近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に線幅が0.5μm以下の光リソグラフィの場合、許容される焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。そこで、半導体ウエハの表面を平坦化することが必要となるが、この平坦化法の1手段としてポリッシング装置により研磨することが行われている。
従来、この種のポリッシング装置は、ターンテーブルとトップリングとを有し、トップリングが一定の圧力をターンテーブルに与え、ターンテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて、砥液を供給しつつ該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面に研磨している。
上述したポリッシング装置において、研磨中のポリッシング対象物と研磨布との間の相対的な押圧力がポリッシング対象物の全面に亘って均一でないと、各部分の押圧力に応じて研磨不足や過研磨が生じてしまう。よって、従来のポリッシング装置においては、上記の押圧力の不均一を避けるための手段として、
(i) トップリングの半導体ウエハ保持面に、弾性を有する例えばポリウレタン等の弾性マットを貼ること、
(ii) ポリッシング対象物の保持部、即ちトップリングを、研磨布の表面に対して傾動可能にすること、
(iii) 研磨布の研磨部の周囲の部分を、トップリング及びポリッシング対象物とは独立して押圧することにより、研磨布の研磨領域とその周囲の段差を防ぐこと、
等が行われている。
図12は従来のポリッシング装置の一例の主要部を示す図である。ポリッシング装置は、上面に研磨布42を貼った回転するターンテーブル41と、回転および押圧可能にポリッシング対象物である半導体ウエハ43を保持するトップリング45と、研磨布42に砥液Qを供給する砥液供給ノズル48を備えている。トップリング45はトップリングシャフト49に連結されており、またトップリング45はその下面にポリウレタン等の弾性マット47を備えており、弾性マット47に接触させて半導体ウエハ43を保持する。さらにトップリング45は、研磨中に半導体ウエハ43がトップリング45の下面から外れないようにするため、円筒状のガイドリング46Aを外周縁部に備えている。ここで、ガイドリング46Aはトップリング45に対して固定されており、その下端面はトップリング45の保持面から突出するように形成され、ポリッシング対象物である半導体ウエハ43が保持面内に保持され、研磨中に研磨布42との摩擦力によってトップリング外へ飛び出さないようになっている。
半導体ウエハ43をトップリング45の下面の弾性マット47の下部に保持し、ターンテーブル41上の研磨布42に半導体ウエハ43をトップリング45によって押圧するとともに、ターンテーブル41およびトップリング45を回転させて研磨布42と半導体ウエハ43を相対運動させて研磨する。このとき、砥液供給ノズル48から研磨布42上に砥液Qを供給する。砥液は、例えばアルカリ溶液に微粒子からなる砥粒を懸濁したものを用い、アルカリによる化学的研磨作用と、砥粒による機械的研磨作用との複合作用によって半導体ウエハを研磨する。
図13は、図12に示すポリッシング装置による研磨時の半導体ウエハと研磨布と弾性マットの状態を示す拡大断面図である。図13に示すように、ポリッシング対象物のみが研磨布を押圧する構造になっている場合には、ポリッシング対象物である半導体ウエハ43の周縁は、研磨布42との接触/非接触の境界であると同時に、弾性マット47との接触/非接触との境界になっている。このため、これらの境界であるポリッシング対象物の周縁において、ポリッシング対象物に加わる研磨圧力が不均一になり、ポリッシング対象物の周縁のみが多く研磨され、いわゆる「縁だれ」を起こしてしまうという欠点があった。
上述した半導体ウエハの縁だれを防止するため、本件出願人は、先に特願平9−105252号にて半導体ウエハの外周側に位置する研磨布を押圧する構造を有したポリッシング装置を提案している。
図14は、特願平9−105252号にて提案したポリッシング装置を示す図である。図14において、符号51はトップリングであり、トップリング51は、トップリング本体51Aと、トップリング本体51Aの外周部にボルト181によって着脱可能に固定されたリテーナリング51Bとからなり、半導体ウエハ54を収容する凹部51aはトップリング本体51Aの下面とリテーナリング51Bによって形成されている。そして、トップリング本体51Aの下面によって半導体ウエハ54の上面を保持し、リテーナリング51Bによって半導体ウエハ54の外周部を保持するようになっている。前記トップリング本体51Aおよびリテーナリング51Bの周囲には押圧リング53が上下動可能に設けられている。また押圧リング53とトップリング51との間には、トップリング51と押圧リングとが直接接触しないようにするためおよびトップリング51の過度な傾動を抑制するための略U字状の断面を有する板バネ67が介装されている。
前記トップリング51の下面には弾性マット52が貼着されている。またトップリング51の下方には、上面に研磨布56を貼ったターンテーブル55が設置されている。またトップリング本体51Aには凹球面182aを有した取付フランジ182が固定されている。トップリング51の上方にはトップリングシャフト58が配置されている。トップリングシャフト58の下端には、凹球面184aを有した駆動軸フランジ184が固定されている。そして、前記両凹球面182a,184a間には、球ベアリング57が介装されている。また、トップリング本体51Aと取付フランジ182との間には空間183が形成され、この空間183に真空、加圧空気、水等の液体が供給できるようになっている。
前記トップリングシャフト58はトップリングヘッド59に固定されたトップリング用エアシリンダ(図示せず)に連結されており、このトップリング用エアシリンダによってトップリングシャフト58は上下動し、トップリング51の下端面に保持された半導体ウエハ54をターンテーブル55上の研磨布56に押圧するようになっている。
また、トップリングシャフト58はトップリング用モータ(図示せず)に連結されており、このトップリング用モータを回転駆動することによってトップリング51が回転する。トップリング51の周囲に設けられた押圧リング53の上端部は押圧リング用エアシリンダ72に連結されている。押圧リング用エアシリンダ72はトップリングヘッド59に固定されている。押圧リング用エアシリンダ72は円周上に複数個(例えば3個)配設されている。トップリング51と押圧リング53との間に、トップリング51の回転を押圧リング53に伝達するためのキー等の手段が設けられていない。従って、研磨中にトップリング51はトップリングシャフト58の軸心まわりに回転するが、押圧リング53は自身の軸線に対して非回転に構成されている。
トップリング用エアシリンダ及び押圧リング用エアシリンダ72は、それぞれレギュレータ(図示せず)を介して圧縮空気源(図示せず)に接続されている。そして、トップリングの押圧力に対するガイドリングの押圧力を適宜調整することにより、半導体ウエハの中心部から周縁部、さらには半導体ウエハの外側にある押圧リングの外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になる。そのため、半導体ウエハの外周部における研磨量の過不足を防止することができる。
以下、本発明に係るポリッシング装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態を示す図であり、図1はポリッシング装置の全体構成を示す断面図であり、図2はトップリング及び押圧リングの部分を示す拡大断面図であり、図3は図2のIII−III線矢視図である。
図1および図2において、符号1はトップリングであり、トップリング1は、トップリング本体1Aと、トップリング本体1Aの外周部にボルト31によって着脱可能に固定されたリテーナリング1Bとからなり、半導体ウエハ4を収容する凹部1aはトップリング本体1Aの下面とリテーナリング1Bによって形成されている。そして、トップリング本体1Aの下面によって半導体ウエハ4の上面を保持し、リテーナリング1Bによって半導体ウエハ4の外周部を保持するようになっている。前記トップリング本体1Aおよびリテーナリング1Bの周囲には押圧リング3が上下動可能に設けられている。
前記トップリング1の下面には弾性マット2が貼着されている。またトップリング1の下方には、上面に研磨布6を貼ったターンテーブル5が設置されている。またトップリング本体1Aには凹球面32aを有した取付フランジ32が固定されている。トップリング1の上方にはトップリングシャフト8が配置されている。トップリングシャフト8の下端には、凹球面34aを有した駆動軸フランジ34が固定されている。そして、前記両凹球面32a,34a間には、球ベアリング7が介装されている。また、トップリング本体1Aと取付フランジ32との間には空間33が形成され、この空間33に真空、加圧空気、水等の液体が供給できるようになっている。トップリング本体1Aは空間33と連通して下面に開口する多数の連通孔35を有している。弾性マット2も同様に前記連通孔35に対向した位置に貫通孔を有している。これによって、半導体ウエハ4(図1参照)の上面を真空によって吸着可能であり、又、半導体ウエハ4の上面に液体又は加圧空気を供給できるようになっている。
前記トップリングシャフト8はトップリングヘッド9に固定されたトップリング用エアシリンダ10に連結されており、このトップリング用エアシリンダ10によってトップリングシャフト8は上下動し、トップリング1の下端面に保持された半導体ウエハ4をターンテーブル5に押圧するようになっている。
また、トップリングシャフト8はキー(図示せず)を介して回転筒11に連結されており、この回転筒11はその外周部にタイミングプーリ12を有している。そして、タイミングプーリ12は、タイミングベルト13を介して、トップリングヘッド9に固定されたトップリング用モータ14に設けられたタイミングプーリ15に接続されている。したがって、トップリング用モータ14を回転駆動することによってタイミングプーリ15、タイミングベルト13およびタイミングプーリ12を介して回転筒11及びトップリングシャフト8が一体に回転し、トップリング1が回転する。トップリングヘッド9は、フレーム(図示せず)に固定支持されたトップリングヘッドシャフト16によって支持されている。
トップリング1の周囲に設けられた押圧リング3は、図2に示すように、最下位置にあってアルミナセラミックからなる第1押圧リング部材3aと、第1押圧リング部材3aの上方にあるステンレス鋼からなる第2、第3押圧リング部材3b,3cとから構成されている。第2および第3押圧リング部材3b,3cは、ボルト(図示せず)によって相互に接続されており、第1押圧リング部材3aは第2押圧リング部材3bに接着等によって固定されている。第1押圧リング部材3aの下端部は、研磨布6を押圧する押圧面3fになっている。
トップリング1の取付フランジ32には、ベアリング受けフランジ36が固定されている。そして、ベアリング受けフランジ36と押圧リング3との間には、押圧リング3を支持するための押圧リング支持ベアリング37が介装されている。押圧リング支持ベアリング37は、図2および図3に示すように、第3押圧リング部材3cに嵌合されたベアリングケ−ス37aと、上下2列で全周に亘って配置された多数のボール37bと、ベアリングケース37a内でボール37bを保持するためのリテーナ(図示せず)とを有している。押圧リング支持ベアリング37は押圧リング3の上端に固定されたベアリング押さえ50によって上端が押さえられている。
本実施の形態においては、トップリング1と押圧リング3との間に、トップリング1の回転を押圧リング3に伝達するためのキー等の手段が設けられていない。従って、研磨中にトップリング1はトップリングシャフト8の軸心まわりに回転するが、押圧リング3は自身の軸線に対して非回転に構成されており、即ち、トップリング1と押圧リング3との間には相対回転が生ずるが、この際、トップリング1に固定されたベアリング受けフランジ36の外周面は、ボール37bが転動するベアリング転動面36Rを構成している。押圧リング支持ベアリング37は、回転支持ベアリングと上下移動支持ベアリングの両者の機能を有しており、トップリング1と押圧リング3とは押圧リング支持ベアリング37の回転支持ベアリング機能によって相対回転が許容され、押圧リング3は押圧リング支持ベアリング37の上下移動支持ベアリング機能によってトップリング1に対して上下動が許容されている。
押圧リング3の第3押圧リング部材3cには、押圧リング用エアシリンダ22のシャフト22aの下端部が係合している。押圧リング用エアシリンダ22はトップリングヘッド9に固定されている。押圧リング用エアシリンダ22は円周上に複数個(例えば3個)配設されている。またリテーナリング1Bはステンレス鋼等の金属からなり、リテーナリング1Bの外周部には、下部に半径方向内方に傾斜したテーパ面1Btを形成して下部側を上部側より薄肉に形成している。一方、押圧リング3の内周部にリテーナリング1Bのテーパ面1Btに対応した位置に半径方向内方に傾斜したテーパ面3tを形成し、押圧リング3の押圧面3fをトップリング1に保持された半導体ウエハ4の周縁部に可能な限り近づけるようにしている。
上述のリテーナリング1Bおよび押圧リング3の構成により、押圧リング3の押圧面3fの内周縁と半導体ウエハ4の周縁部との離間距離を短かくすることができるため、押圧リング3は半導体ウエハ4の周縁部近傍の研磨布6を押圧することができる。
図1に示すように、トップリング用エアシリンダ10及び押圧リング用エアシリンダ22は、それぞれレギュレータR1,R2を介して圧縮空気源24に接続されている。そして、レギュレータR1によってトップリング用エアシリンダ10へ供給する空気圧を調整することによりトップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力を調整することができ、レギュレータR2によって押圧リング用エアシリンダ22へ供給する空気圧を調整することにより押圧リング3が研磨布6を押圧する押圧力を調整することができる。
また、ターンテーブル5の上方には砥液供給配管25が設置されており、砥液供給配管25によってターンテーブル5上の研磨布6上に研磨砥液Qが供給されるようになっている。
上記構成のポリッシング装置において、トップリング1の下面に半導体ウエハ4を保持させ、トップリング用エアシリンダ10を作動させてトップリング1をターンテーブル5に向かって押圧し、回転しているターンテーブル5の上面の研磨布6に半導体ウエハ4を押圧する。一方、砥液供給配管25から研磨砥液Qを流すことにより、研磨布6に研磨砥液Qが保持されており、半導体ウエハ4の研磨される面(下面)と研磨布6の間に研磨砥液Qが存在した状態でポリッシングが行われる。
トップリング用エアシリンダ10によるトップリング1の押圧力に応じて押圧リング用エアシリンダ22による押圧リング3の研磨布6への押圧力を適宜調整して半導体ウエハ4の研磨を行う。研磨中にレギュレータR1によってトップリング1が半導体ウエハ4をターンテーブル5上の研磨布6に押圧する押圧力F1を変更でき、レギュレータR2によって押圧リング3が研磨布6を押圧する押圧力F2を変更できる(図1参照)。したがって、研磨中に、押圧リング3が研磨布6を押圧する押圧力F2を、トップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1に応じて変更することができる。この押圧力F1に対する押圧力F2を適宜調整することにより、半導体ウエハ4の中心部から周縁部、さらには半導体ウエハ4の外側にある押圧リング3の外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になる。そのため、半導体ウエハ4の周縁部における研磨量の過不足を防止することができる。
また半導体ウエハ4の周縁部で内部側より意図的に研磨量を多くし又は逆に少なくしたい場合には、押圧リングの押圧力F2をトップリングの押圧力F1に基づいて最適な値に選択することにより、半導体ウエハ4の周縁部の研磨量を意図的に増減できる。
本実施の形態においては、押圧リング3が押圧リング支持ベアリング37を介してトップリング1に支持されているため、押圧リング3が剛性高く、即ち、十分にしっかりと支持される。また押圧リング3は、押圧リング支持ベアリング37の上下移動支持ベアリング機能によってトップリング1に対して上下動が許容されているため、上下動時の押圧リング3の摺動抵抗は極めて小さく、押圧リング3は円滑に上下動する。
また押圧リング3がトップリング1の軸線と同芯に配置された押圧リング支持ベアリング37によって支持されているため、押圧リング3とトップリング1との同芯度を精度良く確保することができる。この結果、押圧リング3とトップリング1との間隔、ひいては、押圧リング3の内周縁とトップリング1に支持された半導体ウエハ4の外周縁の間隔を全周に亘って均一に保つことができる。さらにこのことから、押圧リング3と、トップリング1すなわち半導体ウエハ4との間隔を従来以上に、即ち前述のリテーナリングと押圧リングのテーパ面を設けただけの場合以上に小さくすることが可能になり、性能の安定と制御の容易性が実現できる。具体的には、ウエハの研磨面のより周縁に近いところまで均一に研磨できるので1枚のウエハから得られる半導体デバイス製品の数が増え、また研磨時の押圧リングの押圧力等の運転条件を変化させたときの応答性が良くなる。
また、図14に示す、先に本件出願人によって提案されたポリッシング装置においては、押圧リングとトップリングとの間にトップリングの傾動抑制用の板バネを介装していたが、本実施の形態においては、押圧リングがトップリングに直接接触する可能性が減り、また、トップリングが過度に傾動する可能性も減るので、この板バネの必要性がなくなる。この部材は消耗部材として取り扱われていたため、結果として、消耗部材のコストの低減につながる。
図4および図5は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の作用又は機能を有する部材は同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態においては、第1の実施の形態における押圧リング支持ベアリング37の回転支持ベアリング機能と上下移動支持ベアリング機能を分割してそれぞれの機能を個別のベアリング38,39に分担させるようにしたものである。即ち、トップリング1の取付フランジ32の外周部には回転支持ベアリング38を介してベアリング受けリング40が設けられており、ベアリング受けリング40と押圧リング3との間には上下移動支持ベアリング39が介装されている。回転支持ベアリング38は通常のラジアルベアリングからなっている。上下移動支持ベアリング39は図4および図5に示すように、円周上に3カ所設置されており、各上下移動支持ベアリング39は押圧リング3に固定されたベアリング転動面39Rを有した板状部材39aと、2行2列の4個の短円柱状ロ−ラ39bと、ローラ39bを収容するベアリングケース39cとからなっている。ベアリングケース39cはベアリング受けリング40に固定されており、ベアリング受けリング40にはベアリング押さえ69が固定されている。
押圧リング3の上端部には押圧リングストッパ70が固定され、また取付フランジ32の上端部にはカバー71が固定されている。そして、回転支持ベアリング38と上下移動支持ベアリング39とを囲むように3つのラビリンス75,76,77が形成されている。即ち、ベアリング押さえ69、押圧リングストッパ70、およびカバー71との間にはラビリンス75が形成され、ベアリング受けリング40と取付フランジ32との間にはラビリンス76が形成され、押圧リング3の第3押圧リング部材3cとリテーナ1Bとの間にはラビリンス77が形成されている。
図4および図5に示す本実施の形態によれば、第1の実施形態と比べてベアリングの支持の位置を研磨面に対して近づけることが可能となる。その結果、押圧リング3の支持安定性をより確保することが可能となる。
また、第1の実施形態では二つの動作を一つのベアリングで受けていたため、ボールの動作面、すなわち転動面ではボールが同時に2方向に動くように点当たりすることになる。従って、転動面の硬さによっては、当たり面においてより大きな摩耗が発生し、ベアリングの寿命が短くなる可能性がある。本実施の形態では、トップリング1と押圧リング3との相対回転は回転支持ベアリング38により支持され、押圧リング3のトップリング1に対する上下動は上下移動支持ベアリング39で支持される。すなわち、一つのベアリングに対しては、1方向の動作のみを与えることが可能になり、転動面を線接触にすることで、ベアリングの寿命の向上にも寄与することが可能である。
上述の構造を採用するに際して、ベアリング設置部に対しては異物の進入、例えば、水、研磨液等の液体や研磨くず等の固体物の侵入は好ましくない。従って、ベアリングの周辺に、上記の液体や固体物が入らないようにする必要があり、その手段として、その周辺を接触型のシールによって機械的にシールするか、ラビリンス等の構造で覆う等の方法が考えられる。例えば、機械的にシールした場合には接触部においては少なからず摩耗が生じ、シール自体が消耗部材となる可能性がある。また、摩耗するということは、摩耗による異物の発生にもつながり、それ自身が異物の発生源になりかねない。それに対して、図4に示すようなラビリンス構造は非接触であるため、上述のような懸念はない。さらに、複数のラビリンス75,76,77を並べることで、異物の侵入阻止の精度の向上も可能である。また、研磨面に対しても、必要外の異物の侵入は好ましくなく、上記ラビリンス構造の採用により、研磨面より上の部分で発生した異物の落下を防ぐ効果も期待できる。第2の実施形態における他の作用効果は第1の実施形態と同様である。
図6は図1乃至図5に示すポリッシング装置の改良構造を示す要部断面図である。図6に示す例においては、トップリング本体1Aの上端外周部と取付フランジ32の下端外周部とにインロー部INを形成し、トップリング本体1Aと取付フランジ32とを嵌合により位置決めしている。そのため、これら両部材を嵌合するだけでトップリング本体1Aと取付フランジ32との芯出しが行われ、組立性が向上する。またトップリング本体1Aと取付フランジ32との間に形成された真空や加圧空気を供給するための空間33をシールするOリング80を取付フランジ32とトップリング1Aとを固定するボルト81の内側に設けている。そのため、ボルト81の部分にシール性のあるワッシャを設ける必要がない。
一方、押圧リング3においては、第3押圧リング部材3cの上部に洗浄水供給管82が固定されるとともに下端に洗浄水吐出口83が形成されている。第1押圧リング部材3aを保持する第2押圧リング部材3bの上端に環状流路84が形成されている。環状流路84は円周方向に所定間隔をおいて設けられた複数の連通路85を介して第2押圧リング部材3bの内周面に連通している。また第2押圧リング部材3bには、下部に円周方向に間隔をおいて複数のドレン穴86が形成されている。そして、第2押圧リング部材3bの内周面は内方に凹んでおり、リテーナリング1Bと押圧リング3との間に比較的広い空間88が形成されている。また第2押圧リング部材3bの内外周面はポリ四ふっ化エチレンからなる樹脂コーティング89がなされている。
上述の押圧リング3の構成において、ガイドリング1Bと押圧リング3との間に入ったスラリー状の研磨砥液は、空間88の部分からドレン穴86を介して押圧リング3の外部に流出する。従って、ガイドリング1Bの上部へのスラリー状の研磨砥液の侵入を防ぐことができる。
また、洗浄水供給管82から適宜洗浄水を供給することにより、洗浄水は洗浄水吐出口83、環状流路84および連通路85を通ってガイドリング1Bと押圧リング3との間の空間88に流入する。その後、洗浄水はガイドリング1Bと押圧リング3との間隙91から流出する流路とドレン穴86を通って押圧リング3の外部に流出する系路とをとり、これによりガイドリング1Bと押圧リング3とが洗浄される。なお、第2押圧リング部材3bと第3押圧リング部材3cとの外周側の接続部には間隙90が形成されているため、環状流路84内の洗浄水は間隙90を通って押圧リング3の外周面を流れるため、押圧リング3の外周面が洗浄される。また、押圧リング3の第2押圧リング部材3bの内外面に樹脂コーティング89が施されているため、スラリー状の研磨砥液が付着しにくく、またたとえ付着したとしても洗浄水の供給によって研磨砥液を容易に除去できる。
以上説明したように、本発明によれば、押圧リングがベアリングを介してトップリングに支持されているため、押圧リングが剛性高く、即ち、十分にしっかりと支持される。また押圧リングは、ベアリングの上下移動支持ベアリング機能又は専用の上下移動支持ベアリングによってトップリングに対して上下動が許容されているため、上下動時の押圧リングの摺動抵抗は極めて小さく、押圧リングは円滑に上下動する。
また押圧リングがトップリングの軸線と同芯に配置されたベアリングによって支持されているため、押圧リングとトップリングとの同芯度を精度良く確保することができる。この結果、押圧リングとトップリングとの間隔、ひいては、押圧リングの内周縁とトップリングに支持された半導体ウエハの外周縁の間隔を全周に亘って均一に保つことができる。さらに、この間隔を均一に保つことができることにより、間隔をより小さく設定できるようになり、研磨の性能が向上する。
また本発明によれば、押圧リングを支持するベアリングへの水等の異物の侵入路に非接触のラビリンスを設置したため、異物の侵入を阻止することができるとともにこの部分からの発塵を防ぐことができる。
次に、本発明に係るポリッシング装置の第3の実施形態を図7乃至図11を参照して説明する。図7はトップリング及び押圧リングの部分を示す拡大断面図であり、図8Aは図7の要部拡大断面図であり、図8Bは図8AのVIII−VIII線断面図である。
図7において、符号1はトップリングであり、トップリング1は、トップリング本体1Aと、トップリング本体1Aの外周部にボルト31によって着脱可能に固定されたリテーナリング1Bとからなり、半導体ウエハ4を収容する凹部1aはトップリング本体1Aの下面とリテーナリング1Bによって形成されている。そして、トップリング本体1Aの下面によって半導体ウエハ4(図1参照)の上面を保持し、リテーナリング1Bによって半導体ウエハ4の外周部を保持するようになっている。前記トップリング本体1Aおよびリテーナリング1Bの周囲には押圧リング3が上下動可能に設けられている。また押圧リング3とトップリング1との間には、トップリング1の過度な傾動を抑制するための略U字状の断面を有する板バネ17が介装されている。
またトップリング本体1Aには凹球面32aを有した取付フランジ32が固定されている。トップリング1の上方にはトップリングシャフト8が配置されている。トップリングシャフト8の下端には、凹球面34aを有した駆動軸フランジ34が固定されている。そして、前記両凹球面32a,34a間には、球ベアリング7が介装されている。また、トップリング本体1Aと取付フランジ32との間には空間33が形成され、この空間33に真空、加圧空気、水等の液体が供給できるようになっている。トップリング本体1Aは空間33と連通して下面に開口する多数の連通孔35を有している。弾性マット2も同様に前記連通孔35に対向した位置に開口を有している。これによって、半導体ウエハ4(図1参照)の上面を真空によって吸着可能であり、又、半導体ウエハ4の上面に液体又は加圧空気を供給できるようになっている。
トップリング1の周囲に設けられた押圧リング3は、図7および図8Aに示すように、最下位置にあってアルミナセラミックからなる第1押圧リング部材3aと、第1押圧リング部材3aの上方にあるステンレス鋼からなる第2,第3押圧リング部材3b,3cと、最上方位置にあるステンレス鋼からなる第4押圧リング部材3dとから構成されている。第2〜第4押圧リング部材3b〜3dは、ボルトによって相互に接続されており、第1押圧リング部材3aは第2押圧リング部材3bに接着等によって固定されている。第1押圧リング部材3aの下端部は、内周側のみが下方に突出して突出部3eを形成しており、この突出部3eの下端面のみが研磨布6を押圧する押圧面3fになっている。
前記押圧面3fの半径方向の幅又は厚さtは、2mm〜6mmに設定されている。押圧リング3の上端部は押圧リング用エアシリンダ22に連結されている。押圧リング用エアシリンダ22はトップリングヘッド9に固定されている。押圧リング用エアシリンダ22は円周上に複数個(例えば3個)配設されている。またリテーナリング1Bはステンレス鋼等の金属からなり、リテーナリング1Bの外周部には、下部に半径方向内方に傾斜したテーパ面1Btを形成して下部側を上部側より薄肉に形成している。一方、押圧リング3の内周部にリテーナリング1Bのテーパ面に対応した位置に半径方向内方に傾斜したテーパ面3tを形成し、押圧リング3の押圧面3fをトップリング1に保持された半導体ウエハ4の周縁部に可能な限り近づけるようにしている。
上述のリテーナリング1Bおよび押圧リング3の構成により、押圧リング3の押圧面3fの内周縁と半導体ウエハ4の周縁部との離間距離を短かくすることができるため、押圧リング3は半導体ウエハ4の周縁部近傍の研磨布6を押圧することができる。したがって、半導体ウエハ4の周縁部が過研磨されることを防止できる。またリテーナリング1Bは、図8Aの太線に示すように、その下部内外周面および下端面に樹脂コーティング18が施されている。樹脂コーティング18はPEEK(ポリエーテルケトン)、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ポリビニール等が好ましく、その膜厚は100ミクロン以内が適当である。金属製のリテーナリング1Bに樹脂コーティング18を施したため、半導体ウエハ4への金属汚染を防止することができる。
本実施例においては、トップリング1と押圧リング3との間に、トップリング1の回転を押圧リング3に伝達するためのキー等の手段が設けられていない。従って、研磨中にトップリング1はトップリングシャフト8の軸心まわりに回転するが、押圧リング3は自身の軸線に対して非回転に構成されている。そのため、トップリング1の回転力が押圧リング3へ伝達しないので、トップリングシャフト8の回転負荷が少なくなる。また、押圧リング3をトップリングヘッド9に固定された押圧リング用エアシリンダ22によって直接作動させることができるため、装置構造が簡易になる。
また、押圧リング3の第2押圧リング部材3bの周壁には、図7、図8Aおよび図8Bに示すように、この周壁を貫通する砥液供給孔3mが放射状に複数個(例えば6個)形成されている。複数の砥液供給孔3mのうち、ターンテーブル5の回転方向Rの上流側に位置する複数(例えば3個)の開口部には、図8Bに示すように、コネクタ107aを介して砥液供給チューブ100の各分岐管101が接続されている。そして、砥液供給チューブ100は砥液供給源102に接続されている。他の砥液供給孔3mの開口部は栓部材103によって閉塞されている。また砥液供給チューブ100には、供給する砥液の流量を制御するポンプ104と、このポンプ104の上流側に位置して砥液の供給を開始および停止する開閉弁105aが設けられている。砥液供給孔3m、コネクタ107a、分岐管101、砥液供給チューブ100、ポンプ104および砥液供給源102は、砥液供給手段を構成しており、押圧リング3の内側に砥液を供給できるようになっている。押圧リング3が非回転に構成されているため、砥液供給源102から砥液供給孔3mへの砥液の供給がロータリジョイント等を介さずに簡易に行える。
前記砥液供給手段から、押圧リング3の内側に砥液を供給することにより、半導体ウエハ4の研磨中に押圧リング3によって押圧リング3の内側へのスラリー状の研磨砥液の流入がさえぎられても、研磨に使用される砥液の不足をなくすことができる。そのため、ポリッシング対象物の研磨は、十分な砥液の下で円滑に行われる。
前記砥液供給チューブ100の開閉弁105aとポンプ104との間には、洗浄液供給チューブ108aが接続され、このチューブ108aは洗浄液供給源109に接続されて、洗浄手段が構成されている。前記洗浄液供給チューブ108aにも開閉弁105bが介装されている。これにより、開閉弁105bを開いて前記洗浄手段から前記砥液供給手段の砥液供給チューブ100および砥液供給孔3mに洗浄液を供給することにより、内部に付着した砥液を洗い流すことができる。
また押圧リング3の第2押圧リング部材3bと第3押圧リング部材3cとの間には、図9A(図7の要部拡大断面図)及び図9B(図9AのIX−IX線断面図)に示すように、第2押圧リング部材3bの上面にその全周に亘って形成された円周溝からなる洗浄液流路3iが設けられている。第2押圧リング部材3bには、前記洗浄液流路3iに連通して外周面に開口する洗浄液供給孔3jと、前記洗浄液流路3iに連通して内周面に開口する洗浄液吐出孔3kが放射状に複数個設けられている。洗浄液供給孔3jの開口部には、コネクタ107bを介して洗浄液供給チューブ108bが接続されている。洗浄液供給チューブ108bも開閉弁106を介して、前述の洗浄液供給チューブ108aと同様に洗浄液供給源109に接続されている。洗浄液吐出孔3k、洗浄液流路3i、洗浄液供給孔3j、コネクタ107b、洗浄液供給チューブ108bおよび洗浄液供給源109は、洗浄液供給手段を構成している。押圧リング3が非回転に構成されているため、洗浄液供給源109から洗浄液流路3iへの洗浄液の供給及び洗浄液吐出孔3kからの洗浄液の吐出がロータリジョイント等を介さずに簡易に行える。
前記洗浄液供給手段から、押圧リング3とトップリング1のリテーナリング1Bとの間隙に、適宜、洗浄液を供給することにより、前記間隙に入り込んだスラリー状の研磨砥液を洗い流すことができる。そのため、押圧リング3とトップリング1のリテーナリング1Bとの間に研磨砥液が固着することがなく、押圧リング3の円滑な動きを確保することができる。
また、押圧リング3には、押圧リング3とトップリング1のリテーナリング1Bとの間隙に溜まる空気等の気体を排出するための複数のガス抜き穴3vが形成されている(図8A参照)。したがって、押圧リング3とトップリング1のリテーナリング1Bとの間隙に気体がこもる(充満する)ことがないため、押圧リング3の上下動が円滑に行われる。よって、研磨開始時に、押圧リング3は最適なタイミングで研磨布6に接触してこれを所望の押圧力で押圧することができる。
図10Aは押圧リングの一部を示す斜視図であり、図10Bは図10AのX矢視図である。図10Aおよび図10Bに示すように、押圧リング3には、砥液供給孔3m、砥液供給孔3mの開口端より下方に延びる砥液供給溝3p、洗浄液吐出孔3kおよび洗浄液供給流路3iが形成されている。砥液供給孔3mに供給された砥液は、砥液案内溝3pに沿って流下して研磨布6に達する。
図11Aおよび図11Bは、押圧リングの他の実施形態を示す図であり、図11Aは押圧リングの一部を示す斜視図であり、図11Bは図11AのXI矢視図である。押圧リング3の内周面は段差がなく平滑な円周面になっている。押圧リング3に、砥液供給孔3m、洗浄液吐出孔3kおよび洗浄液流路3iが設けられていることは図10Aおよび図10Bの実施形態と同様である。そして、押圧リング3の内周面には、前記洗浄液吐出孔3kの開口端と前記砥液供給孔3mの開口端とを結ぶ洗浄液案内溝3nと、前記砥液供給孔3mの開口端から下方に延びる砥液案内溝3pが形成されている。よって、砥液供給孔3mに供給された砥液は、砥液案内溝3pに沿って流下して研磨布6に達する。また、砥液供給孔3mおよび砥液案内溝3pに付着した砥液は、洗浄手段によって砥液供給孔3mに供給されて砥液案内溝3pに沿って流れる洗浄液と、洗浄液供給手段によって洗浄液吐出孔3kから吐出されて洗浄液案内溝3nから砥液供給孔3mを介して砥液案内溝3pに沿って流れる洗浄液の双方で洗浄される。
上記構成のポリッシング装置において、トップリング1の下面に半導体ウエハ4を保持させ、トップリング用エアシリンダ10を作動させてトップリング1をターンテーブル5に向かって押圧し、回転しているターンテーブル5の上面の研磨布6に半導体ウエハ4を押圧する。一方、砥液供給ノズル25から研磨砥液Qを流すことにより、研磨布6に研磨砥液Qが保持されており、同時に、砥液供給手段によって、押圧リング3の内側に砥液を供給することにより、半導体ウエハ4の研磨される面(下面)と研磨布6の間に十分な研磨砥液Qが存在した状態でポリッシングが行われる。
トップリング用エアシリンダ10によるトップリング1の押圧力に応じて押圧リング用エアシリンダ22による押圧リング3の研磨布6への押圧力を適宜調整して半導体ウエハ4の研磨を行う。研磨中にレギュレータR1によってトップリング1が半導体ウエハ4をターンテーブル5上の研磨布6に押圧する押圧力F1を変更でき、レギュレータR2によって押圧リング3が研磨布6を押圧する押圧力F2を変更できる(図1参照)。したがって、研磨中に、押圧リング3が研磨布6を押圧する押圧力F2を、トップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1に応じて変更することができる。この押圧力F1に対する押圧力F2を適宜調整することにより、半導体ウエハ4の中心部から周縁部、さらには半導体ウエハ4の外側にある押圧リング3の外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になる。そのため、半導体ウエハ4の周縁部における研磨量の過不足を防止することができる。
また半導体ウエハ4の周縁部で内部側より意図的に研磨量を多くし又は逆に少なくしたい場合には、押圧リング3の押圧力F2をトップリング1の押圧力F1に基づいて最適な値に選択することにより、半導体ウエハ4の周縁部の研磨量を意図的に増減できる。
そして、例えば半導体ウエハ4の研磨を終了した後の次の研磨を行う前に、押圧リング3とトップリング1との間隙に洗浄液を供給して、押圧リング3とトップリング1との間隙に入り込んだスラリー状の研磨砥液を洗い流し、同時に、洗浄手段を介して、砥液供給手段の砥液供給チューブ100および砥液供給孔3mに洗浄液を供給して、ここに付着した砥液を洗い流す。
本実施例によれば、押圧リング3の内側に砥液を供給する手段を設けたため、半導体ウエハ4の研磨中に押圧リング3によって押圧リング3の内側へのスラリー状の研磨砥液の流入がさえぎられても、押圧リング3の内側に砥液を供給することにより、研磨に使用される砥液の不足をなくすことができる。したがって、ポリッシング対象物の研磨は、十分な砥液の下に円滑に行われる。そして、大径の半導体ウエハ4の場合にも、充分な量の砥液が確保される。
また、本実施例によれば、リテーナリング1Bと押圧リング3とを最適な材質のものを選択することができる。リテーナリング1Bは、内周面が半導体ウエハ4に接触し、下端が研磨布6に接触しないため、金属に樹脂コーティング18を施す等の手段により比較的柔らかな表面を有する材料から選ぶことができる。硬い材料を用いると、研磨中に半導体ウエハ4が破損することがあるからである。またリテーナリング1Bと押圧リング3とが接触したとしても、両者は樹脂コーティング18を介して接触するため、金属同士の接触がなく、押圧リング3とリテーナリング1Bの相対運動(上下運動および回転運動)が円滑に行われる。
また第1押圧リング3aは、半導体ウエハ4に接触せず、かつ研磨布6と接触するために、アルミナセラミック等の硬度が高く耐摩耗性に富み、かつ摩擦係数の低い材料から選択することができる。押圧リングは、摩耗が少なく、かつ研磨布との摩擦抵抗が小さく、又、押圧リングの摩耗粉が半導体ウエハ4上の半導体デバイスに悪影響を与えないものが望ましい。第1押圧リング3aは、上述したように半導体ウエハ4と直接接触することがないために、この面からの制約がないので、上記要請を満たすような最適な材質であるアルミナセラミックを選択することができる。なお、押圧リングの材質としてアルミナセラミック以外に炭化ケイ素(SiC)やジルコニア等のセラミックであってもよい。
なお、本実施例では、押圧リング3を非回転に構成した例を示しているが、押圧リングを回転自在に構成し、ロータリージョイントを介して押圧リングの内側に砥液を供給するようにしても良い。
以上説明したように本発明によれば、押圧リングの内側に砥液を供給する手段を設けたため、研磨中に押圧リングによって押圧リングの内側へのスラリー状の研磨砥液の流入がさえぎられても、押圧リングの内側のポリッシング部に砥液を直接に供給することにより、研磨に使用される砥液の不足をなくすことができる。したがって、ポリッシング対象物の研磨は、十分な砥液の下に円滑に行われる。