップ上単位面積あたりの認識分子モル数から、理論的に結合しうる単位面積あたりのアナライトモル数は計算できる。これをRmax-theoryとする。
ここで、(Rmax-real/Rmax-theory)x100(%)を結合効率と呼ぶことにすると、結合効率が50%以上になるような固定化条件を設定する。そしてこの結合効率は、好ましくは65%以上、さらに好ましくは80%以上に設定する。
この結合効率は、認識分子が担体表面上でどのような状態で固定化されているのかを把握するために非常に重要な情報となる。従来、担体表面上に認識分子を固定化する技術はできる限り多くの分子を反応させて固定化した後に活性が保たれているものを選んでいた。固定化の際に認識分子の結合活性部位が立体的に障害されていたり、固定化反応の際に結合活性部位が破壊されている場合は認識分子の固定化量がいくら高くても必要な結合活性は出ない。担体表面上に固定化できる分子数は表面積と活性基の数で決まるので限界があり、固定化量を増やすだけでは目的の活性をもつ担体を製造することはできない。抗体を認識分子に用いる場合は、比較的疎水性が高く結合活性に関与しないFc領域が存在するため、特にコントロールしなくてもFc領域が固定化される確率が高く、結合効率は高くなることが多い。ところが、人工的に作製した分子の場合、大量生産により低価格で供給できることが本来のメリットであるため、なるべく低分子のものが望まれ、Fc領域に相当する部分は存在しない。こうした抗体よりも比較的低分子量の人工認識分子を、結合活性を保持したまま担体表面に固定化するためには、認識分子側に立体障害が起こらないように工夫したり、結合活性部位には固定化部位が入らないようにすることが大切である。結合効率を指標に固定化状態を制御することで、限られた担体表面上に有効な認識分子を効率よく固定化することができ、非常に高い結合活性が要求される細胞除去に必要な活性を持った担体を製造することができるようになる。
なお、この結合効率の上限は原理的に100%である。100%を越える場合は想定している結合活性部位以外にも標的蛋白分子が結合していることになり、目的とする結合の特異性が満たされていないことになるため採用すべきではない。
担体表面への認識分子の固定においては、担体表面に認識分子を直接結合していてもよいし、または活性基を介して結合していてもよい。基本的に担体から認識分子または活性基が剥離しない結合状態であれば、いずれの結合状態であってもよい。結合状態としては、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、水素結合または疎水結合の単独またはそれら複数の合力が挙げられる。認識分子の流出を抑制する点から、共有結合、疎水結合がより好ましく、最も好ましくは共有結合である。結合反応は、上記結合効率が50%以上、好ましくは65%以上、さらに好ましくは80%以上になるように結合する反応であれば、公知のいずれの反応も用いることができ、例えば、置換反応、付加反応、縮合反応、重合反応または開環反応等が挙げられる。
担体表面に活性基を介して認識分子を共有結合する場合、認識分子と担体とを共有結合できる構造であれば、該活性基は公知のいずれの官能基であってもよい。活性基としては、例えば、N−ヒドロキシメチルハロアセトアミドもしくはN−ヒドロキシメチルジハロアセトアミド等を用いて担体表面を活性化することによって得られるα−アセトアミノハロゲン基、N−ヒドロキシメチルジハロプロピオンアミド等を用いて担体表面を活性化することによって得られるα,β−プロピオンアミノハロゲン基、N−ヒドロキシメチルジハロアセトアミド等を用いて担体表面を活性化することによって得られるα,α−アセトアミノジハロゲン基、またはN−ヒドロキシメチルトリハロアセトアミド等を用いて担体表面を活性化することによって得られるα,α,α−アセトアミノトリハロゲン基等のハロアセトアミノアルカン化剤を用いて担体表面を活性化することによって得られる活性基、あるいはエピクロロヒドリン等を用いて担体表面の水酸基やアミノ基などの官能基を活性化することによって得られるエポキシ基等が挙げられる。またその他の好適な活性基としては、例えば、カルボキシ基をN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化したN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、ビニル基、マレイミド基、トシル基、トレシル基またはブロモシアンによる活性基等も挙げられるがこれらに限定されない。認識分子の機能を維持したまま穏和な条件で反応できる点から、ハロアセトアミノアルカン化剤を用いて担体表面を活性化することによって得られる活性基やエポキシ基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、マレイミド基が好ましい。
更に担体表面に活性基を導入する方法として、グラフト重合法や、プラズマ処理、コロナ処理、化学処理やガスへの暴露によって担体表面に官能基や活性基を導入することも好適である。敢えて例示するならば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどにγ線を照射し、酸素を遮断した状態でグリシジルメタクリレートなどのビニル系のモノマー溶液に浸漬することによって容易に固定化に使用できる活性基や官能基が導入された担体を作製可能である。これらのグラフト鎖は、単独のモノマーを用いてもよいし、複数のモノマーの混合による共重合体であってもかまわない。もちろんグラフト重合によって水酸基やカルボキシル基、アミノ基などを導入し、更に上述のような方法によって活性化して活性基としてもよい。プラズマやコロナ処理では様々なタイプの官能基を担体表面に導入できることが知られているが、敢えて例示するならば、酸素存在下でポリエチレンテレフタレート担体表面に水酸基やカルボキシル基を導入可能であり、これらの表面改質も本発明に応用できる。また、光反応性のアゾ基やジアゾ基を担体表面に導入し、認識分子存在下、光や放射線を照射することによって認識分子を固定化することも可能である。
また、上記のような活性基を含有する重合体を予め重合し、担体表面に適当な溶媒を用いて塗布し、乾燥することによって、担体表面に活性基を導入することも可能である。
認識分子の固定化密度は、一般的な蛋白定量法を用いて、直接または間接に測定することができる。例えば、既知濃度の認識分子溶液に担体を反応させた後、反応溶液に残っている認識分子の蛋白濃度をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(ピアス社、米国)にて測定することにより固定化された認識分子量を間接的に測定することができる。また、固定化後の担体に直接、上記蛋白定量用試薬を反応させてその試薬溶液の吸光度変化から固定化された認識分子量を直接的に測定することもできる。
認識分子の固定化密度は、一般的な蛋白定量法を用いて、直接または間接に測定することができる。例えば、既知濃度の認識分子溶液に担体を反応させた後、反応溶液に残っている認識分子の蛋白濃度をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(ピアス社、米国)にて測定することにより固定化された認識分子量を間接的に測定することができる。また、固定化後の担体に直接、上記蛋白定量用試薬を反応させてその試薬溶液の吸光度変化から固定化された認識分子量を直接的に測定することもできる。
さらに、担体自体の窒素成分が無視できる場合は化学発光法を用いた窒素分析計により定量することができる。すなわち、既知濃度の認識分子溶液を石英ウールに染みこませて熱分解炉にて一酸化窒素を発生させる。この一酸化窒素ガスがオゾンと気相反応して起こる化学発光の強度から、認識分子の蛋白量と発光強度の関係を求めておく。次に、認識分子を固定化した担体を同様に熱分解炉にて酸化し、得られた化学発光強度から固定化された認識分子の蛋白量を求めることができる。
一方、担体の表面積は計算により概算できる。例えば、比重d(g/cm3)の材質でできた平均線維径R(μm)の不織布の場合、1gあたりの表面積s(cm2/g)は、s=4×104/dR で表される。担体の重さ(g)が与えられれば担体の全表面積S(cm2)が求められるので、測定で求めた認識分子固定化量を表面積S(cm2)で除することで固定化密度(g/cm2)が算出される。
免疫グロブリンGの理論的な単分子吸着量は、縦向きで1.85μg/cm2、横向きで270ng/cm2とされる(バイオマテリアルサイエンス、133ページ、東京化学同人)。このことから固定化密度の理論的な上限は1.85μg/cm2程度と考えられるが、実際には、固定化密度が1μg/cm2を越えると隣り合う認識分子同士の立体阻害による性能低下が無視できなくなり、実質的に利用できない。前述のように、固定化された認識分子に対し、標的蛋白分子溶液を解離定数濃度の50倍及至5000倍濃度である濃度C(M)で、流速v(L/秒)で時間t(秒)供給する場合、標的蛋白分子が供給される担体表面積S(mm2)上に固定化された認識分子のモル表面密度d(mol/mm2)との間に、
100<Cvt/Sd<2x105
の関係が成り立つように供給したとき、認識分子が持つ標的蛋白分子結合部位数の50%以上が標的蛋白分子と結合した状態になるように条件設定することが標的物質である細胞を全血中より直接特異的に捕捉するための必要条件である。固定化密度が1μg/cm2を越えると、通常、この値が50%以下となり、CD49d強陽性細胞を効果的に捕捉することが困難となるため、実用上利用不可能となる。
100<Cvt/Sd<2x105
の関係が成り立つように供給したとき、認識分子が持つ標的蛋白分子結合部位数の50%以上が標的蛋白分子と結合した状態になるように条件設定することが標的物質である細胞を全血中より直接特異的に捕捉するための必要条件である。固定化密度が1μg/cm2を越えると、通常、この値が50%以下となり、CD49d強陽性細胞を効果的に捕捉することが困難となるため、実用上利用不可能となる。
一方、固定化密度が20ng/cm2に満たない場合は、ターゲットに対する認識分子の絶対数が不足し、やはり、CD49d強陽性細胞を効果的に捕捉することが困難となるため、実用上利用不可能となる。
このように全血中からCD49d陽性細胞を除去するには、認識分子の固定化密度が20ng/cm2以上、1μg/cm2以下である必要がある。しかしこの固定化密度範囲に於いては、固定化密度を高くすればするほどCD49d陽性細胞除去効率が高まり、CD49d強陽性細胞だけでなく、CD49d弱陽性細胞の除去率も高くなる。健常者全血中のCD49d陽性細胞における細胞1個あたりのCD49d分子数の平均値を基準としたとき、この基準平均値よりも多く細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(強陽性細胞)の除去率が90%以上となり、且つ、この基準平均値よりも少なく細胞表面上にCD49d分子を発現している細胞(弱陽性細胞)の除去率が80%未満となるための要件を詳細に検討した結果、認識分子の固定化密度が20ng/cm2から200ng/cm2の範囲にあるときに強陽性細胞の除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満になることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記にようにして作製することができる所定の認識分子が表面に固定化されている本発明の血液成分除去材料は、入口と出口を有する容器に充填されることによって血液成分除去用デバイスを構築することができる。ここで用いる入口と出口を有する容器は、血液成分除去材料を収納できるものであれば特に限定されず、例えば、カラムやチューブなどを用いることができる。この血液成分除去用デバイスに、血液を通液することによって血液を処理することにより、血液中のCD49d強陽性細胞を除去することができる。上記した血液成分除去用デバイス及び血液中のCD49d強陽性細胞を除去する方法も本発明の範囲内に含まれる。
上記した血液成分除去用デバイスは、CD49d強陽性細胞が関与する疾患(例えば、多発性硬化症など)の治療のために使用することができる。
本発明によるCD49d強陽性細胞が関与する疾患の治療用デバイスの効果を確認するため、疾患モデル動物に対して体外循環を行うこともできる。多発性硬化症の実験的モデル動物は、EAEラットあるいはEAEマウス、またマーモセットモデルなどが知られている(B.A. 't Hart, S. Amor, Current Opinion in Neurology, 16, 375 (2003))。例えば、EAEラットの場合、8〜10週齢の雌Lewisラットに対して、guinea pig myelin basic protein (MBP)を結核菌の死菌の含まれたcomplete Freund's adjuvant (CFA)にてエマルジョンにしたものをfootpadに免疫して発症させる。発症手順は確立しており、例えば、Current Protocols in Immunology (John Wiley & Sons, Inc)のCHAPTER 15, UNIT 15.2 BASIC PROTOCOL 1: INDUCTION OF ACTIVE EAE WITH MYELIN BASIC PROTEINなどに詳しく記述されている。疾患モデル動物としてラットを用いる場合、認識分子はラットCD49dを特異的に認識するものを利用する。例えば、抗ラットCD49dモノクローナル抗体(clone TA-2, ENDOGEN, USA)などを利用する。ラットを無作為に多発性硬化症治療用デバイスカラム群、ダミーカラム群、空カラム群の3群に分け、大腿動脈より脱血、カラムを通過させた後、大腿静脈に返血する体外循環回路を作成し、蠕動ポンプを用いて約1ml/分の流量にて30分〜1時間実施する。その後、経時的に臨床所見などをスコアリングして観察、評価する。脳内への細胞浸潤は、in vivo magnetic resonance imaging (MRI)にて評価することもできる(M. SA. Deloire, et. al., Multiple Sclerosis, 10, 540 (2004))。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1:
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、40μg/mLに調製する。
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、40μg/mLに調製する。
(活性化不織布の作製)
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの4枚の乾燥重量を測定後、PBS(−)に溶解した上記認識分子溶液400μL(16μg/400μL)に常温で一晩浸し、固定後、PBS(−)2mlで洗浄する。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下Tween20溶液)を加えリンスした後、PBS(−)2mlで洗浄し、目的の細胞吸着材を得る。上記の操作により、認識分子は上記活性化不織布表面に、認識分子中のアミノ基を介して共有結合される。
入口と出口を有する容量1mlの容器(モビコールカラム:フナコシ製)に上記細胞吸着材4枚とPBS(−)溶液を充填し細胞吸着器を作成する。
(固定化密度の測定)
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
活性化不織布に固定化された認識分子の蛋白量を測定するために、同一条件下で認識分子を固定化した不織布を取り出して適切な容器に入れ、200μlのPBS(−)に浸す。これにMicro BCA Protein Assay Kit(ピアス社、米国)のWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。同時に、キット付属の既知濃度アルブミン溶液を適宜希釈した標準曲線用サンプル溶液もそれぞれ濃度別に200μl準備し、同じようにWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。反応後、その上清の562nmにおける吸光度をプレートリーダー(SpectraMax 190、モレキュラーデバイス社、米国)にて測定し、既知濃度アルブミンサンプルとの比較によって、固定化されていた蛋白質量を200μl溶液の蛋白濃度として測定することができる。そして、得られた固定化蛋白量を、上記理論的な担体表面積にて除することで固定化密度を決定することができる。
このようにして得られた固定化密度は、27.5ng/cm2であった。
(細胞吸着性の評価)
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
このときのCD49d陽性細胞の除去率を、コールターカウンターによる白血球数の変化と、フローサイトメーター(FACS Calibur:ベックトンディッキンソン社)を用いて測定した回収細胞中のCD49d陽性細胞の割合の変化から算出した。細胞の染色は、回収した血液100μlに対して、抗CD49d(Anti-VLA-α4)PE溶液(clone L25、ベックトンディッキンソン社製)10μl、および抗CD4 PerCP溶液(clone SK3、ベックトンディッキンソン社製)10μlを添加し、室温で30分間染色後、FACS Lysing solution(ベックトンディッキンソン社製)1mlを添加し溶血したものを使用した。非特許文献4(Barrau, M.A., et al. (2000) CD4+CD45RO+CD49dhigh cells are involved in the pathogenesis of relapsing-remitting multiple sclerosis. J.Neuroimmunol. 111, 215-223)のFig.1と同様に、CD4陽性の細胞にゲートをかけ、その中のCD49d強陽性細胞とCD49d弱陽性細胞の割合を解析した。
その結果、CD49d強陽性細胞除去率:98%、CD49d弱陽性細胞除去率:74%であった。
比較例1
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、4μg/mLに調製する。
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、4μg/mLに調製する。
(活性化不織布の作製)
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの4枚の乾燥重量を測定後、PBS(−)に溶解した上記認識分子溶液400μL(1.6μg/400μL)に常温で一晩浸し、固定後、PBS(−)2mlで洗浄する。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下Tween20溶液)を加えリンスした後、PBS(−)2mlで洗浄し、目的の細胞吸着材を得る。上記の操作により、認識分子は上記活性化不織布表面に、認識分子中のアミノ基を介して共有結合される。
入口と出口を有する容量1mlの容器(モビコールカラム:フナコシ製)に上記細胞吸着材4枚とPBS(−)溶液を充填し細胞吸着器を作成する。
(固定化密度の測定)
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
活性化不織布に固定化された認識分子の蛋白量を測定するために、同一条件下で認識分子を固定化した不織布を取り出して適切な容器に入れ、200μlのPBS(−)に浸す。これにMicro BCA Protein Assay Kit(ピアス社、米国)のWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。同時に、キット付属の既知濃度アルブミン溶液を適宜希釈した標準曲線用サンプル溶液もそれぞれ濃度別に200μl準備し、同じようにWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。反応後、その上清の562nmにおける吸光度をプレートリーダー(SpectraMax 190、モレキュラーデバイス社、米国)にて測定し、既知濃度アルブミンサンプルとの比較によって、固定化されていた蛋白質量を200μl溶液の蛋白濃度として測定することができる。そして、得られた固定化蛋白量を、上記理論的な担体表面積にて除することで固定化密度を決定することができる。
このようにして得られた固定化密度は、9.7ng/cm2であった。
(細胞吸着性の評価)
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
このときのCD49d陽性細胞の除去率を、コールターカウンターによる白血球数の変化と、フローサイトメーター(FACS Calibur:ベックトンディッキンソン社)を用いて測定した回収細胞中のCD49d陽性細胞の割合の変化から算出した。細胞の染色は、回収した血液100μlに対して、抗CD49d(Anti-VLA-α4)PE溶液(clone L25、ベックトンディッキンソン社製)10μl、および抗CD4 PerCP溶液(clone SK3、ベックトンディッキンソン社製)10μlを添加し、室温で30分間染色後、FACS Lysing solution(ベックトンディッキンソン社製)1mlを添加し溶血したものを使用した。非特許文献4(Barrau, M.A., et al. (2000) CD4+CD45RO+CD49dhigh cells are involved in the pathogenesis of relapsing-remitting multiple sclerosis. J.Neuroimmunol. 111, 215-223)のFig.1と同様に、CD4陽性の細胞にゲートをかけ、その中のCD49d強陽性細胞とCD49d弱陽性細胞の割合を解析した。
その結果、CD49d強陽性細胞除去率:60%、CD49d弱陽性細胞除去率:25%であった。
比較例2
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、400μg/mLに調製する。
(認識分子溶液の調製)
抗ヒトCD49dモノクローナル抗体(クローンHP2/1、イムノテック社、フランス)をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下PBS(−))に溶解し、400μg/mLに調製する。
(活性化不織布の作製)
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの4枚の乾燥重量を測定後、PBS(−)に溶解した上記認識分子溶液400μL(160μg/400μL)に常温で一晩浸し、固定後、PBS(−)2mlで洗浄する。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下Tween20溶液)を加えリンスした後、PBS(−)2mlで洗浄し、目的の細胞吸着材を得る。上記の操作により、認識分子は上記活性化不織布表面に、認識分子中のアミノ基を介して共有結合される。
特開平11-332594号公報の実施例10と同様にして、不織布の活性基であるN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミドを作製した。ガラス製のフラスコにN‐ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した.これにポリプロピレンからなる不織布P080HW-00F(東燃TAPYRUS社製、平均繊維直径3.5μm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し,エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの4枚の乾燥重量を測定後、PBS(−)に溶解した上記認識分子溶液400μL(160μg/400μL)に常温で一晩浸し、固定後、PBS(−)2mlで洗浄する。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下Tween20溶液)を加えリンスした後、PBS(−)2mlで洗浄し、目的の細胞吸着材を得る。上記の操作により、認識分子は上記活性化不織布表面に、認識分子中のアミノ基を介して共有結合される。
入口と出口を有する容量1mlの容器(モビコールカラム:フナコシ製)に上記細胞吸着材4枚とPBS(−)溶液を充填し細胞吸着器を作成する。
(固定化密度の測定)
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
今回、平均繊維直径3.5μmのポリプロピレンなので、比重d=0.91、R=3.5μmから、係数1.26×104(cm2/g)が得られる。この係数を、上記で測定した活性化不織布(直径0.68cm)4枚の乾燥重量に乗じて理論的な担体表面積を求める。
活性化不織布に固定化された認識分子の蛋白量を測定するために、同一条件下で認識分子を固定化した不織布を取り出して適切な容器に入れ、200μlのPBS(−)に浸す。これにMicro BCA Protein Assay Kit(ピアス社、米国)のWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。同時に、キット付属の既知濃度アルブミン溶液を適宜希釈した標準曲線用サンプル溶液もそれぞれ濃度別に200μl準備し、同じようにWorking Reagentを200μl加えて攪拌し、37℃で2時間インキュベートする。反応後、その上清の562nmにおける吸光度をプレートリーダー(SpectraMax 190、モレキュラーデバイス社、米国)にて測定し、既知濃度アルブミンサンプルとの比較によって、固定化されていた蛋白質量を200μl溶液の蛋白濃度として測定することができる。そして、得られた固定化蛋白量を、上記理論的な担体表面積にて除することで固定化密度を決定することができる。
このようにして得られた固定化密度は、239.4ng/cm2であった。
(細胞吸着性の評価)
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
このときのCD49d陽性細胞の除去率を、コールターカウンターによる白血球数の変化と、フローサイトメーター(FACS Calibur:ベックトンディッキンソン社)を用いて測定した回収細胞中のCD49d陽性細胞の割合の変化から算出した。細胞の染色は、回収した血液100μlに対して、抗CD49d(Anti-VLA-α4)PE溶液(clone L25、ベックトンディッキンソン社製)10μl、および抗CD4 PerCP溶液(clone SK3、ベックトンディッキンソン社製)10μlを添加し、室温で30分間染色後、FACS Lysing solution(ベックトンディッキンソン社製)1mlを添加し溶血したものを使用した。非特許文献4(Barrau, M.A., et al. (2000) CD4+CD45RO+CD49dhigh cells are involved in the pathogenesis of relapsing-remitting multiple sclerosis. J.Neuroimmunol. 111, 215-223)のFig.1と同様に、CD4陽性の細胞にゲートをかけ、その中のCD49d強陽性細胞とCD49d弱陽性細胞の割合を解析した。
実験開始直前に、上記カラムのエアを通過させることによって、PBS(−)液を切り、ACD−A(川澄化学株式会社)添加ヒト健常人新鮮血液5.0ml(血液:ACD−A=6.7:1)をシリンジポンプにて細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し最初の5滴を捨てた後に、カラム出口より処理後の血液を回収した。
このときのCD49d陽性細胞の除去率を、コールターカウンターによる白血球数の変化と、フローサイトメーター(FACS Calibur:ベックトンディッキンソン社)を用いて測定した回収細胞中のCD49d陽性細胞の割合の変化から算出した。細胞の染色は、回収した血液100μlに対して、抗CD49d(Anti-VLA-α4)PE溶液(clone L25、ベックトンディッキンソン社製)10μl、および抗CD4 PerCP溶液(clone SK3、ベックトンディッキンソン社製)10μlを添加し、室温で30分間染色後、FACS Lysing solution(ベックトンディッキンソン社製)1mlを添加し溶血したものを使用した。非特許文献4(Barrau, M.A., et al. (2000) CD4+CD45RO+CD49dhigh cells are involved in the pathogenesis of relapsing-remitting multiple sclerosis. J.Neuroimmunol. 111, 215-223)のFig.1と同様に、CD4陽性の細胞にゲートをかけ、その中のCD49d強陽性細胞とCD49d弱陽性細胞の割合を解析した。
その結果、CD49d強陽性細胞除去率:98%、CD49d弱陽性細胞除去率:84%であった。
本発明を利用することにより、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、皮膚疾患、免疫疾患などに対する治療法として、抗CD49dアンタゴニスト治療よりも低副作用が期待できる。
Claims (9)
- 白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子が水不溶性担体に固定化されており、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料であって、上記認識分子の固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2であることを特徴とする血液成分除去材料。
- 上記認識分子が共有結合を介して水不溶性担体の表面に固定化されている、請求項1に記載の血液成分除去材料。
- 上記認識分子と、白血球表面上に発現しているCD49d分子との解離定数が1μM以下である、請求項1又は2に記載の血液成分除去材料。
- 上記認識分子が、抗ヒトCD49dモノクローナル抗体である、請求項1から3の何れかに記載の血液成分除去材料。
- 白血球表面上に発現しているCD49d分子に対して特異的結合親和性を有する認識分子を、固定化密度が20ng/cm2乃至200ng/cm2となるように水不溶性担体に固定化することを含む、血液中のCD49d強陽性細胞除去率が90%以上、且つ、CD49d弱陽性細胞除去率が80%未満である血液成分除去材料を製造する方法。
- 請求項1から4の何れかに記載の血液成分除去材料を、入口と出口を有する容器に充填した、血液成分除去用デバイス。
- CD49d強陽性細胞が関与する疾患の治療のために使用される、請求項6に記載の血液成分除去用デバイス。
- 多発性硬化症の治療のために使用する、請求項6又は7に記載の血液成分除去用デバイス。
- 請求項1から4の何れかに記載の血液成分除去材料を、入口と出口を有する容器に充填した、血液成分除去用デバイスに血液を通液することを含む、血液中のCD49d強陽性細胞を除去する方法。
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JP2010525334A (ja) * | 2007-04-19 | 2010-07-22 | エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド | 固定化された標的と直接結合する小分子を検出するためにバイオセンサーを使用する方法 |
JP2015522577A (ja) * | 2012-06-28 | 2015-08-06 | フレセニウス メディカル ケア ドイチェランド ゲーエムベーハーFresenius Medical Care Deutschland GmbH | 体外灌流装置 |
EP3254697A1 (en) * | 2012-02-03 | 2017-12-13 | Charité - Universitätsmedizin Berlin | Means for treating delayed fracture healing |
-
2005
- 2005-09-28 JP JP2005282459A patent/JP2007089788A/ja not_active Withdrawn
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