JP2007061887A - アルミニウム合金板の摩擦接合方法 - Google Patents

アルミニウム合金板の摩擦接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接合部材の突き合せ部分におけるギャップの発生を抑制することができる摩擦攪拌接合方法を提供すること。
【解決手段】厚みの異なるアルミニウム合金板よりなる第1接合部材21と第2接合部材22とを突き合せ、その突き合せ部分23を接合する摩擦攪拌接合方法である。径大部10と、その端面であるショルダー11の回転軸上に設けられた径小のプローブ12とを有する回転工具1を回転させながら、プローブ12側から突き合せ部分23に差し込む。回転工具1を接合部材の突き合せ面200に対して、回転軸Cを第1接合部材21の方に角度θだけ傾斜させた姿勢に配置し、その姿勢を維持したまま、裏当て治具3に鉛直な方向に移動させる。最初にプローブ12の先端面120を、突き合せ部分23における第2接合部材22の角部221に当接させ、その後も鉛直な方向に前進させてプローブ12を突き合せ部分23に差し込む。
【選択図】図1

Description

本発明は、厚みの異なるアルミニウム合金板よりなる接合部材の接合に用いる摩擦攪拌接合方法に関するものである。
最近、地球環境保護あるいは省エネルギーの観点から、自動車の排出する有毒ガスや二酸化炭素の抑止、燃費の向上が叫ばれている。これらを達成するための一つの方法として、自動車の軽量化、即ち軽量材料の使用が最も有効であり、ボディ及び部品の鋼からアルミニウムへの転換が盛んに検討されている。素材をできるだけ節約し、部材の適材適所を図るため、板厚の異なるあるいは材質の異なる板を接合しプレス成形に供するテーラードブランクの考え方がある。
鋼板のテーラードブランク材は、レーザー溶接やマッシュシーム溶接により実用化されている。アルミニウム合金の場合、レーザー溶接では、レーザー光の反射率が高く表面状態によるばらつきが大きく、ポロシティが生じやすい等の問題があり、安定な継手が得られない。マッシュシーム溶接も、アルミニウム合金の場合は熱が逃げやすく局部的な溶融しかできないため、プレス成形に耐える滑らかな表面を有する継手を得るのは困難である。
一方、入熱が少なく、軟化や歪みの程度が軽い接合方法として、アルミニウム合金の突き合せ摩擦接合方法が開示されている(特許文献1)。この方法は、硬質の裏当ての上に軟質素材を突き合せて拘束し、硬質のピン型工具を突き合せ部分に高速回転させながら差し込み移動させる方法で、接合部が溶融しないのが特徴である。軟らかく融点が低い金属に向いており、アルミニウム合金の接合に適する。この方法を用いてテーラードブランク材を製造することにより、安定な継手特性を得ることが可能となる(特許文献2)。
また、厚みの異なる接合部材を摩擦攪拌接合する方法として、回転軸方向から差厚突き合せ部に差し込む方法がある(特許文献3)。
厚みの異なる接合部材を摩擦攪拌接合(差厚接合)する際に、差厚突き合せ面に回転工具を斜めに存在せしめて厚板側の接合部材を薄板表面側に移動させながら接合することが、滑らかな接合部を得るために優位であると考えられる。但し、上述の差厚接合法では回転軸方向と差し込み方向が同じであるため、厚板側の角を回転工具のプローブの先が押す形となり、突き合せ面にギャップが生じるおそれがある。特に薄板の場合には、突き合せ面近傍を押さえていても突き合せ面がめくれ上がり、裏当て治具から離れて接合欠陥が生じる可能性が大きい。また、そのまま無理矢理接合すると製品の歪が大きくなることもある。回転工具のプローブの先端中央は攪拌力が少ないため、その部分が最初に接合部材に当接すると抵抗が大きく、ギャップ発生が顕著である。
特許第2712838号公報 特許第3262533号公報 特開平10−249553号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、厚みの異なる接合部材を摩擦攪拌接合する場合の突き合せ部分におけるギャップの発生を抑制することができる摩擦攪拌接合方法を提供しようとするものである。
厚みの異なるアルミニウム合金板よりなる接合部材の端面を突き合せ、その突き合せ部分を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
径大部と、該径大部の端面であるショルダーの回転軸上に設けられた径小のプローブとを有する回転工具を用い、該回転工具を回転させながら、上記プローブ側から上記突き合せ部分へと最初に差し込むに当たり、
上記接合部材の突き合せ面に対して、上記回転軸を厚みの薄い上記接合部材の方に角度θだけ傾斜させた姿勢に上記回転工具を配置し、
該回転工具の上記姿勢を維持したまま、該回転工具を上記接合部材の板面に鉛直な方向に移動させ、最初に上記プローブの先端面を、突き合せ部分における厚みの厚い上記接合部材の上端角部に当接させ、その後も上記回転工具を上記鉛直な方向に前進させて上記プローブを突き合せ部分に差し込むことを特徴とする摩擦攪拌接合方法にある(請求項1)。
本発明では、径大部と、該径大部の端面であるショルダーの回転軸上に設けられた径小のプローブとを有する回転工具を用いる。そして、該回転工具を回転させながら、上記プローブ側から、厚みの異なるアルミニウム合金板よりなる接合部材の突き合せ部分へと最初に差し込む。このとき、上記回転工具は、接合部材の板面に鉛直な方向に移動させ、かつ、最小にプローブの先端面を、突き合せ部分における厚みの厚い上記接合部材の上端角部に当接させる。すなわち、上記プローブの先端面は、鉛直方向に前進しながら上記接合部材の上端角部に当接し、これを鉛直方向に押圧しながら突き合せ部分に差し込まれる。そのため、当接時及び差し込み時には回転工具のプローブの先が厚板側の角を鉛直方向に押さえつける形となり、厚板の浮き上がりや、突き合せ面のギャップを抑制することができる。
また、上記接合部材の突き合せ面に対して、上記回転軸を厚みの薄い上記接合部材の方に角度θだけ傾斜させた姿勢に上記回転工具を配置してから、この回転工具を鉛直方向に前進させる。これにより、鉛直方向に前進させることによる上記効果を確保しつつ、差し込み完了時には差厚接合に適した上記回転工具の傾斜状態を得ることができる。つまり、上記の鉛直方向の移動を行っても、差し込み完了時には、差厚突き合せ面に対して回転工具が斜めに存在する形となり、厚板と薄板との板差厚を滑らかにするような材料流動、つまり厚板側の接合部材を薄板表面側に移動させるという材料流動を伴いながら接合することができ、滑らかな接合部を得ることができる。
このように、本発明によれば、厚みの異なる接合部材を摩擦攪拌接合する場合の突き合せ部分におけるギャップの発生を抑制することができる摩擦攪拌接合方法を提供することができる。
本発明の摩擦攪拌接合方法において、上記角度θは、1〜10°の範囲とすることが好ましい(請求項2)。
この場合には、接合部表面が滑らかになり、二枚の厚みの異なる接合部材の段差を小さすることができ、後の成形性が良くなるという効果が得られる。
上記角度θが1°未満の場合には、顕著な効果が現れないという問題があり、上記角度θが10°を超える場合には、接合ヘッドにかかる荷重モーメントが大きくなるとともに、薄板側の接合部が厚板側の接合部よりもかなり薄くなるという問題がある。
また、上記回転工具を上記突き合せ部分に差し込んだ後、該突き合せ部分に沿って平面方向に移動させる場合においては、上記差込み時に、上記回転軸を上記平面方向への移動方向と反対側の方にも角度αだけ傾斜させた姿勢に上記回転工具を配置し、該回転工具の上記姿勢を維持したまま、該回転工具を上記接合部材の板面に鉛直な方向に前進させて上記プローブを上記突き合せ部分に差し込むことが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記回転工具を水平方向へ移動させる動作をスムーズに行うことができると共に、滑らかな接合平面を得ることができるという効果が得られる。
上記角度αは0.5〜5°の範囲とすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、攪拌された接合部材が、上記回転工具後側でしっかりと押し固められるため、高速でも欠陥が出ないという効果が得られる。
上記角度αが0.5°未満の場合には、欠陥やバリが生じやすくなるという問題があり、また、上記角度αが5°を超える場合には、接合部が薄くなりすぎるという問題がある。
本発明の実施例に係る摩擦攪拌接合方法につき、図1を用いて説明する。なお、本例は、一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示すごとく、本例の摩擦攪拌接合方法は、材質6111合金、質別T4、厚み1mmtの板よりなる第1接合部材21と、材質6111合金、質別T4、厚み2mmtの板よりなる第2接合部材22とを突き合せて裏当て治具3の上に拘束し、その突き合せ部分23を摩擦攪拌接合によって接合した。
また、接合には、径大部10と、該径大部10の端面であるショルダー11の回転軸上に設けられた径小のプローブ12とを有する回転工具1を用いた。上記ショルダー11の直径R1は15mm、上記プローブ12の直径R2は10mmである。
この回転工具を制御する摩擦攪拌接合装置としては、図1に示すごとく、ガントリー型の摩擦攪拌接合装置4を用いた。該摩擦攪拌接合装置4は、ガントリー40に上下にスライドするベース板41を取り付け、回転工具1の傾斜をガンドリー4の横柱方向に+−15度振ることができるように、上記ベース板41に、上記回転工具1を固定した接合ヘッド42取り付けた構造を有する。
接合を行うに当たっては、回転工具1を回転させながら、上記プローブ12側から上記突き合せ部分23に最初に差し込む。このとき、回転工具1の回転数を1500rpmとする。また、図1、図2に示すごとく、上記第1接合部材21と上記第2接合部材22との突き合せ面200に対して、上記回転軸Cを厚みの薄い上記第1接合部材21の方に角度θ(θ=5度)だけ傾斜させた姿勢に上記回転工具1を配置する。さらに、図3に示すごとく、本例では、後に回転工具1を平面方向に移動させるので、その、平面方向への移動方向と反対側の方向にも角度α(α=3度)だけ傾斜させた姿勢に上記回転工具1を配置する。
次に図4に示すごとく、回転工具1の上記姿勢を維持したまま、該回転工具1を上記裏当て治具3に対して鉛直な方向に移動させ、最初に上記プローブ12の先端面120を、上記突き合せ部分23における上記第2接合部材22の上端角部221に当接させる。そして、図5に示すごとく、その後も上記回転工具1を上記鉛直な方向に前進させて上記プローブ12を突き合せ部分23に差し込んだ。
上記突き合せ部分23に差し込まれた上記回転工具1の回転により、上記第1接合部材21及び上記第2接合部材22が攪拌され、厚板側の接合部材を薄板表面側に移動させるという材料流動が生じ、攪拌部24が形成される。
その後、上記第1接合部材21と上記第2接合部材22との突き合せ面22に沿って、回転工具を平面方向に移動させる。このときの移動速度、すなわち接合速度は2m/分とした。
水平方向への移動時に、上記回転工具1の上記回転軸Cが上記平面方向への移動方向Aと反対側の方にも角度α(α=3度)だけ傾斜した姿勢であるため、動作をスムーズに行うことができると共に、滑らかな接合平面を得ることができた。
本例では、回転工具1を最初に差し込む際に、斜めではなく鉛直方向に移動させるので、プローブ12の先が上記第2接合部材22側の角を鉛直方向に押さえつける形となり、上記第2接合部材22の浮き上がりや、突き合せ面20のギャップを抑制することができた。また、突き合せ面200に対して、回転工具1が斜めに存在する形となり、第2接合部材22側の接合部材を第1接合部材21表面側に移動させながら接合でき、滑らかな接合部を得ることができ、接合開始時のバリやギャップによる歪が全くない品質のよいテーラードブランクが得られた。
摩擦攪拌接合装置を示す説明図。 接合面に対して角度だけθ傾斜させて配置した回転工具を示す説明図。 移動方向と反対側に角度αだけ傾斜させて配置した回転工具を示す説明図。 プローブの先端面が厚みの厚い接合部材の上端角部に当接した状態を示す説明図。 突き合せ部分に差し込まれた回転工具の回転により形成された攪拌部を示す説明図。
符号の説明
1 回転工具
10 径大部
11 ショルダー
12 プローブ
120 先端面
21 第1接合部材
22 第2接合部材
221 上端角部
23 突き合せ部分
24 攪拌部
200 突き合せ面
3 裏当て治具
4 摩擦攪拌接合装置
40 ガントリー
41 ベース板
42 接合ヘッド

Claims (4)

  1. 厚みの異なるアルミニウム合金板よりなる接合部材の端面を突き合せ、その突き合せ部分を接合する摩擦攪拌接合方法であって、
    径大部と、該径大部の端面であるショルダーの回転軸上に設けられた径小のプローブとを有する回転工具を用い、該回転工具を回転させながら、上記プローブ側から上記突き合せ部分に最初に差し込むに当たり、
    上記接合部材の突き合せ面に対して、上記回転軸を厚みの薄い上記接合部材の方に角度θだけ傾斜させた姿勢に上記回転工具を配置し、
    該回転工具の上記姿勢を維持したまま、該回転工具を上記接合部材の板面に鉛直な方向に移動させ、最初に上記プローブの先端面を、突き合せ部分における厚みの厚い上記接合部材の上端角部に当接させ、その後も上記回転工具を上記鉛直な方向に前進させて上記プローブを突き合せ部分に差し込むことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
  2. 請求項1において、上記角度θは、1〜10°の範囲とすることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
  3. 請求項1又は2において、上記回転工具を上記突き合せ部分に差し込んだ後、該突き合せ部分に沿って平面方向に移動させる場合においては、上記差込み時に、上記回転軸を上記平面方向への移動方向と反対側の方にも角度αだけ傾斜させた姿勢に上記回転工具を配置し、該回転工具の上記姿勢を維持したまま、該回転工具を上記接合部材の板面に鉛直な方向に前進させて上記プローブを上記突き合せ部分に差し込むことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
  4. 請求項3において、上記角度αは0.5〜5°の範囲とすることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
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