JP2007027441A - 強磁性半導体交換結合膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 0℃以上まで強磁性半導体層中の磁気モーメントを維持するために、バイアス層からのバイアス磁界を強磁性半導体層に印加させることで、比較的容易に実現可能な強磁性半導体交換結合膜を提供する。
【解決手段】 半導体中に磁性元素が添加された強磁性半導体層1と、この強磁性半導体層1に隣接して形成され0℃以上のネール温度をもつ反強磁性層2とが積層されてなる強磁性半導体交換結合膜である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、強磁性半導体のキュリー温度を0℃以上に向上させる強磁性半導体交換結合膜に関する。
半導体中に磁性原子を添加した磁性半導体は、メモリなどで利用されている磁性体の磁気的特性とトランジスタやレーザーで利用されている半導体の電気的特性を兼ね備えており、新しい電子素子材料として有望である。
特に、強磁性特性を有する磁性半導体(強磁性半導体)は、磁性元素とキャリア電子間との交換相互作用によりスピンが揃えられることにより強磁性が引き起こされ、フェルミ面近傍の電子が大きくスピン偏極しており、光アイソレーターなどの磁気光学材料及びトンネル磁気抵抗効果素子などの高感度磁気センサー材料など様々な応用が期待されている。
強磁性半導体としては、IV族半導体中にMnなどを添加したGeMnなどや、II−VI族化合物半導体中にMnなどの磁性元素を添加したZn1-xMnxTeなどや、III−V族化合物半導体中にMnなどの磁性元素を添加したGa1-xMnxAsやIn1-xMnxAsなどや、IV−VI族化合物半導体中にMnなどの磁性元素を添加したPb1-x-ySnyMnxTeやGe1-xMnxTeなどが知られている。
しかし、これらの材料の強磁性転移温度は室温以下の低温である。
これまでの材料の強磁性転移温度の例を、図7を参照しながら説明する。図7はGe0.8Mn0.2Teの磁化の磁場依存性を示している。磁化値は、ホール測定により異常ホール効果を検出することにより得られた。異常ホール効果とは、スピンが偏っている強磁性体に電流を流すと上向き、下向きスピン電子が左右に分離して生じる電圧のことである。
100K以下の磁化の磁場依存性において、ヒステリシスがみられ、強磁性となっていることがわかる。120K以上においては、磁化は磁場に対して直線的に変化しており、常磁性となっていることがわかる。そのためGe0.8Mn0.2Teのキュリー温度は110K程度と見積もられる。
強磁性半導体のキュリー温度は、磁性元素を添加する母体半導体、磁性元素の添加量及びキャリア濃度で異なるが、ほとんどの強磁性半導体で低温である。
最近一部材料において、0℃以上で強磁性を示す磁性半導体が報告されているが、その特性の詳細は不明であり、室温で動作する強磁性半導体素子の実現には至っていない。
このため、低温でしか強磁性特性を示さない磁性半導体を民生用電子機器に利用するのは困難であった。強磁性半導体を用いた磁気抵抗素子の応用としては磁気センサや磁気メモリなどが考えられるが、民生用電子機器の動作温度は0℃以上となるため、この特性が発揮できないためである。
このような課題に対して、特許文献1では、「強磁性半導体素子、強磁性半導体のスピン分極方法」という名称で、強磁性転移温度を十分に向上させ、次世代の民生用電子機器として使用することが可能な強磁性半導体素子を開示している。
本特許文献1に開示される発明においては、半導体基板上に強磁性半導体層を室温強磁性体層を順次に積層して強磁性半導体素子を作製することで、強磁性転移温度を向上させている。
また、特許文献2には、「磁気抵抗素子、磁気メモリ及び磁気センサー」という名称でペロブスカイト酸化物を用いた磁気抵抗素子の動作可能温度を高める発明が開示されている。
この特許文献2に開示される発明は、基体(基板)上に、Mnを含むペロブスカイト酸化物から成る第1磁性層とNi,Fe及びCoのうち少なくとも1種の元素を含む強磁性層である第2磁性層が積層された磁気抵抗素子であり、第2磁性層はキュリー温度が第1磁性層のキュリー温度よりも高くなっている。このように構成することで、磁気抵抗素子の動作温度が向上し、実用温度範囲での駆動を可能とするものである。
特開2004−55822号公報 特開2001−320108号公報
しかしながら、上述の従来の技術においては、例えば特許文献1に開示された発明においては、強磁性半導体層と室温強磁性体層を順次に積層して、強磁性半導体層と室温強磁性体層との接合面において、室温強磁性層中のスピン分極電子が強磁性半導体層中へしみ出すこと、および強磁性半導体層中のキャリアが室温強磁性体中の磁性スピンと相互作用することで強磁性半導体層中の磁性スピンが揃うことによって、強磁性的状態を呈することを利用するものであった。これによって、強磁性半導体層のキュリー温度を向上させるものであるが、そのキャリアの拡散距離及び相互作用の強さは不明であるという課題があった。
また、強磁性半導体層上に直接強磁性体層を成長させ、強磁性半導体層中に強磁性体層からのスピン偏極電子を拡散させるためには、様々な問題が考えられる。例えば、室温強磁性金属から強磁性半導体へスピン拡散させる場合、両者のスピン拡散抵抗の違いにより拡散効率が著しく阻害される問題である(例えば、特開2005−019561号公報 参照)。
このために強磁性半導体層と強磁性体層の極界面近傍しかスピン拡散せず、素子応用は困難であると考えられる。
また、特許文献2に開示される発明においては、例えばペロブスカイト酸化物材料は、磁性半導体と比較して、表面が平坦で結晶性のよい高品質な薄膜作製が困難である課題や、高感度な磁気センサーなどを作成するためには、磁性半導体であれば従来のエレクトロニクス材料である半導体との相性がよいものの、ペロブスカイト酸化物材料では磁性半導体に比べて精密に成長させる必要があるという課題があった。またペロブスカイト酸化物材料を用いてトンネル磁気抵抗効果素子を作製した場合、理論的には巨大な磁気抵抗効果が予想されているが、実験的には270Kで1%程度と小さい値である(例えば、日本応用磁気学会誌 vol.24 No.6、 2000年6月1日発行 参照)。これは接合界面等に様々な問題があるためと考えられ、ペロブスカイト酸化物材料を素子化するためには結晶を厳密に成長させる必要があり、その制御は困難である。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、0℃以上まで強磁性半導体層中の磁気モーメントを維持するために、バイアス層からの交換結合磁界を強磁性半導体層に印加させることで、比較的容易に実現可能な強磁性半導体交換結合膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である強磁性半導体交換結合膜は、半導体中に磁性元素が添加された強磁性半導体層と、この強磁性半導体層に隣接して形成され0℃以上のネール温度をもつ反強磁性層とが積層されてなるものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の強磁性半導体交換結合膜において、反強磁性層が、強磁性半導体と同一結晶構造を備えるものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の強磁性半導体交換結合膜において、前記反強磁性層がMnTe、CrS、FeS、NiO、CoO、Cr23、CrSb、FeMn、NiMn、IrMn、PtMn、PdPtMn、RhMnのうちいずれか1を含むものである。
請求項4に記載の発明は、半導体中に磁性元素が添加された強磁性半導体層と、この強磁性半導体層に隣接して形成された非磁性導電層と、この非磁性導電層に隣接して形成された0℃以上のキュリー温度をもつ強磁性層とが積層されてなるものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の強磁性半導体交換結合膜において、半導体がIV−VI族化合物半導体であるものである。
本発明の強磁性半導体交換結合膜においては、強磁性半導体単体のキュリー温度が0℃以下であっても、0℃以上の磁気相転移温度を有する反強磁性体及び強磁性体を積層させることで、強磁性半導体との間に交換相互作用が引き起こされ、強磁性半導体中にスピン偏極電子が生成し、0℃以上においても強磁性半導体の磁気モーメントが維持される。この強磁性半導体交換結合膜を基本構成素子として利用することで、強磁性半導体の磁気抵抗素子などの民生機器への応用が可能となる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図6を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜の構造図である。第1の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜は、強磁性半導体層1及び反強磁性体層2が順次積層される構造である。
強磁性半導体層1の厚さは、1nm〜300nmであることが好ましく、さらに5nm〜50nmであることが望ましい。なぜならば、1nmよりも薄い場合には強磁性半導体層1を形成させることが非常に困難であるという製造上の観点からであり、300nm以上に厚くする場合は、層が厚過ぎて反強磁性層からの交換結合磁界が内部まで浸透しないという機能上の観点からである。また、5nm〜50nmの間であれば、製造上も容易でありしかも交換結合磁界の透過性も適切で強磁性半導体交換結合膜としての効果を十分に発揮することができるためである。
また、反強磁性体層2の厚さは5nm〜300nmであることが好ましく、さらに、10nm〜100nmであることが望ましい。なぜならば、5nmより薄い場合には反強磁性体層2を形成させることが非常に困難であるという製造上の観点からであり、300nm以上に厚くしても交換結合磁界の印加性能にはあまり影響がなく、強磁性半導体交換結合膜の厚さが厚くなるため、これを用いた素子の小型化、薄型化などのためにはこの300nm以下であることが望ましいのである。また、10nm〜100nmの範囲は、製造上も容易でありさらに、性能が劣化することなく小型化、薄型化が効率的に可能となるためである。
強磁性半導体層1は、膜面内方向を磁化容易軸にすることが望ましい。強磁性半導体層の磁化容易軸方向は、使用する基板、基板と強磁性半導体層間の格子不整合及び熱膨張率の変化を緩和するための緩和層、あるいは反強磁性体層などからの応力や膜厚を変えることにより制御できる。
このような強磁性半導体層1を構成する強磁性半導体としては、IV族半導体SiやGe、III-V族化合物半導体GaAsやInAs、II-VI族化合物半導体ZnTeやCdTe、IV−VI族化合物半導体PbTeやGeTe、V−VI化合物半導体Bi2Te3やSb2Te3などに、磁性元素であるSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを添加したものが望ましい。
反強磁性体層2は、強磁性半導体層1の磁気モーメントを交換結合磁界によりピン止めする役割を担い、反強磁性特性の消失温度(ネール温度)以下の温度領域において強磁性半導体の磁気モーメントを維持し、強磁性半導体層1のキュリー温度を向上させるものである。なお、本実施の形態における反強磁性体層や、後述する第2の実施の形態における強磁性体層のように強磁性半導体層に交換相互作用を引き起こす層をバイアス層と呼ぶ。
強磁性半導体交換結合膜から構成される素子の動作温度を0℃以上とさせるため、反強磁性体層2のネール温度は0℃以上となる必要がある。
このような反強磁性体層2を構成する反強磁性体としては、MnTe、CrS、FeS、NiO、CoO、Cr23、CrSb、FeMn、NiMn、IrMn、PtMn、PdPtMn、RhMnなどが望ましい。
このように構成される第1の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜では、強磁性半導体層1と0℃以上のネール温度をもつ反強磁性体層2が隣接しているので、磁気的交換結合により反強磁性体層2から強磁性半導体層1にバイアス磁界が印加され、強磁性半導体層1中の磁気モーメントが固定され、反強磁性体のネール温度以下の温度領域において強磁性半導体にスピン偏極電子が生成されるのである。
顕著な磁気的交換相互作用を引き起こすためには、積層膜の界面の状態が重要である。凹凸が大きい界面では、磁気モーメントが面内方向に一定にならないために、キュリー温度の向上は望めない。このことから、強磁性半導体と反強磁性体はエピタキシャル成長したものが望ましく、高品質な積層膜を製造するためには強磁性半導体と反強磁性体は同一構造を備えることが望ましい。
このような作用によって、強磁性半導体層1のキュリー温度を0℃以上にまで向上させることが可能である。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜について図2を参照しながら説明する。
図2において、本実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜は、強磁性半導体層1の上層に非磁性導電層3が、さらにその上層に強磁性体層4が順次積層されている。
このように構成される強磁性半導体層1の厚さは、1nm〜100nmであることが好ましく、さらに5nm〜50nmであることが望ましい。この理由は第1の実施の形態における強磁性半導体層1の厚さの理由と同様である。
また、強磁性体層4の厚さは、1nm〜100nmであることが好ましく、さらに5nm〜50nmであることが望ましい。その理由は、第1の実施の形態における反強磁性体層2の厚さの理由と同様である。
また、非磁性導電層3の厚さは、0.1nm〜100nmであることが好ましく、さらに1nm〜30nmであることが望ましい。この非磁性導電層3は、強磁性半導体層1と強磁性体層4の間に層間結合を引き起こすためのものであるため、100nm以内の薄さが必要となる一方、0.1nm以下では製造が困難を極めるため、0.1nm〜100nmであることが好ましく、さらに、1nm〜30nmであれば、急峻な界面を形成しながら製造上も容易であるのでさらに望ましいのである。
強磁性半導体層1を構成する強磁性半導体としては、IV族半導体SiやGe、III−V族化合物半導体GaAsやInAs、II−VI族化合物半導体ZnTeやCdTe、IV−VI族化合物半導体PbTeやGeTe、V−VI化合物半導体Bi2Te3やSb2Te3などに、磁性元素であるSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを添加したものが望ましい。
強磁性体層4は、キュリー温度が0℃以上であればよく、例えば、Fe、Co、Ni及びその合金、NiMnSbなどのホイスラー合金、CrO2、Fe34などの酸化物、アモルファス合金など様々な材料を利用することができる。
非磁性導電層3としては、例えばRu、Cu、Cr、Au、Ag、Rh、Irなどの金属及びその合金、Si、Ge、GaAsなどの半導体材料を利用することができる。なお、強磁性体層4と強磁性半導体層1に強い層間結合を引き起こすためには、前述のとおり非磁性中間層に急峻な界面が必要であり、強磁性半導体及び強磁性体との整合性を考慮し、非磁性導電層3などの非磁性中間層を選択することが望ましいのである。
このように構成された本実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜においては、強磁性半導体層1は、強磁性体層4との交換相互作用によって、層間結合が生じ、強磁性体層4のキュリー温度以下において強磁性半導体層1の磁気モーメントが維持され、強磁性半導体層1中にスピン偏極電子が生成されるのである。
この作用によって、強磁性半導体層1のキュリー温度を0℃以上にまで向上させることが可能である。
以下、本実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜の具体例として実施例を説明する。
図3は、本発明に係る強磁性半導体交換結合膜の第1の実施例を示す構造図である。本実施例では、強磁性半導体層1としてGe0.6Mn0.4Teを利用した。このGe0.6Mn0.4Teの強磁性半導体層1は、IV−VI族半導体であるGeTeに磁性元素であるMnを添加したものである。実施例2における強磁性半導体層1も同様である。
クラスタイオンビーム蒸着法により、BaF2(111)単結晶の基板5上に、GeTeの緩和層6を成長させた後、MnTeの反強磁性体層2、Ge0.6Mn0.4Teの強磁性半導体層1を順次成長させた。
緩和層6、反強磁性体層2、強磁性半導体層1の各層の厚さは、それぞれ10nm、20nm、10nmである。
図4に本実施例に係る強磁性半導体交換結合膜のX線回折測定によって得られた回折パターンを、比較のために測定されたBaF2単結晶基板上に作製したGe0.6Mn0.4Te単層膜の回折パターンに加えて示す。図4において、横軸は単位を°(度)とする回折角度を示し、縦軸は単位をcps(count per second)とする回折強度を示している。
角度50°近傍にみられるピークは、BaF2単結晶の基板5の(111)面からの回折である。角度52°近傍にみられるピークはGe0.6Mn0.4Te(111)面からの回折である。角度54°近傍にみられるピークは、MnTe(111)面からの回折である。
本実施例の強磁性半導体交換結合膜と単層膜のGe0.6Mn0.4Teのピーク位置及び形状ともに同程度であり、両試料の強磁性半導体の結晶性はほぼ同じであることが理解される。また、本実施例に係る強磁性半導体交換結合膜では、Ge0.6Mn0.4Teの高度角側にMnTeのピークがあることからGe0.6Mn0.4Teと同じ結晶構造であるNaCl型のMnTeが成長しているものと考えられる。
図5に、室温にて測定した本実施例の強磁性半導体交換結合膜及びGe0.6Mn0.4Te単層膜のホール抵抗率の磁場依存性を示す。図5において、横軸は単位をOe(エルステッド)とする磁場強度であり、縦軸は単位をΩcmとするホール抵抗率である。なお、1エルステッドはSI単位で表現すれば、103/4πA/mとなる。
先に図7を用いて説明した場合と同様に、異常ホール効果を検出することで、試料の磁化特性を評価した。Ge0.6Mn0.4Te単層膜においては、ホール抵抗率が磁場に対して直線的に変化しており、常磁性状態であることが理解される。これは、Ge0.6Mn0.4Te単層膜においては、図7を用いて説明したように強磁性特性が140Kで消失しているためである。
一方、本実施例のGe0.6Mn0.4Te強磁性半導体層1とMnTe反強磁性体層2の強磁性半導体交換結合膜では、明確なヒステリシスがみられる。これは、NiAs構造のMnTeのネール温度が310Kであるところ、同じ6配位のNaCl構造においても同程度のネール温度が期待できることを示していると考えられる。
このため、室温においてもMnTeからGe0.6Mn0.4Teに交換結合磁界が印加され、Ge0.6Mn0.4Te中にスピン偏極電子が生成しているために、本実施例の強磁性半導体交換結合膜のホール抵抗率においては、明確なヒステリシスがみられるものと考えられる。
なお、本実施例において反強磁性体層2はMnTeであり、これは強磁性半導体層1のGe0.6Mn0.4Teと結晶構造が同一となっている。このように強磁性半導体層1と反強磁性体層2が同一構造を形成することで、接触面が化学的に安定であり急峻な界面を作製しやすいという利点があるのである。
次に、本実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜の第2の実施例について図6を参照しながら説明する。
図6において、強磁性半導体層1として実施例1と同様に、Ge0.6Mn0.4Teを利用している。
クラスタイオンビーム蒸着法により、BaF2(111)単結晶の基板5上に、GeTeの緩和層6を成長させた後、Ge0.6Mn0.4Teの強磁性半導体層1、SnTeの非磁性導電層3、Coの強磁性体層4を順次成長させた。
緩和層6、強磁性半導体層1、非磁性導電層3、強磁性体層4の各層の厚さは、それぞれ10nm、10nm、1nm、5nmである。
X線回折測定により、BaF2(111)上に、GeTe(111)面、Ge0.6Mn0.4Te(111)面、SnTe(111)面が成長していることを確認した。Co層は(111)面に強く配向した多結晶体であることを確認した。
第1実施例と同様に、室温における異常ホール効果を検出することで、本実施例の強磁性半導体交換結合膜の磁化状態を検出した。この強磁性半導体交換結合膜においても室温で明確なヒステリシスがみられた。Ge0.6Mn0.4Te単層膜においては、強磁性特性が140K程度で消失することから、室温ではヒステリシスがみられない。
強磁性体層4であるCo層の強磁性成分からの信号によっても異常ホール効果がみられる。しかしながら、本実施例におけるヒステリシスはCo単層薄膜の場合と比較し角型比が小さいことがわかった。これは、強磁性体層4のCo層からの交換相互作用によって、強磁性半導体層1のGe0.6Mn0.4Te層にスピン偏極電子が生成され磁気モーメントが生じ、この磁気モーメントとCo層の磁気モーメントが反強磁性的に結合しているためである。このため、強磁性半導体層1からの非磁性導電層3を介したRKKY相互作用による層間結合により、強磁性半導体層1にスピン偏極電子が生成し、強磁性状態となっているものと考えられる。
なお、本願では実施例1及び実施例2として説明したが、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて様々な実施例の変形例が可能であることは言うまでもなく、これらの変形例についても本発明の範囲から排除するものではない。
以上説明したとおり、本実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜によれば、強磁性半導体層単体のキュリー温度が0℃以下であっても、0℃以上の磁気相転移温度を有する反強磁性体層あるいは強磁性体層を積層させることで、強磁性半導体との間に交換相互作用が引き起こされ、強磁性半導体中にスピン偏極電子が生成し、0℃以上においても強磁性半導体の磁気モーメントを維持することができる。
本発明に係る強磁性半導体交換結合膜を基本構成素子として利用することで、磁気光学材料、磁気抵抗素子、磁気センサー材料などの民生機器・材料として利用できる。
本発明の第1の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜の構造図である。 本発明の第2の実施の形態に係る強磁性半導体交換結合膜の構造図である。 本発明に係る強磁性半導体交換結合膜の第1の実施例を示す構造図である。 実施例1に係る強磁性半導体交換結合膜のX線回折測定によって得られた回折パターンを示すグラフである。 室温にて測定した実施例1の強磁性半導体交換結合膜及びGe0.6Mn0.4Te単層膜のホール抵抗率の磁場依存性を示すグラフである。 本発明に係る強磁性半導体交換結合膜の第2の実施例を示す構造図である。 Ge0.8Mn0.2Te単層膜のホール抵抗率の磁場依存性を示すグラフである。
符号の説明
1…強磁性半導体層 2…反強磁性体層 3…非磁性導電層 4…強磁性体層 5…基板 6…緩和層

Claims (5)

  1. 半導体中に磁性元素が添加された強磁性半導体層と、この強磁性半導体層に隣接して形成され0℃以上のネール温度をもつ反強磁性層とが積層されてなることを特徴とする強磁性半導体交換結合膜。
  2. 前記反強磁性層が、前記強磁性半導体と同一結晶構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の強磁性半導体交換結合膜。
  3. 前記反強磁性層がMnTe、CrS、FeS、NiO、CoO、Cr23、CrSb、FeMn、NiMn、IrMn、PtMn、PdPtMn、RhMnのうちいずれか1を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の強磁性半導体交換結合膜。
  4. 半導体中に磁性元素が添加された強磁性半導体層と、この強磁性半導体層に隣接して形成された非磁性導電層と、この非磁性導電層に隣接して形成された0℃以上のキュリー温度をもつ強磁性層とが積層されてなることを特徴とする強磁性半導体交換結合膜。
  5. 前記半導体がIV−VI族化合物半導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の強磁性半導体交換結合膜。
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