JP2007071667A - センシング方法およびセンシング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 蛍光センシングや反射光を用いることなく、高精度かつ定量的に検出対象物質を検出すること。
【解決手段】 金属構造体110は、表面に相補的な物質の一端が固定され、検出対象物質を含む試料を導入される。基板転送装置120は、金属構造体110を転送して、ステージ130上に載置する。吸収スペクトル測定装置140は、金属構造体110上の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定する。シフト量算出部154は、金属構造体110上に相補的な物質の一端を固定した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルと、金属構造体110上に相補的な物質を固定しかつ検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルとのシフト量を算出する。解析部156は、算出されたシフト量を用いて試料に含まれる検出対象物質を解析する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、センシング方法およびセンシング装置に関し、特に、医療診断、遺伝子解析および環境分析に供するセンシング方法およびセンシング装置に関する。
近年、医療診断、遺伝子解析および環境分析を迅速、高効率、かつ簡便に行うために、ごく微量の生体関連物質または環境有害物質を高感度で検出する技術が重要になっている。
上記生体関連物質または環境有害物質を検出する技術の原理として大きく期待されているものの一つに、「局在(表面)プラズモン共鳴」と呼ばれる特殊な光学応答現象を利用したものがある。局在プラズモン共鳴とは、微細な金属構造体、例えば、ナノスケールの表面構造を有する金属またはナノメートルサイズの金属微粒子の間に、ある特定の共鳴波長の照射光を入射すると、その形状やサイズに応じた波長領域に局所電場が形成される光学応答である。局在プラズモン共鳴により形成された局所電場は、金属構造体表面に固定されている光応答分子のみを効率よく励起する。
金属構造体を構成する金属の種類としては、金や銀、白金等の貴金属が用いられることが多いが、金属の種類が同じでも、形状またはサイズが異なれば局在プラズモン共鳴の吸収スペクトル波長が異なる。また、局在プラズモン共鳴を示す金属上に吸着した分子の光学応答(発光またはラマン分光)の強度は、分子とプラズモンとの相互作用により著しく増強される。すなわち、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体は、分子系に対する高感度センサ用デバイスとして機能する。
上記原理を利用した医療診断、遺伝子解析および環境分析としては、例えば、DNAチップを用いたDNA分析およびイムノアッセイチップを用いた抗原抗体診断がある。
DNA分析とは、塩基配列が異なる複数のプローブDNA(一本鎖)を固定したDNAチップ上に、検出対象の検体DNA溶液を導入して、検体DNAと相補関係にある塩基配列を有するプローブ分子との2本鎖を形成させ(以下「ハイブリダイゼーション」という)、各プローブDNAについてハイブリダイゼーションの有無を読み出すことにより、検体DNAの検出を行うものである。
一方、抗原抗体診断とは、検出対象物質を抗原として動物に作らせた抗体を固定したイムノアッセイチップ上に、検体溶液を導入して、検体溶液中の抗原とイムノアッセイチップ上の抗体とが選択的に形成する複合体を検出することにより、抗原の検出を行うものである。
このようなDNA分析および抗原抗体診断においては、蛍光性分子で標識した試料に励起光を照射し、励起された蛍光の量を検出することにより検出対象物質をセンシング(蛍光センシング)することが提案されている。
しかし、蛍光センシングにおいては、検出対象物質のみならず、試料内の蛍光性不純物(妨害物質)も同時に蛍光されてしまい、センシングの感度および精度を低下させてしまうという深刻な問題がある。
そこで、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体を利用しつつも蛍光センシングを用いない他のセンサとして、光反射(散乱)を用いて検出対象物質をセンシングするものが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献1記載の表面プラズモン共鳴センサは、次のようなセンサである。すなわち、上下に平行な面を有するプリズム(半導体シリコン)の一方の面に光源(有機EL素子)および検知器(フォトダイオード)が設けられ、他方の面に金属薄膜(金膜)が設けられ、また、内部に光吸収部材(光吸収ブロック)が設けられている。そして、光吸収部材が、光源から所定の角度で照射された光が金属薄膜に入射し全反射して検知器に到達するように光源から他の角度で照射された光を遮断し、検知器が、反射光の強度を検知するようにしている。
また、特許文献2記載の局在化表面プラズモンセンシング装置は、次のような装置である。すなわち、光ファイバの端面に局在化した表面プラズモン共鳴が励起される寸法の金属微粒子層を形成し、また、金属微粒子層の表面に検出対象分子に相補的な分子の分子層を形成する。そして、金属微粒子層内に局在化した表面プラズモン共鳴による光ファイバに入力された光の変化を用いて、相補的な分子に吸着または結合した検出対象分子を検出するようにしている。
特開2005−156415号公報 特開2005−181296号公報
しかしながら、特許文献1記載の表面プラズモン共鳴センサにおいては、光軸を含む光学配置のズレ/ブレ、プリズムの傷、プリズムの歪み、または、鏡面の汚れ等の要因により、検知器が検知する反射光の強度が変動する。従って、検知する反射光の強度は、検出しようとする状態の固有の物理量ではなく、測定感度および測定精度が低下するという問題がある。
さらに、特許文献2記載の局在化表面プラズモンセンシング装置においても、反射光の強度を検知して検出対象分子を検出するため、検出対象分子の検出は、定性的な検出であり、定量的な検出が困難であるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蛍光センシングや反射光を用いることなく、高精度かつ定量的に検出対象物質を検出することができるセンシング方法およびセンシング装置を提供することを目的とする。
本発明に係るセンシング方法は、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを用いて、前記金属構造体に付着した検出対象物質を検出するようにした。
また、本発明に係るセンシング方法は、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定する測定ステップと、前記金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質の一端を固定した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルと、前記金属構造体上に前記相補的な物質を固定しかつ前記検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルとを比較して、前記吸収スペクトルのシフト量を算出する算出ステップと、算出したシフト量に基づいて、前記試料に含まれる検出対象物質を検出する検出ステップと、を有するようにした。
また、本発明に係るセンシング装置は、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体と、前記金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定する測定手段と、前記金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質の一端を固定した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルと、前記金属構造体上に前記相補的な物質を固定しかつ前記検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルとを比較して、前記吸収スペクトルのシフト量を算出する算出手段と、算出されたシフト量に基づいて、前記試料に含まれる検出対象物質を検出する検出手段と、を有する構成を採る。
本発明によれば、蛍光センシングや光反射を用いることなく、高精度かつ定量的に検出対象物質を検出することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明者は、蛍光センシングや光反射を用いることなく、高精度かつ定量的に検出対象物質を検出するためには、検出しようとする状態の固有の物理量を用いてセンシングを行う必要があることを見出した。また、検出しようとする状態の固有の物理量を用いてセンシングを行うためには、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体上に検出対象物質が付着した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを用いる必要があることを見出した。
本発明は、半導体微細加工技術を応用することにより、ガラスなどの固体透明基板上に、金属ナノ構造体(例えば、金属ナノロッドまたは金属ナノブロック)を多数集積化した金属構造体デバイス(金属ナノロッドアレイまたは金属ナノブロックアレイ)を構築し、当該金属構造体デバイス上に検出対象物質と当該検出対象物質と相補的な物質(以下「相補的物質」と略記する)を固定し、金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量を測定することにより、金属構造体上における検出対象物質と相補的物質との結合を検出することによって、金属構造体に付着した検出対象物質を検出するものである。
ここで、吸収スペクトルのシフト量は非常に小さいため、測定誤差が生じやすい。従って、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量を大きくすることにより、測定精度を向上させることができる。
本発明者は、さらに、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量を大きくするためには、局在プラズモン共鳴を示す金属構造体を構成する金属ナノ構造体のサイズ、形状および方向性、ならびに金属ナノ構造体間の距離をそれぞれそろえて、精密に規則正しく配列させることが必要であることを見出した。
なお、本明細書において、「相補的」とは、ある物質が特定の物質と特異的に結合する関係を意味する。
また、本明細書において、「金属構造体」とは、狭義では、金属ナノロッドおよび金属ナノブロックのような、ある金属集合体の構成要素を意味し、広義では、金属ナノロッドアレイおよび金属ナノブロックアレイのような、狭義の金属構造体の集合体を意味する。さらに、最広義では、広義の金属構造体が構築された基板をも含めた金属構造体を意味する。
なお、以下では、適宜、金属ナノロッドおよび/または金属ナノブロックを「金属ナノロッド(ブロック)」と略記し、金属ナノロッドアレイおよび/または金属ナノブロックアレイを「金属ナノロッド(ブロック)アレイ」と略記する。
また、本明細書において、「アスペクト比」とは、金属ナノロッド(ブロック)の長軸の長さと短軸の長さの比率を意味する。例えば、短軸の平均長さ10nm、長軸の平均長さ100nmの異方的形状を有する金属ナノロッド(ブロック)のアスペクト比は、10である。
図1は、本発明の実施の形態1に係るセンシング装置の全体構成を示す図である。また、図2は、図1に示すセンシング装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係るセンシング装置100は、大別して、金属構造体110、基板転送装置120、ステージ130、吸収スペクトル測定装置140、コンピュータ部150、入力部160および出力部170を有する。
金属構造体110は、固体透明基板上に、サイズ、形状および方向性、ならびに金属ナノ構造体間の距離を精密に制御した金属ナノ構造体(例えば、金や白金、銀等)を集積化したものである。金属構造体110の表面には、相補的物質の一端が固定され、検出対象物質を含む試料の導入後、基板転送装置120に装填される。なお、金属構造体110の製造方法は、後で詳細に説明する。
上記のように、相補的物質とは、検出対象物質と特異的に結合する物質である。例えば、抗原抗体反応においては、検出対象物質が抗原であり、相補的物質が抗体である。また、DNAのハイブリダイゼーションにおいては、検出対象物質が検体DNAであり、相補的物質がプローブDNAである。また、検出対象物質が抗原である場合には、金属構造体110は、いわゆるイムノアッセイチップとなり、検出対象物質がDNAである場合には、金属構造体110は、いわゆるDNAチップとなる。
イムノアッセイチップには、例えば、複数の異なる抗体102の一端を固定することができる(図3(A)参照)。また、導入された抗原104が、固定された抗体102と抗原抗体反応を起こすと、抗原104および抗体102は、選択的に複合体を形成する(図3(B)参照)。
DNAチップには、例えば、複数の異なる塩基配列のプローブDNA106の一端を固定することができる(図4(A)参照)。また、導入された検体DNA108が、固定されたプローブDNA106とハイブリダイゼーションを起こすと、複合体(2本鎖)の鎖長が短くなる(L>L)ことが分かっている(図4(B)参照)。ここで、Lは、プローブDNAの鎖長、Lは、ハイブリダイゼーションにより得られる複合体(2本鎖)の鎖長である。
基板転送装置120は、金属構造体110を装填し、制御部152からの指示により、装填した金属構造体110をステージ130上に転送する。また、基板転送装置120は、多検体多項目のセンシングを実現するために、複数の金属構造体110を同時に装填することができる。
ステージ130は、基板転送装置120から転送された金属構造体110を載置する。また、ステージ130は、ステージ駆動装置132により、吸収スペクトル測定装置140内で発せられたプローブ光の光軸に垂直な平面上を駆動する。
吸収スペクトル測定装置140は、大別して、光源コントローラ141、電源142、光源143、レンズ144、干渉計145、検出部146および吸収スペクトル算出部147を有する。吸収スペクトル測定装置140は、例えば、顕微フーリエ変換型赤外吸収スペクトル波長測定装置(顕微FT−IR測定装置)である。
光源コントローラ141は、電源142に接続され、電源142の出力電圧を制御することにより、光源143が照射するプローブ光の強度を調整する。
電源142は、光源143に電圧を供給する。
光源143は、金属構造体110上の所定の位置に向けてプローブ光を照射する。光源143が照射するプローブ光は、例えば、赤外プローブ光である。
レンズ144は、光源143から照射されたプローブ光を絞り込む。
干渉計145は、レンズ144により絞り込まれたプローブ光から干渉波を形成する。
検出部146は、金属構造体110を透過した干渉波の情報を検出する。
吸収スペクトル算出部147は、検出部146により検出された透過干渉波の情報を電気信号に変換してフーリエ変換し、金属構造体110上の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを算出する。
コンピュータ部150は、制御部152、シフト量算出部154および解析部156を有する。
制御部152は、基板転送装置120、ステージ駆動装置132および吸収スペクトル測定装置140を統括的に制御する。
シフト量算出部154は、金属構造体110上に相補的物質の一端を固定した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトル(以下「基準スペクトル」という)と、金属構造体110上に相補的物質を固定しかつ検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトル(以下「センシングスペクトル」という)とを比較して、吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を算出する。具体的には、例えば、シフト量(Δλ)は、基準スペクトルの極大波長とセンシングスペクトルの極大波長との差である。また、基準スペクトルは、例えば、予め測定され、図示しない記憶装置に格納されている。
解析部156は、シフト量算出部154により算出されたシフト量(Δλ)を用いて、試料に含まれる検出対象物質を解析する。具体的には、例えば、解析部156は、吸収スペクトルのシフト量(Δλ)と検出対象物質の量との関係を示す検量線を用いて、吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を検出対象物質の量に換算することにより、検出対象物質の量を解析する。検量線は、予め作成されて図示しない記憶装置に格納されている。
また、吸収スペクトルのシフト量(Δλ)と検出対象物質の量との関係は、検出対象物質および相補的物質によって異なるが、概ね、比例関係にあることが知られている。従って、検出しようとする状態(検出対象物質と相補的物質の結合体)の固有の物理量であるシフト量(Δλ)を用いた検量線を作成し、定量的なセンシングを実現することができる。
入力部160は、コンピュータ部150のインターフェースとしての機能を有し、ユーザによる操作信号をコンピュータ部150が処理可能なデータ形式に変換する。
出力部170は、例えば、ディスプレイおよびプリンタであり、解析部156により解析された試料に含まれる検出対象物質を示す情報を出力する。
次に、金属構造体110の製造方法を図5および図6を用いて説明する。図5は、金属構造体の製造手順を説明するためのフローチャートである。また、図6は、金属構造体の製造手順を説明するための工程別断面図である。
上記のように、金属構造体110を構成する金属ナノ構造体のサイズ、形状および方向性、ならびに金属ナノ構造体間の距離をそれぞれそろえて、精密に規則正しく配列させることにより、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量を大きくすることができる。この結果、センシングの精度が向上する。
ここで、金属構造体を形成する基板としては、光応答デバイスとして動作させるために可視領域から近赤外領域に光吸収を有しない固体材料であることが好ましく、具体的には、例えば、ガラスや石英、サファイア等が好ましい。
まず、ステップS1000では、固体透明基板112(例えば、ガラス基板)を洗浄・乾燥する(図6(A)参照)。固体透明基板112の表面を十分に清浄にしなければ、後の工程で固体透明基板112上に形成する金属ナノ構造体である金属ナノロッド(ブロック)が固体透明基板112から剥離するおそれが生じるため、固体透明基板112の洗浄・乾燥は十分に行う。
そして、ステップS1100では、ステップS1000で清浄にした固体透明基板112の表面にポジ型電子リソグラフィ用レジスト溶液をスピンコート(回転塗布)した後、ベイキング(加熱)を行ってレジスト溶液を除去し、レジスト薄膜114を固体透明基板112上に形成する(図6(B)参照)。
このとき、後の工程で形成する金属ナノロッド(ブロック)の微細化を実現するためには、固体透明基板112上に形成するレジスト薄膜114の膜厚は、マイクロメートル以下であることが好ましく、具体的には、例えば、200nm以下であることが好ましい。本発明者は、このような薄い膜厚のレジスト薄膜114を形成するためには、市販のレジストを専用溶媒で2倍程度に希釈したレジスト溶液をスピンコートに用いればよいことを見出した。
ここで、金属ナノロッド(ブロック)の微細化を実現するためにレジスト薄膜114の膜圧を200nm以下にする理由は、次の通りである。レジストの膜圧を200nmより大きくすると、後の工程で電子ビームにより描画露光を行う際に、厚いレジスト膜全体を電子線で露光しなければならず、電子線の加速電圧を極端に高くする必要が生じる。一般に、描画の空間分解能は電子ビームの加速電圧の増大に従って向上させることができるが、そのように極端に高い加速電圧では、描画の空間分解能がかえって低下してしまう。従って、本発明が想定するサイズの金属ナノ構造体を精密に描画する空間分解能を達成するためには、電子ビームの加速電圧を極端に高くする必要はなく、この場合に必要とされる加速電圧では、200nm以下の膜圧が適当となる。
そして、ステップS1200では、ステップS1100で形成したレジスト薄膜114に、例えば、電子ビーム露光装置(図示せず)で所定のパターンを描画し、現像、リンス、乾燥する(図6(C)参照)。ここで、所定のパターンとは、所望する金属ナノロッド(ブロック)アレイの集積配置図をトレースしたものである。
このとき、後の工程で所定の金属ナノロッド(ブロック)の微細化形成(長軸方向と短軸方向の長さが共に100nm以下)を達成するためには、この電子ビーム露光工程の露光条件の最適化が極めて重要になる。本発明者は、詳細な実験を重ねた結果、次のような最適化条件を見出した。すなわち、露光の最適化条件としては、電子ビームの加速電圧を大きくし、露光のドーズレートを大幅に小さくすることが好ましい。具体的には、例えば、電子ビームの加速電圧を100kV〜200kVにし、かつ、露光のドーズレートを2μC/cm以下にすることが好ましい。このような露光条件にすることにより、微細金属構造体を形成することができる。特筆すべきは、著しく低いドーズレートの条件であり、例えば、一つの目安として、1μC/cmのドーズレートは、市販のレジストで推奨されているドーズレートの100分の1程度である。
ここで、露光の最適化条件として、電子ビームの加速電圧を大きくし、露光のドーズレートを大幅に小さくする理由は、次の通りである。上記のように、加工(描画)の空間分解能は、電子ビームの加速電圧を大きくすることにより向上する。これは、電子ビームの加速電圧を大きくすれば、電子ビームの速度が上がり、電子のドブロイ波長が短くなることによる。一方、露光のドーズレートを大きくすることは、露光時間を長くすることに対応する。露光時間を長くすると、露光中の試料自身の振動(例えば、実験室の空調ノイズや装置自身の極めて微細な振動ノイズ等)を無視できなくなり、加工形状端の「ぼやけ」などが発生し、加工分解能が低下してしまう。従って、露光の最適化条件として、電子ビームの加速電圧を大きくし、露光のドーズレートを大幅に小さくすることが適当となる。
また、本製造方法においては、現像の時間も重要なパラメータである。露光のドーズレートを大幅に小さくすることに対応して、現像時間は標準的な時間よりも長い方が好ましい。具体的には、例えば、30分程度であることが好ましい。
そして、ステップS1300では、ステップS1200で加工した固体透明基板112上に、クロム、金を順にスパッタリングにより成膜形成し、金属膜116を形成する(図6(D)参照)。なお、クロム上に成膜形成する金属には、白金または銀を用いてもよい。
ここで、クロム層は、固体透明基板112と金との付着性を高めるために形成するものであり、その膜厚は、2nm程度であることが好ましい。また、金は、プラズモン共鳴応答を示す材料であり、金層の膜厚は、10nm〜100nmであることが好ましい。この膜厚は、金属構造体110の完成時の金属ナノロッド(ブロック)の厚さに相当する。
そして、ステップS1400では、金属ナノロッド(ブロック)アレイを形成する最後の段階として、ステップS1300で加工した固体透明基板112から余分なレジスト材料を除去(剥離)することにより、金属ナノロッド(ブロック)アレイ118を完成させる(図6(E)参照)。本工程におけるレジスト除去は、例えば、ステップS1300で加工した固体透明基板112をレジストリムーバと呼ばれる薬液に浸透させ、超音波洗浄することにより行う(リフトオフ)。
このとき、常温(室温)で超音波洗浄を行っても、余分なレジストを除去しきれない。本発明者は、固体透明基板112およびレジストリムーバを65℃〜70℃に加熱しながら超音波洗浄を行うことにより、余分なレジストを完全に除去できることを見出した。すなわち、本発明者は、リフトオフ工程において余分なレジストを除去するためには、超音波洗浄に加えて加熱を行う必要があることを見出した。ここで、超音波洗浄に加えて加熱を行うことによりレジストの除去効率が向上する理由は、レジスト材料が溶剤により溶けやすくなることである。
そして、ステップS1500では、ステップS1400で完成した金属ナノロッド(ブロック)アレイ118に対して、電子顕微鏡および光学計測による評価を行う。具体的には、電子顕微鏡により、完成した金属ナノロッド(ブロック)アレイ118の微細構造を明らかにし、光学顕微鏡を用いた吸収スペクトルの測定により、完成した金属ナノロッド(ブロック)アレイ118に対するプラズモン共鳴吸収応答を評価する。さらに、レーザを励起光源として、多光子吸収の効率も評価する。
ステップS1500における実際の評価結果をまとめると、構造的には、本実施の形態に係る金属構造体の製造方法によれば、作製した金属ナノロッド(ブロック)のサイズ(長軸方向/短軸方向の長さ、厚さ)をナノメートルスケールで極めて良好に制御し、当該サイズの変動性をそれぞれ5%以下に抑制することができる。また、作製した金属ナノロッド(ブロック)アレイにおいて、隣接する金属ナノロッド(ブロック)間の距離を50nm以下にまで小さくし、当該距離の変動性を5%以下に抑制することができる。さらに、各金属ナノロッド(ブロック)の長軸または短軸を一つの軸方向に沿って整列させることができる。また、金属ナノロッド(ブロック)のデザイン(サイズ、形状、方向性、間隔)は、電子線露光描画のパターンニングにより任意に制御することができる。
また、機能的には、上記製造方法により作製した金属ナノロッド(ブロック)アレイは、金属ナノロッド(ブロック)のサイズ、および、隣接する金属ナノロッド(ブロック)間の距離に大きく依存するプラズモン吸収特性(吸収波長位置)を有する機能(光学応答の波長選択性)を発現することができる。
本製造方法によれば、金属ナノロッド(ブロック)のサイズ、形状および方向性、ならびに金属ナノロッド(ブロック)間の距離をそれぞれそろえて多数集積化した金属ナノロッド(ブロック)アレイを作製することができる。
次に、センシング装置100を用いた検出手順を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態1に係るセンシング装置を用いた検出手順を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS2000では、金属構造体110の表面に、相補的物質の一端を固定する。このとき、相補的物質の一端を金属構造体110の表面に化学的に吸着して固定することが好ましく、より好ましくは、共有結合を用いて強固に固定する。例えば、金属構造体110が金であれば、相補的物質の一端にチオール基(−SH)を結合させておき、金属構造体110の表面とチオール基との化学反応で生ずる金原子−硫黄原子の共有結合により、金属構造体110の表面に、相補的物質の一端を固定する。このとき、相補的物質の分子間相互作用、および、相補的物質と金属構造体110との相互作用により、相補的物質は、自己組織化と呼ばれる集合体形成により密に固定される。つまり、金属構造体110の表面に金原子−硫黄原子の共有結合を誘起して相補的な物質を固定し、さらに、自己組織化を誘起することにより、密に固定を行うことが好ましい。
そして、ステップS2100では、相補的物質が固定された金属構造体110上に、検出対象物質を含む試料を導入する。試料が導入された金属構造体110は、基板転送装置120に装填される。
そして、ステップS2200では、金属構造体110をステージ130上に載置する。具体的には、基板転送装置120で、制御部152からの指示により、装填された金属構造体110をステージ130上に転送することにより載置を行う。また、上記のように、基板転送装置120は、多検体多項目のセンシングを実現するために、複数の金属構造体110を同時に装填し、ステージ130上に転送することができる。
そして、ステップS2300では、光源143から、金属構造体110上の所定の位置に向けてプローブ光が照射される。光源143から照射されたプローブ光は、レンズ144により絞り込まれ、干渉計145を介して干渉波になる。このとき、光源143から照射されるプローブ光の偏光特性を直線偏光にすることが好ましい。換言すれば、プローブ光の偏光方向を金属ナノ構造体の長軸方向に平行になるように調整することが好ましい。
そして、ステップS2400では、検出部146で、金属構造体110を透過した干渉波の情報を検出する。
そして、ステップS2500では、吸収スペクトル算出部147で、検出部146で検出された透過干渉波の情報を電気信号に変換してフーリエ変換し、金属構造体110上の局在プラズモン共鳴のスペクトルを算出する。
そして、ステップS2600では、シフト量算出部154で、基準スペクトルと、センシングスペクトルとを比較して、吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を算出する。上記のように、シフト量(Δλ)は、基準スペクトルの極大波長とセンシングスペクトルの極大波長との差である。また、基準スペクトルは、例えば、予め測定され、図示しない記憶装置に格納されている。
そして、ステップS2700では、解析部156で、シフト量算出部154で算出されたシフト量(Δλ)を用いて、試料に含まれる検出対象物質の量を解析する。具体的には、例えば、上記のように、シフト量(Δλ)と検出対象物質の量との関係を示す検量線を用いて、シフト量(Δλ)を検出対象物質の量に換算することにより、検出対象物質の量を解析する。検量線は、予め作成されて図示しない記憶装置に格納されている。
ここで、上記のように、シフト量(Δλ)と検出対象物質の量との関係は、検出対象物質および相補的物質によって異なるが、概ね、比例関係にあることが知られている。従って、検出しようとする状態の固有の物理量であるシフト量(Δλ)を用いた検量線を作成し、定量的なセンシングを実現することができる。また、検出対象物質の量が大きい程、シフト量(Δλ)が大きくなる。
ここで、検出対象物質の量が大きい程シフト量(Δλ)が大きくなる理由は、次の通りである。検出対象物質と相補的物質とが結合すると、これらの結合物質の近傍の誘電率(屈折率)が変化し、この誘電率変化に伴って局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルがシフトする。このとき、検出対象物質の量が大きい程、誘電率変化が大きくなるため、シフト量(Δλ)が大きくなるのである。なお、このように誘電率変化とシフト量(Δλ)との関係も、比例関係にある。
なお、本実施の形態において、検出対象物質および相補的物質は、抗原抗体反応における抗原および抗体やDNAのハイブリダイゼーションにおける検体DNAおよびプローブDNAであるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、いわゆるホスト−ゲスト化合物を、検出対象物質および相補的物質として、本発明に適用することができる。例えば、各金属イオンの認識能に優れたクラウンエーテル化合物をプローブ(ホスト)として金属構造体110に固定することにより、金属イオン(ゲスト)を検出することができる。また、シクロデキストリン類をプローブ(ホスト)として金属構造体110に固定することにより、多種多様な有機分子群を検出することができる。
このように、本実施の形態によれば、検出しようとする状態の固有の物理量である局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを用いてセンシングを行うため、検出対象物質を高精度かつ定量的に検出することができる。
(実施の形態2)
本発明者は、さらに、検出対象物質がプローブDNAであり、相補的物質が検体DNAである場合において、一端が金属構造体に固定されたプローブDNAの他端に金属ナノ粒子を結合することにより、ハイブリダイゼーション時に、金属構造体、複合体(2本鎖)および金属ナノ粒子の間の電磁気学的相互作用が大きくなり、さらに顕著な誘電率変化が誘起されることを見出した。本知見により、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)をさらに大きくすることができる。
本実施の形態に係るセンシング装置200は、実施の形態1に係るセンシング装置100において、金属ナノ粒子210をさらに有する。また、本実施の形態においては、相補的物質はプローブDNA106であり、検出対象物質は検体DNA108であるものとする。
金属ナノ粒子210は、ナノオーダーの粒径を有する金属(例えば、金や白金、銀等)であり、金属構造体110に一端が固定されたプローブDNA106の他端に結合される(図8(A)参照)。なお、金属ナノ粒子210とプローブDNA106とは、化学的に結合されていることが好ましい。
プローブDNA106および検体DNA108がハイブリダイゼーションすると、結合後のDNA鎖長が短くなるため、金属構造体110の表面と金属ナノ粒子210の距離が短くなり、金属構造体110、複合体(2本鎖)および金属ナノ粒子210の間の電磁気学的相互作用が大きくなることから、実施の形態1の場合よりも顕著な誘電率変化を誘起する(図8(B)参照)。従って、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)をさらに大きくすることができる。
このように、本実施の形態によれば、一端が金属構造体に固定されたプローブDNAの他端に金属ナノ粒子を結合するため、ハイブリダイゼーション時に、金属構造体、複合体(2本鎖)および金属ナノ粒子の間の電磁気学的相互作用が大きくなり、さらに顕著な誘電率変化が誘起され、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)をさらに大きくすることができる。その結果、検出対象物質を実施の形態1の場合よりもさらに高精度に検出することができる。
本発明者は、本発明の効果を実証するために詳細な実験を行った。以下では、本発明のより具体的な実施の形態(実施例)について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例1においては、ガラス基板(Matsunami Glass : 24 mm × 24 mm)上に電子線リソグラフィ/リフトオフにより、アスペクト比がそれぞれ異なる金属ナノブロックを作製することにより金属構造体を作製し、検出対象物質のセンシング機能を試験した。
具体的には、まず、ガラス基板を、アセトン、メタノール、超純水を順に用いて超音波洗浄した。次に、ガラス基板上にポジ型電子リソグラフィ用レジスト(日本ゼオン株式会社製のZEP−520A、専用シンナで2倍に希釈)をスピンコート(初期:1000rpmで10sec、メイン:4000rpmで90sec)し、ホットプレート上でプリベイク(180℃で3分間)を行った。次に、加速電圧100kVの電子ビーム露光装置により、1.2μC/cmのドーズレートで所定のパターンを描画した後、現像(30分間)、リンス、乾燥させた。次に、ガラス基板上に、クロム、金を順にスパッタリング成膜形成し、金属膜を形成した。次に、65℃〜70℃に加熱したレジストリムーバ(ジメチルフォルムアミド)溶液中に浸透させ、超音波洗浄(5分間)した。
上記のようにして製造した金属構造体のサイズは、長軸方向の長さ、短軸方向の長さおよび厚さを、それぞれ、数10nm〜数100nmのオーダーのスケールで制御することができた。
次に、作製した金属構造体を用いたセンシング装置の検出機能を試験した。
具体的には、屈折率が異なる(1.0〜1.7程度)有機溶媒を、アスペクト比が異なる(1〜9)金属ナノブロックにより構成された金属構造体上に導入して、局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を測定した。測定には、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計を用いた。
図9(A)は、有機溶媒の屈折率と局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)との関係を示す図である。なお、アスペクト比が、それぞれ、1、3、5、7、9である5種類の金属ナノブロック(長軸の長さが100nm以上かつ短軸の長さが100nm以下)により構成された金属構造体を用いて実験を行った。また、図9(B)は、金属ナノブロックのアスペクト比とシフト量Δλ/屈折率nとの関係を示す図である。
図9(A)より、いずれのアスペクト比の金属ナノブロックにより構成された金属構造体を用いても、有機溶媒の屈折率と局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)とは比例関係を有していることが分かる。例えば、アスペクト比が9の金ナノブロックにより構成された金属構造体の測定においては、屈折率変化Δn=0.01が、シフト量(Δλ)=4(nm)に相当する。また、図9(B)より、金ナノブロックのアスペクト比が高い程、大きなシフト量(Δλ)を示し、高精度な検出が実現されていることが分かる。
上記のように、検出対象物質と相補的物質が結合すると、これらの結合物質の近傍の屈折率が変化し、この屈折率変化に伴って局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルがシフトする。本実施例では、検出対象物質と相補的物質が結合することによる屈折率の変化は、有機溶媒の屈折率の違いに相当する。従って、有機溶媒を用いて実験を行った本実施例により、本発明の効果を実証することができる。
次に、上記のように作成した金属構造体にプローブDNAの一端を固定し、かつ、プローブDNAの他端に金属ナノ粒子を結合して、検出対象物質のセンシング機能を試験した。なお、金属ナノ粒子は、金を用いた。
具体的には、まず、金属構造体を濃硝酸溶液に浸漬(3分間)して、50℃に加熱した洗浄液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)中で攪拌(5分×3回)しながら洗浄した。次に、金属構造体上に、3’末端にチオール基を結合し5’末端基にビオチンを結合した合成ヌクレオチド(40塩基)を、チオール結合(37℃、10時間)により固定化してプローブDNAとした。次に、金属構造体上にメルカプト酢酸溶液を滴下して金属構造体表面を陰性荷電し、分散溶液を添加して浸漬(4時間)することにより、表面にストレプトアビジンをコートした金ナノ粒子(直径10nm)とプローブDNAの5’末端とをビオチン−ストレプトアビジンの相互作用により結合させた。
このようにして、プローブDNAの一端を金属構造体上に固定し、プローブDNAの他端を金ナノ粒子と結合させた。このとき、金属構造体上の金属ナノブロックの表面は、被覆率約30%で1本鎖プローブDNAの単分子膜に被覆されていた。
また、作製した試料の電子顕微鏡による観察を行った。図10(A)は、プローブDNAの一端を金属構造体(アスペクト比=1(100nm×100nm)の金ナノブロックにより構成)上に固定し、他端を金ナノ粒子と結合した試料を示す電子顕微鏡写真である。図10(B)は、プローブDNAの一端を金属構造体(アスペクト比=6(50nm×300nm)の金ナノブロックにより構成)上に固定し、他端を金ナノ粒子と結合した試料を示す電子顕微鏡写真である。
図10(A)および図10(B)より、金ナノブロックのアスペクト比にかかわらず、プローブDNAの他端に結合した多数の金ナノ粒子(直径10nm)が観測された。
次に、作製した金属構造体を用いたセンシング装置の検出機能を試験した。
具体的には、作製した金属構造体に、プローブDNAと相補関係を有する検体DNAを含有する溶液を導入してハイブリダイゼーションを誘起させ、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計を用いて試料上の所定の位置における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定した。また、プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合させることの優位性を実証するため、プローブDNAに金ナノ粒子を結合しない金属構造体においても同様の実験を行った。また、測定には、アスペクト比が、それぞれ、1、5、9である3種類の金属ナノブロックにより構成された金属構造体を用いて実験を行った。
図11(A)は、プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合しない金属構造体上の所定の位置における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを示す図である。また、図11(B)は、プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合した金属構造体上の所定の位置における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを示す図である。また、図11(C)は、図11(A)および図11(B)における金ナノブロックのアスペクト比と局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)との関係を示す図である。なお、図11(A)〜(B)は、アスペクト比=9の金属ナノブロックにより構成された金属構造体を用いて行ったものである。
また、図11(A)において、スペクトルPは、金属構造体上にプローブDNAおよび検体DNAのいずれも固定しない場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルであり、スペクトルQは、金属構造体上にプローブDNAのみを固定した場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルであり、スペクトルRは、プローブDNAが固定された金属構造体上に検体DNAを含む試料を導入した場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルである。従って、図11(A)におけるシフト量(Δλ)は、スペクトルQの極大波長とスペクトルRの極大波長との差である。
また、図11(B)において、スペクトルP’は、金属構造体上にプローブDNAおよび検体DNAのいずれも固定しない場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルであり、スペクトルQ’は、金属構造体上にプローブDNAのみを固定した場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルであり、スペクトルR’は、プローブDNAが固定された金属構造体上に検体DNAを含む試料を導入した場合の局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルである。従って、図11(B)におけるシフト量(Δλ)は、スペクトルQ’の極大波長とスペクトルR’の極大波長との差である。
図11(A)および図11(B)より、ハイブリダイゼーションによりプラズモン共鳴の吸収スペクトルがシフトしていることが分かった。また、プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合させることにより、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を大きくできることが分かった。例えば、図11(B)におけるシフト量(Δλ)は、最大40nmであった。さらに、図11(C)より、金ナノブロックのアスペクト比が高い程(アスペクト比=9)、同一条件における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)を大きくできることが分かった。
このとき、図11(A)においては、屈折率変化Δn=0.025が、シフト量(Δλ)=10(nm)に相当する。また、検体DNA自身の屈折率が1.46、金ナノブロックの表面被覆率が30%であったため、ハイブリダイゼーションしたDNAの割合は18%であると見積もられた。
本発明に係るセンシング方法およびセンシング装置は、蛍光センシングや光反射を用いることなく、高精度かつ定量的に検出対象物質を検出することができるため、医療診断、遺伝子解析および環境分析に供するセンシング方法およびセンシング装置として有用である。
本発明の実施の形態1に係るセンシング装置の全体構成を示す図 図1に示すセンシング装置の構成を示すブロック図 (A)イムノアッセイチップ上に抗体の一端が固定された状態を示す図、(B)イムノアッセイチップ上に固定された抗体と導入された抗原とが選択的に複合体を形成した状態を示す図 (A)DNAチップ上にプローブDNAの一端が固定された状態を示す図、(B)DNAチップ上に固定されたプローブDNAと導入された検体DNAとが複合体を形成した状態を示す図 金属構造体の製造手順を説明するためのフローチャート 金属構造体の製造手順を説明するための工程別断面図 図1および図2に示すセンシング装置を用いた検出手順を説明するためのフローチャート (A)プローブDNAの他端に金属ナノ粒子が結合した状態を示す図、(B)(A)のプローブDNAが検体DNAとハイブリダイゼーションした状態を示す図 (A)有機溶媒の屈折率と局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)との関係を示す図、(B)金属ナノブロックのアスペクト比とシフト量Δλ/屈折率nとの関係を示す図 (A)プローブDNAの一端を金属構造体(アスペクト比=1(100nm×100nm)の金ナノブロックにより構成)上に固定し、他端を金ナノ粒子と結合した試料を示す電子顕微鏡写真、(B)プローブDNAの一端を金属構造体(アスペクト比=6(50nm×300nm)の金ナノブロックにより構成)上に固定し、他端を金ナノ粒子と結合した試料を示す電子顕微鏡写真 (A)プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合しない金属構造体(アスペクト比=9の金ナノブロックにより構成)上の所定の位置における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを示す図、(B)プローブDNAの他端に金ナノ粒子を結合した金属構造体(アスペクト比=9の金ナノブロックにより構成)上の所定の位置における局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを示す図、(C)図11(A)および図11(B)における金ナノブロックのアスペクト比と局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフト量(Δλ)との関係を示す図
符号の説明
100、200 センシング装置
102 抗体
104 抗原
106 プローブDNA
108 検体DNA
110 金属構造体
112 固体透明基板
114 レジスト薄膜
116 金属膜
118 金属ナノロッド(ブロック)アレイ
120 基板転送装置
130 ステージ
132 ステージ駆動装置
140 吸収スペクトル測定装置
141 光源コントローラ
142 電源
143 光源
144 レンズ
145 干渉計
146 検出部
147 吸収スペクトル算出部
150 コンピュータ部
152 制御部
154 シフト量算出部
156 解析部
160 入力部
170 出力部
210 金属ナノ粒子

Claims (11)

  1. 局在プラズモン共鳴を示す金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを用いて、前記金属構造体に付着した検出対象物質を検出するセンシング方法。
  2. 局在プラズモン共鳴を示す金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質を固定し、前記金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを用いて、前記金属構造体上における前記検出対象物質と前記相補的な物質との結合を検出することにより、前記金属構造体に付着した検出対象物質を検出するセンシング方法。
  3. 局在プラズモン共鳴を示す金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質を固定し、前記金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルのシフトを測定することにより、前記金属構造体上における前記検出対象物質と前記相補的な物質との結合を検出することによって、前記金属構造体に付着した検出対象物質を検出するセンシング方法。
  4. 局在プラズモン共鳴を示す金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定する測定ステップと、
    前記金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質の一端を固定した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルと、前記金属構造体上に前記相補的な物質を固定しかつ前記検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定した局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルとを比較して、前記吸収スペクトルのシフト量を算出する算出ステップと、
    算出したシフト量に基づいて、前記試料に含まれる検出対象物質を検出する検出ステップと、
    を有するセンシング方法。
  5. 局在プラズモン共鳴を示す金属構造体と、
    前記金属構造体に誘起される局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを測定する測定手段と、
    前記金属構造体上に検出対象物質と相補的な物質の一端を固定した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルと、前記金属構造体上に前記相補的な物質を固定しかつ前記検出対象物質を含む試料を導入した状態で測定された局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルとを比較して、前記吸収スペクトルのシフト量を算出する算出手段と、
    算出されたシフト量に基づいて、前記試料に含まれる検出対象物質を検出する検出手段と、
    を有するセンシング装置。
  6. 前記金属構造体は、一定のサイズを有する複数の金属ナノ構造体を一定の間隔かつ一定の方向で固体透明基板上に配置したものであり、
    前記金属ナノ構造体のアスペクト比は、前記金属ナノ構造体の長軸の長さが100nm以上かつ前記金属ナノ構造体の短軸の長さが100nm以下である場合、1以上かつ9以下である、
    請求項5記載のセンシング装置。
  7. 前記検出対象物質は、検体用のDNAであり、
    前記相補的な物質は、前記検体用のDNAとハイブリダイゼーション結合するプローブ用のDNAである、
    請求項5記載のセンシング装置。
  8. 前記検出対象物質は、抗原であり、
    前記相補的な物質は、前記抗原と抗原抗体反応を起こす抗体である、
    請求項5記載のセンシング装置。
  9. 前記測定手段は、
    前記金属構造体にプローブ光を照射する手段と、
    前記金属構造体を透過したプローブ光の情報を検出する手段と、
    検出された透過プローブ光情報を処理して局在プラズモン共鳴の吸収スペクトルを算出する手段と、
    を有する請求項6記載のセンシング装置。
  10. 前記プローブ光の偏光方向は、前記金属ナノ構造体の長軸方向に平行である、
    請求項9記載のセンシング装置。
  11. 前記金属構造体上に一端が固定されたプローブ用のDNAの他端に、金属ナノ粒子が結合されている、
    請求項5記載のセンシング装置。
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