JP2007076939A - 電極付き耐火物構造体及びガラス製造装置 - Google Patents

電極付き耐火物構造体及びガラス製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電極と導電性被膜との接続部分で異常過熱が生じず、しかもセラミック基材の耐久性を確保できる電極付き耐火物構造体を提供する。
【解決手段】溶融ガラスの導管を構成する構造体10において、緻密質耐火物基材を用いた構造体本体部12の導管の内壁面は導電性被膜14で被覆され、さらに構造体本体部12の端面まで延長被覆されている。構造体本体部12の端部には、電源28と接続したつば状の電極板16が設けられ、この電極板16には、導電性被膜14と電気的に接続する接続部分に、溶融ガラスにより加温されて生じる熱応力を緩和する熱応力緩和領域が設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶融ガラスの導管や貯留槽等の、溶融ガラスと内壁面が接触する構造体であって、溶融ガラスの高温維持のために設けられる加熱用電極及び加熱用導電性被膜が設けられた電極付き耐火物構造体及びガラス製造装置に関する。
溶融ガラスを用いてガラスを製造するガラス製造装置において、酸化物若しくは非酸化物の工業用耐火性セラミックからなる耐火物基材により導管や貯留槽を構成することが行われており、導管や貯留槽の内壁面に白金又は白金合金を被覆して導管や貯留槽の耐熱性及び耐腐蝕性を向上することができる。
下記特許文献1では、耐火性セラミック基材の上に貴金属又は金属合金の被覆膜を沈着し、この被覆膜を50〜350ミクロンの厚さとしたセラミック製品が開示されている。このセラミック製品は、高温及び腐蝕雰囲気で好適に使用できることから、上記導管や貯留槽に好適に用いることができる。
一方、上記ガラス製造装置内の溶融ガラスの温度を調整するためには、導管や貯留槽に加熱装置を設けることが必要である。この加熱を効率よく行うために、下記特許文献2では、白金又は白金合金製の中空管を用い、この中空管に通電用の電極を設け、白金又は白金合金製の中空管を通電加熱する溶融ガラスの加熱装置が開示されている。
特開平5−339082号公報 特開平11−349334号公報
ところで、特許文献2の中空管を、特許文献1に記載のような耐火性セラミック基材の表面を被覆膜で覆ったセラミック製品で構成し、通電用の電極を設け、被覆膜と電気的に接続することで、特許文献2のような通電加熱可能な加熱装置を構成することができる。
しかし、耐火性セラミック基材を用いて、通電加熱可能な加熱装置を構成した場合、溶融ガラスの熱により通電加熱用の電極が高温となって熱膨張する可能性がある。この熱膨張によって、通電用の電極と接続される被覆膜の接続部分が変形し、耐火性セラミック基材から捲れ上がって剥離し、異常加熱を生じたり、最悪の場合、接続部分で断線し、非導通となるといった問題がある。
この熱膨張による接続部分の変形等を抑制するには、接続部分における温度を極力低下させることが好ましいが、この場合、溶融ガラスと接触する内壁面の被覆膜と接続部分における被覆膜との間で大きな温度差(温度勾配)を設けることになる。しかし、この大きな温度勾配は、セラミック基材の熱耐久性にとって好ましくなく、加熱装置自体の耐久性劣化が問題となる。さらに、白金等の溶射による被覆膜の厚さは薄く、電極の厚さは厚くなるため、これらの接続部分についてもより厳しい耐久性が要求される。このため、電極と被覆膜の接続部分における温度を低下させることは難しい。
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、電極と被覆膜の接続部分が溶融ガラスの熱により高温となる場合であっても、電極と導電性被膜(被覆膜)との接続部分で異常過熱が生じず、特にセラミック基材の耐久性を確保できる電極付き耐火物構造体及びこの構造体を用いたガラス製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、溶融ガラスの貯留槽又は導管を構成する構造体であって、前記構造体は、緻密質耐火物基材を用いて溶融ガラスの貯留槽又は導管が構成された構造体本体部と、この構造体本体部の前記貯留槽又は導管の内壁面を前記貯留槽又は導管の端部まで被覆し、さらに、前記貯留槽又は導管の端部において、前記貯留槽又は導管の内壁面から端面の少なくとも一部を延長被覆した導電性被膜と、前記導電性被膜と電気的に接続されたつば状の電極板と、を有し、前記電極板の一部には、溶融ガラスにより加熱されて生じる熱応力を緩和する熱応力緩和領域が、設けられていることを特徴とする電極付き耐火物構造体を提供する。
前記貯留槽又は導管における端面とは、前記貯留槽又は導管の内壁面から外側向けて延びる端部を形成する面をいう。
前記電極板は、例えば前記構造体本体部に、又は前記構造体本体部を前記貯留槽又は導管の長手方向に仮想延長した部分に設けられる。
その際、前記電極板は、前記端面から前記構造体本体部の仮想延長方向に離間した位置に、前記端面に対して段差を成すように設けられたリング形状の平面状導体部と、このリング形状の内周部と前記端面上の前記導電性被膜とを傾斜面を成して接続する傾斜部とを有し、この傾斜部が前記熱応力緩和領域となっていることが好ましい。
あるいは、前記電極板は、板状のリング形状を成し、このリング形状の内周に沿って前記導電性被膜と接続されており、さらに、この接続位置を囲むように前記電極板に穴が間欠的にあいた部分を有し、この部分が前記熱応力緩和領域となっていることも好ましい。
また、前記導電性被膜は、前記端面の途中又は外壁面まで延びて前記緻密質耐火物基材を被覆しており、前記電極板は板状のリング形状を成し、このリング形状の内周に沿って前記導電性被膜と接続されており、前記電極板には、板厚が前記電極板の他の部分より薄くなった部分が、前記導電性被膜との接続位置を囲むように設けられ、この部分が前記熱応力緩和領域となっていることも好ましい。
なお、前記導電性被膜及び前記電極板は、白金又は白金合金により構成されていることが好ましい。さらに、前記電極付き耐火物構造体には、前記内壁面の導電性被膜を通電するために前記電極板に電力を供給する給電手段を有することが好ましい。
また、本発明は、前記電極付き耐火物構造体を、溶融ガラスの導管構造体として用いたガラス製造装置を提供する。
本発明では、電極板の導電性被膜との接続部分に、溶融ガラスにより加熱されて生じる熱応力を緩和する熱応力緩和領域を有するので、電極と導電性被膜の接続部分が溶融ガラスの熱により高温となる場合であっても、接続部分近傍の導電性被膜が剥離したり、熱応力により接続部分が変形して、異常過熱を生じたりすることはない。又、特に、溶融ガラスを貯留し、又通過させる処理を繰り返し行うことで温度の上下を繰り返した場合であっても、同様に接続部分近傍の導電性被膜が剥離したり、熱応力により接続部分が変形して、異常過熱を生じたりすることはない。
以下、添付の図面に示す実施形態に基づいて、本発明の電極付き耐火物構造体及びガラス製造装置を詳細に説明する。
図1(a),(b)は、本発明の電極付き耐火物構造体の一実施形態の概略構成図である。
図1(a)は、本発明の電極付き耐火物構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)中のa−a’線に沿って切断したときの断面図である。また、図2は、図1(a),(b)に示す電極付き耐火物構造体を用いたガラス製造装置である加熱装置の構成図である。
図2に示すように、電極付き耐火物構造体は、加熱装置の両端部付近(図2中の上側及び下側)に設けられ、電極付き耐火物構造体の電極板間に電圧を与えて溶融ガラスを加熱する装置である。
耐火物構造体10は、溶融ガラスの貯留槽又は導管として機能する構造体である。耐火物構造体10は、図1(a),(b)に示すように、緻密質耐火物基材で構成された構造体本体部12と、構造体本体部12の貯留槽又は導管の内壁面を被覆した導電性被膜14と、つば状の電極板16と、導電性被膜14を通電するために電極板16に給電する電源28(図2参照)と、を有して構成される。
構造体本体部12は、緻密質耐火物基材を用いて溶融ガラスの貯留槽又は導管を構成している。貯留槽又は導管の内壁面は円形状を成している。
この貯留槽又は導管の端部は、構造体本体部12の端部であり、貯留槽又は導管の内壁面から外側に延びる端面を備えた構成となっている。緻密質耐火物基材とは、例えば所定の形状を有する一体物、あるいはその形状をいくつかに分割した形状を成した耐火性緻密質レンガであり、この耐火性緻密質レンガが単数で又は複数個組み合わされて構造体本体部12が構成されている。耐火性緻密質レンガは、具体的には気孔率が20%以下であり、電鋳耐火物レンガが好適に用いられる。電鋳耐火物レンガは、例えば、アルミナ系電鋳耐火物レンガ、ジルコニア系電鋳耐火物レンガ、アルミナ−ジルコニア−シリカ系電鋳耐火物レンガ(AZS;Al23−ZrO2−SiO2)が例示され、より具体的には、マースナイト(MB)、ZB−X950、ジルコナイト(ZB)(いずれも旭硝子セラミックス(株)製)等が例示される。
構造体本体部12は耐火性緻密質レンガにより構成されているが、この構造体本体部12の外側には、耐火性レンガによる断熱構造体20が設けられている。耐火性レンガは、気孔率が20%超の耐火物レンガであることが断熱の点から好ましい。
構造体本体部12の溶融ガラスの貯留槽又は導管の内壁面には、導電性被膜14が被覆されている。この導電性被膜14は、図1(b)に示すように、端部において、内壁面から外側に向けて、耐火性緻密質レンガの端面に沿って延長して延びており、この延長した導電性被膜は、貯留槽又は導管の開口部の周りを囲むように設けられている。
導電性被膜14は、白金又は白金合金の被膜であり、その厚さは0.2〜0.8mmであり、好ましくは0.2〜0.6mmである。本発明における導電性被膜は、白金又は白金合金の他に、イリジウムあるいはロジウム合金の被膜であってもよい。白金合金における白金以外の金属は、ロジウムやイリジウムが例示される。
導電性被膜14は、例えば、原材料を溶かし液滴状とし、その液滴を連続して内壁面及び端面に堆積させて被膜を作る溶射法によって作製される。溶射法により作製された被膜には冷却の際高い残留応力が生じるが、高温の溶融ガラスと接触することで残留応力は徐々に開放され、さらに残留応力が開放され軟化した導電性被膜14は容易に変形して耐火性緻密質レンガに密着し続ける。
このように、導電性被膜14は、溶射法により作製されかつ構造体本体部12に密着するためには、気孔率が20%以下で表面が滑らかな耐火性緻密質レンガを構造体本体部12に用いることが好ましい。該気孔率は5%以下であることがより好ましい。
電極板16は導電性被膜14を通電するための電極であり、平面状導体部18と傾斜部19とを有して構成される。
平面状導体部18は、リング形状を成し、図1(b)に示すように、構造体本体部12を前記端面から仮想延長した位置(図1(b)では構造体本体部12の上側)に設けられ、すなわち構造体本体部12の端部の平面状の端面に対して離間した位置に平行に設けられており、導電性被膜14の設けられる端面に対して段差を成している。
又、傾斜部19は、平面状導体部18のリング形状の内周部から、平面状導体部18との間で段差を成している端面に向けて傾斜を成して延びるように構成されている。電極板16は全体として円形形状を成しており、この円形形状の外周縁には、外周縁を囲むように水冷管22が設けられ、溶融ガラスの熱により高温となった平面状導体部18を冷却する。
電極板16は、例えば白金又は白金合金によって円形のつば状に構成されており、導電性被膜14と同じ金属を用いることが好ましい。電極板16の形状は、円形状の他、4角形、5角形等の多角形形状や楕円形状であってもよい。電極板16の板厚は、通電による発熱の防止とコスト抑制の点から、1.5〜5.0mmであることが好ましい。
平面状導体部18の外周縁近傍の対向する2箇所には電力を供給する給電点Aが設けられ、図2に示されるように電力供給線24が接続されて電極板16の円形形状の半径方向に電流が流れるように供給される。
傾斜部19は、構造体本体部12の端面から離間した平面状導体部18を支持するとともに、傾斜部19の傾斜面の内周側先端部で導電性被膜14と接続されている。平面状導体部18にて供給された電力を導電性被膜14に供給する接続機能を有する。傾斜部19は、後述する電力の給電点Aと導電性被膜14の接続位置との間に設けられている。傾斜部19と導電性被膜14とは、溶接や貴金属ろう材を用いたろう付けといった方法で接続されている。
耐火物構造体10に溶融ガラスを流した場合又は貯留させた場合、導電性被膜14は溶融ガラスにより高温に加熱されて膨張しようとする一方、電極板16は、ある程度温度が低いため、膨張の程度に差が生じる。これらの膨張に伴って生じる力が互いに反発しあうことにより熱応力が発生する。つまり、本発明における熱応力とは、部材(導電性被膜)と部材(電極板)との温度差によって生じる温度差応力である。
傾斜部19は、この熱応力を吸収することで熱応力発生に伴う導電性被膜14の剥がれ等を防止するためのものである。
すなわち、傾斜部19は、平面状導体部18と端面に設けられた導電性被膜14との間の段差を埋めるように傾斜面を成しており、熱応力によって生じる変形を傾斜面の面外方向に変えることで、熱応力を緩和することができる。これにより、導電性被膜14と電極板16との間の熱応力、熱ひずみを低下することができる。すなわち、上記傾斜部19は、本発明における熱応力緩和領域として機能する。
この熱応力緩和領域である傾斜部19は、電極板16の一部に設けられていればよく、位置は特に限定されない。しかし、より効率的に応力を緩和できる点、及び導電性被膜14と電極板16との板厚の差が大きいことで圧力がより大きく変形に結びつきやすい点を考慮すれば、高温となる位置に熱応力緩和領域を設けることが好ましい。具体的には、導電性被膜14と傾斜部19とを接合することが好ましい。
電極板16の互いに対向する反対の位置には給電点Aが設けられており、給電点Aにおいて図2に示すように電力供給線24と接続されている。電力給電線24は、電源28と接続されており、電極板16を通じて導電性被膜14を通電するようになっている。電源28は、交流電源のほか、直流電源であってもよい。導電性被膜14を通電することによって、導電性被膜14を発熱させて溶融ガラスを加温させる限りにおいて、直流、交流のいずれであってもよい。また、電力供給線24は、線状の導線のみならず、長尺状の導体板であってもよい。
このような電極付き耐火物構造体は、図2に示すように、加熱導管構造体の両端部付近に設けられ、電極板16が設けられている導管端部は、緻密質耐火物基材からなる閉塞部材26によって閉じられている。溶融ガラスは、分岐管30から導入され、加熱導管にて温度調整されたのち、分岐管32から後工程に導出される。
上記本実施形態では、傾斜部19を熱応力緩和領域として機能させたが、本発明においては、この他に、図3(a),(b)や図4(a),(b)に示すように、熱応力緩和領域を設けてもよい。
図3(a)は、本発明の他の実施形態である耐火物構造体を、図1(b)と同様の方向に沿って切断したときの断面図であり、図3(b)は、この耐火性構造体に用いられる電極板の平面図である。
図3(a),(b)に示す形態の耐火物構造体50は、図1(a),(b)に示す耐火物構造体10と同様に、溶融ガラスの貯留槽又は導管として機能する構造体であり、緻密質耐火物基材で構成された構造体本体部52と、構造体本体部52の内壁面を被覆した導電性被膜54と、リング形状を成したつば状の電極板56と、導電性被膜54を通電するために電極板56に電力を供給する図示されない電源と、を有して構成される。電極板56の外周には、水冷管62が設けられ、電極板56の冷却に用いられている。
構造体本体部52、導電性被膜54及び電極板56に給電する電源は、構造体本体部12、導電性被膜14及び電源28と同じ構成であるため、その説明は省略する。
構造体本体部52の端面は平面を成しており、電極板56は、構造体本体部52の端面上に設けられている。
構造体本体部52の端面には、構造体本体部52の円形状の開口部の周を囲むようにこの周に沿って導電性被膜54が設けられている。もちろん導電性被膜54は、導管を成す内壁面に設けられており、内壁面の導電性被膜54が構造体本体部52の端面まで延長して設けられている。
電極板56は、導電性被膜54と接続する内周側に中心穴59を有し、板状のリング形状を成している。さらに、電極板56には、部分的に貫通穴60があけられた部分58が設けられている。電極板56と導電性被膜54との接続は、中心穴59の周に沿って行われ、この導電性被膜54との接続位置を囲むようにこの周に沿って間欠的に貫通穴60が設けられた部分58を有する。この部分58は、導電性被膜54からの熱伝導により高温となった電極板56の熱膨張に起因する熱応力による変形を緩和する。すなわち、部分58は、熱応力を緩和する熱応力緩和領域となっている。
なお、貫通穴60の形状は特に限定されず、円形、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。熱膨張を効率よく吸収できるという点で、貫通穴60の形状は、外に向かって広がった扇形形状であることが好ましい。また、この貫通穴60は、熱膨張を効率よく吸収できる点から4〜8箇所、等間隔で設けることが好ましい。
図4(a),(b)は、本発明の他の実施形態である耐火物構造体を、図1(b)と同様の方向に沿って切断したときの断面図である。
図4(a)に示す形態の耐火物構造体70は、図1(a),(b)に示す耐火物構造体10と同様に、溶融ガラスの貯留槽又は導管として機能する構造体であり、緻密質耐火物基材で構成された構造体本体部72と、構造体本体部72の内壁面を被覆した導電性被膜74と、つば状の電極板76と、導電性被膜74を通電するために電極板76に電力を供給する図示されない電源と、を有して構成される。また、構造体本体部72の周りには、図1(a),(b)に示す断熱構造体20と同様の断熱構造体80が設けられている。
構造体本体部72、導電性被膜74及び電極板76に電力を供給する電源は、構造体本体部12、導電性被膜14及び電源28と同じ構成であるため、その説明は省略する。
導電性被膜74は、導管を成す内壁面を被覆するとともに、構造体本体部72の端面からさらに構造体本体部72の、断熱構造体80と接する外壁面に延びて緻密質耐火物基材を被覆している。断熱構造体80の端部は、構造体本体部72の端部に対して段差を成しており、導電性被膜74は、この段差を成している構造体本体部72の外壁面の位置まで延びている。
電極板76は、板状のリング形状を成し、このリング形状の内周部と外壁面に位置する導電性被膜74とが接続されている。電極板76の内周部側には、板厚が外周部側に比べて薄い部分78を有し、この部分78が導電性被膜74の接続位置を囲むように設けられ、熱応力緩和領域となっている。すなわち、厚さの薄い部分78を設けることにより、導電性被膜74からの熱伝導により高温となって生じる熱膨張に起因する熱応力を、面外方向に変形させて緩和することができる。
また、図4(b)に示す形態の耐火物構造体90は、図1(a),(b)に示す耐火物構造体10と同様に、溶融ガラスの貯留槽又は導管として機能する構造体であり、緻密質耐火物基材で構成された構造体本体部92と、構造体本体部92の溶融ガラスと接触する内壁面を被覆した導電性被膜94と、つば状の電極板96と、導電性被膜94を通電するために電極板96に電力を供給する図示されない電源と、を有して構成される。また、構造体本体部92の周りには、図1(a),(b)に示す断熱構造体20と同様の断熱構造体100が設けられている。
構造体本体部92、導電性被膜94及び電極板96に電力を供給する電源は、構造体本体部12、導電性被膜14及び電源28と同じ構成であるため、その説明は省略する。
導電性被膜94は、構造体本体部92の内壁面を被覆するとともに、構造体本体部92の端面に延びて緻密質耐火物基材を被覆している。断熱構造体100の端部は、構造体本体部92の端部の端面に対して段差を成している。また、構造体本体部92の端面は段差を成しており、導電性被膜94は内壁面から、構造体本体部92の端面の段差の部分まで(端面の途中まで)延びている。
電極板96は板状のリング形状を成し、このリング形状の内周と外壁面に位置する導電性被膜94とが接続している。電極板96には板厚が薄くなった部分を有し、この薄くなった部分98は、導電性被膜94の接続位置を囲むように設けられ、この段差が構造体本体部92の端面と断熱構造体100の端面との間の段差に対応するようになっている。また、この板厚の薄い部分98が熱応力緩和領域となっている。すなわち、板厚の薄い部分98を設けることにより、導電性被膜94からの熱伝導により高温となって生じる熱膨張に起因する熱応力を、面外方向に変形させて緩和することができる。
このように、本発明における電極付き耐火物構造体は、熱膨張によって生じる熱応力を、導電性被膜との接続位置の電極側で緩和することができるので、電極板と導電性被膜との接続部分に余分な応力が作用して歪みが生じることはなく、導電性被膜が剥離しにくい。
特に、電極付き耐火物構造体に用いられる緻密質耐火物基材において、温度勾配によって耐久性を低下させないために、緻密質耐火物基材の内壁面と外壁面との間の温度勾配を大きくすることはできない。このため、緻密質耐火物基材を用いる本発明の電極付き耐火物構造体では、内壁面の導電性被膜と接続部分との間の温度勾配を小さく抑え、接続部分から外側で大きな温度勾配を与えることが望まれる。例えば、溶融ガラスによって内壁面の導電性被膜が1200〜1400℃程度の高温となる場合、電極板と導電性被膜との接続部分は1000℃程度とし、その外側において300度程度まで温度を低下させることが好ましい。
一方、導電性被膜に替えて、板厚が厚く強度の高い板部材で構成された板状導体管の周りに耐熱性レンガを配し、かつ耐熱性レンガ上で電極となる電極板と板状導体管とを熱応力緩和領域を介することなく直接接続する場合、この接続部分で温度が低下し、1000℃程度の温度低下が実現する。しかし、この大きな温度低下により、温度勾配の生じた部分では大きな応力が生じ、板状導管と電極板との接続部分では、大きな変形が生じ、異常過熱を生じやすい。膜厚の薄い導電性被膜と板厚が厚い電極板との間では、その厚さの差から、特に板剥がれといった問題が発生しやすい。本発明では、この変形を抑制して、電極板と導電性被膜の接続部分における一体性を確保することができる。
本発明の電極付き耐火物構造体の大きさは、溶融ガラスを効果的に加熱できる点から外径120〜600mm×内径60〜400mm×高さ200〜1200mmであることが好ましい。
本発明の電極付き耐火物構造体は、溶融ガラスの貯留槽又は導管を構成する。よって、貯留槽又は導管を有するガラス製造装置に好適に用いることができる。特に、溶融ガラスを長期間流す必要性が生じる可能性がある溶融ガラスの減圧脱泡装置に好適に用いることができる。
本発明の電極付き耐火物構造体に使用される溶融ガラスの種類は特に限定されない。しかし、溶融ガラスは、高温での安定性に優れ、かつ粘性が高い無アルカリガラスであることが、貴金属溶射被膜の微細な気孔が溶融ガラスの特質に影響を及ぼしにくい点から好ましい。
〔実施例〕
本発明の、熱応力緩和領域を電極板に設けた電極付き耐火物構造体の効果を確認するため、管路を成す構造体I,II,IIIを作製して以下の試験を行う。
構造体I,II,IIIは、いずれも、同一形状(外径180mm×内径80mm×高さ320mm)の緻密質レンガ(旭硝子セラミックス社製高ジルコニア質レンガ、商品名X−950)を用いて円筒状の管路を作り、この管路の内壁面及び管路の内壁面から続く両端面のΦ110mmまでの周上の部分に、厚み0.5mmの白金−10重量%ロジウム質の溶射被膜(導電性被膜)を連続的に形成する。
作製した3つの構造体の上下面に施した溶射被膜の端部に、3種の異なる形状を有する白金−10重量%ロジウム質の金属製円板(電極板)を同材質の溶接材を用いて溶接する。
図5(a)は、構造体Iに設ける電極板の断面斜視図であり、図5(b),(c)は、構造体II,IIIに設ける電極板の斜視図である。
構造体Iには図5(a)に示す電極板を設け、図1(a),(b)に示すような構成とする。構造体Iは本発明の電極付き耐火物構造体に相当し、電極板は、図5(a)に示すように、溶射被膜との接合部(Φ110mmの位置)からΦ140mmの部分までの板厚を0.8mmとし、高さ方向に25mm立ち上げて傾斜部19を設け、この傾斜部19の外周に、厚み2.0mmのドーナツ型の板材により平面状導体部18を構成したものである。
又、構造体IIには、図5(b)に示す電極板を設け、図3(a)に示すような構成とする。構造体IIは、本発明の電極付き耐火物構造体に相当し、溶射被膜は、構造体本体部の端部において、断続的に同心円状の長穴である貫通穴60を配した厚み2.0mmのドーナツ型の平面的な板材(電極板)に接合されている。すなわち、溶射被膜と電極板との接合位置は、ドーナツ型をした電極板の、Φ=110mmの内周形状を成した円弧部分である。図5(b)に示すように、電極板の貫通穴60は、構造体の中心から角度30度の広がり幅を持つ2本の直線と、内側半径60mmの円弧及び外側半径75mmの円弧とで形状が規定される扇形形状を成している。この扇形形状の貫通穴60は、角度30度の一定間隔で同心円状に電極板上に6つ設けられる。
一方、構造体IIIには、貫通穴60を施した電極板と異なり、図5(c)に示すように、貫通穴60を施していないドーナツ型の電極板を設け、図3(a)に示すような構成とする。すなわち、構造体IIIは、本発明の電極付き耐火物構造体に相当しない。電極板と溶射被膜の接合位置は、構造体IIと同様にドーナツ型をした電極板の、Φ=110mmの内周形状を成した円弧部分である。
これらの構造体I〜IIIの電極板に導線を繋ぎ、構造体の周囲を断熱材で被った後、断熱材に設けた観察用孔から溶射被膜と電極板との接続部分を観察しながら、直流電圧を印加することにより加熱・冷却試験を行う。加熱・冷却試験では、1350℃まで毎時10℃で昇温し、5時間温度保持した後に1350℃と1100℃の間で毎時25℃の変化率で加熱・冷却を10回繰り返す。
上記加熱・冷却試験において、本発明の構造体に相当しない構造体IIIでは、始めの1350℃保持中に電極板を接合した近傍で溶射被膜の剥離が生じ、加熱・冷却の繰返しによって該剥離が拡大する。さらに、3回目の冷却中に溶射被膜内に亀裂が生じ、その近傍で電流集中による局部的温度上昇(異常過熱)が発生したため試験を終了する。
一方、本発明の構造体に相当する構造体IIでは、7回目の加熱中までは溶射被膜に顕著な変化は認められず、その後の冷却中に電極板を接合した近傍で溶射被膜の剥離が観察される。しかし、10回の加熱・冷却が終了するまで剥離の著しい進展や異常過熱は生じない。又、緻密質レンガの欠けや割れ等も見られない。
さらに、本発明の耐火物構造体に相当する構造体Iでは、全10回の加熱・冷却試験が終了するまで溶射被膜の剥離や亀裂は認められない。又、異常過熱も生じない。緻密質レンガの欠けや割れ等も見られない。
このように、熱応力緩和領域を電極板に設けた電極付き構造体は、接続部分近傍の被膜の剥離がしにくいことが確認される。
以上、本発明の電極付き耐火物構造体及びガラス製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
(a)及び(b)は、本発明の電極付き耐火物構造体の一実施形態の概略構成図である。 図1(a)及び(b)に示す電極付き耐火物構造体を用いた加熱導管構造体の構成図である。 (a)及び(b)は、本発明の電極付き耐火物構造体の他の実施形態の概略構成図である。 (a)及び(b)は、本発明の電極付き耐火物構造体の他の実施形態の概略構成図である。 (a)及び(b)は、実施例の構造体に設ける電極板の断面斜視図であり、(c)は、他の構造体に設ける電極板の斜視図である。
符号の説明
10,50,70,90 耐火物構造体
12,52,72,92 構造体本体部
14,54,74,94 導電性被膜
16,56,76,96 電極板
18 平面状導体部
19 傾斜部
20,80,100 断熱構造体
22,62 水冷管
24 電力供給船
26 閉塞部材
28 電源
30 分岐管
58,78,98 部分
59 中心貫通穴
60 貫通穴

Claims (7)

  1. 溶融ガラスの貯留槽又は導管を構成する構造体であって、前記構造体は、
    緻密質耐火物基材を用いて溶融ガラスの貯留槽又は導管が構成された構造体本体部と、
    この構造体本体部の前記貯留槽又は導管の内壁面を前記貯留槽又は導管の端部まで被覆し、さらに、前記貯留槽又は導管の端部において、前記貯留槽又は導管の内壁面から端面の少なくとも一部を延長被覆した導電性被膜と、
    前記導電性被膜と電気的に接続されたつば状の電極板と、を有し、
    前記電極板の一部には、溶融ガラスにより加熱されて生じる熱応力を緩和する熱応力緩和領域が、設けられていることを特徴とする電極付き耐火物構造体。
  2. 前記電極板は、前記端面から前記構造体本体部の仮想延長方向に離間した位置に、前記端面に対して段差を成すように設けられたリング形状の平面状導体部と、このリング形状の内周部と前記端面上の前記導電性被膜とを傾斜面を成して接続する傾斜部とを有し、この傾斜部が前記熱応力緩和領域となっている請求項1に記載の電極付き耐火物構造体。
  3. 前記電極板は、板状のリング形状を成し、このリング形状の内周に沿って前記導電性被膜と接続されており、さらに、この接続位置を囲むように前記電極板に穴が間欠的にあいた部分を有し、この部分が前記熱応力緩和領域となっている請求項1に記載の電極付き耐火物構造体。
  4. 前記導電性被膜は、前記端面の途中又は外壁面まで延びて前記緻密質耐火物基材を被覆しており、
    前記電極板は板状のリング形状を成し、このリング形状の内周に沿って前記導電性被膜と接続されており、
    前記電極板には、板厚さが前記電極板の他の部分より薄くなった部分が、前記導電性被膜との接続位置を囲むように設けられ、この部分が前記熱応力緩和領域となっている請求項1に記載の電極付き耐火物構造体。
  5. 前記導電性被膜及び前記電極板は、白金又は白金合金により構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極付き耐火物構造体。
  6. さらに、前記内壁面の導電性被膜を通電するために前記電極板に電力を供給する給電手段を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極付き耐火物構造体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極付き耐火物構造体を、溶融ガラスの導管構造体として用いたガラス製造装置。
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