JP2007020890A - 光学的生体情報計測システム及び光情報計測に用いられるカップリング層 - Google Patents

光学的生体情報計測システム及び光情報計測に用いられるカップリング層 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来に比して軽量且つ小型であり、電源を長時間持続させることができる光学式生体情報計測システム等を提供すること。
【解決手段】 被検体に光を照射し当該被検体内を通過した光を受光する照射・受光部と、照射・受光部と被検体との間の光学的接続性を向上させると共に、計測対象又はその近傍の温度を制御する接触部と、を具備する。接触部は、空気、光、人体組織成分等の物質との化学反応による発熱反応又は吸熱、自身の状態変化による発熱反応又は吸熱、自身の含有する成分の化学反応による発熱反応又は吸熱、被検体の物理的状態を変化させることによる当該被検体自身の温度変化、光学的手段によって照射される光のエネルギーを熱エネルギーに変換することによる温度変化のうちの少なくともいずれかによって、計測対象又はその近傍の温度を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光を用いて、血液や細胞液などの体液や生体組織に含有する物質の濃度等の生体内部情報を非侵襲に計測する光学的生体情報計測システム、及び光学的生体情報計測に使用されるカップリング層に関する。
生体情報を観察・診断する手法には様々なものがある。その一つである光を用いた生体情報の計測(光学式生体情報計測)は、健康管理や、疾病の診断や治療、或いは美容を目的とした血液や生体組織細胞中あるいは生体組織細胞外の体液中の物質濃度、或いは生体組織の光物性情報を客観的に計測することができる。例えば、計測に用いる光の波長を制御することにより、グルコース、コレステロール、中性脂肪、アルブミン等の蛋白成分、ヘモグロビン、クレアチニンなどの血中成分濃度、酸素や二酸化炭素などの生体内ガス濃度、及びアルコールや薬物などの濃度、あるいは癌、炎症、皮膚保湿能、動脈硬化等に代表される生体組織の変性に関する情報を非侵襲的に測定することが可能である。
従来の光学式生体情報計測装置としては、例えば、被検体の皮膚表面などに異なる複数の波長の近赤外光を照射し、それらの検出信号を基準信号と測定信号とに分け、これらの値を演算処理することにより被検体内に存在する物質の成分や濃度を測定するものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、一般に、生体組織の光学的特性は個体差間や部位によって異なる。このような光学的特性の差異は、例えば、光路内に血管等がある場合には血液の拍動を原因とする光信号変動が発生する等、測定精度に大きな影響を与える。従来の光学式生体情報計測装置には、このような個体差間や部位によって異なる光学的特性の影響を抑制するために、複数の波長の光を照射し拡散、透過、若しくは反射する光信号を収集し、それらの情報から相互相関などの処理を行うことにより、被検体の組織性状を反映した所望の情報を精度良く抽出する方法がある(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
また、光学式生体情報計測においては、計測結果が、計測部位の温度に依存する場合がある。この問題を解決するものとして、計測部位の温度を制御する方法(例えば特許文献6参照)、計測部位の温度に基づく補正を行う方法(例えば特許文献7参照)、計測部位の温度変化による測定結果の変化によって測定する方法(例えば特許文献8参照)等が知られている。
一方、光学式生体情報計測においては、被検体に光を照射し当該被検体を透過等した光を検出するために、光ファイバ等の光照射/検出手段を被検体表面に接触させた状態で使用する。このとき、光ファイバと被検体の屈折率差による光伝搬損失を抑制し、接触性を向上させるため、当該被検体表面にカップリング材が塗布される。この様なカップリング材を用いて被測定部位の血流量を制御する方法として、皮膚表面に生理学的添加剤を塗布する方法がある(例えば特許文献9参照)。また、カップリング材を用いて被測定部位の熱伝導性を高める方法として、皮膚表面にシリコンオイル等の熱伝導性が高い媒介物質を塗布する方法がある(例えば特許文献10参照)。
特公平3−47099号 特公平5−58735号 特開平10−325794号 特開平11−506207号 米国特許公報5747806号 国際出願第WO99/59464号 特開平11−506207号 特表2002−515277号 特表2002−527180号 特表2003−524467号
従来の光学的生体情報計測装置においては、例えば次のような問題がある。
すなわち、計測部位の温度制御を行うため、光計測機構に加えて、温度制御素子及び制御回路からなる温度制御機構を必要とする。従って、装置全体の重量及びサイズは比較的大きなものとなり、使い勝手や携帯性に欠ける場合がある。また、温度制御のための電力を必要とするため、電源持続時間が十分でない場合がある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来に比して軽量且つ小型であり、電源を長時間持続させることができる光学式生体情報計測システム、及び当該システムに用いられるカップリング層を提供することを目的としている。
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
本発明の第1の視点は、被検体内を通過した光に基づいて前記被検体に関する情報を取得する光学式生体情報計測システムにおいて、前記被検体に対して光を照射し、当該被検体内を通過した光を受光する光学的手段と、前記被検体に接触して設けられ、前記光学的手段と前記被検体との間の光学的接続性を向上させると共に、照射される前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を制御する接触手段と、を具備することを特徴とする光学的生体情報計測システムである。
本発明の第2の視点は、光学的手段によって受光される被検体内を通過した光に基づいて、当該被検体に関する情報を取得する光学式生体情報計測システムにおいて用いられるカップリング層であって、前記被検体に接触して設けられ、前記光学的手段と前記被検体との間の光学的接続性を向上させると共に、照射される前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を制御すること、を特徴とするカップリング層である。
以上本発明によれば、従来に比して軽量且つ小型であり、電源を長時間持続させることができる光学式生体情報計測システム、及び当該システムに用いられるカップリング層を実現することができる。
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る光学的生体情報計測システム1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本光学的生体情報計測システム1は、光プローブ11、合波部15、光源部17、光検出部19、信号増幅部21、データ収集部23、信号処理部25、制御部27、データ記憶部31、電源部33、操作部35、表示部37を具備している。
光プローブ11は、被検体Pに接触して使用され、被検体に対して計測用の光を照射し、当該被検体内を拡散、透過、反射等した光を検出する。当該光プローブ11は、接触部12、照射・受光部13、温度センサ29を有している。
接触部12は、当該光学的生体情報計測システム1を用いた生体情報計測において、被検体Pに当接されるカップリング層である。この接触部12は、照射・受光部13と被検体P表面との屈折率の違いに起因する光照射効率、光検出効率を向上させるため(光学的接続性を取るため)、及び光プローブ11と被検体Pとの間に空気を介在させないための機能を有する。また、接触部12は、生体情報計測において、照射される光が通過する被検体内の領域の少なくとも一部(例えば、計測対象部位及びその近傍)が所定の温度となるような温度制御機能を有する。さらに、必要に応じて、光の集光性を向上させるための光学的レンズの機能を持つ。この接触部12の具体的構成については、後で詳しく説明する。
照射・受光部13は、光源部17より発生された光を被検体P内に照射するための光路を形成する照射部、及び被検体P内を拡散、透過、反射した光(生体通過光)を受光するための受光部を有している。これら照射部、受光部には、例えば光ファイバ等を採用することができる。
温度センサ29は、計測部位及びその近傍の温度を検出するセンサである。温度センサ29が検出する温度は、データ記憶部31に逐次送り出され記憶される。なお、本実施形態においては、この温度センサ29は、光プローブ11内に設ける構成とした。しかしながら、これに拘泥されず、例えば光プローブ11と別体とすることで、当該光プローブ11を小型化する構成としてもよい。
合波部15は、光源部17より発生した複数の単色光あるいはそれに近い光を同一光軸に重ね合わせる。
光源部17は、所望の一つもしくは複数の単色光あるいはそれに近い光を発生させる。この光光源部17としては、例えば半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等の小型の発光素子、タングステン・ハロゲンランプ等の白色光源から発せられる光を干渉フィルタ等の分光手段で所定の波長に分光するもの等を採用することができる。ここで、波長帯域が380〜770 nm程度の電磁波を可視光、770〜1500 nm程度の電磁波を近赤外光、1500〜3000 nm程度の電磁を中赤外光、及び3000〜25000 nm程度の電磁波を遠赤外光とする。
光検出部19は、所望の一箇所もしくは複数の被検体部位からの生体通過光に起因する光信号を同時に検出し電気信号に変換する。この検出部19には、フォトダイオード(PD)や光ファイバ等を採用することができる。
信号増幅部21は、光検出部29によって検出された信号を所望の振幅に増幅する。これは、被検体Pを透過又は反射して検出される光信号の強度は、被検体内に存在する所定の物質の存在比率や濃度に依存し、解析対象とする光信号を常に一定の強度(振幅)にするためである。
データ収集部23は、信号増幅部21において増幅された光信号をA/D変換し、デジタル信号を収集する。
信号処理部25は、データ収集部23において収集されたデジタル信号に対して所定の信号処理を実行し、被検体内に存在する物質の成分や濃度、或いは被検体組織の変性や変化に関連する光の吸収率、拡散係数その他の光物性情報を算出する。例えば、信号処理部25は、被検体内に存在する物質の成分や濃度、光物性情報等と受光した光に関する情報とを、予め当該被検者や所望の被検者群において本システムと他の標準的な手法により得られる測定データから統計的解析方法などを用いて両方の測定データの関係を数学モデル化しておき、この数学モデルに従って、被検体内の所定物質の濃度等を算出する。
なお、信号処理部25において実行する算出方法は、上記例に拘泥されない。例えば、特公平6−103257号公報、米国特許第5551422号公報、国際出願第WO99/59464号公報等に記載されている、照射点と受光点の距離を変えることによって実質的に光拡散光路長が異なる複数の測定データから物質の吸光度を算出する空間分解拡散反射法、特開平10−325794号公報、特開平11−506207号公報、米国特許第5747806号公報等に記載されている、複数の波長の光を利用する方法等を用いることもできる。更には、特表2002−515277号公報に記載されている、被測定部位の温度変化による、光の拡散・透過・反射の変化によって、測定する方法を採用するようにしてもよい。
制御部27は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として各構成要素を制御すると共に、当該光学的生体情報計測システム1を静的又は動的に制御する。
データ記憶部31は、温度センサ29から受け取った温度情報、信号処理部25において実行される算出処理に関するプログラム、データ収集部23によって収集されたデータ等を記憶する。
電源部33は、表示部37、制御部27、光源部17、信号増幅部21等へ電力を供給する。
操作部35は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむためスイッチ、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネル等を有している。
表示部37は、制御部27等から受け取った生体情報等を、所定の形態にて表示する。表示部37の情報表示方法は、画面への表示などによる視覚情報伝達手段の他にも、音声などによる聴覚情報伝達手段、あるいは振動などによる触覚情報伝達手段などを用いることもできる。この様な手段を採用することにより、被検体内に存在する物質の成分や濃度、或いは被検体組織の変性に関する情報を、視覚的、聴覚的、触覚的な手法、或いはこれらの組み合わせからなる手法によって操作者に通知することができる。
(接触部)
次に、光プローブ11に設けられる接触部12について説明する。
図2は、本実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する光プローブ11の断面図の一例を示している。また、図3は、本実施形態に係る光プローブ11を光照射面側(又は光検出面側)から見た構成の一例を示した図である。
図2、図3に示すように、接触部12は、光整合層12Aと温度制御層12Bとを具備しており、それぞれの層は後述する構成・機能を有する。また、本光プローブ11では、照射・受光部13を構成する照射用光ファイバ13A及び受光用光ファイバ13Bのそれぞれを囲む様に温度センサ29が設けられている。なお、本実施形態においては、接触部12は光整合層12Aと温度制御層12Bとの二層から構成される場合(必ずしも積層構造でなくてもよい。)を例とする。しかしながら、これに拘泥されず、光整合層12Aの機能及び温度制御層12Bの機能の双方を有する一層構造としてもよい。また、光整合層12Aと温度制御層12Bとは、いずれが被検体側に設けられていてもよい。
光整合層12Aは、照射・受光部13と被検体Pとの間の光学的接続性を取るための層であり、例えば以下の構成及び機能を有する。
・当該光学式生体情報計測システム1で使用する波長域において十分な透過率を有していること。望ましくは400〜2500 nmの波長の光を90%以上透過すること。
(光学的特性)
・当該光学式生体情報計測システム1で使用する波長域において、散乱が少なく光の直進性に優れていること。
・当該光学式生体情報計測システム1で使用する波長域において、屈折率が当該システムの照射・受光部13に使用する光伝送材と被測定部位の中間的な値を有すること(例えば、光伝送材として光ファイバを用いる場合、400〜2500 nmの波長域において好適な光ファイバの屈折率は1.5若しくはそれ以上の値を有している。)。そして、被検体Pの測定部位として好適な皮膚表面の屈折率は1.38〜1.4程度である。この場合、光整合層12Aの屈折率は、望ましくは400〜2500 nmの波長域において1.38から1.50である。
(生体適合性)
・少なくとも10℃〜45℃の温度において、少なくとも400〜2500 nmの波長の光を照射しても化学的に安定であり、被検体Pに直接接触しても安全無害を使用する、若しくは直接接触しても安全無害な加工を施してあること。
(カップラント機能)
・柔軟性に優れ、当該光学式生体情報計測システム1の照射・受光部13や被検体Pの測定部位との接触性が良いこと(被検体Pとの間に空気を介在させないための機能)。
なお、光整合層12Aの材料としては、シリコンゴム、若しくはシリコンゲル等のシリコン樹脂材料を用いることができ、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS: Polydimethylsiloxane)がある。シリコンゴムは10mW/cm/℃以上の熱伝導率を有するものもある。ポリジメチルシロキサンは透明性、安全性、柔軟性に優れ、1.45程度の屈折率を得ることができる。あるいは、コンタクトレンズの材料として用いられているフッ素化合物、ポリハイドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリルゴム等を用いることもできる。更には、透明性の高いポリメチルメタクリレート(PMMA: Polymethyl Methacrylate)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PA:)樹脂等を用いることも可能である。
温度制御層12Bは、計測部位又はその近傍を光学的生体情報計測に好適な温度に制御するための層である。温度制御は、当該温度制御層12Bに混合された成分と当該混合された成分、空気成分、人体組織成分等との化学反応、温度制御層12B自身の状態変化(例えば凝固熱や気化熱を発生する変化)による発熱・吸熱反応、温度制御層12Bが被検体の物理的状態を変化させる(例えば、血管拡張による血行促進等)ことによる当該被検体自身の温度変化、炭化ジルコニウム等を用いた光エネルギーから熱エネルギーへのエネルギー変換等によって行なわれる。そのため、温度制御層12Bは、例えば以下の構成及び機能を有する。
(温度制御)
・生理反応若しくは化学反応により10℃〜45℃の温度制御が可能な媒介物質であること。
・温度制御層12Bとしては、液状またはシート状の形式をとり、以下のような特性を満足する材料を用いる。
(光学的特性)
温度制御層12Bが光整合層12Aと一体若しくはその一部を構成し、本温度制御総12Bが照射光又は検出光の光路となる場合には、光整合層12Aの特性を兼ね備える必要がある。
(生体適合性)
・少なくとも10℃〜45℃の温度において、少なくとも400〜2500 nmの波長の光を照射しても化学的に安定であり、被検体に直接接触しても安全無害な材料を使用する、若しくは直接接触しても安全無害な加工を施してあること。
・柔軟性に優れ、光学式生体情報計測システムの光照射部や被測定部位との接触性が良いこと。
また、温度制御層12Bの材料としては、次の様な材料を用いることができる。
・金属の酸化による燃焼熱や水酸化ナトリウムの溶解熱や酸性物質と塩基性物質との中和熱等の化学反応材料(例として、温度制御層12Bに水酸化Naを含有させ、試験時に光透過層の水分と接触させて、発熱させ使用する)。
・酢酸ナトリウム水溶液の凝凝固熱やアルコールの気化熱やアクリレート系繊維による液化熱等を用いた状態変化材料。
・炭化ジルコニウム等の光エネルギーを熱エネルギーに変換するエネルギー変換材料。
・カプサイシン、メンソール、ニコチン酸ベンジル、ミノキシジル、ビタミンE等の被検体の血行等を変化させることにより、皮膚表面温度を制御する材料。
また、温度制御層12Bの温度制御に用いる材料が可逆反応可能な物質である場合、温度制御を行った後に洗浄、加熱、乾燥等の所定の処理を行い、再び利用可能な構成としてもよい。
光整合層12Aと温度制御層12Bとからなる接触部12全体としては、例えば図1に示した光プローブ11に備え付けとする形状の他、光プローブ11とは別体しシート状とする形状を採用してもよい。当該シート形状を採用する場合には、計測に先立ってシートから剥がして当該光学式生体情報計測システムの照射・検出部13または被検体の測定部位に貼付される。計測後は、速やかに剥がすことができることが望ましい。
図4、図5は、接触部12を被検体Pの表面に貼付するシート状とした場合の使用例を示した図である。接触部12をシート状とすれば、図4に示すような被検体Pの左腕内側の肘近傍や、図5に示すような指先に貼付して使用することも可能である。
シート状の接触部12を採用する場合には、照射光が透過する領域を好適な温度にするため、直径1〜3cm程度の平面形状等で、厚さが0.3mm以下とすることができる。接触部12の厚さは照射光の照射特性や検出光の受光特性に影響を与えるので、材料特性に応じて慎重に選択する必要がある。例えば、厚過ぎる場合には、照射光の散乱や照射ビームの開口特性に起因した照射スポットの拡大、或いは透過性の低下による照射強度の低下を招く恐れがある。また、接触部12から被検体Pの測定部位への熱の伝搬時間に遅延が生じる恐れがある。更には、検出光の散乱や検出光学系の開口特性に起因した検出スポットの拡大や迷光の増加を招く恐れがある。一方、薄すぎる場合には、接触部12の温度制御成分量が不足し、十分な温度制御を行えない恐れがある。また、機械的な強度が低下し取り扱いが面倒になる。
接触部12は、上述した構成及び機能を持つものであれば、特にその他の限定はない。従って、例えば、図6〜図8の様な構成(変形例)を採用することもできる。すなわち、図6に示すように、光整合層12Aは少なくとも照射・受光部13の照射面及び受光面を被覆する平面形状とし、温度制御層12Bは光整合層12Aの外周を囲むドーナツ形状としてもよい。また、図7に示すように、光整合層12Aと温度制御層12Bとを積層構造とし、且つ光整合層12Aは温度制御層12Bよりも広い面積とする構成としてもよい。さらに、図8に示すように、光整合層12Aを少なくとも照射・受光部13の照射面及び受光面を被覆する第1層と被検体Pの表面に接触される第2層との二層構造とし、且つ温度制御層12Bは光整合層12Aの第1層の外周を囲むドーナツ形状としてもよい。
(温度制御に基づく光照射間又は光検出の制御機能)
次に、本光学式生体情報計測システム1が有する温度制御に基づく光照射間又は光検出の制御機能について説明する。この機能は、上記接触部12によって温度制御される計測部位の温度を温度センサ29によって測定し、測定された温度に基づいて測定のタイミングを制御するものである。
すなわち、測定された温度は、データ記憶部31に自動的に記録される、温度センサ29によって測定される計測部位(又はその近傍)の温度の経時的変化を観察し、当該測定温度が計測に好適な温度(計測温度)になったタイミングで測定をを開始するように、データ収集部23を制御する。なお、計測温度は、計測対象によって異なる。制御部27は、データ記憶部31に予め記憶されている計測対象毎の計測温度に従って、測定のタイミングを制御する。なお、本装置の場合、測定時においては、照射・受光部13から被検体に向けて常時光が照射された状態となっているものとする。
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本光学式生体情報計測システムによれば、計測部位又はその近傍の温度を、光整合層の機能を有し照射・受光部と被検体との間に設けられる接触部自体の発熱等によって実行する。従って、計測部位の温度を制御するための装置をシステムに持たせる必要がなく、構成を簡素化することができる。その結果、システム全体を小型化・軽量化することができ、その利便性、携帯性を向上させることができる。
また、計測部位の温度を制御するための装置をシステムに持たせる必要がないため、省電力化を実現することができる。その結果、連続使用時間を長くすることができ、装置としての利便性をさらに向上させることができる。
また、本光学的生体情報計測システムの被検体との接触部は、柔軟性のあるシート状にすることも可能である。この様な構成により、曲面や凹凸のある部位であっても接触部を貼付することができ、好適な光計測を実現することができる。
また、本光学的生体情報計測システムの被検体との接触部は、シート状の使い捨てタイプ、シート状の再利用タイプのいずれにすることも可能である。シート状の使い捨てタイプを採用した場合には、接触部が破損等した場合であっても問題なく対応することができる。一方、シート状の再利用タイプを採用した場合には、運用コストを低減することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。接触部12によって被検体Pを所定の温度にできない場合、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システムは、第1実施形態において説明した構成に加えて、さらにシステム本体側からの信号により接触層と介して被検体Pの温度制御を積極的に行うものである。
図9は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1のブロック構成図を示している。図1の例と比較した場合、本実施形態に係る光学的生体情報計測システム1は、温度制御部40、及び温度制御素子41をさらに具備する点、さらに当該温度制御部40、温度制御素子41を用いた温度制御を行う点で異なる。
温度制御部40は、制御部27からの制御に従って温度制御素子41の温度を調整する。
温度制御素子41は、接触部12の温度制御層12Bに接続され、温度制御素子41からの制御に従って温度制御層12Bを介して被検体Pを所定の温度に調整する。
データ記憶部31は、計測対象毎の計測部位温度パターンを記憶する。
制御部27は、データ記憶部31に記憶された計測対象毎の計測部位温度パターンに基づいて、温度制御素子41を制御する。
(接触部)
図10は、本実施形態に係る光プローブ11及び接触部12の断面図の一例を示している。同図に示すように、当該光プローブ11においては、温度制御層12Bを介して被検体Pの温度を制御するため(すなわち、温度を上昇又は下降させるため)の温度制御素子41が設けられている。また、接触部12には、第1実施形態において説明した構成と同等の成分が含まれている。従って、接触部12によって被検体Pの温度を好適な温度に近づける。
本実施形態に係る接触部12は、上述した構成及び機能を持つものであれば、特にその他の限定はない。従って、例えば、図11〜図13の様な構成(変形例)を採用することもできる。すなわち、図11に示すように、光整合層12Aは少なくとも照射・受光部13の照射面及び受光面を被覆する平面形状とし、温度制御層12Bは光整合層12Aの外周を囲むドーナツ形状としてもよい。また、図12に示すように、光整合層12Aと温度制御層12Bとを積層構造とし、且つ光整合層12Aは温度制御層12Bよりも広い面積とする構成としてもよい。さらに、図13に示すように、光整合層12Aを少なくとも照射・受光部13の照射面及び受光面を被覆する第1層と被検体Pの表面に接触される第2層との二層構造とし、且つ温度制御層12Bは光整合層12Aの第1層の外周を囲むドーナツ形状としてもよい。なお、いずれの変形例においても、温度センサ29及び温度制御素子41によって、被検体Pを好適な温度に制御する。 以上述べた本光学的生態情報計測システムによれば、温度制御層12B自体の温度上昇又は下降に加えて、温度制御素子41によるシステム本体側からの積極的な温度制御が実行される。従って、第1実施形態にて述べた効果に加えて、さらに効率的な計測部位の温度制御が可能となる。
また、本光学的生態情報計測システムは、第1実施形態にて述べた温度制御層12B自体の発熱による温度制御を併用する。従って、従来に比して温度制御機構を小さくすることができ、その結果、システム全体を小型化・軽量化し、その利便性、携帯性を向上させることができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
(1)上記各実施形態においては、光整合層12Aと温度制御層12Bとは、接触部12を構成する一体構造とした。これに対し、光整合層12A及び温度制御層12Bをそれぞれ別体とし、シート状として貼付可能なようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、光整合層12A及び温度制御層12Bの双方ともシート状等の有形な構成であるとした。これに対し、光整合層12A及び温度制御層12Bの少なくとも一方を液状とし、被検体Pの表面、光照射面。受光面等に塗布することで同様の機能、効果を実現する構成としてもよい。例えば、図7、図8、図12の例において、光整合層12Aのみを液状とするようにしてもよい。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以上本発明によれば、従来に比して軽量且つ小型であり、電源を長時間持続させることができる光学式生体情報計測システム、及び当該システムに用いられるカップリング層を実現することができる。
図1は、第1の本実施形態に係る光学的生体情報計測システム1のブロック構成図を示している。 図2は、第1実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する光プローブ11の断面図の一例を示している。 図3は、第1実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する光プローブ11を光照射面側(又は光検出面側)から見た構成の一例を示した図である。 図4は、接触部12を被検体Pの表面に貼付するシート状とした場合の使用例を示した図である。 図5は、接触部12を被検体Pの表面に貼付するシート状とした場合の使用例を示した図である。 図6は、第1実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。 図7は、第1実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。 図8は、第1実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。 図9は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1のブロック構成図を示している。 図10は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する「光プローブ11の断面図の一例を示している。 図11は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。 図12は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。 図13は、第2実施形態に係る光学的生体情報計測システム1が有する接触部12の他の構成例を示した図である。
符号の説明
11…光プローブ、12…接触部、12A…光整合層、12B…温度制御層、13…照射・受光部、13A…照射用光ファイバ、13B…受光用光ファイバ、15…合波部、17…光源部、19…光検出部、21…信号増幅部、23…データ収集部、25…信号処理部、27…制御部、29…温度センサ、31…データ記憶部、33…電源部、35…操作部、37…表示部、40…温度制御部、41…温度制御素子

Claims (29)

  1. 被検体内を通過した光に基づいて前記被検体に関する情報を取得する光学式生体情報計測システムにおいて、
    前記被検体に対して光を照射し、当該被検体内を通過した光を受光する光学的手段と、
    前記被検体に接触して設けられ、前記光学的手段と前記被検体との間の光学的接続性を向上させると共に、照射される前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を制御する接触手段と、
    を具備することを特徴とする光学的生体情報計測システム。
  2. 前記接触手段は、前記光学的接続性を向上させるための光整合層と、前記温度制御を実行する温度制御層との少なくとも二層を有することを特徴とする請求項1記載の光学的生体情報計測システム。
  3. 前記接触手段は、前記光学的接続性を向上させるための機能と、前記温度制御機能とを有する一層構造であることを特徴とする請求項1記載の光学的生体情報計測システム。
  4. 前記接触手段は、所定の物質との化学反応による発熱反応又は吸熱によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  5. 前記所定の物質は、空気、光、電磁波、人体組織成分の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4記載の光学的生体情報計測システム。
  6. 前記接触手段は、自身の状態変化による発熱反応又は吸熱によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  7. 前記接触手段は、被検体の物理的状態を変化させることによる当該被検体自身の温度変化によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  8. 前記接触手段は、前記光学的手段によって照射される光のエネルギーを熱エネルギーに変換することで、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  9. 前記接触手段の温度を上昇又は下降させるための温度制御素子をさらに具備し、
    前記接触手段は、前記制御信号によって発熱反応又は吸熱反応を誘発する物質を有し、制御信号に基づいて前記温度制御を行うこと、
    を特徴とする請求項4乃至8のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  10. 前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を測定する温度測定手段と、
    前記測定された温度に基づいて、前記温度制御素子を制御する制御手段と、
    をさらに具備することを特徴とする請求項9記載の光学的生体情報計測システム。
  11. 前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を測定する温度測定手段と、
    測定された温度に基づいて、測定開始のタイミング、測定終了のタイミングのうちの少なくとも一方を制御する制御手段と、
    をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  12. 前記接触手段は、少なくとも400乃至2500nmの波長の光を90%以上透過することを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  13. 前記接触手段は、少なくとも400乃至2500nmの波長の光における屈折率が1.38乃至1.50の値であることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  14. 前記接触手段は、
    熱伝導性に優れ、
    少なくとも10℃乃至45℃の温度において、少なくとも400乃至2500 nmの波長の光を照射しても化学的に安定であり、
    前記被検体に直接接触しても安全無害な材料であること、
    を特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  15. 前記接触手段は、
    柔軟性に優れ、
    前記被検体表面及び前記光学的手段との接触性が良い材料であること、
    を特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  16. 前記接触手段は、シリコンゴム、シリコンゲルその他のシリコン樹脂材料であることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  17. 前記接触手段は、ポリジメチルシロキサン(PDMS: Polydimethylsiloxane)を成分とすることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  18. 前記接触手段は、前記被検体との接触面において、10℃乃至45℃までの範囲に属する熱反応により、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  19. 接触手段は、前記光学的手段の光照射面及び受光面の少なくとも一方、又は前記被検体表面に貼付するシート形状を有することを特徴とする請求項1乃至18のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  20. 接触手段は、前記光学的手段の光照射面及び受光面の少なくとも一方、又は前記被検体表面に塗布する液体状であることを特徴とする請求項1乃至18のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
  21. 光学的手段によって受光される被検体内を通過した光に基づいて、当該被検体に関する情報を取得する光学式生体情報計測システムにおいて用いられるカップリング層であって、
    前記被検体に接触して設けられ、前記光学的手段と前記被検体との間の光学的接続性を向上させると共に、照射される前記光が通過する前記被検体内の領域の少なくとも一部の温度を制御すること、
    を特徴とするカップリング層。
  22. 前記光学的接続性を向上させるための光整合層と、
    前記温度制御を実行する温度制御層と、
    を具備することを特徴とする請求項21記載のカップリング層。
  23. 前記光学的接続性を向上させるための機能と、前記温度制御機能とを有する一層構造であることを特徴とする請求項21記載のカップリング層。
  24. 所定の物質との化学反応による発熱反応又は吸熱によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項21乃至23のうちいずれか一項記載のカップリング層。
  25. 前記所定の物質は、空気、光、電磁波、人体組織成分の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項24記載のカップリング層。
  26. 自身の状態変化による発熱反応又は吸熱によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項21乃至23のうちいずれか一項記載のカップリング層。
  27. 被検体の物理的状態を変化させることによる当該被検体自身の温度変化によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項21乃至23のうちいずれか一項記載のカップリング層。
  28. 前記光学的手段によって照射される光のエネルギーを熱エネルギーに変換することで、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項21乃至23のうちいずれか一項記載のカップリング層。
  29. 前記接触手段は、自身の含有する成分の化学反応による発熱反応又は吸熱反応によって、前記温度制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学的生体情報計測システム。
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