JP2007064968A - 標的物質検出用の素子及びそれを用いた標的物質の検出方法、並びにそのための検出装置及びキット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板と、該基板表面上に金属を用い孤立して配された構造体と、該構造体上に配された標的物質捕捉体と、を有し、局在プラズモン共鳴を利用して標的物質を検出するための素子において、前記構造体を、少なくとも2つの金属層を、該金属層の間に非導電層を挟んで積層してなる構造とする。
【選択図】図1
Description
積層構造体は、少なくとも2つの金属層と、少なくとも1つの非導電性層と、が基板表面上に基板の厚さ方向に積層された構造を有する。そして、積層構造体は、基板表面に孤立して設けられる。図1(B)の例では、2つの金属層と、これらの金属層に挟持された非導電性層構造の積層構造が基板表面から突出した状態に形成されている。また、図1(C)にあるように、積層構造体は、基板表面から基板内部に埋没した部分を有するものでも良い。また、図1に示すように、金属層と非導電性層は積層方向に交互に配置されることが好ましい。
図4は標的物質捕捉体41として抗体を用いた場合を示している。抗体を積層構造体43に固定すると、積層構造体43に標的物質42が近づくと特異的に複合体が形成される。その結果、検出素子表面における誘電率(屈折率)が変化する。前記抗体とは、任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり、本発明においては、IgGクラスの誘導体がより好ましい。また、捕捉体としての抗体は、任意の手法により断片化された抗体フラグメント(抗体断片)でもよい。前記抗体フラグメントあるいは抗体断片とは、前記抗体あるいは免疫グロブリンの全長に満たない抗体の任意の分子あるいは複合体をいう。好ましくは、抗体フラグメントは、少なくとも、全長抗体の特異的結合能力の重要な部分を保持する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、多重特異性多価抗体(ディアボディー、トライアボディなど)およびFdフラグメントが挙げられるがこれらに限定されるものではない。抗体フラグメントを用いる場合、より検出素子近傍での捕捉が可能であるため、検出感度を向上することができる。また、多重特異性多価抗体を用いる場合、検出素子と標的物質の各々に対して特異的認識能を有するので、簡便かつ効率的に検出素子上に捕捉体を固定化することができる。抗体の他には、このような複合体形成の他の例としては、酵素と基質の複合体、DNAのハイブリダイゼーションによる相補的な塩基対形成などが挙げられる。そして、これらの複合体の一方を他方の捕捉体として利用することができる。これらの捕捉体は、物理的あるいは化学的な方法により、検出素子の表面に固定化される。なお、検出素子の表面に、いわゆる非特異吸着による共雑物の吸着による不必要なシグナルを防止するためにコーティングを行うことも有用である。即ち、スキムミルクやカゼイン、ウシ血清アルブミン、リン脂質、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体などによるコーティングを行うことができる。
上記の構成の素子を用いた標的物質検出装置について説明する。本発明による検出装置は、上記構成の素子を保持する保持手段と、素子からの信号を検出するための検出手段と、を少なくとも有して構成される。本発明による検出装置の一例を図8に示す。
上記構成の素子と、上記構成の検出装置と、標的物質の素子への捕捉に必要な試薬と、を少なくとも用いて標的物質検出用キットを構成することができる。
図10に本実施例で用いた概略の構造を示す。ここでは、検出素子は、膜厚20nmの金の構造体を625μm厚の石英基板上に電子線描画装置を用いてパターニングし作製する。各層の成膜は、スパッタ法により順次行う。構造体の外形は150nm×150nmのスクエアパターンである。層構造としては、上から、金薄膜20nm、シリコン酸化膜10nm、金薄膜20nmの3層構成とし、構造体と構造体の間隔は、400nmのスペースを開けてアレイ状に3mm×3mmの領域に配置されている。
本実施例では、ポリカーボネート基板を用いてモールド法により微細な凹凸の基板を作製し、検出素子とする。微細な凹凸のパターンは、一般的な光ディスクを製造する要領で作製することができる。構造体の外形は200nm×200nmのスクエアパターンである。層構造としては、上から、金薄膜20nm、アクリル樹脂40nm、金薄膜20nmの3層構成とし、構造体と構造体の間隔は、600nmのスペースを開けてアレイ状に3mm×3mmの領域に配置されている。金薄膜は、蒸着法、また、アクリル樹脂薄膜は、スピンコート後、紫外線による硬化処理により成膜する。次に表面の不要な金薄膜を研磨処理し、所望の層構造を有する積層構造体を基板上に形成する(図6(C))。
本実施例では、金属の構造体の形状をリング状の周回構造を有し、かつ層構造をなす構造体として形成する(図2(F))。この構造体は、リング形状による局在プラズモン増強効果と層構造による増強効果を併せ持つことを特徴とする。素子の作製は、実施例1と同じくスパッタ法による金薄膜およびシリコン酸化膜の成膜、電子線描画装置を用いての構造体のパターニング、及び、エッチングプロセスを順次行うことでなされる。走査型電子顕微鏡(SEM)画像で確認すると、構造体の外形は200nm×200nm、線幅は50nmである。描画プロセスの解像性の高低により、交差部の形状は、必ずしも直角に作製できるとは限らない。構造体と構造体の間は、400nmのスペースを開けてアレイ状に3mm×3mmの領域に配置されている。非導電性材料を挟んで金属を積層した本実施例においては、金属及び非導電性材料を積層しない場合(比較例1)、つまり金の薄膜パターン1層のみの場合と比較すると、屈折率変化に対するプラズモン共鳴ピーク波長のシフト量は、5〜20%程度増大する。
本実施例では、積層構造体の形状を交差部を有し、かつ層構造をなす構造体として形成する(図2(H))。この構造体は、交差部を有することによる局在プラズモン増強効果と層構造による増強効果を併せ持つことを特徴とする。素子の作製は、実施例1と同じくスパッタ法による金薄膜およびシリコン酸化膜の成膜、電子線描画装置を用いての構造体のパターニング、及び、エッチングプロセスを順次行うことでなされる。
実施例1に記載の素子において、金属構造体の表面に捕捉能を付与するため、本実施例では、検出素子の材料である金と標的物質であるHEL(ニワトリ卵白リゾチーム)の2つの物質に対して特異的親和性を持つ2重特異性抗体(ディアボディ)を用いる。ここで用いる2重特異性抗体(ディアボディ)は、特開2005−312446号公報に記載のものである。調整されたディアボディは、リン酸緩衝液と共に検出素子部に添加し、約30分間インキュベーション後、緩衝液にて洗浄して用いる。本実施例のディアボディを用いる手法によると、化学的な固定化方法に比べ、親和性を損なうことなく固定できること、その結果として、検出素子上に固定化するために必要な捕捉体量が削減できる。
(1)作製した素子に標的物質であるHELを含んだ検体をインレット108より導入し、HELを構造体上に捕捉させる。
(2)検体を排出し、リン酸緩衝液をインレット108より導入し、反応ウェル107内部を洗浄する。
(3)最後にリン酸緩衝液を充填して、金の構造体の吸収スペクトルを測定する。
実施例1に記載の積層構造体による検出素子と同外形の単層構造体(外形150nm×150nmのスクエアパターン、金膜厚20nm)による検出素子を比較する。本比較例においては、時間領域差分法(FDTD法)による電磁場解析の結果を示す。図14は電磁場解析から得られる水中及び空気中のプラズモン共鳴スペクトルデータ示す。図14においては、単層構造体と積層構造体とについて、それぞれの媒質中における波長に対する透過率の変化を示している。図14より屈折率変化に対するプラズモン共鳴ピーク波長のシフト量は、積層構造体が315nm/RIU、単層構造体が270nm/RIUと見積もられ、これより積層構造体の感度が約17%の増大することが理解される。図15にシミュレーションによる構造体近傍の電場強度分布の状態を示す。図15(A)は単層構造体についてのものであり図15(B)は積層構造体についてのものである。図15より単層構造体(A)に比べて積層構造体(B)の方が、構造体近傍の電場強度の強い領域の広がりが大きく、感度と相関していると考えられる電場強度分布からも積層化による効果が観察された。
2 アウトレット
3 分光光度計
4 光源ユニット
5 送液ポンプ
6 検出素子
7 表示ユニット
8 流路
9 廃液リザーバ
10 中央演算装置
11 反応ウェル部
12 コリメータレンズ
13 基板
101 金属層(金属薄膜)
102 非導電性層
103 基板
31 構造体
32 基板
41 抗体
42 検出対象物質(標的物質)
43 構造体
44 基板
51 基板
52 金属層(金属薄膜)
53 電子線レジスト
54 構造体
61 基板
62 多層膜
71 基板
72 多層膜
Claims (18)
- 基板と、該基板表面上に金属を用い孤立して配された構造体と、該構造体上に配された標的物質捕捉体と、を有し、局在プラズモン共鳴を利用して標的物質を検出するための素子であって、前記構造体が、少なくとも2つの金属層を、該金属層の間に非導電層を挟んで積層してなることを特徴とする標的物質検出用の素子。
- 前記2つの金属層と、前記非導電層とは、平面的に同じ形状を有する請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記2つの金属層と、前記非導電層とは、平面的に同じ大きさを有する請求項2に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記金属層の平面的な大きさとして、前記金属層の外周部における任意の2点間の最大距離が10nm以上1450nm以下の範囲にある請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記2つの金属層と前記非導電性層は、これらの層をパターニングして得られたものである請求項1記載の標的物質検出用の素子。
- 前記2つの金属層の各層は、10nm以上100nm以下の範囲の厚みを有する請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記非導電性層は、10nm以上100nm以下の範囲の厚みを有する請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記構造体をなす全層の厚みは、30nm以上300nm以下の範囲にある請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記構造体を前記基板表面上に複数有する請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記複数の構造体の間隔は、50nm以上2000nm以下の範囲にある請求項9に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記金属層は、金、銀、銅及びアルミニウムのいずれかの金属、もしくはそれらの合金からなる請求項1記載の素子。
- 前記非導電性層は、無機酸化物または高分子材料、あるいはそれらの混合物からなる請求項1記載の素子。
- 局在プラズモン共鳴を利用して検体中の標的物質を検出する装置であって、
請求項1に記載の標的物質検出用の素子を保持するための保持手段と、
該素子による標的物質の捕捉を検出するための検出手段と、
を有することを特徴とする標的物質の検出装置。 - 検体中の標的物質を局在プラズモン共鳴を利用して検出する検出方法であって、請求項1に記載の標的物質検出用の素子と、前記検体と、を接触させる工程と、
前記素子への標的物質の捕捉を検出する工程と、
を有することを特徴とする標的物質の検出方法。 - 検体中の標的物質を局在プラズモン共鳴を利用して検出するためのキットであって、請求項1に記載の標的物質検出用の素子と、請求項13に記載の検出装置と、標的物質の前記素子への捕捉に必要な試薬と、を有することを特徴とする標的物質検出用キット。
- 前記標的物質捕捉体は抗体である請求項1に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記抗体は抗体断片である請求項16に記載の標的物質検出用の素子。
- 前記抗体断片は多重特異性多価抗体である請求項17に記載の標的物質検出用の素子。
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