JP2007051575A - 燃料ポンプ用プランジャ駆動構造および燃料ポンプ用プランジャ支持用針状ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】 回転時のトルク損失を低減して、かつ、潤滑性に優れた燃料ポンプ用プランジャ駆動構造を提供する。
【解決手段】 燃料ポンプ11は、偏心部12aを有する回転軸12と、回転軸12の偏心部12aを支持する針状ころ軸受13と、針状ころ軸受13上の外輪に当接して放射状に配置されるタペット14と、タペット14上に配置され、回転軸12の回転により往復運動するプランジャ15とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料ポンプ11は、偏心部12aを有する回転軸12と、回転軸12の偏心部12aを支持する針状ころ軸受13と、針状ころ軸受13上の外輪に当接して放射状に配置されるタペット14と、タペット14上に配置され、回転軸12の回転により往復運動するプランジャ15とを備える。
【選択図】 図1
Description
この発明は、ディーゼルエンジン等に使用される燃料ポンプ用プランジャ駆動構造、および燃料ポンプ用プランジャを支持する針状ころ軸受に関するものである。
従来、ディーゼルエンジン等に使用される燃料ポンプは、特開平3−175158号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されている燃料ポンプ1は、図7に示すように、偏心部2aを有する回転軸2と、回転軸2の偏心部2aを支持する滑り軸受3と、滑り軸受3上に外輪4を介して放射状に配置されるタペット5と、タペット5上に配置され、回転軸2の回転により往復運動するプランジャ6とを備える。
上記構成の燃料ポンプ1は、プランジャ6の上下動によってインレットバルブ(図示せず)、およびアウトレットバルブ(図示せず)を開閉して燃料の吸入と圧送を行う。また、偏心部2aの周辺は、常に燃料で満たされており、燃料は偏心部2aの周辺の潤滑油としても機能する。
このような燃料ポンプ1のプランジャ6を支持する軸受は、大きい荷重を支持可能で、かつ、小型化の要求を満たすために、負荷容量が高く、径方向の厚み寸法が小さい滑り軸受3が用いられることが多い。
特開平3−175158号公報
滑り軸受3は回転時の摩擦抵抗が大きいので、上記構成の燃料ポンプ1はトルク損失が大きいという問題がある。また、燃料として使用される軽油は、環境への配慮から硫黄分が低減されており、潤滑剤としての機能は低下している。そのため、偏心部2a周辺の潤滑性能の向上が求められている。
そこで、この発明の目的は、回転時のトルク損失を低減して、かつ、潤滑性に優れた燃料ポンプ用プランジャ駆動構造を提供することである。
この発明に係る燃料ポンプ用プランジャ駆動構造は、偏心部を有する回転軸、外輪と、外輪の軌道面に沿って配置される複数の針状ころとを備え、偏心部を支持する針状ころ軸受、および外輪に当接し、回転軸の回転により往復運動するプランジャを備える。
上記構成の燃料ポンプ用プランジャ駆動構造は、プランジャを支持する軸受として針状ころ軸受を使用するので、トルク損失が少なく潤滑性も高い。また、ころ径の小さい針状ころを使用するので、燃料ポンプの小型化の要求も満たすことができる。
この発明の他の局面に係る燃料ポンプ用プランジャ駆動構造は、回転軸、円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪と、外輪と、偏心内輪および外輪の間に配置される複数の針状ころとを備え、回転軸を支持する針状ころ軸受、および外輪に当接し、回転軸の回転により往復運動するプランジャを備える。
上記構成の燃料ポンプ用プランジャ駆動構造は、針状ころ軸受を使用することによって得られる上記の効果に加えて、円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪を使用することによって、回転軸に偏心部を設ける必要がなくなる。その結果、製造コストを低減した燃料ポンプを得ることができる。
好ましくは、外輪は窒素富化層を有し、窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号は10番を超える。このように、外輪のオーステナイト結晶粒を微細化することにより、長寿命で割れ強度が向上し、さらに、経年寸法変化率も減少させることができる。その結果、耐久性に優れた燃料ポンプを得ることができる。
好ましくは、外輪の外径面は凹形状の微小なくぼみを有し、外径面の軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)とは、Rqni(L)/Rqni(C)<1.0の関係を有し、表面凹凸の分布曲線の歪度skは、sk<−1.6の範囲内にある。
このように、外輪の外径面に微小なくぼみを設けることにより、油膜形成性が向上する。さらに、外径面と当接する部材の摩耗やピーリング損傷を抑制できるので、潤滑性に優れた長寿命の燃料ポンプを得ることができる。
好ましくは、針状ころ軸受は、隣接する針状ころが互いに接触する総ころ軸受である。針状ころ軸受は、針状ころの収容本数が多いほど負荷容量が高くなるので、針状ころを最大限収容した総ころ軸受とすることによって、耐荷重性に優れたプランジャ支持用軸受を得ることができる。
この発明に係る燃料ポンプのプランジャ支持用針状ころ軸受は、円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪と、回転軸の回転により往復運動するプランジャと当接する外輪と、偏心内輪および外輪の間に配置される複数の針状ころとを備える。
針状ころ軸受は、滑り軸受と比較して回転時のトルク損失が少なく、潤滑性に優れている。また、径方向の厚み寸法が小さいので、燃料ポンプの小型化の要求も満たすことができる。さらに、偏心内輪を使用することにより回転軸に偏心部を設ける必要がなくなるので、上記構成の針状ころ軸受を使用することにより、高効率で潤滑性に優れ、かつ、低コストの燃料ポンプを得ることができる。
プランジャを支持する軸受として針状ころ軸受を使用することにより、高効率で潤滑性に優れた燃料ポンプ用プランジャ駆動構造を得ることができる。
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係る燃料ポンプ用プランジャ駆動構造を説明する。
燃料ポンプ11は、図1に示すように、偏心部12aを有する回転軸12と、回転軸12の偏心部12aを支持する針状ころ軸受13と、針状ころ軸受13の外輪に当接して放射状に配置されるタペット14と、タペット14上に配置され、回転軸12の回転により往復運動するプランジャ15とを備える。
また、針状ころ軸受13は、図2に示すように、内輪13aと、外輪13bと、内輪13aおよび外輪13bの間に配置される複数の針状ころ13cと、針状ころ13cを保持する保持器13dとを備える。または、内輪13aを有さず、外輪13bの軌道面に沿って針状ころ13cが配置されるタイプの針状ころ軸受13であってもよい。
針状ころ軸受13は、滑り軸受と比較すると負荷容量は低いが、回転時のトルク損失が少なく潤滑性にも優れている。さらに、針状ころ13cはころ径が小さいので、燃料ポンプ11の小型化の要求も満たすことができる。したがって、プランジャ15を支持する軸受として、滑り軸受に代えて図2に示したような針状ころ軸受13を使用することにより、高効率で潤滑性に優れた燃料ポンプ11を得ることができる。
次に、図3および図4を参照して、この発明の他の実施形態に係る燃料ポンプ用プランジャ駆動構造を説明する。
燃料ポンプ21は、図3に示すように、回転軸22と、回転軸22を支持する針状ころ軸受23と、針状ころ軸受23の外輪に当接して放射状に配置されるタペット24と、タペット24上に配置され、回転軸22の回転により往復運動するプランジャ25とを備える。
また、針状ころ軸受23は、図4に示すように、円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪23aと、外輪23bと、偏心内輪23aおよび外輪23bの間に配置される複数の針状ころ23cと、針状ころ23cを保持する保持器23dとを備える。
この針状ころ軸受23は、偏心内輪23aを有するので、回転軸22に偏心部を設ける必要がなくなる。その結果、図1および図2に示した実施形態で得られる効果に加えて、回転軸22の製造コストを低減することが可能となる。
図2および図4に示したような針状ころ軸受13,23は、針状ころ13c,23cを保持する保持器13d,23dを有するが、これに限ることなく、保持器13d,23dを有さず、隣接する針状ころ13c,23cが互いに接触する総ころ軸受であってもよい。針状ころ軸受13,23は、針状ころ13c,23cの収容本数が多いほど負荷容量が高くなるので、針状ころ13c,23cを最大限収容した総ころ軸受とすることによって、耐荷重性に優れたプランジャ支持用軸受を得ることができる。
また、図2および図4に示したような針状ころ軸受13,23は、その機械的性質を向上させるために、例えば、図5に示す方法で熱処理を施すことが好ましい。
図5に示す熱処理は、一次焼入れとして浸炭窒化処理の工程と、二次焼入れとして普通焼入れと焼戻しとの工程を有する。具体的には、浸炭窒化処理において、軸受部品を炭素および窒素雰囲気中で850℃程度まで加熱し、鋼の素地に炭素や窒素を拡散させ窒素富化層を形成した後、常温まで冷却する。次に、浸炭窒化処理での加熱温度未満でA1変態点以上の温度、例えば、800℃程度に加熱し、その後冷却する油焼入れを行う。そして、組織の安定化および残留応力の除去を目的として、A1変態点以下の温度、例えば、180℃程度で焼戻しを行う。
上記方法で熱処理を行うことにより、1回焼入れの場合と比較してオーステナイト結晶粒を従来の2分の1程度まで微細化することが可能となる。これにより、従来の結晶粒径は、JIS G0551(Japanese Industrial Standards)に示す粒度番号で10番以下であったのに対し、上記熱処理を施すことにより、10番を超えて、例えば、12番程度の微細結晶粒を得ることができる。
このように、オーステナイト結晶粒を微細化することにより、転動疲労特性が向上する他、割れ強度の向上、経年寸法変化率の減少等の効果が期待できる。そして、このような針状ころ軸受13,23を使用することにより、耐久性に優れた燃料ポンプ11,21を得ることができる。
なお、図6に示すように、浸炭窒化処理後にA1変態点以下の温度まで冷却し、連続して焼入れ処理を行っても同様の組織を得ることができる。また、上記の各熱処理は、タペット14,24と直接当接する外輪13b,23bに施す他、内輪13a,23aや針状ころ13c,23c等にも適用可能である。
また、図2および図4に示したような針状ころ軸受13,23の外輪13b,23bの外径面には凹形状の微小なくぼみを形成し、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)とを、Rqni(L)/Rqni(C)<1.0、表面凹凸の分布曲線の歪度skを、sk<−1.6、さらに好ましくは、−4.9<sk<−1.6の範囲内に設定する。
Rqni(L)/Rqni(C)<1.0となる場合とは、外径面の周方向に沿って大きな凹凸があり、軸方向に沿って深い溝が形成されている状態である。また、sk値が負の値となる場合とは、凸部の頂上が平坦で角が丸みを帯びた状態である。
上記構成とすることにより油膜形成性が向上し、外輪13b,23bの外径面と接触するタペット14,24の摩耗やピーリング損傷を抑制することが可能となる。その結果、長寿命の燃料ポンプ11,21を得ることができる。
なお、Rqとは、JIS B0601に規定する二乗平均平方根粗さを指し、所定方向の基準長さlrにわたって山高さZを測定することにより以下の式で算出され、Rqni(L)は、軸方向に基準長さを取り、Rqni(C)は、円周方向に基準長さを取ったときの値を指す。
また、sk値とは、JIS B0601に規定する表面凹凸の部分布曲線の歪度Rskを指し、以下の式で算出される。この発明においては、軸方向と円周方向それぞれがsk<−1.6を満たす。
この微小くぼみは、例えば、バレル研磨によって形成する。その際、研磨機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類や大きさを選択することにより、所望の表面性状を得ることができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、燃料ポンプ用のプランジャ駆動構造に有利に利用される。
1,11,21 燃料ポンプ、2,12,22 回転軸、2a,12a 偏心部、3 滑り軸受、4 外輪、5,14,24 タペット、6,15,25 プランジャ、13,23 針状ころ軸受、13a,23a 内輪、13b、23b 外輪、13c,23c 針状ころ、13d,23d 保持器。
Claims (6)
- 偏心部を有する回転軸、
外輪と、前記外輪の軌道面に沿って配置される複数の針状ころとを備え、前記偏心部を支持する針状ころ軸受、および
前記外輪に当接し、前記回転軸の回転により往復運動するプランジャを備える、燃料ポンプ用プランジャ駆動構造。 - 回転軸、
円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪と、外輪と、前記偏心内輪および前記外輪の間に配置される複数の針状ころとを備え、前記回転軸を支持する針状ころ軸受、および
前記外輪に当接し、前記回転軸の回転により往復運動するプランジャを備える、燃料ポンプ用プランジャ駆動構造。 - 前記外輪は、窒素富化層を有し、
前記窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号は10番を超える、請求項1または2に記載の燃料ポンプ用プランジャ駆動構造。 - 前記外輪の外径面は、凹形状の微小なくぼみを有し、
前記外径面の軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)とは、
Rqni(L)/Rqni(C)<1.0
の関係を有し、
表面凹凸の分布曲線の歪度skは、
sk<−1.6
の範囲内にある、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料ポンプ用プランジャ駆動構造。 - 前記針状ころ軸受は、隣接する前記針状ころが互いに接触する総ころ軸受である、請求項1〜4のいずれかに記載の針状ころ軸受。
- 円周方向で径方向の厚み寸法が異なる偏心内輪と、
回転軸の回転により往復運動するプランジャと当接する外輪と、
前記偏心内輪および前記外輪の間に配置される複数の針状ころとを備える、燃料ポンプ用プランジャ支持用針状ころ軸受。
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