JP2007009296A - 摺動部材及び摺動部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 固体潤滑材の剥離防止。
【解決手段】 摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材において、前記めっき皮膜には空洞部が内在されていると共に前記めっき皮膜の表面に前記空洞部と連通するクラックが形成され、前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材が充填されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材において、前記めっき皮膜には空洞部が内在されていると共に前記めっき皮膜の表面に前記空洞部と連通するクラックが形成され、前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材が充填されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は摺動部材の摺動面の表面処理技術に関するものである。
自動車の内燃機関に用いられるピストンリング等の摺動部材は、高温・高圧の燃焼ガス室内で高速で摺動することが要求され、極めて厳しい環境下にさらされる。そして、内燃機関の高出力化や低燃費化の要求も更に高まっており、シール面の摩擦磨耗特性の改善のため、様々な技術が提案されており、その1つとして固体潤滑材を用いるものが提案されている。
例えば、特許文献1にはショットピーニング等のインピンジメント法により固体潤滑材を摺動面に投射し、その運動エネルギーを利用して固体潤滑材を摺動面に拡散・浸透させる技術が開示されている。また、特許文献2には、低磨耗性及び耐磨耗性が要求される金属表面にポア、孔、凹凸、割れ等を形成し、フッ素系モノマーを含浸した後、低エネルギー電子線を照射して該モノマーを重合され、金属表面にフッ素系重合体薄膜を形成する技術が開示されている。また、フッ素樹脂を分散・含有するNi−Pめっきを摺動面に形成し、低摩擦性・耐磨耗性を確保する技術も知られている。
ここで、固体潤滑材はその摩擦係数が小さいという特性を利用して用いられるものであり、摺動面の摩擦係数の低減に効果的である反面、部材表面への付着性が低く、剥離し易いという問題がある。また、シール性が要求される場合や高温環境下に置かれる場合には、シール性或いは冷却性の確保のため、潤滑油が併用されるところ、固体潤滑材は潤滑油の濡れ性を低減させる、つまりは潤滑油を弾いてしまうという問題もある。
従って、本発明の目的は固体潤滑材の剥離防止にある。また、本発明の他の目的は固体潤滑材と潤滑油とを併用するにあたり摺動面の潤滑油との濡れ性を向上することにある。
本発明によれば、摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材において、前記めっき皮膜には空洞部が内在されていると共に前記めっき皮膜の表面に前記空洞部と連通するクラックが形成され、前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材が充填されていることを特徴とする摺動部材が提供される。
本発明の摺動部材によれば、前記固体潤滑材が前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に充填されるため、前記空洞部に充填される部分がいわばアンカーとなって、固体潤滑材の剥離防止を図ることができる。
本発明においては、前記空洞部は、独立して分散状態にて前記めっき皮膜に内在され、かつ、前記めっき皮膜表面に開口すると共に前記固体潤滑材が充填されていない空洞部を含む構成を採用できる。この構成によれば、前記固体潤滑材が充填されていない前記空洞部が潤滑油の油溜まりとなる。前記空洞部は前記めっき皮膜に分散状態にて内在しているので、前記めっき皮膜表面に開口する前記空洞部は多様な空洞となり、深さの深いもの、開口面積よりも前記めっき皮膜表面下に存する部分の断面積が広いもの、が形成される。また、前記空洞部は独立しているので複数の前記空洞部が連通して潤滑油が流れ出ることもない。従って、固体潤滑材と潤滑油とを併用するにあたり摺動面の潤滑油との濡れ性を向上することができる。
本発明においては、前記めっき皮膜表面に分布する前記空洞部の、前記めっき皮膜表面に対する面積率が10%以上50%以下であることが望ましい。
また、本発明によれば、摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材の製造方法において、前記めっき皮膜として、樹脂マイクロカプセルが分散されているめっき皮膜を形成する工程と、前記めっき皮膜の表面に、少なくとも一部の前記樹脂マイクロカプセルに連なるクラックを形成する工程と、前記クラックと連なる前記樹脂マイクロカプセルを焼失し、前記樹脂マイクロカプセルにより形成される空洞部と前記クラックとを連通させる工程と、前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材を充填する工程と、を備えたことを特徴とする摺動部材の製造方法が提供される。
本発明の製造方法によれば、前記固体潤滑材が前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に充填されるため、前記空洞部に充填される部分がいわばアンカーとなって、固体潤滑材の剥離防止を図ることができる。また、このような固体潤滑材の構成をより簡易に得られる。
本発明においては、更に、前記めっき皮膜内において前記樹脂マイクロカプセルにより形成された空洞部が前記めっき皮膜表面に露出するように前記めっき皮膜の表面を研磨することで、前記めっき皮膜表面に開口すると共に前記固体潤滑材が充填されていない空洞部を形成する工程を備えた構成を採用できる。この構成によれば、前記固体潤滑材が充填されていない前記空洞部が潤滑油の油溜まりとなる。前記空洞部は前記めっき皮膜に分散状態にて内在しているので、前記めっき皮膜表面に開口する前記空洞部は多様な空洞となり、深さの深いもの、開口面積よりも前記めっき皮膜表面下に存する部分の断面積が広いもの、が形成される。また、前記空洞部は独立しているので複数の前記空洞部が連通して潤滑油が流れ出ることもない。従って、固体潤滑材と潤滑油とを併用するにあたり摺動面の潤滑油との濡れ性を向上することができる。また、このような油溜まりとなる空洞部をめっき皮膜の表面研磨だけで得られる。
以上述べた通り、本発明によれば、固体潤滑材の剥離防止を図ることができる。また、前記空洞部が、前記めっき皮膜表面に開口すると共に前記固体潤滑材が充填されていない空洞部を含む構成を採用することで、固体潤滑材と潤滑油とを併用するにあたり摺動面の潤滑油との濡れ性を向上することができる。
図1(a)は本発明の一実施形態に係るピストンリング1、図1(b)はピストンリング1の摺動面の構造を示す模式図である。本実施形態ではピストンリングを例に挙げるが他の金属部材についても本発明は適用可能である。ピストンリング1はリング状の基材1aの、摺動面となる外周面にめっき皮膜1bが被覆されている。めっき皮膜1bとしては、例えば、クロムめっき、ニッケル−リンめっき等のめっき皮膜が挙げられ、特に低摩擦性及び耐磨耗性の点でニッケル−リンめっきが好適である。
めっき皮膜1bには樹脂マイクロカプセル1cが分散されている。これにより、樹脂マイクロカプセル1cに囲包される空洞部1dが独立して分散状態にて内在されている。樹脂マイクロカプセル1cは、例えば、めっき皮膜の厚さ、所望の固体潤滑材充填量並びに油溜まり率に応じて直径1μm〜100μm程度のものを選定でき、樹脂の材料としては、例えば、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレンが挙げられ、大気中の熱処理で焼失するものが望ましい。
めっき皮膜1bの表面にはクラック1eが形成されている。クラック1eは例えば幅が数μm〜数十μmのマイクロクラックであり、網目状のマイクロクラックチャンネルを形成している。クラック1eはめっき皮膜1bの表面或いは内部に分布する一部の空洞部1dと連通しており、これらには固体潤滑材が充填されている。つまり、空洞部1dは固体潤滑材が充填されているもの(図中の黒塗りのもの)と、固体潤滑材が充填されていないもの(図中の白抜きのもの)と、が混在しており、クラック1eと連通している空洞部1dには固体潤滑材が充填されている。なお、固体潤滑材が充填されている空洞部1dは厳密には空洞とは言えないが、めっき皮膜1bの構成としては空洞なのでここでは便宜上空洞部と称する。
クラック1e及び空洞部1dに充填される固体潤滑材としては、樹脂系の固体潤滑材、金属系の固体潤滑材のいずれも用いることができる。樹脂系の固体潤滑材としては、例えば、フッ素樹脂のものが挙げられ、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を挙げることができ、このようなフッ素樹脂の1種又は複数種の混合物であってもよい。また、金属系の固体潤滑材としては、例えば、金属硫化物を挙げられ、例えば、二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化ニオブ(NbS2)を挙げることができ、このような金属硫化物の1種又は複数種の混合物であってもよい。
しかして、めっき皮膜1bの表面には、クラック1e及び一部の空洞部1dに充填された固体潤滑材が存在する。固体潤滑材は、クラック1eのみならず、これに連通するめっき皮膜1b内部の空洞部1dにも充填されているので、当該空洞部1dに充填される部分がいわばアンカーとなって、固体潤滑材の剥離防止を図ることができる。
また、めっき皮膜1bの表面に分布する空洞部1dのうち、固体潤滑材が充填されていない空洞部1dはめっき皮膜1bに開口している。この空洞部1dは潤滑油の油溜まりとなる。空洞部1dはめっき皮膜1bに分散状態にて内在しているので、めっき皮膜1b表面に開口する空洞部1dは多様な空洞となり、深さの深いもの、めっき皮膜1bにおける開口面積よりもめっき皮膜1b表面下に存する部分の断面積が広い、いわば注ぎ口の狭い壷状のもの、が形成される。また、空洞部1dは独立しているので、固体潤滑材が充填されていない複数の空洞部1dが連通して潤滑油が流れ出ることもない。従って、油溜まりの潤滑油の保持性を向上し、固体潤滑材と潤滑油とを併用するにあたり摺動面の潤滑油との濡れ性を向上することができる。
次に、ピストンリング1の製造方法の例について説明する。図2(a)乃至(e)はピストンリング1の製造方法の説明図である。まず、ピストンリング1の基材1aの外周面に樹脂マイクロカプセル1cが分散・含有されているめっき皮膜1bを形成する。めっき皮膜1bは、例えば、樹脂マイクロカプセル1cが分散・含有されたニッケル−リン複合めっき液を無電解めっきにより基材1aの外周面に析出させて形成し、ニッケル−リン複合めっき皮膜として形成することができる。図2(a)は樹脂マイクロカプセル1cが分散・含有されためっき皮膜1bが形成された態様を示す。樹脂マイクロカプセル1cの中には、めっき皮膜1bの表面から突出しているものも存在する。
次に、めっき皮膜1bの表面に、少なくとも一部の樹脂マイクロカプセル1cに連なるクラック1eを形成する。クラック1eは無電解めっき後のクロム酸浴中での逆電によるエッチングにより形成でき、当該逆電によるエッチングにより、網目状のクラックチャンネルを形成すれば、おのずと樹脂マイクロカプセル1cと連なるクラックが形成できる。図2(b)はめっき皮膜1bにクラック1eが形成された態様を示す。クラック1eはめっき皮膜1bの表面から内部に形成され、めっき皮膜1bの内部に存在する樹脂マイクロカプセル1cと連なっている。
次に、クラック1eと連なる樹脂マイクロカプセル1cを焼失し、樹脂マイクロカプセル1cにより形成される空洞部1dとクラック1eとを連通させる(以下、焼失工程ともいう。)。図2(c)は焼失後の態様を示す。めっき皮膜1bの表面付近に分布する樹脂マイクロカプセル1cは焼失して除去され、焼失した樹脂マイクロカプセル1cにより形成された空洞部1dがめっき皮膜1bの表面に開口している。
また、めっき皮膜1bの内部に存在する樹脂マイクロカプセル1cのうち、クラック1eと連なっている樹脂マイクロカプセル1cは、気化した樹脂がクラック1eを通過して外部に排出されるため、同じく除去されている。なお、めっき皮膜1bの内部に存在する樹脂マイクロカプセル1cのうち、クラック1eと連なっていない樹脂マイクロカプセル1cについては、図2(c)において樹脂マイクロカプセル1cの形状を便宜上示しているが、実際には加熱により軟化して崩壊し、空洞部1d底部に堆積状態となる(図2(d)及び(e)においても同様。)。
また、上記の焼失工程は、めっき皮膜1bの硬度を高める温度にて行なう熱処理であることが望ましい。これにより、樹脂マイクロカプセル1cの焼失と、めっき皮膜1b表面の熱処理とを同時に行なえる。熱処理の温度は、めっき皮膜1bの種類及び目的とする表面硬度により異なり、また、樹脂マイクロカプセル1cの材料は熱処理の温度以下で焼失するものを使用すればよい。図4(a)はリンの含有率が異なるニッケル−りんめっきの硬度(Hv)と熱処理温度(摂氏)との関係を示す図であり、リンの含有率を1.1質量%〜12.2質量%の範囲で変化させたものである。同図によれば、摂氏約300度以上で750Hv以上の硬度が得られる。従って、ニッケル−リンめっきを採用して750Hv以上の表面硬度を得る場合、樹脂マイクロカプセル1cとして摂氏約300度以下で焼失するものを使用すればよいことになる。
次に、クラック1eとクラック1eに連通する空洞部1dに固体潤滑材を充填する。図2(d)は固体潤滑材を充填した態様を示す図である。黒塗り部分が固体潤滑材を示す。固体潤滑材の充填は、例えば、固体潤滑材を微粒子にして充填することができ、例えば、含浸法、ショットピーニング法、金属マトリックス法、ボンディング法が挙げられる。
以上により、アンカー部分を有する固体潤滑材の形成が完了する。上記の製造方法によれば、固体潤滑材の形成は、めっき液に樹脂マイクロカプセル1cを分散・含有させること、並びに、熱処理により樹脂マイクロカプセル1cを焼失させること、を除けば、従来のめっき皮膜の形成と大差なく、アンカー部分を有する固体潤滑材をより簡易に得られる。
なお、図1(b)の例に示したように、油溜まりとなる空洞部1dを形成する場合には、更に、めっき皮膜1bの表面を研磨する。図2(e)は研磨後の態様を示す。めっき皮膜1bの表面研磨は、めっき皮膜1b内において樹脂マイクロカプセル1cにより形成された空洞部1dがめっき皮膜1b表面に露出するように行なう。これにより、めっき皮膜1b表面に開口すると共に固体潤滑材が充填されていない空洞部1dが形成される。この空洞部1dは図2(e)において、めっき皮膜1bの表面に開口した白抜きの空洞部1dとして示されている。この表面研磨により、油溜まりとなる空洞部1dを形成できると共に、めっき皮膜1bの表面を平滑化でき、低摩擦性を向上できる。また、表面研磨のみの簡易な処理で油溜まりとなる空洞部1dを形成できる。
めっき皮膜1bの表面に開口した空洞部1d(固体潤滑材が充填されたもの、充填されていなものの双方を含む。)の総開口面積の、めっき皮膜1bの表面積に対する割合(開口面積率)と、摩擦係数及び磨耗量との関係について実験を行なった。図3(a)は実験に用いた実験装置Aの概略図である。実験装置Aは不図示の加圧装置により下方へ加圧可能なピンプレート10と、不図示のモータにより回転駆動されるディスク20と、を備える。ピンプレート10はその中央に潤滑油の供給孔11が設けてあり、その下面には複数のピン12が設けられている。各ピン12の下面には、上述した固体潤滑材と油溜まりとなる空洞部1dを有するめっき皮膜1bである試験体30を形成した。図3(b)はピンプレート10の平面視図であり、ピン12は炭素鋼(SK3)からなり、略等間隔で3つ設けられている。ディスク20は鋳鉄(FCH1)からなる。
試験体30は、リンの含有量が12.2質量%のニッケル−リンめっきとし、これに分散・含有させる樹脂マイクロカプセルとしてポリアミドからなる直径2μm〜5μm程度のマイクロカプセルを用いた。固体潤滑材としてはPTFEを用いた。また、樹脂マイクロカプセルの焼失を熱処理温度摂氏350度で行い、めっき皮膜表面の硬度を750Hvとした。
また、試験体30は空洞部1dの開口面積率が、5%、10%、30%、50%、70%のものをそれぞれ用意した。開口面積率は、めっき皮膜表面にアセトンを滴下後、スンププレートを張り込むことで開口部分の形状をスンププレートに転写し、転写したスンププレートの表面画像を顕微鏡を解してコンピュータに取り込み、画像解析により計測した。なお、樹脂マイクロカプセルのめっき液に対する添加量と開口面積率との関係は、添加量:10ml/lで開口面積率:10%で、40ml/lで30%、80ml/lで50%、であった。
また、比較例としてショットピーニング法による試験体30と、クラック(マイクロチャンネル)による試験体30も用いた。ショットピーニング法による試験体30では、めっき皮膜表面に固体潤滑材としてPTFEの微粒子をショットピーニング法により埋め込んだ。但し、PTFEが微粒子であるため、開口面積率に相当する面積率は測定できなかった。クラックによる試験体30は、逆電エッチングによりクラックを網目状に形成し、マイクロチャンネルとしたものであり、開口面積率に相当するクラックの開口面積率は30%のものを用いた。マイクロチャンネルには固体潤滑材としてPTFEの微粒子を充填した。
しかして、試験体30を設けたピン12のディスク20に対する摺動速度が5m/s、ピンプレート10のディスク20に対する押圧荷重が600Nの場合(PV値:高)と、摺動速度が1m/s、押圧荷重が100Nの場合(PV値:低)と、の場合でそれぞれ試験を行い、ディスク20の回転開始直後の摩擦係数と1時間後の摩擦係数、及び、ディスク20の回転開始から1時間後のめっき皮膜の磨耗量をピン12の高さ変化から求めた。摩擦係数はモータのトルク(電流値)から算出した。試験中、ピンプレート10の供給孔11から試験体30に対して潤滑油として無添加油を滴下した。
図4(b)はPV値:高の場合の試験結果、図4(c)はPV値:低の場合の試験結果を示す。開口面積率が10乃至50%の試験体30の実施例では、開始直後から1時間後まで安定した低い摩擦係数を示し、磨耗量も小さくなっている。これは、固体潤滑材がアンカー部分を有することにより、めっき皮膜からの剥離が減少したこと、及び、油溜まりとなる空洞部1dが潤滑油を保持し、潤滑状態がよいためであると考えられる。但し、開口面積率が5%、70%の場合は良好な結果が得られていない。これは、前者の場合は、固体潤滑材のアンカー部分がほとんど形成されず、めっき皮膜からの剥離が生じていたこと、及び、油溜まりとなる空洞部1dにおける潤滑油の保持量が少ないこと、が考えられる。また、後者の場合は空洞部1dが多すぎてめっき皮膜の割れ、剥離を生じていたものと考えられる。従って、開口面積率は10%以上50%以下の範囲が望ましいと言える。
ショットピーニング法による試験体30及びマイクロチャンネルの試験体30においてはいずれも良好な結果が得られていないのは、固体潤滑材の剥離が生じていたものと考えられる。
1 ピストンリング
1a 基材
1b めっき皮膜
1c 樹脂マイクロカプセル
1d 空洞部
1e クラック
1a 基材
1b めっき皮膜
1c 樹脂マイクロカプセル
1d 空洞部
1e クラック
Claims (5)
- 摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材において、
前記めっき皮膜には空洞部が内在されていると共に前記めっき皮膜の表面に前記空洞部と連通するクラックが形成され、
前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材が充填されていることを特徴とする摺動部材。 - 前記空洞部は、独立して分散状態にて前記めっき皮膜に内在され、かつ、前記めっき皮膜表面に開口すると共に前記固体潤滑材が充填されていない空洞部を含むことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
- 前記めっき皮膜表面に分布する前記空洞部の、前記めっき皮膜表面に対する面積率が10%以上50%以下であることを特徴とする請求項2に記載の摺動部材。
- 摺動面をめっき皮膜で被覆した摺動部材の製造方法において、
前記めっき皮膜として、樹脂マイクロカプセルが分散されているめっき皮膜を形成する工程と、
前記めっき皮膜の表面に、少なくとも一部の前記樹脂マイクロカプセルに連なるクラックを形成する工程と、
前記クラックと連なる前記樹脂マイクロカプセルを焼失し、前記樹脂マイクロカプセルにより形成される空洞部と前記クラックとを連通させる工程と、
前記クラックと前記クラックに連通する前記空洞部に固体潤滑材を充填する工程と、
を備えたことを特徴とする摺動部材の製造方法。 - 更に、前記めっき皮膜内において前記樹脂マイクロカプセルにより形成された空洞部が前記めっき皮膜表面に露出するように前記めっき皮膜の表面を研磨することで、前記めっき皮膜表面に開口すると共に前記固体潤滑材が充填されていない空洞部を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項4の摺動部材の製造方法。
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