以下、図1から図7を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図1から図3及び図7の各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら機器及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示す図1及び図7において、光ファイバ等の光パルス信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。またこれら太線及び細線に付された番号及び記号は、それぞれ光パルス信号あるいは電気信号を意味する。
以下の説明において、便宜上、クロック信号/帰還信号生成部は、160 Gbit/sの伝送レート用に設計されているものとし、受信する光パルス信号の伝送レートは、160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sのいずれかであるものとする。しかしながら、以下の説明は、伝送レートがこれに限定されることなく、同様に成立することは明らかである。
<第1実施例>
図1から図6を参照して、この発明の第1実施例であるマルチレートクロック信号抽出装置の構成とその動作原理を説明する。この発明のマルチレートクロック信号抽出装置110は、光パルス圧縮部20と、光変調部50と、クロック信号/帰還信号生成部100を具えて構成される。光変調部50は、EAMを利用して実現されている。
この構成の装置と非特許文献2に開示されている装置との相違は、光パルス信号19のパルスの時間波形の半値幅を調整するためのパルス圧縮部20が具えられている点である。光パルス信号19の伝送レートが、上述したクロック信号/帰還信号生成部100がクロック信号抽出を可能とする伝送レートの設計値と異なり、この伝送レートよりも小さな場合、受信した光パルス信号19のパルス幅を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号21として出力する。
光パルス信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅が、伝送レートにほぼ反比例して広い。例えば、40 Gbit/s及び80 Gbit/sである光時分割多重信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅は、160 Gbit/sの場合に比較して、それぞれ4倍及び2倍である。、光パルス信号19の伝送レートが、上述の伝送レートの設計値より小さな場合、そのパルス幅が広いことによって、光変調部50から出力される変調光パルス信号51に大きな雑音成分が混入する。その結果、位相比較器56で必要となる位相比較情報(後述する第1電気信号53に含まれる主フーリエ周波数成分に相当する。)がこの大きな雑音に埋まった状態となる。このため、位相比較ステップ終了以降のステップを実行するPLL回路が設計どおり働かず、PLL動作が実現しないことが起こり得る。そのために、ビットレートの小さい光パルス信号からクロック信号を抽出するためには、その光パルスの時間波形の半値幅を圧縮する必要がある。
(光パルス圧縮部)
光パルス圧縮部20の構造とその動作について、図2を参照して説明する。光パルス圧縮部20は、光増幅器22、非線形光媒質24を具えて構成されている。そして、光増幅器22の増幅率を調整するために、半値幅調整器40が光増幅器22に接続されている。半値幅調整器40は、例えば、光増幅器22として光ファイバ型光増幅器を利用する場合には、この光増幅器22にポンプ光を供給する装置を指す。そして、半値幅調整器40によって、ポンプ光の強度を調整することで光増幅器22の増幅率を調整することができる。
また、光パルス圧縮部20は、更に光バンドパスフィルタ26を具えて構成するのが好適である。
光増幅器22は、上述したように受信した光パルス信号11から分岐して得られた光パルス信号19のパルスの時間波形の半値幅が、光パルス圧縮部20において調整されて狭光パルス信号21として出力されるために必要とされる強度に達するように光パルス信号19を増幅する。非線形光媒質24は、光増幅器22で増幅された光パルス信号23のスペクトル幅を広げて、光パルス信号25として出力する。
非線形光媒質24としては、非線形光ファイバを利用するのが好適である。光通信における光伝送路は光ファイバで形成されていることから、この光ファイバとの接合の便利さから、他の形態の非線形光媒質を採用するより好都合である。もちろん非線形光媒質としては、非線形光ファイバに限定されることはなく、非線形光学結晶である強誘電体結晶に形成された光導波路等を利用することも可能である。非線形光媒質としていかなる素材を利用するかは、設計的事項に属する。この発明の実施例においては、後述するように、非線形光媒質として非線形光ファイバを利用した。
基本的に、光増幅器22と非線形光媒質24とを利用することで、光パルス信号19の周波数スペクトルの幅を広げることが可能である。すなわち、光増幅器22で光パルス信号19を増幅し、光パルス信号19を非線形光媒質24に入力すれば、その周波数スペクトルの幅を広げることが可能である。そして、非線形光媒質24から出力される光パルス信号25のパルスの時間波形の半値幅の値が、クロック信号/帰還信号生成部100においてクロック信号を抽出するために必要とされる半値幅の値以下となっていれば、この光パルス信号25をクロック信号/帰還信号生成部100に入力してクロック信号の抽出を行うことができる。
しかしながら、上述したように、受信した光パルス信号19が非常に微弱であったり、受信した光パルス信号19の伝送レートがクロック信号/帰還信号生成部100の設計値に対して非常に低かったりした場合には、非線形光媒質24から出力される光パルス信号25をフィルタリングする、光バンドパスフィルタ26を設けるのが好適である。
光バンドパスフィルタ26は、フィルタ中心波長が固定のタイプを用いることも可能であるが、このフィルタ中心波長が可変である波長可変光バンドパスフィルタを利用するのがより便利である。受信した光パルス信号19の強度や、波長、伝送レート等に対応して、光パルス信号25のスペクトル帯域のうちでフィルタリングすべき帯域が異なる場合がある。この場合にも迅速かつ簡便に対応するためには、フィルタ中心波長を変えられる波長可変光バンドパスフィルタを利用するのがよい。
波長可変光バンドパスフィルタには、例えば、可変バンドパス光ファイバフィルタ(Fiber Optic Filter Tunable Bandpass Fiber Optic Filters)等の商品名で市販されている(例えば、[平成17年6月25日検索]インターネット<URL: http://www.newport-japan.co.jp/pdf/0257.pdf>参照)。このタイプの波長可変光バンドパスフィルタは、薄膜コーティング干渉フィルタが2つの角度付き光ファイバコリメータの間に位置されており、この干渉フィルタの傾き角をマイクロメータ等によって調整することで波長選択を実現している。
(光変調部及びクロック信号/帰還信号生成部)
図1を参照して、光変調部50及びクロック信号/帰還信号生成部100の構成及びその動作について説明する。図1は、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置110の、PLL回路を構成する部分と光変調を実行する部分とを中心とした概略的ブロック構成図である。時分割多重信号から個々のチャンネルに分離するゲーティング部14も、マルチレートクロック信号抽出装置110から出力されるクロック信号が使われる場所を示すために、書き加えてある。
受信する光パルス信号11は、光分波器12によって分岐されて、一方は光パルス信号19としてマルチレートクロック信号抽出装置110に入力されてクロック信号71が抽出される。もう一方の光パルス信号13はゲーティング部14に入力され、上述のマルチレートクロック信号抽出装置110で抽出されたクロック信号71(ゲーティング信号)によって、チャンネル毎に分岐される。
ここでは、一例として、1チャンネル当り40 Gbit/sのビットレートの4チャンネル分の信号が光時分割多重されて、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号として送信された場合を想定して、マルチレートクロック信号抽出装置110の構成及びその動作を説明する。すなわち、ゲーティング部14において、160 Gbit/sのRZ符号化された多重信号から、1〜4チャンネルに相当する40 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号が分離されて出力される場合を想定して説明する。
光分波器12によって分岐された光パルス信号19は、パルス圧縮部20に入力されて、そのパルスの時間波形の半値幅を圧縮された狭光パルス信号21に変換されて光変調部50を構成するEAMに入力される。EAMには、(40-Δf) GHzの電気信号79が入力されており、この電気信号79によって、狭光パルス信号21が変調される。EAMに入力される周波数(40-Δf) GHzの電気信号は、厳密な正弦波であるが、変調を被る光パルス信号出力は略矩形のパルス形状であるために、この光パルス信号出力は、(40-Δf) GHzのN逓倍の周期の正弦波をフーリエ成分として含む信号となる。ここで、Nは1以上の整数である。
以後の説明において、光パルス信号出力がパルス形状である場合において、混乱が生じない範囲で、フーリエ成分を含むことについては言及せずに、主要周波数成分の周波数値を代表値として用いて表現する場合もある。以後、説明する第1電気信号等の電気信号においても、その時間波形が厳密な正弦波ではなく、多数のフーリエ成分を含む場合にも、フーリエ成分を含むことについては言及せずに、主要周波数成分の周波数値を代表値として用いて表現する場合もある。
光変調部であるEAMは、次のように動作する。すなわち、EAMに設けられた光導波路を、EAMへの入力光である光パルス信号19が伝播する際に、その導波路の有する吸収係数が、EAMへの入力電気信号である電気信号79の周波数に従って変動する。すなわち、(40-Δf) GHzの周波数で、EAM内に設けられた光導波路を伝播する入力光(光パルス信号19)が変調される。ここで、Δfは、40 GHzと比較して十分に小さい周波数値であり、例えば250 MHz程度の値に設定される。
以後、説明の便宜のために、一般にEAMが、入力光に対してこのEAMに入力される電気信号の周波数F Hzで透明になったり不透明になったりする現象に因んで、EAMを、F Hzの透過窓と称することもある。すなわち、上述のEAMは、(40-Δf) GHzの周波数の電気信号79に従って、透明になったり不透明になったりするので、(40-Δf) GHzの透過窓である。
光パルス信号19は、EAMに入力されて、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号成分のうち、(40-Δf) GHzの透過窓を通過できた成分のみが濾し取られて、変調光パルス信号51として出力される。すなわち、EAMに光パルス信号19を入力して、光パルス信号19のベースレートクロック周波数f(=160 GHz)の1/N(=1/4)の周波数に、低周波数成分Δfをミキシングした周波数(40-Δf) GHzの変調電気信号で変調して、変調光パルス信号51として出力するステップであるので、このステップを光変調ステップと称することもある。
変調光パルス信号51は、光パルス信号を電気信号に変換するO/E変換器52に入力されて、第1電気信号53として出力される。すなわち、光電変換器であるO/E変換器52に変調光パルス信号51を入力して、第1電気信号53に変換して出力するステップであるので、このステップを光電変換ステップと称することもある。
第1電気信号53は、透過帯域の中心周波数がΔfの4倍である周波数、(4Δf) GHzの第1バンドパスフィルタ54によって、第1電気信号53の有する周波数成分のうち、(4Δf) GHzの周波数成分(主フーリエ周波数成分)だけが濾し取られ、(4Δf) GHzの第2電気信号55が出力される。すなわち、第1バンドパスフィルタ54に第1電気信号53を入力して、周波数ΔfのN逓倍(一般にNは1以上の整数で、ここでは4)の周波数(NΔf)GHzの電気信号のみを選択して第2電気信号55として出力するステップであるので、このステップを第1バンドパスステップと称することもある。
第2電気信号55は位相比較器56に入力される。位相比較器56において、第2電気信号55と周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75との位相が比較される。周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75は、周波数Δf GHzの電気信号を出力する基準信号発生器68から出力される電気信号69から生成される電気信号である。すなわち、電気信号69が、パワー分岐器72を介して4逓倍器74に入力され、4逓倍器74で4逓倍されて出力される。第2電気信号55と第3電気信号75との位相が合致していれば、位相比較器56から出力される第4電気信号57は0 Vとなり、また両者の位相に位相差が存在すれば、その大きさに比例して第4電気信号57の電圧が大きくなる。
すなわち、位相比較器56を用いて周波数(NΔf)GHzの第2電気信号55と周波数ΔfのN倍の周波数(NΔf)GHzの第3電気信号75との位相を比較して、両電気信号の位相との差成分を出力するステップであるので、このステップを位相比較ステップと称することもある。
第4電気信号57は、ラグリードフィルタ58に入力されて、時間的に平均化された強度をもつ第5電気信号59として出力される。すなわち、このステップは、ラグリードフィルタ58を用いて、第2電気信号55と第3電気信号75の位相との差成分を時間平均して、時間平均差成分として出力するステップであるので、このステップを時間平均差成分出力ステップと称することもある。
第5電気信号59はVCO 60に入力される。VCO 60は、入力される第5電気信号59の電圧に比例する周波数の電気信号である、第6電気信号61を出力する機能を有している。このため、VCO 60から出力される第6電気信号61の周波数は、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号19から抽出される周波数(NΔf)GHzの第2電気信号55の位相と、周波数(NΔf)GHzの第3電気信号75の位相とが合致するように変化する。この理由を以下に説明する。
VCO 60は、第5電気信号59が0 Vである場合に出力する周波数(VCO 60の中心周波数)を(f/N)GHzに設定しておけば、第2電気信号55の位相と第3電気信号75の位相とが合致した場合に、周波数が(f/N)GHzの第6電気信号61を出力する。すなわち、第4電気信号59が0 Vとなるためには、変調光パルス信号51と、基準信号発生器68から出力される電気信号69とが同期する必要がある。
第2電気信号55は第1電気信号53の有する周波数成分のうち(4Δf) GHzの周波数成分(主フーリエ周波数成分)だけが濾し取られた信号であり、第1電気信号53は変調光パルス信号51がO/E変換器52に入力されて電気信号に変換された信号である。また、変調光パルス信号51は、光パルス信号19のベースレートクロック周波数f(=160GHz)の1/N(=1/4)の周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数N(40-Δf) GHzで変調されてEAMから出力された信号である。従って、第2電気信号55の位相に同期するとは、VCO 60から出力される第6電気信号61が、光パルス信号19のベースレートクロックの周波数f(=160GHz)の1/N(=1/4)の周波数の電気信号の位相に同期することに相当する。
VCO 60から出力される第6電気信号61は、パワー分岐器62によって分岐され、一方はこのPLL系の帰還信号としてミキサー64に入力される。もう一方は抽出されたクロック信号71としてマルチレートクロック信号抽出装置110から出力される。
光パルス信号を入力して、この光パルス信号のベースレートクロック周波数fの1/Nの周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数で変調して、変調光パルス信号として出力するEAMによって構成される部分が光変調部50である。また、この変調光パルス信号を入力して、周波数f/Nのクロック信号、及びこの光パルス信号のベースレートクロック周波数fの1/Nの周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数の電気信号を出力する部分がクロック信号/帰還信号生成部100である。従って、図1に示すマルチレートクロック信号抽出装置110は、光変調部50であるEAMとクロック信号/帰還信号生成部100とを具えて構成されている。
ミキサー64には、VCO 60から出力される第6電気信号61と、パワー分岐器72を介して基準信号発生器68から出力される周波数(Δf)GHzの電気信号である第7電気信号69とが入力される。この結果ミキサー64からは、周波数が(40±nΔf)GHzの複数の電気信号成分が合成された第8電気信号65が出力される。ここで、nは、上述した1以上の整数Nとは独立の1以上の整数である。
第8電気信号65は、透過帯域の中心周波数が(40-Δf) GHzである第2バンドパスフィルタ76に入力され、第8電気信号65が有する複数の周波数成分の中から周波数が(40-Δf) GHzの電気信号だけが濾し取られて、第9電気信号77として出力される。周波数が(40-Δf) GHzの電気信号である第9電気信号77は、増幅器78で増幅されて第10電気信号79に変換されて、EAMに入力される。増幅器78は、EAMを透過窓として好適に動作させるために必要に応じて設置されるものであり、必ず設置しなければならないものではない。
なお、第10電気信号79は、光変調部50であるEAMに入力される変調信号であるので、変調電気信号ということもある。
ここで、EAMから出力される変調光パルス信号51について説明する。EAMは、電圧を印加することによって光の透過率が変化する特性を有する素子である。従って、EAMに入力させる光パルス信号を、EAMに電気信号を印加することによって光強度変調することができる。EAMに印加する電気信号の振幅を大きくすることによって、EAMから出力される変調光パルス信号51を構成する光パルスの半値幅を狭くすることができる。正弦波の振幅を大きく採るためには、増幅器78を設置し、第2バンドパスフィルタ76から出力される電気信号77を増幅して電気信号79として、EAMに入力する構成とするのが一法である。
一方、EAMに印加する電気信号は厳密には正弦波であるが、EAMから出力される光パルス信号は非正弦波である。EAMから出力される光パルス信号は正弦波ではなく、変調光パルス信号51となるので、その信号には、(40-Δf) GHzの繰り返し周期成分に加えて、(40-Δf) GHzの逓倍の繰り返し周期成分もフーリエ成分として含まれる。
従って、光変調ステップにおいて、EAMに入力される制御信号である第10電気信号79に含まれる(40-Δf) GHzの4逓倍周波数成分である(160-4Δf) GHz成分と、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号19の有する160 GHz成分との差周波である(4Δf) GHz成分が抽出されることとなる。すなわち、EAMから出力される変調光パルス信号51には、(4Δf) GHzの変調成分が含まれる。この(4Δf) GHz成分が、O/E変換器52と第1バンドパスフィルタ54とによって、周波数が(4Δf) GHzの第2電気信号55となって、位相比較器56に入力される。
一方、周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75も位相比較器56に入力される。位相比較器56において、この周波数が(4Δf) GHz成分の第2電気信号55の位相と周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75の位相とを合わせるように、マルチレートクロック信号抽出装置110の電気回路の構成要素が協働して動作する。このことによって、マルチレートクロック信号抽出装置110への入力信号である光パルス信号19のベースレートクロック信号と、VCO 60から出力される第6電気信号61すなわち、マルチレートクロック信号抽出装置110から抽出されるクロック信号71の位相を同期させるPLL系回路が形成される。
(光パルス圧縮部の動作確認シミュレーション)
図3から図6を参照して、光パルス圧縮部20において、光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を調整(光パルス圧縮)できることをシミュレーションによって確かめたので、その結果について説明する。このシミュレーションによって、この発明が解決しようとする課題が解決できることを明らかにする。すなわち、入力される光パルス信号の伝送レート周波数に、即座に対応させてクロック信号を抽出するという課題が解決できることを明らかにする。
図3は、シミュレーションに利用する光パルス圧縮の効果測定装置として想定した装置の概略的ブロック構成図である。パルス生成器30によって、擬似光パルス信号31を生成する。ここで、光パルス生成器30から出力される信号は、規則正しい正弦波であり、この信号には特段の情報が載せられていないので、情報が載せられた通常の光パルス信号と区別するため、光パルス信号とせず、擬似光パルス信号と表記する。シミュレーションを必要以上に複雑化することを避けるために、擬似光パルス信号を想定して行ったが、以下に示すシミュレーション結果は、情報を載せた通常の光パルス信号においても同様に成り立つことは明らかである。光パルス信号は、擬似光パルス信号31を構成する光パルス列の光パルスの幾つかが、載せられた情報に応じて欠けているだけであり、その伝送レート(ビットレート)が異なるわけではないからである。
擬似光パルス信号31は、光増幅器32によって増幅されて擬似光パルス信号33として出力されて、非線形光媒質34に入力される。光増幅器32には半値幅調整器42を具えたErドープ光ファイバアンプを用いた。光増幅器32の増幅率は、半値幅調整器42によって、ポンプ光の強度を増減することによって調整することができる。半値幅調整器42は、Erドープ光ファイバに入力するポンプ光を発生する半導体レーザと、この半導体レーザの駆動電流を調整するための、電流値可変型電流発生回路とを具えて構成できる。
非線形光媒質34としては、モードフィールド(Mode Field)の面積が10μm2、非線形屈折率が2.5×10-20m2/W、波長分散値が-0.25 ps/nm/km、波長分散スロープが-0 ps/nm2/kmであり、全長が1 kmの光ファイバを用いた。擬似光パルス信号31の波長は、1.55 μmである。
非線形光媒質34から出力された擬似光パルス信号35は、図4から図6を参照して説明するように、擬似光パルス信号33と比較してその周波数スペクトル幅が広がっている。擬似光パルス信号35は、上述した光バンドパスフィルタ36によってフィルタリングされて、擬似光パルス信号37として出力される。擬似光パルス信号37は、その周波数スペクトル波形のピークに対して高周波数側の周波数成分が、光バンドパスフィルタ36によってフィルタリングされている。
擬似光パルス信号37の時間波形及び周波数スペクトルは、測定器38で観測した。また、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルについても、それぞれの信号が伝播している光伝送路から分岐して測定器(図示省略)によって観測した。また、擬似光パルス信号33の時間波形についても、擬似光パルス信号33が伝播している光伝送路から一部分岐して測定器(図示省略)によって観測した。
図4(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が80 Gbit/sである場合のシミュレーション結果を説明する。図4(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は22 dBmであった。図4(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図4(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
図4(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は5 psである。一方。図4(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は2.5 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が5 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が半分である2.5 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。
このシミュレーション結果が得られた要因が上述したように、非線形光媒質34による周波数スペクトル幅の拡大、及び光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングによるものであることを確かめるために、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図4(C)に示す。図4(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が5 psであることに対応して、横軸上で-250 GHzから250 GHzにわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-750 GHzから750 GHzにわたっており、擬似光パルス信号31の周波数スペクトルよりその幅が広い。
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルに比べて、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルが広くなっていることから、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅は、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅より狭まっている。すなわち、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅は、非線形光媒質34によって狭められて、擬似光パルス信号35として出力される。従って、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるという当初の目的は、非線形光媒質34によって、実現される。
更に、非線形光媒質34から出力される擬似光パルス信号35の時間波形の形状を、サブピーク成分をほとんど含まない理想的な形状とするために、光バンドパスフィルタ36によって、フィルタリングを行った。光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングの効果について、図4(C)を参照して説明する。
擬似光パルス信号35は、光バンドパスフィルタ36に入力されて擬似光パルス信号37に変換されて出力される。光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図4(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図4(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
以上説明したように、80 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅と同程度の値である、2.5 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfの主要信号以外の、フーリエ成分がノイズとしてほとんど含まれていない。
従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、80 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、クロック信号/帰還信号生成部100の回路部分を全く変更することなく、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
すなわち、80 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
次に、図5(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が40 Gbit/sである場合のシミュレーション結果(その1)を説明する。図5(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は26 dBmであった。図5(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図5(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
図5(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は10 psである。一方。図5(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は4 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が10 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が2/5である4 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。
上記の80 Gbit/sの場合のシミュレーションと同様に、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図5(C)に示す。図5(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が10 psであることに対応して、横軸上で-125 GHzから125 GHzにわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-650 GHzから650 GHzにわたっており、擬似光パルス信号31の周波数スペクトルよりその幅が広い。
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルに比べて、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルはその幅が広くなっていることから、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅は、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅より狭まっている。すなわち、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅は、非線形光媒質34によって狭められて、擬似光パルス信号35として出力される。従って、この場合も、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるという当初の目的は、非線形光媒質34によって、実現されることが分かる。
更に、非線形光媒質34から出力される擬似光パルス信号35の時間波形の形状を、サブピーク成分をほとんど含まない理想的な形状とするために、光バンドパスフィルタ36によって、フィルタリングを行った。光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングの効果について、図5(C)を参照して説明する。
光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図5(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図5(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
以上説明したように、40 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅よりは幅広であるが、同程度の値である4 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfの主要信号以外のフーリエ成分が、ノイズとしてほとんど含まれていない。従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、40 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
すなわち、40 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
次に、図6(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が40 Gbit/sである場合のシミュレーション結果(その2)を説明する。上述の図5に示したシミュレーション(その1)との相違点は、光増幅器32の増幅率が異なる点である。これによって、以下に説明するように、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅がより狭く圧縮される。また、これに対応して擬似光パルス信号35の周波数スペクトルの幅がより一層広くなるので、それだけ光バンドパスフィルタ36の役割が重要となる。
図6(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は29 dBmであった。図6(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図6(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、上記のシミュレーションと同様に、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
図6(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は10 psである。これは、図5(A)、(B)及び(C)を参照して説明したシミュレーションと同様に、擬似光パルス信号31のビットレートが40 Gbit/sと等しいので、擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅も等しくなっている。
一方、図6(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は3.5 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が10 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が3.5/10である3.5 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。上述のシミュレーションその1の場合に比べて、擬似光パルス信号37の半値幅が4 psに対して3.5 psとより狭くなっているのは、光増幅器32における増幅率が大きいためである。
次に、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図6(C)に示す。図6(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が10 psであることに対応して、横軸上で-125 GHzから125 GHzの範囲にわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-1000 GHzから1000 GHzにわたっており、その幅が広い。
擬似光パルス信号35は、光バンドパスフィルタ36に入力されて擬似光パルス信号37に変換されて出力される。光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図6(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図6(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
以上説明したように、40 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号の時間波形の半値幅に近い、3.5 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfである主要信号以外の、フーリエ成分がノイズとしてほとんど含まれていない。従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、40 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
すなわち、40 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるためには、光パルス信号強度を光増幅器で増幅する必要がある。そしてこの増幅率が大きいほど、半値幅をより一層狭めることが可能となる。この場合、非線形光媒質から出力される光パルス信号をフィルタリングする光バンドパスフィルタの役割が一層重要となる。
以上説明したように、この発明の第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置によれば、ビットレートが40 Gbit/s、80 Gbit/s及び160 Gbit/sであるいずれの光パルス信号であっても、パルス圧縮部20において、光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を、160 Gbit/sの光パルス信号と等しく変換することが可能である。すなわち、パルス圧縮部20に具えられる光増幅器22の増幅率を調整するだけで、ビットレートが40 Gbit/s、80 Gbit/s及び160 Gbit/sであるいずれの光パルス信号を受信しても対処できる。
従って、伝送レートが160 Gbit/sである光パルス信号から40 GHzの基準クロック信号を抽出するのに最適な設計がなされた光変調部50であるEAM及びクロック信号/帰還信号生成部100を共通に利用して、ビットレートが40 Gbit/sあるいは80 Gbit/sである光パルス信号から40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。すなわち、光変調部及びクロック信号/帰還信号生成部を具えたクロック信号抽出装置に光パルス圧縮部を加えることによってマルチレートクロック信号抽出装置が実現する。
<第2実施例>
図7を参照して、この発明の第2実施例であるマルチレートクロック信号抽出装置の構成とその動作原理を説明する。
第2実施例のマルチレートクロック信号抽出装置114は、第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置110のクロック信号/帰還信号生成部100に換えてクロック信号/帰還信号生成部102が用いられる点が相違する点である。クロック信号/帰還信号生成部102には、クロック信号/帰還信号生成部100には具えられていない、ビットレート検出部80が具えられている。
第2実施例のマルチレートクロック信号抽出装置114は、ビットレート検出部80を除いて、第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置と、同一の構造であるので、両者に共通する構成分についての説明は繰り返さない。
ビットレート検出部80は、第1バンドパスフィルタ82、第1パワー測定器84、第2バンドパスフィルタ86、第2パワー測定器88、第3バンドパスフィルタ90及び第3パワー測定器92を具えて構成される。O/E変換器52から出力される第1電気信号53が、パワー分岐器94及び96によってその強度が3分割されて、それぞれ第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90に入力される。
第1バンドパスフィルタ82の通過中心周波数は、オフセット周波数Δfの4逓倍成分である周波数4Δfである。第2バンドパスフィルタ86の通過中心周波数は、オフセット周波数Δfの2逓倍成分である周波数2Δfである。また、第3バンドパスフィルタ90の通過中心周波数は、オフセット周波数に等しいΔfである。そして、第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90から出力されるそれぞれの出力は、それぞれ第1パワー測定器84、第2パワー測定器88及び第3パワー測定器92に入力されて、その強度が測定される。
受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sである場合は、光パルス圧縮部20で光パルスの時間幅を調整されることなく、光変調部50であるEAMに入力され、EAMで160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号成分のうち、(40-Δf) GHzの透過窓を通過できた成分のみが濾し取られて、変調光パルス信号51として出力される。変調光パルス信号51には、そのスペクトル成分である周波数がΔf、2Δf、4Δf等の周波数スペクトル成分が含まれており、光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、このうち周波数が4Δfである周波数スペクトル成分を最も強く含んでいる。同様に光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sであった場合は、変調光パルス信号51に含まれている周波数スペクトル成分のうち、周波数がそれぞれ2Δf及びΔfである周波数スペクトル成分を最も強く含んでいる。
上述したように、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、変調光パルス信号51の周波数スペクトル成分は、80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sであった場合と比較して、周波数が4Δfである成分の強度が最も大きい。従って、O/E変換器52から出力される第1電気信号53のスペクトル成分においても、周波数が4Δfであるスペクトル成分の強度が最も大きい。このため、第1電気信号53が強度分割されて、第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90に入力されると、通過中心周波数が4Δfである第1バンドパスフィルタ82から最も強い信号が出力される。すなわち、第1パワー測定器84において、最も強い信号が検出される。
上述したように、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、O/E変換器52から出力される第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数が4Δfである成分を強く含んでいる。そして、第1電気信号53は、パワー分岐器94を介して第1バンドパスフィルタ82に入力されて第2電気信号55として出力され、パワー分岐器98を介して位相比較器56に入力される。
また、受信した光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sである場合は、第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数が2Δfである成分を最も強く含んでいる。このため、通過中心周波数が2Δfである第2バンドパスフィルタ86から最も強い信号が出力さる。すなわち、第2パワー測定器88において、最も強い信号が検出される。同様に、受信した光パルス信号11の伝送レートが40 Gbit/sである場合は、第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数がΔfである成分を最も強く含んでいる。このため、通過中心周波数がΔfである第3バンドパスフィルタ90から最も強い信号が出力さる。すなわち、第3パワー測定器92において、最も強い信号が検出される。
そして、受信した光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sのいずれの場合にも、第1電気信号53は、パワー分岐器94を介して第1バンドパスフィルタ82に入力されて第2電気信号55として出力され、パワー分岐器98を介して位相比較器56に入力される。すなわち、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sのいずれの場合であっても、クロック信号/帰還信号生成部102の回路を全く変更することなく、クロック信号の抽出が行える。
以上説明したように、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92によって、通過中心周波数が4Δfである第1バンドパスフィルタ82、通過中心周波数が2Δfである第2バンドパスフィルタ86及び通過中心周波数がΔfである第3バンドパスフィルタ90のうち、いずれのバンドパスフィルタから最も強い電気信号が出力されているかを知ることができる。すなわち、ビットレート検出部80において、受信した光パルス信号の伝送レートを検出することができる。
上述のビットレート検出部80において、具体的にビットレート検出ステップを実行するためには、例えば、次のように行う。
まず、ビットレートが160 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ1とする。
光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、ビットレートが160 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分光器12を介して、マルチレートクロック信号抽出装置114に入力し、第1パワー測定器84によって測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP1とする。次にビットレートが80 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力して、第2パワー測定器88によって測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP2とする。更に、ビットレートが40 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力して、第3パワー測定器92によって、測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP3とする。これらの強度信号の値P1、 P2及びP3を初期値として設定する。
次に、ビットレートが80 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ2とする。第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるとは、光増幅器22の増幅率を増大させても、信号強度の増大が見られなくなる信号強度に達したことを意味する。
最後に、ビットレートが40 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ3とする。測定される信号強度が最大となるとの意味は、上述の場合と同様である。
マルチレートクロック信号抽出装置114の初期化作業として、以上の作業を行う。すなわち、上述した強度信号の値P1、 P2及びP3、及び光増幅器22の増幅率γ1、γ2及びγ3を確定させる。
未知のビットレートである光パルス信号を受信した場合に、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、第1パワー測定器84としてP1meas、第2パワー測定器88として、P2meas、第3パワー測定器88として、P3meas、をモニターしながら、第1パワー測定器84から読みとったパワーP1measと初期値P1の比をとり、1に近ければ、ビットレートが160 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。この比が1よりも小さければ第2パワー測定器88から読み取ったパワーP2measと初期値P2との比をとり、この比が1に近ければ、ビットレートが80 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。この比が1よりも小さければ第3パワー測定器92から読み取ったパワーP3measと初期値P3との比をとり、この比が1に近ければ、ビットレートが80 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。
上述のビットレートの判断結果に応じて、光増幅器22の増幅率を160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sの順に、γ1、γ2及びγ3と変化させる。
このようにして、増幅率を決めた後、第1パワー測定器84の読みを、Pinisialとして設定する。その後、常に、第1パワー測定器84の読みとPinisialとを比較して、第1パワー測定器84が示す値に変動があれば、光パルス信号11の伝送レートが変わったものと判断することができる。このように、伝送レートが変った場合には、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、上述のビットレートの判定作業を繰り返す。
以上説明したように、ビットレート検出部80を設けることによって、ビットレート検出ステップで検出された伝送レートに対応して、光パルス信号増幅ステップにおける増幅率を調整することが可能となる。そして、狭光パルス信号21のパルスの時間波形の半値幅を、伝送レートに応じて設定することができ、半値幅設定ステップを実行できる。
すなわち、上述したように、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92をモニターすることによって、受信した光パルス信号からその伝送レートを検出することができる。従って、光パルス信号の受信に先立って、伝送レートを知らされていなくとも、クロック信号の抽出に最適なパルスの時間波形の半値幅に調整するための光増幅器の増幅率を、受信光パルス信号から知ることができる。これによって、受信した光パルス信号の伝送レートに応じて光増幅器22の増幅率を調整するだけで、伝送レートの変更にすばやく対応できる。
以上説明したように、初期設定として、まず、受信する光パルス信号の伝送レートに応じて、それぞれに最適な光増幅器22の増幅率γ1、γ2及びγ3を確定する作業が行われる。そして、増幅率γ1の場合にモニターされる各伝送レートの光パルス信号を入力した場合のモニター値を初期値として設定しておく。次に、ビットレート検出ステップとして、光増幅器22の増幅率をγ1に設定された状態で、実際に光パルス信号11が受信され、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92がモニターされつつ、初期値との比較がなされ、受信された光パルス信号の伝送レートが感知される。この伝送レートの判定結果に応じて、光増幅器22の増幅率をγ1、γ2あるいはγ3と設定する。
また、受信中に光パルス信号の伝送レートが変化した場合に対応するために、常時第1パワー測定器84をモニターし、この測定器が検出している信号強度に変化が現れたら、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、ビットレート検出ステップを実行し、現在受信している光パルス信号の伝送レートを検出して、このの伝送レートに最も適切な値に、光増幅器22の増幅率を設定するという作業が行われる。
これらビットレート検出ステップは、この発明のマルチレートクロック抽出装置114を操作している装置管理者が行っても良いし、上述のビットレート検出ステップを実現するための作業の全部またはその一部をコンピュータによる自動制御によって行っても良い。