JP2007061853A - セラミック鋳型の迅速造型法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭酸ジルコニウムアンモニウム,酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物溶液をバインダーとして用いた場合においても、バインダーの乾燥硬化を短時間で迅速に済ませることができ、量産性に優れたセラミック鋳型の迅速造型法を提供する。
【解決手段】バインダーと骨材とを含むセラミックスラリーにワックスを浸漬して表面にセラミックスラリーをコーティングした後、耐火砂を振りかけてその後乾燥処理する作業を繰り返し行った後、脱ワックス及び焼成を行ってセラミック鋳型を造型するセラミック鋳型の造型法において、バインダーとしてのジルコニウム化合物溶液及び骨材としてジルコニアを含んだセラミックスラリーを少なくとも初層用のセラミックスラリーとして用い、且つコーティング後の乾燥処理に際してオゾンを作用させ、バインダーを硬化せしめる。
【選択図】 なし

Description

この発明はセラミック鋳型の造型法に関し、特にバインダーとしてジルコニウム化合物溶液を用いた場合においてバインダーを迅速に硬化させることのできる迅速造型法に関する。
従来、鋳造に用いられるセラミック鋳型の造型法として、バインダーと骨材とを含むセラミックスラリーに、鋳造製品に対応した形状のワックスを浸漬してワックス表面にセラミックスラリーをコーティングした後、表面に耐火砂を振りかけてその後乾燥処理する作業を繰り返し行った後、脱ワックス及び焼成を行ってセラミック鋳型を造型する方法が広く実施されている。
通常このセラミック鋳型としてはSiOを含んだものが一般的に用いられているが、活性金属例えばチタンを鋳造する場合に金属溶湯に直接接する鋳型の表層にSiOが含まれていると、チタンが酸素を吸収及び反応してチタン鋳造製品の表面に硬くて脆いチタンの酸化物を形成してしまう。
またこれと同時にSiOガスが発生してチタン鋳造製品中に入り込み、多くのガス欠陥を生ぜしめてしまう。
こうしたことからチタン等の活性金属を鋳造する場合の鋳型として、特に金属溶湯に直接接する表層を形成するための材料として、化学的に安定なジルコニアを用いることが行われている。
具体的には、ワックス表面に第1層目にコーティングされるセラミックスラリーとして、炭酸ジルコニウムアンモニウム,酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物溶液をバインダーとして、そこにジルコニア骨材を加えたものが従来用いられている。
しかしながらこのジルコニウム化合物溶液をバインダーとして用いたセラミックスラリーの場合、ワックスをセラミックスラリーに浸漬してコーティングした後の乾燥硬化のために極めて長時間を要し、また乾燥硬化が不十分であると2回目にセラミックスラリー中にワックスを浸漬したとき、第1回目の浸漬によって形成されたコーティング層(鋳型の第1層)がワックスから剥離してしまうといった問題がある。
詳しくは、セラミックスラリーとしてこのようなジルコニウム化合物溶液から成るバインダー及びジルコニア骨材を含んだものを用いた場合、従来にあってはワックスをセラミックスラリーに浸漬した後、自然乾燥によってこれを硬化させていた。
その際のバインダーの硬化のプロセスは必ずしも明確ではないが、一応次のような反応によるものと考えられる。
例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液をバインダーとして用いた場合、図1の式(1)で先ず炭酸ジルコニウムアンモニウムからアンモニアが、また式(2)で炭酸根が抜けるとともに、それらが式(3)に従って反応して行き、更に式(2)で炭酸根の離脱によりジルコニウムの多核錯体が成長して行き(炭酸根の抜けたZrと別のジルコニウム化合物のOHとが結合して行く)、そして成長した多核錯体がファンデワールス力による凝集,水素結合,架橋にてゲル化し、更に溶媒の蒸発で濃縮されてゲル化が促進されて次第に硬化していくものと考えられる。
この場合、式(3)の反応が進む程炭酸ジルコニウムアンモニウムからアンモニア及び炭酸根が抜け易くなり、反応が促進される。
このようにして成長した多核錯体は、後の加熱によりOHが脱水離脱して最終的にZrO(ジルコニア)となる。
しかしながら上記のようにしてバインダーを自然乾燥により硬化させる場合、十分な硬化のために極めて長時間を要してしまう。
例えば上記の炭酸ジルコニウムアンモニウムの場合、これを十分に硬化させるためには50時間の長時間をかけて乾燥硬化を行わせることが必要となる。
バインダーとしてのジルコニウム化合物溶液としては、他に酢酸ジルコニウム水溶液も用いられており、この場合には十分な硬化のために更に長い時間を要してしまう。
而してこのようにジルコニウム化合物溶液から成るバインダーの乾燥硬化のために極めて長時間を要することが、鋳型の生産性を大きく阻害する要因となっていた。
上記のように炭酸ジルコニウムアンモニウムのバインダーの場合、十分な乾燥硬化のためには50時間程度の乾燥時間が必要であるが、実際問題としてこのような長時間かけて乾燥処理することは現実的ではなく、そこで実際にはこれよりも短い時間で乾燥処理を終えているのが実状である。
ところで炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を用いたバインダーの場合、ワックスをセラミックスラリーに浸漬して最初のコーティング層、即ち鋳型の第1層を形成した後、再びこれをセラミックスラリーに浸漬して鋳型の第2層を形成する際、第1層の乾燥硬化が不十分であると、これを第2層目のセラミックスラリーに浸漬したとき、第1層がセラミックスラリー中に溶け出して剥落する現象(鋳型崩壊する現象)を生ずる。
例えば上記の自然乾燥を50時間かけて行った場合、鋳型の第2層目を形成すべくワックスを第2層用のセラミックスラリー中に浸漬したとき、これを10分間浸漬しても上記の鋳型崩壊を生ずることはない。
これに対して乾燥時間が20〜30時間程度の場合、浸漬時間が4分を超えると鋳型崩壊が始まる。
ただし第2層目のセラミックスラリーのコーティング処理を4分以内で終えるならば、乾燥時間を20〜30時間としても良いということになる。
そこで現実には乾燥20〜30時間程度行って、2層目の浸漬処理を4分以内で迅速に済ませるようにしている。
しかしながら2層目の浸漬処理を4分以内で迅速に行うことは技術的に難しい点があって、場合によって4分を超えてしまうことがあり、この場合には上記の鋳型崩壊を生ぜしめてしまう。
即ち乾燥時間をこのように完全硬化に必要な時間よりも短い時間とした場合、鋳型崩壊の危険を伴うことになる。
以上はバインダーとして炭酸ジルコニウムアンモニウムを用いた場合であるが、かかるバインダーとして酢酸ジルコニウムを用いた場合には、より長い乾燥時間を要し、或いはまた乾燥時間を短くした場合には鋳型崩壊をより短時間で生ぜしめてしまう。
バインダーとして炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を用いた場合、その他に、乾燥の過程で臭気の強いアンモニアが多量に発生する問題が生ずる。
そこで作業室内に多量のアンモニアが発生,充満するのを防ぐべく、室内の空気をダクトで引いて、これを水に通し再び室内に戻すようにしているが、そのようにすると作業室内の空調が乱れ、またダクトで引いた空気を水に通して再び作業室内に戻すことによって室内の湿度が高くなり、そこで除湿を行うといったことが必要となって来る。
一方ダクトで引いた空気を通した水は、その後中和処理を行って処分することとなるが、その処理処分にも多大な費用がかかる問題が生ずる。
本発明は以上のような課題を解決すべく案出されたものである。
尚、本願発明に対する先行技術として下記特許文献1に開示されたものがある。
この特許文献1には、ポリイミド樹脂を結合剤として骨材粒子を結合し、多孔質材料を形成すること、その際に予め骨材粒子をオゾン処理しておくことでポリイミドとの接合性を向上させ得る点が開示されているが、オゾン処理の目的、対象が本発明とは全く異なっており、本発明とは別異のものである。
特開2005−146243号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、炭酸ジルコニウムアンモニウム,酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物溶液をバインダーとして用いた場合においても、バインダーの乾燥硬化を短時間で迅速に済ませることができ、量産性に優れたセラミック鋳型の迅速造型法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、バインダーと骨材とを含むセラミックスラリーに、鋳造製品に対応した形状のワックスを浸漬してワックス表面にセラミックスラリーをコーティングした後、該コーティング層の表面に耐火砂を振りかけて、その後乾燥処理する作業を繰り返し行った後、脱ワックス及び焼成を行ってセラミック鋳型を造型するセラミック鋳型の造型法において、前記バインダーとしてジルコニウム化合物溶液を、前記骨材としてジルコニアを用い、少なくとも第1回の前記セラミックスラリーのコーティング後における前記乾燥処理に際して、前記コーティング層に対しオゾンを作用させて前記バインダーを硬化せしめることを特徴とする。
発明の作用・効果
以上のように本発明は、バインダーとして炭酸ジルコニウムアンモニウム,酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物溶液を、また骨材としてジルコニアを用いた場合において、少なくとも第1回(初回)のセラミックスラリーのコーティング後における乾燥処理に際して、コーティング層に対しオゾンを作用させてバインダーを硬化せしめるものである。
本発明に従ってワックス表面に塗布されたバインダー、即ち第1層のコーティング層に対してオゾンを作用させた場合、極めて短時間でバインダーが硬化する。
従って本発明によれば、乾燥処理を極めて短時間で終了することができ、セラミック鋳型の生産性を飛躍的に高めることができる。
また第1層を十分に硬化させた状態で次のコーティング層、即ち鋳型における第2層を形成するためのセラミックスラリー中に浸漬処理できるため、その際に第1層のコーティング層が剥落する現象、即ち鋳型崩壊する現象を避けることができる。これにより2回目の浸漬処理が容易になるとともに、その際に目に見えない箇所で第1層のコーティング層の剥落が生じて製品欠陥を生ぜしめる問題を解決することができる。
またバインダーとして炭酸ジルコニウムアンモニウムを用いた場合には、その他に次の効果も得られる。
即ち、炭酸ジルコニウムアンモニウムから離脱したアンモニアもまたオゾンの作用にて速やかに分解することができ、作業室にアンモニアが充満するのを防止することができる。
従ってまた、従来のように室内の空気をダクトで引いて水に通した上、室内に戻したり、更にはアンモニアを吸収した水の処理を行ったり、そのために多大なコストを要したりする問題を解決することができる。
加えて室内の空気をダクトで多量に引くことによって室内の空調が乱れたり、或いは水に通した空気を再び室内に戻すことによって室内の湿度が高まり、室内の除湿を別途に必要とするといった問題も併せて解決することができる。
次に本発明の実施形態を以下に具体的に説明する。
[I]比較例1:減水率の測定
炭酸ジルコニウムアンモニウム,酢酸ジルコニウムの各水溶液をそれぞれ500ccビーカーに採り、そこに325メッシュアンダーのジルコニア粉を骨材として添加し、それらを混合してセラミックスラリーを作成した。
その際、セラミックスラリーの粘度が3000cpsとなるようにジルコニア粉の添加量を調整した。
一方、厚みが5mm,幅が25mm,長さが50mmの板状のワックス片(試験片)を別に用意して、これを界面活性剤で洗浄及び乾燥後、上記のセラミックスラリーに浸漬し、そしてセラミックスラリーからこの試験片を引き上げて、液の滴下が発生しない状態でその重量を測定した。
その後湿度50%,温度22℃の室内で自然乾燥し、そして経過時間ごとに水分蒸発量を測定して、乾燥時間と減水率との関係を求めた。
その結果が表1及び図2に示してある。
尚減水率を求めるに際しての初期水分重量は、セラミックスラリーに浸漬した試験片の初期重量から最終乾燥後、150℃の乾燥炉で乾燥した後の重量を差し引いて求めた。150℃では当然ワックスが溶解し形状が変化するが、これは無視した。
Figure 2007061853
[II]比較例2:鋳型崩壊時間の測定
比較例1と同様に試験片を上記のセラミックスラリーに浸漬し、表面にセラミックスラリーをコーティングした。
そしてコーティングした試験片を自然乾燥し、そして各乾燥時間ごとに再び試験片をジルコニア粉を混合していないバインダー純液に浸漬し、先に形成したコーティング層の剥落即ち鋳型の崩壊状況を観察した。
このとき、第1層のコーティング層が完全に固化していない場合、試験片をバインダー純液に浸漬すると一部元のスラリーに戻り(膨潤し)鋳型が崩壊する。早いものでは1〜2分で鋳型が崩壊する。
その結果が表2に示してある。
Figure 2007061853
表2に示しているように従来の自然乾燥の場合、第1層のコーティング層が完全硬化するには50時間が必要で、この乾燥時間は実用的とは言えない。
[III]実施例:オゾンの作用による硬化
上記と同様のワックス片を上記の炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液をバインダーとして用いたセラミックスラリー中に浸漬した。
そしてこれを500×500×500mmのプラスチック容器に入れて、プラスチック容器内に設けたオゾン発生装置からのオゾンを作用させ上記バインダーの硬化処理を実施した。
尚、オゾン発生装置は市販の空冷式オゾン発生装置を用い、大きさは190mm×250mm×260mm(高さ)で、オゾン最大発生量は1000mg/Hrである。そしてプラスチック容器内のオゾン濃度が20ppmとなるようにオゾンを発生させた。
また湿度,温度管理のためにプラスチック容器には直径φ30mmの通気孔を4箇所に設け、更にプラスチック容器内のオゾン濃度をガス濃度検知管で測定し、内部のオゾン濃度を20ppmに維持した。
尚このオゾンによる乾燥硬化は湿度50%,温度22℃の下で行い、またオゾンによる乾燥硬化に先立って、予めセラミックスラリーに浸漬した試験片を7時間かけて自然乾燥を行い、その自然乾燥後のものに対してオゾン照射による乾燥硬化を行った。
以上のようにして所定時間乾燥硬化処理した試験片を所定乾燥時間ごとに取りだし、これを別に用意した炭酸ジルコニウムアンモニウムバインダー純液が200cc入ったビーカーに浸漬し、そして第1層のコーティング層が剥れ落ちる時間を測定して鋳型崩壊時間を求めた。
その結果が表3に示してある。
Figure 2007061853
表3の結果に見られるように、オゾンを作用させた場合6時間の乾燥硬化時間でワックス片の表面にコーティングしたセラミックスラリーは完全に硬化していた。これは自然乾燥の場合の50時間の乾燥時間に相当する。
即ち事前の7時間の自然乾燥を加えても、本実施例によれば13時間の短時間でセラミックスラリー、即ちバインダーを硬化させることができる。
このようにオゾンを作用させることによってバインダーの乾燥硬化が促進されるのは、図1の式(4)に示しているようにオゾンの作用によってジルコニウムに結合している炭酸根の離脱が促進され、その結果多核錯体ができ易くなることによるものと考えられる。
この実施例ではまた、自然乾燥の場合に比べてアンモニア濃度が大きく低下していた。
これはアンモニアに対してもオゾンが作用して、そのアンモニアがオゾンの作用の下に分解することによるものと考えられる。
本実施例に従って乾燥硬化処理した鋳型、具体的には金属溶湯と直接接する第1層は強度的にもムラがなく安定したものであった。
以上のような本実施形態によれば、バインダーの乾燥処理を極めて短時間で終了することができ、セラミック鋳型の生産性を飛躍的に高めることができる。
また乾燥処理を短時間で行うことができることから、鋳型の生産コストを低減することができる。
更にバインダーとして炭酸ジルコニウムアンモニウムを用いた場合において、オゾンを作用させることで炭酸ジルコニウムアンモニウムから離脱したアンモニアをも速やかに分解でき、作業室内へのアンモニアの充満を防止することができる。
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。例えば本発明に従ってセラミック鋳型を造型するに際して、活性金属と反応する恐れのない部分については上例以外のバインダー及び骨材を用いることが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
バインダーの硬化のプロセスを模式的に示した図である。 従来の自然乾燥の場合のバインダーの乾燥時間と減水率との関係を示した図である。

Claims (1)

  1. バインダーと骨材とを含むセラミックスラリーに、鋳造製品に対応した形状のワックスを浸漬してワックス表面にセラミックスラリーをコーティングした後、該コーティング層の表面に耐火砂を振りかけて、その後乾燥処理する作業を繰り返し行った後、脱ワックス及び焼成を行ってセラミック鋳型を造型するセラミック鋳型の造型法において、
    前記バインダーとしてジルコニウム化合物溶液を、前記骨材としてジルコニアを用い、少なくとも第1回の前記セラミックスラリーのコーティング後における前記乾燥処理に際して、前記コーティング層に対しオゾンを作用させて前記バインダーを硬化せしめることを特徴とするセラミック鋳型の迅速造型法。
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