JP2007064855A - スポットピンおよびスポット装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スポットピンを用いて点着対象面に液体を点着する場合に、液体の点着量および点着形状のバラツキを、スポットピンを駆動させるための駆動機構の制御を複雑化することなく抑制する。
【解決手段】スポットピン2において、液体を保持するための液体保持部24を有するスポットピン本体20と、液体保持部24に保持された液体の温度を制御するために、スポットピン本体20の表面における熱移動を制御する熱移動制御手段21と、を備えた。熱移動制御手段21は、スポットピン本体20よりも熱伝導率の低い材料により構成された断熱材21を含んでいる。
【選択図】 図2
【解決手段】スポットピン2において、液体を保持するための液体保持部24を有するスポットピン本体20と、液体保持部24に保持された液体の温度を制御するために、スポットピン本体20の表面における熱移動を制御する熱移動制御手段21と、を備えた。熱移動制御手段21は、スポットピン本体20よりも熱伝導率の低い材料により構成された断熱材21を含んでいる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、点着対象面に対して液体を点着するためのスポット装置、およびこのスポット装置に用いるスポットピンに関するものである。
DNAの塩基配列の解析を行う方法として、バイオチップ(生化学解析用ユニット)を用いる方法がある(たとえば特許文献1−3参照)。バイオチップは、基板に対して塩基配列が既知のプローブDNAをスポット状に固定化したものであり、蛍光物質で標識したサンプルDNAと接触させることにより、サンプルDNAに含まれるプローブDNAの相補鎖DNAがプローブDNAと結合する。そのため、プローブDNAに結合していないDNAを洗浄により除去し、相補鎖DNAに標識させた蛍光物質を光エネルギで励起させて、その励起光を検出することにより、目的とするDNAの検出を行うことができる。
上述のように、バイオチップにおいては、基板に対してプローブDNAが固定化されているが、その固定化に際して、基板に対してプローブDNAを含む試薬が基板に点着される。プローブDNAの点着には、試薬を保持するための複数のスポットピンをヘッドに保持させたスポット装置が使用されている。
図12は、一般的なスポット装置のヘッド周りの要部を示すものであり、ヘッド90には複数のスポットピン91が保持されている。各スポットピン91は、毛細管力を作用させ、かつ液体を保持するための液体保持部92と、先端に設けられた円環状の点着面93と、を有している。
このスポットピン91では、試薬にスポットピン91の先端部を浸漬することにより、液体保持部92に作用する毛細管力によって液体保持部92に試薬が吸引・保持される。
一方、図13(a)〜図13(d)に示したように、基板94の表面95(点着対象面)に対する試薬の点着は、基板94の表面95に対して、試薬を保持させたスポットピン91を接触させた後に離間させることにより行われる。この場合、図13(b)および図13(c)に示すように、スポットピン91の点着面93を基板94の表面95に接触させると、液体保持部92の試薬Qの一部が基板94に接触し、点着面93と基板94の表面95との間に生じる僅かな隙間による毛細管作用によって、試薬Qが点着面93の外径に相当する範囲まで広がる。そのため、図13(d)に示すように、スポットピン91を上昇させてスポットピン91を基板94から離間させた場合には、基板94の表面95に点着面93の外径と略一致する直径Dの領域に試薬が点着される。
しかしながら、図13(a)〜図13(d)を参照して説明した試薬Qの点着は、スポットピン91における1回の試薬Qの吸引に対して、複数回行われる。そのため、スポットピン91に保持された試薬Qの温度と、スポットピン91の周り温度との間に差がある場合には、複数回の点着作業中に、スポットピン91に保持された試薬Qの温度が変化してしまうことがある。このような試薬Qの温度変化は、試薬Qの粘性変化を誘発する。また、スポットピン91に保持された試薬Qの温度に比べて、スポットピン91の周りの温度が高い場合に、試薬Qの温度が上昇して試薬Qに含まれる液体成分の蒸発量が多くなり、試薬Qの粘性が増加する。
そして、複数回の点着作業時における試薬Qの粘性の変化は、点着量や点着形状にバラツキが生じる原因ともなる。すなわち、先に説明したように、スポットピン91の点着面93と基板94の表面95との間隙による毛細管作用によって、試薬Qが点着面93と基板94の表面95に沿って広がるが、このときの試薬Qの広がる速度は、試薬Qの粘性に依存し、粘性が高いほど遅くなる。そのため、繰り返し行われる点着作業において、スポットピン91の点着面93を基板94の表面95に接触させる時間を一定に保って点着作業を行うと、試薬Qの粘性が高い場合に点着面93を基板94の表面95に接触させている間に、点着面93の外径に相当する範囲まで広がりきれずにスポット径が小さくなったり、真円度が低下してしまうことがある。
そのため、試薬Qの粘性の変化に伴うスポットに対応すべく、試薬Qにおける粘性の変化(たとえば試薬における液成分の蒸発)に対応させて、スポットピン91を基板94に接触させる時間を変化させる方法も考えられる。しかしながら、スポットピン91の接触時間を試薬Qの粘性に応じて変化させるためには、スポットピン91を移動させるための駆動機構の制御が複雑化する。
本発明は、スポットピンを用いて点着対象面に液体を点着する場合に、液体の点着量および点着形状のバラツキを、スポットピンを駆動させるための駆動機構の制御を複雑化することなく抑制することを課題としている。
本発明の第1の側面において提供されるスポットピンは、液体を保持するための液体保持部を有するスポットピン本体と、前記液体保持部に保持された液体の温度を制御するために、前記スポットピン本体の表面における熱移動を制御する熱移動制御手段と、を備えていることを特徴としている。
前記熱移動制御手段は、たとえば前記スポットピン本体よりも熱伝導率の低い材料により構成された断熱材を含んでいる。
前記熱移動制御手段は、前記スポットピン本体との間の熱移動を、伝熱媒体を介して積極的に行わせるための伝熱部を含むものとして構成することもできる。
前記伝熱部は、たとえば前記スポットピン本体の表面との間に、伝熱媒体を流動させるための空間を形成する容器を有するものとして構成される。
前記容器は、この容器内に流体を流入させるための流入口と、前記容器内の流体を流出させるための流出口と、を有するものとして構成される。この場合、前記流出口は、前記スポットピン本体の点着面に近接させて設けるのが好ましい。
前記熱移動制御手段はまた、前記スポットピン本体よりも熱伝導率の高い材料により構成された伝熱媒体を、前記スポットピンに密着させた構成であってもよい。この場合、前記伝熱部は、前記スポットピン本体に対して螺旋状に巻き付けられたコイルとして形成するのが好ましい。
本発明の第2の側面においては、スポットピンに保持させた液体を、点着対象面に点着するためのスポット装置であって、前記スポットピンは、液体を保持するための液体保持部を有するスポットピン本体と、前記スポットピン本体との間で、伝熱媒体を介して積極的に熱移動させるための伝熱部と、を備えており、かつ、前記伝熱媒体の温度を制御するための加熱冷却手段をさらに備えることを特徴とする、スポット装置が提供される。
本発明に係るスポット装置は、たとえば前記伝熱部は、前記スポットピン本体の表面との間に、前記伝熱媒体を流動させるための空間を形成する容器を有するものとして構成される一方、前記加熱冷却手段は、前記容器に温度制御された伝熱媒体を供給するように構成される。
前記容器は、この容器内に流体を流入させるための流入口と、前記容器内の流体を流出させる、かつ前記スポットピン本体の点着面に近接して設けられた流出口と、を有するものとされる。この場合、前記加熱冷却手段は、前記液体保持部に保持された液体の揮発成分と同一な成分を含んだ伝熱媒体を供給可能なように構成するのが好ましい。
前記伝熱部は、前記スポットピン本体よりも熱伝導率の高い材料により構成された伝熱媒体を、前記スポットピンに伝熱媒体を密着して設けた構成とすることもできる。この場合の伝熱部は、たとえば前記スポットピン本体に対して螺旋状に巻き付けられたコイルとして構成される
本発明では、スポットピン本体に熱移動制御手段を設けているため、スポットピン本体における液体保持部に保持された試薬などの液体の温度変化を抑制することができる。
たとえば、熱移動制御手段として、断熱材を含む構成を採用した場合には、液体保持部に保持された液体とスポットピンの外部との熱移動が断熱材によって制限される。その結果、保持された液体と外部の温度との間に大きな温度差があったとしても保持された液体の温度が急激に変化することはなく、あるいは外部の温度が急激に変化したとしても、保持された液体の温度が急激に変化することもない。
また、スポットピンにおける熱移動制御手段として伝熱部を含んだ構成を採用した場合には、加熱冷却手段によって伝熱媒体の温度を制御することにより、液体保持部に保持された液体の温度を制御することが可能となる。たとえば、伝熱部として容器を有するものを採用した場合には、容器に流動させる伝熱媒体の温度を、加熱冷却手段によって制御することにより、あるいは伝熱部を構成する伝熱媒体の温度を制御することにより、液体保持部に保持された液体の温度を制御することが可能となる。その結果、保持された液体と外部の温度との間に大きな温度差があったとしても、あるいは外部の温度が急激に変化したとしても、伝熱媒体の温度を適切に制御することによって保持された液体の温度変化を抑制することが可能となる。
とくに、伝熱部として容器を有するものを採用する場合において、容器における流出口を、スポットピン本体の先端部に隣接して設ける一方で、伝熱媒体供給手段によって液体保持部に保持された液体の揮発成分と同一の成分を含んだ伝熱媒体を供給可能な構成を採用すれば、スポットピン本体の点着面の周りにおける揮発成分の濃度を高めることができる。その結果、スポットピン本体の点着面の近傍での液体の揮発成分の揮発(蒸発)を抑制することができ、当該部分における液体表面の乾燥を抑制できるため、液体における成分比率の変化を防ぎ、より確実な点着を行うことができるようになる。
以上に説明したように、本発明では、スポットピンにおける液体保持部に保持された液体の温度変化を抑制することが可能となるため、液体保持部に保持された液体の粘性変化を抑制することができるようになる。そのため、液体保持部に対する1回の液体の供給により、複数回の点着作業を行う場合であっても、それらの点着作業中に、粘性変化に起因する点着量や点着形状にバラツキが生じるのを抑制し、安定した点着が可能となる。
また、液体保持部に保持された液体の粘性変化を抑制できるために、液体の粘性変化を考慮したスポット条件の変更(たとえば粘性変化に応じてスポットピンを点着対象面に接触させる時間の変更)を行う必要はなくなる。そのため、本発明では、スポットピンの駆動機構の制御が複雑化することもない。
以下、本発明について、第1ないし第3の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図4を参照しつつ説明する。
図1に示したスポット装置1は、図3および図4参照すれば理解できるように、プローブDNAを含む試薬Qを基板5における目的部位に点着するためのものであり、複数のスポットピン2(図面上は6つ)、ヘッド3、Z軸駆動機構40、XY軸駆動機構41、ステージ42、制御部43、試薬保持部44、および洗浄槽45を備えている。
図2に示したように、各スポットピン2は、スポットピン本体20および熱移動制御手段としての断熱部21を有している。
スポットピン本体20は、点着すべき試薬Qを内部に保持させるためものであり、係止部22、液体保持部23、および点着面24を有している。
係止部22は、ヘッド3にスポットピン2を支持する際に利用される部分であり、他の部分よりも外形寸法が大きくなされている。
液体保持部23は、毛細管力を作用させ、かつ試薬Qを吸引・保持するものであり、貫通孔として形成されている。この液体保持部23は、円形の断面を有するとともに、点着面24に向かって断面積が小さくなるテーパ状の内面25より規定されている。液体保持部23内径は、毛細管作用が発現可能なように、たとえば0.01mm〜1mmの範囲に設定されている。また、内面25のテーパ率(=(D1−D2)/L)は、0.001〜0.5の範囲に設定することが好ましい。ここで、D1は液体保持部23の上部開口23Aの径、D2は下部開口部23Bの径D2、Lはスポットピン本体20の長さである。もちろん、液体保持部23の断面形状は、円形に限らず、楕円形、半円形、三角形、四角形、多角形、星形など形状を採用することができる。
点着面24は、基板5の目的部位に試薬を点着する際に、基板5の目的部位との間で毛細管力を作用させ、点着される試薬の形状およびスポット径を規定するためのものである。この点着面24は、円環状に形成されており、その外径D3は、たとえば0.1mm〜5mmに設定されている。もちろん、点着面24の形状は、円環状に限定されず、他の形状を採用することができる。
このようなスポットピン本体20は、セラミック材料を用いて目的形状に成型した後、これを焼成により形成することができる。本発明で使用可能なセラミック材料としては、ジルコニアセラミックおよびアルミナセラミックを挙げることができるが、強度や弾性変形性の観点から、ジルコニアセラミックを使用するのが好ましい。もちろん、セラミック以外の材料、たとえばステンレスやガラスを使用することもできる。
一方、断熱部21は、スポットピン本体20の表面ひいては液体保持部23に保持された試薬Qと、スポットピン2の外部との間の熱移動を制限するためのものであり、点着面24が突出するようにしてスポットピン本体20における先端部を密着して覆っている。この断熱部21は、スポットピン本体20よりも熱伝導率の低い材料により形成されている。この断熱部21を形成するための材料としては、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、ポリスチレン、ポリエチレン、およびセルローズファイバなどを挙げることができる。
図1および図2に示したように、ヘッド3は、複数のスポットピン2を保持するためのものであり、一対のプレート30,31の間に一対のスペーサ32,33を介在させ、一対のプレート30,31との間の距離を規定した構成を有している。プレート30にはさらに、Z軸駆動機構40にヘッド3を接続するためのブロック34が固定されている。各プレート30,31には、スポットピン本体20が挿通される複数の貫通孔30A,31Aが形成されている。このようなヘッド3では、プレート30における貫通孔30Aの周辺部にスポットピン本体20の係止部22が係止され、かつ貫通孔30A,31Aの双方に挿通された状態でスポットピン2が保持される。すなわち、各スポットピン2は、ヘッド3に対してZ方向に相対移動可能な状態で保持される。
図1に示したZ軸駆動機構40は、ヘッド3ひいてはヘッド3に保持された複数のスポットピン2をZ方向に移動させるためものであり、ヘッド3に対してブロック34(図2参照)を介して連結されている。このZ軸駆動機構40は、公知の機構により構築することができる。
XY軸駆動機構41は、ヘッド3ひいてはヘッド3に保持された複数のスポットピン2をXY方向に移動させるためものであり、Z軸駆動機構40に連結されている。このXY軸駆動機構41もまた、公知の機構により構築することができる。
ステージ42は、試薬が点着される複数の基板5を載置するためのものであり、XY方向に移動可能に構成されている。ただし、ステージ42は、必ずしもXY方向に移動可能に構成する必要はない。
制御部43は、Z軸駆動機構40、XY駆動機構41およびステージ42の駆動を制御するものである。この制御部43は、たとえばCPU,ROMおよびRAMを備えた回路を含むものとして構成されている。
試薬保持部44は、基板5に点着すべき試薬を保持するためのものであり、図1および図3に示したように複数のスポットピン2の配置に対応させた複数の試薬保持槽44Aを有している。各試薬保持槽44Aに保持させる試薬は、たとえばプローブDNAおよび溶媒を含むものである。プローブDNAは、ターゲットに対して特異的結合が可能物質である。ターゲットとしては、たとえば生体由来物質であるホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、mRNAなどを生体から抽出、単離して採取し、化学的処理、化学修飾などの処理を施したものを挙げることができる。溶媒としては、プローブDNAに対して悪影響を及ぼすものでなければ特段の制限はないが、たとえば純水あるいはジメチルスルホオキサイドが使用される。
もちろん、試薬保持槽44Aに保持させるべき試薬は、目的に応じて種々に変更可能であり、たとえばDNA以外のプローブを含む試薬を保持させることも可能であり、またスポット装置1を試薬以外の液体を点着するのに使用する場合には、試薬保持部44に代えて、その目的に応じた液体を保持させた液体保持槽を有するカートリッジを使用することもできる。
洗浄槽45は、スポットピン本体20を洗浄するための洗浄液を保持したものである。この洗浄槽45には、スポットピン本体20、とくに液体保持部23の内面25に対する試薬の固着を抑制するための洗浄液が保持されている。洗浄液としては、純水、緩衝液あるいはアルコールが使用される。洗浄槽45は、超音波を供給可能な構成であってもよく、超音波の供給によりスポットピン本体20を洗浄するようにしてもよい。洗浄後のスポットピン本体20を強制乾燥させるために、送風機や温風器を配置してもよい。
次に、スポット装置1を用いた基板5に対する試薬の点着動作について説明する。
試薬の点着動作は、スポットピン2の液体保持部23に対する試薬の吸引・保持工程、および試薬の点着工程を含んでいる。
図3に示したように、試薬の吸引・保持工程は、スポットピン本体20の点着面24を、試薬保持槽44Aの保持させた試薬Qに浸漬することにより行われる。
より具体的には、まず、図1に示したXY軸駆動機構41を制御部43により制御し、各スポットピン2を対応する試薬保持槽44Aの直上に位置させる。次いで、Z軸駆動機構40を制御部43により制御し、図3に示したように各スポットピン2を対応する試薬保持槽44Aの試薬Qに一定時間浸漬させた後に引き上げる。このとき、点着面24を試薬Qに浸漬させた場合には、液体保持部23に作用する毛細管力により、液体保持部23に試薬Qが吸引され、それが液体保持部23に保持された状態が達成される。
ここで、液体保持部23は、その内面25が点着面24に向かうほど断面積の小さくなるテーパ状に形成されている。そのため、点着面24に近い部位ほど毛細管力が大きくなる。その結果、液体保持部23に試薬Qに吸引させる際に、試薬Qを適切に引き付けることができるようになり、試薬の吸引において、点着面24の近傍でのエアギャップや気泡発生を防止できる。
なお、スポットピン2における液体保持部23に対する試薬の供給は、液体保持部23の上部開口23Aを介して行ってもよい
図4(a)〜図4(c)に示したように、試薬の点着工程は、基板5の目的部位50に対して、試薬を保持させたスポットピン2を接触させた後に離間させることにより行われる。
より具体的には、まず、XY軸駆動機構41を制御部43により制御し、各スポットピン2を基板5における対応する目的部位50の直上に位置させる。次いで、Z軸駆動機構40を制御部43により制御し、各スポットピン2を対応する目的部位50に一定時間接触させた後に引き上げる。このとき、図4(b)および図4(c)に示すように、スポットピン2の点着面24を基板5の目的部位50に接触させると、液体保持部23の試薬Qの一部が基板5における目的部位50に接触し、点着面24と基板5の目的部位50との間に生じる僅かな隙間による毛細管作用によって、試薬Qが点着面24の外径に相当する範囲まで広がる。そのため、図4(d)に示すように、スポットピン2を上昇させてスポットピン2を基板5から離間させた場合には、基板5の目的部位50に点着面24の外径と略一致する直径の領域に試薬Qが点着される。
このような試薬Qの点着は、1回の試薬Qの吸引に対して、複数回繰り返し行われる。このとき、液体保持部23では、上述のように点着面24に近い部位ほど毛細管力が大きく作用するために、試薬を点着する際には、液体保持部23から試薬Qが徐々に減少しても、試薬Qは点着面24側に引き寄せられて存在し続けるため、確実な点着を実現できる。
また、スポット装置1では、スポットピン2におけるスポットピン本体20に熱移動制御手段としての断熱部21を設けているため、試薬Qの点着が繰り返し行われる場合であっても、その間において、スポットピン本体20における液体保持部23に保持された試薬Qの温度変化を抑制することができる。すなわち、液体保持部23に保持された試薬Qとスポットピン2の外部との熱移動が断熱部21によって制限される結果、保持された試薬Qと外部の温度との間に大きな温度差があったとしても保持された試薬Qの温度が急激に変化することはなく、あるいは外部の温度が急激に変化したとしても、保持された試薬Qの温度が急激に変化することもない。したがって、液体保持部23に対する1回の試薬Qの供給により、複数回の点着作業を行う場合であっても、それらの点着作業中に、粘性変化に起因する点着量や点着形状にバラツキが生じるのを抑制し、安定した点着が可能となる。
また、液体保持部23に保持された液体の粘性変化を抑制できるために、液体の粘性変化を考慮したスポット条件の変更、たとえば粘性変化に応じてスポットピン2を基板5の目的部位50に接触させる時間の変更を行う必要はなくなる。そのため、スポット装置1では、スポットピン2をZ軸方向に移動させるための機構であるZ軸駆動機構40の制御が複雑化することもない。
本実施の形態においては、液体保持部23が貫通孔により形成されたもの、すなわちスポットピン本体がパイプ状に形成されたものについて説明したが、断熱部を設ける構成は液体保持部をスリットにより形成したスポットピンに対しても適用することができる。その場合、図5(a)および図5(b)に示したように、スポットピン本体の全周に亘って断熱部21Aを設けてもよい。ただし、断熱部21Aは、液体保持部23Aに保持された試薬と接触しないように、スリット(液体保持部23A)と断熱部21Aの内面との間に空間が形成されるように、切欠23Aaを設けておくのが好ましい。図5(c)および図5(d)に示したように、断熱部21Bとしてスリット23Bを避けるように切欠21Baが設けられたもの、図5(e)および図5(f)に示したように、スリット23Cを避けるように配置された一対の断熱部21Cにより構成されたものであってもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図6および図7を参照しつつ説明する。本実施の形態を説明するために参照する図においては、先に説明したスポット装置1(図1および図2参照)と同様の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
図6に示したスポット装置1′は、図7に示したようにスポットピン2′の構成が先に説明したスポットピン2(図2参照)とは異なっており、これにともなって加熱冷却機構6′をさらに備えたものとして構成されている。
図7に示したように、スポットピン2′は、伝熱媒体を流動させるための容器25′を有している。この容器25′は、スポットピン本体20の表面20Aとの間で空間25A′を形成するものであり、流入口25B′および流出口25C′を有している。流入口25B′は、後述する加熱冷却機構6′のタンク61′に対して、チューブを60′介して連結されている。流出口25C′は、スポットピン2′の点着面24の近傍を囲むように形成されている。
一方、加熱冷却機構6′は、温調された伝熱媒体である気体を容器25′に供給するためのものであり、チューブ60′を介して容器25′に連結されている。この加熱冷却機構6′は、たとえば気体(伝熱媒体)を保持するためのタンク61′およびポンプ62′を備えたものとして構成されている。このタンク61′に保持された気体は、たとえば試薬Qにおける揮発性の高い成分と同一の成分を含んだものであり、温調機構(たとえばペルチェ素子)63′によって温度制御が可能とされている。温調機構63′は、ヘッド3やその近傍に配置された温度センサでの温度測定結果に基づいて、気体の温度を制御するように構成するのが好ましい。温調機構63′としてペルチェ素子を使用する場合には、ペルチェ素子に流れる電流の向きおよび大きさを制御することにより、タンク61′に保持された気体(伝熱媒体)の温度を制御することができる。
スポット装置1′では、タンク61′の気体(伝熱媒体)がチューブ60′を介して、流入口25B′から容器25′に流入させられる。容器25′は、スポットピン本体20の表面20Aとの間で空間25A′を形成するものであるから、容器25′に流入させられた気体は、スポットピン本体20の表面20Aに接触させられる。そして、容器25′が流出口25C′を有しているから、容器25′の内部(空間25A′)の気体は、流出口25C′を介して排出させられる。流出口25C′は、スポットピン本体20の点着面24の近傍に設けられているため、気体は点着面24の近傍から排出される。なお、気体の風量は、点着形状が変動しないようにできるだけ小さくする方が好ましい。
スポット装置1′では、容器25′に流入させる気体の温度を制御することにより、液体保持部23に保持された試薬Qの温度を制御することが可能となる。その結果、保持された試薬Qと外部の温度との間に大きな温度差があったとしても、あるいは外部の温度が急激に変化したとしても、気体(伝熱媒体)の温度を適切に制御することによって保持された試薬Qの温度変化を抑制することが可能となる。
また、容器25′における流出口25B′を、スポットピン本体20の点着面24の近傍に設ける一方で、伝熱媒体として液体保持部23に保持された試薬Qの揮発成分と同一な成分を含んだものを供給可能な構成を採用すれば、スポットピン本体20の点着面24の周りにおける揮発成分の濃度を高めることができる。その結果、スポットピン本体20の点着面24における液体の揮発成分の揮発(蒸発)を抑制することができ、点着面24における試薬Qの表面の乾燥を抑制できるため、試薬Qにおける成分比率の変化を防ぎ、より確実な点着を行うことができるようになる。
スポット装置1′では、複数のスポットピン本体20について1つの容器25′によって伝熱媒体を流動させる空間25A′を形成していたが、図8に示したように1つのスポットピン本体20について1つの容器26′により対応させてもよい。また、図9(a)および図9(b)に示したように、容器27′,28′の流出口27C′,28C′は、必ずしもスポットピン本体20の点着面24の近傍に設ける必要はなく、点着面24から離れた部位に設けてもよい。この場合には、伝熱媒体として、気体ばかりでなく液体を使用することも可能となる。
次に、本発明の第3の実施の形態について、図10および図11を参照しつつ説明する。本実施の形態を説明するために参照する図においては、先に説明したスポット装置1(図1および図2参照)と同様な要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
図10に示したスポット装置1″は、図11に示したようにスポットピン2″の構成が先に説明したスポットピン2(図2参照)とは異なっており、これにともなって加熱冷却機構7″をさらに備えたものとして構成されている。
図11に示したように、各スポットピン2″は、スポットピン本体20の表面20Aに伝熱部としてのコイル29″を設けたものである。コイル29″は、スポットピン本体20よりも熱伝導性の高い伝熱媒体を、スポットピン本体20に巻き付けることにより形成されている。コイル29″を形成するための材料としては、たとえばアルミニウム、銅あるいは金を使用することができる。
一方、加熱冷却機構7″は、図外の温調機構を備えたものとして構成されている。この温調機構は、たとえばペルチェ素子を含んだものとして構成され、伝熱線71″を介してコイル29″に繋げられる。伝熱線71″は、コイル29″と同様な材料により形成されている。このような加熱冷却機構7″は、たとえばヘッド3やその近傍に配置された温度センサでの温度測定結果に基づいて、伝熱線71″を介してのコイル29″との間の熱授受をコントロールし、コイル29″の温度を制御するように構成されている。
スポット装置1″では、コイル29″の温度を制御することにより、液体保持部23に保持された試薬Qの温度を制御することが可能となる。その結果、保持された試薬Qと外部の温度との間に大きな温度差があったとしても、あるいは外部の温度が急激に変化したとしても、気体(伝熱媒体)の温度を適切に制御することによって保持された試薬Qの温度変化を抑制することが可能となる。
なお、伝熱部は、必ずしもコイルとして形成する必要はなく、その他の形状に形成したものであってもよい。
本発明に係るスポットピンおよびこれを用いたスポット装置は、液体の粘性を一定にし、点着形状の変動を抑制できる点で、産業上極めて有用である。
1,1′,1″ スポット装置
2,2′,2″ スポットピン
20 スポットピン本体
20A (スポットピン本体の)表面
21,21A,21B,21C 断熱部(熱移動制限手段)
23 液体保持部
24 点着面
25′,26′,27′,28′ 容器(伝熱部)
25B′ (容器の)流入口
25C′,27C′,28C′ (容器の)流出口
29″ コイル(伝熱部)
5 (基板の)表面(点着対象面)
6′,6″ 加熱冷却機構(加熱冷却手段)
2,2′,2″ スポットピン
20 スポットピン本体
20A (スポットピン本体の)表面
21,21A,21B,21C 断熱部(熱移動制限手段)
23 液体保持部
24 点着面
25′,26′,27′,28′ 容器(伝熱部)
25B′ (容器の)流入口
25C′,27C′,28C′ (容器の)流出口
29″ コイル(伝熱部)
5 (基板の)表面(点着対象面)
6′,6″ 加熱冷却機構(加熱冷却手段)
Claims (12)
- 液体を保持するための液体保持部を有するスポットピン本体と、
前記液体保持部に保持された液体の温度を制御するために、前記スポットピン本体の表面における熱移動を制御する熱移動制御手段と、
を備えていることを特徴とする、スポットピン。 - 前記熱移動制御手段は、前記スポットピン本体よりも熱伝導率の低い材料により構成された断熱材を含んでいる、請求項1に記載のスポットピン。
- 前記熱移動制御手段は、前記スポットピン本体との間の熱移動を、伝熱媒体を介して積極的に行わせるための伝熱部を含んでいる、請求項1に記載のスポットピン。
- 前記伝熱部は、前記スポットピン本体の表面との間に、前記伝熱媒体を流動させるための空間を形成する容器を有している、請求項3に記載のスポットピン。
- 前記容器は、この容器内に流体を流入させるための流入口と、前記容器内の流体を流出させ、かつ前記スポットピン本体の点着面に近接して設けられた流出口と、を有している、請求項4に記載のスポットピン。
- 前記伝熱部は、前記スポットピン本体よりも熱伝導率の高い材料により構成された前記伝熱媒体を、前記スポットピンに密着させた構成を有している、請求項3に記載のスポットピン。
- 前記伝熱部は、前記伝熱媒体を、前記スポットピン本体に対して螺旋状に巻き付けて形成したコイルである、請求項6に記載のスポットピン。
- スポットピンに保持させた液体を、点着対象面に点着するためのスポット装置であって、
前記スポットピンは、液体を保持するための液体保持部を有するスポットピン本体と、前記スポットピン本体との間で、伝熱媒体を介して積極的に熱移動させるための伝熱部と、を備えており、かつ、
前記伝熱媒体の温度を制御するための加熱冷却手段をさらに備えることを特徴とする、スポット装置。 - 前記伝熱部は、前記スポットピン本体の表面との間に、前記伝熱媒体を流動させるための空間を形成する容器を有しており、かつ、
前記加熱冷却手段は、前記容器に温度制御された伝熱媒体を供給するように構成されている、請求項8に記載のスポット装置。 - 前記容器は、この容器内に流体を流入させるための流入口と、前記容器内の流体を流出させ、かつ前記スポットピン本体の点着面に近接して設けられた流出口と、を有しており、
前記加熱冷却手段は、前記液体保持部に保持された液体における揮発成分と同一の成分を含んだ伝熱媒体を供給可能なように構成されている、請求項9に記載のスポット装置。 - 前記伝熱部は、前記スポットピン本体よりも熱伝導率の高い材料により構成された伝熱媒体を、前記スポットピンに密着させた構成を有している、請求項8に記載のスポット装置。
- 前記伝熱部は、前記伝熱媒体を、前記スポットピン本体に対して螺旋状に巻き付けて形成したコイルである、請求項11に記載のスポット装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2005252904A JP2007064855A (ja) | 2005-08-31 | 2005-08-31 | スポットピンおよびスポット装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2005252904A JP2007064855A (ja) | 2005-08-31 | 2005-08-31 | スポットピンおよびスポット装置 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007064855A true JP2007064855A (ja) | 2007-03-15 |
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ID=37927210
Family Applications (1)
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JP2005252904A Withdrawn JP2007064855A (ja) | 2005-08-31 | 2005-08-31 | スポットピンおよびスポット装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2007064855A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012133605A1 (ja) * | 2011-03-31 | 2012-10-04 | 積水メディカル株式会社 | ピペットチップ |
-
2005
- 2005-08-31 JP JP2005252904A patent/JP2007064855A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012133605A1 (ja) * | 2011-03-31 | 2012-10-04 | 積水メディカル株式会社 | ピペットチップ |
JP5137274B2 (ja) * | 2011-03-31 | 2013-02-06 | 積水メディカル株式会社 | ピペットチップ |
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