JP2007075754A - 被処理水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 被処理水を遠心分離して得られる上澄み液の糖濃度を測定し、該糖濃度が特定の範囲内である場合に、分離膜の膜間差圧の上昇を抑制する差圧抑制工程を行う。このように糖濃度を指標とすることにより、被処理水の分離性の悪化による分離膜の膜間差圧の上昇を正確に把握できる。
【選択図】 なし
Description
(1)分画孔径の小さな精密濾過膜、限外濾過膜を用いて処理を行う場合、長期間の膜分離処理により、少しずつ膜面上の堆積物が蓄積され、分離膜の膜間差圧が上昇する(ケース(1))。
(2)BOD(生物化学的酸素要求量)負荷が急激に増大した場合や、冬季等の低温期など微生物に環境ストレスがかかる場合において、一時的に微生物による被処理水の分解が十分に行われず、分離膜の濾過阻害成分が残ったままとなり、被処理水の分離性が悪化する。この際に濾過処理を濾過阻害成分が存在しない場合と同様な条件で行うと、分離膜の閉塞が進行し、急激な膜間差圧の上昇が認められる(ケース(2))。
さらに、処理水中の濾過阻害成分の除去方法として、凝集剤によって、被処理水を懸濁成分と濾過阻害成分を含む液体とに分離する方法(特許文献2参照)や、前処理設備または生物反応槽に凝集剤を添加して、被処理水中の溶解性有機物やリンを凝集させ、膜装置に供給される溶解性有機物やリン化合物の濃度を低減させる方法(特許文献3参照)がある。
また、膜間差圧の上昇をモニタリングする手法としては、活性汚泥の呼吸速度を測定する方法が提案されている(特許文献4参照)。
また、特許文献4に記載の方法では、活性汚泥の呼吸速度を測定することにより、分離膜の膜間差圧の上昇をモニタリングしようとしているが、活性汚泥の呼吸速度と膜間差圧を上昇させる物質の量との関係が明らかでないため、膜間差圧の上昇を正確に把握することは困難であった。
前記遠心分離を8000〜12000Gの重力加速度で行うことが好適である。
また、前記被処理水の活性汚泥濃度が10000mg/L以上である際には、前記糖濃度が7〜10mg/Lの範囲内である場合に、前記差圧抑制工程を行うことが好ましい。
また、前記被処理水の活性汚泥濃度が3000mg/L以上で10000mg/L未満である際には、前記糖濃度が前記活性汚泥濃度に対して0.0007〜0.001倍の範囲内である場合に、前記差圧抑制工程を行うことが好ましい。
図1は、本発明の処理方法において好適に使用される処理装置の一例を示すものであって、生活系排水などの有機性排水が被処理水として供給されている活性汚泥処理槽1と、この活性汚泥処理槽1内に設置され、分離膜を具備した膜分離装置2とを備えて構成されている。この処理装置では、被処理水が活性汚泥処理槽1により活性汚泥処理され、膜分離装置2で固液分離、すなわち膜処理されることにより、処理水が得られるようになっている。
また、この例の活性汚泥処理槽1には、凝集剤、微生物製剤など、分離膜の膜間差圧の上昇を抑制するための薬剤が投入されている薬剤タンク3と、薬剤タンク3内の薬剤を活性汚泥処理槽1に供給するための送液ポンプ4と、この送液ポンプ4の動作時間を制御するための間欠タイマー5とを備えた薬剤供給手段が接続されている。また、膜分離装置2の下方には散気管6が設置され、ここから分離膜に向けて散気(エアーバブリング)できるようになっている。
凝集剤としては、例えば、市販の塩化第二鉄溶液(塩化鉄)、ポリ硫酸鉄溶液(ポリ鉄)、ポリ塩化アルミニウム溶液(PAC)等の無機系凝集剤や、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の高分子凝集剤等が挙げられる。これらのうち1種類以上を適宜選択して使用できるが、汎用性が高く、簡便に使用できる無機系凝集剤、または、少ない使用量で強固なフロックを形成させることができるカチオン系高分子凝集剤を用いるのが好ましい。より好ましくは強カチオン系高分子凝集剤である。
活性微生物群としては、細菌類として、好気性細菌、偏性好気性細菌、嫌気性細菌、または、桿状菌(バチルス属、バクテリウム属、ミクロバクテリウム属、フラロバクテリウム属、プセウドモナス属など)、糸状菌(ベキァトア属、ゲオトリカム属など))、枯草菌、乳酸菌、酵母菌、放線菌、脱臭菌などが挙げられる。
微生物栄養剤としては、グルコース、フルクトース、マントース、スクロース、ガラクトース、アラビノース、ペントース、デンプン、ウロン酸、デオキシ酸など、微生物の栄養源となるものが挙げられる。
微生物助剤としては、界面活性剤、粘土鉱物、ミネラルなどが挙げられる。
これら微生物製剤の中から1種類以上を適宜選択して使用できる。また、使用時の微生物製剤の形態は、液体状、乾燥粉末状、ペレット状の何れでも構わないが、生菌を含んでいる液体状がより好ましい。
例えば、被処理水の活性汚泥濃度10000mg/L以上の時において、上澄み液の糖濃度が5mg/L以下である場合には、分離膜の差圧上昇が少なく、被処理水の安定した膜処理ができる傾向にある。よって、膜処理を開始する際の上澄み液の糖濃度が20mg/L以上である場合には、膜処理開始前または膜処理開始と同時に、差圧抑制工程を実施して、糖濃度を5mg/L以下とすることが好ましい。より好ましくは2mg/L以下とする。
また、連続的に被処理水を膜処理している場合において、活性汚泥処理槽1の被処理水の活性汚泥濃度が10000mg/L以上である際には、糖濃度が7〜10mg/Lの範囲内となった時点で、差圧抑制工程を行うことが好ましい。また、活性汚泥処理槽1内の被処理水の活性汚泥濃度が3000mg/L以上で10000mg/L未満である際には、糖濃度が活性汚泥濃度に対して0.0007〜0.001倍の範囲内となった時点で、差圧抑制工程を行うことが好ましい。このようにすると、安定して連続的に被処理水を膜処理できる傾向にある。
その他の差圧抑制工程としては、活性炭などの吸着剤を被処理水中に添加し、濾過性阻害成分を吸着除去する方法もあるが、十分な効果を得るためには非常に大量の吸着剤を添加する必要があるため、凝集剤および/または微生物製剤を被処理水に添加する方法が効果的である。
糖の成分としては、グルコール、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、フコース、キシロース等の中性糖、グルクツロン酸、ガラクツロン酸等の酸性糖、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン等のアミノ糖であり、これらが単独、あるいは、数種類組み合わさって構成されたものであると考えられる。
また、遠心分離の際の重力加速度は8000〜12000Gの範囲が好適である。8000G以下の場合には、被処理水中の懸濁物質が十分に除去しきれず、測定値にバラツキが認められ、再現性が得られ難い傾向にあり、一方、超遠心分離機を用いるなどして12000Gを超える重力加速度とすると、検出される糖濃度の値が小さいか、または、定量下限以下となってしまうため好ましくない。
これらの理由から、糖濃度を測定するための前処理としては、8000〜12000Gの範囲の重力加速度での遠心分離が好ましい。より好ましくは10000Gである。
(試験例1)
図1に示した処理装置を用いて、以下の条件で生活系排水の処理を三菱レイヨン(株)排水試験場にて行った。
活性汚泥処理槽1のフラックス及び水理学的滞留時間は、それぞれ0.8m3/m2/Day、5時間である。また、膜分離装置2の分離膜としては、公称孔径0.4μmの精密濾過用ポリビニリデンフルオライド製中空糸膜がスクリーン状に展開固定されたエレメントを用いた。
処理装置立ち上げ時の種汚泥は、排水試験場内に設置した他の膜分離活性汚泥処理装置から採取し、活性汚泥の活性汚泥濃度は、およそ10000mg/Lとなるように供した。運転時の活性汚泥濃度は、10000〜12000mg/Lとなるように、汚泥の引抜を行った。
膜分離装置2の濾過運転は7分吸引、1分停止の間欠運転とした。この際、膜分離装置2の下方に設置されている散気管6からの散気を常時実施した。散気量は中空糸膜部の投影面積当たり100Nm3/m2・hrとした。
このように処理装置を運転させ、その間、分離膜の膜間差圧と、被処理水を10000Gの重力加速度で遠心分離した後の上澄み液の糖濃度を毎日測定した。これらの関係を図2に示す。なお、糖濃度測定は、フェノール−硫酸法にて行った。
よって、この場合には、被処理水を10000Gの重力加速度で遠心分離した後の上澄み液の糖濃度を指標として膜間差圧の上昇を予測し、差圧抑制工程を行うことが有効であり、膜間差圧の上昇が認められるのは、糖濃度が7mg/L以上となった場合であることが示された。また、膜間差圧がおよそ15kPaを超えると、差圧抑制工程を行うことが非常に困難となる。その時の上澄み液の糖濃度は、図2のグラフから20mg/L以上であった。また、膜間差圧がおよそ10kPaを超えると、差圧抑制工程を効果的に行うことが難しくなる傾向にある。その際の上澄み液の糖濃度は、11mg/L程度である。よって、差圧抑制工程は、上澄み液の濃度が10mg/L以下のうちに行うことが好適であると示唆される。以上のことから、糖濃度が7〜10mg/Lの際に差圧抑制工程を行うことが好適である。
試験例1において試験開始から45日後、活性汚泥処理槽1内の被処理水の活性汚泥濃度を、10000mg/Lから4000mg/Lに下げて運転を再開した。この時、膜の薬品洗浄などは行わず、被処理水を10000Gで遠心分離した後の上澄み液の糖濃度は5mg/Lで、糖濃度/活性汚泥濃度の比は、0.0013であった。運転を継続したところ、5日間で16〜19kPaまで膜間差圧が上昇した。
さらに、活性汚泥濃度を3000mg/Lに下げ運転を再度、開始した。この時、被処理水を10000Gで遠心分離した後の上澄み液の糖濃度は3mg/Lで、糖濃度/活性汚泥濃度の比は、0.001であった。運転を継続したところ、さらに膜間差圧は10日間で19〜21kPaまで徐々に上昇した。
よって、この場合には、被処理水を10000Gの重力加速度で遠心分離した後の上澄み液の糖濃度の活性汚泥濃度に対する比率(糖濃度/活性汚泥濃度)を指標として、差圧抑制工程を行うことが有効であり、糖濃度/活性汚泥濃度の比が0.001を超えないうちに差圧抑制工程を行うことが好適であると示唆された。また、同条件で別途確認したところ、被処理水を10000Gで遠心分離した後の上澄み液の糖濃度/活性汚泥濃度の比が0.0007となる前の段階では、膜間差圧の上昇は認められなかったことから、糖濃度/活性汚泥濃度の比が0.0007〜0.001の際に差圧抑制工程を行うことが好適であると考えられる。
試験例1において、試験開始から37日後の被処理水(活性汚泥濃度10000mg/L、10000Gの重力加速度で遠心分離した後の上澄み液の糖濃度は10mg/L)に、強カチオン系高分子凝集剤(ダイヤニトリックス社製KP201G)を被処理水あたり1mg/Lとなるように添加し、十分攪拌した後、この被処理水を10000Gの重力加速度で遠心分離し、得られた上澄み液の糖濃度を測定した。
その結果、糖濃度は定量下限(2mg/L)以下であった。また、膜間差圧は5kPa以下まで低下し、このようなタイミングでの差圧抑制工程が効果的であることが示された。
試験例1において、膜間差圧が上昇したポリビニリデンフルオライド製中空糸膜を、3000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウムで3時間浸漬洗浄後、活性汚泥処理槽1内に戻し、試験開始から45日後の被処理水(活性汚泥濃度10000mg/L、10000Gの重力加速度で遠心分離した後の上澄み液の糖濃度は25mg/L)に対して、運転を再開した。洗浄直後の膜間差圧は5kPaであったが、7日間で20kPaまで急上昇した。
次に、同様な膜洗浄を実施後、再度、運転を開始した。このとき、強カチオン系高分子凝集剤(ダイヤニトリックス社製KP201G)を被処理水当たり1mg/Lとなるように7日間連続添加した。その後、被処理水を10000Gの重力加速度で遠心分離し、得られた上澄み液の糖濃度を測定した。
その結果、糖濃度は定量下限(2mg/L)以下であった。また、膜間差圧は5kPa以下まで低下し、このようなタイミングでの差圧抑制工程が効果的であることが示された。
強カチオン系高分子凝集剤の代わりに、微生物製剤((有)石川メンテナンス社製アクティブバイオ「菌太郎」)を用い、これを被処理水あたり50mg/Lとなるように添加し、さらに24時間攪拌した以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様に糖濃度を測定した。
その結果、糖濃度は定量下限(2mg/L)以下であった。また、膜間差圧は5kPa以下まで低下し、このようなタイミングでの差圧抑制工程が効果的であることが示された。
強カチオン系高分子凝集剤の代わりに、微生物製剤((有)石川メンテナンス社製アクティブバイオ「菌太郎」)を用い、これを被処理水当たり50mg/Lとなるように7日間連続添加した以外は、実施例2と同様の操作を行い、同様に糖濃度を測定した。
その結果、糖濃度は定量下限(2mg/L)以下であった。また、膜間差圧は5kPa以下まで低下し、このようなタイミングでの差圧抑制工程が効果的であることが示された。
2 膜分離装置
3 薬剤タンク
4 送液ポンプ
5 間欠タイマー
6 散気管
Claims (4)
- 分離膜が設置された活性汚泥処理槽により、被処理水を処理する方法において、
被処理水を遠心分離して得られる上澄み液の糖濃度を測定し、該糖濃度が特定の範囲内である場合に、分離膜の膜間差圧の上昇を抑制する差圧抑制工程を行うことを特徴とする被処理水の処理方法。 - 前記遠心分離を8000〜12000Gの重力加速度で行うことを特徴とする請求項1に記載の被処理水の処理方法。
- 前記被処理水の活性汚泥濃度が10000mg/L以上である際には、
前記糖濃度が7〜10mg/Lである場合に、前記差圧抑制工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の被処理水の処理方法。 - 前記被処理水の活性汚泥濃度が3000mg/L以上で10000mg/L未満である際には、
前記糖濃度が前記活性汚泥濃度に対して0.0007〜0.001倍である場合に、前記差圧抑制工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の被処理水の処理方法。
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