JP2007064292A - 偏心スラスト玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 希薄潤滑下、高荷重下で使用されても、表面起点型剥離、内部起点型剥離がいずれも生じ難くて長寿命化が実現でき、かつ生産性の向上、低コスト化、高品質化が実現できる偏心スラスト玉軸受を提供する。
【解決手段】 相互間で偏心回転運動を行う一対の対面する軌道輪10,11の相互に対向する位置に所要数の軌道溝10a,11aを形成する。対向する軌道溝10a,11a間に玉9を介在させる。この偏心スラスト玉軸受8において、軌道輪10,11に高周波熱処理を行い、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、スクロール圧縮機における旋回スクロール部材と静止スクロール部材等のように、相互間で偏心回転運動を行う一対の軌道輪の相互に対向する位置に所要数の軌道溝を形成し、対向する軌道溝間に玉を介在させた偏心スラスト玉軸受に関する。
スクロール圧縮機は、自動車用エアコンやヒートポンプ式給湯器等に多く使用されている。このようなスクロール圧縮機には、特許文献1や特許文献2に開示されたような偏心スラスト玉軸受が用いられる。
この種の偏心スラスト玉軸受は、相互間で偏心回転運動を行う一対の対面する軌道輪の相互に対向する位置に所要数の軌道溝を形成し、これら対向する軌道溝間に玉を介在させたものである。軌道輪には、低コスト化のために鋼板のプレス加工品が多く用いられている。
プレス加工による上記軌道輪の製造工程としては、図5(B)に一例を示すように、鋼板をプレス加工した後、軌道溝の表面硬化等のために熱処理し、タンブラー加工して仕上げる。鋼板には例えばJIS規格のSCM415等が用いられている。熱処理としては、SCM415等の炭素含有量の低い鋼の場合、浸炭熱処理や浸炭窒化熱処理が採用され、焼戻の後、反りやうねり矯正のためにプレステンパーが行われる。浸炭熱処理の代わりに光輝熱処理が採用される場合もある。これら浸炭熱処理または光輝熱処理と焼戻とは、連続炉で行われる。
なお、ラジアルタイプのシェル型針状ころ軸受においては、生産性向上のために、高周波熱処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献3)。これは主に、シェル型外輪の縁曲げを行う場合の工程削減を図ることを目的とする。すなわち、一般的には量産性に優れた浸炭焼入が採用されるが、シェル型針状ころ軸受では、一端にフランジを有する外輪に保持器付きころを入れた後に、外輪の他端のフランジの縁曲げを行うことから、焼きなましが必要とされる。この焼きなまし処理を、部分的な処理が可能な高周波熱処理の採用により省略しようとするものである。
特開平10−89350号公報 特開2000−337365号公報 特開2005−42879号公報
近年、自動車の高機能化および低コスト化に伴い、スクロール圧縮機に使用されるスラスト玉軸受の長寿命化、低コスト化、高品質化が要求されている。給湯機においても上記と同様な要求がある。
また、自然冷媒(CO2 )を採用するスクロール圧縮機等に使用される偏心スラスト玉軸受は、希薄条件下および高荷重下で使用される。希薄条件下,高荷重下という厳しい条件下で使用されるため、表面起点剥離などの表面損傷での早期破損に対して抑制効果があり、また通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点剥離にも抑制効果がある長寿命な偏心スラスト玉軸受が求められている。
詳しく説明すると、自動車用エアコンやヒートポンプ式給湯機の偏心スラスト玉軸受に使用されている潤滑用のオイルは低粘度である上、更にスクロール圧縮機の冷却能力を向上させるため、オイル量を削減している。そして、地球温暖化への影響を考慮し、自然冷媒(CO2 )を採用していることから、圧縮機内の高圧化が進み、さらに一層希薄潤滑下で偏心スラスト玉軸受が使用されることになる。これらのため、玉と軌道輪間において、油膜切れを起こし金属接触となることがある。そのため、接触部が発熱し表面損傷や表面起点型の剥離が発生し易くなる。また、局部的に接触面圧が高くなり、内部起点型の剥離も発生し易くなる。
また、軸受の使用条件として、高荷重化への傾向が見られ、通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離も発生する。このような状況下で、客先要望としては、表面起点型剥離などの表面損傷での早期破損に対して効果があり、通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離にも効果がある長寿命な軸受が求められている。
従来の浸炭熱処理,光輝熱処理等で熱処理した偏心スラスト玉軸受の軌道輪は、表面硬度はHV653以上となるが、内部硬度はHV400程度であり、内部硬度が不足して、通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点剥離に対して十分ではない。また、表面硬度が十分に得られても、浸炭熱処理,光輝熱処理等の雰囲気熱処理を施した軌道輪は、熱処理時の加熱時間が長くなるため、表面の粒界酸化層の生成が進む。雰囲気熱処理の場合、表面の粒界酸化層は、熱処理条件によって異なるが、2〜10μm程度発生する。熱処理後に切削加工される軌道輪は、玉の軌道面となる軌道輪表面を切削加工することにより粒界酸化層が取り除かれるが、鋼板プレス軌道輪では切削加工できないため、軌道輪は表面に粒界酸化層が残ってしまう。粒界酸化層に形成された酸化物は周囲の鋼組織と比べて著しく硬さが異なるため、亀裂発生の起点となる恐れがある。そのため、粒界酸化層が上記のように形成されると、希薄潤滑下での玉と軌道輪間の油膜切れ(金属接触)による表層発熱や接線力による表面亀裂が発生することがある。
また、従来の浸炭熱処理,光輝熱処理等の雰囲気熱処理を行うものは、偏心スラスト玉軸受の生産ライン中に熱処理工程部が配置できず、生産性の向上、およびその生産性向上によるコスト低下が難しい。熱処理工程のインライン化ができないため、個々の軌道輪毎の品質管理が難しく、高品質化実現の妨げとなっている。
なお、特許文献3には、軸受外輪の高周波熱処理につき開示されているが、これは、上記のように、シェル型外輪の縁曲げを行う場合の工程削減を図ることを目的とするものであり、偏心スラスト玉軸受の軌道輪の場合の表面起点型剥離,内部起点型剥離を同時に抑制することについて示唆するものではない。
この発明の目的は、希薄潤滑下、高荷重下で使用されても、表面起点型剥離などの表面損傷での早期破損が生じ難く、また通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離も生じ難くて長寿命化が実現でき、かつ生産性の向上、生産設備の簡素化による低コスト化や、個別品質管理の容易化による高品質化が実現できる偏心スラスト玉軸受を提供することである。
この発明の偏心スラスト玉軸受は、相互間で偏心回転運動を行う一対の対面する軌道輪の相互に対向する位置に所要数の軌道溝を形成し、上記の対向する軌道溝間に玉を介在させた偏心スラスト玉軸受において、軌道輪に高周波熱処理を行い、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下としたことを特徴とする。
この構成によると、軌道輪の熱処理を高周波熱処理としたため、浸炭熱処理、浸炭窒化熱処理、光輝熱処理等の雰囲気熱処理を施した軌道輪に比べ昇温時間および加熱時間を短くすることができる。そのため、雰囲気による軌道輪表面の粒界酸化が抑制されて、表面の粒界酸化層は層厚が1μm以下となり、殆ど発生しない。そのため、希薄潤滑下での玉と軌道輪間の油膜切れ,金属接触による表層発熱や接線力による表面亀裂の発生を防止することができる。また、高周波熱処理によると、軌道輪の表面および内部の硬度を十分に高くすることができる。これらのため、希薄潤滑下、高荷重下で使用されても、表面起点型剥離などの表面損傷での早期破損が生じ難く、また通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離も生じ難くて長寿命化が実現できる。
また、高周波熱処理によるため、クリーンな電気エネルギーを用いた加熱であることから、運転効率が良く熱処理工程部のインライン化が容易で、生産性の向上にも役立つため、更なるコスト低減も可能である。すなわち、高周波熱処理による熱処理工程のインライン化により、製品の製造サイクルタイムが短縮でき、仕掛かり在庫を持つ必要がなく、設備も簡素なものとできて、低コスト化が実現できる。また、熱処理工程をインライン化することにより、個々の軌道輪毎の品質管理、いわゆるピースバイピースの品質管理が可能となり、高品質化が実現できる。
この発明において、軌道輪の表面硬度および内部硬度を、ビッカース硬さでHV653以上としても良い。軌道輪の硬度は、軸受として機能するための最も重要な要素の一つである。偏心スラスト玉軸受では、軌道輪の軌道面の表面硬度がHV653以上であることが望ましく、表面硬度がHV653未満では、転動疲労寿命が低下する。表面硬度をHV653以上とすることで、転動疲労寿命の低下を回避することができる。さらに、表面だけでなく、軌道輪の内部硬度もHV653以上とすることで、表面のみHV653以上である軌道輪に比べて軌道輪に塑性変形が生じ難くなり、より転動疲労寿命が向上する。
ここで、表面硬度とは、軌道輪の表面において玉と接触する部分(すなわち軌道溝の内面)の硬さを言う。また、内部硬度とは、軌道輪において玉と接触する側の面に垂直な断面の中央部の硬さを言う。
この発明において、軌道輪の材料を、炭素0.4質量%以上を含む鋼としても良い。炭素を0.4質量%以上を含む鋼とすると、容易に前記HV653以上の硬度を得ることができる。
さらに、この発明において、前記軌道輪の材料を鋼板としても良い。鋼板とすることにより、プレス加工で生産でき、旋削等の方法で形成した部材を用いるものよりも、低コストな軌道輪とすることができる。軌道輪の材料を鋼板とし、プレス加工により軌道輪とする場合、軌道溝表面は熱処理後に研削や研磨等の加工を施さずに使用することになるが、高周波熱処理によると粒界酸化層の層厚が1μm以下となるため、粒界酸化層の影響よる寿命低下の問題を生じない。
この発明における偏心スラスト玉軸受は、自然冷媒(CO2 )を採用した圧縮機に使用されるものであっても良い。自然冷媒を採用した圧縮機では、圧縮機内の高圧化が進み、また冷却能力向上のために希薄潤滑下で使用される。しかし、この発明の偏心スラスト玉軸受は、軌道輪に高周波熱処理を行い、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下としたことにより、表面および内部起点型剥離が生じ難くて長寿命化が得られるため、自然冷媒を採用した圧縮機の場合に、上記の長寿命化の効果がより一層有効に発揮される。
この発明の偏心スラスト玉軸受は、相互間で偏心回転運動を行う一対の対面する軌道輪の相互に対向する位置に所要数の軌道溝を形成し、上記の対向する軌道溝間に玉を介在させた偏心スラスト玉軸受において、軌道輪に高周波熱処理を行い、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下としたものであるため、希薄潤滑下、高荷重下で使用されても、表面起点型剥離などの表面損傷での早期破損が生じ難く、通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離も生じ難くて長寿命化が実現できる。また、熱処理工程のインライン化が可能で、生産性の向上、生産設備の簡素化による低コスト化、個別の軌道輪の品質管理の容易化による高品質化が実現できる。
この発明の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。図1はこの発明の一実施形態にかかる偏心スラスト玉軸受が適用されたスクロール圧縮機の縦断面図、図2は同スクロール圧縮機における偏心スラスト玉軸受の取付例を示す縦断面図、図3はその拡大図、図4はこのその軌道輪の平面図を示す。
スクロール圧縮機Sは、図1に示すように駆動モータ1の動力を受け回転駆動する出力軸2によって偏心旋回する旋回スクロール部材3と、これに対向して設置される固定スクロール部材4とに螺旋状隔壁5,6を各々設け、両隔壁5,6間に形成される圧縮室7を、旋回スクロール部材3の旋回に伴って容積変化させることによって圧縮室内の流体を圧縮するものである。上記流体としては、ここでは自然冷媒(例えば、CO2 )を用いている。
上記旋回スクロール部材3と、固定スクロール部材4に一体に固着された固定フレーム4aとの間には、この発明の偏心スラスト玉軸受8が介装されている。この偏心スラスト玉軸受8は、図に示すように、鋼球等の玉9と、上記旋回スクロール部材3および上記固定フレーム4aに形成された軌道輪装着溝3a,4bに装着され上記玉9を介在させた一対のリング状の軌道輪10,11とよりなる。このリング状軌道輪10,11の、上記軌道輪装着溝3a,4bに対する装着は、ピン孔10b,11b(図4参照)を介し不図示のピンによってなされる。各リング状軌道輪10,11は、鋼板等のプレス成形品からなり、それらの対向面には、玉9を転走させる環状の軌道溝10a,11aが、周方向の複数箇所に等間隔で形成されている。軌道溝10a,11aは、溝断面が玉9の半径より僅かに大きな曲率半径の円弧形状とされ、且つ、溝底部に沿う円周軌道の直径d(図3、図4参照)が旋回スクロール部材の偏心旋回半径eと等しくなるよう形成されている。
前記各軌道輪10,11は、鋼板のプレス加工品であり、全体に高周波熱処理を施し、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下としている。また、前記高周波熱処理により、軌道輪10,11の表面硬度および内部硬度をHV653以上としている。
上記旋回スクロール部材3の軸心C1は、上記出力軸の軸心C2に対して、所定の偏心量(上記偏心旋回半径)eだけ偏心しており、駆動モータ1が作動すると、旋回スクロール部材3が偏心量eに等しい旋回半径で偏心回転する。このとき、旋回スクロール部材3には、これを自転させようとする力が働き、また、流体(冷媒)の圧縮動作に伴うスラスト荷重が負荷される。偏心スラスト玉軸受8は、旋回スクロール部材3の偏心回転に伴って玉9が各軌道溝10a,11a間を転動することによって、旋回スクロール部材3の自転を防止すると共に、スラスト荷重を支持するべく機能する。
図5(A)は、上記の偏心スラスト玉軸受8の軌道輪10,11の製造工程の一例を示す。この軌道輪10,11に採用される鋼板の材質は、炭素を0.4質量%以上含むものであり、例えば、S40C〜S55C(機械構造用炭素鋼)、SCM440〜SCM445(機械構造用合金鋼)、SMN443(機械構造用マンガン鋼)、SK5(炭素工具鋼)、SUJ2、SAE1070等が使用される。これら鋼板をプレス加工にて上記のような所定の形状に加工する。これを拘束した状態で焼入,焼戻の高周波熱処理を施し、引き続き高周波焼戻処理を行う。
この場合、高周波焼入工程における加熱時間が、一般的な焼入硬化処理である浸炭熱処理、浸炭窒化熱処理、あるいは光輝熱処理等の雰囲気熱処理に比較して極めて短い為、粒界酸化層が殆ど形成されず、その層厚は1μm以下となる。また、高周波焼戻工程では、軌道輪を拘束している為、反りやうねりの発生が抑制される。上記高周波熱処理により、軌道輪10,11の表面硬度および内部硬度は、いずれもビッカース硬度でHV653以上となる。次に、研削加工を行うことなく、例えばタンブラーにより仕上げがなされる。
上記製造工程によれば、粒界酸化層が殆ど形成されないので、この軌道輪10,11を上記のような偏心スラスト玉軸受8に適用した場合、希薄潤滑下で玉9と軌道輪10,11間の油膜切れ(金属接触)があっても、表層発熱や接線力による表面亀裂発生が抑制される。
高周波熱処理設備は比較的小規模であり、しかも、取扱に注意が必要な浸炭ガス等も使用しない為、熱処理設備をインライン化して、加工工程と共に1つのラインを構成することができる。すなわち、ワンライン化することができる。そのため、熱処理前および熱処理後の仕掛品が発生せず、これにより製造コストの低減化が図られる。また、製品の管理も容易となる為、ピースバイピースの品質管理を行うことができ、製品の高品質化が実現される。さらに、通常の雰囲気熱処理の場合は、焼戻工程終了時において軌道輪の反りやうねりを生じ易い為、矯正のためのプレステンパー工程を必要とするが、この高周波熱処理を採用した製造工程では、このような反りやうねりが生じ難い為、プレステンパーの工程は不要となり、これによっても製造コストの低減化が図られる。
上記製造工程に基づき偏心スラスト玉軸受用軌道輪を作成した。軌道輪の材料として、板厚1.4mmのS55CおよびSAE1070の鋼板を用いた。この材料を、製品サイズ:内径60mm、外径100mmとしてプレス加工し、試験片とした。
この試験片に高周波コイルにて高周波(100kHz)加熱を施し、試験片全体が加熱された後、水冷を実施した。続いて、高周波焼戻(誘導焼戻、220〜230℃、10秒間保持)を実施した。比較例として、SCM415の鋼板をプレス加工して試験片とし、浸炭熱処理(880℃×40分+820℃×10分、160℃×2時間)又は光輝熱処理(850℃×40分)を施し、200℃×1時間のプレステンパー(反り、うねり矯正)を実施した。表1にこれらの試験片の品質を示す。
Figure 2007064292
表1から、この発明の実施例の場合は、表面硬度および内部硬度共にHV653以上となるのに対し、比較例では表面硬度はHV653以上となるが、内部硬度はHV400程度にとどまることが分かる。また、表面の粒界酸化層は、この発明の実施例の場合、層厚が1μm以下であって、殆ど形成されないのに対し、比較例では5〜8μと深く形成されていることが分かる。
表1の試験片をそれぞれ2個使用し、その間に転動体である玉とこれらの玉を保持する保持器とを配置し、偏心スラスト玉軸受の形で許容静転動体荷重試験および寿命試験を行った。
〔許容静転動体荷重試験〕
上記試験片について、アムスラー試験機を用い、試験片に転動体(玉)直径の0.01%の総永久変形量が発生する荷重を測定した。転がり軸受の分野において許容できる塑性変形の大きさは、最大荷重の接触部分に発生して残留する塑性変形について、転動体の変形量と軌道面の変形量和が転動体直径の0.01%以下と定義されている。このような小さい残留変形ならば、普通の荷重を受ける軸受の滑らかな回転や疲労寿命に対して悪影響を及ぼすことがないことが経験的に知られている。上記許容静転動体荷重試験結果に基づき、軌道輪の材質(材料+熱処理)による安全率を求めた。
安全率は次式で定義される。安全率の数値は小さい方が望ましい。
O =CO /PO max
(SO :安全率、CO :基本静定格荷重、PO max:最大静転動体荷重)
このように求めた各実施例1,2および比較例1の安全率を表2に示す。
Figure 2007064292
表2の結果から分かるように、この発明の実施例1,2を従来例である比較例と比較すると、許容静転動体荷重が60%以上向上し、良好な結果が得られた。
これは、実施例1,2の場合、軌道輪全体(試験片全体)が、高周波加熱硬化処理されるために、表面硬度および内部硬度共にHV653以上となり、軌道輪に永久変形(塑性変形)が発生し難く、その結果、許容静転動体荷重が向上するもの考えられる。
また、この発明の実施例3として、SUJ2を用いて上記と同様にプレス加工および高周波熱処理を施したものを追加し、また、比較例2として実施例2と同じSUJ2を用い浸炭熱処理を施したものを追加し、これらについても、許容静転動体荷重試験結果に基づく安全率を算出した結果を表3に示す。
Figure 2007064292
実施例3と比較例2とを比較すると、同材質のSUJ2を用いているが、熱処理方法の違いによって、実施例3の方が比較例2よりも許容静転動体荷重が高くなっている。
これは、高周波熱処理を施すことにより、軌道輪表面の粒界酸化が抑制され、酸化層の層厚が1μm以下となり、殆ど形成されないために、表層部での変形も抑制され、許容静転動体荷重が高くなるものと考えられる。また、高周波熱処理を施すことにより、冷却前のオーステナイト結晶粒界の形成が完全に行われず、結晶粒界が明瞭に形成されないために、変形抵抗があり、これによっても許容静転動体荷重が高くなるものと考えられる。
〔寿命試験〕
実施例1,2および比較例1の試験片を用いて上記偏心スラスト玉軸受を組立て、その寿命試験を実施した。試験条件を表4に示す。
Figure 2007064292
表5に寿命試験結果を示す。この寿命試験結果では、比較例1の寿命を1とし、その相対比で示している。
Figure 2007064292
表5の結果から、実施例1,2の試験片の寿命が比較例1の寿命より2倍以上長くなっていることが分かる。これは、高周波熱処理を施すことにより、軌道輪表面の粒界酸化を抑制し、酸化層の層厚が1μm以下となり、殆ど形成されないに等しいから、滑りによる表層発熱や接線力による表面亀裂の発生が防止される結果、長寿命となるものと考えられる。同様に、高周波熱処理を施すことにより、冷却前のオーステナイト結晶粒界の形成が完全に行われず、結晶粒界が明瞭に形成されない為、亀裂発生、進展に対する抵抗性が非常に大きくなり、滑りによる表層発熱や接線力による表面亀裂の発生が防止され、更に、内部起点型剥離の亀裂に対しても、亀裂発生、進展に対する抵抗性が非常に大きくなることによっても、長寿命となるものと考えられる。
図6(a)(b)は、軌道輪(試験片)の表層部の光学顕微鏡写真であり、(a)は実施例1および2の例であり、(b)は比較例1の例を示すものである。この光学顕微鏡写真は、次の手順で得た。即ち、上記軌道輪を転走面に垂直な面で切断し、その断面を鏡面研磨した後、研磨された面を室温で3%ナイタルに浸漬して腐食させた。浸漬時間は、2〜10秒であるが、鋼種により腐食され易さが異なる為、腐食の進行状況を確認しながら、夫々の軌道輪について適当な時間とした。その後、転走面直下の表層部を光学顕微鏡観察すると共にその写真撮影を行った。この光学顕微鏡観察の結果、この発明の実施例1および2では、表層部の粒界酸化層の層厚は1μm以下であり、比較例2では、表層部の粒界酸化層の層厚は6μm程度であることがわかった。
図7(a)(b)は、旧オーステナイト結晶粒界の光学顕微鏡写真であり、また、図8(a)(b)は、旧オーステナイト結晶粒界の模式図であり、夫々の(a)は実施例1および2の例であり、(b)は比較例1の例を示すものである。旧オーステナイト結晶粒界の観察は以下の手順で行った。即ち、上記軌道輪を転走面に垂直な面で切断し、その断面を鏡面研磨した後、研磨された面を室温で腐食液に30分間浸漬して腐食させた。腐食液は、ピクリン酸飽和水溶液に界面活性剤を加えたもの(JIS G 0551 附属書1)を使用した。その後、断面の中央部を400倍の倍率で光学顕微鏡観察すると共にその写真撮影を行った。
図7および図8において、図7(b)の比較例1では、明確な旧オーステナイト結晶粒界が観察されるのに対し、図7(a)のこの発明の実施例1,2では、旧オーステナイト結晶粒界が不明確であることが観察される。これは、比較例1の場合、図8(b)に示すように旧オーステナイト結晶粒界の形成が十分に進行している為、結晶粒界が明瞭に観察されたものと考えられる。これに対し、この発明の実施例1,2の場合、図8(a)に示すように、旧オーステナイト結晶粒界の形成が十分に進行していない為、結晶粒界が明瞭に観察されなかったものと考えられる。このことから、この発明の実施例1,2では、旧オーステナイト結晶粒界の形成が、比較例1ほど進行していないことが分かる。
なお、この発明の偏心スラスト玉軸受は、自然冷媒(CO2 )を採用したスクロール圧縮機に望ましく採用されるが、これに限らず、その他の希薄潤滑下、高荷重下で用いられる圧縮幾にも有用である。
また、この明細書で開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記の説明だけでなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
この発明の偏心スラスト玉軸受が適用されたスクロール圧縮機の縦断面図である。 同スクロール圧縮機における偏心スラスト玉軸受の取付例を示す縦断面図である。 その拡大図である。 この発明の軌道輪の平面図である。 (A),(B)は、それぞれこの実施形態および従来の偏心スラスト玉軸受の軌道輪の製造工程の一例を示すである。 (a)(b)は、軌道輪の表層部の光学顕微鏡写真であり、(a)は実施例1および2の例であり、(b)は比較例1の例を示すものである。 (a)(b)は、旧オーステナイト結晶粒界の光学顕微鏡写真であり、(a)は実施例1および2の例であり、(b)は比較例1の例を示すものである。 (a)(b)は、旧オーステナイト結晶粒界の模式図であり、(a)は実施例1および2の例であり、(b)は比較例1の例を示すものである。
符号の説明
8…偏心スラスト玉軸受
10…軌道輪
10a…軌道溝
11…軌道輪
11a…軌道溝
S…スクロール圧縮幾

Claims (5)

  1. 相互間で偏心回転運動を行う一対の対面する軌道輪の相互に対向する位置に所要数の軌道溝を形成し、上記の対向する軌道溝間に玉を介在させた偏心スラスト玉軸受において、 軌道輪に高周波熱処理を行い、表面の粒界酸化層の層厚を1μm以下としたことを特徴とする偏心スラスト玉軸受。
  2. 請求項1において、前記軌道輪の表面硬度および内部硬度がHV653以上である偏心スラスト玉軸受。
  3. 請求項1または請求項2において、前記軌道輪の材料が、炭素0.4質量%以上を含む鋼である偏心スラスト玉軸受。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記軌道輪の材料が鋼板である偏心スラスト玉軸受。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、自然冷媒を採用した圧縮機に使用されるものである偏心スラスト玉軸受。
JP2005249106A 2005-08-30 2005-08-30 偏心スラスト玉軸受 Pending JP2007064292A (ja)

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