JP2007007753A - 工作機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】 工具ホルダのテーパ部外周面や主軸のテーパ穴内周面に切粉が付着するのを防止できる工作機械を提供する。
【解決手段】 マシニングセンタの主軸9のホルダ取付穴33の内周面に、チタンコーティング層50とフッ素樹脂コーティング層51とが重層形成されることで、ホルダ取付穴33の内周面に耐摩耗性を付与するのみならず、撥水性も付与できる。さらに、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面にも、フッ素樹脂コーティング層70を形成することで、シャンク部61の外周面に撥水性を付与できる。そして、切粉を含むクーラントがフッ素樹脂コーティング層51や、フッ素樹脂コーティング層70の表面に付着してもはじかれるため、主軸9のホルダ取付穴33の内周面や、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面に切粉等が付着するのを防止できる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、工作機械に関し、詳細には、工作機械の主軸に装着される工具ホルダのテーパ部における切粉の付着を防止できる工作機械に関する。
従来の工作機械の一例であるマシニングセンタは、ワークと工具とを相対移動させて、ワークに所望の機械加工(例えば、「中ぐり」、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことに利用される。しかし、金属加工の場合、ラッフィングカッタやエンドミルカッタにより荒取り加工を数時間に渡って行うと、主軸の工具取付用テーパ内周面と工具ホルダのテーパ部外周面との摩擦力が増大し、フレッチングコロージョンといわれる微動摩耗が生じることがあった。さらに、摩耗が生じるとその表面が酸化し、疲労破壊を起こすこともあった。
これらを防止するために、例えば、工作機械の主軸において、工具取付用のテーパ穴内周面に、金メッキ、Ti−Cコーティング及びTi−Nコーティングの何れかからなる被膜を形成した工作機械の主軸が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような被膜をテーパ穴内周面に施すことで、テーパ穴内周面の硬度を向上できる。さらに、主軸のテーパ穴内周面と工具ホルダのテーパ部外周面とが直接摺動しないので、赤錆発生の防止や、テーパ穴内周面及び工具ホルダのテーパ部外周面の摩耗を防止できる。
実開昭59−105334号公報
しかしながら、特許文献1に記載の工作機械の主軸において、工具交換装置による主軸の工具交換時において、工具ホルダのテーパ部外周面や、主軸のテーパ穴内周面が一時的に露出されるため、それら表面に切粉を含むクーラントの飛沫が付着することがあった。これにより、テーパ部外周面とテーパ穴内周面との隙間に切粉が介在してしまい、主軸のテーパ穴内周面や工具ホルダのテーパ部外周面を傷つけるという問題点があった。さらに、主軸のテーパ穴内周面と工具ホルダのテーパ部外周面との間に切粉が介在すると、それらの接触面に隙間を生ずるため、この状態で工具ホルダが振動すると、主軸のテーパ穴から工具ホルダのテーパ部が脱け落ち、工具ホルダがワーク上に落下する等の恐れがあった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、工具ホルダのテーパ部外周面や主軸のテーパ穴内周面に切粉が付着するのを防止できる工作機械を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る工作機械では、主軸の先端に工具を保持する工具ホルダが装着される工作機械であって、前記主軸の先端にはテーパ穴が設けられ、前記工具ホルダには前記テーパ穴に挿着されるテーパ部が設けられ、前記工具ホルダの前記テーパ部外周面及び前記主軸の前記テーパ穴内周面の少なくとも一方は、撥水性のコーティングが施されている。
また、請求項2に係る工作機械では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記撥水性のコーティングは、フッ素樹脂コーティングである。
また、請求項3に係る工作機械では、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記工具ホルダの前記テーパ部外周面及び前記主軸の前記テーパ穴内周面の少なくとも一方にはチタンコーティングが施され、その後に、前記フッ素樹脂コーティングが施されている。
請求項1に係る工作機械では、被加工物の加工中に切り粉を含んだクーラントが、工具ホルダのテーパ部外周面や主軸のテーパ穴内周面に付着しても、撥水性のコーティングが施されているので、クーラント飛沫ははじかれる。これにより、工具ホルダのテーパ部外周面や主軸のテーパ穴内周面に切り粉が付着するのを防止できる。そして、主軸のテーパ穴内周面に、工具ホルダのテーパ部外周面が密着した場合でも、主軸のテーパ穴内周面と工具ホルダのテーパ部外周面との間に切粉が介在しない。これにより、テーパ穴内周面とテーパ部外周面との間に切粉の介在による隙間を生じないため、工具ホルダが振動しても主軸のテーパ穴から工具ホルダのテーパ部が抜け落ちる恐れがない。
また、請求項2に係る工作機械では、請求項1に記載の発明の効果に加え、撥水性のコーティングは、フッ素樹脂コーティングであるので、工具ホルダのテーパ部外周面や主軸のテーパ穴内周面に撥水性を効果的に保持させることができる。また、コーティング加工も容易である。
また、請求項3に係る工作機械では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、工具ホルダのテーパ部外周面及び主軸のテーパ穴内周面の少なくとも一方には、チタンコーティングが施され、その上からフッ素樹脂コーティングが施されているので、工具ホルダのテーパ部外周面及び主軸のテーパ穴内周面の少なくとも一方の表面を硬くできるとともに、撥水性を付与させることができる。これにより、工具ホルダのテーパ部外周面及び主軸のテーパ穴内周面の赤錆発生や摩耗を防止することができる。
以下、本発明の一実施の形態であるマシニングセンタ1について、図面に基づいて説明する。図1は、マシニングセンタ1の全体斜視図であり、図2は、主軸9の先端側の縦断面図であり、図3は、図2に示すホルダ取付穴33周辺の部分拡大図であり、図4は、工具ホルダ60の正面図であり、図5は、主軸9のホルダ取付穴33に工具ホルダ60のシャンク部61が装着された状態を示す主軸9の先端側の縦断面図である。また、図1の右側をマシニングセンタ1の前側とし、左側をマシニングセンタ1の後側とする。さらに、マシニングセンタ1におけるX軸方向とは、マシニングセンタ1の左右方向を指し、Y軸方向とは、マシニングセンタ1の前後方向を指し、Z軸方向とは、マシニングセンタ1の上下方向を指すものとする。
なお、本実施形態のマシニングセンタ1は、図示外のワーク(図示外)と工具とを相対移動させて、ワークに所望の機械加工(例えば、「中ぐり」、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すための工作機械である。そして、このマシニングセンタ1は、図5に示すように、工具ホルダ60が装着される主軸9のホルダ取付穴33の内周面にフッ素樹脂コーティング層51を施し、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面にフッ素樹脂コーティング層70を施した点に本発明の特徴を有する。
はじめに、マシニングセンタ1の概略構成について説明する。マシニングセンタ1は、図1に示すように、機械本体3の土台となる鉄製の基台2と、該基台2の上部に設けられ、ワーク(図示外)を加工する機械本体3とから構成されている。そして、図示しないが、基台2の上部には、機械本体3を囲繞して保護するとともに、機械本体3から切粉が外部に飛散するのを防止する略直方体状のボックス型のスプラッシュカバーが固定されるようになっている。
まず、基台2について説明する。基台2は、マシニングセンタ1のY軸方向に延設され、その下部の四隅には脚部2aが各々設けられている。そして、これら4本の脚部2aが、工場などの床面に設置されることにより、マシニングセンタ1が所定場所に設置される。さらに、基台2上部の後方側には、略直方体状のコラム座部4が設けられている。なお、この基台2の芯部は、軽量化、高強度化及び低コスト化のため、いわゆる肉抜き成形(リブによる骨組構造)されている。
次に、機械本体3について説明する。機械本体3は、基台2のコラム座部4の上面に載置して固定され、垂直上方に延設された略角柱状のコラム5と、該コラム5の前面に沿って昇降可能に設けられた主軸ヘッド7と、該主軸ヘッド7の下部前側から鉛直下方に突出する主軸9と、前記主軸ヘッド7の右側に設けられ、主軸9の先端に装着された工具ホルダ60(図4参照)を、他の工具6(図4参照)を保持する工具ホルダ60に交換する工具交換装置(ATC)20と、基台2の上部に設けられ、ワークを着脱可能に保持するテーブル10と、コラム5の背面側に設けられ、電源装置、制御装置等の各装置を内蔵する後部装置部19とを主体に構成されている。
まず、主軸ヘッド7は、主軸9が備えるスピンドル27(図2参照)を回転駆動させるためのモータ8を上部に備え、該モータ8の出力軸は、カップリング(図示外)を介してスピンドル27に連結されている。さらに、主軸ヘッド7は、コラム5の前面側に設けられたガイドレール(図示外)にリニアガイド(図示外)を介して昇降自在にガイドされている。そして、昇降自在にガイドされる主軸ヘッド7は、モータ駆動されるボールねじ(図示外)とナットとの結合により昇降駆動されるようになっている。
そして、主軸ヘッド7の下部後部寄りには、コラム5の前面側に設けられた主軸ヘッド7の昇降機構を覆い隠すための平面視縦長長方形状のZ軸カバー18の上端部が固定されている。これにより、Z軸カバー18は、コラム5の前面を覆い隠しながら主軸ヘッド7と一体的に昇降する。また、主軸9の近傍には、クーラントを工具6(図5参照)に向けて噴射し、切粉を洗い流すための一対の噴射ノズル26が設けられている。さらに、基台2の後部には、その噴射ノズル26や各位置にクーラントを供給するためのクーラント供給管17が設けられている。
また、自動工具交換装置20は、工具6(図4)が取り付けられた工具ホルダ60を複数格納する側面視略小判型状の工具マガジン21と、主軸9に装着されている工具ホルダ60と、工具マガジン21に格納された他の工具ホルダ60とを各々把持して180度旋回し、他の工具ホルダ60を主軸9に装着する工具交換アーム22とを備えている。そして、この工具交換アーム22の両端には把持部22a(図1では1つのみ図示)が設けられ、この把持部22aが図4に示す工具ホルダ60の凹部63aを把持するようになっている。
一方、基台2の上部中央には、ワークを着脱可能に保持するテーブル10がX軸−Y軸方向に移動可能に配置されている。このテーブル10の移動機構は次の通りである。まず、テーブル10の下側には、略直方体状の支持台12が設けられている。そして、その支持台12の上部には、X軸方向に沿って延設された一対のX軸送りガイド(図示外)が設けられ、そのX軸送りガイド上にテーブル10が移動可能に支持されている。さらに、支持台12は、基台2の長手方向に沿って延設された一対のY軸送りガイド上に移動可能に支持されている。このような状態で、テーブル10は、基台2上に設けられたXモータ(図示外)により、X軸送りガイドに沿ってX軸方向に移動し、同じく基台2上に設けられたYモータ(図示外)により、Y軸送りガイドに沿ってY軸方向に移動するようになっている。
また、前記X軸送りガイドには、テーブル10を中央に挟み、テレスコピック式に収縮するテレスコピックカバー13,14が左右に各々覆設されている。さらに、Y軸送りガイドには、支持台12を中央に挟み、テレスコピックカバー15とY軸後ろカバー(図示外)とが前後に各々覆設されている。なお、Y軸後ろカバーは一枚の板金からなる断面山型に形成され、コラム5の下部に設けられたカバー収納部(図示外)に収容されるようになっている。そして、これら複数のカバーにより、テーブル10がX軸方向及びY軸方向の何れの方向に移動した場合でも、X軸送りガイド及びY軸送りガイドは、常にテレスコピックカバー13,14,15及びY軸後ろカバー(図示外)によって覆われている。よって、テーブル10の周辺等から飛散する切粉や、クーラントの飛沫等が各レール上に落下するのを防ぐことができる。
次に、本発明の特徴である主軸9について説明する。図2に示すように、主軸9は、上下方向に長い略円筒状のハウジング25を備えている。そして、そのハウジング25の内側に、スピンドル27が回転自在に設けられている。さらに、ハウジング25の軸線方向先端側(下端側)の内周面には、スピンドル27を回転自在に支持するベアリング軸受け30,31が各々設けられている。また、スピンドル27の先端部の中心には、テーパ状の内周面を有するホルダ取付穴33が、スピンドル27の軸線に沿って穿設されている。そして、このホルダ取付穴33の内周面に対し、後述する工具ホルダ60のシャンク部61のテーパ状の外周面が密着して嵌まるようになっている。なお、図2に示すホルダ取付穴33が、「テーパ穴」に相当する。
さらに、このホルダ取付穴33の縮径する上部には、このホルダ取付穴33の内周面に連続するとともに、径がやや広くなった広径部34が設けられている。そして、その広径部34の上部には、その広径部34の内周面に連続するととももに、工具ホルダ60側に向かってオイルミスト(高圧空気に微少量のクーラントを混入して霧状にしたもの)を供給するための流路35が設けられている。さらに、この流路35の下部内周面には、複数の鋼球38を介して工具ホルダ60のプルスタッド66(図4,図5参照)を把持するチャック機構部37が配置されている。また、ハウジング25の先端部(下端部)には、スピンドル27とベアリング軸受け30,31を保持するとともに、切削時の切粉等がベアリング軸受け30,31に侵入するのを防止する平面視略リング状の蓋体40がボルト41,41により固定されている。
次に、ホルダ取付穴33の内周面について説明する。図2,図3に示すように、ホルダ取付穴33の内周面には、チタンコーティング層50が形成され、さらにその層上には、フッ素樹脂コーティング層51が重層形成されている。このチタンコーティング層50は、例えば、チタン窒化物(TiN)、チタン炭化物(TiC)或いはチタン炭窒化物(TiCN)などの何れかが選択される。そして、このチタンコーティング層50は、好ましくは減圧熱化学蒸着法(CVD法)により鋼製のホルダ取付穴33の内周面に化学的に形成される。なお、この減圧熱化学蒸着法とは、化学的気相成長法の一種である。この蒸着法では、ガス状の材料(金属のハロゲン化物等)に減圧下で熱エネルギーを加えることでガス分子を分散し、ホルダ取付穴33の内周面に蒸着させることにより、高純度、均質の薄膜を形成することができる。そして、上記方法によりチタンコーティング層50を、ホルダ取付穴33の内周面に形成することで、ホルダ取付穴33の内周面の表面硬度が上がり、工具ホルダ60のシャンク部61(図4参照)の外周面に対する耐摩耗性を向上できる。
一方、フッ素樹脂コーティング層51の材料となるフッ素樹脂は、フッ素高分子を含むものである。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフルオロビニール(PVF)、ポリフルオロビニリデン(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられ、特に限定されるものではないが、撥水性の点からPTFEを用いることが好ましい。また、本実施形態で用いるフッ素樹脂は、有機溶剤、乳化剤、界面活性剤等を含有してなるフッ素樹脂塗料、合成樹脂溶液にフッ素樹脂を分散させた変性フッ素樹脂塗料であってもよい。
また、このようなフッ素樹脂の加工方法は、選択するコーティング剤(塗料)の種類によっても異なるが、一般的には脱脂、表面処理、塗装、乾燥、焼成の順に行なわれる。まず、チタンコーティング層50が形成されたホルダ取付穴33の表面処理方法としては、アルミナ粉末等を用いたブラスト加工による基材表面の粗面化や、化成処理によって行われる。また、塗装方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ディップスピンコーティング法、ロールコーティング法、及びスピンフローコーティング法等が挙げられる。なお、フッ素樹脂が粉体の場合は、静電粉体コーティングや静電流動浸漬法により塗装加工が行われる。そして、塗布されただけのフッ素樹脂コーティング層ではすぐに剥離してしまい、チタンコーティング層50の表面が露出してしまうので、摩擦耐久性を格段に高めるために焼付処理を施している。
このような上記方法により、チタンコーティング層50が形成されたホルダ取付穴33の内周面に、さらにフッ素樹脂コーティング層51が重層形成される。これにより、ホルダ取付穴33の内周面には耐摩耗性のみならず、撥水性を付与することができる。そして、このようなフッ素樹脂コーティング層51が形成されたホルダ取付穴33の内周面は油も水もはじくため、クーラントによって濡れることがなく、また汚れにくい。そして、切粉を含むクーラントがフッ素樹脂コーティング層51の表面に付着してもはじかれるため、ホルダ取付穴33の内周面に切粉等が付着しにくい。さらに、ホルダ取付穴33の内周面が汚れた場合でも簡単に清掃することができるので、ホルダ取付穴33の内周面の清掃時間の省力化・高能率化を図ることができる。
次に、工具ホルダ60について説明する。工具ホルダ60は、図4に示すように、スピンドル27のホルダ取付穴33(図2参照)のテーパ状の内周面に密接してはまるためのテーパ状(円錐台形状)のシャンク部61と、該シャンク部61の底面に設けられた円盤状の台座部62の外周からフランジ状に形成され、主軸9のスピンドル27の端面27a(図2,図5参照)と密接するための略円柱状のフランジ部63と、該フランジ部63の下面の中心部から下方に突出され、先端部に工具6を支持する工具支持部64と、シャンク部61の縮径する上部から上方に突出して設けられた柱状の首部65と、該首部65の上端部に設けられた紡錘状のプルスタッド66とから構成されている。また、フランジ部63の外周面の幅方向の工具6側には、図1に示す工具交換アーム22の把持部22aに把持されるために縮径する凹部63aが形成されている。なお、図4に示す工具ホルダ60のシャンク部61が、「テーパ部」に相当する。
そして、このような構造からなる工具ホルダ60のシャンク部61の外周面には、フッ素樹脂コーティング層70が単層形成されている。なお、このフッ素樹脂コーティング層70は、上記したホルダ取付穴33に形成されたフッ素樹脂コーティング層51(図3参照)と同様の方法で形成されている。
これにより、フッ素樹脂コーティング層70が形成されたシャンク部61の外周面に撥水性を付与することができる。そして、フッ素樹脂コーティング層70が形成されたシャンク部61の外周面は油も水もはじくため、クーラントによって濡れることがなく、また汚れにくい。そして、切粉を含むクーラントがフッ素樹脂コーティング層70の表面に付着してもはじかれるため、シャンク部61の外周面に切粉等が付着しにくい。さらに、シャンク部61の外周面が汚れた場合でも簡単に清掃することができるので、シャンク部61の外周面の清掃時間の省力化・高能率化を図ることができる。
次に、主軸9のホルダ取付穴33に工具ホルダ60のシャンク部61がはまった場合の各コーティング層による効果について説明する。上記説明したように、主軸9のホルダ取付穴33の内周面には、チタンコーティング層50と、フッ素樹脂コーティング層51とが重層形成されている。これにより、ホルダ取付穴33の内周面に耐摩耗性と撥水性とが付与される。一方、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面には、フッ素樹脂コーティング層70が単層形成されている。これにより、シャンク部61の外周面に撥水性が付与される。そして、図5に示すように、主軸9のホルダ取付穴33に、工具ホルダ60のシャンク部61が挿着された場合、ホルダ取付穴33の内周面とシャンク部61の外周面との間に摩擦を生じても、チタンコーティング層50によりホルダ取付穴33の内周面の表面硬度が硬くなっているので、フレッチングコロージョン(微動摩耗)を生じず、ホルダ取付穴33の内周面にシャンク部61の外周面との摩擦による摩耗が生じにくい。これにより、シャンク部61の外周面が酸化を防止でき、疲労破壊を防ぐことができる。さらに、低摩擦性を有するフッ素樹脂コーティング層51とフッ素樹脂コーティング層70とが密接するため、摩擦自体が生じにくいため、摩擦による摩耗を生じにくい。
また、図1に示す自動工具交換装置20による工具ホルダ60の交換が実行される場合、主軸9のホルダ取付穴33から工具ホルダ60が外されるので、ホルダ取付穴33の内周面と、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面とが一時的に露出される。この時、切粉を含んだクーラントの飛沫が、ホルダ取付穴33の内周面や、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面に付着することがある。しかし、ホルダ取付穴33の内周面にはフッ素樹脂コーティング層51が、シャンク部61の外周面にはフッ素樹脂コーティング層70が各々形成されているので、それらの表面からクーラントの飛沫ははじかれる。これにより、主軸9のホルダ取付穴33の内周面と、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面とに切粉が付着するのを防止できる。
よって、工具交換アーム22により、主軸9のホルダ取付穴33に他の工具ホルダ60のシャンク部61が挿着されても、ホルダ取付穴33の内周面と工具ホルダ60のシャンク部61の外周面との間に切粉が介在しない。このため、ホルダ取付穴33の内周面とシャンク部61の外周面との間に切粉の介在による隙間を生じないので、切削加工中に主軸9のホルダ取付穴33から工具ホルダ60のシャンク部61が抜け落ちるのを防止できる。また、主軸9のホルダ取付穴33と工具ホルダ60のシャンク部61の外周面との間には、チタンコーティング層50、フッ素樹脂コーティング層51、フッ素樹脂コーティング層70が介在し、互いに直接摺動しない構造となっているので、赤錆発生の防止や、主軸9のホルダ取付穴33の内周面と、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面との摩擦による摩耗を防止できる。
以上説明したように、本実施形態のマシニングセンタ1では、主軸9のホルダ取付穴33の内周面に、チタンコーティング層50とフッ素樹脂コーティング層51とが重層形成されることで、ホルダ取付穴33の内周面に耐摩耗性を付与するのみならず、撥水性も付与できる。さらに、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面にも、フッ素樹脂コーティング層70を形成することで、シャンク部61の外周面に撥水性を付与できる。そして、このようなフッ素樹脂コーティング層51が形成されたホルダ取付穴33の内周面や、フッ素樹脂コーティング層70が形成されたシャンク部61の外周面は油も水もはじくため、クーラントによって濡れることがなく、また汚れにくい。そして、切粉を含むクーラントがフッ素樹脂コーティング層51や、フッ素樹脂コーティング層70の表面に付着してもはじかれるため、主軸9のホルダ取付穴33の内周面や、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面に切粉等が付着するのを防止できる。そして、ホルダ取付穴33の内周面とシャンク部61の外周面との間に切粉の付着による隙間を生じないので、切削加工中に、主軸9のホルダ取付穴33から工具ホルダ60が抜け落ちるのを防止できる。
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、各種の変形が可能である。
例えば、本実施形態では、主軸9のホルダ取付穴33の内周面と、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面とに撥水性を付与するために、フッ素樹脂コーティング層51,70を各々形成したが、これに限らず、フッ素樹脂の代わりにシリコン樹脂組成物をコーティングしてもよい。
さらに、本実施の形態では、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面、主軸9のホルダ取付穴33の内周面の何れにも撥水性のコーティング(例えば、フッ素樹脂コーティング層51,70)が施されているが、何れか一方のみに撥水性のコーティング(例えば、フッ素樹脂コーティングや、シリコン樹脂組成物によるコーティング)を施してもよい。
また、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面に、まず、チタンコーティング層を形成し、その上からフッ素樹脂コーティング層70を重層形成してもよい。
さらに、主軸9のホルダ取付穴33の内周面には、フッ素樹脂コーティング層51を単層形成し、工具ホルダ60のシャンク部61の外周面には、チタンコーティング層とフッ素樹脂コーティング層70とを重層形成してもよい。
本発明の工作機械は、縦型マシニングセンタのみならず、横型マシニングセンタにも適用できる。
マシニングセンタ1の全体斜視図である。 主軸9の先端側の縦断面図である。 図2に示すホルダ取付穴33周辺の部分拡大図である。 工具ホルダ60の正面図である。 主軸9のホルダ取付穴33に工具ホルダ60のシャンク部61が挿着された状態を示す主軸9の先端側の縦断面図である。
符号の説明
1 マシニングセンタ
6 工具
9 主軸
33 ホルダ取付穴
50 チタンコーティング層
51 フッ素樹脂コーティング層
60 工具ホルダ
61 シャンク部
70 フッ素樹脂コーティング層

Claims (3)

  1. 主軸の先端に工具を保持する工具ホルダが装着される工作機械であって、
    前記主軸の先端にはテーパ穴が設けられ、
    前記工具ホルダには前記テーパ穴に挿着されるテーパ部が設けられ、
    前記工具ホルダの前記テーパ部外周面及び前記主軸の前記テーパ穴内周面の少なくとも一方は、撥水性のコーティングが施されていることを特徴とする工作機械。
  2. 前記撥水性のコーティングは、フッ素樹脂コーティングであることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
  3. 前記工具ホルダの前記テーパ部外周面及び前記主軸の前記テーパ穴内周面の少なくとも一方にはチタンコーティングが施され、その後に、前記フッ素樹脂コーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100955894B1 (ko) 2008-03-11 2010-05-06 한무경 내마모성 툴 가이드
JP2015030079A (ja) * 2013-08-06 2015-02-16 セイコーインスツル株式会社 クイル装置、及び研削加工装置
CN109590511A (zh) * 2019-01-21 2019-04-09 重庆綦远远成铝业有限公司 一种用于铝型材深加工的钻铣床
DE102018102362B4 (de) 2018-02-02 2022-10-06 Achenbach Buschhütten GmbH & Co. KG Walzanlage zum Walzen von Metallbändern

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