JP2007089541A - 酵素反応制御方法及び制御装置 - Google Patents

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Masamoto Torimura
政基 鳥村
Takashi Manabe
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Abstract

【課題】 (1)効率的な酵素反応に有用な酵素反応の制御方法およびその装置の提供。(2)酵素反応と同時に酵素反応で生じた反応生成物を基質と分離し、且つ当該反応生成物を正電荷を有する生成物と負電荷を有する生成物とに分離し取得するための装置およびその方法の提供。
【解決手段】(1)加水分解酵素およびその基質を含む反応溶液に電圧を印加することにより、当該加水分解酵素の酵素反応を制御する。(2) 酵素と基質を含む反応槽中の反応溶液に電圧を印加することによって、反応溶液中に酵素反応生成物を生成させ、当該生成した酵素反応生成物のうち正電荷及び負電荷を有する反応生成物をそれぞれ反応溶液に形成された電場の負極側及び正極側に移動させて、当該正電荷及び負電荷を有する反応生成物を、反応槽の負極側および正極側とそれぞれ限外濾過膜を介して連通した分離槽(−)および分離槽(+)に移行させて酵素反応生成物を製造しかつ分離する。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵素反応を効率的に行うための方法、すなわち酵素反応を促進させる方法に関する。また本発明は当該方法を利用した酵素反応制御装置に関する。
さらに本発明は、酵素反応を効率的に行いながら、同時に酵素反応によって生じた反応生成物を、基質と分離し、且つ正電荷を有する反応生成物と負電荷を有する反応生成物とに分離し取得するための方法、並びにそのための装置(酵素反応生成物の製造分離装置)に関する。
酵素反応を制御するには、一般的に、基質の濃度、pH、温度を一定に保ち、反応槽内に撹拌装置又は端子を入れて撹拌することにより、酵素と基質との反応を促進する必要がある。一回の反応毎に酵素は基質と脱着を繰り返して反応が進むが、多くの酵素で一酵素あたり毎秒、基質1,000分子程度を触媒する。通常、基質濃度に比例して反応速度も増すが、やがて最大値に達すると反応阻害(拮抗阻害等)を起こし反応速度が低下して、所望量の反応生成物が得られなくなる。酵素反応速度に影響する主な要因としては、酵素濃度、基質濃度、阻害剤の有無、pH、温度、種々の塩濃度を挙げることができるが、電場状態での反応速度は調べられておらず、酵素反応に対する電気的な影響は知られていない。
現在、多種多様な高分子を分解することにより機能性オリゴ糖やペプチド等が製造され、食品、繊維製品、紙製品等の多くの製品に利用されているが、機能性成分を得るためには、酵素分解あるいは酸分解した後、液体クロマトグラフィーや溶媒抽出等で精製する必要がある。このため時間がかかり収率も上がらないため高コストとなり、その利用が制限されている。他法として、メンブランフィルターを用いて分画する方法もあるが、溶液の圧力差を利用してろ過を行うため、フィルターが目づまりする等といった問題が生じる。このため、これらの方法を用いては、酵素反応生成物を工業的に多量に精製し取得することは難しい。
本出願人は、すでに、酵素反応と反応生成物の分離取得とを同時に行う方法として、物質の分子量と電荷を利用して、高分子有機物(基質)を加水分解酵素で分解しながら同時に生じた分解物を基質から分離取得する方法を提案している(例えば特許文献1)。この方法は、高分子有機物について、酵素による加水分解(酵素反応)と限外濾過膜による電気透析を同時に行う方法であり、この方法によれば、多糖を原料としてオリゴ糖の生成と分離を、またはタンパク質を原料としてペプチドの生成と分離を同時に行うことができる。
特開2003−88394号公報
本発明の第1の目的は、酵素反応を効率的に行うために有効に利用できる酵素反応の制御方法およびその装置を提供することである。
また本発明の第2の目的は、酵素反応を行いながら、同時に酵素反応によって生じた反応生成物を基質と分離し、且つ当該反応生成物を正電荷を有する生成物と負電荷を有する生成物とに分離し取得するための装置(酵素反応生成物の製造分離装置)およびその方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題の解決を目的に鋭意検討を重ねていたところ、加水分解酵素による酵素反応を通電下で行うことにより、当該酵素反応速度が速くなり、より短時間にかつ効率的に所望の反応生成物が得られることを見出した。
また、基質と酵素を含有する反応溶液に通電して酵素反応の制御を図りながらも、通電により溶液中に形成された電場を利用し、かつ限外濾過膜による分別手段を用いることで、酵素反応によって生じた反応生成物を、その等電点に基づく電荷の違いと分子量の違いに基づいて分離することができ、その結果、酵素反応による目的物質(反応生成物)の製造と当該反応生成物の分離取得が同時に達成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
具体的には、本発明の第1の態様(以下、「本発明1」ともいう)としては下記の構成を有するものを挙げることができる:
項1.加水分解酵素およびその基質を含む反応溶液に電圧を印加することにより、当該加水分解酵素の酵素反応を制御することを特徴とする酵素反応制御方法。
項2.酵素反応を促進する方法である、項1記載の酵素反応制御方法。
項3.印加する電圧が0〜200Vである項1または2に記載する酵素反応制御方法。
項4.加水分解酵素がプロテアーゼ、プロテオグリカナーゼ、ヌクレアーゼキチナーゼ、キトサナーゼ、セルラーゼ、リゾチーム、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、グルコシダーゼ、およびグルコサミニダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1乃至3のいずれかに記載する酵素反応制御方法。
項5.加水分解酵素がプロテアーゼ活性を有する酵素である項1または2に記載の酵素反応制御方法。
項6.加水分解酵素と基質を含む反応溶液を有する反応槽、および当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段を有する酵素反応制御装置。
項7.加水分解酵素と基質を含む反応溶液を有する反応槽、および当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段として電極を備えた電極槽を有し、当該反応槽と電極槽が透析膜で仕切られていることを特徴とする項6記載の酵素反応制御装置。
具体的には、本発明の第2の態様(以下、「本発明2」ともいう)としては下記の構成を有するものを挙げることができる:
(1).酵素と基質を含む反応溶液を入れる反応槽、当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段、酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別し、さらに反応生成物を正電荷を有する反応生成物と負電荷を有する反応生成物とに分別する手段を有する、酵素反応生成物の製造分離装置。
(2).酵素が加水分解酵素であり、基質が高分子有機化合物である、(1)記載の酵素反応生成物の製造分離装置。
(3).酵素と基質を含む反応溶液を入れる反応槽、当該反応槽を間において反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段として電極を備えた2つの電極槽(電極槽A,電極槽B)、及び上記反応槽と上記各電極槽(電極槽A,電極槽B)の間に酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別して収容する分離槽(分離槽A、分離槽B)を有する酵素反応装置であって、
反応槽と電極槽Aの間に位置する分離槽Aは、正電荷を有する反応生成物を分別して収容する分離槽(−)であり、反応槽と電極槽Bの間に位置する分離槽Bは、負電荷を有する反応生成物を分別して収容する分離槽(+)であり、
反応槽と分離槽とは限外濾過膜で仕切られ、分離槽と電極槽(電極槽A,電極槽B)とは透析膜で仕切られていることを特徴とする請求項8または9に記載する酵素反応生成物の製造分離装置。
(4).反応槽と各電極槽(電極槽A,電極槽B)の間に配置された各分離槽(分離槽A、分離槽B)の1または両方が、異なる分画分子量をもつ限外濾過膜で仕切られていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載する酵素反応生成物の製造分離装置。
(5).酵素反応生成物の製造および分離方法であって、
酵素と基質を含む反応槽中の反応溶液に電圧を印加することによって、
反応溶液中に酵素反応生成物を生成させ、
当該生成した酵素反応生成物のうち正電荷及び負電荷を有する反応生成物をそれぞれ反応溶液に形成された電場の負極側及び正極側に移動させて、
当該正電荷及び負電荷を有する反応生成物を、反応槽の負極側および正極側とそれぞれ限外濾過膜を介して連通した分離槽(−)および分離槽(+)に移行させることを特徴とする方法。
(6).上記分離槽(−)および/または分離槽(+)として、異なる分画分子量をもつ限外濾過膜で仕切られている分離槽を用いる、(5)に記載する酵素反応生成物の製造および分離方法。
(7).加水分解酵素がプロテアーゼ、プロテオグリカナーゼ、ヌクレアーゼキチナーゼ、キトサナーゼ、セルラーゼ、リゾチーム、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、グルコシダーゼ、およびグルコサミニダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種である(6)または(7)に記載する酵素反応生成物の製造および分離方法。
(8).加水分解酵素がプロテアーゼ活性を有する酵素である(5)または(6)に記載する酵素分解生成物の製造および分離方法。
本発明1によれば、加水分解酵素による酵素反応を電気的に制御することにより、効率的に酵素反応を行うことができる。その結果、本発明1によれば、反応時間の短縮、酵素使用量の低減、または反応生成物の大量製造が可能となる。このため、本発明1の技術を用いることにより食品、化学工業、繊維、紙産業等、あらゆる分野において酵素反応を利用した製品の製造や加工の効率を上げることが出来、製造や加工におけるコストを大幅に下げることができる。
本発明2によれば、酵素による酵素反応を電気的に制御することができるだけでなく、電圧を印加することで反応溶液中に電場を形成することによって、反応生成物をその電荷の違い、また必要に応じて更にその分子量の違いにより分離することができる。このため、例えば基質としてタンパク質、酵素としてプロテアーゼを用いた場合、反応によって生じた塩基性ペプチドや酸性ペプチドを同時に分離取得することが可能となる。
(1)酵素反応の制御方法
本発明の酵素反応の制御方法は、酵素反応を通電下で行うことによって実施することができる。
本発明が対象とする酵素反応は、好ましくは高分子有機物を低分子物質に加水分解する酵素反応である。この高分子有機物には、キチン(脱アセチル化度が0%のものを除く)、キトサン、ペクチン、ペプチドグリカン、グリコサミノグリカン、およびプロテオグリカン等の多糖類;タンパク質、ならびに核酸などの電荷を持った高分子物質が含まれる。高分子有機物の分子量も特に制限されないが、通常1000〜500万、好ましくは1万〜100万を挙げることができる。また、その加水分解物(部分分解物を含む)たる低分子物質の分子量としては、制限されないが、100〜5万、好ましくは1000〜2万を例示することができる。
酵素反応に用いる酵素としては、好ましくは上記酵素反応を触媒する作用を有する加水分解酵素である。具体的には、基質として使用する高分子有機物の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、キチン、キトサンの加水分解にはキチナーゼ、キトサナーゼ、リゾチーム、セルラーゼ等;ペクチンの加水分解にはペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等;ペプチドグリカンの加水分解にはグルコシダーゼ等;グリコサミノグリカンの加水分解にはグルコサミニダーゼ等;プロテオグリカンの加水分解にはプロテオグリカナーゼ、プロテアーゼ等;タンパク質の加水分解にはプロテアーゼ等;核酸の加水分解にはヌクレアーゼ等を用いることができる。好ましくは、プロテアーゼ活性を有する酵素である。
本発明における酵素の使用方法は、特に限定されるものではないが、酵素そのものをそのまま使用しても、また酵素を膜や粒子状固体などの任意の担体に固定化して使用することができる。
通電は、溶液中に浸漬した電極(陽極、陰極)間に電圧を印加することによって行うことができ、当該溶液に上記の酵素と基質を共存させて、使用する酵素に応じて、溶液の温度やpH等を所望の反応条件に設定することで、酵素反応を行う。
電圧を印加する方法としては、電圧印可の波形を命令できるいかなる方法も用いることができる。例えば、パルスジェネレータ、ファンクションシンセサイザ等の信号発生器を用いる方法を挙げることができる。なお、出力波形は特に制限されず、正弦波または方形波などのいずれであってもよい。
反応溶液に加える電圧や電流は、酵素が不可逆的に変性しない範囲で有効であり、簡便には電気泳動用や電気化学測定用の定電流・定電圧装置を用いることで実施することができる。印加する電場は、電流にして通常0〜5A、好ましくは0〜1A、より好ましくは0〜0.5Aであり、電圧にして通常0〜500V、好ましくは0〜200V,より好ましくは0〜100V以下である。但し、電流が0Aであるとき電圧は0Vではなく、電圧が0Vであるとき電流が0Aではない。
電圧の印加に用いられる電極は、導電性のあるものであればよく、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、チタン、ニッケル、亜鉛、すず等の金属類;白金チタン等の二種以上の金属からなる合金あるいは炭素等が挙げられる。好ましくは白金チタンを挙げることができる。
本発明で用いられる反応溶液としては、pHを安定させるために、グリシン緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等の各種緩衝液を用いることが好ましい。緩衝液の濃度は通常0.001〜2Mの範囲で用いられる。好ましくは0.05〜1M、より好ましくは0.05〜0.1Mの範囲である。反応温度及び反応pHは酵素反応が起こる温度及びpHであれば特に限定されないが、用いる酵素の最適温度及び最適pHに応じて適宜設定することが望ましい。具体的には、反応温度は5〜95℃の範囲から適宜選択されるが、通常10〜60℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲である。また、pHは通常pH2〜10の範囲、好ましくはpH3〜8の範囲、より好ましくはpH4.5〜7の範囲である。
また、酵素反応をより促進するために、スターラー等の撹拌装置を用いて酵素反応を攪拌下で行うこともできる。撹拌するときの回転速度は、特に制限されないが通常100〜2000rpmの範囲、好ましくは250〜1000rpmの範囲から適宜設定することができる。
なお、酵素反応の制御(促進と抑制)は、電圧印加のON/OFFを制御すること、また通電する電圧や電流量を調節すること、さらにまた出力波形を調節することなどによって、行うことができる。
(2)酵素反応制御装置
本発明は上記の酵素反応制御方法を簡便に行うための装置として、加水分解酵素と基質を含む反応溶液をいれる反応槽、及び当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段を有する酵素反応制御装置(装置A)を提供する。以下、当該酵素反応制御装置を、図1を参照しながら説明する。なお、図1は本発明の酵素反応制御装置の一例であり、本発明は当該装置に限定されるものではない。
当該酵素反応制御装置(装置A)は、加水分解酵素と基質を含む反応溶液をいれる反応槽2、および、それを間において当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段として電極を備えた電極槽3を有しており、当該反応槽2と電極槽3とが透析膜5で仕切られてなる構成を有している。
反応槽2には、加水分解酵素と基質を含む反応溶液が入れられる。当該反応溶液中で基質と加水分解酵素とが反応して、反応生成物(分解生成物)が生じる。ここで用いられる加水分解酵素としては、前述するように基質として使用する高分子有機物の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、キチン、キトサンの加水分解にはキチナーゼ、キトサナーゼ、リゾチーム、セルラーゼ等;ペクチンの加水分解にはペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等;ペプチドグリカンの加水分解にはグルコシダーゼ等;グリコサミノグリカンの加水分解にはグルコサミニダーゼ等;プロテオグリカンの加水分解にはプロテオグリカナーゼ、プロテアーゼ等;タンパク質の加水分解にはプロテアーゼ等;核酸の加水分解にはヌクレアーゼ等を挙げることができる。好ましくは、プロテアーゼ活性を有する酵素である。基質としては、これらの酵素に応じて、例えばキチン(脱アセチル化度が0%のものを除く)、キトサン、ペクチン、ペプチドグリカン、グリコサミノグリカン、およびプロテオグリカン等の多糖類;タンパク質、ならびに核酸などの電荷を持った高分子有機物を挙げることができる。
反応溶液としては、pHを安定させるために、グリシン緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等の各種緩衝液を用いることが好ましい。緩衝液の濃度は通常0.001〜2Mの範囲で用いられる。好ましくは0.05〜1M、より好ましくは0.05〜0.1Mの範囲である。反応温度及び反応pHは酵素反応が起こる温度及びpHであれば特に限定されないが、用いる酵素の最適温度及び最適pHに応じて適宜設定することが望ましい。具体的には、反応温度は5〜95℃の範囲から適宜選択されるが、通常10〜60℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲である。また、pHは通常pH2〜10の範囲、好ましくはpH3〜8の範囲、より好ましくはpH4.5〜7の範囲である。
また、反応が促進されるように、スターラー等の撹拌装置を使用することもできる。撹拌するときの速度は、10〜2000rpm、好ましくは10〜100rpmが例示できる。
反応槽2内の反応溶液は、適宜反応条件等によって、スターラーバー6およびスターラー7などの撹拌装置を用いて撹拌することもでき、またヒーターやインキュベータ等の恒温装置を用いて酵素反応に応じて所定の温度に一定に保つこともできる。なお、図1に示す装置Aは、恒温装置として恒温槽11を用いて、反応槽と電極槽の回りを恒温の水を循環させることにより反応槽2中の反応溶液を所定の温度に保つように構成されている。
電極槽3は、上記反応槽2を間に挟んで反応槽の両側に配置される。当該各電極槽3と反応槽2とは各々透析膜5で仕切られている。
ここで透析膜5としては、酵素反応に使用する加水分解酵素、基質、及び酵素反応によって生じる反応生成物(分解生成物)が通過せず、且つ電流が流れるものを挙げることができる。例えば、かかる条件を満たすイオン交換膜、逆浸透膜、限外ろ過膜等を例示することができる。具体的には、イオン交換膜であれば、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の多種ポリマー;また逆浸透膜であれば、ポリアミド等;また、限外ろ過膜であればセルロース、ポリエーテルスルホン等の多種ポリマーを例示することができる。透析膜の排除限界は分子量100〜10,000、好ましくは100〜1,000、より好ましくは100〜200が挙げることができる。
反応槽2と電極槽3との間に上記透析膜5を設けることにより、加水分解酵素、基質および反応生成物(分解生成物)を電極8と遮断することができ、その結果、電極8による影響を直接受けることなく酵素反応を行うことができ、また生成した生成物も電極8によって悪影響を受けることがない。なおこの場合、電圧印加によって、反応液中の塩類が透析膜5を通過して電極槽3に移動する。このため、電極槽3内の溶液は、別途設けた緩衝液槽4中の緩衝液と例えばポンプ12を利用して循環できるようにしておくことができ、こうすることで電極槽中の溶液の塩濃度または温度、ひいては反応槽の反応溶液の塩濃度や温度を一定に維持することができる。
各電極槽3内には、電極8が備えられており、電圧の印加によって反応溶液中に電流が流れるようになっている。電極8は導電性のあるものであればよく、公知のものが使用でき、特に限定はされないが、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、チタン、ニッケル、亜鉛、すず等の金属類;白金チタン等の二種以上の金属からなる合金あるいは炭素等が挙げられる。好ましくは白金チタンを挙げることができる。
電圧を印加する方法としては、電圧を印加することのできるいかなる方法も用いることができる。例えば、簡便には電気泳動用や電気化学測定用の定電流・定電圧装置、またはパルスジェネレータ、ファンクションシンセサイザ等の信号発生器を用いる方法を挙げることができる。なお、出力波形は特に制限されず、正弦波または方形波などのいずれであってもよい。反応溶液に加える電圧や電流は、酵素が不可逆的に変性しない範囲で有効であり、電流にして通常0〜5A、好ましくは0〜1A、より好ましくは0〜0.5Aであり、電圧にして通常0〜500V、好ましくは0〜200V,より好ましくは0〜100Vである。但し、電流が0Aであるとき電圧は0Vではなく、電圧が0Vであるとき電流が0Aではない。
より具体的には、基質としてタンパク質、酵素としてプロテアーゼを用いる場合を例とすると、当該酵素反応制御装置(装置A)の反応槽2内に、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜1重量%濃度の緩衝液(pH3〜10)で調製したタンパク質溶液を所定量入れ、そこに0.1〜5U/ml、好ましくは0.5〜3U/mlとなるようにプロテアーゼを添加し、0〜100V以下、0.01〜0.5Aの条件(但し、電圧0Vのとき電流0Aではなく、電流0Aのとき電圧0Vではない)で電圧を印加した状態で、酵素反応を開始する。そうすると、電圧を印加しない場合よりも早く、プロテアーゼの作用によってタンパク質が分解されてポリペプチドまたはオリゴペプチドを生成することができる。
(3)酵素反応生成物の製造分離装置
本発明は酵素反応を行い、当該反応で得られた反応生成物を分別取得する装置(酵素反応生成物の製造分離装置)として、酵素と基質を含む反応溶液を入れる反応槽、当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段、酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別し、さらに反応生成物を正電荷を有する生成物と負電荷を有する生成物とに分別する手段を有する、装置(装置B)を提供する。
以下、当該酵素反応生成物の製造分離装置(以下、単に「装置B」という)を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は本発明の装置Bの一例であり、本発明は当該装置に限定されるものではない。
当該装置Bは、図2で示されるように、反応槽2、当該反応槽2を間において2つの電極槽3〔電極槽3(−極)と電極槽3(+極)〕、及び上記反応槽2と上記各電極槽3(−極)と電極槽3(+極)の間に各々分離槽13(−極)と分離槽14(+極)を有する。ここで、反応槽2と電極槽3(−極)の間に位置する分離槽13(−極)は、正電荷を有する反応生成物を基質と分別して収容する分離槽であり、反応槽2と電極槽3(+極)の間に位置する分離槽14(+極)は、負電荷を有する反応生成物を基質と分別して収容する分離槽である。そして反応槽2と分離槽13(−極)および分離槽14(+極)はそれぞれ限外濾過膜15で仕切られ、また分離槽13(−極)と電極槽3(−極)および分離槽14(+極)と電極槽3(+極)はいずれも透析膜5で仕切られている。
反応槽2には、酵素とその基質を含む反応溶液が入れられる。当該反応溶液中で基質と酵素とが反応して反応生成物が生じる。ここで用いられる酵素および基質は、目的に応じて適宜選択することができる。酵素として好ましくは加水分解酵素である。前述するように加水分解酵素は、基質の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、キチン、キトサンの加水分解にはキチナーゼ、キトサナーゼ、リゾチーム、セルラーゼ等;ペクチンの加水分解にはペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等;ペプチドグリカンの加水分解にはグルコシダーゼ等;グリコサミノグリカンの加水分解にはグルコサミニダーゼ等;プロテオグリカンの加水分解にはプロテオグリカナーゼ、プロテアーゼ等;タンパク質の加水分解にはプロテアーゼ等;核酸の加水分解にはヌクレアーゼ等を挙げることができる。好ましくは、プロテアーゼ活性を有する酵素である。この場合、基質としては、これらの酵素に応じて、例えばキチン(脱アセチル化度が0%のものを除く)、キトサン、ペクチン、ペプチドグリカン、グリコサミノグリカン、およびプロテオグリカン等の多糖類;タンパク質、ならびに核酸などの電荷を持った高分子有機物を挙げることができる。
反応溶液としては、pHを安定させるために、グリシン緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等の各種緩衝液を用いることが好ましい。緩衝液の濃度は通常0.001〜2Mの範囲で用いられる。好ましくは0.05〜1M、より好ましくは0.05〜0.1Mの範囲である。反応温度及び反応pHは酵素反応が起こる温度及びpHであれば特に限定されないが、用いる酵素の最適温度及び最適pHに応じて適宜設定することが望ましい。具体的には、反応温度は5〜95℃の範囲から適宜選択されるが、通常10〜60℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲である。また、pHは通常pH2〜10の範囲、好ましくはpH3〜8の範囲、より好ましくはpH4.5〜7の範囲である。
また、反応が促進されるように、スターラー等の撹拌装置を使用することもできる。撹拌するときの速度は、10〜2000rpm、好ましくは10〜100rpmが例示できる。
反応槽2内の反応溶液は、適宜反応条件等によって、スターラーバー6およびスターラー7などの撹拌装置を用いて撹拌することもでき、またヒーターやインキュベータ等の恒温装置を用いて酵素反応に応じて所定の温度に一定に保つこともできる。なお、図2に示す装置Bは、恒温装置として恒温槽11を用いて、反応槽2、分離槽13、分離槽14および電極槽3の回りを恒温の水を循環させることにより反応槽2中の反応溶液を所定の温度に保つように構成されている。
分離槽13及び分離槽14は、上記反応槽2を間に挟んで反応槽2の両側に配置される。分離槽は、酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別して収容する部位である。当該各分離槽(分離槽13及び分離槽14)と反応槽2とは各々限外濾過膜15で仕切られている。
当該限外濾過膜15としては、反応槽2から酵素およびその基質は透過せず、酵素反応によって生じた所望の反応生成物が透過して分離槽(分離槽13及び分離槽14)内に移入するような分画分子量を有するものが用いられる。従って、限外濾過膜15の分画分子量は、酵素反応に使用する酵素、その基質、および取得する反応生成物の分子量に応じて適宜設定することができる。一例を挙げると分画分子量100〜1,000,000、好ましくは500〜500,000の範囲のものを使用することができる。
なお、上記条件を満たすものであれば、限外濾過膜の種類は特に制限されるものではない。また、限外濾過膜には平膜型、多段平膜型、中空糸型等のタイプがあるが、いずれの型式も使用することができる。
分離槽13または/および分離槽14は、内部がさらに1またはそれ以上の限外濾過膜で仕切られていてもよい。その結果、反応槽の一方の側または両側に2以上の部屋をもつ分離槽が形成されてなる格好となる。この場合、分離槽を仕切る限外濾過膜は、反応槽2から電極槽3にむけて順次孔径が小さくなるように異なる分画分子量を有するものであることが好ましく、これにより、反応生成物を分子量に応じて分離槽内の各部屋に分別して収容することができる。
電極槽3は、上記反応槽2を間に挟んで配置された分離槽13及び分離槽14の対側に配置される。当該電極槽3(−極)と分離槽14(−極)および電極槽3(+極)と分離槽14(+極)は各々透析膜5で仕切られている。
ここで透析膜5としては、酵素反応に使用する酵素、基質、及び酵素反応によって生じる反応生成物が通過せず、且つ電流が流れるものを挙げることができる。例えば、かかる条件を満たすイオン交換膜、逆浸透膜、限外ろ過膜等を例示することができる。具体的には、イオン交換膜であれば、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の多種ポリマー;また逆浸透膜であれば、ポリアミド等;また、限外ろ過膜であればセルロース、ポリエーテルスルホン等の多種ポリマーを例示することができる。透析膜の排除限界は分子量100〜10,000、好ましくは100〜1,000、より好ましくは100〜200が挙げることができる。
分離槽13(−極)と電極槽3(−極)および分離槽14(+極)と電極槽3(+極)との間に上記透析膜5を設けることにより、分離槽13および14に分別収容された反応生成物を電極8と遮断することができ、その結果、反応生成物が電極8によって直接悪影響を受けることを避けることができる。なお、電圧印加によって、反応液中の塩類が限外濾過膜15および透析膜5を通過して電極槽3に移動する。このため、電極槽3内の溶液は、別途設けた緩衝液槽4中の溶液と例えばポンプ12を利用して循環できるようにしておくことができ、こうすることで電極槽3の溶液の塩濃度または温度、ひいては分離槽13、分離槽14および反応槽2の溶液の塩濃度や温度を一定に維持することができる。
また各電極槽3内には、反応溶液に電圧を印加する手段として電極8が備えられており、電圧の印加によって反応溶液中に電流が流れるようになっている。電極8は導電性のあるものであればよく、公知のものが使用でき、特に限定はされないが、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、チタン、ニッケル、亜鉛、すず等の金属類;白金チタン等の二種以上の金属からなる合金あるいは炭素等が挙げられる。好ましくは白金チタンを挙げることができる。
電圧を印加する方法としては、電圧を印加することのできるいかなる方法も用いることができる。例えば、簡便には電気泳動用や電気化学測定用の定電流・定電圧装置、またはパルスジェネレータ、ファンクションシンセサイザ等の信号発生器を用いる方法を挙げることができる。なお、出力波形は特に制限されず、正弦波または方形波などのいずれであってもよい。反応溶液に加える電圧や電流は、酵素が不可逆的に変性しない範囲で有効であり、電流にして通常0〜5A、好ましくは0〜1A、より好ましくは0〜0.5Aであり、電圧にして通常0〜500V、好ましくは0〜200V,より好ましくは0〜100Vである。但し、電流が0Aであるとき電圧は0Vではなく、電圧が0Vであるとき電流が0Aではない。
より具体的には、基質としてタンパク質、酵素としてプロテアーゼを例とすると、当該酵素反応生成物の製造分離装置(装置B)に、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜1重量%濃度の緩衝液(pH3〜10)で調製したタンパク質溶液を所定量入れ、そこに0.1〜5U/ml、好ましくは0.5〜3U/mlとなるようにプロテアーゼを添加し、1〜100V、0.01〜0.5Aの条件で電圧を印加した状態で、加水分解反応を開始する。そうすると、反応槽2で酵素反応して加水分解されたタンパク質の分解生成物(ポリまたはオリゴペプチド)のうち、正の電荷を有するペプチドは反応槽2から−極側の分離槽13に移動し、また負の電荷を有するペプチドは反応槽2から+極側の分離槽14に移動する。例えばpH2.8の緩衝液中で、正電荷を有するカゼインを酵素(プロテアーゼ)と反応させた場合、当該カゼインと酵素を含む反応溶液をいれた反応槽で酵素と反応させて生成するカゼイン分解生成物(ペプチド)の大部分は、同様に正電荷を有するため、限外濾過膜を透過して−極側にある分離槽13に移動する。一方、例えばpH9の緩衝液中で、負電荷を有するカゼインを酵素(プロテアーゼ)と反応させた場合、当該カゼインと酵素を含む反応溶液をいれた反応槽で酵素と反応させて生成するカゼイン分解生成物(ペプチド)の大部分は、同様に負電荷を有するため、限外濾過膜を透過して+極側にある分離槽14に移動する。
なお、塩類等の低分子物質は透析膜5を通過して電極槽3に移動するため、分離槽13および分離槽14には、所望の反応生成物が基質や低分子物質と分別されて蓄積される。すなわち、分離槽13および分離槽14に、自動的に所望の反応生成物が精製され蓄積(濃縮)されることになる。
斯くして、かかる酵素反応生成物の製造分離装置によって、基質と酵素との反応によって所望の反応生成物を製造するのと同時に、基質と当該反応生成物、並びに分解生成物同士を、その等電点に応じて、また分子量に応じて、分別取得することができる。分離槽13および14に分別蓄積された反応生成物は、これらの分離槽から取り出して、さらに精製処理に供してもよい。分離槽からの取り出す方法、およびその精製方法も、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
また、反応槽2に基質(水溶液または粉末状等の固体状のいずれでもよい)や酵素を連続的に添加することにより、反応生成物の製造及び精製を連続して又は逐次的に行うこともできる。反応はバッチ式で行っても連続式で行ってもよい。
(4)酵素反応生成物の製造及び分離方法
また本発明は酵素反応生成物の製造及び分離方法を提供する。
当該方法は、酵素と基質を含む反応槽中の反応溶液に電圧を印加することによって、
−反応溶液中に酵素反応生成物を生成させ、
−当該生成した酵素反応生成物のうち正電荷及び負電荷を有する反応生成物をそれぞれ反応溶液に形成された電場の負極側及び正極側に移動させて、
−当該正電荷及び負電荷を有する反応生成物を、反応槽の負極側および正極側とそれぞれ限外濾過膜を介して連通した負の電場を有する分離槽(−極)および正の電場を有する分離槽(+)に移行させる
ことからなる。なお、上記分離槽(−極)および/または分離槽(+極)は、両方または一方が異なる分画分子量をもつ限外濾過膜で仕切られており、2以上の部屋を有するものであってもよい。
ここで酵素および基質の種類、反応溶液を構成する緩衝液の種類や条件、限外濾過膜の種類やその仕切り方、電圧の印加方法などは、いずれも上記(3)の欄で説明したものを同様に使用することができる。
なお、本発明の方法は、具体的には上記(3)で説明した本発明は酵素反応生成物の製造分離装置と原理的に同一または類似の装置を用いることによって行うことができる。
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げる。
実施例1: 酵素反応製造装置(装置A、図1)
反応槽2に、0.2M グリシン塩酸緩衝液(pH2.8)に0.6 mg/ml牛血清アルブミン(BSA, Albumin from Bovine Serum)(wako)とAspergillus saitoi由来のプロテアーゼ(SIGMA、EC 3.4.23.18)(比活性0.9 U/mg、最終濃度1.66 μg/ml)を添加して調製した反応液(60ml)、および電極槽3に0.2M グリシン塩酸緩衝液(pH2.8)を充填した。なお、反応槽と電極槽の間は透析膜5として逆浸透複合膜 NTR-7400(日東電工(株)社製 残留塩素許容限度100ppm以下)で仕切った。定電圧で電圧を印加させながら、反応温度37℃、反応槽内の撹拌速度500rpmの条件で酵素反応を行った(図1参照)。また対照実験(コントロール)として、電圧を印加しない状態〔電圧印加なし(0V)〕で、同様に反応温度37℃、反応槽内の撹拌速度500rpmの条件で酵素反応を行った。
反応0分、15分後、30分後および60分後に、反応槽2の反応溶液60mlから10μlを採取し、SDSゲル電気泳動によりBSAの分解度合いを測定した。
電圧印加なし(0V)の場合(0A)と、20V定電圧での電圧印加の場合(100mA)とで、得られたSDSゲル電気泳動の結果を、図3に示す。いずれも反応が進むにつれて、BSAが酵素と反応して生じた分解生成物67kDaのバンドが薄くなっていったが、反応60分後を比較した場合、0V(電圧印加なし)と20V(電圧印加)の場合のバンドでは、20V(電圧印加)の方が倍程度薄くなっており、電圧を印加することによって酵素反応が促進されていることが判明した。
実施例2: 酵素反応生成物の製造分離装置(装置B、図2)
反応槽2に、0.2M グリシン塩酸緩衝液(pH2.8)に20 mg/mlカゼイン(wako、分子量約30,000)とAspergillus saitoi由来のプロテアーゼ(SIGMA、EC 3.4.23.18)(比活性0.9 U/mg、分子量約45,000、最終濃度1.66 μg/ml)を添加して調製した反応液(60ml)、および電極槽3と分離槽13および14に0.2M グリシン塩酸緩衝液(pH2.8)を充填した。なお、反応槽2と分離槽13及び14との間は、それぞれ限外濾過膜15として限外濾過膜 P0200 (アドバンテック社 製、分画分子量20,000)または限外濾過膜P0500(アドバンテック社 製、分画分子量50,000)で仕切った。また、分離槽13と電極槽3並びに分離槽14と電極槽3の間は、いずれも透析膜5として逆浸透複合膜 NTR-7400(日東電工(株)社製 残留塩素許容限度100ppm以下)で仕切った。48V定電圧で電圧を印加させながら、反応温度37℃、反応槽2内の撹拌速度500rpmの条件で酵素反応を行った(図2参照)。反応60分後に、反応槽、分離槽13および分離槽14の溶液60mlから各々10μlを採取し、SDSゲル電気泳動によりカゼインの分解度合い、および泳動方向を測定した。
反応槽2と分離槽13および14の間の限外濾過膜15として限外濾過膜P0200 (分画分子量20,000)を使って分離槽13から採取した溶液中のカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を図4に、限外濾過膜P0500(分子量50,000) を使って分離槽13から採取した溶液中のカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を図5に示す。
分画分子量20,000の限外濾過膜を用いた場合は、分子量10,000前後のカゼイン分解生成物を分離槽13(−極側)に分別取得することができ(図4)、また分画分子量50,000の限外濾過膜を用いた場合は、分子量30,000以下のカゼイン分解生成物を分離槽に分別取得することができた(図5)。なお、図4中、「C」は、反応基質として使用したカゼイン(分子量約30,000)のSDSゲル電気泳動像である。
グリシン塩酸緩衝液のpH2.8では、等電点4.8のカゼインでは+の電荷を帯びているため、カゼイン分解生成物のほとんどは+の電荷を帯びており、−極側の分離槽(分離槽13)へほとんどの分解生成物が泳動し、+極側の分離槽(分離槽14)へは泳動していなかった。
実施例3: 酵素反応生成物の製造分離装置(装置B、図2)
反応槽2に、0.2M グリシン水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0)に20 mg/mlカゼイン(wako、分子量約30,000)とAspergillus oryzae由来のプロテアーゼA「アマノ」G(AMANO) (比活性0.9 U/mg、分子量約26,000〜45,000、最終濃度1.66 μg/ml)を添加して調製した反応液(60ml)、並びに電極槽3、分離槽13および14に0.2M グリシン水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0)を充填した。なお、反応槽2と分離槽13及び14の間は、限外濾過膜15として限外濾過膜P0200 (アドバンテック社 製、分画分子量20,000)で仕切った。また、分離槽13と電極槽3および分離槽14と電極槽3の間は、いずれも透析膜5として逆浸透複合膜 NTR-7400(日東電工(株)社製 残留塩素許容限度100ppm以下)で仕切った(図2参照)。
60V定電圧で電圧を印加させながら、反応温度37℃、反応槽2内の撹拌速度500rpmで酵素反応を行った。反応時間60分後、反応槽2、分離槽13および分離槽14中の反応溶液60mlから各々10 μlを採取し、SDSゲル電気泳動によりカゼインの分解度合い、泳動方向を確認した。
分離槽14から採取した溶液中のカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を図6に示す。
図6に示すように、上記分画分子量20,000の限外濾過膜を用いた場合、分子量8,000前後のカゼイン分解生成物が分離槽14(+極)に分別取得できた。グリシン水酸化ナトリウム緩衝液のpH9.0では、等電点4.8のカゼインは−の電荷を帯びている。このためカゼイン分解生成物のほとんどは−の電荷を帯びており、+極側の分離槽(分離槽14)へほとんどのカゼイン分解生成物が泳動し、−極側分離槽(分離槽13)へは泳動していなかった。
本発明の酵素反応制御装置(装置A)の概略構成を示す図である。 本発明の酵素反応生成物の製造分離装置(装置B)の概略構成を示す図である 実施例1において、酵素反応制御装置(装置A)を用いて、電圧印加あり(20V)または電圧印加なし(0V)の条件で、牛血清アルブミン(BSA)をプロテアーゼで酵素分解反応し(0分、15分、30分、60分)、SDSゲル電気泳動によりBSAの分解度合いを測定した結果を示す図である。縦軸は分子量(kDa)を、Mは分子量マーカーを示す(以下の図においても同様)。 実施例2において、酵素反応生成物の製造分離装置(装置B)を用いて、電圧印加(48V)、pH2.8の条件で、カゼイン(分子量30,000)をプロテアーゼA「アマノ」Gで酵素分解反応し、反応槽2と分離槽13および14の間の限外濾過膜15として限外濾過膜P0200 (分画分子量20,000)を使った場合の、分離槽14に移行したカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を示す。 実施例2において、酵素反応生成物の製造分離装置(装置B)を用いて、電圧印加(48V)の条件で、カゼイン(分子量30,000)をプロテアーゼA「アマノ」Gで酵素分解反応し、反応槽2と分離槽13および14の間の限外濾過膜15として限外濾過膜P0500(分子量50,000)を使った場合の、分離槽14に移行したカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を示す。 実施例3において、酵素反応生成物の製造分離装置(装置B)を用いて、電圧印加(60V)、pH9の条件で、カゼイン(分子量30,000)をプロテアーゼA「アマノ」Gで酵素分解反応し、反応槽2と分離槽13および14の間の限外濾過膜15として限外濾過膜P0200 (分画分子量20,000)を使った場合の、分離槽13に移行したカゼイン分解生成物のSDSゲル電気泳動の結果を示す。
符号の説明
A 酵素反応制御装置
B 酵素反応生成物の製造分離装置
2 反応槽
3 電極槽
4 緩衝液槽
5 透析膜
6 スターターバー
7 スターラー
8 電極
9 電源
10 温度計
11 恒温槽
12 ポンプ
13 分離槽(−極)
14 分離槽(+極)
15 限外濾過膜

Claims (15)

  1. 加水分解酵素およびその基質を含む反応溶液に電圧を印加することにより、当該加水分解酵素の酵素反応を制御することを特徴とする酵素反応制御方法。
  2. 酵素反応を促進する方法である、請求項1記載の酵素反応制御方法。
  3. 印加する電圧が0〜200Vである請求項1または2に記載する酵素反応制御方法。
  4. 加水分解酵素がプロテアーゼ、プロテオグリカナーゼ、ヌクレアーゼキチナーゼ、キトサナーゼ、セルラーゼ、リゾチーム、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、グルコシダーゼ、およびグルコサミニダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載する酵素反応制御方法。
  5. 加水分解酵素がプロテアーゼ活性を有する酵素である請求項1または2に記載の酵素反応制御方法。
  6. 加水分解酵素と基質を含む反応溶液を有する反応槽、および当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段を有する酵素反応制御装置。
  7. 加水分解酵素と基質を含む反応溶液を有する反応槽、および当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段として電極を備えた電極槽を有し、当該反応槽と電極槽が透析膜で仕切られていることを特徴とする請求項6記載の酵素反応制御装置。
  8. 酵素と基質を含む反応溶液を入れる反応槽、当該反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段、酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別し、さらに反応生成物を正電荷を有する反応生成物と負電荷を有する反応生成物とに分別する手段を有する、酵素反応生成物の製造分離装置。
  9. 酵素が加水分解酵素であり、基質が高分子有機化合物である、請求項8記載の酵素反応生成物の製造分離装置。
  10. 酵素と基質を含む反応溶液を入れる反応槽、当該反応槽を間において反応槽中の反応溶液に電圧を印加する手段として電極を備えた2つの電極槽(電極槽A,電極槽B)、及び上記反応槽と上記各電極槽(電極槽A,電極槽B)の間に酵素反応によって基質から生成した反応生成物を基質と分別して収容する分離槽(分離槽A、分離槽B)を有する酵素反応装置であって、
    反応槽と電極槽Aの間に位置する分離槽Aは、正電荷を有する反応生成物を分別して収容する分離槽(−)であり、反応槽と電極槽Bの間に位置する分離槽Bは、負電荷を有する反応生成物を分別して収容する分離槽(+)であり、
    反応槽と分離槽とは限外濾過膜で仕切られ、分離槽と電極槽(電極槽A,電極槽B)とは透析膜で仕切られていることを特徴とする請求項8または9に記載する酵素反応生成物の製造分離装置。
  11. 反応槽と各電極槽(電極槽A,電極槽B)の間に配置された各分離槽(分離槽A、分離槽B)の1または両方が、異なる分画分子量をもつ限外濾過膜で仕切られていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載する酵素反応生成物の製造分離装置。
  12. 酵素反応生成物の製造および分離方法であって、
    酵素と基質を含む反応槽中の反応溶液に電圧を印加することによって、
    反応溶液中に酵素反応生成物を生成させ、
    当該生成した酵素反応生成物のうち正電荷及び負電荷を有する反応生成物をそれぞれ反応溶液に形成された電場の負極側及び正極側に移動させて、
    当該正電荷及び負電荷を有する反応生成物を、反応槽の負極側および正極側とそれぞれ限外濾過膜を介して連通した分離槽(−)および分離槽(+)に移行させることを特徴とする方法。
  13. 上記分離槽(−)および/または分離槽(+)として、異なる分画分子量をもつ限外濾過膜で仕切られている分離槽を用いる、請求項11に記載する酵素反応生成物の製造および分離方法。
  14. 加水分解酵素がプロテアーゼ、プロテオグリカナーゼ、ヌクレアーゼキチナーゼ、キトサナーゼ、セルラーゼ、リゾチーム、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、グルコシダーゼ、およびグルコサミニダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項12または13に記載する酵素反応生成物の製造および分離方法。
  15. 加水分解酵素がプロテアーゼ活性を有する酵素である請求項12または13に記載する酵素分解生成物の製造および分離方法。
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