JP2007001046A - シート状構造体の賦形方法及び繊維強化樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】賦形作業中に、シート状構造体を構成する繊維の乱れを抑制することができるシート状構造体の賦形方法を提供する。
【解決手段】所定方向に繊維が配列されたプリフォーム11を、所定形状の型面13b,14b,15bを有する複数のクランプ装置13,14,15によって3箇所において把持する。次にプリフォーム11を把持された箇所の間において所定形状の押圧面16a,17aを有するプレッサ16,17で押圧しながら、プリフォーム11に不要な力が加わらないようにクランプ装置14,15をプリフォーム11の把持部の間隔が狭くなるように移動させる。その結果、プリフォーム11がプレッサ16,17の押圧面16a,17aに沿うように変形されて、プリフォーム11がプレッサ16,17の押圧面16a,17aと型面13b,14b,15bで押圧されて賦形が行われる。
【選択図】 図6

Description

本発明は、シート状構造体の賦形方法及び繊維強化樹脂に係り、詳しくはRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法により製造されるFRP(繊維強化樹脂)のプリフォームの賦形に好適なシート状構造体の賦形方法及び繊維強化樹脂に関する。
従来、繊維強化樹脂成形品で使用される補強繊維としてガラス繊維や炭素繊維等が挙げられるが、炭素繊維は比重が小さくて高強度、高弾性率を有し、炭素繊維を補強繊維とした繊維強化樹脂成形品は比強度・比弾性率が高く、航空宇宙用途をはじめ最近では自動車や土木・建材等の一般産業用途にも使われ始めている。
また、その成形法には種々の方法があり、成形品の要求特性や製造コスト等から最適な成形法が選択されており、ハンドレイアップ成形、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ(中間基材)を積層してオートクレーブで成形したものが、一般産業用途で広く採用されている。
しかし、最近では自動車等の輸送機器部材への用途が増加し、生産性に優れた成形法が望まれている。そのため、これまでのプリプレグを使用したオートクレーブ成形法よりも、成形サイクルが短縮できるRTM法、成形型内を真空吸引して樹脂の含浸を助けるVa−RTM法等樹脂が未含浸の補強繊維基材を使用してプリフォームを成形した後に樹脂を一括含浸させる成形法が盛んになってきている。
一般的にプリフォームを賦形する場合、型の上に賦形前のプリフォームを置き、手作業でプリフォームを型に合わせて変形させる。しかし、手作業では賦形中に、プリフォームに繊維のずれ、蛇行等の乱れが発生し、複合材料としての物性が低下する虞がある。
プリフォームの賦形方法として、補強織物を載置する支持材と該支持材を支持する枠材とを有するトレーからなる一方の賦形型に前記補強織物を載置するとともに、前記一方の賦形型と、前記補強織物を介して前記一方の賦形型と対向する側に設けられた他方の賦形型との間で補強織物を挟み込んで該補強織物を賦形する方法がある(特許文献1参照)。
特許文献1の方法では、図13に示すように、賦形型の賦形面が三次元形状を呈し、該賦形面に対し下方に延びたスリット部を有する一方の賦形型からなる下型51と、下型51に対応する三次元形状を呈した賦形面を有する他方の賦形型からなる上型52との間に複数枚の補強織物53を載置したトレー54を挿入する。そして、上型52の降下に伴ってトレー54に張り渡した支持材を、下型51のスリット部51aに押し込み、補強織物53を上型52と下型51で挟み込んだ状態で、補強織物53を加熱して層間接着する。
特開2003−305719号公報(明細書の段落[0042]〜[0049]、図1〜3)
ところが、特許文献1に記載のプリフォームの賦形方法では、水平な状態でトレー54上に載置された補強織物53は、三次元形状を呈する上型52に押圧される際に、図13に示す左右方向に移動されるため、補強織物の繊維がトレー54及び上型52との摩擦で乱れる。三次元形状が図13に示すように中央部に向かって単調でかつ緩い傾斜の場合はその乱れは小さい。しかし、三次元形状として図14(a)に示すように、プリフォーム60に溝61が複数存在する場合や図14(b)に示すように、溝61が一つでも溝61の壁面61aの傾斜が急な場合はその乱れが大きくなる。
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は賦形作業中に、シート状構造体を構成する繊維の乱れを抑制することができるシート状構造体の賦形方法を提供することにある。また、第2の目的は強化繊維の配列の乱れが抑制された繊維強化樹脂を提供することにある。
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、所定方向に繊維が配列されたシート状構造体を、所定形状の型面を有する複数のクランプ装置によって少なくとも2箇所において把持する。次に前記シート状構造体を把持された箇所の間において所定形状の押圧面を有するプレッサで押圧しながら、少なくとも前記クランプ装置の一つを前記シート状構造体の把持部の間隔が狭くなるように移動させる。そして、前記シート状構造体を前記プレッサの押圧面に沿うように変形させて、前記シート状構造体を前記プレッサの押圧面と前記クランプ装置の型面とで押圧して賦形を行う。ここで、「所定方向に繊維が配列されたシート状構造体」とは、三次元織物あるいは三次元繊維構造体のように繊維束が三次元的に結合された構造体に限らず、織物を複数枚積層したものや、プリプレグのように一方向に配列された繊維に半硬化状態の熱硬化性樹脂が含浸されたシートを複数枚積層したものも含む。なお、三次元繊維構造体とは繊維束が折り返し状に配列された複数の繊維束層を積層して積層繊維束群を形成し、その積層繊維束群を各繊維束層と直交する方向に配列される結合繊維束又は結合糸で結合したものである。また、「所定形状」とは、賦形された後のシート状構造体の形状に対応する形状またはその形状の一部を意味する。また、プレッサで押圧する方向は単に賦形前のシート状構造体の厚さ方向やプレッサを脱型時に移動させる方向だけではなく、シート状構造体の面の方向をも含む。
この発明のシート状構造体の賦形方法では、所定方向に繊維が配列されたシート状構造体が、所定形状の型面を有するクランプ装置によって少なくとも2箇所において把持される。次に把持されたシート状構造体が、把持された箇所の間において所定形状の押圧面を有するプレッサで押圧される。このとき、シート状構造体に不要な力が加わらないように少なくとも前記クランプ装置の一つが前記シート状構造体の把持部の間隔が狭くなるように移動される。そして、シート状構造体がプレッサの押圧面に沿うように変形されるとともに、プレッサの押圧面とクランプ装置の型面とで押圧されて賦形が行われる。従って、シート状構造体、即ち繊維配列シートを構成する繊維に無理な力が加わる状態でシート状構造体が押圧面に対して相対移動することがなく、繊維の乱れを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記クランプ装置は、前記シート状構造体の把持を同じ高さにおいて行う。この発明では、シート状構造体の把持を異なる高さにおいて行う場合に比較して、シート状構造体が把持された箇所の間においてプレッサの押圧面で押圧されて変形する際に、シート状構造体に不要な力が加わらないようにクランプ装置を移動させる際の移動速度の制御が容易になる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記プレッサは、前記シート状構造体の把持部の間に1個設けられている。この発明では、プレッサが2個以上設けられる場合に比較して、シート状構造体に不要な力が加わらないようにクランプ装置を移動させてシート状構造体を賦形するのが容易になる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記クランプ装置は、前記シート状構造体の前記プレッサとの接触面がプレッサに対して相対移動しないように移動される。この発明では、シート状構造体を構成する繊維に無理な力が加わる状態となるのを確実に回避することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記クランプ装置は3台以上設けられている。この発明では、開放部を複数有する屈曲形状のシート状構造体を繊維の乱れを抑制した状態で製造することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記プレッサは、前記シート状構造体をそれぞれ同一面側から押圧する。この発明では、同方向に開放部が向くような形状にシート状構造体を賦形するのが容易になる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記シート状構造体は、前記複数のクランプ装置の把持部に固定されたシートの上に載置された状態でクランプ装置により把持される。この発明では、シート状構造体が単独では水平状態を保持するのが難しい場合でも、賦形作業の準備段階として各クランプ装置で把持する際に、確実に水平状態で把持することができる。
前記第2の目的を達成するため、請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のシート状構造体の賦形方法によって賦形された繊維構造体を強化材としている。従って、この発明では、繊維強化樹脂を構成する繊維の配列の乱れが抑制されているため、繊維強化樹脂の物性が向上する。
本発明の賦形方法によれば、賦形作業中に、プリフォームを構成する繊維の乱れを抑制することができる。また、本発明の繊維強化樹脂によれば、強化繊維の配列の乱れが抑制された繊維強化樹脂を提供することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を2つの溝を有し、対称形状の繊維強化樹脂のプリフォームの製造方法に具体化した第1の実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1(a)は賦形されたプリフォームの模式斜視図、(b)はシート状構造体としてのプリフォームの賦形に使用するクランプ装置及びプレッサの模式斜視図である。図2は賦形装置の模式正面図、図3は賦形装置の模式平面図である。
図1(a)に示すように、この実施形態のプリフォーム11は、賦形後においては、一定断面の半楕円状の2本の溝12が並行に延びる対称形状に形成される。プリフォーム11は、図1(b)に示すように、賦形後のプリフォーム11の形状に対応する型面を備えた3台のクランプ装置13,14,15と、賦形後のプリフォーム11の形状に対応する押圧面を備えた2個のプレッサ16,17とにより賦形される。
図2及び図3に示すように、プリフォーム11の賦形を行う賦形装置20は、ベースプレート21と、ベースプレート21に立設された支柱22により支持された支持プレート23とを備えている。ベースプレート21の中央には1台のクランプ装置13が設けられている。クランプ装置13は左右対称に形成された型部13aと、型部13aの上方で昇降される可動把持部24とを備えている。型部13aは左右両側に賦形後のプリフォーム11の形状に対応する型面13bを備え、上端に水平部13cを備えている。可動把持部24は、支持プレート23に固定されたシリンダ25により把持位置と待機位置とに移動されるようになっている。
ベースプレート21上には、クランプ装置13の型部13aを挟んで左右両側にそれぞれ一対のレール26,27が左右方向(図2及び図3の左右方向)に延びるように設けられている。レール26上にクランプ装置14の型部14aが摺動可能に支持されている。型部14aは右側に賦形後のプリフォーム11の形状に対応する型面14bを備え、上端に水平部14cを備えている。水平部14cにはブラケット28が固定され、ブラケット28には可動把持部29を把持位置と待機位置とに昇降させるシリンダ30が固定されている。つまり、クランプ装置14はレール26上を一体的に摺動可能な構成となっている。
レール27上にクランプ装置15の型部15aが摺動可能に支持されている。型部15aは左側に賦形後のプリフォーム11の形状に対応する型面15bを備え、上端に水平部15cを備えている。水平部15cにはブラケット28が固定され、ブラケット28には可動把持部31を把持位置と待機位置とに昇降させるシリンダ32が固定されている。つまり、クランプ装置15はレール27上を一体的に摺動可能な構成となっている。
クランプ装置14は、ベースプレート21上に支持されたモータM1によって駆動されるボールネジ機構33により、レール26に沿って往復動される。クランプ装置15は、ベースプレート21上に支持されたモータM2によって駆動されるボールネジ機構34により、レール27に沿って往復動される。モータM1,M2にはサーボモータが使用されている。
支持プレート23上にはレール35,36が左右方向に延びるように設けられている。レール35上にプレッサ16の支持体37が摺動可能に支持されている。支持体37は支持プレート23上に支持されたモータM3によって駆動されるボールネジ機構38により、レール35に沿って往復動される。レール36上にプレッサ17の支持体39が摺動可能に支持されている。支持体39は支持プレート23上に支持されたモータM4によって駆動されるボールネジ機構40により、レール36に沿って往復動される。モータM3,M4にはサーボモータが使用されている。
支持体37上にはサーボシリンダ41が固定されており、プレッサ16はサーボシリンダ41のピストンロッド41aに固定されている。プレッサ16は賦形後のプリフォーム11の形状に対応した押圧面16aを備えている。そして、プレッサ16は、モータM3及びサーボシリンダ41の駆動により、プレス位置と待機位置との間を昇降される。なお、支持プレート23にはピストンロッド41aの移動を許容する窓(図示せず)が形成されている。
支持体39上にはサーボシリンダ42が固定されており、プレッサ17はサーボシリンダ42のピストンロッド42aに固定されている。プレッサ17は賦形後のプリフォーム11の形状に対応した押圧面17aを備えている。そして、プレッサ17は、モータM4及びサーボシリンダ42の駆動により、プレス位置と待機位置との間を昇降される。なお、支持プレート23にはピストンロッド42aの移動を許容する窓(図示せず)が形成されている。
各モータM1〜M4、シリンダ25,30,32及びサーボシリンダ41,42は図示しない制御装置からの指令により駆動される。制御装置は、プリフォーム11のプレッサ16,17との接触面がプレッサ16,17に対して相対移動しないように各モータM1〜M4及びサーボシリンダ41,42を同期して制御する。制御装置には、予め試験で求めた各モータM1〜M4、シリンダ25,30,32及びサーボシリンダ41,42の駆動量のデータがメモリに記憶されており、そのデータに基づいて各モータM1〜M4、シリンダ25,30,32及びサーボシリンダ41,42が制御される。
次に前記の賦形装置20を使用したプリフォーム11の賦形方法を説明する。
プリフォーム11としては、例えば、複数の繊維束層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層繊維束群が、各繊維束層と直交する方向に配列された厚さ方向糸(結合糸)にて結合された構造の三次元繊維構造体が使用される。
この実施形態では賦形前のプリフォーム11を直接クランプ装置13,14,15で把持するのではなく、クランプ装置13,14,15の把持部を構成する水平部13c,14c,15cに固定されたシート43の上に載置された状態で可動把持部24,29,31によって把持される。そのため、先ず、図4に示すように、クランプ装置14,15の型部14a,15a、可動把持部24,29,31及びプレッサ16,17を待機位置に配置する。その状態でシート43をクランプ装置13,14,15の水平部13c,14c,15cに、例えば両面テープで固定する。シート43はプレッサ16,17による押圧作用で押圧面16a,17aに沿うように変形可能で、かつ待機位置においてプリフォーム11を水平状態に保持可能な材質で形成されている。シート43は例えばポリエステルやポリエチレンで形成される。
図4に示すように、シート43上に賦形前のプリフォーム11が載置された後、シリンダ25,30,32が駆動されて、図5に示すように、可動把持部24,29,31が把持位置に移動されてプリフォーム11がクランプ装置13,14,15で把持された状態となる。クランプ装置13,14,15は、プリフォーム11の把持を同じ高さにおいて行う。
この状態から各モータM1〜M4及びサーボシリンダ41,42が駆動される。プレッサ16,17は、クランプ装置13,14及びクランプ装置13,15の把持部間の中央においてプリフォーム11に接触するまでは垂直に下降される。その後は下降しつつ押圧面16a,17aがクランプ装置13の型面13bに近づくように移動される。また、型部14a,15aは、プレッサ16,17がプリフォーム11に接触した時点から移動が開始され、型部13aに近づくように、かつプリフォーム11のプレッサ16,17との接触面がプレッサ16,17と相対移動しないようにプレッサ16,17と同期した状態で移動される。そして、図6に示すように、プリフォーム11が変形される。
図7に示すように、型部14a,15aが型部13aと当接して型面13b,14b,15bが賦形後のプリフォーム11の形状に対応する状態となり、プレッサ16,17が型面13b,14b,15bと押圧面16a,17aとの間でプリフォーム11を押圧する所定位置まで移動すると、プリフォーム11の賦形が完了する。
次に、図8に示すように、プレッサ16,17及び可動把持部24,29,31が上昇された後、賦形後のプリフォーム11が賦形装置20から取り出される。このとき、シート43はクランプ装置13,14,15に接着された状態に保持される。その後、クランプ装置14,15及びプレッサ16,17が待機位置に移動され、図9に示す状態となる。
賦形後のプリフォーム11は、例えば、RTM法で樹脂の含浸・硬化が行われて繊維強化樹脂が製造される。
この実施形態では次の効果を有する。
(1)賦形前のプリフォーム11を、複数のクランプ装置13,14,15によって把持し、把持した箇所の間においてプレッサ16,17で押圧しながら、プリフォーム11に不要な力が加わらないようにクランプ装置14,15をシート43の把持部の間隔が狭くなるように移動させる。そして、プリフォーム11をプレッサ16,17の押圧面16a,17aに沿うように変形させて、プリフォーム11をプレッサ16,17の押圧面16a,17aとクランプ装置13〜15の型面13b,14b,15bとで押圧して賦形を行う。従って、プリフォーム11を構成する繊維に無理な力が加わる状態でプリフォーム11が押圧面16a,17aに対して相対移動することがなく、繊維の乱れを抑制することができる。
(2)クランプ装置13,14,15は、プリフォーム11の把持を同じ高さにおいて行う。従って、プリフォーム11の把持を異なる高さにおいて行う場合に比較して、プリフォーム11が把持された箇所の間においてプレッサ16,17の押圧面16a,17aで押圧されて変形する際に、プリフォーム11に不要な力が加わらないようにクランプ装置14,15を移動させる際の移動速度の制御が容易になる。
(3)プレッサ16,17は、プリフォーム11の把持部の間に1個設けられている。従って、プレッサ16,17が2個以上設けられる場合に比較して、プリフォーム11に不要な力が加わらないようにクランプ装置14,15を移動させてプリフォーム11を賦形するのが容易になる。
(4)クランプ装置14,15は、プリフォーム11のプレッサ16,17との接触面がプレッサ16,17に対して相対移動しないように移動される。従って、プリフォーム11を構成する繊維に無理な力が加わる状態となるのを確実に回避することができる。
(5)クランプ装置は3台以上設けられている。従って、複数の溝12が設けられた形状のプリフォーム11であっても、プリフォーム11を繊維の乱れを抑制した状態で賦形することができる。
(6)プレッサ16,17は、プリフォーム11をそれぞれ同一面側から押圧する。従って、同方向に開放部が向くような形状にプリフォーム11を賦形するのが容易になる。
(7)プリフォーム11は、複数のクランプ装置13〜15の水平部13c〜15cに固定されたシート43の上に載置された状態で可動把持部24,29,31により把持される。従って、プリフォーム11が単独では水平状態を保持するのが難しい場合でも、賦形作業の準備段階として各クランプ装置13〜15で把持する際に、確実に水平状態で把持することができる。また、プリフォーム11はシート43を介して各型面13b,14b,15bに押圧されるため、仮にプリフォーム11が型面13b,14b,15bと相対移動されても、プリフォーム11を構成する繊維の配列を乱すような力が作用するのを回避することができる。
(8)繊維強化樹脂は前記のように賦形されたプリフォーム11を強化繊維として使用している。従って、繊維強化樹脂を構成する繊維の配列の乱れが抑制されているため、繊維強化樹脂の物性が向上する。
(9)プリフォーム11は左右対称な形状に賦形される。従って、型部14a,15aは同じ速度で移動すればよいため、左右非対称な形状に賦形する場合に比較して、モータM1,M2の制御が容易になる。また、プレッサ16,17も同じ動きをするようにモータM3,M4及びサーボシリンダ41,42を制御すればよいため、制御が容易になる。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図10に従って説明する。この実施形態は、プリフォーム11を異なる形状の溝12を有する非対称形状に賦形する点が前記第1の実施形態と異なっている。そして、型部13a,15a及びプレッサ17の押圧面の形状が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。図10は賦形装置20の一部省略模式正面図である。
プレッサ17は、下端に水平な押圧面17bを備え、押圧面17bを挟んで一方に傾斜した平面で形成された押圧面17cを他方に押圧面17cより傾斜の急な平面で形成された押圧面17dを備えている。型部13aは、プレッサ16の押圧面16aと対応する左側の型面13bは湾曲面に形成され、プレッサ17の押圧面17cと対応する右側の型面13dは傾斜した平面に形成されている。型部15aは、プレッサ17の押圧面17b及び押圧面17dと対応する型面15dを備えている。
この実施形態では、プレッサ17の形状が異なるため、プリフォーム11の賦形を行う場合、プリフォーム11のプレッサ16,17との接触面がプレッサ16,17に対して相対移動しないようにするためには、プレッサ17はプレッサ16と異なる動きとなり、型部15aは型部14aと異なる動きになる。
この実施形態では第1の実施形態の(1)〜(8)と同様な効果を有する他に次の効果を有する。
(10)プリフォーム11を左右非対称な形状に賦形できるため、所望の物性に適した形状のプリフォーム11を賦形することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ 賦形後のプリフォーム11の形状は溝12を複数有する形状に限らない。例えば、溝12が一つであってもよい。その場合、賦形装置20は、図11(a)に示すように、1個のプレッサ16と、2台のクランプ装置14,15で構成される。プレッサ16は上下方向にのみ移動可能であればよく、左右方向への移動機構は不要となる。そして、型部14a,15aは共通のレール44に沿って移動可能に設けられ、モータM1,M2によって同じ速度で移動される。
○ 上記実施の形態では賦形後のプリフォーム11の形状は一定断面形状であったが、半楕円状の溝の大きさや形が徐々に変化するような、断面形状が徐変する形状に適用しても良い。この場合徐変する方向に対しては、シート状構造体の相対移動が発生する虞があるが、徐変する割合が小さく、許容できる程度の繊維の乱れに抑えることができればよい。
○ 賦形前のプリフォーム11をクランプ装置13〜15によって把持する把持位置は同じ高さに限らず、賦形後のプリフォーム11の形状によっては把持部の高さが異なる状態で賦形を開始してもよい。例えば、図11(b)に示すように、型部15aにブラケット28が固定される水平部15cより低い位置に把持部15eを形成して、把持部15eにおいて可動把持部31と協働してシート43及びプリフォーム11を把持する構成としてもよい。
○ 賦形後のプリフォーム11の形状は開放部が一方のみを向く形状に限らず、例えば、図12(a),(b)に示すように、開放部11aが反対側を向く形状としてもよい。図12(a)に示す形状のプリフォーム11を賦形する場合は、賦形前のプリフォーム11を3箇所で把持した状態で2個のプレッサにより把持部間を逆方向に押圧しながら両側の型部を移動させることにより賦形が行われる。また、図12(b)に示す形状のプリフォーム11を賦形する場合は、賦形前のプリフォーム11を2箇所で把持した状態で2個のプレッサにより把持部間を逆方向に押圧しながら両側の型部を移動させることにより賦形が行われる。
○ プリフォーム11の賦形の際、プリフォーム11の下側にのみシート43を配置する方法に代えて、プリフォーム11の上側にもシート43を配置して賦形を行ってもよい。この場合、仮にプリフォーム11のプレッサ16,17による押圧部がプレッサ16,17に対して相対移動しても、プリフォーム11を構成する繊維の配列が乱れるのを防止することができる。
○ シート43は必須ではなく、賦形前のプリフォーム11をクランプ装置13〜15の型部13a,14a,15aに、両面テープや粘着材で仮固定した後、可動把持部24,29,31で把持するようにしてもよい。また、賦形前のプリフォーム11をクランプ装置13〜15の型部13a,14a,15aに両面テープや粘着材で仮固定し、その上にシート43を配置した状態において可動把持部24,29,31で把持するようにしてもよい。
○ プリフォーム11は、三次元繊維構造体に限らず、三次元織物や、織物を複数枚重ねたもの等のように繊維のみで構成されたものであっても、繊維のみで構成されたものに限らず、プリプレグのように一方向に配列された繊維に半硬化状態の熱硬化性樹脂が含浸されたシートを複数枚積層したものであってもよい。
○ プリフォーム11は厚さが一定のものに限らず、厚さが部分的に異なるプリフォーム11であってもよい。
○ 賦形後のプリフォーム11が対称形状の場合、両型部14a,15aを移動させるボールネジ機構のネジ軸としてネジの方向が異なるものを連結して、1台のモータで駆動するようにしてもよい。この場合モータの数を減らすことができる。
○ 型部14a,15aを往復移動させる構成として、ボールネジ機構33,34とモータM1,M2を使用する構成に代えて、サーボシリンダを使用したり、リニアモータで移動させる構成としてもよい。
○ 両型部14a,15aを移動させる構成として、両型部14a,15aにコイルばねを連結し、そのコイルばねのばね力に抗してプレッサ16,17の押圧力により両型部14a,15aを型部13aに近づく方向に移動させるようにしてもよい。型部14a,15aの待機位置への復帰はコイルばねのばね力によって行われる。
○ プレッサ16,17のプリフォーム11に対する押圧力により両型部14a,15aを型部13aに近づく方向に移動させるように構成し、待機位置への復帰に他の手段を用いれば、コイルばねがなくても良い。
○ プレッサ16,17の上面にガイドロッドをそれぞれ垂直に一対立設し、支持プレート23にガイドロッドを案内するガイド孔を設けてもよい。この場合、プレッサ16,17が長くても安定した状態で昇降できる。
○ 型部13a,14a,15aの上面にガイドロッドをそれぞれ垂直に一対立設し、可動把持部24,29,31にガイドロッドが挿通されるガイド孔を設けてもよい。この場合、可動把持部24,29,31が長くても安定した状態で昇降できる。
○ プレッサ16,17をサーボシリンダ及びサーボモータとの組み合わせで上下方向及び水平方向に同期して移動させる構成に代えて、プレッサ16,17の移動経路に合ったカムを使用して、プレッサ16,17をサーボシリンダで上下方向に移動させる構成としてもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記シート状構造体は、前記複数のクランプ装置の把持部に固定されたシートの上に載置され、その上にシートが配置された状態でクランプ装置により把持される。
第1の実施形態を示し、(a)は賦形後のプリフォームの模式斜視図、(b)はプリフォームの賦形に使用するクランプ装置及びプレッサの模式斜視図。 賦形装置の模式正面図。 賦形装置の模式平面図。 作用を説明する部分模式正面図。 作用を説明する部分模式正面図。 作用を説明する部分模式正面図。 作用を説明する部分模式正面図。 作用を説明する部分模式正面図。 作用を説明する部分模式正面図。 第2の実施形態における賦形装置の部分模式正面図。 (a),(b)は別の実施形態における賦形装置の部分模式正面図。 (a),(b)は別の実施形態における賦形後のプリフォームの模式図。 従来技術における賦形装置の部分模式正面図。 (a),(b)は賦形されたプリフォームの模式図。
符号の説明
11…シート状構造体としてのプリフォーム、13,14,15…クランプ装置、13b,13d,14b,15b,15d…型面、15e…把持部、16,17…プレッサ、16a,17a,17b,17c,17d…押圧面、24,29,31…把持部を構成する可動把持部、43…シート。

Claims (8)

  1. 所定方向に繊維が配列されたシート状構造体を、所定形状の型面を有する複数のクランプ装置によって少なくとも2箇所において把持し、次に前記シート状構造体を把持された箇所の間において所定形状の押圧面を有するプレッサで押圧しながら、少なくとも前記クランプ装置の一つを前記シート状構造体の把持部の間隔が狭くなるように移動させることにより、前記シート状構造体を前記プレッサの押圧面に沿うように変形させて、前記シート状構造体を前記プレッサの押圧面と前記クランプ装置の型面とで押圧して賦形を行うシート状構造体の賦形方法。
  2. 前記クランプ装置は、前記シート状構造体の把持を同じ高さにおいて行う請求項1に記載のシート状構造体の賦形方法。
  3. 前記プレッサは、前記シート状構造体の把持部の間に1個設けられている請求項1又は請求項2に記載のシート状構造体の賦形方法。
  4. 前記クランプ装置は、前記シート状構造体の前記プレッサとの接触面がプレッサに対して相対移動しないように移動される請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート状構造体の賦形方法。
  5. 前記クランプ装置は3台以上設けられている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のシート状構造体の賦形方法。
  6. 前記プレッサは、前記シート状構造体をそれぞれ同一面側から押圧する請求項5に記載のシート状構造体の賦形方法。
  7. 前記シート状構造体は、前記複数のクランプ装置の把持部に固定されたシートの上に載置された状態でクランプ装置により把持される請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のシート状構造体の賦形方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のシート状構造体の賦形方法によって賦形された繊維構造体を強化材とした繊維強化樹脂。
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