JP2007012144A - ヘッド/スライダ観測装置及び観測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ヘッド/スライダの挙動を観測するヘッド/スライダ観測装置を提供する。
【解決手段】
試験ディスク107は赤外線を透過する材料で製作されている。ヘッド・アーム101は、試験ディスクの一方の面にヘッド/スライダの空気軸受面が対向するようにヘッド・ジンバル・アセンブリ41を支持する。受光部は空気軸受面から放射され試験ディスクの他方の面を通過した赤外線エネルギーを受光して電気信号に変換する。画像制御部111は受光部から受け取った電気信号を処理して表示データを生成する。画像表示部は、画像制御部が生成した表示データを表示する。この結果、ABSと試験ディスクとの干渉を二次元の温度分布として可視化することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】
試験ディスク107は赤外線を透過する材料で製作されている。ヘッド・アーム101は、試験ディスクの一方の面にヘッド/スライダの空気軸受面が対向するようにヘッド・ジンバル・アセンブリ41を支持する。受光部は空気軸受面から放射され試験ディスクの他方の面を通過した赤外線エネルギーを受光して電気信号に変換する。画像制御部111は受光部から受け取った電気信号を処理して表示データを生成する。画像表示部は、画像制御部が生成した表示データを表示する。この結果、ABSと試験ディスクとの干渉を二次元の温度分布として可視化することができる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、磁気ディスク装置や光磁気ディスク装置などの回転円板形記憶装置に使用するヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する技術に関する。
磁気ディスク装置では、磁気ディスクの表面にヘッド/スライダの空気軸受面(以下、ABSという。)が対向するように配置される。ABSは回転する磁気ディスクの表面に発生した気流から浮力を受けて表面から僅かの間隔を保って浮上する。近年、記録密度の向上に伴ってヘッド/スライダの浮上量は一層小さくなり、ABSと磁気ディスクの接触を防ぐためにヘッド/スライダに対する安定した浮上性能が強く要求されている。
ヘッド/スライダの浮上性能は、負圧および正圧を発生させて磁気ディスク上のいずれの位置でも安定した浮上性能を発揮させるためにABSに設けたテクスチャの形状、ヘッド/スライダがトラックの追従動作をするように形成されたヘッド・ジンバル・アセンブリ(以下、HGAという。)の性能、磁気ディスク内部の気流の状態、および磁気ディスク内部で発生する振動などの要因に依存する。周速の速い最外周トラック近辺の位置、周速の遅い最内周トラック近辺の位置、あるいはエラーが発生しやすい特定のトラック位置などにおいてヘッド/スライダが磁気ディスクと接触していないか、接触するとしたときにABSのどの位置で接触するか、接触時にはABSがどのような挙動を示すかなどを解析することは高性能の磁気ディスク装置を設計する上で重要である。さらに、ヘッド/スライダが特定の位置に停止している状態だけでなく、ランプからロードした直後、シーク動作中、またはアクチュエータ・アセンブリがクラッシュ・ストップに衝突したときなどのヘッド/スライダのダイナミックな挙動を観測することも重要である。
従来ヘッド/スライダと磁気ディスクの接触を観測するときには、アコースティック・エミッション(AE)を検出するAEセンサをHGAに取り付けて行っていた。AEセンサは、ヘッド/スライダが磁気ディスクに接触してスライダまたは磁気ディスク表面の固体が変形あるいは破壊するときに発生する音が放出する弾性波を検出する。AEセンサを使用するとヘッド/スライダが磁気ディスクに接触したことは検出できるが、ABSのどの部位が接触したのか、さらには接触前後のヘッド/スライダの挙動までを知ることはできないため、その結果を磁気ディスク装置の設計に十分に反映させることができなかった。
ヘッド/スライダと磁気ディスクが接触するときは、ABSの接触部の浮上量がゼロまで低下していることになるので、ABSの全体に渡って浮上量を測定して接触状況を観測することも考えられる。特許文献1は、回転する透明なテスト・ディスク上でヘッドを浮上させ、スライダの複数の点に光を照射して干渉光を発生させることによりヘッドの挙動を解析する装置を開示する。特許文献2は、ビデオ・テープ・レコーダの回転ヘッドと磁気テープの摩擦熱を媒介とした現象を解明する赤外線放射温度計を開示する。
特開平7−312049号公報
特開平11−183258号公報
ヘッドの浮上量を測定する方法の多くは特許文献1にあるように、透明なディスクを実際の磁気ディスクに見立ててその上でヘッド/スライダを浮上させ、透明ディスクを介してABSに光を照射したときの透明ディスクとABS面からの反射光の干渉を観察するという光学的測定方法であった。しかし、このような光学的な方法で浮上量を測定する際には、ABSに対する入射光に対して反射光の位相が遅れるので浮上量の測定結果に誤差がでるため、ABSにおける浮上量の測定部位に対して装置を補正をしておく必要がある。
ところが、ABSは所定の面積を有しており、さらに複雑なレールやパッドが形成されているので、接触部位をあらかじめ想定して装置を補正しておくことは困難である。また、ABSとディスクが接触したあとは、ヘッド/スライダが不安定な挙動をして浮上量の測定部位が変化するため浮上量をダイナミックに検出することは困難でもある。さらに、最初にヘッド/スライダがディスクに接触したあとにABSの様々な部位が2回目、3回目と接触してゆくこともある。したがって、光学的な浮上量測定装置では、動的に変化するABSとディスクの接触状態を観察することは困難である。
ヘッド/スライダやHGAの設計をする立場からは、ABSと磁気ディスクの接触という現象をABSと磁気ディスクが固体として影響し合う現象として捉えた方が的確である。各部位の浮上量を測定して浮上量がゼロになったとき固体間の相互影響が発生したとみなして観測することは理論的には可能かもしれないが、ABSの各部位の浮上量は常に変化しており、ABSの領域全体に渡って高い精度で固体間の相互影響に相当する浮上量を測定することは難しい。この点で、AEセンサを用いる方法は固体間の相互影響を検出することに適応しているといえる。本明細書においては、固体間の相互影響という現象を観察することに対応させて、接触という用語に代えて干渉という用語を使用することにする。
接触は干渉に含まれる概念であるが、干渉は必ずしも物理的な接触に至らない場合も含むものとして使用する。たとえば、ABSがディスク表面に限りなく近づいたときに、物理的な接触をする直前にもヘッド/スライダがディスクから影響を受けて、温度が上昇したり、浮上時の姿勢が変化したりすると考えられるが、干渉はこのような現象も含んでいる。
特許文献2で開示するビデオ・テープ・レコーダにおける回転ヘッドの摩擦熱を測定する技術は、温度を接触式に代えて非接触式で測定するときに赤外線放射温度計を使用するというものである。赤外線放射エネルギーを測定して物体の温度を測定する方法は周知であるが、ヘッド/スライダとディスクの干渉を観察する装置には適用されていない。そこで、本発明の目的は回転円板形記憶装置に使用するヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する観測装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、回転円板形記憶装置に使用するヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する観測方法を提供することにある。
本発明の原理は、ヘッド/スライダとディスクの干渉を熱として捉えてABSの温度分布を二次元的に可視化した点にある。干渉の強弱は発熱によるABSの温度上昇の程度として観測できるので、簡易にヘッド/スライダとディスクの干渉やそれに伴うヘッド/スライダの挙動を観測できる。
本発明の第1の態様は、回転円板形記憶装置に使用するヘッド支持機構に取り付けられたヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測するヘッド/スライダ観測装置であって、回転可能に支持され赤外線を透過する試験ディスクと、前記試験ディスクの一方の面に前記ヘッド/スライダの空気軸受面が対向するように前記ヘッド支持機構を支持するヘッド・アームと、前記空気軸受面から放射され前記試験ディスクの他方の面を通過した赤外線エネルギーを受光して電気信号に変換する受光部と、前記受光部が変換した電気信号を温度分布として表示する画像表示部とを有するヘッド/スライダ観測装置を提供する。
ヘッド支持機構は磁気ディスク装置では一般にHGAといわれているが、その呼称や構造は特に限定的ではなく、回転円板形記憶装置に組み込まれたときに、ヘッド/スライダを支持してディスク上を移動する構造のものであればよい。試験ディスクは、石英ガラスまたはサファイアで形成し、回転円板形記憶装置に組み込まれるディスクと厚さおよび面粗度を等しくすることで、回転円板形記憶装置において発生する浮上時の現象を擬似的に再現することができる。温度分布は、ABSの二次元の温度分布にすることで、ABSのいずれの部位が試験ディスクと干渉しても干渉の程度を詳細に観測することができる。また、観測装置はランプを備えることで、ロード時のヘッド/スライダの挙動を観測することができる。観測装置は、ヘッド・アームの回動動作を制限するストッパを備えることで、ヘッド・アームがストッパに衝突したときのヘッド/スライダの挙動を観測することができる。また、観測装置は、回転円板形記憶装置のディスクを試験ディスクと交換して回転円板形記憶装置に組み込まれた状態でヘッド/スライダと試験ディスクの干渉を観測することができる。
本発明の第2の態様は、回転円板形記憶装置に使用するヘッド支持機構に取り付けられたヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する観測方法であって、赤外線を透過する試験ディスクを回転させるステップと、前記回転する試験ディスク上で前記ヘッド/スライダを浮上させるステップと、前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射され前記試験ディスクを通過した赤外線エネルギーを検出するステップと、前記検出した赤外線エネルギーを前記空気軸受面の二次元の温度分布として可視化するステップとを有する観測方法を提供する。
本発明により、回転円板形記憶装置に使用するヘッド/スライダとディスクの干渉を観測する観測装置を提供することができた。さらに本発明により、回転円板形記憶装置に使用するヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する観測方法を提供することができた。
[HGA]
次に本発明の実施の形態について磁気ディスク装置を例にして説明する。図面全体をとおして同一構成要素には同一参照番号を付すことにする。図1は、観測の対象となるHGAを搭載する磁気ディスク装置の構成を示す平面図である。図2はHGAの全体構成を示す斜視図である。磁気ディスク装置10は、図1に示すように、ベース12に磁気ディスク13と、ヘッド・スタック・アセンブリ14が設けられた周知の構造である。磁気ディスク13は、ベース12に設けられたスピンドル・モータ(図示せず)のロータ部にクランプ止めされており、スピンドル軸17を中心にして回転駆動するように構成されている。
次に本発明の実施の形態について磁気ディスク装置を例にして説明する。図面全体をとおして同一構成要素には同一参照番号を付すことにする。図1は、観測の対象となるHGAを搭載する磁気ディスク装置の構成を示す平面図である。図2はHGAの全体構成を示す斜視図である。磁気ディスク装置10は、図1に示すように、ベース12に磁気ディスク13と、ヘッド・スタック・アセンブリ14が設けられた周知の構造である。磁気ディスク13は、ベース12に設けられたスピンドル・モータ(図示せず)のロータ部にクランプ止めされており、スピンドル軸17を中心にして回転駆動するように構成されている。
ヘッド・スタック・アセンブリ14は、HGA41とアクチュエータ・アセンブリ42とで構成されている。HGA41は、たとえば図2に示すようにヘッド/スライダ52、ベース・プレート43、ロード・ビーム44、ヒンジ45、およびフレキシャ46によって主要部が構成されている。図2ではヘッド/スライダ52のABS52aが上向きになって示されている。ベース・プレート43には開口部43aが形成され、この開口部43aを利用してベース・プレート43の裏側に固定されたマウント・プレートをスウェージング加工することにより、HGA41をアクチュエータ・アセンブリ42のアクチュエータ・アームに固定する。HGA41の先端部には、ランプと19と係合してヘッド/スライダの退避のためにロード/アンロード方式を実現するリフト・タブ47が形成されている。
アクチュエータ・アセンブリ42は、HGA41を支持するアクチュエータ・アーム、ピボット軸18となるピボット・アセンブリを固定するハウジング部分およびボイス・コイル(図示せず。)を保持したコイル・サポート(図示せず。)で構成され、HGA41を、ピボット軸18を中心にして矢印Aまたは矢印B方向に回動させる。図1において、磁気ディスク13は上側と下側にそれぞれ記録面が設けられている。2つの記録面に対してABS52aがそれぞれ記録面に対向するように2本のHGA41がアクチュエータ・アセンブリ42に取り付けられる。完成した磁気ディスク装置では、ベース12にベース・カバー(図示せず。)で蓋がされ、内部に清浄な空気環境が維持される。
[ヘッド/スライダ観測装置]
図3に本発明の実施の形態にかかるヘッド/スライダ観測装置を示す。図3(A)は、ヘッド/スライダ観測装置100の概略を示す全体ブロック図で、図3(B)は赤外線エネルギーを可視化する機構の概略ブロック図である。ヘッド/スライダ52は、磁気ディスク装置に実際に組み込まれるHGA41の一部としてABSが試験ディスク107の下側表面に対向して上向きになるように配置されている。HGA41はヘッド・アーム101に固定され、ヘッド・アーム101は回動機構103で回動可能に支持されている。ヘッド・アーム101および回動機構103は、HGA41を回動可能に支持する点で、磁気ディスク装置10のアクチュエータ・アセンブリ42に相当するといえる。
図3に本発明の実施の形態にかかるヘッド/スライダ観測装置を示す。図3(A)は、ヘッド/スライダ観測装置100の概略を示す全体ブロック図で、図3(B)は赤外線エネルギーを可視化する機構の概略ブロック図である。ヘッド/スライダ52は、磁気ディスク装置に実際に組み込まれるHGA41の一部としてABSが試験ディスク107の下側表面に対向して上向きになるように配置されている。HGA41はヘッド・アーム101に固定され、ヘッド・アーム101は回動機構103で回動可能に支持されている。ヘッド・アーム101および回動機構103は、HGA41を回動可能に支持する点で、磁気ディスク装置10のアクチュエータ・アセンブリ42に相当するといえる。
ヘッド・アーム101は回動機構103により回動動作をするとき、ストッパ118により回動範囲が制約される。ストッパ118は、磁気ディスク装置のクラッシュ・ストップに相当し、回動するヘッド・アーム101を衝突させて、アクチュエータ・アセンブリがクラッシュ・ストップに衝突したときのヘッド/スライダの挙動を擬似的に再現する。試験ディスク107は、赤外線に対して高い透過性を備えることが望ましく、本実施の形態では石英を材料とするガラスやサファイアを使用して製作する。ヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測するには、磁気ディスク装置において当該ヘッド/スライダと実際に組み合わせられる磁気ディスク(以下、実機ディスクという。)を使用することが最良であるが、実機ディスクは磁性層が形成されていることもあり赤外線を十分に透過しないので試験ディスク107で代用している。
したがって、試験ディスク107は、ヘッド/スライダの浮上特性に対して実機ディスクと同等の作用をすることが望ましいため、試験ディスク107の厚さと表面の面粗度は実機ディスクと同等になるように選定している。実機ディスクは、一般にガラスを基材にしている。よって、試験ディスクの厚さを実機ディスクと等しくなるようにすると、回転中のディスク表面のうねりや振動などの特性を実機ディスクとほぼ等しくすることができる。ディスク表面の面粗度は、面粗さ、平滑度、またはラフネスなどといわれ、日本工業規格で規定された定義を使用して決定する。
試験ディスク107は軸108に固定され、軸108は回転機構105によって実機ディスクと同じ速度で回転させられる。軸108は磁気ディスク装置10のスピンドル軸に相当し、回転機構105は磁気ディスク装置10のスピンドル・モータに相当する。ランプ117は磁気ディスク装置10のランプ19に相当する。ランプ117は、HGA41のリフト・タブ47が傾斜面を滑走してヘッド/スライダ52が退避する場所を提供し、ロード時のヘッド/スライダの挙動を擬似的に再現する。制御部115は、観測装置100の全体の動作を制御する。
受光部109は、光学レンズ119と赤外線センサ121により構成されている。光学レンズ119は観測の対象となるヘッド/スライダ52のABS52aに向けられており、空気軸受面が放射した赤外線を赤外線センサ121に結像する。受光部109は制御部115で制御される図示しない駆動機構により駆動されてABSが被写界深度内に入るように高さが調整される。
赤外線センサ121は、光学レンズ119を通過した赤外線を受光する面にマトリクス状に配置された多数のセンサ素子で構成され、各センサ素子が、赤外線領域の光をアナログの電気信号に変換してABSの温度分布を二次元情報として提供する。アレイ状のセンサ素子の数は画像表示部113の画素数に相当し本実施の形態では256個×256個程度となっている。赤外線センサ121は量子型および熱型などから選択することができ特に限定する必要はないが、ヘッド/スライダ52とディスクとの干渉を動的に観測するためには応答速度の速いものが望ましい。受光部109が生成したABSの温度分布に相当する電気信号は、画像制御部111に送られる。
画像制御部111は、A/D変換器123、制御部125、画像処理部127、メモリ129により構成されている。A/D変換器123は、センサ素子が生成したアナログの電気信号を量子化してディジタルの電気信号に変換する。制御部125は、CPU、RAM、ROMなどで構成されており、ディジタルの電気信号がABSの二次元温度分布を正確に表すように補正演算をしたり、ABSのいずれかの場所が所定の温度を超えたときに、メモリ123を制御してその時刻の前後の所定の時間の画素データの記憶を保持したりする。
メモリ129は、FIFO(First In First Out)動作をしてそれまで記憶していた古い画素データから順番に新しい画素データに置き換えることで、常に所定のタイム・ウインドウの範囲の画素データを記憶する。メモリ129は、t秒分の画素データを記憶することができ、制御部125から指示がない限り古い画素データを捨てて新しい画素データを記憶していく。制御部125から指示があると、指示があった時刻からt1時間(t1<t)経過するまで古い画素データを新しい画素データに置き換え、指示があった時刻を挟んだt秒分の画素データの記憶を維持する。画像処理部127は、制御部125で補正された画素データを画像表示部113に表示する画像データに変換する。画像処理部127は、ABSの二次元温度分布をたとえば256階調の色で表示するように表示データを生成する。
[ヘッド/スライダの挙動を観測する方法]
つぎにヘッド/スライダ観測装置100を使用してヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測する方法を、図4を参照して説明する。ブロック201では、試験ディスク107とHGA41を観測装置100にセットする。HGA41は、試験ディスク107との垂直方向の間隔が磁気ディスク装置における間隔と等しくなるようにヘッド・アーム101に取り付けられる。取り付けは、磁気ディスク装置10のアクチュエータ・アームへの取り付けと同様に、HGA41の開口部43aをスウェージング加工して行う。
つぎにヘッド/スライダ観測装置100を使用してヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測する方法を、図4を参照して説明する。ブロック201では、試験ディスク107とHGA41を観測装置100にセットする。HGA41は、試験ディスク107との垂直方向の間隔が磁気ディスク装置における間隔と等しくなるようにヘッド・アーム101に取り付けられる。取り付けは、磁気ディスク装置10のアクチュエータ・アームへの取り付けと同様に、HGA41の開口部43aをスウェージング加工して行う。
試験ディスク107は赤外線を透過する材料で形成され、かつ、厚さおよび材質は実機ディスクと面粗度、うねり、および振動が同等になるように選択される。たとえば、実機ディスクの基板がガラスで形成されているときは、試験ディスク107を同じ厚さの石英ガラスで製作する。また、ヘッド/スライダの浮上特性に影響を与える試験ディスク107の面粗度は、実機ディスクと同等になるように試験ディスク107に表面処理が施される。
ブロック203では、制御部115が試験ディスク107を実機ディスクと同じ速度で回転させてヘッド/スライダ52をその上で浮上させる。ヘッド/スライダ52は磁気ディスク装置に組み込まれるときの条件とほぼ同じ条件で試験ディスク上を浮上する。ブロック205では、ヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉をフォローイング動作中に観測するかシーク動作中に観測するかを決める。フォローイング動作中に観測する場合は、ブロック207で周速の速い最外周トラック、周速の遅い最内周トラック、再生エラーの発生しやすいトラックなどのヘッド/スライダの挙動解析をする必要のあるトラックに相当する試験ディスクの位置に制御部115が回動機構103を制御してヘッド/スライダ52を位置づける。試験ディスク107にはサーボ・データが書き込まれていないので、ヘッド/スライダ52の位置決めには図示しない位置決め機構を使用する。試験ディスク107の面方向における受光部109の位置は、差分を計算してABSの温度変化を観察する場合には、一定位置に固定しておくことが望ましい。
シーク動作中の挙動を解析するときは、ブロック209でヘッド/スライダ52にシーク動作をさせ、シーク動作中もヘッド/スライダ52のABSが光学レンズ119の被写界深度内に入るように制御部115が受光部109の高さを制御する。磁気ディスク装置におけるシーク動作は、磁気ヘッドがトラック情報を再生しながら目標トラックに移動する動作であり、サーボ・データの記録されていない試験ディスク上をヘッド/スライダが移動することとは意味が異なる。ここでのシーク動作とは、試験ディスク上を浮上しているヘッド/スライダ52が回動機構103により移動させられる状態を意味しているものとする。
さらに、ランプ117から試験ディスク107にロードしたときのヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測するときは、制御部115は回動機構103を制御して、リフト・タブ47を使ってヘッド/スライダをランプ117に退避させ、つぎに、試験ディスク107上にロードさせそのときにABSから放射される赤外線エネルギーを二次元的に可視化する。また、ストッパ118にヘッド・アームが衝突したときのヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測するときは、制御部115は回動機構103を制御してヘッド・アーム101をストッパ118に衝突させ、そのときにABSから放射される赤外線エネルギーを二次元的に可視化する。
ブロック211では、画像制御部111は、受光部109が検出した赤外線エネルギーからABSの温度分布を示す表示データを生成して画像表示部113に表示させる。画像制御部111は、メモリ129にFIFO動作で所定時間の最新の画像データを記憶している。さらに画像制御部111の制御部125は、ブロック213でABSの二次元温度分布の中で所定の温度値を超えた温度上昇領域がないかをモニタする。所定の温度値は、ヘッド/スライダ52と試験ディスク107に干渉が発生したときの摩擦熱によるABSの温度上昇値として実験して設定する。
温度上昇領域がなければブロック217で観測を停止し、温度上昇領域があればブロック215で所定時間を経過するまで観測してブロック217で観測を停止する。所定時間は、メモリ129の容量で決めることができる。すなわち、温度上昇領域が発生した時刻では、ヘッド/スライダ52と試験ディスク107が干渉していたと考えられ、その時刻の前後におけるABSの温度分布を示す画像を得ることにより、ヘッド/スライダ52の干渉前後の挙動を正確に解析することができる。メモリに代えて大容量の磁気ディスク装置を設けることで観測中の画像データをすべて記憶させておくこともできる。
本実施の形態にかかるヘッド/スライダ観測装置100は、ヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を摩擦熱により生じたABSの温度分布として画像表示部113で二次元に可視化している。ABSが試験ディスク107の表面に近づくと、試験ディスク107とABSとの間を流れる空気流とABSとの間で摩擦熱が発生する。また、ABSが試験ディスク107の表面に接触するとABSと試験ディスク107との間で摩擦熱が発生する。よって、ABSが試験ディスク107と干渉するとABSに摩擦熱が発生し、さらにABSと試験ディスク107との間を流れる空気流および試験ディスク107またはそのいずれか一方にも摩擦熱が発生して、それぞれ赤外線エネルギーを放射する。しかし、赤外線センサ121のセンサ素子は、赤外線透過率の高い試験ディスク107および試験ディスク107とABSとの間の空気流が放射する赤外線は感知しないので、ABSからの放射エネルギーだけを受光する。ABSの一部で干渉が発生してその部分の温度が上昇すると温度が高い部位ほど濃い赤色で表示され、ABSと試験ディスクとの間隔が離れて温度が低くなっている部位ほど濃い青色で表示される。
このようなABSの温度分布を示す画像は、ABSとディスクとの干渉の程度を温度で間接的に表示していることになる。干渉発生前後の温度分布の画像を表示することで、ABSの姿勢がどのように変化して干渉が発生し、その後でどのような姿勢の変化を得て復元したかを明解に知ることができるので、HGA41の設計に有用な情報として利用することができる。ヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉は、ヘッド/スライダ52が試験ディスク107から受ける物理的な影響の強弱として知ることができれば最も観測の目的に合致する。摩擦熱による発生熱量は、干渉の強弱に最もよく対応して発生するので、浮上量を測定するよりも利用価値の高い情報を得ることができる。
以上の実施の形態では、HGA41を試験ディスク107と組み合わせてヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測した。本実施の形態では、試験ディスク107を実機ディスクに相当するよう選定することで、磁気ディスク装置で発生する現象をヘッド/スライダ観測装置100でも再現できるようにしている。この種の観測で望ましいのは、観測時にできるだけ磁気ディスク装置と同じ条件でヘッド/スライダ52を浮上させることである。
本発明の他の実施の形態では、HGA41が磁気ディスク装置に組み込まれた状態でヘッド/スライダ52と試験ディスク107との干渉を観測する。図1に示した磁気ディスク装置10の磁気ディスク13を取り外して同一厚さおよび同一形状の試験ディスク107を装着して試験用記憶装置を組み立てる。そして試験ディスク107の上側の面に対応するHGAを取り外し、下側の面に対応するHGAを観測対象として残す。ヘッド/スライダ観測装置は、試験用記憶装置を支持するドライブ支持部、受光部109、画像制御部111、画像表示部113、および制御部115で構成する。制御部115は磁気ディスク装置10のインターフェース・カードに接続して、ボイス・コイル・モータやスピンドル・モータの動作を制御するようにしてもよい。
ヘッド/スライダ52の挙動は、試験用記憶装置の内部に発生する気流、およびボイス・コイル・モータやスピンドル・モータの動作などに起因する振動などの影響を受けるので、できるだけ実際の磁気ディスク装置に近い状態で観測したほうが精度の高い観測ができる。ベース12を覆うベース・カバーにおいてヘッド/スライダ52が放射した赤外線が通る位置を赤外線透過材料で形成すれば、内部の気流状態を実際の磁気ディスク装置と同一にすることができ、かつベース・カバーを開放して観測する場合には必要となるクリーンルームを利用する必要もないので都合がよい。
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
101 ヘッド・アーム
103 回動機構
105 回転機構
107 試験ディスク
115 制御部
117 ランプ
118 ストッパ
103 回動機構
105 回転機構
107 試験ディスク
115 制御部
117 ランプ
118 ストッパ
Claims (12)
- 回転円板形記憶装置に使用するヘッド支持機構に取り付けられたヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測するヘッド/スライダ観測装置であって、
回転可能に支持され赤外線を透過する試験ディスクと、
前記試験ディスクの一方の面に前記ヘッド/スライダの空気軸受面が対向するように前記ヘッド支持機構を支持するヘッド・アームと、
前記空気軸受面から放射され前記試験ディスクの他方の面を通過した赤外線エネルギーを受光して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部が変換した電気信号を温度分布として表示する画像表示部と
を有するヘッド/スライダ観測装置。 - 前記試験ディスクは、石英ガラス又はサファイアで形成されており前記回転円板形記憶装置に組み込まれるディスクと厚さ及び面粗度が等しい請求項1記載のヘッド/スライダ観測装置。
- 前記温度分布が、前記空気軸受面全体の二次元の温度分布である請求項1記載のヘッド/スライダ観測装置。
- 前記ヘッド支持機構のリフト・タブが滑走する斜面を備えたランプを有する請求項1記載のヘッド/スライダ観測装置。
- 前記ヘッド・アームの回動動作を制限するストッパを備えた請求項1記載のヘッド/スライダ観測装置。
- 回転円板形記憶装置に使用するヘッド支持機構に取り付けられたヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測するヘッド/スライダ観測装置であって、
赤外線を透過する試験ディスクと前記ヘッド支持機構とを含む試験用記憶装置を支持するドライブ支持部と、
前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射された赤外線エネルギーを受光して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部が変換した電気信号を二次元の温度分布として表示する画像表示部と
を有するヘッド/スライダ観測装置。 - 前記試験用記憶装置のベース・カバーの少なくとも一部が、前記赤外線エネルギーが通過する材料で形成されている請求項6記載のヘッド/スライダ観測装置。
- 回転円板形記憶装置に使用するヘッド支持機構に取り付けられたヘッド/スライダとディスクとの干渉を観測する観測方法であって、
赤外線を透過する試験ディスクを回転させるステップと、
前記回転する試験ディスク上で前記ヘッド/スライダを浮上させるステップと、
前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射され前記試験ディスクを通過した赤外線エネルギーを検出するステップと、
前記検出した赤外線エネルギーを前記空気軸受面の二次元の温度分布として可視化するステップと
を有する観測方法。 - 前記試験ディスクを回転させるステップが、前記回転円板形記憶装置のディスクを取り外して前記試験ディスクを装着するステップを含む請求項8記載の観測方法。
- 前記浮上させるステップが、前記ヘッド支持機構が取り付けられたアクチュエータ・アセンブリをクラッシュ・ストップに衝突させるステップを含み、前記赤外線エネルギーを検出するステップが前記衝突直後の位置にある前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射された赤外線エネルギーを検出するステップを含む請求項8記載の観測方法。
- 前記浮上させるステップが、前記ヘッド支持機構をランプから前記試験ディスクにロードさせるステップを含み、前記赤外線エネルギーを検出するステップが前記ロード直後の位置にある前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射された赤外線エネルギーを検出するステップを含む請求項8記載の観測方法。
- 前記浮上させるステップが、前記ヘッド/スライダを前記試験ディスク上で移動させるステップを含み、前記赤外線エネルギーを検出するステップが移動している前記ヘッド/スライダの空気軸受面から放射された赤外線エネルギーを検出するステップを含む請求項8記載の観測方法。
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2005
- 2005-06-29 JP JP2005190397A patent/JP2007012144A/ja not_active Withdrawn
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