JP2007063407A - 結晶性水性赤色着色材料及びその製造方法 - Google Patents

結晶性水性赤色着色材料及びその製造方法 Download PDF

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承澤 李
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Abstract

【課題】 耐アルカリ性に優れた染料系の結晶性水性赤色着色材料、及び、該結晶性水性赤色着色材料の簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】 カチオン性基を有する親水性カチオンポリマーと、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオンとのポリイオンコンプレックスからなる結晶性水性赤色着色材料により、耐アルカリ性に優れた着色材料を実現でき、また形態がミセル状であっても、粒径制御が容易で、分散剤を添加しなくても良好な分散性を有し、耐水性や耐候性に優れる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、結晶性水性赤色着色材料及びその製造方法に関し、より詳しくは、インクジェット用インクやグラビアインキ等の水性インク、自動車用塗料等の各種塗料に有用な結晶性水性赤色着色材料及びその製造方法に関する。
水性色材分散体に、染料の持つ色の多様さ、色彩の鮮明さと彩度の高さを保たせながら、顔料の持つ染色の堅牢性、耐水性、耐光性をも付与する技術は、多くの分野で登場が待たれている。この課題を解決する手段として、ポリイオンコンプレックス(PIC)法がある。(例えば、非特許文献1〜4参照。)ポリイオンコンプレックス(PIC)法は、主な分散の原因となる染料の極性官能基と、これと逆に帯電した官能基を持つポリマーとの間に静電的な引力を発生させ、さらに染料分子をそれが持つ芳香族環どうしのπ−πスタッキングによる相互作用で固体化(顔料化)させるものである。
例えば、アルカリ金属などで中和されたスルホン酸基を持つアニオン性染料は、ポリアミン化合物等のカチオン性化合物の塩を用いて、固体化を行うことができる(非特許文献1〜4)。しかし、実質的に生成した固体は、ポリアミンとスルホン酸の塩であり、特に耐酸性、耐アルカリ性が弱く、実質的に顔料分散体としての使用に耐えないという欠点があった。
C.F.J.Faul,M.Antonietti,「Chem.Eur.J.」2002年,第12巻,p2764〜2768 P.Gregory et al ,「J.Phys.Chem」,2000年,第104巻,p.5986−5992 R.Purrello et al, 「J.Phys.Chem.B」1998年,第102巻,p8852−8857 M.Angela et al,「J.Porphyrins Phthalocyanines」2002年,第6巻,p431−438
本発明が解決しようとする課題は、耐アルカリ性に優れた染料系の結晶性水性赤色着色材料、及び該結晶性水性赤色着色材料の簡便な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、親水性カチオンポリマーと着色性アニオンとによるポリイオンコンプレックスが(i)カチオン−アニオン静電相互作用による引力(ii)着色性アニオンの広がったπ電子雲同士の相互作用による引力により結晶化することに加え、着色性アニオンとして、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有するものを使用した場合に、キナクリドン骨格にあるカルボニル基と窒素原子上にある水素原子とが水素結合を形成し、さらに強い相互作用をすることで特に耐アルカリ性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)と、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)とのポリイオンコンプレックスからなる結晶性水性赤色着色材料を提供するものである。
また本発明は、カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液と、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)とを加え合わせて、該親水性のカチオン性の親水性セグメント(X1)の対アニオン(Z)と該着色性アニオン(Y)とをアニオン交換させることからなる結晶性水性赤色着色材料の製造方法を提供するものである。
本発明の結晶性水性赤色着色材料は、親水性カチオンポリマーと染料由来の着色性アニオンとの塩と言う比較的弱い酸と、弱い塩基との塩であるにもかかわらず結晶性に優れるため、他のポリイオンコンプレックスには見られない耐アルカリ性を有する。また形態がミセル状であっても、粒径制御が容易で、分散剤を添加しなくても良好な分散性を有し、耐水性や耐候性に優れるという特徴も有している。そのため、本発明の結晶性水性赤色着色材料は、インクジェット用インクをはじめ、水性塗料、印刷用水性インク、ペンキ等に好適に使用することが出来る。また、光デバイス関連の素材として、光配向膜、カラーフィルター等にも好適に使用できる。
本発明の結晶性水性赤色着色材料は、カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)と、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)とのポリイオンコンプレックスからなるものである。
本発明におけるポリイオンコンプレックスとは、親水性カチオンポリマー(X)上の正電荷に、負電荷を持つ着色性アニオン(Y)が引き寄せられ、塩を形成して電気的に中性となった着色性アニオン(Y)におけるキナクリドン骨格のπ電子同士の相互作用などを利用して、結晶性を示す固体状態となったものである。この固体は、水系媒体中で、イオン同士の相互作用で自己組織化的に作成されるものであるに関わらず、疎水性であり、水に不溶な特徴を持つものである。該ポリイオンコンプレックス中の親水性カチオンポリマー(X)のカチオン性基と、着色性アニオン(Y)中のアニオン性基が、当量の比で、1対1に必ずしも対応している必要はなく、他の対アニオンを有することで電気的に中性になっていてもよい。
まず、初めに、カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)(以下、親水性カチオンポリマー(X)という)について説明する。親水性カチオンポリマー(X)は分子骨格中に、カチオン性の官能基を含んでいる必要がある。このようなカチオン性の官能基は、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオンまたはそのアルキル置換体などを例示することが出来る。これらのイオン性官能基は、例えば、ピリジンおよびアミン類と、各種酸類や、アルキルハライド類を反応させて生成することが出来る。
このようなカチオン性の官能基は、親水性カチオンポリマー(X)の中で、カチオン性の親水性セグメント(X1)を形成していることが望ましい。ここで、カチオン性の親水性セグメント(X1)とは、カチオン性基を有する構造単位が連続した部分を有するポリマーからなるセグメントをいい、好ましくは5以上、より好ましくは10以上の連続の繰り返しの構造単位を有するものである。このような、カチオン性の親水性セグメント(X1)としては、プロトン化することによりカチオン性を示す構造単位を有するポリマー中の該構造単位を、プロトン化してカチオン化したものを使用でき、アミン構造を有するポリマー中のアミン構造がカチオン化されてなるセグメントまたはピリジン環をカチオン化してなるピリジニウムイオンを持つセグメントを特に好ましく使用することが出来る
このようなカチオン性の親水性セグメント(X1)を構成する、アミン構造を持つポリマーを例示すれば、ポリリジン、キトサン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンイミン、ポリスチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)等のポリアミン、およびこれらの共重合体を挙げることが出来る。これらのアミン構造を持つポリマーは、酸類などで中和したり、アルキルハライド類等で4級化する等の操作を行って、本発明におけるカチオン性の親水性セグメント(X1)として使用することが出来るため好ましく、ポリアルキレンイミンを特に好ましく使用できる。
また、カチオン性の親水性セグメント(X1)は、必ずしも、アミン構造を有する構造単位のみが連続した構造を取っている必要はない。例えば、ポリ(N−アシルエチレンイミン)を部分的に加水分解させたポリエチレンイミン−ポリ(N−アシルエチレンイミン)のランダム共重合体やブロック共重合体、(メタ)アクリル酸系アミンモノマー、例えばジメチルアミノ(メタ)アクリレートや4−ビニルピリジン等と、他のモノマー、例えば(メタ)アクリル酸メチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等とのランダム共重合体なども、酸類などで中和したり、アルキルハライド類等で4級化するなどの操作を行って、本発明におけるカチオン性の親水性セグメント(X1)として使用することが出来る。
また、カチオン性の親水性セグメント(X1)は、必ずしもモノマーが直鎖状に連結されたものである必要はなく、分岐状のものも好ましく使用することが出来る。例えばエチレンイミンを直接重合して得られる分岐状ポリエチレンイミンや、多官能性開始剤からアリルアミンを重合して得られるポリアリルアミン等も塩酸で中和する等してカチオン性の親水性セグメント(X1)として好適に使用することが出来る。また、これらをアシルハライド類やイソシアネート類などと部分的に反応させてカチオン化を不可能にした後に、残りの全部又は一部をカチオン化したものも、カチオン性の親水性セグメント(X1)として使用することができる。
前記カチオン性の親水性セグメント(X1)中で、アミン構造を持つ構造単位が占める量は10質量%以上であることが好ましく、30質量%であることが更に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。アミン構造を持つ構造単位の割合が上記範囲であれば、得られる水性着色材料の結晶性が向上し、結果的に耐光性や耐水性、着色堅牢性を持たせることができる。
ここでアミン構造を持つポリマーを中和するのに必要な酸類は、一般的な酸であればよく、具体的には、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、燐酸、2リン酸等の鉱酸類、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、メタンスルホン酸、メチルホスホン酸、燐酸モノメチルエステル等の有機酸類などを好ましく使用することができる
また、アミンを4級化するのに使うアルキルハライド類としては、ブロモメタン、ヨードメタン、ベンジルブロマイド、ヨウ化ベンジル等の一般的なアルキルハライド類を好ましく使用することが出来る。
これらの酸類による中和率、またはアルキルハライド類による4級化率は望ましくは20%以上、特に望ましくは40%以上であることが望ましい。このような中和率または4級化率のカチオン性の親水性セグメント(X1)を使用することにより着色性アニオンの結晶性が向上し、特に着色性と保存安定性に優れた結晶性水性着色材料を得ることが出来る。
前記カチオン性の親水性セグメント(X1)中で、アミン構造を持つ構造単位が占める質量は30質量%以上であることが好ましく、50質量%であることが更に好ましく、70質量%以上であることが最も好ましい。アミン構造を持つ構造単位の割合が上記範囲であれば、得られる水性着色材料の結晶性が向上し、結果的に耐光性や耐水性、着色堅牢性を持たせることができる。
さらにポリマー(X)は、カチオン性の親水性セグメント(X1)とは別に、非イオン性の親水性セグメント(X2)を有していても良い。本発明におけるポリイオンコンプレックスは疎水性であり、本質的に水に不溶であるが、しかし、ポリマー(X)中に、カチオン性の親水性セグメント(X1)とは別の非イオン性親水性セグメント(X2)を導入することで、水に不溶なポリイオンコンプレックスを水に微分散させることが出来ることがある。このような非イオン性親水性セグメント(X2)としては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などのポリエーテル類、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン等のポリオキサゾリン類とその共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類とそのアルキル置換体、ポリメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリルエステル類、ポリビニルアルコールやビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体等のポリビニルアルコール類、ポリジメチル(メタ)アクリルアミド等のポリアクリルアミド類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリエステル類、ポリアスパラギン酸誘導体、ポリグルタミン酸誘導体等のポリペプチド類等を挙げることが出来る。
本発明における親水性カチオンポリマー(X)が非イオン性親水性セグメント(X2)を持つ場合の形式を例示すると、ブロック型共重合体、マルチブロック共重合体、グラフト型共重合体、ブロック共重合構造を枝に持つスター型共重合体、2種類以上の枝を持つスター型共重合体等を挙げることができ、これら構造のものはミセル形成能に優れるため好ましい。
非イオン性の親水性セグメント(X2)を有する場合、親水性カチオンポリマー(X)中の非イオン性の親水性セグメント(X2)の量は、得られる着色材料が良好な分散性や結晶性を有する範囲であればいかなる値でも取ることができるが、親水性カチオンポリマー(X)の全質量に対し、非イオン性の親水性セグメント(X2)の質量が、カウンターアニオンを塩化物イオンにした時の換算で、80質量%以下であることが好ましい。親水性カチオンポリマー(X)中の非イオン性の親水性セグメント(X2)の量が該範囲内であると、得られる結晶性水性赤色着色材料の結晶性が高く、加温された場合や、有機溶剤中においても分散安定性が良好である他、生成した結晶性水性赤色着色材料の耐水性や着色堅牢性なども維持することが出来る。
また、親水性カチオンポリマー(X)は、カチオン性の親水性セグメント(X1)と非イオン性の親水性セグメント(X2)の親水性部分の他に、疎水性セグメント(X3)を有するものも好ましく使用できる。このような疎水性セグメント(X3)を有するポリマー(X)は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つため、水中でミセル構造を形成しやすくなる。その結果、アニオン性の官能基を有する着色性化合物(Y)の結晶性が低い場合でも、これを取り込んだミセルの形成が容易になるという特徴を持つ。そのような疎水性部分の成分としてスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン及びその誘導体、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−フェネチル(メタ)アクリレート、α−フェネチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、フェニルオキサゾリン開環重合体、ベンジルオキサゾリン開環重合体等のオキサゾリン誘導体等を挙げる事が出来る。
疎水性セグメント(X3)を有する場合には、親水性カチオンポリマー(X)中の疎水性セグメント(X3)の量は、本発明の結晶性水性赤色着色材料が得られる範囲であれば特に制限されないが、乾燥時の質量で親水性カチオンポリマー(X)の全質量に対し、疎水性セグメント(X3)の質量が50質量%以下であることが好ましい。親水性カチオンポリマー(X)中の疎水性セグメント(X3)の量が該範囲内にすると、得られる結晶性水性赤色着色材料に良好な分散性を持たせることが出来る。
非イオン性の親水性セグメント(X2)と、疎水性セグメント(X3)とを有する親水性カチオンポリマー(X)の合成は、通常の共重合体の合成方法により合成することが可能であるが、カチオン性の親水性セグメント(X1)としてポリエチレンイミンセグメントを含有する親水性カチオンポリマー(X)の合成は、例えば次の手法によって合成することもできる。
(I)末端に水酸基を持つ非イオン性の親水性ポリマーをトシル化し、これにエチルオキサゾリンをリビングカチオン重合させ、さらに疎水性のフェニルオキサゾリンなどを重合させた後、エチルオキサゾリンのみを加水分解して、3元ポリマーとする。
(II)エチルオキサゾリンと疎水性のフェニルオキサゾリンから得たポリマーのうちエチルオキサゾリンのみを加水分解させ、得られたアミン塩をフリーのアミンにした後、非イオン性の親水性ポリマーとイソシアネートなどを使って3元ポリマーとする。
また、親水性カチオンポリマー(X)の質量平均分子量(Mw)は2000〜100000の範囲であることが望ましく、さらに望ましくは4000〜50000の範囲である。質量平均分子量が該範囲内の親水性カチオンポリマー(X)を使用することにより、得られる結晶性水性赤色着色材料の大きさを着色材料として使用するのに好適な大きさとすることができ、また、結晶性の良好な結晶性水性赤色着色材料が得られるため、耐光性や着色後の堅牢性に優れる。
次に、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)(以下、着色性アニオン(Y)と略記)について説明する。ここで言うキナクリドン骨格は、7,14−ジオキソ−5,7,12,14−テトラヒドロ(2,3−b)キノリノアクリジン骨格、または5,7−ジオキソ−5,7,12,14−テトラヒドロ(2,3−b)キノリノアクリジン骨格を有するものを指す。ここで該着色性アニオン(Y)は、炭素原子に結合している水素原子のうち、1つ又は2つはスルホネート基で置換されており、残りのものは、水素原子のままであるか、メチル基、または塩化物基で置換されているものが、好ましく使用することが出来る。
なかでも、式(1)又は(2)で表される着色性アニオンを好ましく使用できる。
Figure 2007063407
Figure 2007063407
(式(1)及び(2)中、Mは水素、アンモニウムイオン、アルカリ金属、カルシウム又はアルミニウムを表し、Rはメチル基又は塩素原子を表し、m及びnは0または1を表し、m及びnのいずれか一方は1であり、i及びjは0又は1を表す。)
これらを例示すると、ピグメント・バイオレット19番、ピグメント・レッド122番、ピグメント・レッド192番、ピグメント・レッド202番、ピグメント・レッド207番、ピグメント・レッド209番等の分子において、炭素原子に結合した水素原子のうち、1つまたは2つをスルホネート基で置換したものを挙げることができる。
前記ポリイオンコンプレックス中の親水性カチオンポリマー(X)のカチオン性基の個数をx(当量)、前記スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)のアニオン性基の個数をy(当量)とした時に、y/xで表されるモル比が0.2〜5の範囲にあることが望ましく、更に0.5〜1であることが特に好ましい。該モル比が上記上限以下であると、着色性アニオンの無秩序な集合体が生じにくいため粗大粒子の発生が発生しにくく、また、上記下限以上であると着色剤として好適な発色を十分に得られるため好ましい。
前記カチオン性の親水性セグメント(X1)の対アニオンは、着色性アニオン(Y)の他に、ポリイオンコンプレックスが電気的に中性であるために、部分的にその他のアニオンを有していてもよい。そのような対アニオン(Z)として、通常の塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンの他に、フッ素原子、窒素原子、酸素原子などの水素結合を作りやすい原子を構成元素に持つ陰イオンを使うことも望ましい。これらを例示すれば、硝酸アニオン、リン酸アニオン、二リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、リン酸1水素アニオン、リン酸2水素アニオン、ポリリン酸アニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、亜硫酸アニオン、硫酸アニオン等の酸素原子を有する無機アニオン、フッ素アニオン、ヘキサフルオロ珪酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等のフッ素原子を有する無機アニオン、シアン酸アニオン等の窒素原子を有する無機アニオンなどを挙げる事が出来る。また、金属酸化物のアニオンとしては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、鉛等の酸化物等のアニオンを挙げることが出来る。
その他にも、酸素原子、窒素原子、フッ素原子などを有する有機アニオンを使用することも出来、これらを例示すれば、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、吉草酸アニオン、グリコール酸アニオン、乳酸アニオン、ヒドロキシメタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、ニトロ安息香酸アニオン、シアノ酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、こはく酸アニオン、メチルホスホン酸アニオン、グリシンアニオン、アラニンアニオン、ポリリン酸アニオン、ポリベンゼンスルホン酸アニオン、スルファニル酸アニオン、バルプロ酸アニオンなどを挙げることができる。
上記アニオンの中でも、フッ素原子、窒素原子又は酸素原子を有するアニオンは、親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基との間に水素結合を形成させるため、得られる結晶性水性赤色着色材料に、特に高い結晶性を与えることができるため好ましく使用できる。さらに、これらのフッ素原子、窒素原子、又は酸素原子を含有するアニオンの中でも酸素原子を有するアニオン及びフッ化物イオンを特に好ましく使用することができる。また、比較的弱い酸、言い換えると共役酸の第1段目の解離定数をKとする時、−logKの値が−2以上のものを選ぶことが特に好ましい。このようなアニオンを選ぶことで、親水性カチオンポリマー(X)に、特に塩の状態で必要な水溶性を持たせることができる。
前記ポリイオンコンプレックスの数平均粒径は150ナノメートル以下であることが望ましく、100ナノメートル以下であることが大変望ましい。当該粒径のポリイオンコンプレックスの粒径をこの範囲にすることで、ポリイオンコンプレックス分散体の分散安定性が向上し、沈殿を発生しにくくすることができるため、この粒径のものが利用するに好ましいものである。
本発明の結晶性水性赤色着色材料は、親水性カチオンポリマー(X)と着色性アニオン(Y)との間におけるカチオン−アニオン静電相互作用による引力、及び、広がったπ電子雲同士の相互作用による引力により形成されたポリイオンコンプレックスからなるものであるため結晶性が高く、分子が孤立した状態にある染料に比べても、同様な着色力を持つばかりではなく、水や有機溶剤に対する着色の堅牢性とを有する。これに加えて、親水性カチオンポリマー(X)中に水素原子がある場合には、この水素原子と着色性アニオン(Y)中のキナクリドン骨格にあるカルボニル基とが水素結合を形成し、さらに強い相互作用をしていると考えられる。このため、本発明の結晶性水性赤色着色材料は、強い対アルカリ性や耐酸性を有する。
次に本発明の結晶性水性赤色着色材料を作成する方法を示す。本発明の結晶性水性赤色着色材料は、親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液と、着色性アニオン(Y)とを混合し、親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基の対アニオン(Z)を着色性アニオン(Y)にイオン交換することで製造することが出来る。
まず、親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液の製造方法を示す。親水性カチオンポリマー(X)を溶解する水性媒体とは、水、または水と親水性溶媒の混合溶媒をいう。ここで使用できる親水性溶媒としては、水と均一に混合できるものであればどのようなものを使用しても構わないが、これを例示すればジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ヘキサメチル亜リン酸トリアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセチレンジメタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメトキシエタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、メチルセロソルブ、等の必要に応じてアルコール性水酸基を有するエーテル類などを挙げることができる。
着色性アニオン(Y)を、親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液と混合する方法としては、着色性アニオン(Y)が個体状の塩を形成したものを混合しても、水性媒体への溶液又は分散体のものを混合してもよいが、イオン交換を効率よく行うためには、着色性アニオン(Y)を水系媒体へ溶解した溶液を混合することが好ましい。
混合する着色性アニオン(Y)の量は、親水性カチオンポリマー(X)が結合可能な対アニオンの量をA(当量)、混合する着色性アニオン(Y)の量をB(当量)としたときに、比B/Aが0.5〜10、更に望ましくは0.5〜5の範囲であることが好ましい。比B/Aの値をこの範囲とすることで、着色性アニオン(Y)は規則正しいポリイオンコンプレックスを作りやすくなり、着色性、耐水性、耐候性などのパフォーマンスが特に高いものを得ることが出来る。
また、混合の順序は親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液に、着色性アニオン(Y)の水性媒体溶液を徐々に添加することも、逆に着色性アニオン(Y)の水性媒体溶液に親水性カチオンポリマーの溶液を徐々に添加することも、両者を別の容器に徐々に添加することも出来る。
本発明の製造方法により得られる結晶性水性赤色着色材料は、そのままで使用することも、各種の親水性溶媒と混合して使用することも出来るが各種の方法で脱水・洗浄を行い、粉末状のものを得ることも出来る。まず、脱水で完全に乾燥した染料会合体を得るためには、余剰となったり、遊離した各種の塩類、着色性アニオン(Y)が完全に除去されることが必要な場合が多い。そのためには、前もって、透析、遠心分離、イオン交換、濾過洗浄、限外濾過などの手法によりこれらのものを除去しておく必要がある。さらに、実際に乾燥させて粉末状の着色材料を得る方法は、例えば減圧留去、蒸留、共沸脱水、凍結乾燥、スプレードライなどを挙げることが出来る。
本発明の結晶性水性赤色着色材料は、親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基と、着色性アニオン(Y)中のアニオン性基との静電的相互作用で、親水性カチオンポリマー(X)近傍にアニオン性の官能基を有する着色性アニオン(Y)が集合し、これが、着色性アニオン(Y)分子におけるキナクリドン骨格のπ電子同士の相互作用で結晶化して疎水性のポリイオンコンプレックスとなったものである。該ポリマー(X)が非イオン性の親水性セグメント(X2)を有する場合には、その会合体周囲は非イオン性の親水性セグメント(X2)により被われ、ポリイオンコンプレックス分散体の形態の結晶性水性赤色着色材料の分散体が容易に得られる。
さらに、親水性カチオンポリマー(X)が疎水性セグメント(X3)を有する場合には、疎水性セグメント(X3)を中心にして、ミセル構造を容易に形成させることが出来る利点がある。疎水性セグメント(X3)と非イオン性親水性セグメント(X2)とを有する親水性カチオンポリマー(X)を着色性アニオン(Y)のポリイオンコンプレックス形成に利用すると、着色性アニオン(Y)分子の結晶形態が堅固でない場合にも、ポリイオンコンプレックスのミセルが容易に形成できる。
上記ミセル状の結晶性水性赤色着色材料は、着色された疎水会合部分の周囲が親水性部分で覆われているために、良好な着色性を示しつつ、良好な水分散性も維持できる。また疎水会合部分では、親水性基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)と親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基とがイオンペアを生成して該着色性アニオン(Y)が集合する。この集合した該着色性アニオン同士の相互作用で規則的な会合構造を作るために、得られる着色材料は優れた耐水性や耐候性を有する。
上記ミセル状の結晶性水性赤色着色材料の粒径は、使用する親水性カチオンポリマー(X)の重合度、および該親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基の含有率を調整することにより容易に制御することができ、重合度が大きいほど、あるいはカチオン性基の含有率が大きいほど、その粒径は大きくなる傾向がある。これら重合度やカチオン性基の含有量は、使用するポリマーの種類により適宜調整する必要があるが、ミセル状の結晶性水性赤色着色材料の数平均粒径は20nm〜5μm程度の範囲に制御することができる
このようなミセル状の結晶性水性赤色着色材料は、分散媒である水を蒸発させることにより、取り扱いの容易な粉末状の着色材料とすることもできる。
このように本発明の結晶性水性赤色着色材料は、ポリイオンコンプレックス分散体の形態をとることにより結晶性が高いため、分子が孤立した状態にある染料に比べても、同様な着色力を持つばかりではなく、結晶化が起こっていることにより著しく長い耐久時間と、水や有機溶剤に対する着色の堅牢性とを持たせることが出来る。またミセル状である場合にも、粒径制御が容易で、分散剤を使用しなくても良好な分散性を有し、かつ耐水性や耐候性に優れる。そのため、本発明の結晶性水性赤色着色材料は、インクジェット用インクをはじめ、水性塗料、印刷用水性インク、ペンキ等に好適に使用することが出来る。また、光デバイス関連の素材として、光配向膜、カラーフィルター等にも好適に使用できる。
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。しかしながら、本実施例は、本発明の範囲を実施例に限定するものではない。以下の実施例中、「部」は質量部を示すものとする。
(合成例1)
[キナクリドンスルホン酸ナトリウムの合成]
20℃に保持した濃硫酸(硫酸濃度95%以上)300部にキナクリドン顔料(大日本インキ化学工業社製 Fastogen Super Red 7100Y;C.I.Pigment Violet 19)20部を撹拌下で加えた。次に、85℃に昇温後6時間撹拌を行った。反応液を50℃まで冷却した後、3000部の10%硫酸ナトリウム水溶液中に投入し析出させた。析出スラリーを20%苛性ソーダで中和した後、ろ過および2000部の10%硫酸ナトリウム水溶液による洗浄を行った。得られたウェットケーキを6Lの蒸留水中に再分散した後、再度ろ過を行い得られたウェットケーキを80℃の送風乾燥機で一昼夜乾燥後粉砕してモノスルホン化されたキナクリドンスルホン酸ナトリウム17.5部を得た。
(合成例2)
[直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩の合成]
リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌棒を設置した容器に、ポリ(2−エチルオキサゾリン)(アルドリッチ製、質量平均分子量50000)15.68部、5規定塩酸を仕込み、完全に溶解させた。ここで、5規定塩酸は、塩化水素のモル数が、ポリ(2−エチルオキサゾリン)中のN−プロピオニルエチレンイミンユニットのモル数に対して、7.1倍になるように仕込んで反応を行った。これを110℃に加熱して8時間攪拌を行った。溶液は初めは透明だったが、8時間後には白濁した。これを400部のアセトン中に、激しく攪拌しながら投入し沈殿させた。これをろ過し、アセトンで洗浄し、白い粉末を得た。重水中で1H−NMRスペクトルを測定し、アセチル基は完全に加水分解されていることを確認した。収率はほぼ定量的であった。
(合成例3)
[分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩の合成]
リフラックスコンデンサー、攪拌棒を設置した容器にポリエチレンイミン(商品名エポミンSP−050、数平均分子量5000)70.0部、水100部を仕込み、攪拌、完全に溶解させた。これに対して、6規定塩酸を297部を滴下し、更に1時間攪拌を行った。これを減圧で脱水したあと蒸留水を加えて、固形分率70%の粘ちょうな液体を得た。
(合成例4)
[直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリエチルオキサゾリンランダム共重合体の合成]
リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌羽根を設置した容器に、ポリ(2−エチルオキサゾリン)(アルドリッチ製、質量平均分子量50000)10部、5規定塩酸300部を仕込み、完全に溶解させた。ここで、5規定塩酸は、塩化水素のモル数が、ポリ(2−エチルオキサゾリン)中のN−プロピオニルエチレンイミンユニットのモル数に対して、3倍になるように仕込んだ。これを80℃に加熱して12時間攪拌を行った。溶液は初めは透明だったが、8時間後には白濁した。これを400部のアセトン中に、激しく攪拌しながら投入し沈殿させた。これをろ過し、アセトンで洗浄し、白い粉末を得た。重水中で、これのプロトンNMRスペクトルを測定したところ、エチレンイミン塩酸塩ユニットと2−エチルオキサゾリンユニットの和に対するエチレンイミン塩酸塩ユニットのモル含有率は59モル%であった。また、収率はほぼ定量的であった。
(合成例5)
[ポリエチレングリコール(PEG)−直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)塩酸塩ブロックポリマーの合成]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール[Mn=2,000]15.0部、ピリジン6.0部、クロロホルム20部の混合溶液に、p−トルエンスルホン酸クロライド7.15部を含むクロロホルム(20部)溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した。ここでメトキシポリエチレングリコールとピリジンとp−トルエンスルホン酸クロライドのモル比は1:10:5であった。滴下終了後、浴槽温度40℃でさらに4時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム40部を加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液50部、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水溶液で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をヘキサンで数回洗浄した後、濾過、80℃で減圧乾燥して、トシル化された生成物15.1部を得た。
得られた生成物の1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)測定結果:
δ(ppm):7.82(d),7.28(d),3.74〜3.54(bs),3.41(s),2.40(s)
上記で合成した、末端にp−トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール化合物3.0部、2−メチルオキサゾリン6.8部及びN,N−ジメチルアセトアミド40部を、窒素雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。この際、加えたメトキシポリエチレングリコール化合物と2−メチルオキサゾリンのモル比は、1:50であった。得られた反応混合物を酢酸エチル/ヘキサン混合溶液(体積比=1:2)300部を加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物は酢酸エチル/ヘキサンの混合溶液(体積比=1:2)100部を用いて2回洗浄した後、減圧乾燥してポリエチレングリコールとポリメチルオキサゾリンのブロックポリマーの固体を8.7部得た。
得られたブロックポリマーの1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)測定結果:
δ(ppm):7.71(d),7.18(d),3.50〜3.30(bs),3.45(s),2.36(s),2.22〜2.08(m)
上記で得られたポリエチレングリコールとポリメチルオキサゾリンのブロックポリマー4.3部(0.69mmol)を、5規定塩酸水14.0部中、90℃で6時間攪拌し、加水分解反応を行った。放冷後、時間とともに生成してきた白色沈殿を含む反応混合溶液をアセトン約150部に加え、室温で約30分間攪拌した後、生成物の固形物を濾過、アセトンで2回洗浄、減圧乾燥して白色固体3.9部を得た。1H−NMRによる分析から、加水分解反応によりポリ(N−アセチルエチレンイミン)由来の側鎖アセチル水素(δ:2.22〜2.08ppm)がなく、得られた上記固体は、ポリエチレングリコールとポリエチレンイミンからなる二重親水性ブロックポリマーであると認められる。なお、1H−NMRスペクトルから、ポリエチレングリコール部分が44量体、ポリエチレンイミン部分が46量体であると考えられた。
得られたブロックポリマーの1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO)測定結果:
δ(ppm):3.49(s),3.31〜3.19(bs)
(合成例6)
[ポリエチレングリコールと分岐状ポリエチレンイミンからなる二重親水性ブロックポリマーの合成]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール[Mn=2,000]20.0部、ピリジン8.0部、クロロフォルム30部の混合溶液に、p−トルエンスルフォン酸クロライド9.6部をクロロフォルム45部に溶解させた溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した。滴下終了後、浴槽温度40℃でさらに4時間攪拌した。反応終了後、クロロフォルム50mlを加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液100部、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100部、そして飽和食塩水溶液100部で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をヘキサンで数回洗浄した後、濾過、80℃で減圧乾燥して、トシル化された生成物22.0部を得た。
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)測定結果:
δ(ppm):7.82(d),7.28(d),3.74〜3.54(bs),3.41(s),2.40(s)
上記で合成した末端にp−トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール化合物5.39部、分岐ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、日本触媒製)8.0部、炭酸カリウム0.07部及びN,N−ジメチルアセトアミド50部を、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた反応混合物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(体積比=1:2)190部を加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物は酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(体積比=1:2)100部を用いて2回洗浄した後、減圧乾燥してポリエチレングリコールと側鎖ポリエチレンイミンからなる二重親水性ブロックポリマーの固体12.7部を得た。
1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)測定結果:
δ(ppm):3.50(s),3.05〜2.20(m)
合成例6において、ポリエチレングリコール−分岐状ポリエチレンイミンからなる二重親水性ブロックポリマーは、ほぼ定量的に得られたことから、仕込みの比でポリエチレングリコールと分岐状ポリエチレンイミンが結合したポリマーが出来ているものと考えた。
(合成例7)
[分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリスチレン共重合体の合成]
水180部に分岐状ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、日本触媒製)4.0部を溶解し、2N塩酸水溶液を加えてpHを7に調整した後、スチレン16.0部を加え、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。その後、t−ブチルハイドロパーオキサイド(アルドリッチ社製、70wt%水溶液)4.0部を加え、80℃で6時間攪拌した。その際、2時間ごとにt−ブチルハイドロパーオキサイドを0.5部ずつ2回に分けて添加した。その結果、生成物のポリスチレンのコアと側鎖ポリエチレンイミンのシェル層を有するコア−シェル型微粒子の10wt%分散液を得た。これにさらに2N塩酸水溶液を加え、pHを2に調製した。これを、大塚電子製の粒径測定装置FPAR−1000を用いて測定した25℃における微粒子の平均粒径は、約120ナノメートルであった。1H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)を測定した結果、コアのスチレンピークは観測されず、シェルの側鎖ポリエチレンイミンのピークのみが2.5〜3.6ppmで観測された。ここで、合成例8の分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリスチレン共重合体は、ほぼ定量的に得られたことから仕込みの比で分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩とポリスチレンとが共重合したポリマーが得られたものと考え、そのまま次の実施例、比較例のポリマーとして利用した。
(実施例1)
攪拌羽根とリフラックスコンデンサーを設置した容器中で、合成例2で合成した直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を700部の蒸留水に溶解させた。一方、合成例1で合成したキナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を2000部の蒸留水に溶解させ、これを滴下ロートを使って、一滴ずつ、約1時間かけて、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩水溶液に添加した。滴下終了後、引き続いて、2時間攪拌を行い、色材分散体液を得た。これを透析用セルロースチューブ(三光純薬(株)製、商品名UC30−32−100)に入れ、蒸留水中で、1日、透析操作を行った。得られた懸濁液を懸濁液1Aとする。
(実施例2)
実施例1において、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を合成例3で製造した分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩100部に替えて使用した他は、全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液2Aとする。
(実施例3)
実施例1において、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を合成例4で製造した直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリエチルオキサゾリンランダム共重合体100部に、合成例1で合成したキナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を111.7部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液3Aとする。
(実施例4)
実施例1において、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を合成例5で製造した直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリエチレングリコールブロック共重合体100部に、合成例1で合成したキナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を130.3部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液4Aとする。
(実施例5)
実施例1において、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を合成例6で製造した分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリエチレングリコールグラフト共重合体100部に、合成例1で合成したキナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を128.3部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液5Aとする。
(実施例6)
実施例1において、直鎖状ポリエチレンイミン塩酸塩100部を合成例7で製造した分岐状ポリエチレンイミン塩酸塩−ポリスチレングラフト共重合体懸濁液100部に、合成例1で合成したキナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を41.7部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液6Aとする。
(比較例1)
実施例1において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)292.0部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た得られた懸濁液を懸濁液1Bとする。
(比較例2)
実施例2において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)292.0部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液2Bとする。
(比較例3)
実施例4において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)156.5部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液3Bとする。
(比較例4)
実施例5において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)182.6部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液4Bとする。
(比較例5)
実施例6において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)179.7部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液5Bとする。
(比較例6)
実施例7において、キナクリドンスルホン酸ナトリウム208.4部を、アシッドレッド52(東京化成工業(株)製)58.4部に替えて使用した他は全く同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液を懸濁液6Bとする。
実施例1〜6で得た懸濁液1A〜6A、比較例1〜6で得た懸濁液1B〜6Bの粒径をリーズ・アンド・ノースラップ社製「マイクロトラックUPA150」で測定した。以下の表1において○は数平均粒径が100nm未満、△は100nm以上200nm未満、×は200nm以上であることを示している
実施例1〜7の懸濁液1A〜7A、比較例1〜6の懸濁液1B〜6Bを、ヘティヒ(Hettich)社製遠心分離機「ローティナ(ROTINA)35R」を使って11000rpmで60分間かけて、固体を分離し、それぞれのウェットな固体1量部と0.1規定水酸化ナトリウム水溶液4量部とを混合し、80度で5時間加熱した後に溶け残りがなければ×、溶け残りがあれば○とした。
Figure 2007063407
上記の表1に示したように、各種アミン系ポリマーとキナクリドンモノスルホン酸、またはキナクリドンジスルホン酸のポリイオンコンプレックスでは、粒径が小さく、かつ耐アルカリ性に優れたものを調製することが出来た。
一方、各種アミン系ポリマーと赤色染料:アシッドレッド52とのポリイオンコンプレックスでは、粒径が大きくなり、しかも耐アルカリ性の低いものであった。


Claims (10)

  1. カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)と、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)とのポリイオンコンプレックスからなる結晶性水性赤色着色材料。
  2. 前記親水性カチオンポリマー(X)が、親水性カチオン性の親水性セグメント(X1)を有する請求項1に記載の結晶性水性赤色着色材料。
  3. 前記親水性カチオンポリマー(X)が親水性非イオン性セグメント(X2)を有する請求項1又は2に記載の結晶性水性赤色着色材料。
  4. 前記親水性カチオンポリマー(X)が疎水性セグメント(X3)を有する請求項1〜3のいずれかに記載の結晶性水性赤色着色材料。
  5. 前記親水性カチオンポリマー(X)の質量平均分子量(Mw)が、2000〜100000の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の結晶性水性赤色着色材料。
  6. 前記着色性アニオン(Y)が、式(1)又は式(2)で表される着色性アニオンである請求項1〜5のいずれかに記載の結晶性水性赤色着色材料。
    Figure 2007063407
    Figure 2007063407
    (式(1)及び(2)中、Mは水素、アンモニウムイオン、アルカリ金属、カルシウム又はアルミニウムを表し、Rはメチル基又は塩素原子を表し、m及びnは0または1を表し、m及びnのいずれか一方は1であり、i及びjは0又は1を表す。)
  7. 前記ポリイオンコンプレックス中のカチオンポリマー(X)のカチオン性基の個数をx(当量)、前記スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)のアニオン性基の個数をy(当量)とした時に、x/yで表されるモル比が0.2〜5の範囲にある請求項1〜6のいずれかに記載の結晶性水性赤色着色材料。
  8. 数平均粒径が150nm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の結晶性水性赤色着色材料。
  9. カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)の水性媒体溶液と、スルホネート基が結合したキナクリドン骨格を有する着色性アニオン(Y)とを混合し、カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)中のカチオン性基の対アニオン(Z)と着色性アニオン(Y)とをアニオン交換させることからなる結晶性水性赤色着色材料の製造方法。
  10. 前記カチオン性基を有する親水性カチオンポリマー(X)の対アニオン(Z)がフッ素原子、窒素原子、又は酸素原子を有することを特徴とする請求項9記載の結晶性水性赤色着色材料の製造方法。
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