JP2007046998A - 化学分析装置及びそれに使用する試薬装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、サンプルに含まれる成分を分析するための化学分析装置に関し、特に、化学分析装置に使用する試薬容器に関する。
血液や尿などの生体中や、河川や土壌などの環境中に含まれる微量物質を分析する分析装置では、試薬容器をいったん装置に設置した後は、そのまま試薬容器を長期間使用しつづけることが多い。これは、分析の途中で試薬保存環境が変化すると、分析精度のバラツキが生じる可能性があるからである。しかしながら、分析装置を長期間使用すると、試薬容器から試薬が蒸発し、試薬物性の変性し、分析精度の低下を招く恐れがある。そこで、試薬容器をキャップで密閉するキャップ開閉機構を設けることが提案されている。
特開2004-177255号公報には、試薬が収容された容器本体の開口端にキャップ本体を装着することができるキャップ構造が記載されている。
しかし、分析装置に試薬容器のキャップ開閉機構を設けると、分析装置全体が大型化、複雑化し、また、分析装置が高価になる恐れがある。また、キャップ開閉機構を設けると、キャップを開閉するために時間を要するため、総分析時間が長くなる恐れがある。キャップ開閉にともない試薬容器内に空気に流れが生じ、蒸発が促進される恐れがある。キャップ装着によって十分に蒸発は抑えられているとしても、それでもキャップを開放しているときに、試薬は蒸発する。
本発明によると、試薬の蒸発を抑制し、分析精度の高い試薬容器、及び、そのような試薬容器を備えた化学分析装置を提供することができる。
本発明の化学分析装置によると、試薬容量をV0、上記試薬容器の断面積をA、上記試薬容器の設置時間をτm、最初の試薬の液面と試薬容器の開口端の距離をxs、気体定数をR、周囲温度をT、液面での飽和蒸気圧をPs、開口端での水蒸気圧をPi、設置時間τmにおける試薬の蒸発量がw%以下であるとの仕様が与えられたとき、次の式によって表される条件を満たすように構成されている。
本発明によると、試薬の蒸発を抑制し、分析精度の高い試薬容器、及び、そのような試薬容器を備えた化学分析装置を提供することができる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明は本明細書に開示した内容に限定されるのではなく、現在及び今後の周知事項に基づく変更を阻止するものではない。
図1は、本発明の化学分析装置の全体構成を示す。本発明の化学分析装置100は、試薬20を入れた複数の試薬容器200、試薬容器から試薬を分取するためのプローブ121、プローブ121を垂直方向に移動させる垂直方向駆動機構122、プローブ121を水平方向に移動させる水平方向駆動機構123、シリンジ125、プローブ121とシリンジ125を接続するチューブ124、分析デバイス11に収容されたサンプル10を分析するための検出機構130、及び、化学分析装置100の動作と検出結果の出力をコントロールするコンソール131を有する。検出機構130は、例えば、励起光の照射する光源と蛍光を検出する受光部を有する光学検出器を含む。
プローブ121、駆動機構122、123、チューブ124、及び、シリンジ125は試薬分注機構を構成する。
図1Aはサンプル10の搬入前を示し、サンプル10は分析デバイス11に収容された状態で、装置外部からデバイスローダ132によって装置内部に搬入される。図1Aに示すように、複数の試薬容器200の全体を覆う大型蓋133が用いられてよい。図1Bはサンプル10の搬入後を示す。図1Bに示すように、化学分析装置100による分析中は、大型蓋133は除去される。各試薬容器200は、図示しないキャップによって密閉されているが、分析の開始前に除去される。
プローブ121は、水平方向駆動機構123によって、試薬容器200の位置まで移動し、垂直方向駆動機構122によって、先端が試薬20の液面に挿入される。シリンジ125を操作することによって、プローブ121は所定量の試薬20を吸引する。
試薬20を分取したプローブ121は、垂直方向及び水平方向の駆動機構122、123によって、分析デバイス11の上部まで移動し、試薬20を分注する。分析デバイス11にて、試薬20とサンプル10が混合される。分析デバイス11の下方に配置された検出機構130によってサンプル10の微量成分が検出される。分析デバイス11の底面は透明である。検出機構130は、励起光をサンプル10に照射し、サンプル10からの蛍光は検出する。検出機構130からの検出信号は、コンソール131に供給される。コンソール131は、検出結果を表示する。本例の分析装置は、事務机上に配置することができる寸法を有し、例えば、縦横高さがそれぞれ数十cm程度である。
図2を参照して、試薬容器200の第1の例の構造を説明する。試薬の蒸発量は試薬容器断面形状にあまり影響されないので、以下、本例の試薬容器200は、断面形状が円の直管形状の容器であるとして説明する。従って、以下に、用語「内径」は、断面が円の場合には、円の内径を表わし、断面が正方形又は矩形の場合には、向かい合う2つの面の間の距離を表わす。
試薬容器200は円筒状の胴部210を有し、その上部には、外径が小さくなった部分220が形成されている。この部分220に、押し込み式の蓋(図示なし)が装着される。この蓋は、製造元によって装着される。使用者は、試薬容器からこの蓋を外してから、分析装置に装着する。試薬容器200の内径をd、高さをHとする。
試薬容器200の内径dは、プローブ121の外径より大きくなければならない。プローブの位置決め精度が比較的高い場合、試薬容器200の内径dがプローブの外径の1.1倍以上であれば、プローブを試薬容器に確実に挿入することができる。試薬容器200の内径dがプローブの外径の2倍以上あれば、プローブの位置決め精度が低くても、プローブを試薬容器に確実に挿入することができる。試薬容器200の内径dがプローブの外径の3倍以上あれば、2本のプローブを同時に挿入することができる。それによって、高速な分析処理が可能となる。試薬容器200の内径dが大きくなると試薬の蒸発量が大きくなる。
試薬容器200に収容された試薬20の液面21からは絶えず蒸発25が起こっており、気体となって発散する。従って、試薬20は時間と共に減少する。試薬は一般に環境温度10℃前後で保冷される。湿度は試薬保冷庫によって決まる。
試薬が減少すると、試薬に含まれる成分の濃度が変化する。それによって、分析結果に影響を与える。分析結果におけるバラツキを考えると、蒸発量が例えば1〜5%程度であると、分析結果に影響を与える。
図3に、試薬容器200に収容された試薬20の蒸発量を測定した結果を示す。縦軸は、試薬の容量、横軸は経過時間である。ここでは、湿度25%の環境にて、5mLの試薬の減少量を測定した。実線の曲線は、内径dが14mmの円筒状容器に5mLの試薬を収容した場合であり、最初の液面は、開口端から8mmの位置であった。破線の曲線は、内径dが5mmの円筒容器に5mLの試薬を収容した場合であり、最初の液面は、開口端から10mmの位置あった。1ヶ月経過したとき、内径dが14mmの円筒容器の場合、試薬は1/3程度にまで減少するが、内径dが5mmの円筒容器の場合、試薬の減少量は10%程度であった。
実線の曲線も破線の曲線も、時間が経つと傾斜が小さくなり、蒸発量が減少する。これは、時間が経過し、試薬が減少すると、開口端から試薬液面までの距離が大きくなるためであると考えられる。つまり、開口端から試薬液面までの距離が大きいと、試薬容器の開口端221から試薬液面21までの空間の中で、蒸発25を促進する対流が起こらず、蒸発が抑制されると考えられる。試薬液面の表面積が同一なら、開口端から試薬液面までの距離が大きいほど、蒸発量は小さくなる。
内径dが14mmの円筒容器の場合、最初の液面は、開口端から8mm程度であるが、内径dが5mmの円筒容器の場合、最初の液面は、開口端から10mm程度である。従って、内径dが5mmの円筒容器の場合、内径dが14mmの円筒容器と比べて、開口端から最初の液面までの距離が大きい。従って、内径dが5mmの円筒容器の場合、内径dが14mmの円筒容器と比べて、蒸発量が少ない。
以上の考察に基づいて、本願の発明者は、以下に説明するように、蒸発量を計算する演算式を導いた。図2に示すように、試薬容器の開口端221を原点Oとし、垂直下方にx軸をとる。蒸発速度Qは、液面の表面積Aに比例し、開口端221から液面までの距離xに逆比例する。従って、蒸発速度Qは次の式で与えられる。
aは定数であり、ここでは蒸発定数と呼ぶこととする。時刻0秒における液面位置をxs、τ秒後における液面位置をxとすると、τ秒間の蒸発量Vτは、次の式によって与えられる。
試薬容器の開口端221から試薬液面21までの空間では、水蒸気量に関して濃度勾配が生じている。従って、蒸発係数aは、次の式によって求められる。
ここで、Rは気体定数、Psは液面21では飽和蒸気圧、Piは開口端221での水蒸気圧、Tは周囲の温度であり、これらは一定とする。時刻τmまでの試薬の蒸発量は(w ×100)%以下であるとの仕様が設定されている場合、数4の式を変形して、次の条件式が得られる。
この式から、液面の表面積Aと当初の開口端から液面までの距離xsの関係が求められる。この関係を用いることにより蒸発量を仕様の範囲に収めることができる。
蒸発量の仕様が1%以内の場合、数6の式にw=1%を代入すればよい。この場合、次の式が得られる。
数6の式にて、等号の式を変形し、xsの代わりxcと書き換えて次の式が得られる。
数8の式を満たす値を境界値xcと称する。開口端からの距離の初期値xsが境界値xcより大きいと、仕様を満たす。数8の式から明らかなように、境界値xcは、試薬液面の表面積Aが大きくなると、増加し、試薬液面の表面積Aが小さくなると、減少する。
上述のように、試薬液面の表面積が同一なら、開口端から試薬液面までの距離が大きいほど、蒸発量は小さくなる。蒸発量を抑制するためには、開口端から試薬液面までの距離を大きくすればよいが、それでは試薬容器の高さが高くなる。従って、蒸発量と試薬容器の高さは、トレードオフの関係にある。
図4を参照して、試薬容器高さが最小となる条件を探す。図4は、容量が5mLの試薬を、1ヶ月間、10℃の雰囲気中に保管したとき、蒸発量5%以下となる条件を満たす試薬容器を示す。縦軸は試薬容器の高さH、横軸は試薬容器の内径dである。相対湿度25%のとき、試薬容器の高さHが最小となるのは、試薬容器の内径dが、10mm程度のときであることが判る。このとき試薬容器の高さHは200mm程度であり、その比H/dは約20となる。試薬容器の内径dが、4mm程度のとき、高さ400mmとなり、その比H/dは約100程度となる。一方、相対湿度80%のとき、試薬容器の高さHが最小となるのは、試薬容器の内径dが、12mm程度、試薬容器の高さHは100mm程度となり、その比H/dは約10となる。
しかしながら、相対湿度が変化しても、試薬容器の高さHが最小となる内径dは必ず存在する。試薬容器の高さHが最小となるのは、少なくとも、試薬容器の内径dが30mm以下であり、好ましくは、試薬容器の内径dが5〜25mmの範囲にある。試薬容器の高さと内径の比H/dが、1から100の範囲にある。このようは条件を満たす試薬容器は、一般に、縦長の形状である。
試薬容器の内径dを小さくすると、液面の面積が小さくなる。従って、プローブに静電容量式の液面検知機構を設けた場合、液面の検知が困難となる。従って、試薬容器の材料として、導電性ポリオレフィン、導電性ウレタン等の導電性材料を用いることが好ましい。また、試薬容器の内面を撥水性にすることによって液面の移動を容易し、液面の面積を最小にすることが可能となる。それによっても、蒸発を抑止できる。
図5を参照して、試薬容器200の第2の例の構造を説明する。本例の試薬容器を図2の第1の例と比較すると、本例では、試薬容器の上端の開口部の面積が小さくなっている点が異なる。本例では、開口部の面積を小さくすることによって、試薬容器200の内部が密閉状態に近くなり、蒸発が抑制される。従って、本例では試薬容器の内径dに対して試薬容器の高さを小さくすることができる。そのため、試薬容器200のハンドリング、特に、プローブ121を試薬容器に挿入して試薬を吸入する操作がし易くなる。
本例の試薬容器における試薬の蒸発量を検討する。本例の場合、試薬の液面の中心位置での開口端までの距離と、試薬の液面の外周部、即ち、側壁位置から開口部までの距離が異なる。従って、蒸発速度は、開口部と液面の間に形成される円錐台空間510の体積v1と、液面の上方の円筒形状の空間515の体積v2の比v1/v2によって決まる。数3の式によって求めた蒸発速度Qに、この体積比v1/v2を乗算することにより、本例の試薬容器の蒸発速度Q’が求められる。
ここで、Aは、試薬液面の面積、Bは開口部221の面積、pは2つの面積の比A/Bである。数9の式と数3の式を比較すると、蒸発定数が異なるだけである。従って、数4の式から数8の式までの議論がそのまま成り立つ。
即ち、試薬液面の表面積が同一なら、開口端から試薬液面までの距離が大きいほど、蒸発量は小さくなる。蒸発量を抑制するためには、開口端から試薬液面までの距離を大きくすればよいが、それでは試薬容器の高さが高くなる。従って、蒸発量と試薬容器の高さは、トレードオフの関係にある。
図6を参照して、試薬容器高さが最小となる条件を探す。図6は、容量が5mLの試薬を、1ヶ月間、10℃の雰囲気中に保管したとき、蒸発量5%以下となる条件を満たす試薬容器を示す。縦軸は試薬容器の高さH、横軸は開口部の内径d1である。試薬容器の内径dが、8mm、10mm、12mm、14mmの場合について測定した。図示のように、開口部の内径d1が小さいほど、試薬容器の高さHは小さくなる。しかしながら、開口部の内径d1は、プローブ121の外径より大きくなければならない。
一方、試薬容器の内径dが、8mm、10mm、12mm、14mmの場合、必ずしも、内径dが大きいほど、試薬容器の高さHが小さくなるとは限らない。即ち、試料容器の内径dには最適な値が存在する。結局、本例の場合、開口部の内径d1と試薬容器の内径dの比d1/dは、0.3、試薬容器の高さHと試薬容器の内径dの比H/dは12程度が望ましい。また、保存温度、湿度や試薬容量などの条件が変わる場合でも、比d1/dは、0.1から0.5、好ましくは、0.2から0.5である。比H/dは、1から20、好ましくは、8から12程度である。
試薬容器がこのような条件を満たすとき、蒸発量を低減化し、且つ、試薬容器の取り扱いが容易となる。
図7を参照して、試薬容器200の第3の例の構造を説明する。本例の試薬容器は、図5の第2の例と比較して、内部に管700が挿入されている点が異なる。試薬の分取時に、プローブ121は、管700に挿入される。試薬容器の内部は、管700によって2つに分割されている。即ち、管700の内側の円柱状空間と管700の外側と試薬容器の内壁の間の環状空間である。試薬容器200内の試薬は、管700の内側と管700の外側の2つの空間に分かれて配置されるが、両者は、底面付近で連通している。従って、管700の内側の液面21aと管700の外側の液面21bの高さは同一である。
管700の上端部には孔710が形成されている。管700に形成された孔710によって環状空間は大気に接続される。しかしながら、孔710の径は十分小さい。従って、管700の外側の試薬の蒸発量は極めて少ない。
本例でも、数3の式が成り立つと仮定してよい。数3の式の液面の表面積Aは、管700の断面に等しい。従って、本例では、数3の式の液面の表面積Aは十分小さいから、蒸発速度Qは小さい。
管700の内径は、プローブ121の外径より大きくなければならない。管700の内径は、プローブ径の1.1倍以上が望ましい。管700の外径が、試薬容器の内径の半分であれば、試薬容器の高さHは、試薬容器の内径dの7倍程度になる。管700の外径が、試薬容器の内径の1/4程度であれば、試薬容器の高さHは、試薬容器の内径dの3倍程度になる。
本例では、試薬容器の底面720は平面ではなく湾曲面を有する。管700は、開口部に接続され、底面720付近まで延びている。従って、試薬容器200の底面付近に残った試薬を最後まで使い切ることができる。また、底面720を湾曲面とすることによって、試薬が挿入管内に滑らかに流入することが可能となる。
管700は、試薬容器200内の試薬の流動に対する妨害物として機能する。例えば、試薬容器200が揺れ、試薬が流動しようとしても、試薬が管700の衝突し、流動が阻止される。また、管700は、液面の振動を減衰させる機能を有する。従って、本例の試薬容器200は、蒸発量を減少させると共に、試薬容器200内の試薬の流動を抑止することができる。
図8を参照して、試薬容器200の第4の例の構造を説明する。本例の試薬容器は、図7の第3の例と比較して、管700の内面に撥水機能を有する撥水部800が形成されている点が異なる。撥水部800は、管700の内面の全体に設けられてよいが、その一部に設けられてもよい。撥水部800を形成することによって、管700の内側の試薬の液面は低くなる。
本例でも、数3の式が成り立つと仮定してよい。数3の式の液面の表面積Aは、管700の断面に等しく、開口端から液面までの距離xは、開口部221から管700の内側の試薬の液面21aまでの距離に等しい。従って、本例の場合、数3の式において、表面積Aの値が小さく、距離xが大きいから、蒸発速度Qは小さい。
管700の内径d2を小さくすることによって、液面21aが下がり開口端から液面までの距離xが大きくなる。管700の内径d2は、プローブ121の外径より大きくなければならない。管700の内径は、プローブ径の1.1倍以上が望ましい。
撥水部800によって管700の内側の試薬の液面21aを下げるには、撥水部800における液面支持力と液面差によるヘッド力Phが釣り合う必要がある。撥水部800における液面支持力は、撥水部800内周の表面張力に依存し、この表面張力は、撥水部800の内径が大きくなると小さくなる。従って、管700の内径は所定の値より小さくする必要がある。
例えば試薬容量を5mL、容器径を、対流効果が生じないように、20mm以下、容器高さを50mm以下とする。試薬容器の内径をd、管700の内径をd2、試薬容器の高さをHとする。試薬容器の径dに対する管700の内径d2、試薬容器の高さHの最適値を求めると、濡れの良い試薬の場合、d2/d=2%、H/d=450%、及び、d2/d=5%、H/d=14%等になる。濡れの悪い試薬の場合、d2/d=30%、H/d=450%、及び、d2/d=80%、H/d=40%等になる。
本例によると、試薬の分取時の管700内の試薬の液面21aの高さを一定にすることが可能となり、蒸発の抑止された分析精度の高い、装置動作の簡略化した小型分析装置を提供することが可能となる。
図9を参照して、試薬容器200の第5の例の構造を説明する。本例の試薬容器200は、図5の第2の例と比較して、開口部の上に漏斗925が設けられ、且つ、底面915が可動である点が異なる。底面915にはプランジャ920が接続されている。プランジャ920を上下に移動させることにより、底面915は上下に移動し、それによって、試薬容器200内の試薬の液面の位置が変化する。
試薬分取時には、図示のように、プランジャ920は上方に移動し、底面915を上昇させる。それによって、試薬は漏斗925内に押し出される。従って、試薬液面は漏斗925内にある。プローブを漏斗925内の試薬内に挿入することにより、試薬の分取を行うことができる。本例では、試薬の分取時に、プローブを漏斗925に挿入するため、プローブの位置決め精度は比較的小さくてもよい。
試薬の分取が終わると、プランジャ920は下方に移動し、底面915を下降させる。それによって、試薬は漏斗925から下方に流出する。従って、試薬液面は開口部の下方の位置にある。このとき、試薬の蒸発速度は、図5の第2の例と同様であり、数9の式によって求められる。
試薬分取時における、プランジャ920の押し上げ高さは、常に一定でも構わないが、漏斗925における液面の高さが一定となるように、試薬分取毎の変化させてもよい。図示のように、プランジャ920の押し上げ高さを変化させることにより、底面の位置(1)(2)(3)は変化する。それによって、漏斗925における液面の高さは一定となる。試薬分取回数と蒸発量から、現在の試薬容量を推定することができる。こうして、推定した試薬容量から、底面の位置(1)(2)(3)を演算し、プランジャ920の押し上げ高さを得ることができる。このような演算は、コンソールによって行われる。
本例の試薬容器の寸法に関して、図6のデータを使用することができる。本例の試薬容器でも、開口部の内径d1が小さいほど、蒸発速度は小さく、試薬容器の高さHは小さくなる。第2の例と異なり、本例では、開口部にプローブ121を挿入しないから、開口部の内径d1は、プローブ121の外径より小さくてもよい。従って、開口部の内径d1を十分小さくすることによって、蒸発量を低減することができる。
漏斗925から開口部までの内面は滑らかな曲面になっている。また、漏斗925及び開口部の内面に、撥水機能を有する撥水部を形成してもよい。従って、プランジャ920が下方に移動したとき、試薬は漏斗925及び開口部を経由して、下方に迅速に流出し、途中で蒸発して結晶化することはない。
本例の場合、試薬容量を5mL、容器の内径を、対流効果が生じないように、20mm程度とすると、容器高さHは50mm程度が適当である。開口部の径d1は1mm程度、漏斗925の上端の開口径は5mm程度とすれば、試薬分取時の蒸発を十分抑制することができる。
試薬容器の構成及び動作を以上のようにすることによって、試薬分取時の液面位置を一定にすることが可能となり、試薬分取時の蒸発を抑止して、分析精度の高い、プローブ動作の簡略化した小型分析装置を提供することが可能となる。
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
10…サンプル、11…分析デバイス、20…試薬、21…液面、25…蒸発、100…化学分析装置、121…プローブ、122…垂直方向駆動機構、123…水平方向駆動機構、124…チューブ、125…シリンジ、130…検出機構、131…コンソール、132…デバイスローダ、133…大型蓋、200…試薬容器、210…胴部、221…開口端、700…管、710…孔、720…底面、800…撥水部、915…底面、920…プランジャ、925…漏斗
Claims (13)
- 試薬を収容する試薬容器と、該試薬容器から試薬を分取し、それをサンプルに注入するためのプローブと、サンプルより所望の成分を検出するための検出装置と、を有する化学分析装置において、上記試薬容器は、内部の断面が一定の筒状の胴体を有する容器であり、試薬容器の内径dが5〜25mmの範囲にあり、試薬容器の高さHと内径dの比H/dが、1から100の範囲にあることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項1記載の化学分析装置において、上記試薬容器の開口端には、上記内部の断面より小さい面積の開口部が設けられ、該開口部の内径d1と上記胴体の内径dの比d1/dは、0.2から0.5、試薬容器の高さHと内径dの比H/dは8〜12であることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項3記載の化学分析装置において、上記開口部を上端とし上記試薬容器の底面より上側を下端とする管が設けられ、該管の上端には孔が形成されていることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項4記載の化学分析装置において、上記試薬容器の底面は中央が深くなるように湾曲されていることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項4記載の化学分析装置において、上記管の内径は上記プローブの外径の1.1倍より大きく且つ上記試薬容器の内径より小さいことを特徴とする化学分析装置。
- 請求項4記載の化学分析装置において、上記管の内面には撥水性処理が施されていることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項3記載の化学分析装置において、上記試薬容器の底面は上下方向に沿って移動可能であり、上記開口部の上には漏斗が設けられていることを特徴とする化学分析装置。
- 請求項8記載の化学分析装置において、上記管の内径は上記プローブの外径より小さいことを特徴とする化学分析装置。
- 請求項10記載の試薬容器において、上記試薬容器の開口端には、上記試薬容器の内部の断面より小さい面積の開口部が設けられていることを特徴とする試薬容器。
- 請求項11記載の試薬容器において、上記開口部を上端とし上記試薬容器の底面より上側を下端とする管が設けられ、該管の上端には孔が形成されていることを特徴とする試薬容器。
- 請求項11記載の試薬容器において、上記試薬容器の底面は上下方向に沿って移動可能であり、上記開口部の上には漏斗が設けられていることを特徴とする試薬容器。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010091307A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology | 微量液滴の体積測定方法及び装置 |
JP2011099769A (ja) * | 2009-11-06 | 2011-05-19 | Hitachi High-Technologies Corp | 試薬容器、および試薬容器用管体 |
JP2013061342A (ja) * | 2012-10-09 | 2013-04-04 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | 微量液滴の体積測定方法及び装置 |
-
2005
- 2005-08-09 JP JP2005231201A patent/JP2007046998A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010091307A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology | 微量液滴の体積測定方法及び装置 |
JP2011099769A (ja) * | 2009-11-06 | 2011-05-19 | Hitachi High-Technologies Corp | 試薬容器、および試薬容器用管体 |
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