JP2007044051A - 全脂大豆の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水溶性蛋白質等の大豆保有の有効成分を損なわずに、大豆特有の青臭味を除去する全脂大豆の製造方法を提供する。
【解決手段】
(a) 原料大豆から夾雑物を除いて、選別大豆を得る工程
(b)該選別大豆から胚芽と皮を分離して、無菌脱皮大豆を得る脱皮工程
(c)該無菌脱皮大豆を70〜120℃、60〜300秒の条件内で、熱水又は水蒸気により蒸煮することで、脱臭するとともにトリプシンインヒビターを失活せしめる半失活蒸煮工程
(d)該半失活した無菌脱皮大豆を所定含水量まで乾燥する乾燥工程
(e)該乾燥した無菌脱皮大豆を粉砕する粉砕工程
(f)該粉砕した無菌脱皮大豆を所定粒度以下の大豆粉末のみに分級する分級工程
とからなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水溶性蛋白質を損なわずに脱臭及び消化阻害酵素を失活させた全脂半失活大豆粉の製造方法に関する。
従来、全脂大豆紛の製造方法は、例えば皮を除去した荒割子葉を100−120℃の水蒸気による加熱処理を行い脱臭した後、粉砕する方法(特許文献1)や脱皮大豆を加圧下で130−190℃の過熱蒸気による加熱処理を行って脱臭した後粉砕する方法(特許文献2)、或いは加熱蒸気により熱処理し、加熱乾燥空気中で粗粉砕した後、さらに微粉砕を行う方法(特許文献3)等が知られている。
特公昭48−19946号公報 特公昭62−17505号公報 特公平3−58263号公報
しかしながら従来の全脂大豆粉の製造方法にあっては、いずれも水蒸気による100℃以上の高温での加熱を各種酵素の失活、脱臭、滅菌のために行っているが、このような高温水蒸気加熱処理は大豆保有の有効成分のうち、良質の水溶性蛋白質、カルシウム等のミネラル類、ビタミンB等のビタミン類等は高熱のために変性し、消化吸収され難いものになるという欠点があった。
また一部残存している皮の部分に雑菌が多く付着しており、一般細菌数が300個/g以下の無菌大豆を連続的に製造することは困難であった。
他方、水蒸気による加熱処理を行うことなく、生大豆を粉砕したものもまた流通しているが、高温の加熱処理が行われていないため、酵素は失活しておらず脱臭もされておらずまた殺菌も不十分なものである。したがって大豆特有の青臭みが残り、そのまま飲食するには適しておらず、通常は豆腐等の加工食品原料に用いられているのが現状である。
衛生上の観点から菌数が従来のものよりも少ない大豆粉、栄養上の面からは水溶性蛋白等大豆保有の有効成分(栄養組成)の変性を出来る限り少なくし、消化吸収の良い大豆粉の製造が求められている。
上記課題を解決するため、本発明の全脂半失活大豆粉の製造方法は以下の(a)乃至(f)の工程からなる。
(a)原料大豆から夾雑物を除いて、選別大豆を得る工程
(b)該選別大豆から胚芽と皮を分離して、無菌脱皮大豆を得る脱皮工程
(c)該無菌脱皮大豆を70〜120℃、60〜300秒の条件内で、熱水又は水蒸気により蒸煮することで、脱臭するとともに大豆保有の有効成分を変性を抑制しつつトリプシンインヒビターの活性を低減せしめる半失活蒸煮工程
(d)該半失活した無菌脱皮大豆を所定含水量まで乾燥する乾燥工程
(e)該乾燥した無菌脱皮大豆を粉砕する粉砕工程
(f)該粉砕した無菌脱皮大豆を所定粒度以下の大豆粉末のみに分級する分級工程
本発明によれば、水溶性蛋白質等の大豆保有の有効成分(栄養素組成)を損なわずに、大豆特有の青臭味を除去(脱臭)し、消化阻害酵素が失活されて消化吸収率が高く且つ充分に滅菌された全脂大豆粉を製造することができる。
以下に本発明の全脂半失活大豆粉の製造方法の実施の形態をあげるが、以下の説明は例示的に示されるもので限定的に解釈すべきものでないことはいうまでもない。
図1において、符号Aは原料大豆であり、符号100は選別工程である。選別工程100についての詳細な説明は後述するが、原料大豆Aから大豆よりも大きい又は小さい夾雑物を除去する粗選工程と、大豆よりも軽い夾雑物を除去する風選工程と、大豆よりも重い夾雑物を除去する石抜工程と、大豆と同程度の比重で形状の異なる夾雑物を除去するロール選別工程と、からなるものである。選別工程100により、原料大豆Aから夾雑物が完全に取り除かれた選別大豆Bを得ることができる。なお、一般的に、原料大豆Aは12〜13%の水分を含んでいるものである。
また、符号200は脱皮工程である。脱皮工程200についての詳細な説明は後述するが、該選別工程100により選別された選別大豆Bを品温で40度〜120度で加熱することにより豆を柔軟とする加熱工程と、大豆の皮をずらすことによって大豆の皮に亀裂を生じさせる補助脱皮工程と、大豆の剥皮を行なう剥皮工程と、剥皮工程で剥皮された皮を除去する風選工程と、風選処理された大豆混合物から脱皮されなかった丸大豆と半割れ子葉及び胚芽の混合物とに分離する第1篩分け工程と、次いでその半割れ子葉及び胚芽の混合物を子葉と胚芽とに分離する第2篩分け工程と、第2篩分け工程によって分離された子葉を冷却する冷却工程と、冷却処理された子葉の剥皮を行う再剥皮工程とからなり、再剥皮された半割子葉を脱皮大豆とするようにしたものである。脱皮工程200により、選別大豆Bから完全に脱皮された半割子葉としての無菌脱皮大豆Cを得る。
無菌検査220は、無菌脱皮大豆Cについて、所定のロット単位で抜き取り検査を行うもので、「食品衛生検査指針」(厚生省生活衛生局監修)に準じて細菌数の測定を行い、無菌脱皮大豆Cの細菌数が300個/g以下であることを確認的に検査する。なお、細菌数が300個/g以上のロットは再処理又は廃棄処分とする。
上記選別工程100、脱皮工程200及び無菌検査220は、以下に述べる本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様〜第3の態様において共通しており、本発明方法のいずれの態様によっても同様に実施されるものであるが、この後の各工程は、製造される全脂大豆粉の種別によって、即ち、全脂半失活大豆粉D、全脂生大豆粉E、全脂全失活大豆粉Fのいずれを製造するかによって異なる。
まず、本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様は、要するに全脂半失活大豆粉Dの製造方法であり、符号1で示した製造工程を経ることになる。
つまり、全脂半失活大豆粉Dの製造工程1では、図示した如く、選別工程100→脱皮工程200→半失活蒸煮工程302→乾燥工程304→粉砕工程306→分級工程308という各工程を経て、原料大豆Aを全脂半失活大豆粉Dに加工するものである。
半失活蒸煮工程302は、無菌脱皮大豆Cについて、消化阻害酵素であるトリプシンインヒビターを失活すると共に脱臭するためのものである。この半失活蒸煮工程302は、公知の脱臭機(連続蒸煮釜ともいう)を利用できる。半失活蒸煮工程302における蒸煮は比較的低温で行われ、70〜125℃の温度範囲、好ましくは86〜105℃の温度範囲の熱水又は水蒸気により60〜300秒間の蒸煮を行う。この温度範囲以下であると、消化阻害酵素(トリプシンインヒビター)が失活せず、脱臭も不十分となり、逆にこれ以上であると、良質な水溶性蛋白質等の大豆保有の有効成分(栄養素組成)が変性してしまい、消化吸収率が悪くなってしまう。
乾燥工程304は、上記半失活蒸煮工程302で消化阻害酵素が失活され且つ脱臭された脱皮大豆C2を含水量7質量%以下、例えば6〜7質量%程度にまで乾燥する。乾燥工程304は、公知の乾燥機を利用できる。
粉砕工程306は、上記乾燥工程304で乾燥された無菌脱皮大豆Cを滅菌状態で粉砕するものである。この粉砕工程306は、公知の粉砕機を利用できる。
粉砕工程306での粉砕は、粗粉砕と微粉砕の2段階に分けて行うことが好ましい。最初から微粉砕を行おうとすると、粉砕時の熱が高くなり、良質な水溶性蛋白質等の大豆保有の有効成分(栄養素組成)が変性してしまうことがあるからである。よって、例えば、20〜40メッシュ程度に粗粉砕した後、適宜必要に応じて、100〜1000メッシュ程度の粒度に微粉砕を行うようにすれば、粉砕時の熱の発生を低く抑えることができる。
なお、粉砕工程306での粉砕は必要であれば滅菌状態で行うようにしてもよい。粉砕機の内部は、微量の大豆粉末が残存し雑菌が繁殖しやすい場合があるので、無菌脱皮大豆Cに雑菌が再付着してしまうのを防ぐためである。例えば、エロフィンヒータ(AEROFIN HEATER)等の熱風乾燥装置により、粉砕工程306を実施する粉砕機の内部に60℃以上の熱風を流通せしめ、加熱殺菌するようにすればよい。
分級工程308は、上記粉砕工程306で粉砕した無菌脱皮大豆Cを所定粒度以下の大豆粉末のみに分級するものである。この分級工程308は、公知の分級機を利用できる。また、分級工程308において、所定粒度以上の大豆粉末については上記粉砕工程306に再投入し、再度の粉砕を行うようにすれば、無駄を無く所定粒度以下の大豆粉末を得ることができる。
このようにして、得られた全脂半失活大豆粉Dは、消化阻害酵素(トリプシンインヒビター)が失活され、且つ大豆保有の有効成分(栄養素組成)の変性も少なく、消化吸収のよいものであり、また、脱臭もされているので食し易く、更に、充分に滅菌されており、衛生上も優れている。全脂半失活大豆粉Dは、特に、飲料用として好適であり、飲料水に溶かせば簡易的な大豆飲料として有用である。
次に、第2の態様は、要するに全脂生大豆粉Eの製造方法であり、符号2で示した製造工程からなっている。この第2の態様及び後述する第3の態様は請求項の発明に含まれない。つまり、第2の態様である全脂生大豆粉Eの製造工程2は、図示した如く、選別工程100→脱皮工程200→乾燥工程314→粉砕工程316→分級工程318という各工程を経て、原料大豆Aを全脂生大豆粉Eに加工するものである。
選別工程100、脱皮工程200については、本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様と共通した工程であり、詳細は後述する。また、無菌検査220についても、前述した全脂半失活大豆粉Dの製造工程1(本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様)の場合と同様であるので再度の説明は省略する。
全脂生大豆粉Eの製造工程2と、前述した全脂半失活大豆粉Dの製造工程1(本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様)との主な差異は、半失活半失活蒸煮工程302に相当する工程を実施しないことである。全脂生大豆粉Eの場合、蒸煮してしまうと生大豆粉としての特性が失われてしまうからであり、従って、大豆保有の全ての酵素は失活していないし、脱臭もされていない。
乾燥工程314、粉砕工程316、分級工程318は、夫々、前述した乾燥工程304、粉砕工程306、分級工程308と同様であるので再度の説明は省略する。
このようにして得られた全脂生大豆Eは、大豆保有の有効成分(栄養素組成)の変性も一切ない。酵素が失活されていないので、豆腐、パン、パスタ等の加工食品の原料に用いることが好適であるが、この場合でも、全脂生大豆Eは充分に滅菌されていることから、これを原料とする加工食品も日持ちが良い。
次に、第3の態様は、要するに全脂全失活大豆粉Fの製造方法であり、符号3で示した製造工程からなっている。つまり、全脂全失活大豆粉Fの製造工程3は、図示した如く、選別工程100→脱皮工程200→全失活蒸煮工程322→乾燥工程324→粉砕工程326→分級工程328という各工程を経て、原料大豆Aを全脂失活大豆粉Fに加工するものである。
選別工程100、脱皮工程200については、本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様と共通した工程であり、詳細は後述する。また、無菌検査220についても、前述した全脂半失活大豆粉Dの製造工程1(本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様)の場合と同様であるので再度の説明は省略する。
全脂全失活大豆粉Fの製造工程3と、前述した全脂半失活大豆粉Dの製造工程1(本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1の態様)との主な差異は、半失活蒸煮工程302に替えて、全失活蒸煮工程322を採用し、大豆中の全ての酵素を失活させるように比較的高い温度範囲での蒸煮を行っている点、である。
全失活蒸煮工程322は、無菌脱皮大豆Cについて、トリプシンインヒビター、リポキシゲナーゼ等の全ての酵素を失活すると共に脱臭するためのものである。この全失活蒸煮工程322は、公知の脱臭機(連続蒸煮釜ともいう)を利用できる。また、全失活蒸煮工程322における蒸煮は比較的高温で行われ、85〜150℃の温度範囲、好ましくは105〜135℃の温度範囲の熱水又は水蒸気により60〜300秒間の蒸煮を行う。この温度範囲以下であると、全ての酵素が失活せず、逆にこれ以上であると、大豆保有の有効成分(栄養素組成)が著しく変性してしまう。
乾燥工程324、粉砕工程326、分級工程328については、夫々、前述した全脂半失活大豆粉Dの製造工程1における乾燥工程304、粉砕工程306、分級工程308と同様であるので、再度の説明は省略する。
このようにして得られた全脂全失活大豆Fは、全ての酵素が失活され、また、充分に脱臭されているため、各種の用途に利便性の高い食材として利用できる。
次に、前述した本発明の全脂大豆粉の製造方法の第1〜第3の態様において、共通して適用される選別工程100及び脱皮工程200について説明する。
図2において、符号100は選別工程である。選別工程100は、粗選工程102、風選工程104、石抜工程106及びロール選別工程108からなる。符号Aは、原料大豆であり、未だ何らの加工も選別も経ていない生の丸大豆である。
粗選工程102は、原料大豆Aから、粒径の異なる夾雑物を選別除去するための工程であり、公知の粗選別機を利用して行うことができる。粗選別機は、2段のパンチング板を振動させておき、上段のパンチング板の上には大豆よりも粒径の大きなものを残し、下段のパンチング板の上には大豆の粒径と同じものを残し、下段のパンチング板の下には大豆よりも粒径の小さいものを落下させて篩分けにより、粒径の大きい異物(トウモロコシ、泥塊、石など)と粒径の小さい異物(種子、草の実、小石など)を選別除去するものである。これにより大豆よりも大きい又は小さい夾雑物を除去することができる。
風選工程104は、原料大豆Aから、軽量の夾雑物を選別除去する工程であり、公知の風選機(吸引型風力選別機、グラビティ・セパレータともいう)を利用して行うことができる。風選機(吸引型風力選別機、グラビティ・セパレータ)は、吸引風力によって、軽量異物(埃、皮、小ゴミなど)を選別除去するものである。これにより大豆よりも軽い夾雑物を除去することができる。なお、風選工程104による選別は、上記粗選工程102による選別に先だって行ってもよい。
石抜工程106は、原料大豆Aから、石を選別除去するための工程であり、公知の石抜機を利用して行うことができる。石抜機は、一方向に傾斜した多孔の選別多孔板の下方から送風しつつ該選別多孔板を振動させ、重い石だけを該選別多孔板の傾斜上部側へ偏流させることにより、石を選別除去するものである。これにより大豆よりも重い石等の夾雑物を除去することができる。なお、石抜機106による選別は、原料大豆Aに石が混入している場合にのみ行えばよく、石の混入が無いことが明らかな場合には省略してもよい。
ロール選別工程108は、原料大豆Aから、大豆と形状の異なる夾雑物(扁平形状物、角形状物、異形丸形状物などの回転不能な異物)を選別除去するための工程であり、公知のロール選別機を利用して行うことができる。ロール選別機は、下部ロールと、該下部ロールの斜め上方に配置された上部ロールとに無端ベルトを懸架し、該下部ロール及び上部ロールをそれぞれ所定の角度で同一方向に傾斜させ、該下部ロールの傾斜角を上部ロールの傾斜角よりも小とし、かつ無端ベルト上面に1以上の鋸歯状板を設け、かつ該無端ベルトの下方傾斜側の側端部には側下方に傾斜する長尺状の傾斜排出板を設けて、該無端ベルトを上部ロール方向に回転運動させることにより、回転可能な丸形状物(大豆)は回転して下側方へ落下し、回転不能な異形状物(夾雑物)は回転せずに上部ロール方向に運ばれて、異形状物(夾雑物)を選別除去するものである。これにより大豆と同程度の比重で形状の異なる夾雑物を除去できる。
ロール選別工程108までの工程で、原料大豆Aから夾雑物の除去を略完全に行うことができるが、後工程の脱皮工程200では、大豆の粒径が揃っていないと脱皮の精度が向上しない。そこで、更に原料大豆Aを粒径で選別し、粒の大きさを揃えるための粒径選別工程110を行い、例えば、原料大豆Aを大粒・中粒・小粒に選別する。粒径選別工程110は、公知の粒径選別機を利用して行うことができる。粒径選別機は、2段のパンチング板を振動させておき、上段のパンチング板の上には粒径の大きな大豆を残し、下段のパンチング板の上には粒径の中くらいの大豆を残し、下段のパンチング板の下には粒径の小さい大豆を落下させて篩分けにより、粒径の大きい大豆と中くらいの大豆と小さい大豆とに選別するものである。この粒径選別工程110により、原料大豆Aの粒径が揃えられ、後工程の脱皮工程200での脱皮の精度が向上する。
また、前記各工程の夫々において、発生する埃や塵を集めるための集塵機をさらに備えることができ、これによって、微細な埃や塵が収集されて選別大豆Bの品質がより向上し、また、作業現場の雰囲気も清浄なものとすることができる。
なお、原料大豆Aに金属物質などの磁性の夾雑物が混入している場合には、更に磁力選別工程を行うようにしてもよい。磁力選別工程は、公知のドラム磁選機を利用して行うことができる。ドラム磁選機は、回転ドラムの内側に配設された磁石の吸着作用によって、金属物質などの磁性異物を選別除去するものである。これにより、磁性異物(釘、金属片等)を除去できる。
このようにして、原料大豆Aは、夾雑物が完全に取り除かれた選別大豆Bとなる。図3において、符号200は脱皮工程である。選別大豆Bは上記選別工程100を経て選別された丸大豆である。
加熱工程212は、選別大豆Bを品温で40〜120℃で加熱することにより豆を柔軟とするものであり、大豆の小割れを防ぐために大豆を柔軟にする目的で行われる。加熱時間は大豆の状態によっても異なるが瞬時から20分程度の範囲で行なう。加熱工程212には、公知の加熱機を利用することができる。
補助脱皮工程213は、大豆の皮をずらすことによって大豆の皮に亀裂を生じさせるものであり、後の剥皮工程214での剥皮処理を補助する目的で行なうもので、大豆に応力を加えることによって亀裂を生じさせる。補助脱皮工程213は、公知の補助脱皮機を利用できる。この補助脱皮機は、従来から籾摺り機として周知の構造のものを転用したものであり、その基本的構造は、隙間を開けて設置された二本のゴムローラーと、原料投入用のホッパーとを有するものである。投入された原料大豆は、互いに回転数の異なる状態で回転するその二本のゴムローラーによって、その皮がずらされて亀裂(皮の裂け目)が入れられることとなる。勿論部分的には皮が剥げてしまうものもある。この二本のゴムローラーの隙間は、大豆の亀裂が好適に入れられるように設定されるが、通常は1〜5mm程度である。また、二本のゴムローラーの回転速度は、1本が750〜850回転/分程度で、両者の回転速度の差は20%程度が好適である。
剥皮工程214は、大豆の剥皮を行なうものであり、剥皮工程214は、公知の剥皮機を利用できる。この剥皮機は、従来から豆類等の表面を磨くための磨き機として周知の構造のものを転用したものであり、その基本的構造は、複数の回転する羽根を内部に有する固定状態の網状ドラムと、原料投入用のホッパーとを有するものである。網状ドラムに投入された原料大豆、即ち補助脱皮機によって亀裂を入れられた大豆は、回転する複数の羽根と網状ドラムとの相互作用によって完全に皮が剥けた状態となる。このとき、羽根の回転は大豆が小割状態とならないように調節される。脱皮された大豆、即ち半割大豆(子葉)及び胚芽及び下記する集塵によって除去されない皮は網状ドラム内を移動して製品出口から排出される。このとき、網状ドラム内を子葉及び胚芽とともに移動する大きめの皮は集塵手段によって製品とは別の方向に集められる。また、網状ドラムから脱落した皮及びその他の夾雑物は下方に落下するが、別の集塵手段によって集められる。複数の羽根の回転速度は、大豆が小割とならないように調節されるが、通常300回転/分程度が好適である。
風選工程215は、剥皮工程で剥皮された皮を除去するものであり、公知の風選機により、常法によって行えばよい。
篩分け工程216は、風選処理された大豆混合物を未脱皮丸大豆と半割れ子葉と胚芽とに分離するものである。ここでいう大豆混合物とは、いまだ脱皮されていない丸大豆(未脱皮丸大豆)と、二つの子葉に分かれた子葉(半割れ子葉)と、胚芽とを包含するものである。これらをそれぞれ分離する必要があるから、二段式に篩を用いる。
即ち、まず第1篩分け工程216aでは、脱皮されなかった丸大豆と、半割れ子葉と胚芽の混合物とに篩分けし分離する。脱皮されなかった大豆は、加熱工程212か補助脱皮工程213かに戻してやればよい。加熱工程212に戻すか補助脱皮工程213に戻すかの判断は未脱皮丸大豆が既に充分に加熱処理されたものか否かによって判断されるが、現実的には現場の作業者の判断によって再度熱処理が必要か否かが判断され、どちらの工程に戻すかが決定される。
ついで、第2篩分け工程216bでは、半割れ子葉と胚芽の混合物を篩分けし両者を分離する。なお、このとき小割れ子葉が混在することもあるが、これも篩分け手段によって必要に応じて適宜分離可能である。
冷却工程217は、第2篩分け工程16bによって篩分け分離処理された多少の皮が残存した半割れ子葉を冷却するものである。この冷却工程217では、加熱処理により膨張した子葉を冷却手段によって冷却することにより、子葉を収縮せしめ、子葉と皮とが剥離し易い状態とする。冷却手段としては、常温風冷で冷却せしめる冷却タンクが好適に用いられるが、その他の公知の冷却手段を適用できることはいうまでもない。
再剥皮工程218は、冷却処理された子葉の剥皮処理を再度行う工程である。この再剥皮工程218では、冷却処理により子葉と皮とが剥離し易い状態となっている多少の皮が残存した半割れ子葉について、半割れ子葉と皮とに分離する。この再剥皮工程218は、前記した剥皮工程214と同様の剥皮機を用いることができる。そして、再剥皮された子葉を無菌脱皮大豆Cとするものである。
このようにして、脱皮工程200により、選別大豆Bは完全に脱皮された半割子葉としての無菌脱皮大豆Cとなる。
なお、このような脱皮工程200として、例えば、特開2001−17107号公報に記載されている丸大豆を子葉と胚芽と皮に分離する方法が好適に利用可能である。
以下に本発明の実施例をあげて説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので、限定的に解釈すべきものではない。
(実施例1)
まず、選別工程100を以下のように実施し、原料大豆Aから選別大豆Bを得た。
原料大豆Aを100kg用意し、市販の粗選別機にかけて大豆より大きい異物(コーン、泥塊など)又は大豆より小さい異物(草の実、朝顔の種など)を除き(粗選工程102)、市販のグラビティ・セパレータにより、軽量異物(埃、皮、小ゴミなど)を除去し(風選工程104)、市販の石抜機によって混入している大豆よりも重い石等の夾雑物を除き(石抜工程106)、市販のロール選別機に通して異形物を除去し(ロール選別工程108)、市販の粒径選別機により大豆を粒径別に選別した(粒径選別工程110)。
次に、脱皮工程200を以下のように実施し、無菌脱皮大豆Cを得た。
市販の加熱機で、熱風空気温度約100℃、品温約60℃で5分程度加熱し(加熱工程212)、この加熱した大豆を、市販の補助脱皮機(二本のゴムローラーの隙間は、1〜5mm、二本のゴムローラーの回転は、1本が809回転/分、他の1本が1050回転/分で、両者の回転数の差は約20%の条件で使用した。)にかけて大豆に亀裂をおこさせた(補助脱皮工程213)。
この亀裂のおきた大豆を、市販の剥皮機(複数の羽根の回転数は、300回転/分とした。)で剥皮し(剥皮工程214)、集塵装置によって剥皮された皮の半分程度を除去した。市販の風選機によって剥離された皮のうち上記集塵装置によって除去されなかったものを除去した(風選工程215)。
皮を除去した残りの大豆混合物を市販の多段式篩装置にかけて子葉と胚芽とに分離した(篩分け工程216)。すなわち、風選処理された大豆混合物を第1の篩にかけて未だ脱皮されていない丸大豆(未脱皮丸大豆)と、二つの子葉に分かれた子葉(半割れ子葉)と胚芽との混合物とに分け(第1篩分け工程216a)、次いで、子葉と胚芽との混合物を、第2の篩にかけて半割れ子葉と胚芽とに分離した(第2篩分け工程216b)。
この分離された子葉には多少の皮が残存しているが、この分離された子葉を市販の冷却タンク(冷却ファン付、容量約8m)によって、常温風冷で冷却し(冷却工程217)、この冷却した子葉を市販の剥皮機で再度剥皮処理して子葉に残った皮を分離した(再剥皮工程218)。
得られた無菌脱皮大豆Cについて、「食品衛生検査指針」(厚生省生活衛生局監修)に準じて、細菌数の測定を行い、細菌数が300個/g以下であることを検査した(無菌検査220)。
この無菌脱皮大豆Cについて、市販の連続蒸煮釜を用い、90℃の温度の熱水により120秒間の蒸煮を行った(半失活蒸煮工程302)。
蒸煮後の無菌脱皮大豆Cについて、市販の乾燥機を用いて、含水量6質量%まで乾燥した(乾燥工程304)。
乾燥した無菌脱皮大豆Cについて、予めエロフィンヒータにより100℃の熱風を内部に流通せしめて加熱殺菌した市販の粉砕機を用い、最初に粒度30メッシュに設定して粗粉砕した後、粒度600メッシュに設定して微粉砕した〔粉砕工程306〕。
得られた大豆粉末を市販の分級機を用いて、粒度600メッシュ以下の大豆粉末のみに分級した〔分級工程308〕。粒度600メッシュ以上の大豆粉末については、粉砕工程306に再度投入した。
このようにして得られた全脂半失活大豆粉Dの成分分析結果を表1及び表2に示し、また、細菌検査を行った結果を表3に示す。
Figure 2007044051
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表1に示される如く、大豆保有の有効成分(栄養素組成)の変性は少なく、また表2に示される如く、消化阻害酵素であるトリプシンインヒビターの活性も低く抑えられていることが分かった。表3に示される如く、各種細菌数は300個/g以下に抑えられており、また、残留農薬等の有害物質も検出されなかった。
実施例1の全脂半失活大豆粉Dにおける蛋白質は、変性していない水溶性蛋白質であるため、飲料水に非常によく溶け、即席の大豆飲料とすることができた。これを飲用したところ、青臭味もなく美味であった。
(実施例2)
半失活蒸煮工程302に相当する工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして生大豆粉Eを得た。実施例1と同様、成分分析を行ったところ、消化阻害酵素であるトリプシンインヒビターは失活していなかったが、大豆保有の有効成分(栄養素組成)の変性は殆ど無かった。また、細菌検査の結果は、実施例1と同様、各種細菌数は300個/g以下に抑えられており、また、残留農薬等の有害物質も検出されなかった。
実施例2の全脂半失活大豆粉Eを用いて、豆腐を製造したところ、非常に美味であり、また、その製造した豆腐の日持ちも良かった。
(実施例3)
半失活蒸煮工程302に変えて、無菌脱皮大豆Cについて、市販の連続蒸煮釜を用い、125℃の温度の水蒸気により90秒間の蒸煮を行った(全失活蒸煮工程322)以外は、実施例1と同様にして全失活大豆粉Fを得た。実施例1と同様、成分分析を行ったところ、大豆保有の有効成分(栄養素組成)はある程度変性していたが、全ての酵素は失活していた。また、細菌検査の結果は、実施例1と同様、各種細菌数は300個/g以下に抑えられており、また、残留農薬等の有害物質も検出されなかった。
実施例3の全脂半失活大豆粉Eは、完全な酵素失活と脱臭がされているため、取り扱いやすく、各種加工食品に利用でき、また、その加工食品の日持ちも良かった。
本発明の全脂大豆粉の製造方法の全体的工程を示すフロー図である。 本発明の全脂大豆粉の製造方法における選別工程を示すフロー図 本発明の全脂大豆粉の製造方法における脱皮工程を示すフロー図

Claims (3)

  1. 以下の(a)乃至(f)の工程からなる全脂大豆の製造方法。
    (a)原料大豆から夾雑物を除いて、選別大豆を得る工程
    (b)該選別大豆から胚芽と皮を分離して、無菌脱皮大豆を得る脱皮工程
    (c)該無菌脱皮大豆を70〜120℃、60〜300秒の条件内で、熱水又は水蒸気により蒸煮することで、脱臭するとともに大豆保有の有効成分を変性を抑制しつつトリプシンインヒビターの活性を低減せしめる半失活蒸煮工程
    (d)該半失活した無菌脱皮大豆を所定含水量まで乾燥する乾燥工程
    (e)該乾燥した無菌脱皮大豆を粉砕する粉砕工程
    (f)該粉砕した無菌脱皮大豆を所定粒度以下の大豆粉末のみに分級する分級工程
  2. 請求項1に記載の全脂大豆の製造方法において、前記粉砕工程は20〜40メッシュに粉砕する粗粉砕と、この粗粉砕の後に行う100〜1000メッシュに粉砕する微粉砕からなることを特徴とする全脂大豆の製造方法。
  3. 請求項1に記載の全脂大豆の製造方法において、前記粉砕工程は熱風乾燥装置を用いて滅菌状態で前記乾燥工程と同時に行うことを特徴とする全脂大豆の製造方法。
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