JP2007064066A - 内燃機関の排気空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の排気空燃比制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 排気A/Fフィードバック制御における排気A/F学習値の更新タイミングの適正化を図ることによって、燃料消費率の悪化を招くことなしにSOx被毒回復動作が良好に行える内燃機関の排気空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】 排気A/Fフィードバック制御における排気A/F学習値を算出するに際し、算出した実A/Fが、基本A/Fを基準として燃料添加ノズル等のバラツキを考慮した変動範囲の上下限値の範囲内に存在している場合にのみ排気A/F学習値の更新を許可する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車等に搭載される内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ場合もある)における排気空燃比制御装置に係る。特に、本発明は、排気空燃比(以下、排気A/Fという)の収束性を良好に得るための対策に関する。
従来より、ディーゼルエンジンや希薄燃焼式ガソリンエンジンのように酸素過剰状態の混合気を燃焼させて運転が行われる内燃機関では、排気中の窒素酸化物(以下、NOxという)を浄化すべく、排気通路に排気浄化装置としてNOx吸収材が設けられている。
このようなNOx吸収材は、吸蔵還元型NOx触媒に代表されるように、流入する排気の空燃比が高い(リーン)ときにはその排気中のNOxを吸収し、流入する排気の空燃比が低い(リッチ)ときにはその吸収していたNOxを放出する特性を有している。つまり、内燃機関の通常運転時であって排気が酸素過剰状態であるときには排気中のNOxがNOx吸収材に吸収される一方、後述する排気中への燃料添加等がなされてNOx吸収材内部が還元雰囲気となった際にはNOxが還元され且つ放出されることになる。
また、内燃機関の燃料中には硫黄分が僅かに含まれていることが多く、内燃機関の運転時には、上記NOxのみならず、SO2やSO3などといった硫黄酸化物(以下、SOxという)も同時に生成され、このSOxもNOxと同様に、NOx吸収材に吸収されることになる。そして、このSOxは、時間の経過と共に硫酸塩等の化学的に安定した物質となってNOx吸収材に蓄積されてしまう。
このような状況では、NOx吸収材の本来の機能が阻害される所謂SOx被毒が生じてしまうため、NOx吸収材に吸収されるSOxは、所定のタイミングでNOx吸収材から放出(SOx被毒回復処理)させる必要がある。
以上のようなSOx被毒からの回復を目的として、排気中に燃料を添加する装置が知られている。例えば、内燃機関の排気通路に配設された吸蔵還元型NOx触媒(以下、単にNOx触媒という)の上流側に燃料を添加供給する燃料添加ノズルと、NOx触媒から流出した排気の空燃比(排気A/F)に基づいて燃料添加量を補正する燃料添加量補正手段とを備えた排気浄化装置が知られている(例えば、下記の特許文献1を参照)。つまり、燃料添加ノズルから所定量の燃料を添加することによりNOx触媒にて燃料を反応させ、このときに発生する反応熱によりNOx触媒の温度を上昇させてSOxを放出するようにしたものである。
また、上記燃料添加量補正手段による燃料添加量の補正動作にあっては、NOx触媒の下流側の排気A/Fに基づき、この排気A/Fを目標排気A/F(SOx被毒回復処理が良好に行える排気A/F)に収束させる、所謂排気A/Fフィードバック制御が行われ、これによって燃料添加ノズルからの燃料添加量を決定している。以下、これまでの排気A/Fフィードバック制御動作について説明する。
この排気A/Fフィードバック制御では、先ず、燃料添加動作の終了時点で、排気系の基本空燃比(以下、基本A/Fという)と実空燃比(以下、実A/Fという)とを用いて、下記の演算式(1)により空燃比学習値(以下、排気A/F学習値という)が求められる。
排気A/F学習値=(実A/F)÷(基本A/F) …(1)
上記基本A/Fは、エアフローメータによって検知される吸入空気量と、エンジン回転数及びアクセル開度等から算出される気筒内への燃料噴射量(筒内噴射量)と、エンジン回転数等に基づいて燃料基本添加マップから求められる燃料添加ノズルからの基本添加量とから算出される。一方、実A/Fは、上記基本A/Fと同様にして算出されたA/Fに対して環境条件等に応じた所定の補正量が加算されたものとして求められる。
そして、燃料添加中に、上記筒内噴射量及び燃料添加量の総量である触媒到達燃料量が所定値を越えた時点で、この触媒到達燃料量と上記排気A/F学習値とから補正係数を求め、この補正係数を基本添加量に乗算して求められる燃料添加量と、排気A/Fフィードバック補正量とを足し合わせた最終添加量を燃料添加ノズルから添加することにより、実A/Fを目標A/F(例えば、A/F=14.7)に近付けるように制御している。
特開2005−90439号公報
しかしながら上述した従来の排気A/Fフィードバック制御にあっては以下に述べる不具合があった。
上記排気A/F学習値を求めるにあたり、例えばNOx触媒が、SOx堆積量が殆ど無いかまたは僅かである新触媒であったような場合、NOx触媒の活性が高いため燃料添加ノズルからの燃料添加時におけるH2の生成能力も高くなっている。このため、排気中のO2量が極端に少なくなり、実A/Fが極端に低い(リッチ)状態となる。そして、この状況では、この極端に低い実A/Fの値を用いて上記排気A/F学習値が算出され、この排気A/F学習値に基づいて最終添加量が算出されることになる。
しかしながら、内燃機関の運転の継続に伴ってNOx触媒のSOx堆積量が増大していき、NOx触媒の活性が低くなってくると、燃料添加時におけるH2の生成能力も急速に劣ってくる。このため、排気中のO2量が急速に多くなるのでSOx被毒回復のためには燃料添加量を急速に増量させる必要があるが、排気A/F学習値としては、実A/Fが極端に低い状態で算出されたものとなっているため、この排気A/F学習値がO2量の急増に対応できる値として求められるまでの時間遅れが生じてしまうことになる。その結果、この排気A/F学習値が適正値に回復するまでの間は十分な燃料添加量が得られず、SOx被毒回復動作を十分に行うことができなくなってしまい、場合によってはSOx堆積量が増大してしまってNOx触媒の性能を低下させてしまう可能性がある。
逆に、内燃機関の運転中に何らかの原因でNOx触媒の活性が低くなって燃料添加ノズルからの燃料添加時におけるH2の生成能力が低くなっている場合には、排気中のO2量が極端に多くなっているため、実A/Fが極端に高い(リーン)状態となる。そして、この状況では、この極端に高い実A/Fの値を用いて上記排気A/F学習値が算出され、この排気A/F学習値に基づいて最終添加量が算出されている。そして、この状態から、NOx触媒の活性が高くなった(本来の活性状態に戻った)ような場合には、燃料添加時におけるH2の生成能力が急速に高くなり、それに伴って、排気中のO2量が急速に少なくなる。このような状況にあっては、燃料添加量を減量しても十分なSOx被毒回復動作が行えるにも拘わらず、排気A/F学習値としては、実A/Fが極端に高い状態で算出されたものとなっているため、この排気A/F学習値がO2量の減少に対応した適正値として求められるまでの時間遅れが生じてしまうことになる。このため、この排気A/F学習値が適正値に回復するまでの間は燃料添加量が過剰な状態となってしまい、燃料消費率の悪化や排気の白煙化を招いてしまうことになる。
上述した不具合の発生状況について図3及び図4を用いて具体的に説明する。図3は、NOx触媒の活性が定常状態である場合を示している。一方、図4は、NOx触媒が新触媒である、つまり触媒の活性が高い場合を示している。各図において、(a)は目標A/F及び実A/F(排気系の実際のA/F)の時間的な変化を示し、(b)は算出した基本A/F及び算出した実A/Fの時間的な変化を示し、(c)はフィードバック制御後のA/F補正量の時間的な変化を示し、(d)は基本添加量及び実添加量の時間的な変化を示している。
先ず、NOx触媒の活性が定常状態である場合には、算出した基本A/Fと算出した実A/Fとの偏差も小さな値で略安定しているため(図3(b)を参照)、排気A/F学習値も安定した適正値として求められることになる。このため、実添加量の増減変動も少なく(図3(c)、(d)を参照)、実A/Fは目標A/Fに近似した値を推移している(図3(a)を参照)。つまり、実A/FはSOx被毒回復動作が良好に行える目標A/Fに近似した値に維持されている。
これに対し、NOx触媒が新触媒である場合には、算出した基本A/Fと算出した実A/Fとの偏差の増減変動が大きくなっているため(図4(b)を参照)、排気A/F学習値も大きく変動した値として求められることになる。このため、実添加量の増減変動も大きくなって(図4(c)、(d)を参照)、実A/Fは目標A/Fに収束されない状況となっている(図4(a)を参照)。これでは、NOx触媒の温度を十分に上昇させることができないため、適正なSOx被毒回復動作が行えず、SOx堆積量の増大を招いてしまう可能性がある。
本発明の発明者らは、上記不具合を解消する一手段として、排気A/F学習値の更新動作の適正化について着目した。つまり、従来の排気A/Fフィードバック制御では、添加弁学習値(触媒温度が目標温度となるように燃料添加ノズルの個体バラツキを反映した学習値)の前回値と今回値との変化傾向と、上記排気A/F学習値の前回値と今回値との変化傾向とが一致した場合に、常に排気A/F学習値を更新するようにしていた。このため、上述したようにNOx触媒が新触媒であった場合(NOx触媒の活性が極端に高い状態)や、NOx触媒の活性が極端に低い場合にも排気A/F学習値の更新動作が行われてしまっていた。このことが上記不具合の発生要因の一つであることに本発明の発明者らは着目し本発明に至ったのである。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気A/Fフィードバック制御における排気A/F学習値の更新タイミングの適正化を図ることによって、燃料消費率の悪化を招くことなしにSOx被毒回復動作が良好に行える内燃機関の排気空燃比制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、吸蔵還元型NOx触媒等の排気浄化装置の活性が過渡的に変動する状況が見込まれる際には、排気A/Fフィードバック制御に使用する排気A/F学習値(フィードバック学習値)を更新しないようにすることで、現在の排気A/F学習値が、その後に変化する排気浄化装置の活性に見合った排気A/F学習値から大きくかけ離れてしまうといった状況を回避して排気A/F学習値の収束性を確保できるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、内燃機関の排気系に備えられた排気浄化装置と、この排気浄化装置を通過した排気の実空燃比を算出する排気空燃比算出手段とを備え、この排気空燃比算出手段により算出された実空燃比が目標空燃比となるような燃料供給量を求めるための排気空燃比学習値を算出し、この排気空燃比学習値を更新していくことにより燃料供給量を補正していく内燃機関の排気空燃比制御装置を前提とする。この内燃機関の排気空燃比制御装置に対し、上記内燃機関の運転状態に基づいて求められる推定空燃比に対して所定の範囲で上限値及び下限値を設定し、この設定された範囲から上記実空燃比が外れている場合には、上記排気空燃比学習値の更新を禁止する更新禁止手段を備えさせている。
また、他の解決手段としては以下のものも挙げられる。先ず、内燃機関の排気系に備えられた排気浄化装置と、この排気浄化装置に対してその上流側から燃料を添加する燃料添加手段と、上記排気浄化装置を通過した排気の実空燃比を算出する排気空燃比算出手段とを備え、この排気空燃比算出手段により算出された実空燃比が目標空燃比となるような燃料添加量を求めるための排気空燃比学習値を算出し、この排気空燃比学習値を更新していくことにより燃料添加手段からの燃料添加量を補正していく内燃機関の排気空燃比制御装置を前提とする。この内燃機関の排気空燃比制御装置に対し、上記内燃機関の運転状態に基づいて求められる推定空燃比に対して所定の範囲で上限値及び下限値を設定し、この設定された範囲から上記実空燃比が外れている場合には、上記排気空燃比学習値の更新を禁止する更新禁止手段を備えさせている。
これら特定事項により、排気A/Fフィードバック制御に使用する排気空燃比学習値を算出するに際し、実空燃比が所定の上限値及び下限値で設定された範囲から外れている場合には、その後に排気浄化装置の活性が急激に変化する可能性があるため、実空燃比が上記範囲内の値になるまでの間、排気空燃比学習値の更新を禁止するようにしている。つまり、それまで使用していた排気空燃比学習値を使用して燃料供給量(燃料添加量)を補正していく。例えば排気浄化装置が新触媒であって活性が非常に高く、H2の生成能力が高いために排気中のO2量が極端に少なくなっている場合には実A/Fが極端に低い状態となっているが、その後、排気浄化装置の活性が急速に低下する可能性がある。この場合に、活性が非常に高い状態での排気空燃比学習値を更新していると、排気浄化装置の活性が急速に低下した際に求めるべき排気空燃比学習値と現排気空燃比学習値との偏差が非常に大きくなり、その収束性が悪化してしまう。逆に、排気浄化装置の活性が非常に低く、H2の生成能力が低いために排気中のO2量が極端に多くなっている場合には実A/Fが極端に高い状態となっているが、その後、排気浄化装置の活性が急速に高くなる可能性がある。この場合に、活性が非常に低い状態での排気空燃比学習値を更新していると、排気浄化装置の活性が急速に高くなった際に求めるべき排気空燃比学習値と現排気空燃比学習値との偏差が非常に大きくなり、この場合にも、排気空燃比学習値の収束性が悪化してしまう。本解決手段では、これらの状況において、排気空燃比学習値の更新を禁止しているため、排気浄化装置の活性が大きく変化した後のその活性に見合った排気空燃比学習値を迅速に得ることができ、排気空燃比学習値の収束性を確保でき、その結果、排気A/Fを目標A/Fに収束させることができる。
上記推定空燃比を求めるための構成としては以下のものが挙げられる。つまり、更新禁止手段が、内燃機関の吸入空気量と、内燃機関の吸気系から排気浄化装置に亘る経路中に供給された総燃料供給量とから推定空燃比を求める構成である。また、排気浄化装置に対してその上流側から燃料を添加する燃料添加手段を備えたものにあっては、更新禁止手段が、内燃機関の吸入空気量と、内燃機関の気筒内に向けて噴射される燃料噴射量と、燃料添加手段から排気浄化装置に向けて添加される燃料添加量とから推定空燃比を求める構成としている。尚、前者(吸入空気量と総燃料供給量とから推定空燃比を求めるもの)では、筒内噴射量と排気浄化装置に向けての燃料添加量との和を総燃料供給量とする場合に限らず、気筒内にポスト噴射を行うものにおいて気筒内へのメイン噴射量とポスト噴射量との和を総燃料供給量とする場合も含んでいる。
また、このようにして求められた推定空燃比に対し、所定の範囲で設定される上限値及び下限値としては、内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段の個体バラツキによる検出吸入空気量のバラツキ、内燃機関の気筒内に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁の個体バラツキによる燃料噴射量のバラツキ、燃料添加手段の個体バラツキによる燃料添加量のバラツキに基づいて設定される。つまり、上記上限値及び下限値によって設定される範囲から実空燃比が外れる状況では、上記各バラツキ(個体差に起因するバラツキ)の影響によるものではなく、排気浄化装置の活性が著しく偏っていることが影響していると判断することができ、この場合には排気浄化装置の活性が急変する可能性があるため、本発明では排気空燃比学習値の更新を禁止している。
本発明では、排気A/Fフィードバック制御に使用する排気空燃比学習値を求めるに際し、排気浄化装置の活性が過渡的に変動する可能性のある状況では排気空燃比学習値を更新しないようにしている。このため、排気浄化装置の活性が変化した後に、その変化後の活性に見合った排気空燃比学習値を迅速に求めて排気空燃比学習値の収束性を高めることができ、これによって適正な量の燃料噴射(燃料添加)を実施することができる。その結果、燃料消費率の悪化を招くことなしにSOx被毒回復動作を良好に行うことが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成説明−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1及びその制御系統の概略構成図である。
この図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部として構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、燃料噴射弁23、遮断弁24、燃料添加ノズル26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁23に分配する。燃料噴射弁23は、その内部に電磁ソレノイドを備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加ノズル(還元剤噴射ノズル)26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加ノズル26は、後述するECU4による添加制御動作によって排気系への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加ノズル26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッドに形成された吸気ポートに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットル弁62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
排気系7は、シリンダヘッドに形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、後述するNOx吸蔵触媒(NSR触媒)75及びDPNR触媒76を備えたマニバータ77が配設されている。
更に、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト5Aを介して連結されたタービンホイール5B及びコンプレッサホイール5Cを備えている。コンプレッサホイール5Cは吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール5Bは排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール5Bが受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール5Cを回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行なうようになっている。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットル弁62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGR弁81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。
排気系7において、タービンホイール5Bの下流に備えられた上記NSR(NOx Storage Reduction)触媒75及びDPNR(Diesel Paticulate−NOx Reduction)触媒76について以下に説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。すなわち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。
一方、DPNR触媒76は、モノリス構造に形成された壁部を有するフィルタであって、この壁部の微小孔を排気ガスが通過するように構成されている。このDPNR触媒76の表面にはNOx吸蔵還元触媒がコーティングされているため、上記NSR触媒75と同様にしてNOxの浄化が行われる。更に、DPNR触媒76の表面には排気ガス中のPM(Paticulate Matter:微粒子)が捕捉されるので、酸化雰囲気ではNOx吸蔵時に発生する活性酸素によりPMの酸化が開始され、更に周囲の過剰酸素によりPM全体が酸化されるようになっている。還元雰囲気(リッチ)ではNSR触媒75から発生する大量の活性酸素によりPMの酸化が促進される。これよりNOxの浄化と共に、PMの浄化も実行されるようになっている。
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。例えば、レール圧センサ41は、コモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。燃圧センサ42は、添加燃料通路28内を流通する燃料の圧力(燃圧)Pgに応じた検出信号を出力する。上記エアフロメータ43は、吸気系6内のスロットル弁62上流において吸入空気の流量(吸気量)Gaに応じた検出信号を出力する。空燃比センサ(排気A/Fセンサ)44は、排気系7の触媒ケーシングの下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7の触媒ケーシング下流において排気の温度(排気温度)Texに応じた検出信号を出力する。また、アクセル開度センサ46はアクセルペダルに取り付けられ、同ペダルへの踏み込み量Accに応じた検出信号を出力する。クランク角センサ47は、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に備えられ、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に備えられ、吸入空気温度に応じた検出信号を出力する。これら各センサ41〜49は、電子制御装置(ECU)4と電気的に接続されている。
ECU(Electronic Control Unit)4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAM、タイマーやカウンタ等を備え、これらと、A/D(Analog/Digital)変換器を含む外部入力回路及び外部出力回路とが双方向性バスにより接続されて構成される。
このように構成されたECU4は、上記各種センサの検出信号を外部入力回路を介して入力し、これら信号に基づいてエンジン1の燃料噴射等についての基本制御を行う他、還元剤(還元剤として機能する燃料)添加に係る添加タイミングや供給量(添加量)の決定等に関する還元剤(燃料)添加制御等、エンジン1の運転状態に関する各種制御を実行する。
−燃料添加−
次に、上記ECU4が実行する燃料添加の基本原理についてその概略を説明する。
一般に、ディーゼルエンジン1では、燃焼室3内で燃焼に供される燃料と空気との混合気の酸素濃度が、ほとんどの運転領域で高濃度状態にある。燃焼に供される混合気の酸素濃度は、燃焼に供された酸素を差し引いてそのまま排気中の酸素濃度に反映されるのが通常であり、混合気中の酸素濃度(空燃比:燃焼A/F)が高ければ、排気中の酸素濃度(空燃比:排気A/F)も基本的には同様に高くなる。一方、上述したように、吸蔵還元型NOx触媒は排気中の酸素濃度が高ければNOxを吸蔵し、低ければNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する特性を有するため、排気中の酸素が高濃度状態にある限りNOxを吸蔵することとなる。ただし、触媒のNOx吸蔵量に限界量が存在し、この触媒が限界量のNOxを吸蔵した状態では、排気中のNOxが触媒に吸蔵されず触媒ケーシングを素通りすることとなる。
そこで、本実施形態に係るエンジン1のように燃料添加ノズル26を備えたものでは、適宜の時期に燃料添加ノズル26によって排気系7のマニバータ77上流に燃料を添加(以下、排気添加という場合もある)することで、一時的に排気中の酸素濃度を低減し、かつ還元成分量(HC等)を増大させるようにしている。これによりマニバータ77は、吸蔵していたNOxをNO2若しくはNOに還元して放出し、自身のNOx吸蔵能力を回復(再生)するようになる。
また、ECU4においては、PMがDPNR触媒76に捕集されている状態をマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知している。詳しくは、排出ガスのPMを取り除くための多孔質セラミック構造体から構成されるDPNR触媒76の上流側(エンジン1側)の空隙にDPNR前圧力検知用配管76aを設け、DPNR触媒76の下流側にDPNR後圧力検知用配管76bを設けて、それらのDPNR前圧力検知用配管76aとDPNR後圧力検知用配管76bとを、それらの差圧を検知する差圧トランスデューサ78に接続している。差圧トランスデューサ78は、ECU4へ、検知した差圧を電気信号に変換して送信する。つまり、PMの捕集量が増大してくると上記差圧が大きくなることを利用して、PM捕集量を検知できるようにしている。
次に、燃料添加動作について説明する。ECU4は、基本的には、エンジン回転数や各気筒内への燃料噴射量の履歴情報に基づいて総NOx生成量を認識してマニバータ77の内部に吸蔵されているNOx量を推定している。そして、その推定NOx量が予め設定しておいた所定値(各触媒75,76のNOx吸蔵能力が飽和する前の適宜値)を越えたときに、排気ガス中に燃料添加ノズル26から所定時間だけ所定量の燃料を噴射させるようにする。
この燃料添加ノズル26から噴射される添加剤としての燃料は、排気ポート71から排出される排気ガスとともに排気マニホールド72の集合部へ向かい、ターボチャージャ5のタービンホイール5Bによってさらに霧状とされる。
この霧状の燃料は、マニバータ77の上流にて高温の排気ガス中で熱分解されて、多量の炭化水素を生成するとともに、排気ガス中の酸素濃度を低下させるので、各触媒75,76に吸蔵されていたNOxを放出させ、N2に還元する。これにより、マニバータ77の浄化能力が回復することになる。
その他に、排気系7に備えられた上記排気温センサ45は、マニバータ77に流入する排気ガスの温度に対応した電気信号をECU4に出力する。この信号を受けたECU4は、触媒75,76の触媒床温度を推定することにより、触媒75,76が所定の浄化能力を発揮するか否かを判断する。
一般的に、エンジン1の冷間運転、始動運転あるいは低速低負荷運転等のように、燃焼室3の温度及び排気温度が低くなる運転条件になると、触媒75,76の触媒床温度が低くなるので、触媒75,76の浄化能力が低下する傾向となる。
ここで、ECU4は、排気温センサ45の出力に基づき、触媒75,76の触媒床温度が所定の基準値よりも低いと判断すると、燃料添加ノズル26を動作させることにより添加燃料を排気系7に噴射させる。これにより、添加燃料は、マニバータ77の上流にて高温の排気ガス中で熱分解されて、多量の炭化水素を生成するので、この炭化水素がマニバータ77内で反応され、その反応熱で触媒75,76が昇温されるようになる。これにより、触媒75,76の浄化能力が向上することになる。
このように、本実施形態では、燃料添加ノズル26からの燃料をターボチャージャ5のタービンホイール5Bの上流に噴射させるようにしているため、この燃料がタービンホイール5Bによる攪拌作用及び昇温作用によって霧状とされやすくなり、触媒75,76の浄化能力を回復させるための効力が大きく得られる。
−SOx被毒回復処理−
上述した如く、NSR触媒75に流入する排気の空燃比をスパイク的に目標リッチ空燃比とすることで、このNSR触媒75に保持されたNOxを還元することが可能となっている。しかし、NSR触媒75では、NOxを保持する場合と同様のメカニズムでSOxの吸収が生じており、一旦保持されたSOxはNOxよりも離脱し難く、酸素濃度が低下した還元雰囲気でNOxの放出が行われてもSOxは離脱せずに、次第にNSR触媒75内に蓄積されていく。このような硫黄被毒(SOx被毒)は、NSR触媒75のNOx浄化率を低下させる原因となる。
上記SOx被毒のメカニズムはおよそ以下のとおりである。燃料がエンジン1の気筒内で燃焼すると、二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)などのSOxが生成される。NSR触媒75に流入する排気の酸素濃度が高いときには、流入排気中の二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)等のSOxが白金(Pt)の表面上で酸化され、硫酸イオン(SO4 2-)の形でNSR触媒75に保持される。
さらに、NSR触媒75に吸収された硫酸イオン(SO4 2-)は、酸化バリウム(BaO)と結合して硫酸塩(BaSO4)を形成する。この硫酸塩(BaSO4)は、硝酸バリウム(Ba(NO32)に比して安定していて分解し難く、NSR触媒75に流入する排気の酸素濃度が低くなっても分解されずに、NSR触媒75内に残留する。
このようにして、NSR触媒75における硫酸塩(BaSO4)の量が増加すると、それに応じてNOxの保持に関与することができる酸化バリウム(BaO)の量が減少するため、NSR触媒75のNOx保持能力が低下してSOx被毒が発生する。
NSR触媒75のSOx被毒を解消する方法としては、NSR触媒75の雰囲気温度をおよそ600℃〜650℃の高温域まで昇温させるとともに、NSR触媒75に流入する排気の酸素濃度を低くすることにより、NSR触媒75に吸収されている硫酸バリウム(BaSO4)をSO3 -やSO4 -に熱分解し、次いでSO3 -やSO4 -を排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応させて気体状のSO2 -に還元する方法が挙げられる。
本実施形態では、燃料添加ノズル26から排気中へ燃料を添加することにより、それらの未燃燃料成分をNSR触媒75において酸化させ、酸化の際に発生する熱によってNSR触媒75の床温を高めるようにする。同時に、各気筒の膨張行程若しくは排気行程時に燃料噴射弁23から副次的に燃料を噴射させてもよい。
上記燃料添加により、NSR触媒75の床温を600℃〜650℃程度の高温域まで上昇させ、その後も、引き続きNSR触媒75に流入する排気の酸素濃度を低下させるべくECU4は、燃料添加ノズル26から燃料を噴射する。つまり、SOx被毒回復時には、排気A/Fを理論A/F以下(14.7以下)となるように目標空燃比が定められる。また、燃料添加を実行しない運転時では、排気A/Fが、例えば20から23の間となるように目標空燃比が定められる。尚、DPNR触媒76においてSOx被毒が生じた場合にも上記と同様にして被毒回復が行われることになる。
なお、このSOx被毒回復制御では、所謂リッチスパイクを実行して排気の酸素濃度を低下させる。さらに、一回のリッチスパイクを複数回の燃料噴射、すなわちパルス状の燃料噴射により形成し、空燃比が過剰なリッチとならないようにしている。
ここで、一度に多量の燃料を噴射すると空燃比が過リッチとなる虞があり、NSR触媒75で反応しきれない燃料の一部が下流へ流出することがある。そこで、本実施の形態では、燃料添加ノズル26からの燃料添加量を以下に説明する添加量演算動作により決定している。つまり、SOx被毒回復制御では、NSR触媒75からSOxを放出させることが可能な排気の空燃比(目標空燃比)となるように、燃料添加量を決定して燃料添加を実施する。このとき、排気系7の実空燃比が目標空燃比となるように、排気A/Fフィードバック制御が行われて、燃料添加ノズル26から排気中に添加される燃料量が制御されることになる。この燃料添加量は、学習値として次回の燃料添加の際の燃料量に反映される。
以下、本実施形態における排気A/Fフィードバック制御による添加量演算動作について説明する。本実施形態の特徴とするところは、この添加量演算動作における排気A/F学習値の算出動作にある。先ず、この排気A/F学習値の算出動作について図2のフローチャートに沿って説明する。
この排気A/F学習値の算出動作が開始されると、先ず、ステップST1において、エアフローメータ43によって検知される吸入空気量と、エンジン回転数及びアクセル開度等から算出される気筒内への燃料噴射量(筒内噴射量)と、エンジン回転数等に基づいて燃料実添加マップから求められる燃料添加ノズル26からの実添加量とから実A/Fが算出される(排気空燃比算出手段による実A/Fの算出動作)。また、ステップST2において、エアフローメータ43によって検知される吸入空気量と、エンジン回転数及びアクセル開度等から算出される気筒内への燃料噴射量(筒内噴射量)と、エンジン回転数等に基づいて燃料基本添加マップから求められる燃料添加ノズル26からの基本添加量とから基本A/Fが算出される。
その後、ステップST3において、エアフローメータ43の個体バラツキによる検出吸入空気量のバラツキ、燃料噴射弁23の個体バラツキによる燃料噴射量のバラツキ、燃料添加ノズル26の個体バラツキによる燃料添加量のバラツキを考慮した排気A/Fの上限値及び下限値が算出される。具体的には、上記検出吸入空気量、筒内燃料噴射量、燃料添加量から推定空燃比を算出し、これに上記バラツキを反映した変数(上限値を決定する変数及び下限値を決定する変数)を乗算することにより、これら上限値及び下限値の間の範囲が求められる。このようにして求められる上限値及び下限値は、NSR触媒75が定常状態であれば上記バラツキがあっても排気A/Fは所定の範囲内に存在することになるため、この所定の範囲の最大値及び最小値として上記各値(上限値及び下限値)は求められる。
その後、ステップST4に移り、現在、排気A/Fの制御中であるか否かを判断し、制御中であるYES判定された場合には、ステップST5に移り、上記ステップST1で求めた実A/Fが上記ステップST3で算出した排気A/Fの上限値及び下限値の範囲内に存在しているか否かを判定する。この判定がYESである場合にはステップST6に移って排気A/F学習値更新許可フラグをONにする。つまり、新たな排気A/F学習値が算出された場合に、現在の排気A/F学習値が新たな排気A/F学習値に更新されるようにする。一方、ステップST5の判定がNOである場合にはステップST7に移って排気A/F学習値更新許可フラグをOFFにする。つまり、新たな排気A/F学習値が算出されたとしても、排気A/F学習値の更新を行わないか、または、新たな排気A/F学習値の算出を禁止し、現在の排気A/F学習値を継続して使用するようにする(更新禁止手段による排気A/F学習値の更新禁止動作)。
その後、ステップST8に移り、排気A/Fの制御が終了したか否かを判定し、この判定がYESになるとステップST9で、上記実A/Fと基本A/Fとの差(ΔA/F)が所定の範囲内(α≦ΔA/F≦β)にあるか否かを判定する。この判定がYESである場合には、ステップST10で、排気A/F学習値更新許可フラグがONとなっているか否かを判断し、排気A/F学習値更新許可フラグがONである場合には以下の演算式(1)を用いて排気A/F学習値を求め、この算出された排気A/F学習値を新たな排気A/F学習値として更新した後、ステップST12で排気A/F学習値更新許可フラグをOFFに設定する。
排気A/F学習値=(実A/F)÷(基本A/F) …(1)
尚、上記ステップST4、ST8、ST9、ST10でNO判定された場合には排気A/F学習値の算出動作を実行することなくステップST12に移る。
このようにして排気A/F学習値が更新(排気A/F学習値更新許可フラグがONである場合)または否更新(排気A/F学習値更新許可フラグがOFFである場合)された後、この排気A/F学習値を使用して最終添加量の算出が行われる。
つまり、筒内噴射量及び燃料添加量の総量である触媒到達燃料量が所定値を越えた時点で、この触媒到達燃料量と上記排気A/F学習値とから補正係数を求め、この補正係数を基本添加量に乗算して求められる燃料添加量と、A/Fフィードバック補正量を足し合わせた最終添加量を求める。そして、この最終添加量で、燃料添加ノズル26から燃料添加を実行することにより、実A/Fが目標A/Fに近付けられることになる。この排気A/F学習値を算出した後の最終添加量算出動作は従来と同様である。
以上説明したように、本実施形態では、排気A/Fフィードバック制御に使用する排気A/F学習値を算出するに際し、NSR触媒75の活性が過渡的に変動する状況では排気A/F学習値を更新しないようにしている。このため、NSR触媒75の活性が変化した後に、その変化後の活性に見合った排気A/F学習値を迅速に求めて排気A/F学習値の収束性を高めることができ、これによって適正な量の燃料添加を実施することができる。その結果、燃料消費率の悪化を招くことなしにSOx被毒回復動作を良好に行うことが可能になる。
具体的に説明すると、上記図4を用いて説明したように、NOx触媒が新触媒である場合には、従来では、算出した基本A/Fと算出した実A/Fとの偏差の増減変動が大きくなっているため(図4(b)を参照)、この変動が反映されて算出される排気A/F学習値も大きく変動した値として求められることになり、その結果、実A/Fは目標A/Fに収束されない状況となってしまっていた(図4(a)を参照)。
これに対し、本実施形態のものでは、算出した基本A/F(上記フローチャートのステップST2で算出した基本A/F)に対し、所定範囲で上限値及び下限値を設定し、この範囲内に実A/F(上記フローチャートのステップST1で算出した実A/F)が存在している場合に限り排気A/F学習値が更新されるようにしている。例えば、上記範囲が図4(b)における範囲Aとして設定されている場合には排気A/F学習値が更新されることがないので、一定の排気A/F学習値で最終添加量が算出されることになり、実A/Fが大きく変動してしまうといった状況を回避できることになる。
−その他の実施形態−
以上説明した実施形態では、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジン1に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の形式のディーゼルエンジンやガソリンエンジンにも適用可能である。また、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型、V型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75及びDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75及びDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
また、上記実施形態では、燃料添加ノズル26からの燃料添加によってNOx還元動作やSOx被毒回復動作を行うようにしたが、気筒内へのポスト噴射によってNOx還元動作やSOx被毒回復動作を行うようにしてもよい。この場合、上記実A/F及び基本A/Fは、吸入空気量と、気筒内へのメイン燃料噴射量と、ポスト噴射量とから算出されることになる。
実施形態に係るエンジン及びその制御系統の概略構成を示す図である。 排気A/F学習値の算出動作の手順を示すフローチャート図である。 NOx触媒の活性が定常状態である場合における目標A/Fや実A/F等の時間的な変化を示す図である。 NOx触媒が新触媒である場合における目標A/Fや実A/F等の時間的な変化を示す図である。
符号の説明
1 エンジン(内燃機関)
23 燃料噴射弁
26 燃料添加ノズル(燃料添加手段)
43 エアフローメータ(吸入空気量検出手段)
7 排気系
75 NSR触媒
76 DPNR触媒

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気系に備えられた排気浄化装置と、この排気浄化装置を通過した排気の実空燃比を算出する排気空燃比算出手段とを備え、この排気空燃比算出手段により算出された実空燃比が目標空燃比となるような燃料供給量を求めるための排気空燃比学習値を算出し、この排気空燃比学習値を更新していくことにより燃料供給量を補正していく内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    上記内燃機関の運転状態に基づいて求められる推定空燃比に対して所定の範囲で上限値及び下限値を設定し、この設定された範囲から上記実空燃比が外れている場合には、上記排気空燃比学習値の更新を禁止する更新禁止手段を備えていることを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
  2. 内燃機関の排気系に備えられた排気浄化装置と、この排気浄化装置に対してその上流側から燃料を添加する燃料添加手段と、上記排気浄化装置を通過した排気の実空燃比を算出する排気空燃比算出手段とを備え、この排気空燃比算出手段により算出された実空燃比が目標空燃比となるような燃料添加量を求めるための排気空燃比学習値を算出し、この排気空燃比学習値を更新していくことにより燃料添加手段からの燃料添加量を補正していく内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    上記内燃機関の運転状態に基づいて求められる推定空燃比に対して所定の範囲で上限値及び下限値を設定し、この設定された範囲から上記実空燃比が外れている場合には、上記排気空燃比学習値の更新を禁止する更新禁止手段を備えていることを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
  3. 上記請求項1または2記載の内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    更新禁止手段は、内燃機関の吸入空気量と、内燃機関の吸気系から排気浄化装置に亘る経路中に供給された総燃料供給量とから推定空燃比を求めるよう構成されていることを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
  4. 上記請求項2記載の内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    更新禁止手段は、内燃機関の吸入空気量と、内燃機関の気筒内に向けて噴射される燃料噴射量と、燃料添加手段から排気浄化装置に向けて添加される燃料添加量とから推定空燃比を求めるよう構成されていることを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
  5. 上記請求項4記載の内燃機関の排気空燃比制御装置において、
    推定空燃比に対して所定の範囲で設定される上限値及び下限値は、内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段の個体バラツキによる検出吸入空気量のバラツキ、内燃機関の気筒内に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁の個体バラツキによる燃料噴射量のバラツキ、燃料添加手段の個体バラツキによる燃料添加量のバラツキに基づいて設定されるものであることを特徴とする内燃機関の排気空燃比制御装置。
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