本発明は、液晶などの表示素子を多色化するために用いられるカラーフィルタおよびその製造方法に関する。
従来から、液晶表示素子を多色化してカラー表示を行うために、カラー液晶表示パネルなどではカラーフィルタが用いられている。このようなカラーフィルタでは、カラー表示のための原色に着色されている透明層が一定のパターンの領域として形成される。液晶表示パネルの液晶表示セルで輝度を調整した白色光は、各原色のパターン領域の部分を個別に通過させる。このような各原色の表示を組合わせて、全体としてのカラー表示が行われる。各原色のパターン領域間には、混色を避けるために間隙が設けられ、この間隙にはブラックマトリクス(BM)と呼ばれる黒色層が設けられる。
カラーフィルタの代表的な製造方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、インクジェット法等が従来からよく知られている。いずれの製造方法も、カラーフィルタは、ブラックマトリックス(BM)と称される格子状の遮光層を設け、それらの間に複数色の微細な着色層が配置されている。BMの形成は、クロム(Cr)膜または黒色樹脂膜からなるものを利用している。
金属であるクロム膜によりBMを形成する方法には、スパッタリングや蒸着によるものが一般的で、着色した透明樹脂で形成する着色層とは、形成される層厚が異なり、クロム膜と着色層との間に段差が発生し、カラーフィルタとしての平坦性が悪い。黒色樹脂膜を利用する場合、層厚は同等にすることができるけれども、製造工程上、形成されたBM上に着色層が重なる部分が生じ、これも平坦性が悪くなる。カラー液晶表示パネルなどでは、カラーフィルタと液晶表示素子との間隔を一定に保つことも重要である。間隔を一定に保つためには、スペーサを多く分布させることが行われている。カラーフィルタの平坦性が悪いと、スペーサによる間隔の保持に支障が生じる。しかしながら、前述の方法では、いずれも着色層とBMが同一高さで平坦性の高いカラーフィルターを作製することが困難である。さらに、クロム膜を形成するために高額の成膜設備投資が必要となり、黒色樹脂を利用した場合も高価な露光機、現像機が必要で、設備投資が高額で生産コストも高くなる問題がある。
着色層の製造に関して、たとえば顔料分散法では、透明感光性樹脂液に着色顔料を分散させた着色剤を透明基板に塗布後、露光・現像等の工程を経て、所定パターンの第1色目の着色層を形成する。次いで同様の工程を繰り返し、第2色目、第3色目の着色層を形成するため、工程が長く複雑である。また、これらの工程には初期投資として高価な露光機、現像機が必要で、かつ維持すためにも多額の費用がかかる。
染色法においては、被染色層をスピンコート法等により透明基板に形成し、所定パターンのマスクを介して露光・現像し、染料で染色し、所定パターンの第1色目の着色層を形成し、次に防汚層を形成した後、同様の繰り返しで第2色目、第3色目の着色層を形成する必要がある。
電着法においては、電着塗装される部分を予め電極として透明導電膜によるパターンを形成しておく。三原色のカラーフィルタを製造する場合、順次それぞれに対応する電極に通電し、三回の電着操作を行う必要があり、電極の形状に制限を受け、格子構造の着色層を有するカラーフィルタが作り難い問題があった。また別法の電着法においては、透明基板全面に透明導電膜を形成し、フォトレジストを塗布後、露光・現像し、所定パターンの電極を露出させ、該露出部に着色剤を電着塗装により着色し、第1色目のカラーフィルター層を形成する。次いで同様の繰り返しで第2色目、第3色目のカラーフィルター層を形成する(たとえば、特許文献1参照。)。これらの電着法では、着色層とBMの高さを同じにすることは可能であるが、電極の形成、または電極の露出を所定のパターンに従って行うために、高価な露光機、現像機が必要となり、設備投資が高額で生産コストも高くなる問題がある。
インクジェット法では、コンピュータ制御等により、予め入力された位置情報に基づき着色剤のインクを吐出することができ、高速印刷が可能であると注目されるようになってきているが、ノズルのインク詰まりやノズルの寿命によって工程管理が困難である。またBMには、インクを正確な位置に着弾させるための下地処理が必要で工程も複雑であり、実用化には未だ多くの問題点を抱えている。
最近、着色工程として製造工程が単純な、印刷法が見直されてきている。印刷法には水無し平版オフセット印刷、凹版オフセット印刷法、転写法があり、樹脂を含むインクによる着色層をストライプ状に形成することが一般的である。しかしいずれも、着色層の周囲に細線のブラックマトリックスを繰返し精度良く作製することは難しい状況であり、クロム膜または黒色樹脂膜からなるBMを利用しているのが現状である。
また、シリコンブランケット上にインクを塗布し、インク塗布面に凸版を押圧し、圧着された部分のインクをシリコンブランケットから除去し、残ったインクを被印刷体面に転写する方法が提案されている(たとえば、特許文献2,3参照。)。しかしこの方法では、インクに含まれる溶剤がシリコンブランケットを膨潤させ、BMとして必要な細線パターンを安定的に再現性良く印刷することができない。
特開昭62−247331号公報
特開2000−289320号公報
特開2001−56405号公報
以上説明したように、従来のカラーフィルタ製造方法では、透明基板表面に格子状あるいは多角形状の細線BMと同じ高さの着色層を安定的に形成することができない。さらに製造工程が多く複雑である。
近年、カラー液晶表示パネルは大型化している。このような大型のカラー液晶表示パネルに使用するカラーフィルタは、大面積となる。特にホトリソグラフィを利用する製造方法では、装置や、装置を設置する工場の建家が大きくなり、設備投資が高額で生産コストも高くなる問題が顕在化する。
本発明はかかる問題を解決し、製造工程を少なくすることができ、透明基板上での着色層とブラックマトリクスとなる黒色層の高さを同一にすることができるカラーフィルタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、透明基板と、
透明基板上に、平坦で均一な厚さとなるように印刷される複数の島状の個別着色層であって、予め定めるカラー原色のうちのいずれか1つに着色され、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する個別着色層と、
透明基板上で、島状の個別着色層の周囲の間隙を充填するように形成され、個別着色層と同等な厚さを有する黒色層とを、
含むことを特徴とするカラーフィルタである。
本発明に従えば、透明基板上には、平坦で均一な厚さとなるように、予め定めるカラー原色のうちのいずれか1つに着色され、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する島状の個別着色層が印刷されている。島状の個別着色層は、相互に接触しないで、周囲の間隙は、黒色層で充填されている。黒色層の厚さは、個別着色層と同等となるので、カラーフィルタ全体として、ブラックマトリクスと個別着色層との透明基板表面での高さを同一にすることができる。黒色層は、島状の個別着色層の周囲の間隙に充填されるので、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。
また本発明で、前記島状の個別着色層は、ストライプ形状、ドット形状、またはこれらの変形形状を有することを特徴とする。
本発明に従えば、個別着色層の形状がストライプ形状、ドット形状、またはこれらの変形形状を有していても、その周囲の間隙を黒色層で充填してブラックマトリクスを形成することができる。
さらに本発明は、予め定めるカラー原色のうちのいずれか1つの着色層を形成するためのインクを均一にブランケットに塗布し、該ブランケットから版を使って不要な部分を取り除き、該ブランケットに残ったインクを透明基板表面に転写して、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する複数の島状の個別着色層を形成することを、該カラー原色の数だけ繰り返す印刷工程と、
印刷工程で島状の個別着色層を形成した透明基板表面上に、紫外線硬化型黒色着色剤を塗布して覆う塗布工程と、
塗布工程で塗布された紫外線硬化型黒色着色剤を、透明基板の背面側から紫外線を照射することによって、該個別着色層の間隙の部分のみで硬化させる硬化工程と、
塗布工程で個別着色層上に塗布された未硬化の紫外線硬化型黒色着色剤を除去することによって、個別着色層の間隙に黒色層を形成する除去工程とを、
含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
本発明に従えば、カラーフィルタを、印刷工程と、塗布工程と、硬化工程と、除去工程とを含む方法で製造することがきる。印刷工程では、予め定めるカラー原色のうちのいずれか1つの着色層を形成するためのインクを均一にブランケットに塗布し、ブランケットから版を使って不要な部分を取り除き、ブランケットに残ったインクを透明基板表面に転写して、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する複数の島状の個別着色層を形成する。個別着色層は印刷によって形成するので、平坦で均一な厚さとすることができる。これを、カラー原色の数だけ繰り返すので、個別着色層全体として、平坦で均一な厚さとすることができる。塗布工程では、印刷工程で島状の個別着色層を形成した透明基板表面上に、紫外線硬化型黒色着色剤を塗布して覆うので、紫外線硬化型黒色着色剤は、個別着色層の周囲の間隙にも充填される。硬化工程では、塗布工程で塗布された紫外線硬化型黒色着色剤を、透明基板の背面側から紫外線を照射することによって、個別着色層の間隙の部分のみで硬化させる。個別着色層は、透明基板の背面側から照射する紫外線を遮光するので、セルフアライメントマスクとして機能し、個別着色層の表面に塗布されている紫外線硬化型黒色着色剤は未硬化の状態で残される。除去工程では、塗布工程で個別着色層上に塗布された未硬化の紫外線硬化型黒色着色剤を除去することによって、個別着色層の間隙に残る硬化した紫外線硬化型黒色着色剤で黒色層を形成することができる。黒色層の形成のために、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。間隙の部分で硬化する紫外線硬化型黒色着色剤の厚さが個別着色層と同等となるように、紫外線の照射時間等を調整すれば、透明基板表面からの高さを、個別着色層と黒色層とで同一にすることができる。
また本発明で、前記硬化工程では、前記個別着色層の間隙で、前記紫外線硬化型黒色着色剤を、個別着色層と同等以上の厚さまで硬化させ、
前記除去工程では、個別着色層の間隙で硬化した紫外線硬化型黒色着色剤を、個別着色層と同等の厚さまで除去することを特徴とする。
本発明に従えば、個別着色層の間隙では、硬化工程で個別着色層の厚さと同等以上まで紫外線硬化型黒色着色剤を硬化させてから、硬化した紫外線硬化型黒色着色剤を、除去工程で個別着色層と同等の厚さまで除去するので、透明基板表面からの高さを、個別着色層と黒色層とで、確実に同一にすることができる。
上記の目的を達成する本発明のカラーフィルタの製造方法は、(第1工程)透明基板表面上に黒色除く二色以上の着色剤を相互に接触しないように、順次パターン状に印刷し、かつ形成される各色着色層が紫外線遮光性セルフアライメント機能を持つ二色以上からなる着色層を形成する工程と、(第2工程)着色層を形成した基板表面上に紫外線硬化型黒色着色剤を塗布し、該基板の背面から紫外線を照射することにより前記着色層間に塗布されている該黒色着色剤を硬化させ、しかる後、前記着色層上に塗布されている未硬化部分の該黒色着色剤を除去することにより、前記着色層間に黒色層を形成する工程、とからなる製造方法である。
本発明によれば、島状の個別着色層は、相互に接触しないで、周囲の間隙は、黒色層で充填されている。黒色層の厚さは、個別着色層と同等となるので、カラーフィルタ全体として、ブラックマトリクスと個別着色層との透明基板表面での高さを同一にすることができる。黒色層は、島状の個別着色層の周囲の間隙に充填されるので、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。
また本発明によれば、ストライプ形状、ドット形状、またはこれらの変形形状の個別着色層の周囲の間隙を黒色層で充填してブラックマトリクスを形成することができる。
さらに本発明によれば、カラーフィルタを、印刷工程と、塗布工程と、硬化工程と、除去工程とを含む少ない工程数で、透明基板の表面に、複数のカラー原色の各原色毎の個別着色層と黒色層とを製造することがきる。個別着色層は印刷によって形成するので、個別着色層全体として、平坦で均一な厚さとすることができる。塗布工程では、島状の個別着色層を形成した透明基板表面上に、紫外線硬化型黒色着色剤を塗布して覆うので、マスクや版などを用いなくても、紫外線硬化型黒色着色剤を、個別着色層の周囲の間隙に充填することができる。硬化工程では、塗布工程で塗布された紫外線硬化型黒色着色剤を、透明基板の背面側から紫外線を照射するので、個別着色層が紫外線を遮光し、セルフアライメントマスクとして機能する。除去工程では、塗布工程で個別着色層上に塗布された未硬化の紫外線硬化型黒色着色剤を除去することによって、個別着色層の間隙に残る硬化した紫外線硬化型黒色着色剤で黒色層を形成するので、黒色層の形成のために、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。
また本発明によれば、個別着色層の間隙で、個別着色層の厚さと同等以上まで紫外線硬化型黒色着色剤を硬化させてから、個別着色層と同等の厚さまで除去するので、透明基板表面からの高さを、個別着色層と黒色層とで、確実に同一にすることができる。
以下本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では三原色のカラーフィルタを製造する場合について説明するが、本発明は2色又は4色以上のカラーフィルタの製造にも適用することができる。
図1は、本発明の製造方法で製造されるカラーフィルタ1の基本的な断面構成を示す。本発明において使用する基板は、通常多色表示装置に用いられている如何なる透明基板2を用いてもよいが、透明なガラス基板、プラスチック基板が好適である。透明基板2上には、平坦で均一な厚さとなるように、複数の島状の個別着色層3R,3G,3Bが印刷される。個別着色層3R,3G,3Bは、たとえば、予め定めるカラー原色である赤(R)、緑(G)または青(B)のうちのいずれか1つに着色される。以下、個別着色層3R,3G,3Bについて総称するときは、R,G,Bの符号を削除して、「個別着色層3」として示す。個別着色層3は、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する。透明基板2上で、島状の個別着色層3R,3B,3Gの周囲の間隙は、個別着色層3R,3G,3Bと同等な厚さを有するブラックマトリクス(BM)となる黒色層4で充填される。
すなわち、島状の個別着色層3は、相互に接触しないで、周囲の間隙は、黒色層4で充填されている。黒色層4の厚さは、個別着色層3と同等となるので、カラーフィルタ1全体として、ブラックマトリクスとなる黒色層4と個別着色層3との透明基板2表面での高さを同一にすることができる。黒色層4は、島状の個別着色層3の周囲の間隙に充填されるので、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。
前述の目的を達成する本発明のカラーフィルタ1の製造方法は、
(第1工程)透明基板2の表面上に黒色層4を除く二色以上の着色剤を相互に接触しないように、順次パターン状に印刷し、かつ形成される各個別着色層3が紫外線遮光性セルフアライメント機能を持つように形成する工程と、
(第2工程)個別着色層3を形成した透明基板2の表面上に紫外線硬化型黒色着色剤を塗布し、透明基板2の背面から紫外線を照射することにより、個別着色層3間に塗布されている紫外線硬化型黒色着色剤を硬化させ、しかる後、個別着色層3上に塗布されている未硬化部分の紫外線硬化型黒色着色剤を除去することにより、個別着色層3間に黒色層4を形成する工程、
とからなる製造方法である。
カラー液晶表示パネルなどに使用するカラーフィルタ1の個別着色層3R,3G,3Bは、表示される画像に対しては画素となる。透明基板2の表面に垂直な方向から見た画素の形状には、「長方形」、「多角形」、「ブーメラン」などがあり、それぞれ画像表示の目的に応じて選択される。
図2は、個別着色層3R,3G,3Bの画素としての形状が「長方形」の場合の配置の例を示す。図2(a)は、長方形の画素が長辺方向に配列され、短辺の位置が隣接する画素間で揃っているストライプ形状の例を示す。図2(b)は、長方形の画素が長辺方向に配列され、短辺の位置が隣接する画素間でずれているドット形状の例を示す。島状の個別着色層3R,3G,3Bの形状は、ストライプ形やドット形状ばかりではなく、これらの変形形状を有するようにしてもよい。
図3は、前述の第1工程について示す。図3(a)は、シリコンゴム製のブランケット10に、有機着色剤11をダイコータ12で塗布する状態を示す。ダイコータ12は、有機着色剤11がブランケット10の表面で均一な層を形成するように、対向するダイ間のギャップから液状の有機着色剤11を流出させる。図3(b)は、ブランケット10の表面から、有機着色剤11を部分的に版13の凸部14に付着させて除去する状態を示す。凸部14間の凹部の形状が画素の形状に対応する。したがって、ブランケット10の表面には、画素の形状に対応した有機着色剤11が残る。図3(c)は、透明基板2の表面に、ブランケット10の表面に残っている有機着色剤11を転写して、個別着色層となる部分を形成する状態を示す。
ブランケット10はローラ状であり、その回転位置は、精度良く制御する。ブランケット10と、版13および透明基板2に対する相対的な位置合わせは、予め位置決めパターンを形成しておくなどの方法で、精密に行うことができる。なお、有機着色剤11に替えて、無機の着色剤を使用することもできる。
シリコンゴム製のブランケット10への有機着色剤11の塗布は、図3(a)に示すダイコータ12による場合の他、CAPコータや、ワイヤーバーコータ等、必要な膜厚を得るために、その他いずれのコータを利用してもよい。CAPコータは、たとえば特許文献2の図2に示されているように、下方から表面張力で有機着色剤11に相当するインクを塗布する。ワイヤーバーコータは、ワイヤ間の隙間を通してインクを塗布する。
図3(a)では、シリコンゴム製のブランケット10を回転させながら、有機着色剤11を所定の膜厚で塗布する。なお、有機着色剤11の粘度は、通常粘度1〜50mPa・sのものが適当で、好ましくは粘度1〜20mPa・sである。
図3(b)では、有機着色剤11が塗布されたブランケット10に版13を接触させ、非画素部分の有機着色剤11を版13の凸部14に転写させる。
図3(c)では、ブランケット10に残った有機着色剤11を被印刷体である透明基板2の表面に転写し一色分の画素形成を行う。
以下、画素形成に必要なカラー原色毎に、複数回被印刷体に転写を繰り返す。各色毎に被印刷体に転写された有機着色剤11を乾燥してもよいが、生産効率を高めるため、必要回数転写を繰り返した後、乾燥することが好ましい。
シリコンゴム製のブランケット10を使用するのは、その撥樹脂機能や剥離機能を利用して、版13の凸部14や被印刷体としての透明基板2の表面に確実に有機着色剤11を転写させるためである。
図4は、前述の第2工程で、ブラックマトリクス(BM)となる黒色層4の塗布について示す。第2工程では、図4(a)に示すように、被印刷体である個別着色層3R,3G,3Bが印刷された透明基板2の着色画素上の一部または全面に紫外線硬化型の黒色着色剤20を塗布する。黒色着色剤20は光硬化性を有し、かつ遮光性を有する材料として、紫外線(UV)領域の光線で硬化反応するUV硬化型の材料が好ましい。かかる材料の主成分としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、合成ゴム系、ポリビニール系等の各種樹脂あるいはゴム、ゼラチンがあり、それぞれ単独あるいは混合して使用することができる。これらの主成分に、光硬化性を付与するため反応性希釈材、光反応開始材、光増感剤等を適宜加える。また求められる機能により必要な添加剤を加えることができる。遮光性材料としては、たとえばカーボンブラック、酸化鉄、チタンブラック、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、アニリンブラック等が使用できる。なお、遮光性を有する材料であれば、特に記載した材料に制限されるものではない。
塗布はスピンコート、ロールコート、ワイヤーバーコート、ダイコータ、スクリーン印刷、オフセット印刷、フローコート等の各種塗布方法で行うことができる。それぞれの塗布方法や材料に合わせ作業性を良くするために、有機溶剤希釈型の材料であれば有機溶剤で、水希釈型の材料であれば水系溶媒で適当な粘度あるいは固形分まで希釈して使用する。塗布膜厚は通常1〜20μmが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。なお、露光工程に入る前に、希釈剤を揮散しある程度の強度を持たせるため必要に応じプリベーク(乾燥)しても良い。個別着色層3R,3G,3Bの厚さがたとえば1〜2μm程度であるときには、黒色着色剤20の塗布厚は20μm程度とすることが好ましい。
図4(b)は、黒色着色剤20の塗布膜を、画素を設けていない透明基板20の背面側から露光し、紫外線硬化型の黒色着色剤20を硬化させる状態を示す。この際個別着色層3R,3G,3Bが形成されている部分は遮光性を有しているために紫外線が遮られ、個別着色層3R,3G,3Bの上に塗布されている紫外線硬化型の黒色着色剤20は硬化しない。このように個別着色層3R,3G,3Bが遮光性機能を持ち自動的に個別着色層3R,3G,3B間に黒色層4を形成する現象をセルフアライメント機能と称する。なお、ブラックマトリクス(BM)の形成を確実に行うため、紫外線硬化型の黒色着色剤20の上に、別途ポリビニルアルコールなどの酸素遮断層を設けてもよい。
露光においては、黒色着色剤20の材料の種類により種々の範囲の光を使用できるが、一般にUV領域が望ましく、光源としては超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用した装置を用いることができる。露光条件は使用した材料の種類や光量により異なるが、通常は0.1秒〜60秒程度である。
図4(c)は、除去工程である現像が終了したカラーフィルタ1を示す。上記露光後、紫外線硬化型の黒色着色剤20の未露光部分を現像処理工程にて除去する。現像に使用する現像液は、黒色着色剤20に応じて選択されるが、紫外線硬化型の黒色着色剤20の未露光部分を溶解させる能力を有する苛性ソーダ、炭酸ナトリウム等のアルカリ性水溶液、あるいはエステル、ケトン、アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素等の有機系溶媒であれば特に制限されるものではない。除去を実施するに当っては、浸漬あるいはスプレーにより10秒〜3分程度の処理を行う。この工程により上記個別着色層3上の未硬化部は除去され、最終的に個別着色層3の間隙を充填した紫外線硬化型の黒色着色剤20が黒色層4として残される。その後水や、有機溶剤でよく洗浄を行い、次に必要であれば後焼付けをしても良い。
図5は、図4(c)に示すカラーフィルタ1が製造される過程を、透明基板2の表面に垂直な方向から平面視して示す。図5(a1)は、第1色として、たとえば赤色(R)の個別着色層3Rを印刷によって島状に形成している状態を示す。図5(a23)は、第2色および第3色として、緑色(G)および青色(B)の個別着色層3G,3Bを順次追加して印刷した状態を示す。図5(a23)は、図4(a)に示す状態に対応している。図5(b)は、黒色着色剤20を全面に塗布している状態を示す。図5(b)は、図4(b)に示す状態に対応している。図5(c)は、個別着色層3R,3G,3B上の黒色着色剤20を除去し、個別着色層3R,3G,3B間に黒色層4を形成している状態を示す。図5(c)は、図4(c)に示す状態に対応している。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。水溶性ポリエステル樹脂および水溶性メラミン樹脂からなる樹脂成分70重量%、およびブチルセロソルブ、エチルセロソルブおよびn−ブタノールからなる溶剤成分30重量%からなる着色剤に、ピグメントレッド4BS(山陽色素社製)および透明酸化鉄(TOR、大日精化社製)、フタロシアニングリーンSAX(山陽色素社製)ならびにフタロシアニンブルーSR−150(山陽色素社製)の各顔料をそれぞれ混合、分散して調製した赤、緑ならびに青色着色剤を得、この着色剤の非揮発分20重量%になるようにプロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−トと酢酸エチルとを1:1の割合で稀釈し、最終的に有機着色剤20を得た。
第1の工程としては、有機着色剤20を図3の被印刷体である透明基板2の表面に形成する。図3(a)に示すように、シリコンゴム製のブランケット10の表面にダイコータ12を用いて赤色(R)の有機着色剤20を塗布した。この後、図3(b)に示すように、有機着色剤20の表面に版13の凸部14を接触させ、ブランケット10上に画素形成を行った。その後、図3(c)に示すように、ブランケット10の表面に残った有機着色剤20を、0.7mm厚さのホウケイ酸ガラスである透明基板2の被印刷体に転写した。同様に緑色(G)および青色(B)の有機着色剤20を順次被印刷体に印刷して形成し3色の有機着色画素を形成した。次いで200℃で60分焼付けして赤、緑および青の膜厚1.4μmの3色の個別着色層3R,3G,3Bを得た。透明基板2および赤、緑、青の個別着色層3R,3G,3Bの露光波長313nmに対する遮光率は赤色で92%、緑色で97%、青色で99%であった。また365nmの光に対する遮効率は赤色で76%、緑色で93%、青色で89%であった。
第2の工程としては、黒色層4によるブラックマトリクス(BM)を、図4および図5に示すようにして作製する。黒色着色剤20は、アクリル系光硬化性樹脂〔冨士薬品社製(FVR)10重量%固形分含有アノン液100重量部に、黒色顔料としてカーボンブラック3重量部を分散させた紫外線硬化型の黒色着色剤20をスクリーン印刷で、3色の有機着色剤11による個別着色層3が形成された被印刷体の画像形成部に塗布した。塗布条件は、100mm/secであり、100℃で10分乾燥(プリベーク)した。形成された黒色着色剤20の個別着色層3上での厚さは1.3μmで、可視光域での遮光率は92%であった。次いで透明基板2の背面から10cmの距離で、80W/cm2のUV光を2秒間照射した。このときの露光主波長は313nmと365nmであった。最終工程として、黒色着色剤20層形成基板をFVR現像液(冨士薬品社製)に2分間浸漬し、黒色着色剤20の未硬化部を現像除去し、30秒間浸漬洗浄した。次いで170℃で30分焼付硬化した。このようにして、被印刷体である透明基板2上に、赤、緑および青色の個別着色層3R,3G,3Bその間隙を埋めてブラックマトリクスを形成する黒色層4を有する平坦性に優れたカラーフィルタ1を得た。
図6は、本発明のカラーフィルタの製造方法の第1工程について、実施の他の形態を示す。図1〜図5に示す実施の形態に対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。なお、第2工程は、図4および図5と同様に行う。
図6(a)は、版30の構成を示す。版30には、形成する画素に対応して、撥樹脂処理および親樹脂処理それぞれとを施した部分である撥樹脂部31および親樹脂部32をそれぞれ形成する。このうち、撥樹脂部31を画素に対応させて形成する。親樹脂部32は、撥樹脂部31が形成されない残余の部分に形成される。処理と版30には、たとえば東レ株式会社製の水無し平版ネガ型を使用する。図6(b)に示すように、その平版表面の画素部となる撥樹脂部31と非画素部となる親樹脂部32上にダイコータ12を用いて有機着色剤20を塗布する。図6(c)に示すように、たとえば赤色(R)の有機着色剤20の表面にシリコンゴム製などのブランケット10を接触させ、撥樹脂部31上の有機着色剤20をブランケット10上に転写し画素形成を行う。その後、図6(d)に示すように、ブランケット10の表面に残った有機着色剤20を被印刷体となる透明基板2上に転写する。
同様に、緑色(G)および青色(B)の有機着色剤20を被印刷体である透明基板2上に順次転写し、R,G,Bのカラー三原色の有機着色画素を形成した。次いで200℃で60分焼付けして赤、緑および青の膜厚1.4μmの3色の個別着色層3R,3G,3Gを得た。ガラスの透明基板2および赤、緑、青の個別着色層3R,3G,3Bの第2工程での露光波長313nmに対する遮光率は、赤色で92、緑色で97%、青色で99%であった。また365nmの光に対する遮効率は赤色で76%、緑色で93%、青色で89%であった。
以上のように、画素を形成する際、予め、親樹脂処理と撥樹脂処理とを施した版30に直接、有機着色剤11を塗布しても構わない。塗布は、ダイコータ12や、CAPコータ、ワイヤーバーコータ等、必要な膜厚を得るために、その他いずれのコータを利用してもよい。なお、有機着色剤11の粘度は、通常粘度1〜50mPa・sのものが適当で、好ましくは粘度1〜20mPa・sである。親樹脂と撥樹脂との処理を施した版に有機着色剤11を塗布し、ブランケット10を接触させ、撥樹脂部分の部分の有機着色剤11をブランケット10に転写させる。このような方法は、平版のオフセット印刷に対応している。図3(b)に示す方法は、凸版印刷に対応している。
この方法でも、ブランケット10に転写された有機着色剤11を被印刷体に転写し一色の画素形成を行う。画素形成に必要な色毎に、複数回被印刷体に転写を繰り返す。各色毎に被印刷体に転写された有機着色剤11を乾燥してもよいが、生産効率を高めるため、必要回数転写を繰り返した後、乾燥することが好ましい。
実施の各形態で説明しているように、カラーフィルタ1の製造方法では、予め定めるカラー原色のうちのいずれか1つの着色層を形成するためのインクである有機着色剤11を均一にブランケット10または親樹脂処理と撥樹脂処理とを施した版30に塗布し、ブランケット10から版13の凸部14を使って不要な部分を取り除き、またはブランケット10に版30の撥樹脂部31からインクを転写する。第1工程は、このようにして形成したブランケット10上のインクを透明基板2の表面に転写して、周囲に間隙を有し、予め定めるパターンで分布する複数の島状の個別着色層3を形成することを、カラー原色の数だけ繰り返す印刷工程である。第2工程は、印刷工程で島状の個別着色層3を形成した透明基板2の表面上に、紫外線硬化型の黒色着色剤20を塗布して覆う塗布工程と、塗布工程で塗布された紫外線硬化型の黒色着色剤20を、透明基板2の背面側から紫外線を照射することによって、個別着色層3の間隙の部分のみで硬化させる硬化工程と、塗布工程で個別着色層3上に塗布された未硬化の紫外線硬化型の黒色着色剤20を除去することによって、個別着色層3の間隙に黒色層4を形成する除去工程とを含む。
個別着色層3は印刷によって形成するので、平坦で均一な厚さとすることができる。印刷は、カラー原色の数だけ繰り返すので、個別着色層3全体として、平坦で均一な厚さとすることができる。塗布工程では、島状の個別着色層3上に紫外線硬化型の黒色着色剤20を塗布して覆うので、紫外線硬化型の黒色着色剤20は、個別着色層4の周囲の間隙にも充填される。硬化工程では、紫外線硬化型の黒色着色剤20を、個別着色層4の間隙の部分のみで硬化させ、個別着色層4は、紫外線を遮光するセルフアライメントマスクとして機能させることができる。除去工程で、塗布工程で個別着色層3上に塗布された未硬化の紫外線硬化型の黒色着色剤20を除去することによって、個別着色層3の間隙に残る硬化した紫外線硬化型の黒色着色剤20で黒色層4を形成することができる。黒色層4の形成のために、マスクや版などを使用するパターニングは不要となり、製造工程を少なくすることができる。間隙の部分で硬化する紫外線硬化型の黒色着色剤20の厚さが個別着色層3と同等となるように、紫外線の照射時間等を調整すれば、透明基板2の表面からの高さを、個別着色層3と黒色層4とで同一にすることができる。
また、硬化工程では、個別着色層3の間隙で、紫外線硬化型の黒色着色剤20を、個別着色層3と同等以上の厚さまで硬化させておき、除去工程では、個別着色層3の間隙で硬化した紫外線硬化型の黒色着色剤20を、個別着色層3と同等の厚さまで除去するようにすれば、透明基板2の表面からの高さを、個別着色層3と黒色層4とで、確実に同一にすることができる。
なお、ブランケット10はロール状のものばかりではなく、平板状やベルト状のものも使用可能である。
本発明の実施の一形態としての製造方法で製造されるカラーフィルタ1の基本的な構成を示す断面図である。
図1に示す個別着色層3R,3G,3Bの画素としての形状が「長方形」の場合の配置の例を示す図である。
図1のカラーフィルタ1の製造方法の第1工程の概要を示す断面図である。
図1のカラーフィルタ1の製造方法の第2工程の概要を示す断面図である。
図1のカラーフィルタ1の製造方法の第2工程の概要を示す平面図である。
本発明の実施の他の形態としての製造方法の第1工程の概要を示す断面図である。
符号の説明
1 カラーフィルタ
2 透明基板
3,3R,3G,3B 個別着色層
4 黒色層
10 ブランケット
11 有機着色剤
12 ダイコータ
13,30 版
14 凸部
20 黒色着色剤
31 撥樹脂部
32 親樹脂部