JP2007063109A - 安定な緩効性液状複合肥料 - Google Patents

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Abstract

【課題】緩効性肥料は、肥料の利用率を向上させ環境への負荷を軽減できる上に、施用の省力化が図れることから広く使用されており、効率的な施肥技術として、安定な高濃度緩効性液状複合肥料を提供する。
【解決手段】粒径300μm以下に分級した化学合成緩効性窒素肥料を亜燐酸カリウム水溶液に懸濁させて、pHを5.0から6.9に調整した液状複合肥料。該緩行性窒素肥料は20%以上含有するのが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、効率的な施肥技術に関する。
緩効性肥料は、肥料の利用率を向上させ環境への負荷を軽減できる上に、施用の省力化が図れることから広く使用されている。市販されている緩効性肥料の多くは水溶性の肥料成分を被覆処理した粒状固体のものであり、比較的安価で農業場面を中心に広く使用されている。
また、化学合成緩効性窒素肥料は高価であるが、細菌のみによって分解され、糸状菌による発病を抑制する特徴や、粉状であっても加水分解作用を受けにくく安定した肥料効果を現すことから、ゴルフ場、植木等に使われている。60メッシュ以下に分級したものは水に懸濁させて散布することができることから、特に均一な散布と厳密な窒素肥料の施用を必要するゴルフ場のグリーンで使用されている。また、緩効性窒素肥料を0.1〜100μmに分級して水溶性粘質多糖で被覆し、水への分散性を向上させたもの、及びそれを10%以下に分散させ、スラリー状にして使用する肥料が提案されている。
特開平7−101793
一方、窒素以外に燐酸とカリウムも重要な肥料成分である。燐酸成分の中で、亜燐酸は、燐酸に比べ解離定数が大きく、土壌吸着が少ないため肥料効果発現の律速要因になりやすい燐酸に代わって発根、発芽を促す目的で使用されている。その殆どは、作物の生育サイクルに応じて適当な割合に調整したカリウム塩の水溶液が使用されている。
市販されている被覆緩効性肥料は粒状であり、水に懸濁させて散布することができない。均一な育成を求められる芝生地においても粒状の緩効性肥料が使用されているが、肥効がばらつくために芝丈が不揃いになる傾向がある。また、水に懸濁して散布する化学合成の緩効性窒素肥料肥料も使われている。しかし、使用時の粉立ちや粉体であるために水への馴染みが悪いなどの課題があった。
更に、化学合成緩効性窒素肥料は加水分解作用を受けるため、水溶液中で製品の長期安定性を保つことは難しく、高濃度かつ、燐酸、カリウム等の重要な肥料成分を含む液状複合肥料として使用されることはなかった。
本発明者らは、300μm以下に分級した化学合成緩効性窒素肥料を比重のほぼ等しい亜燐酸カリウム水溶液に懸濁させ、pHを調整することで分解を抑制し、容易に散布できる緩効性かつ高濃度の液状複合肥料を完成させた。
本発明に関わる化学合成緩効性窒素肥料としてはアセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、ホルムアルデヒド縮合尿素、およびオキサミドなどが上げられる。しかし、イソブチルアルデヒド縮合尿素や縮合度の低いホルムアルデヒド縮合尿素は水溶解度が高く加水分解作用を受けやすい。また、オキサミドは肥料成分濃度を高くすると懸濁液の粘度が高くなる欠点を有している。従ってアセトアルデヒド縮合尿素が使用上最も適している。
アセトアルデヒド縮合尿素は酸性条件下で徐々に加水分解することが知られている。また、本発明者らの実験によればアセトアルデヒド縮合尿素はアルカリ性条件下において比較的速やかに分解作用を受け、製品の安定性を保つことは困難である。従って、これらの混合物を懸濁液中で長期間、安定に保つにはpHを5.0から6.9の弱い酸性領域に保持する必要がある。
混合する亜燐酸は燐酸より解離定数の大きい酸性化合物であり、その水溶液に水酸化カリウムを加えることで要求する燐酸及び、カリウム濃度に調整することができる。
緩効性窒素肥料を水に懸濁させて長期間安定に保持しうる液状複合肥料は、亜燐酸カリウム水溶液に化学合成緩効性窒素肥料を混合し、酸性であれば水酸化カリウム等のアルカリ性物質の適量を加え、アルカリ性であれば燐酸等の酸性物質を加えてpHを5.0から6.9に調整することで容易に製造できる。
本発明にかかる液状複合肥料は、緩効性窒素肥料と亜燐酸カリウムの二者を混合して用いる事もできるが、使用する作物、土壌、使用時期等に応じて塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素など速効性窒素肥料を混合することもできる。更に、塩化カリウム、硫酸カリウム等の中性のカリウム塩を添加してカリウム濃度を上げることや、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素など、その他の微量要素を加えて用いることもできる。
300μm以下に分級した化学合成緩効性窒素肥料を亜燐酸カリウム水溶液に懸濁分散させることにより、高い機能を有する複数の肥料成分を容易、且つ均一に施肥することを可能にする。
化学合成緩効性窒素肥料の保存安定性を確保し、経済性に優れた高濃度液状複合肥料を提供する。
(調製例1) pHを変動させたアセトアルデヒド縮合尿素懸濁肥料
60メッシュ(250μm)以下に篩い分けられたアセトアルデヒド縮合尿素(窒素保証値:31%、チッソ株式会社商品)453gにpH4.9の亜燐酸カリウム水溶液(保証値:P30% KO20%、BIOIBERICA AGRICULTURA社商品)401g、及びイオン交換水146gを混合して試験用原液を調製した。更に、この原液100gに所定量の12.0%KOH水溶液を加えて下記表1に示す8点を調製した。
Figure 2007063109
(調製例2) アセトアルデヒド縮合尿素懸濁肥料
KOH38gを水196gに溶解後、冷却させた水溶液にpH4.9の亜燐酸カリウム水溶液(保証値:P30% KO20%)345gとアセトアルデヒド縮合尿素(窒素保証値:31%)421gを冷却しながら混合して窒素13.0%、燐酸(P)10.3%、カリウム(KO)10.0%の液状複合肥料1kgを調製した。混合物のpHは6.7であった。
(調製例3) 調製例2に相当する肥料成分比率と粘度を有するオキサミド懸濁肥料
KOH23gを水498.5gに溶解後、冷却させた水溶液にpH4.9の亜燐酸カリウム水溶液(保証値:P30% KO20%)211.5gと300μmに篩い分けたオキサミド(窒素保証値:30%、宇部興産農材株式会社商品)267gを混合して窒素8.0%、燐酸(P)6.3%、カリウム(KO)6.1%の液状複合肥料1kgを調製した。混合物のpHは6.4であった。
〔安定性試験〕
調製例1に基づく8点を−20℃の冷凍冷蔵庫(SR−48L 三洋電機株式会社製)、及び50℃の恒温器(IC−300AL アズワン株式会社製)で3週間保管した。その後、各々についてアセトアルデヒド縮合尿素の1000ppm相当量を秤量し、蒸留水を用い、超音波洗浄器(UC−1 アズワン株式会社)で溶解した。この溶液をメタノール(99.7%、光純薬工業株式会社商品)で100ppmに調整した後、高速液体クロマトグラフィー(LC−2010C 島津製作所製)を用いてアセトアルデヒド縮合尿素の分析を行った。原料のアセトアルデヒド縮合尿素は単一ピークを与えないため、主要なピーク2点の比率を調製例1−1(原液)におけるアセトアルデヒド縮合尿素の同一ピーク比率で除したものをもって分解程度を判断した。
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
検出器:UV254nm、カラム:Gemini 5u C18 110A 100×4.6mm
温度:40℃、注入量:10μl
移動相:アセトニトリル:水(10:90)、流速:1.0ml/min
調製直後の分析結果を表2に示し、50℃、3週間保管後の分析結果を表3に示す。
Figure 2007063109
Figure 2007063109
〔効果試験〕
茨城県つくば市殿山地区の圃場内にある、植栽したベント芝を0.5mに区切り、調製例1、調製例2、調製例3による肥料を電動散布機(株式会社丸山製作所製)を用いて、無処理区を除き、いずれの区も一平方メートル当たり、窒素成分量0.5gを500mlの水で散布した。肥料の効果は10日後、20日後、および30日後に、芝の緑度によって評価した。試験は各々2反復として、2005年4月8日に処理を行った。尚、芝の刈り込みは1〜2日おきに行った。その結果の平均値を表4に示す。緑度は、水稲用の富士葉色カラースケール(富士写真フィルム株式会社製)を用い、1(黄色)〜7(深緑)の7段階に各段階の中間位を加えて評価した。
Figure 2007063109

Claims (2)

  1. 粒径300μm以下に分級した化学合成緩効性窒素肥料を亜燐酸カリウム水溶液に懸濁させてpHを5.0から6.9に調整した液状複合肥料。
  2. 緩効性窒素肥料を20%以上含有する請求項1に記載の液状複合肥料。
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